JP2011124415A - 露光装置、露光方法、及びデバイス製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】露光不良の発生を抑制できる露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置は、液体を介して露光光で基板を露光する。露光装置は、露光光を射出する射出面を有し、射出面側に液浸空間が形成される光学部材と、射出面との間に液浸空間を形成可能であり、液浸空間の液体に対して親液性の第1領域を含む上面を有する可動部材とを備える。露光装置は、基板の非露光期間において、第1領域と液浸空間の液体とが接触しない非接液状態が第1時間を経過するとき、射出面と第1領域との間に液浸空間を形成して第1領域と液浸空間の液体とが接触する接液状態に変化させる。
【選択図】図6
Description
本発明は、露光装置、露光方法、及びデバイス製造方法に関する。
半導体デバイス、電子デバイス等のマイクロデバイスの製造工程において、例えば下記特許文献に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置が使用される。
液浸露光装置において、例えば液体の気化に起因して液体が付着する部材の温度変化が発生する可能性がある。例えば計測装置を構成する部材に温度変化が発生すると、計測精度が低下したり、その部材が熱変形したりする可能性がある。その結果、露光不良が発生したり、不良デバイスが発生したりする可能性がある。
本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる露光装置、及び露光方法を提供することを目的とする。また本発明の態様は、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、露光光を射出する射出面を有し、射出面側に液浸空間が形成される光学部材と、射出面との間に液浸空間を形成可能であり、液浸空間の液体に対して親液性の第1領域を含む上面を有する可動部材と、を備え、基板の非露光期間において、第1領域と液浸空間の液体とが接触しない非接液状態が第1時間を経過するとき、射出面と第1領域との間に液浸空間を形成して第1領域と液浸空間の液体とが接触する接液状態に変化させる露光装置が提供される。
本発明の第2の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、射出面を有する光学部材と、射出面との間に液浸空間を形成可能であり、液体に対して親液性の第1領域を含む上面を有する可動部材と、を備え、基板の非露光期間において、射出面と第1領域以外の上面の所定領域との間に液浸空間が形成される第1状態と、射出面と第1領域との間に液浸空間が形成される第2状態とを繰り返す露光装置が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、第1、第2の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
本発明の第4の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光することと、基板の非露光期間において、露光光が照射可能な位置に移動可能な可動部材の上面の液体に対して親液性の第1領域と液体とが接触しない非接液状態が第1時間を経過するとき、光学部材の射出面と第1領域との間に液体を保持して液浸空間を形成して第1領域と液体とが接触する接液状態に変化させることと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第5の態様に従えば、液体を介して露光光で基板を露光する露光することと、基板の非露光期間において、光学部材の射出面と露光光が照射可能な位置に移動可能な可動部材の上面の液体に対して親液性の第1領域以外の所定領域との間に液浸空間が形成される第1状態と、射出面と第1領域との間に液浸空間が形成される第2状態とを繰り返すことと、を含む露光方法が提供される。
本発明の第6の態様に従えば、第4、第5の態様の露光方法を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含む露光方法が提供される。
本発明の態様によれば、露光不良の発生を抑制できる。また本発明の態様によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
図1は、本実施形態に係る露光装置EXを示す概略構成図である。本実施形態の露光装置EXは、液体LQを介して露光光ELで基板Pを露光する液浸露光装置である。本実施形態においては、液体LQとして、水(純水)を用いる。
図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、基板Pを保持せずに、露光光ELを計測する計測部材Cを保持して移動可能な計測ステージ3と、マスクステージ1を移動する駆動システム4と、基板ステージ2を移動する駆動システム5と、計測ステージ3を移動する駆動システム6と、マスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板Pに投影する投影光学系PLと、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能な液浸部材7と、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置8と、制御装置8に接続され、時間の計測を実行可能なタイマー100と、制御装置8に接続され、露光に関する各種の情報を記憶する記憶装置101とを備えている。
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。マスクMは、例えばガラス板等の透明板と、その透明板上にクロム等の遮光材料を用いて形成されたパターンとを有する透過型マスクを含む。なお、マスクMとして、反射型マスクを用いることもできる。
基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えば半導体ウエハ等の基材と、その基材上に形成された感光膜とを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。また、基板Pが、感光膜に加えて別の膜を含んでもよい。例えば、基板Pが、反射防止膜を含んでもよいし、感光膜を保護する保護膜(トップコート膜)を含んでもよい。
また、露光装置EXは、基板Pが処理される空間102の環境(温度、湿度、圧力、及びクリーン度の少なくとも一つ)を調整するチャンバ装置103を備えている。基板ステージ2及び計測ステージ3は、空間102を移動する。チャンバ装置103は、空間102を形成するチャンバ部材104と、その空間102の環境を調整する空調システム105とを有する。空調システム105は、空間102に気体を供給して、その空間102の環境を調整する。本実施形態においては、少なくとも基板ステージ2、計測ステージ3、及び投影光学系PLの終端光学素子12が空間102に配置される。本実施形態においては、空間102に、基板ステージ2、計測ステージ3、及び投影光学系PLのみならず、マスクステージ1、及び照明系ILの少なくとも一部も配置される。露光光ELは、空間102の少なくとも一部を進行する。
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を、均一な照度分布の露光光ELで照明する。本実施形態において、照明系ILは、照明領域IRの大きさ及び形状を調整可能なブラインド装置30を備えている。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
