JP2011125835A - 画像形成装置およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】3次元曲面を有する立体に画像を記録するには、印刷装置を用いて専用シートに印刷された画像を貼り付けるため、記録する画像毎にそれぞれ専用の版を作製しなければならず、個人ユース等の少量印刷には不適当であった。
【解決手段】インクジェットプリンタにおいて、S801で記録媒体の3次元形状を取得し、S802で該3次元形状に基づき、記録ヘッドのフェイス面に対する記録領域の傾き情報を検出する。そしてS803で、該記録領域に画像データを形成した際に得られる第1の色情報が、該記録領域に傾きが無い場合に同画像データを形成した際に得られる第2の色情報に等しくなるように、画像データに対する色材の吐出量を制御する。これにより、3次元曲面を有する立体に高精細な画像を形成することが可能となり、また、特別に版を形成することなく、任意の画像を形成することができる。
【選択図】 図8

Description

本発明は、立体の表面に画像を形成する画像形成装置およびその制御方法に関する。
従来より、3次元立体物の表面(以下、単に立体と称する)に画像を形成する方法として、オフセット印刷等の印刷装置を用いて専用シートに予め画像を印刷し、該シートを対象立体に貼り付ける方法が知られている。また、特にインクジェット記録方式を用いて立体に画像を形成する方法として、対象立体の姿勢を制御しながら色材を該立体に吐出することによって、画像を直接記録する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、より曲率の高い立体や複雑な3次元形状を有する立体への記録を行うために、対象立体と記録ヘッドの相対位置を制御すると共に、該立体から平面への射影画像を作成することで画像の歪みを補正する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2001−270096号公報 特開2001−301137号公報
しかしながら、印刷装置を用いて専用シートに印刷された画像を対象立体に貼り付ける方法では、記録する画像毎にそれぞれ専用の版を作製しなければならず、同一の画像を大量に印刷する場合を除いて、コストが高くなってしまうという問題があった。そのためこの方法は、例えば商品のデザイン製作過程や個人ユーザによる少量印刷等、所望の画像を少量だけ印刷するような場合には適していない。
このような課題を解決するために、特別に版の作製を必要としない電子写真方式の印刷装置やインクジェット方式の印刷装置を利用することが考えられる。しかし、やはり専用シートを用いる点では印刷装置の場合と同様であり、印刷対象となる立体は平面への展開が可能な比較的簡易な形状に限定されてしまう。
上記特許文献1に記載された方法によれば、平面に展開できない形状からなる立体に対し、少量の画像を比較的低コストで形成することが可能である。しかしながら、記録領域の曲率が高い立体や複雑な3次元曲面を有する立体への記録を行う場合には、形成された画像に歪みが発生してしまうという課題があった。
この課題を解決するための方法である特許文献2に記載の方法では、巨視的な画像の歪み自体は補正することが可能である。しかし、対象物体と記録ヘッドの相対位置の制御だけでは、微細な構造や曲率の高い面への記録を行う際に、色ずれや解像度低下、粒状性悪化、スジ等が発生し、著しく画質を劣化させてしまうという課題があった。例えば色ずれとは、RGB等の入力信号値が等しい画像が入力されても、記録ヘッドのフェイス面(ノズルが配置された面)に水平な記録領域に記録した場合とは異なる発色になってしまうことを指す。この要因は、記録ヘッドの幅以下の微細な構造あるいは高い曲率を有する領域への記録を行う場合、記録ヘッドのフェイス面と水平な記録領域に記録した場合とは色材の着弾状態が変わってしまうことにある。これはすなわち、上記微細な構造あるいは高い曲率を有する対象立体への記録を行う場合、記録ヘッドと該対象立体との相対位置をいかに制御したとしても、記録ヘッドのフェイス面と該対象立体とが水平とはみなせないためである。
ここで、上記特許文献2に記載された、印刷対象となる立体(以下、対象立体と称する)に対する記録ヘッドの相対位置に応じた記録について説明する。図6は、印刷対象となる立体(以下、対象立体と称する)と記録ヘッドとの相対位置関係を示す概念図である。図6において、601は記録ヘッド、602,603,604はそれぞれ対象立体である。
図6(a)は、対象立体602が比較的曲率の低い面で構成されている場合を示す。対象立体602の形状が、記録される領域を平面と見なせるほど(平面に記録した場合と色材の着弾状態が変化しないとみなせるほど)、曲率の低い面で構成されているとする。するとこの場合、記録ヘッド601の対象立体602に対する相対位置を精密に制御することで、高精細な画像を形成することが可能である。