マスクステージ1は、マスクMを保持した状態で、照明領域IRを含むベース部材9のガイド面9G上を移動可能である。駆動システム4は、ガイド面9G上でマスクステージ1を移動するための平面モータを含む。平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、マスクステージ1に配置された可動子と、ベース部材9に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、マスクステージ1は、駆動システム4の作動により、ガイド面9G上において、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影領域PRは、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Pの少なくとも一部に、マスクMのパターンの像を所定の投影倍率で投影する。本実施形態の投影光学系PLは、その投影倍率が例えば1/4、1/5、又は1/8等の縮小系である。なお、投影光学系PLは、等倍系及び拡大系のいずれでもよい。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸は、Z軸と平行である。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
基板ステージ2は、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に移動可能である。基板ステージ2は、基板Pを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材10のガイド面10G上を移動可能である。計測ステージ3は、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に移動可能である。計測ステージ3は、計測部材Cを保持した状態で、投影領域PRを含むベース部材10のガイド面10G上を移動可能である。基板ステージ2と計測ステージ3とは、ガイド面10G上を独立して移動可能である。
基板ステージ2を移動するための駆動システム5は、ガイド面10G上で基板ステージ2を移動するための平面モータを含む。平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、基板ステージ2に配置された可動子と、ベース部材10に配置された固定子とを有する。同様に、計測ステージ3を移動するための駆動システム6は、平面モータを含み、計測ステージ3に配置された可動子と、ベース部材10に配置された固定子とを有する。
本実施形態において、マスクステージ1、基板ステージ2、及び計測ステージ3の位置は、レーザ干渉計ユニット11A、11Bを含む干渉計システム11によって計測される。レーザ干渉計ユニット11Aは、マスクステージ1に配置された計測ミラー1Rを用いて、マスクステージ1の位置を計測可能である。レーザ干渉計ユニット11Bは、基板ステージ2に配置された計測ミラー2R、及び計測ステージ3に配置された計測ミラー3Rを用いて、基板ステージ2及び計測ステージ3それぞれの位置を計測可能である。基板Pの露光処理を実行するとき、あるいは所定の計測処理を実行するとき、制御装置8は、干渉計システム11の計測結果に基づいて、駆動システム4,5,6を作動し、マスクステージ1(マスクM)、基板ステージ2(基板P)、及び計測ステージ3(計測部材C)の位置制御を実行する。
液浸部材7は、露光光ELの光路の少なくとも一部が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成可能である。液浸空間LSは、液体LQで満たされた部分(空間、領域)である。液浸部材7は、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い終端光学素子12の近傍に配置される。本実施形態において、液浸部材7は、環状の部材であり、露光光ELの光路の周囲に配置される。本実施形態においては、液浸部材7の少なくとも一部が、終端光学素子12の周囲に配置される。
終端光学素子12は、投影光学系PLの像面に向けて露光光ELを射出する射出面13を有する。本実施形態において、射出面13側に液浸空間LSが形成される。射出面13から射出される露光光ELは、−Z方向に進行する。射出面13は、露光光ELの進行方向(−Z方向)を向く。本実施形態において、射出面13は、XY平面とほぼ平行な平面である。なお、射出面13がXY平面に対して傾斜していてもよいし、曲面を含んでもよい。
液浸部材7は、少なくとも一部が−Z方向を向く下面14を有する。本実施形態において、射出面13及び下面14は、射出面13から射出される露光光ELが照射可能な位置(投影領域PR)に配置される物体との間で液体LQを保持することができる。液浸空間LSは、射出面13及び下面14の少なくとも一部と投影領域PRに配置される物体との間に保持された液体LQによって形成される。液浸空間LSは、射出面13と、投影領域PRに配置される物体との間の露光光ELの光路が液体LQで満たされるように形成される。
本実施形態において、投影領域PRに配置可能な物体は、投影光学系PLの像面側(終端光学素子12の射出面13側)で投影領域PRに対して移動可能な物体を含む。その物体は、射出面13及び下面14の少なくとも一方と対向可能な上面(表面)を有する。物体の上面は、射出面13との間に液浸空間LSを形成可能である。本実施形態において、物体の上面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。一方側の射出面13及び下面14と、他方側の物体の上面(表面)との間に液体LQが保持されることによって、終端光学素子12と物体との間の露光光ELの光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSが形成される。
本実施形態において、その物体は、基板ステージ2、基板ステージ2に保持された基板P、計測ステージ3、及び計測ステージ3に保持された計測部材Cの少なくとも一つを含む。もちろん、投影領域PRに配置可能な物体は、基板ステージ2、基板ステージ2に保持された基板P、計測ステージ3、及び計測ステージ3に保持された計測部材Cの少なくとも一つに限られない。
本実施形態においては、基板Pに露光光ELが照射されているとき、投影領域PRを含む基板Pの表面の一部の領域が液体LQで覆われるように液浸空間LSが形成される。液体LQの界面(メニスカス、エッジ)LGの少なくとも一部は、液浸部材7の下面14と基板Pの表面との間に形成される。すなわち、本実施形態の露光装置EXは、局所液浸方式を採用する。
本実施形態において、基板ステージ2は、米国特許出願公開第2007/0177125号明細書、米国特許出願公開第2008/0049209号明細書等に開示されているような、基板Pをリリース可能に保持する第1保持部31と、第1保持部31の周囲に配置され、プレート部材Tをリリース可能に保持する第2保持部32とを有する。第1,第2保持部31,32は、ピンチャック機構を有する。プレート部材Tは、第1保持部31に保持された基板Pの周囲に配置される。なお、第1保持部31と第2保持部32の少なくとも一方で使用される保持機構はピンチャック機構に限られない。また、プレート部材Tは基板ステージ2に一体的に形成されていてもよい。
本実施形態において、第1保持部31は、基板Pの表面とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。第2保持部32は、プレート部材Tの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、プレート部材Tを保持する。本実施形態において、第1保持部31に保持された基板Pの表面と第2保持部32に保持されたプレート部材Tの上面とは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。
第1保持部31に保持された基板P、及び第2保持部32に保持されたプレート部材Tは、駆動システム5の作動により基板ステージ2が移動することによって、投影領域PRに対して移動可能である。第1保持部31に保持された基板Pの表面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。第2保持部31に保持されたプレート部材Tの上面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。
図2は、本実施形態に係る計測ステージ3の一例を示す側断面図である。本実施形態において、計測ステージ3は、計測部材Cをリリース可能に保持する第3保持部33と、第3保持部33の周囲に配置され、プレート部材Sをリリース可能に保持する第4保持部34とを有する。第3,第4保持部33,34は、ピンチャック機構を有する。プレート部材Sは、第3保持部33に保持された計測部材Cの周囲に配置される。なお、第3保持部33と第4保持部34の少なくとも一方で使用される保持機構はピンチャック機構に限られない。また、計測部材C及びプレート部材Sの少なくとも一方は計測ステージ3に一体的に形成されていてもよい。
本実施形態において、第3保持部33は、計測部材Cの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、計測部材Cを保持する。第4保持部34は、プレート部材Sの上面とXY平面とがほぼ平行となるように、プレート部材Sを保持する。本実施形態において、第3保持部33に保持された計測部材Cの上面と第4保持部34に保持されたプレート部材Sの上面とは、ほぼ同一平面内に配置される(ほぼ面一である)。
第3保持部33に保持された計測部材C、及び第4保持部34に保持されたプレート部材Sは、駆動システム6の作動により計測ステージ3が移動することによって、投影領域PRに対して移動可能である。第3保持部33に保持された計測部材Cの上面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。第4保持部34に保持されたプレート部材Sの上面は、射出面13及び下面14の少なくとも一部との間に液浸空間LSを形成可能である。
本実施形態において、プレート部材Tの上面は、液体LQに対して撥液性である。また、プレート部材Sの上面も、液体LQに対して撥液性である。液体LQに対するプレート部材T、Sの上面の接触角は、90度以上である。本実施形態において、液体LQに対するプレート部材T、Sの上面の接触角は、110度以上である。本実施形態において、プレート部材Tの上面及びプレート部材Sの上面の少なくとも一方は、PFAの膜の表面を含む。
また、本実施形態において、計測ステージ3は、光センサ35を有する。本実施形態において、計測部材Cは、例えば石英など、露光光ELを透過可能な部材を含み、計測部材Cの少なくとも一部は、露光光ELを透過可能な光透過部を含む。第3保持部33に保持された計測部材Cの上面に照射された露光光ELは、計測部材Cの光透過部を介して、光センサ35に照射される。光センサ35は、終端光学素子12より射出され、計測部材Cの光透過部を介した露光光ELを受光する。
本実施形態において、計測ステージ3は2つの第3保持部33を有し、一方の第3保持部33(33A)は、第1の計測部材C(C1)を保持し、他方の第3保持部33(33B)は、第2の計測部材C(C2)を保持する。第1の計測部材C(C1)は、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書に開示されているような、投影光学系PLによる空間像を計測可能な空間像計測システムの少なくとも一部を構成する。第2の計測部材C(C2)は、例えば米国特許第4465368号明細書に開示されているような、露光光ELの照度むらを計測可能な照度むら計測システムの少なくとも一部を構成する。なお、第1の計測部材C1及び/又は第2の計測部材C2の替わりに、あるいは計測部材C1,C2に加えて他の計測システムの計測部材が計測ステージ3に配置されていてもよい。他の計測システムは、例えば米国特許第6721039号明細書に開示されているような、投影光学系PLの露光光ELの透過率の変動量を計測可能な計測システム、例えば米国特許出願公開第2002/0061469号明細書等に開示されているような、照射量計測システム(照度計測システム)、及び例えば欧州特許第1079223号明細書に開示されているような、波面収差計測システムの少なくとも1つを含む。計測ステージ3に、1つの計測部材C(第3保持部33)を設けるだけでもよい。なお、基板を保持して移動可能な基板ステージと、基板を保持せずに、露光光を計測する計測部材(計測器)を搭載して移動可能な計測ステージとを備えた露光装置の一例が、例えば米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されている。
ここで、以下の説明において、第2保持部32に保持されたプレート部材Tの上面を適宜、基板ステージ2の上面2U、と称し、第3保持部33に保持された計測部材Cの上面及び第4保持部34に保持されたプレート部材Sの上面を合わせて適宜、計測ステージ3の上面3U、と称する。
図3は、計測部材C1の一例を示す側断面図、図4は、計測部材C1の一例を示す平面図である。本実施形態において、計測部材C1は、スリット状の光透過部61を有する。以下の説明において、計測部材C1を適宜、スリット板C1、と称する。
スリット板C1は、透明なガラス板部材64と、ガラス板部材64上に配置された遮光膜62と、少なくとも一部が遮光膜62上に配置された中間膜66と、中間膜66上に配置された撥液膜68とを備えている。
ガラス板部材64は、光透過性の材料で形成されている。ガラス板部材64は、少なくとも露光光ELを透過可能な材料で形成されている。本実施形態において、ガラス板部材64は、合成石英で形成されている。なお、ガラス板部材64が、蛍石で形成されてもよい。
遮光膜62は、露光光ELを遮蔽可能な材料で形成されている。本実施形態において、遮光膜62は、クロムで形成されている。なお、遮光膜62が、クロムとクロム以外の材料とを含んでもよいし、クロム以外の材料で形成されてもよい。
光透過部61は、ガラス板部材64の上面において遮光膜62が形成されていない部分である。遮光膜62は、光透過部61の周囲の少なくとも一部に配置される。本実施形態において、光透過部61は、遮光膜62の少なくとも一部に形成されたスリット状の開口である。遮光膜62は、そのスリット状の開口の周囲に配置される。以下の説明において、光透過部61を適宜、スリット61、と称する。
中間膜66は、スリット61(スリット61から露出したガラス板部材64)、及び遮光膜62を覆うように配置される。中間膜66は、光透過性の材料で形成されている。中間膜66は、少なくとも露光光ELを透過可能である。本実施形態において、スリット61の近傍の遮光膜62の少なくとも一部に段差62Dが設けられている。中間膜66は、遮光膜62の段差62D、及びスリット61における遮光膜62とガラス板部材64との段差の少なくとも一方を小さくする機能を有する。
撥液膜68は、液体LQに対して撥液性である。撥液膜68は、液体LQに対して撥液性の材料(撥液性材料)によって形成される。液体LQに対する撥液膜68の撥液性は、少なくとも中間膜66の撥液性よりも高い。撥液膜68は、中間膜66の上面の一部に配置されている。中間膜66の少なくとも一部は、遮光膜62と撥液膜68との間に配置される。中間膜66と撥液膜68との接着性は、遮光膜62と撥液膜68との接着性よりも高い。
本実施形態において、スリット板C1の上面(計測ステージ3の上面3U)は、液体LQに対して親液性の第1領域81を含む。また、スリット板C1は、そのスリット板C1の上面において第1領域81の周囲の少なくとも一部に配置され、第1領域81よりも液体に対して撥液性の第2領域82を有する。本実施形態において、第2領域82は、第1領域81の周囲に配置される。本実施形態において、第1領域81は、スリット61を含む。
本実施形態において、第2領域82の表面(上面)は、撥液膜68の表面である。本実施形態において、第1領域81は、撥液膜68が存在しない領域を含む。本実施形態において、撥液膜68の少なくとも一部に開口が形成されている。第1領域81は、撥液膜68に形成された開口の内側の領域を含む。すなわち、撥液膜68は、第1領域81を囲むように形成される。
撥液膜68の開口の内側に、中間膜66及びスリット61が配置される。撥液膜68の開口の内側において、中間膜66の表面が露出する。本実施形態において、第1領域81の表面(上面)は、中間膜66の表面である。