図6(b)は、対象立体603が比較的曲率の高い面で構成されている場合を示す。このように対象立体603の形状が、記録される領域を平面と見なせない場合には、上述した通り、傾斜のある面への記録を行うことで画質劣化が発生してしまう。尚、上記特許文献2に記載の技術によれば、画質劣化の許容される範囲を限定して、記録領域が記録ヘッドの幅以下となるように制限している。このように、一部のノズルのみ(究極には1ノズルのみ)を使用して記録を行うと、ドットの形状および位置の変化を少なく抑えられるものの、画像形成にかかる時間が膨大になってしまうという問題がある。したがって図6(b)に示すような対象立体603について特許文献2の方法を適用した場合、高精細な画像を形成することができるが、記録ノズルを限定してしまうため、記録に要する時間が増加してしまう。
図6(c)は、対象立体604が微細な構造である場合として、例えば記録ヘッド601の幅以下の窪みがある場合を示す。この場合、記録ヘッド601の対象立体604に対する相対位置をいかに制御しても、記録ヘッド601のフェイス面と対象立体604とが水平と見なせない領域が存在してしまうため、上記特許文献2の方法でも解決不可能である。尚、図6(c)は、凹形状の場合を例に示したが、凸形状でも同様の議論が成立する。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、3次元曲面を有する立体に対し、特別に版を形成することなく、任意の高精細な画像形成を実現する画像形成装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
上記問題を解決するための一手段として、本発明の画像形成装置は以下の構成を備える。
すなわち、3次元曲面を有する記録媒体上を記録ヘッドが走査することによって該記録媒体上に色材を記録し、画像を形成する画像形成装置であって、形成対象となる画像データを入力する画像入力手段と、前記記録媒体の3次元形状データを取得する形状取得手段と、前記3次元形状データに基づいて、前記記録媒体上における記録領域の、前記記録ヘッドのフェイス面に対する傾きを示す傾き情報を検出する傾き検出手段と、前記傾き情報に基づいて、前記画像データに対する色材の記録量を制御する記録量制御手段と、を有し、前記記録量制御手段は、前記記録領域に前記画像データを形成した際に得られる第1の色情報が、前記記録領域が前記記録ヘッドのフェイス面に対して水平である場合に前記画像データを形成した際に得られる第2の色情報に等しくなるように、前記画像データに対する色材の記録量を制御することを特徴とする。
上記構成からなる本発明によれば、3次元曲面を有する立体に高精細な画像を形成することができる。また、特別に版を形成することなく、任意の画像を形成することができる。
色材が吐出されてから記録媒体に定着するまでの様子を断面方向から観察した模式図、 記録媒体上のドットを法線方向から観察した様子を示す模式図、 記録ヘッドのノズル群から吐出された色材が記録媒体に着弾するまでの様子を断面方向から観察した模式図、 1ライン、1スペースの画像を形成した際の記録媒体上のドット群を法線方向から観察した模式図、およびその濃度プロファイル、 1ドット、1スペースの画像を形成した際の記録媒体上のドット群を法線方向から観察した模式図、 記録ヘッドと対象立体との相対位置関係を表す模式図、 第1実施形態における画像形成装置の構成を示すブロック図、 第1実施形態における吐出量制御処理を示すフローチャート、 記録媒体に複数の色材が定着した様子を示す模式図、 第2実施形態における色補正テーブルの作成処理を示すフローチャート、 第2実施形態における色情報テーブルの一例、および傾斜角度と測色値との関係を表すグラフ、である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
<第1実施形態>
本実施形態では、記録ヘッドのフェイス面に対して水平な面に色材を記録した場合と、該フェイス面に対して傾斜している面に色材を記録した場合との色予測結果に基づいて、色補正を行うことを特徴とする。
●傾斜面への記録の特徴
まず、本実施形態における色補正を説明するに先立ち、傾斜面への記録における特徴、すなわち、傾斜面に形成されるドット着弾状態の変化および該変化による画質劣化(色ずれ、解像度低下、粒状性悪化、スジの発生等)について詳細に説明する。