液体LQに対する第1領域81(中間膜66)の表面の接触角は、90度よりも小さい。また、液体LQに対する第2領域82(撥液膜68)の表面の接触角は、90度以上である。本実施形態において、液体LQに対する第1領域81(中間膜66)の表面の接触角は約20〜30°である。また、液体LQに対する第2領域82(撥液膜68)の表面の接触角は、約105°である。
本実施形態において、中間膜66は、例えばSiO2(液化硬化SiO2)によって形成されている。本実施形態において、撥液膜68は、フッ素を含む材料(フッ素系樹脂材料)で形成されている。
撥液膜68が設けられていない第1領域81は、所定の大きさ以下に設定されている。図4に示すように、本実施形態においては、第1領域81は略円形状であり、その直径Dは1mm以下に設定されている。
なお、スリット61の長さは10〜15μm程度、幅は0.2μm程度の微小なものである。また、図では、X軸方向を長手方向とするスリット61が1つだけ図示されているが、実際には、X軸方向を長手方向とするスリットとY軸方向を長手方向とするスリットとがそれぞれ複数ずつ設けられている。そして、それら複数のスリットが第1領域81内に配置されている。
なお、スリット61は、例えばガラス板部材64の上面に遮光膜62を形成した後、その遮光膜62の少なくとも一部をエッチング処理することで形成可能である。中間膜66は、スリット61及び遮光膜62の上面に形成される。第1領域81は、中間膜66の上面に撥液膜68を形成した後、その撥液膜68の一部(第1領域81に対応する領域の撥液膜)をエッチング処理することで形成可能である。なお、第1領域81に対応する中間膜66の上面に撥液膜68を塗布せず、第2領域82に対応する中間膜66の上面のみに撥液膜68を塗布することによって、第1領域81を形成するようにしてもよい。
図5は、本実施形態に係る液浸部材7の一例を示す側断面図である。なお、図5を用いる説明においては、投影領域PR(終端光学素子12及び液浸部材7と対向する位置)に基板Pが配置される場合を例にして説明するが、上述のように、基板ステージ2(プレート部材T)、及び計測ステージ3(プレート部材S、計測部材C)を配置することもできる。
図5に示すように、液浸部材7は、射出面13と対向する位置に開口7Kを有する。射出面13から射出された露光光ELは、開口7Kを通過して、基板Pに照射可能である。本実施形態において、液浸部材7の下面14は、開口7Kの周囲に配置された平坦面7Hを含む。
また、液浸部材7は、液体LQを供給可能な供給口15と、液体LQを回収可能な回収口16とを備えている。供給口15は、射出面13から射出される露光光ELの光路の近傍において、その光路に面するように配置されている。供給口15は、流路17を介して、液体供給装置18と接続されている。液体供給装置18は、清浄で温度調整された液体LQを送出可能である。流路17は、液浸部材7の内部に形成された供給流路、及びその供給流路と液体供給装置18とを接続する供給管で形成される流路を含む。液体供給装置18から送出された液体LQは、流路17を介して供給口15に供給される。
回収口16は、液浸部材7の下面14と対向する物体上の液体LQの少なくとも一部を回収可能である。本実施形態においては、回収口16は、露光光ELが通過する開口7Kの周囲に配置されている。回収口16は、物体の表面と対向する液浸部材7の所定位置に配置されている。回収口16には、複数の孔(openingsあるいはpores)を含むプレート状の多孔部材19が配置されている。なお、回収口16に、網目状に多数の小さい孔が形成された多孔部材であるメッシュフィルタが配置されてもよい。また、回収口16に多孔部材19が配置されていなくてもよい。本実施形態において、液浸部材7の下面14の少なくとも一部は、多孔部材19の下面を含む。回収口16は、流路20を介して、液体回収装置21と接続されている。液体回収装置21は、回収口16を真空システムに接続可能であり、回収口16を介して液体LQを吸引可能である。流路20は、液浸部材7の内部に形成された回収流路、及びその回収流路と液体回収装置21とを接続する回収管で形成される流路を含む。回収口16から回収された液体LQは、流路20を介して、液体回収装置21に回収される。
本実施形態においては、制御装置8は、供給口15からの液体LQの供給動作と並行して、回収口16からの液体LQの回収動作を実行することによって、一方側の終端光学素子12及び液浸部材7と、他方側の物体との間に液体LQで液浸空間LSを形成可能である。
なお、液浸部材7として、例えば米国特許出願公開第2007/0132976号明細書、欧州特許出願公開第1768170号明細書に開示されているような液浸部材(ノズル部材)を用いることができる。
次に、上述の構成を有する露光装置EXを用いて基板Pを露光する方法の一例について説明する。
本実施形態において、制御装置8は、ロット毎に基板Pを露光する。ロットとは、同一条件で基板Pを露光する場合の処理単位をいう。1つのロットは、例えば25枚の基板Pを含む。本実施形態において、制御装置8は、少なくとも1つのロットに含まれる複数の基板Pを順次露光する。本実施形態において、露光装置EXは、FOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる基板収容装置に収容されている1ロット分(例えば25枚)の基板に対する処理を順次行う。なお、1ロット分の基板Pの数は、25枚に限られない。また、制御装置8は、複数のロットそれぞれの基板Pを連続して処理してもよい。
以下、図6のフローチャート、及び図7〜図13の模式図を参照して説明する。制御装置8は、ロットの基板Pの露光を開始する(ステップS1)。
制御装置8は、ロット内の最初の基板Pを露光するために、露光前の基板Pを第1保持部31に搬入(ロード)する処理を実行する(ステップS2)。制御装置8は、露光前の基板Pを第1保持部31に搬入(ロード)するために、図7に示すように、液浸部材7から離れた基板ステージ2を基板交換位置CPに移動する。なお、例えば先のロットの露光後の基板Pが第1保持部31に保持されている場合、その露光後の基板Pが第1保持部31から搬出(アンロード)する処理が実行された後、露光前の基板Pを第1保持部31に搬入(ロード)する処理が実行される。
基板交換位置CPは、基板Pの交換処理が実行可能な位置である。基板Pの交換処理は、搬送装置36を用いて、第1保持部31に保持された露光後の基板Pを第1保持部31から搬出(アンロード)する処理、及び第1保持部31に露光前の基板Pを搬入(ロード)する処理の少なくとも一方を含む。制御装置8は、液浸部材7から離れた基板交換位置CPに基板ステージ2を移動して、基板Pの交換処理を実行する。
基板ステージ2が液浸部材7から離れている期間の少なくとも一部において、制御装置8は、計測ステージ3を液浸部材7に対して所定位置に配置して、終端光学素子12及び液浸部材7と計測ステージ3の上面3Uの所定領域3Pとの間で液体LQを保持して、液浸空間LSを形成する。上述のように、上面3Uは、液体LQに対して撥液性であり、所定領域3Pも、液体LQに対して撥液性である。
図8は、液浸部材7と所定領域3Pとの間に液体LQ保持されている状態を模式的に示す平面図である。所定領域3Pは、第1領域81及び第2領域82以外の領域である。図8に示すように、本実施形態において、所定領域3Pは、プレート部材Sの上面3Uの一部の領域である。
ここで、以下の説明において、液浸部材7と計測ステージ3の所定領域3Pとの間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成されるときの計測ステージ3の位置を適宜、待機位置SP、と称する。
また、基板ステージ2が液浸部材7から離れた期間の少なくとも一部において、必要に応じて、計測部材Cを用いる計測処理が実行される(ステップS3)。計測部材Cを用いる計測処理を実行するとき、制御装置8は、終端光学素子12及び液浸部材7と計測ステージ3とを対向させ、終端光学素子12と計測部材Cとの間の光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成する。制御装置8は、投影光学系PL及び液体LQを介して計測部材Cに露光光ELを照射して、計測部材Cを用いる計測処理を実行する。その計測処理の結果は、基板Pの露光処理に反映される。