図1は、色材が液滴状態で吐出されてから記録媒体に定着するまでの様子を、断面方向から観察した模式図である。図1(a)は、記録ヘッドのフェイス面と水平な記録媒体面101に色材滴102を記録した場合に、記録媒体面101上に色材103として定着した状態を示す。以下、定着状態の色材(この場合103)を「ドット」と称する。なお、一般に記録ヘッドから吐出された液滴状態の色材は記録媒体に定着する際に広がるため、色材滴102の直径よりドット103の直径は大きくなる場合が多い。しかしながら説明を簡単にするため、平面に記録された場合の直径は液滴状態と定着状態とで全く同一であるものとして、以下説明する。図1(b)は、記録ヘッドのフェイス面と水平な体面106に対して角度θだけ傾斜した記録媒体面105に色材滴102を記録した場合に、記録媒体面105上にドット107として定着した状態を示す。
図2に、記録媒体上のドットを、該記録媒体の法線方向から観察した様子を示し、図2の(a),(b)はそれぞれ、図1の(a),(b)に対応している。図2(a)によれば、記録ヘッドのフェイス面と水平な記録媒体201上のドットは概ね円形状になり、図2(b)によれば、傾斜した記録媒体204上のドット205は、その傾斜角θに応じて広がった楕円形状になることが分かる。図2(a)に示すドット202の径203と比較して、図2(b)に示すドット205の短径206は同等の長さであるが、長径207はその(1/cosθ)倍の長さになる。
ここで、記録媒体表面の細孔が色材の粒径よりも小さい場合等、色材が記録媒体に浸透しない場合には、ドット103とドット107の体積はほぼ同じであると考えられる。ドット103の底面積に対してドット107の底面積が(1/cosθ)倍であることから、ドット107の高さ108は、ドット103の高さ104に対してcosθ倍であると考えられる。周知のLambert-Beerの法則やKubelka-Munk理論等の発色理論からも明らかなように、一般に色材の高さが低くなると着色効果が低く、色の薄いドットになる。したがって記録ヘッドのフェイス面に対して角度θ傾斜した面への記録を行った場合、該フェイス面に水平な面に記録した場合と比較して、色の薄い広がったドットになる。
一方、色材が被記録媒体に浸透する場合には、記録ヘッドのフェイス面に対して角度θ傾斜した面への記録を行うと、該フェイス面に水平な面に記録した場合と比較して色材密度が低くなると考えられる。したがって、この場合もやはり色の薄い広がったドットになる。
以上説明したように、記録ヘッドのフェイス面に対して傾斜した面への記録を行った場合、記録されたドットが色の薄い広がったドットになってしまうため、結果的に色ずれが発生してしまう。
次に、着弾状態の変化に伴う他の画質劣化として、解像度低下や粒状性悪化、スジ発生等について、詳細に説明する。
図3は、記録ヘッド301のノズル群302から吐出された色材滴が記録媒体に着弾するまでの様子を、断面方向から観察した模式図である。図3(a)は、記録ヘッド301のフェイス面と水平な面303に色材を記録した場合におけるドット間隔304を示す。図3(b)は、記録ヘッド301のフェイス面と水平な面306に対して角度θだけ傾斜した面305に色材を記録した場合におけるドットの間隔307を示す。図3(a)のドット間隔304に対し、図3(b)のドット間隔307は、(1/cosθ)倍の長さになる。
ここで図4に、記録ヘッド301のノズルを一つおきに使用して、1ライン、1スペースを記録した際の記録媒体上のドット群を、記録媒体の法線方向から観察した様子を示す。図4(a),(b)はそれぞれ、図3(a),(b)に対応しており、401,404は記録媒体上のドット、402はインクジェットプリンタの解像度、403,405は主走査方向に隣接するドットの中心間距離を示している。なお、図4の例は、主走査方向、副走査方向ともに解像度が1200dpi、ドットの直径が30μmであるインクジェットプリンタによってドット群が形成された例を示している。ここで、主走査方向とは記録ヘッドの走査方向であり、副走査方向とは主走査方向に垂直な方向を指す。図4(a)のドット中心間距離403に対し、図4(b)のドット中心間距離405は、図3の例からも明らかなように(1/cosθ)倍の長さになる。また、図2を用いて説明した通り、図4(b)のドット404は傾斜方向に(1/cosθ)倍に広がる。
図4(c)は、図4(a),(b)で記録媒体上に形成されたそれぞれのドット群の濃度を縦方向に平均した濃度プロファイルを示し、406が図4(a)、407が図4(b)にそれぞれ対応する。図4(c)からも明らかなように、記録ヘッドのフェイス面に対して角度θ傾斜した面への記録を行った場合、該フェイス面に水平な面に記録した場合と比較して、解像度は(1/cosθ)倍に低下する。
また図5に、記録ヘッドのノズルを一つおきに使用し、かつ主走査方向の解像度について1つおきにドットの記録/非記録を繰り返して画像を形成した際の記録媒体上のドット群を、記録媒体の法線方向から観察した様子を示す。図5(a),(b)はそれぞれ、図3(a),(b)に対応しており、501,505は記録媒体上のドット、502,506はインクジェットプリンタの解像度、503,504および507,508は隣接するドット同士の中心間距離を示している。なお、上述したプリンタ解像度によれば、図5(a)に示すドットの中心間距離503と504は等距離である。また上述したように、図5(b)に示すドット長径方向の中心間距離507は、短径方向の中心間距離508の(1/cosθ)倍の長さであるため、縦横で解像度が異なることが分かる。図5(b)に示すように、縦横の解像度の違いとドット形状によって、記録ヘッドのフェイス面に対して角度θ傾斜した面への記録を行う場合、該フェイス面に水平な面へ記録する場合と比較して、画像上にスジが発生しやすくなる。また、ドットドットサイズの違いにより、ドットの粒が目立ちやすくなるため、粒状性が悪化する。
以上、図1〜図5を用いて説明したように、記録ヘッドのフェイス面に対して傾斜した面への記録を行う場合、言い換えれば、記録媒体の面の法線方向からの記録を行わない場合には、ドットの形状および位置が変化し、局所的な画質劣化の要因となってしまう。
本実施形態では、上記傾斜面への記録における特徴を鑑み、水平面への記録と傾斜面への記録における色予測結果に基づいて記録量すなわちインク吐出量を制御することによって、記録媒体の法線方向から観察した際に好ましい色再現を実現する。
●装置構成
図7(a)は、本実施形態における画像形成装置の構成を示すブロック図である。701は画像入力部であり、形成対象の画像が入力される。702は画像処理部であり、画像入力部701からの入力画像に対し、後述する色予測結果に基づく色補正を施す。703は例えばインクジェットプリンタ等の画像出力部であり、画像処理部702にて色補正が施された画像に基づき、記録媒体上への画像形成を行う。
705は3次元形状取得部であり、3次元曲面を有する記録媒体の3次元形状を示す3次元形状データ取得する。印刷対象とする記録媒体の3次元形状データは、市販の3次元デジタイザ等の測定器で測定することによって得られる。あるいは、3次元のCADデータが予め存在する場合には、このCADデータを利用しても良い。704は傾き検出部であり、3次元形状取得部705にて取得された記録媒体の3次元形状データに基づき、記録媒体上における記録領域の、記録ヘッドのフェイス面に対する傾きを検出する。詳細には、記録媒体の3次元形状データと、記録媒体に対して色材を吐出する際に実際に用いられる記録ヘッドのサイズ、および、該記録ヘッドと記録媒体との相対位置関係と、に基づいて、傾きを検出する。本実施形態では、記録媒体表面の記録領域全体を平面に近似し、記録ヘッドのフェイス面とのなす角として傾きを算出する例を示すが、各ノズルからの記録ヘッドのフェイス面に対する法線と記録媒体の表面とのなす角として検出しても良い。
画像処理部702では、傾き検出部704にて検出された記録媒体の記録領域の傾き情報と、画像入力部701にて入力された入力画像に基づいて、記録媒体の法線方向から観察した際に好ましい色再現となるように、色補正処理を実施する。ここで、記録媒体の法線方向から観察した際に好ましい色再現とは、傾いた面に対してはその面の正面から観察した際に好ましくなるような色再現である。
なお、本実施形態における記録ヘッドの記録媒体に対する相対位置の制御方法については、上述した特許文献1や特許文献2等に記載された周知の方法を適用することが可能であるため、説明を省略する。
図7(b)は、画像処理部702の詳細構成を示すブロック図である。711は色変換処理部であり、画像入力部701から入力された画像信号に対して、色変換テーブル等を用いた色変換処理を施す。一般に、ディスプレイで再現できる色再現範囲とプリンタ等の記録装置で再現できる色再現範囲は異なり、さらに記録装置によっても、再現できる色再現範囲は異なる。そのため色変換処理部711では、例えば入力画像の画像信号(例えば、RGB値)から、記録装置の色再現範囲に対応したRGB値への変換が行われる。なお、入力画像の解像度が記録装置すなわち画像出力部703で扱うことのできない解像度である場合には、色変換処理部711で色変換処理が行われる前に、不図示の解像度変換部において所定の解像度への変換が行われる。
712は色分解処理部であり、色変換後のRGB値に対し、例えば色分解ルックアップテーブル(LUT)を参照して、記録装置に搭載されている各色材色の信号値(例えば、CMYK値。以下、インク値と呼ぶ)への変換(色分解)が行われる。さらに、該色分解後の信号値に対して、記録媒体に印刷された画像の階調を良好にするための明度変換処理を施しても良い。