図9は、スリット板(第1計測部材)C1を用いて計測処理を実行している状態の一例を示す図である。なお、図9において、液浸部材7の図示は省略してある。スリット板C1を用いる計測処理を実行するとき、制御装置8は、終端光学素子12及び液浸部材7とスリット板C1とを対向させ、終端光学素子12とスリット板C1との間の光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成する。制御装置8は、投影光学系PL及び液体LQを介してスリット板C1に露光光ELを照射して、スリット板C1を用いる計測処理を実行する。なお、スリット板C1を用いる計測処理が実行されるとき、マスクステージ1には、空間像計測用パターンを有する計測用マスクが保持される。
本実施形態において、スリット板C1を用いる計測処理を実行するとき、液浸空間LSは、射出面13及び下面14の少なくとも一部と、第1領域81及び第2領域82の少なくとも一部との間に形成される。本実施形態において、スリット板C1を用いる計測処理を実行するとき、液浸空間LSの液体LQの界面は、下面14と第2領域82との間に配置される。すなわち、液浸空間LSは、スリット板C1の第1領域81、及び第2領域82の少なくとも一部を覆うように形成される。
液浸空間LSが形成された状態で、制御装置8は、照明系ILより露光光ELを射出する。露光光ELは、計測用マスク、投影光学系PL、及び液浸空間LSの液体LQを通過した後、スリット板C1に照射される。
本実施形態において、スリット板C1を用いる計測処理を実行するとき、スリット61を含む第1領域81に露光光ELが照射される。第2領域82には、露光光ELは照射されない。本実施形態においては、第1領域81の表面に液浸空間LSの液体LQが接触された状態で、その第1領域81に露光光ELが照射される。
上述のように、本実施形態において、照明系ILは、照明領域IRの大きさ及び形状を調整可能なブラインド装置30を備えている。照明領域IRの大きさ及び形状が調整されることによって、投影領域PRの大きさ及び形状も調整される。本実施形態において、制御装置8は、照明系ILのブラインド装置30を用いて、計測用マスク上の照明領域IR、ひいてはスリット板C1上の投影領域PRの大きさを調整する。制御装置8は、露光光ELが第1領域81の内側のみに照射され、第2領域82には露光光ELが照射されないように、ブラインド装置30を調整する。
第1領域81に配置されているスリット61を通過した露光光ELは、空間像計測システムの光センサ35に受光される。光センサ35は、受光量に応じた光電変換信号(光量信号)を制御装置8に出力する。制御装置8は、光センサ35の受光結果に基づいて所定の演算処理を行い、投影光学系PL及び液体LQを介した結像特性を求める。このように、制御装置8は、液浸空間LSの液体LQを介してスリット61に露光光ELを照射することによって、計測処理を行う。
本実施形態において、撥液膜68は、露光光EL(紫外光)に対して耐性を有しているものの、露光光EL(紫外光)の照射により、その撥液性が低下したり、あるいはその表面状態が劣化したりする等、その品質が低下する可能性がある。そのため、露光光ELが照射されるスリット61を覆うように撥液膜68を設けた場合、露光光ELの照射により、その露光光ELの照射された部分の撥液膜68の品質が劣化し、その後の計測処理に影響を及ぼしたり、計測精度が低下したり可能性がある。
本実施形態においては、露光光ELが照射されるスリット61を含む第1領域81には撥液膜68が設けられていないので、上述のような不具合の発生を防止することができる。
一方、本実施形態においては、第2領域82を含む計測ステージ3の上面3Uの大部分の領域が液体LQに対して撥液性であるため、計測ステージ3上から液浸空間LSが退いた後にも、液体LQの残留を抑制することができる。
スリット板C1を用いる計測処理が終了した後、図10に示すように、制御装置8は、駆動システム6を用いて、終端光学素子12及び液浸部材7に対して計測ステージ3をXY平面内において移動し、液浸空間LSを第1領域81及び第2領域82の外側の領域に移動する。なお、図10において、液浸部材7の図示は省略してある。すなわち、制御装置8は、計測ステージ3を移動して、第1領域81及び第2領域82から液浸空間LSを退かす。本実施形態においては、第1領域81が液体LQに対して親液性なので、スリット板C1上から液浸空間LSが退いた後、その第1領域81に液体LQが残留する。
露光前の基板Pが第1保持部31にロードされ、計測部材Cを用いる計測処理が終了した後、制御装置8は、基板ステージ2を投影領域PRに移動して、終端光学素子12及び液浸部材7と基板ステージ2(基板P)との間に液浸空間LSを形成する。本実施形態においては、例えば米国特許出願公開第2006/0023186号明細書、米国特許出願公開第2007/0127006号明細書等に開示されているように、制御装置8は、液浸空間LSが形成された状態で、基板ステージ2及び計測ステージ3の少なくとも一方と終端光学素子12及び液浸部材7との間に液体LQを保持可能な空間を形成し続けるように、基板ステージ2の上面2Uと計測ステージ3の上面3Uとを接近又は接触させた状態で、基板ステージ2の上面2U及び計測ステージ3の上面3Uの少なくとも一方と終端光学素子12の射出面13及び液浸部材7の下面14とを対向させつつ、終端光学素子12及び液浸部材7に対して、基板ステージ2と計測ステージ3とをXY方向に移動させることができる。これにより、制御装置8は、終端光学素子12及び液浸部材7と基板ステージ2との間に液浸空間LSが形成可能な状態、及び終端光学素子12及び液浸部材7と計測ステージ3との間に液浸空間LSが形成可能な状態の一方から他方へ変化させることができる。すなわち、制御装置8は、液体LQの漏出を抑制しつつ、液浸部材7の下面14側に形成された液浸空間LSが基板ステージ2の上面2U上と計測ステージ3の上面3U上との間を移動するように、基板ステージ2及び計測ステージ3を液浸部材7に対して移動させることができる。
以下の説明において、基板ステージ2の上面2Uと計測ステージ3の上面3Uとを接近又は接触させた状態で、終端光学素子12及び液浸部材7に対して、基板ステージ2と計測ステージ3とをXY方向に同期移動させる動作を適宜、スクラム移動、と称する。
本実施形態においては、スクラム移動を実行するとき、図11に示すように、制御装置8は、基板ステージ2の+Y側の側面2Fと、その基板ステージ2と対向可能な計測ステージ3の−Y側の側面3Fとを所定のギャップを介して対向させる。そして、制御装置8は、そのギャップを維持した状態で、基板ステージ2及び計測ステージ3を同時に移動(同期移動)させる。本実施形態においては、スクラム移動を実行するとき、制御装置8は、基板ステージ2の上面2Uと計測ステージ3の上面3Uとで実質的に一つの連続面が形成されるように、基板ステージ2の上面2Uと計測ステージ3の上面3Uとの位置関係を調整する。
スクラム移動を実行して、終端光学素子12及び液浸部材7と基板ステージ2(基板P)との間に液浸空間LSが形成された後、制御装置8は、基板Pの露光処理を開始する(ステップS4)。基板Pの露光処理を実行するとき、制御装置8は、終端光学素子12及び液浸部材7と基板ステージ2とを対向させ、終端光学素子12と基板Pとの間の光路が液体LQで満たされるように液浸空間LSを形成する。制御装置8は、照明系ILにより露光光ELで照明されたマスクMからの露光光ELを投影光学系PL及び液体LQを介して基板Pに照射する。これにより、基板Pは露光光ELで露光され、マスクMのパターンの像が基板Pに投影される。
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMのパターンの像を基板Pに投影する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。制御装置8は、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、投影光学系PLと基板P上の液浸空間LSの液体LQとを介して基板Pに露光光ELを照射する。