713は中間調処理部であり、色分解された各色材色の画像データを、画像出力部703にて処理可能なビット数に変換する。変換後の画像データは印刷データとして、画像出力部703に入力される。
本実施形態では、上述した記録媒体の法線方向から観察した際に好ましい色再現になるような色補正処理を、色変換処理部711、色分解処理部712、中間調処理部713のいずれか、あるいは、複数を用いて実施する。
●吐出量制御処理
以下、本実施形態における吐出量制御処理の全体について、図8(a)のフローチャートを用いて説明する。
まずS801で3次元形状取得部705において、記録媒体の3次元形状データが取得される。この3次元形状データとしては上述したように、3次元デジタイザ等の測定器で測定された結果でも良いし、既存の3次元のCADデータを利用しても良い。次にS802で傾き検出部704において、S801で取得された3次元形状データに基づき、記録媒体の記録領域の傾きθを検出する。この傾きθとしては上述したように、記録媒体の3次元形状と、記録媒体に対して色材を吐出する際に実際に用いられる記録ヘッドのサイズ、および、該記録ヘッドと記録媒体との相対位置関係と、に基づいて算出される。なお、傾きの検出方法としては周知の方法が適用可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。そしてS803において、S802で検出された傾きθに応じて、後述するように色材の吐出量Iが制御される。ここで吐出量制御とは、画像処理部702における色変換処理、色分解処理、中間調処理、さらには印刷装置における印字制御も含む。以下、本実施形態では色分解処理部712において吐出量制御を行う場合について詳細に説明する。
●色予測による吐出量制御方法
以下、上記S803における色材の吐出量制御の詳細について説明する。本実施形態における吐出量制御は、予め顕微分光測定された単一ドットの色情報(この場合R(h))に基づく色予測によって行われるため、ここではまずその原理について説明する。
まず、記録媒体の記録領域において傾きの無い面に色材を記録した場合(すなわち、記録ヘッドのフェイス面と記録媒体の記録領域が水平である場合)における色情報が、以下の(1)式で与えられる。すなわち(1)式は、傾きの無い面に対し、ある画像信号に対応して色材が記録された際の色(式中では、分光反射率として記述)を表す式である。
Rref=R(h)SN+Rb(1−SN) ・・・(1)
ここで(1)式について、図9を用いて説明する。図9は、記録媒体901に色材のドット902が複数個定着した様子を示す模式図である。1個のドット902の所定領域に対する面積率をSとし、該所定領域に定着したドット数をNとする。(1)式は、色材面積率と反射率との関係を示す、Murray-DavisやNeugebauerの周知の予測式に基づいた式である。つまり、傾きの無い面に対してある画像信号に対応した分光反射率Rrefは、色材の被覆率(S×N)と色材反射率R(h)、および記録媒体の露出面積率(1−S×N)と記録媒体の反射率Rbの線形和で表される。
なお、色材反射率R(h)は、記録された色材の記録媒体面からの高さhに応じた反射率である。この色材反射率R(h)は、例えば、予め単一ドットについての高さhを変更しながらその反射率R(h)を顕微分光測定して作成されたデータベース(以下、DB)より取得される。また、周知のKubelka-Munk理論等を用いて反射率R(h)を予測しても良い。
次に、記録領域の傾き情報に基づいて、上記画像信号を傾いた面に記録した場合における色情報が、以下の(2)式で与えられる。すなわち(2)式は、記録ヘッドのフェイス面に水平な面に対して所定の角度θだけ傾いた面に記録した場合の色を予測する式である。
Rθ=R(h')S'N'+Rb(1−S'N') ・・・(2)
(2)式において、Rθは傾きθの面に記録した際のある画像信号に対応した分光反射率である。R(h')は、(1)式の場合と同一の色材でその高さがh'である場合の分光反射率であり、上記R(h)のDBより取得される。S'は、傾きθに伴って(1/cosθ)倍に広がった色材の所定領域に対する面積率である。N'は、該所定領域に定着したドット数である。
なお、ここではある所定の色材を用いた場合の例を示したが、別の色材も使われる場合には同様に面積率を求めておいて、それぞれの色材の反射率との線形結合を行えば良い。また、色材同士が重なり合う場合には、重なった場合の色を予め顕微分光測定しておいても構わないし、各色材の反射率から、Lambert-Beerの法則、Kubelka-Munk理論等を用いて分光反射率を求めても構わない。尚、色予測式は(1)式および(2)式に限定されるものではなく、その他の予測式を利用しても構わない。
本実施形態では傾きの無い面とある面とで同一の色再現になるような補正処理を実現するために、上記(1)式で予測した色情報Rrefと、(2)式で予測した色情報Rθとが等しくなるように色補正を行う。
ここで、θ傾いた面に記録された色材の面積率S'は、傾きの無い面に記録された色材の面積率Sの(1/cosθ)倍であることから、S'=(1/cos)Sと記述できる。さらに、図1(a)のドット103と図1(b)のドット107は同一体積であると考えられるため、ドット107の高さh'(図1(b)の108)は、h'=(S/S')hと記述できる。以上のことから、上記(2)式は、以下の(3)式のように変形可能である。
Rθ=R(hcosθ)・(S/cosθ)・N'+Rb・{1−(S/cosθ)N'} ・・・(3)
すると、(1)式と(3)式を用いて、Rref=RθとなるようなNとN'の関係は以下の(4)式のように記述できる。
N'/N={(R(h)−Rb)cosθ}/{R(hcosθ)−Rb} ・・・(4)
すなわち本実施形態では、(4)式により、第1の色情報Rθに対応する記録量と第2の色情報Rrefに対応する記録量との比N'/Nを算出し、これを補正係数として色補正を行う。
●吐出量制御処理の詳細
以下、上記S803における色材の吐出量制御の流れについて、図8(b)のフローチャートを用いて詳細に説明する。上述したように、本実施形態における吐出量制御は、色分解処理部712において上記(4)式に示す補正係数N'/Nを用いて行われる。
まずS811において、補正係数N'/Nを算出するのに必要となるパラメータを取得する。具体的には、まず画像出力部703で形成される単一ドットの高さh、および記録媒体(すなわち下地)の分光反射率Rbを取得する。このドット高さhは、一般的な表面形状測定器等によって計測可能であり、画像出力部703に対し、色材の種類および記録媒体の種類に応じたデータベース(以下、DB)として予め保持されている。下地の分光反射率Rbについても同様に、記録媒体の種類に応じて予め保持されている。
そしてS812において、上記パラメータ(h,Rb)と、記録領域の傾きθ、高さhである単一ドットの分光反射率R(h)を変数として、上記(4)式の関数によって補正係数N'/Nを算出する。
そしてS813で、傾きの無い面に記録する際のインク値Iに対し、傾きのある面に記録する際のインク値I'を、I'=(N'/N)Iとなるように補正する。これにより、記録媒体の傾きによらず同一の色再現が実現される。
以上説明したように本実施形態によれば、傾きのある面に色材を形成した際に得られる色予測値(第1の色情報)が、該記録領域に傾きが無い場合に同色材を形成した際に得られる色予測値(第2の色情報)に等しくなるように、色材の吐出量を制御する。このような吐出量制御すなわち記録量制御が行われることにより、任意の3次元曲面を有する立体に対し、その表面を法線方向から観察した際に好ましい色再現となるように画像を形成することができる。また、インクジェットプリンタを使用可能とすることにより、特別に版を形成することなく、任意の画像を形成することができる。
なお本実施形態では、S813で補正係数N'/Nを算出してインク値Iを補正する例を示した。しかしながら本発明はこのように補正係数N'/Nをリアルタイムに算出する例に限らず、予め補正係数N'/Nを補正テーブルとして保持しておくことによって、処理の高速化が望める。すなわちこの場合、ドット高さhと傾きθに基づき、対応する補正係数N'/Nが補正テーブルより取得される。
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、傾斜面に色材を記録した際の色予測結果に基づいて、該傾斜面に対する色補正を行う例を示した。第2実施形態においては、予め複数の傾斜面に記録したパッチ画像の測色値に基づいて色補正テーブルを作成し、該色補正テーブルに基づいた色補正を行う例を示す。尚、装置構成および図10のフローチャートに示した全体処理については上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
●吐出量制御処理
上述した第1実施形態では、色分解処理部712で吐出量制御を行う場合について説明した。第2実施形態では、色変換処理部711で吐出量制御を行う例を示すが、その制御手順の概要は第1実施形態で示した図8(a)と同様である。
第2実施形態では、S803の吐出量制御処理において、予め作成された色補正テーブルに基づく色補正を行う。ここで、この色補正テーブルの作成処理の手順を図10に示し、説明する。
まずS1001において、記録媒体の記録領域において傾きの無い面に色材を記録した場合(すなわち、記録ヘッドのフェイス面と記録媒体の記録領域が水平である場合)における、色情報を取得する。この色情報の取得方法としては、記録媒体にRGB等の画像信号に対応したパッチ画像を予め記録しておき、市販の測色器等で測色すれば良い。