ロット内の最初の基板Pの露光処理が終了した後、制御装置8は、スクラム移動を実行し、終端光学素子12及び液浸部材7と計測ステージ3との間に液浸空間LSを形成する。制御装置8は、基板ステージ2を基板交換位置CPに移動する。計測ステージ3は、例えば待機位置SPに配置される。制御装置8は、基板交換位置CPに移動した基板ステージ2から露光後の基板P(ロット内の最初の基板P)を搬出し(ステップS5)、ロット内の次に露光される基板P(ロット内の2番目の基板P)を基板ステージ2に搬入する(ステップS6)。なお、基板ステージ2からアンロードされた露光後の最初の基板Pは、外部装置に供給され、例えば現像処理等、所定の処理を施される。
上述と同様、制御装置8は、必要に応じてスリット板C1を用いる計測処理を実行する(ステップS7)。計測処理及び基板交換処理が終了した後、制御装置8は、基板P上に液浸空間LSを形成して、基板Pの露光を開始する(ステップS8)。基板Pの露光が終了した後、制御装置8は、露光後の基板Pをアンロードする(ステップS9)。
制御装置8は、露光した基板Pが、ロット内の最後の基板Pであったかどうかを判断する(ステップS10)。ロット内の最後の基板Pでないと判断した場合、制御装置8は、次の基板Pを基板ステージ2にロードして、その基板Pの露光を実行する。以下、制御装置8は、ロット内の最後の基板Pの露光が終了するまで、上述した処理を繰り返して、ロットに含まれる複数の基板Pのそれぞれを、液体LQを介して順次露光する。
ステップS10において、露光した基板Pがロット内の最後であると判断した場合、制御装置8は、そのロットの複数の基板Pの露光が終了したと判断する(ステップS11)。
制御装置8は、次のロットの露光を実行するかどうかを判断する(ステップS12)。次のロットの露光を実行すると判断した場合、制御装置8は、上述の処理を実行して、ステップS1に戻り、次のロットの処理を開始する。
ステップS12において、次のロットの露光を実行しないと判断した場合、一連の露光シーケンスが終了する(ステップS13)。
図10等に示したように、本実施形態においては、第1領域81は液体LQに対して親液性なので、例えばスリット板C1を用いる計測処理が実行され、スリット板C1上から液浸空間LSが退いた後、その第1領域81に液体LQが残留する。その残留した液体LQの気化熱によって、例えばスリット板C1、スリット板C1の周囲の部材(プレート部材S等)、あるいは空間102の温度が低下する。露光シーケンスにおいて、スリット板C1上に液浸空間LSを形成した状態で実行される計測処理は、例えば所定時間間隔で複数回行われるため、スリット板C1上から液浸空間LSが退いた状態においても、第1領域81には常に液体LQが残留している状態となる。換言すれば、露光シーケンスにおいて、スリット板C1上に液浸空間LSが無い状態においても、第1領域81は、常に液体LQで濡れ続けている状態となる。そのため、露光シーケンスにおいて、第1領域81に残留する液体LQが気化し続けることとなる。したがって、スリット板C1等の温度変化の発生は抑制され、スリット板C1等の温度は比較的低い温度で安定することとなる。以下の説明において、第1領域81の液体LQの気化によりスリット板C1等の温度が安定する状態を適宜、安定状態、と称し、安定状態の温度を適宜、安定温度、と称する。安定状態の温度は、例えばチャンバ装置103が空間102の温度を調整するときの目標値よりも低い。
露光シーケンスが終了した後、次の指令(例えばジョブ投入指令)が露光装置EX(制御装置8)に入力されるまで、露光装置EXは、非露光状態となる。
以下の説明において、所定数のロットの基板Pの露光処理を含む露光シーケンスが終了し、次の指令が入力されるまでの基板Pの非露光期間を適宜、アイドリング期間、と称し、基板Pの非露光状態を適宜、アイドリング状態、と称する。
すなわち、露光シーケンスが終了した後、露光装置EXはアイドリング状態となる。本実施形態においては、アイドリング期間(アイドリング状態)においても、液浸空間LSが維持される。アイドリング期間においても、制御装置8は、供給口15からの液体LQの供給動作を実行するとともに、その液体LQの供給動作と並行して、回収口16からの液体LQの回収動作を実行して、液浸空間LSを形成し続ける。
アイドリング期間の開始後において、制御装置8は、液浸空間LSが維持されるように、終端光学素子12の射出面13及び液浸部材7の下面14と対向する位置に計測ステージ3を配置する。液浸空間LSは、終端光学素子12及び液浸部材7と計測ステージ3との間に形成される。
図12に示すように、本実施形態においては、アイドリング期間において、計測ステージ3が待機位置SPに移動され、射出面13及び下面14と、上面3Uの所定領域3Pとの間に液体LQが保持されて液浸空間LSが形成される。以下の説明において、射出面13及び下面14と上面3Uの所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される状態を適宜、第1状態、と称する。
第1状態においては、第1、第2領域81、82を含むスリット板C1の上面と異なる位置に液浸空間LSが形成される。すなわち、第1状態においては、第1、第2領域81、82を含むスリット板C1の上面と液浸空間LSの液体LQとは接触しない。これにより、アイドリング期間において、スリット板C1の上面と液体LQとが接触する時間(積算時間)の増大を抑制することができる。したがって、スリット板C1の上面(撥液膜68)の劣化を抑制することができる。
アイドリング期間において、制御装置8は、第1領域81と液体LQとが接触しない非接液状態の時間を計測する。制御装置8は、タイマー100を用いて、非接液状態の時間を計測することができる。制御装置8は、第1領域81と液体LQとが接触後、接触しない状態に変化してからの時間を計測する。制御装置8は、例えば露光シーケンスにおいて液浸空間LSの液体LQと第1領域81とが最後に接触してからの経過時間を計測する。
なお、制御装置8は、既知であるXY平面内における液浸空間LSの大きさ、第1領域81の大きさ、計測ステージ3の上面3Uにおける第1領域81の位置、及び干渉計システム11によって計測される計測ステージ3の位置等に基づいて、第1領域81と液浸空間LSとの位置関係を求めることができ、その位置関係に基づいて、第1領域81と液体LQとが接触しているか否かを判断することができる。
なお、上述のように、本実施形態において、第1領域81と液体LQとが接触しない非接液状態は、射出面13及び下面14と所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される状態を含む。なお、非接液状態は、第1領域81と液体LQとが接触しない状態であれば、液浸空間LSが所定領域3P上に形成される状態以外の状態でもよい。
アイドリング期間において、非接液状態が予め定められた第1時間t1を経過すると判断した場合、制御装置8は、射出面13及び下面14と第1領域81との間に液浸空間LSを形成して、第1領域81と液体LQとが接触する接液状態に変化させる。第1時間t1に関する情報は、記憶装置101に記憶されている。以下の説明において、射出面13及び下面14と第1領域81との間に液浸空間LSが形成される状態を適宜、第2状態、と称する。
本実施形態においては、第1状態から第2状態に変化させるために、制御装置8は、射出面13及び下面14と上面3Uの所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される第1状態で、終端光学素子12及び液浸部材7に対して計測ステージ3を移動して、射出面13及び下面14と対向する位置に第1領域81(スリット板C1の上面)を配置する。これにより、図13に示すように、射出面13及び下面14と、第1領域81との間に液浸空間LSが形成される第2状態に変化し、第1領域81と液体LQとが接触する接液状態に変化する。また、接液状態においては、図9に示したように、射出面13及び下面14と第1領域81及び第2領域82の少なくとも一部との間に液浸空間LSが形成される。