次にS1002において、記録領域の傾いた面に予め記録したパッチ画像の色を、測色器によって測色する。なお、ここで測色対象となるパッチ画像はS1001で傾きの無い面に記録したパッチ画像と同じであり、また、その測色もS1001と同じ測色器によって行う。また、この測色は傾斜角の異なる複数の傾斜面についてそれぞれ行う。
なお、S1001およびS1002における測色は、記録領域の法線方向から行うとする。これにより、観察角度が特に規定されない3次元形状の記録媒体(例えばマグカップ等)に対し、どの角度から観察しても好ましい色再現が実現される。但し、観察角度がある程度規定されるような記録媒体(例えば自動車の運転席パネル等)に対しては、所定の角度から観察した場合にのみ、好ましい色再現となれば良い。したがってこのような場合には、S1001およびS1002における記録領域の測色を、所定の観察角度から行うようにする。
次にS1003において、S1001にて取得した傾きの無い面における色情報と、S1002にて測色された傾きのある面における色情報と、に基づいて、色情報テーブルを作成する。ここで図11(a)に、複数の傾斜角(図11(a)の例では0度〜80度)について作成された色情報テーブルの一例を示す。なお、ここでは測色された色情報の例としてCIE XYZ形式を記載するが、CIE L*a*b*や、L*C*h*等を用いても構わない。
そしてS1004において、S1003で作成された色情報テーブルに基づき、実際の色補正に使用される色補正テーブルを作成する。ここで、第2実施形態で作成される色補正テーブルについて説明する。なお、第2実施形態での色補正処理も第1実施形態と同様に、傾きの無い面と傾きのある面とで同一の色再現になるような補正を行うものである。
図11(b)は、図11(a)に示す色情報テーブルに基づく、入力画像信号毎の、傾斜角度と測色値(XYZ)のY値との関係を表すグラフである。ここでは簡単のため、(R,G,B)=(64,64,64)のライン1502と、(R,G,B)=(96,96,96)のライン1501のみを示した。例えばライン1501によれば、(R,G,B)=(96,96,96)のパッチデータを傾斜角0度の平面へ記録した場合にはY=28が得られるが、これを傾斜角60度の面に記録すると、Y=43となり、すなわち明るい画像となってしまう。そこで第2実施形態では、(R,G,B)=(96,96,96)のパッチデータを傾斜角60度の面に記録する場合にも平面と同様のY=28が得られるように、色変換を行う。すなわち、傾斜角60度で(R,G,B)=(96,96,96)のパッチデータを記録する場合、傾斜角0度相当のY=28が得られるように、(R,G,B)=(64,64,64)となるように色変換を行う。これにより、傾斜角のある場合と無い場合とで色再現を一致させることが可能になる。
S1304では以下に示す(5)式によって、傾斜角θの面に記録した際のXθYθZθ、傾斜角0度の面に記録した際のX0Y0Z0から、それぞれの差分すなわち変化量ΔXθ,ΔYθ,ΔZθを求めることができる。第2実施形態ではこの変化量ΔXθ,ΔYθ,ΔZθにより、測色対象とした全傾きに対する色補正テーブルを作成する。
Xθ=X0+ΔXθ
Yθ=Y0+ΔYθ ・・・(5)
Zθ=Z0+ΔZθ
なお第2実施形態では、図10のS1003で図11(a)に示すような色情報テーブルを作成し、S1004で該色情報テーブルに基づく色補正テーブルを作成する例を示したが、これらを1ステップとして処理することももちろん可能である。
以上説明したように第2実施形態によれば、予め複数の傾斜角面に記録したパッチ画像の測色値に基づいて色補正テーブルを作成する。これにより、任意の3次元曲面を有する立体に対し、その表面を法線方向または所定の観察方向から観察した際に好ましい色再現となるように画像を形成することができる。また、インクジェットプリンタ等を使用可能とすることにより、特別に版を形成することなく、任意の画像を形成することができる。
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

Claims (12)

  1. 3次元曲面を有する記録媒体上を記録ヘッドが走査することによって該記録媒体上に色材を記録し、画像を形成する画像形成装置であって、
    形成対象となる画像データを入力する画像入力手段と、
    前記記録媒体の3次元形状データを取得する形状取得手段と、
    前記3次元形状データに基づいて、前記記録媒体上における記録領域の、前記記録ヘッドのフェイス面に対する傾きを示す傾き情報を検出する傾き検出手段と、