また、制御装置8は、第1領域81と液体LQとが接触する接液状態の時間を計測する。制御装置8は、タイマー100を用いて、接液状態の時間を計測することができる。制御装置8は、第1領域81と液体LQとが接触してからの経過時間を計測する。
アイドリング期間において、接液状態が予め定められた第2時間t2を経過した後、制御装置8は、液浸空間LSを第1領域81上から退かす。すなわち、制御装置8は、接液状態が第2時間t2を経過した後、非接液状態に変化させる。第2時間t2に関する情報は、記憶装置101に記憶されている。本実施形態において、第2時間t2は、第1時間t1よりも短い。
本実施形態においては、制御装置8は、第2状態から第1状態に変化させることによって、液浸空間LSを第1領域81上から退かす。本実施形態においては、第2状態から第1状態に変化させるために、制御装置8は、射出面13及び下面14と第1領域81との間に液浸空間LSが形成される第2状態で、終端光学素子12及び液浸部材7に対して計測ステージ3を移動して、射出面13及び下面14と対向する位置に所定領域3Pを配置する。これにより、図12に示したように、射出面13及び下面14と所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される第1状態に変化し、第1領域81と液体LQとが接触しない非接液状態に変化する。
また、アイドリング期間において、第1領域81と液体LQとが接触しない非接液状態が第1時間t1を経過するとき、制御装置8は、第1領域81と液体LQとが接触する接触状態に変化させる。また、接液状態が第2時間t2を経過した場合、制御装置8は、液浸空間LSを第1領域81上から退かす。
制御装置8は、アイドリング期間中において、非接触状態が第1時間t1を超えないように、射出面13及び下面14と所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される第1状態と、射出面13及び下面14と第1領域81との間に液浸空間LSが形成される第2状態とを繰り返す。
次の指令が入力されることによって、アイドリング期間が終了する。次の指令は、例えば露光シーケンスの開始の指令を含む。制御装置8は、その指令に応じた処理を開始する。
以上説明したように、本実施形態によれば、アイドリング期間において、液体LQに対して親液性の第1領域81と液体LQとを接触させるようにしたので、温度変化の発生を抑制することができる。
上述したように、露光シーケンスにおいて、スリット板C1上に液浸空間LSが無い状態においても第1領域81は常に液体LQで濡れ続けており、その液体LQが気化し続けるため、スリット板C1等の温度は、安定温度となる。アイドリング期間において、所定領域3P上に液浸空間LSが形成され、第1領域81上に液浸空間LSが形成されない状態が長時間に及ぶと、第1領域81に残留していた液体LQが全て気化してしまい、その結果、スリット板C1などの温度が、上述の安定温度よりも高い温度になる可能性がある。すなわち、第1領域81に液体LQが残留している状態と残留していない状態とで温度が異なる状況が発生し、スリット板C1などに温度変化が発生する可能性がある。
本実施形態によれば、アイドリング期間において、第1領域81と液体LQとが接触しない非接触状態が第1時間t1を経過するとき、第1領域81上に液浸空間LSを形成して、第1領域81と液浸空間LSの液体LQとを接触させるようにしたので、その液浸空間LSを第1領域81上から退かすことによって、第1領域81に残留した液体LQが気化することとなる。これにより、アイドリング期間においても、スリット板C1等の温度を安定温度にすることができる。
なお、第1時間t1は、第1領域81に残留する液体LQの全てが気化して無くなる時間を含む。第1時間t1が経過する前に、第1領域81と液体LQとを接触させることによって、第1領域81を液体LQで常に濡らし続けることができ、第1領域81において液体LQを気化させ続けることができる。なお、第1時間t1は、例えば予備実験又はシミュレーションによって求めることができる。なお、液体LQに対する第1領域81の表面の接触角、第1領域81の大きさ、及びチャンバ装置103によって調整される空間102の環境等の各種のパラメータに応じて、第1領域81に残留する液体LQの全てが気化する時間が変化するため、それらパラメータに基づいて第1時間t1を求めることもできる。記憶装置101には、第1時間t1に関する情報が予め記憶されており、制御装置8は、その記憶情報に基づいて、第1領域81が液体LQで常に濡れ続けるように、非接液状態から接液状態に変化させることができる。
なお、第1領域81上に液浸空間LSが存在し続けると、第1領域81において液体LQの気化が発生し難い可能性があるため、第1領域81上に液浸空間LSが形成される時間は短いほうが好ましい。本実施形態においては、第1領域81上に液浸空間LSが形成されている第2時間t2は、第1時間t1よりも短いため、第1領域81の液体LQは良好に気化される。なお、温度を所定値に安定させることができれば、第2時間t2が、第1時間t1よりも長くてもよいし、第1時間t1と同じでもよい。
なお、上述の実施形態においては、第1状態(非接液状態)が予め定められた第1時間t1を経過するときに、第2状態(接液状態)にすることとしたが、時間計測をすることなく、アイドリング期間において、第1状態と第2状態とを繰り返してもよい。こうすることによっても、第1領域81において液体LQを気化させ続けることができる。制御装置8は、スリット板C1等が安定温度(目標温度)になるまで、第1状態と第2状態とを繰り返す。なお、第1状態と第2状態とを繰り返す場合、第2状態の時間は、第1状態の時間よりも短いほうが好ましい。なお、温度を所定値に安定させることができれば、第2状態の時間が、第1状態の時間よりも長くてもよいし、第1状態の時間と同じでもよい。
なお、上述の実施形態においては、記憶装置101の記憶情報に基づいて、第1領域81が液体LQで常に濡れ続けるように、非接液状態から接液状態に変化させることとしたが、例えばスリット板C1の温度を検出可能な温度センサを配置し、その温度センサの検出結果に基づいて、第1状態(非接液状態)と第2状態(接液状態)とを繰り返す処理、すなわち、スリット板C1の温度を安定状態にする処理を実行してもよい。例えば第1状態(非接液状態)において、温度センサの検出結果に基づいてスリット板C1が安定温度でないと判断した場合、制御装置8は、非接液状態から接液状態に変化させる。これにより、スリット板C1を安定温度にすることができる。なお、スリット板C1の温度を検出可能な温度センサは、スリット板C1に配置してもよいし、スリット板C1に配置せずに例えば非接触式の温度センサでスリット板C1の温度を検出することとしてもよい。また、スリット板C1近傍の空間102の温度を検出した結果に基づいて安定状態にする処理を実行してもよいし、スリット板C1の近傍に配置された部材(例えばプレート部材S)の温度を検出した結果に基づいて、安定状態にする処理を実行してもよい。
なお、上述の実施形態において、スリット板C1等が安定温度でなく安定温度よりも高い温度のときにアイドリング期間の次の指令(例えばジョブ投入指令)が入力された場合、制御装置8は、その指令に基づく処理を実行せずに、スリット板C1等が安定温度(目標温度)になるまで、第1状態(非接液状態)と第2状態(接液状態)とを繰り返す処理、すなわち、スリット板C1等の温度を安定状態する処理を実行してもよい。スリット板C1等の温度は、上述の温度センサで検出可能である。そして、制御装置8は、温度センサの検出結果に基づいて、スリット板C1等の温度が安定状態になり、スリット板C1等が安定温度(目標温度)になったことを確認した後、指令に基づく処理を実行する。これにより、露光不良の発生等を抑制することができる。
なお、スリット板C1等の温度が安定状態でない場合において、第1状態(非接液状態)と第2状態(接液状態)とを繰り返す処理、すなわち、スリット板C1等の温度を安定状態にする処理の許容時間(待ち時間)を予め設定し、その許容時間に応じて、安定状態にする処理を実行してもよい。例えばアイドリング期間において、制御装置8は、安定状態にする処理を許容時間だけ実行し、許容時間の経過後、安定状態にする処理を停止し、次の指令(例えばジョブ投入指令)に基づく処理を実行することとしてもよい。これにより、例えば安定状態になるまでに長時間を要してしまう場合、安定状態になるまで待つことなく、次の指令に基づく処理を実行することができ、スループットの低下を抑制することができる。