    前記傾き情報に基づいて、前記画像データに対する色材の記録量を制御する記録量制御手段と、を有し、
    前記記録量制御手段は、前記記録領域に前記画像データを形成した際に得られる第1の色情報が、前記記録領域が前記記録ヘッドのフェイス面に対して水平である場合に前記画像データを形成した際に得られる第2の色情報に等しくなるように、前記画像データに対する色材の記録量を制御することを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記第1および第2の色情報は、色予測によって得られる値であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記第1および第2の色情報は、分光反射率を示す値であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記記録量制御手段は、
    前記第1の色情報に対応する記録量と前記第2の色情報に対応する記録量との比を示す補正係数を算出し、該補正係数に基づいて前記画像データに対する色材の記録量を補正することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
  5. 前記記録量制御手段は、
    前記傾き情報と、前記記録媒体上に前記色材によって形成される単一ドットの高さ情報、該単一ドットの分光反射率の情報、および前記記録媒体の分光反射率の情報と、を変数とした関数によって、前記補正係数を算出することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
  6. 前記記録量制御手段は、
    前記記録ヘッドのフェイス面に対する前記記録媒体の複数の傾斜角のそれぞれについて、前記第1の色情報に対応する記録量と前記第2の色情報に対応する記録量との比を示す補正係数を保持した補正テーブルを用いて、前記画像データに対する色材の記録量を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成装置。
  7. 前記傾き検出手段は、
    前記記録媒体上における記録領域を平面に近似し、該平面が前記記録ヘッドのフェイス面とのなす角度を前記傾き情報として検出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記第1および第2の色情報は、測色によって得られる値であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  9. 前記記録量制御手段は、前記記録ヘッドのフェイス面に対する前記記録媒体の複数の傾斜角のそれぞれについて、前記第1の色情報と前記第2の色情報の差分を保持した補正テーブルを用いて、前記画像データに対する色材の記録量を制御することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記記録ヘッドは色材を吐出することによって前記記録媒体上に画像を形成し、
    前記記録量制御手段は、前記記録ヘッドから吐出される色材の吐出量を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  11. 3次元曲面を有する記録媒体上を記録ヘッドが走査することによって該記録媒体上に色材を記録し、画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
    形成対象となる画像データを入力する画像入力ステップと、
    前記記録媒体の3次元形状データを取得する形状取得ステップと、
    前記3次元形状データに基づいて、前記記録媒体上における記録領域の、前記記録ヘッドのフェイス面に対する傾きを示す傾き情報を検出する傾き検出ステップと、
    前記傾き情報に基づいて、前記画像データに対する色材の記録量を制御する記録量制御ステップと、を有し、
    前記記録量制御ステップにおいては、前記記録領域に前記画像データを形成した際に得られる第1の色情報が、前記記録領域が前記記録ヘッドのフェイス面に対して水平である場合に前記画像データを形成した際に得られる第2の色情報に等しくなるように、前記画像データに対する色材の記録量を制御することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
  12. コンピュータで実行されることにより、該コンピュータを請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置の各手段として機能させるためのプログラム。
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