なお、安定状態にする処理の条件を、時間の経過とともに変更(最適化)してもよい。安定状態にする処理の条件は、第1時間t1、第2時間t2、及び第1状態(非接液状態)と第2状態(接液状態)との繰り返し回数の少なくとも一つを含む。例えば、第1状態(非接液状態)と第2状態(接液状態)とを複数回繰り返す場合、第1時間t1と第2時間t2とを時間の経過とともに変更してもよい。例えば、アイドリング期間の開始直後においては、第1状態をA1秒とし、第2状態をB1秒とし、アイドリング期間の中間においては、第1状態をA2秒とし、第2状態をB2秒とし、アイドリング期間の終了直前においては、第1状態をA3秒とし、第2状態をB3秒としてもよい。A1、A2、A3は、異なる値であり、B1、B2、B3は、異なる値である。制御装置8は、スリット板C1等の温度を安定状態にするために、例えば温度センサの検出結果に基づいて、安定状態にする処理の条件を適宜変更することができる。
なお、第1状態(非接液状態)において液浸空間LSが形成される所定領域3P(計測ステージ3の待機位置SP)は、適宜変更可能である。例えば第1状態と第2状態とが複数回繰り返される場合において、第1回目の第1状態では上面3Uの中心よりも−Y側の領域上に液浸空間LSが形成され、第2回目の第2状態では上面3Uの中心よりも+Y側の領域上に液浸空間LSが形成されるように、計測ステージ3の待機位置SPが設定されてもよい。
また、空調システム105の調整条件に応じて、第1状態(非接液状態)における終端光学素子12に対する計測ステージ3の位置(待機位置SP)が定められてもよい。空調システム105の調整条件は、空調システム105が供給する単位時間当たりの気体の流量、流速、供給する気体の方向(気体の流れの向き)、気体の温度、及び気体の湿度の少なくとも一つを含む。例えば、第1状態において第1領域81に残留している液体LQが気化しやすいように、チャンバ装置103の空調システム105から供給される気体の流れの向きに応じて、待機位置SPが設定されてもよい。例えば、空調システム105から供給される気体が第1領域81に当たるように、第1状態における計測ステージ3の位置が設定されてもよい。
なお、上述の実施形態においては、第1状態(非接液状態)が、射出面13及び下面14と計測ステージ3の上面3Uの所定領域3Pとの間に液浸空間LSが形成される状態であることとしたが、例えば図14に示すように、射出面13及び下面14と基板ステージ2の上面2Uの所定領域2Pとの間に液浸空間LSが形成される状態であることとしてもよい。
なお、制御装置8は、スクラム移動を実行して、図14に示す状態(基板ステージ2の上面2Uに液浸空間LSが形成されている状態)から、図13に示す状態(計測ステージ3のスリット板C1の上面に液浸空間LSが形成される状態)に変化させることができる。すなわち、制御装置8は、射出面13及び下面14と基板ステージ2の上面2Uとの間に液浸空間LSが形成されている状態で、計測ステージ3の上面3Uと基板ステージ2の上面2Uとを接近又は接触させた状態で終端光学素子12及び液浸部材7に対して計測ステージ3と基板ステージ2とを同期移動して、第2状態(接液状態)に変化させることができる。
また、図15に示すように、第1状態(非接液状態)が、射出面13及び下面14と第1保持部31に保持されたダミー基板DPとの間に液浸空間LSが形成される状態であることとしてもよい。本実施形態において、ダミー基板DPとは、基板Pとほぼ同じ外形を有し、基板Pよりも異物の放出が抑制された基板をいう。第1保持部31は、ダミー基板DPを保持することができる。
なお、上述の実施形態においては、スリット板C1に第1領域81が配置されることとしたが、第2計測部材C2の上面に、液体LQに対して親液性の第1領域が配置されてもよい。そして、アイドリング期間において、その第2計測部材C2の上面の第1領域と液体LQとを接触させるようにしてもよい。
なお、上述の実施形態においては、アイドリング期間において、終端光学素子12の射出面13及び液浸部材7の下面14と第1領域81との間に液浸空間LSを形成して、第1領域81と液体LQとを接触させることとしたが、図16に示すように、露光光ELの光路を液体LQで満たすための液浸部材7とは異なる液浸部材700を設け、その液浸部材700の下面140と第1領域81との間に液浸空間LSを形成して、第1領域81と液体LQとを接触させてもよい。図16において、液浸部材700は、液体LQを供給する供給口150と、液体LQを回収する回収口160とを有し、第1領域81を含む上面3Uは、液浸部材700の下面140との間に液体LQを保持して液浸空間LSを形成可能である。
なお、上述の実施形態において、接液状態が第2時間t2を経過した後、液浸空間LSの液体LQを回収して、液浸空間LSを第1領域81上から退かしてもよい。
なお、上述の実施形態においては、第1領域81上に液浸空間LSを形成する処理が実行される非露光期間が、所定数のロットの基板Pの露光処理を含む露光シーケンスが終了し、次の指令が入力されるまでのアイドリング期間であることとしたが、例えばロット内の第1の基板Pの露光の後、次の第2の基板Pの露光が開始されるまでの非露光期間において、第1領域81上に液浸空間LSを形成する処理、すなわち、スリット板C1等の温度を安定状態にする処理が実行されてもよい。また、複数のロットが連続的に処理される場合において、例えば第1のロットの処理の後、次の第2のロットの処理が開始されるまでの非露光期間において、スリット板C1等の温度を安定状態にする処理が実行されてもよい。
例えば、ロット内の第1の基板Pの露光の後、次の第2の基板Pの露光が開始されるまでの非露光期間(例えばステップS4からS7の間の期間)において、スリット板C1等の温度を検出可能な温度センサの検出結果に基づいて安定温度でないと判断した場合、制御装置8は、第2の基板Pの露光を開始する前に、温度を安定状態にする処理を実行することができる。また、例えばスリット板C1等を用いる計測処理(ステップS7等)の前に、温度センサの検出結果に基づいて安定温度でないと判断した場合、制御装置8は、その計測処理の前に、温度を安定状態にする処理を実行することができる。これにより、スリット板C1等を用いる計測処理の低下を抑制することができる。また、ロットの基板Pの処理中、例えば露光前の基板Pが露光装置EXに搬入されない状況が発生した場合、その基板Pが搬入されるまでの期間に、安定状態にする処理が実行されてもよい。
なお、上述の実施形態において、安定温度(目標温度)は、一定値でもよいし、所定の安定温度範囲(目標温度範囲)におさまるように安定状態にする処理が実行されてもよい。
なお、例えば作業者が、安定状態にする処理に関する情報を入力装置(キーボード、タッチパネル等)を介して制御装置8に入力してもよい。安定状態にする処理に関する情報は、安定状態にする処理の可否、安定状態にする処理の条件、及び目標温度範囲の少なくとも一つを含む。作業者は、それら情報を指定して、入力装置を介して制御装置8に入力することができる。制御装置8は、その情報に基づいて、安定状態にする処理を実行することができる。例えば露光装置EXの使用状況に応じて、スリット板C1等に求められる温度の許容範囲が変化する可能性がある。例えば、露光装置EXのメンテナンス時、露光装置EXの初期設定時、及び露光装置EXの稼動時(基板Pの露光処理時)、のそれぞれにおいて、スリット板C1の温度の許容範囲が変化する可能性がある。例えばスリット板C1の温度が目標温度に対して僅かに異なっていても許容される露光装置EXの使用状況の場合、例えば目標温度範囲を大きくすることができる。これにより、例えば作業効率の低下を抑制することができる。
なお、上述の実施形態においては、スリット板C1等の温度を安定状態にするために、第1状態と第2状態とを繰り返すこととしたが、第1領域81が液体LQで濡れている場合、第2状態(接液状態)にする処理を実行しなくてもよい。
なお、上述の各実施形態においては、投影光学系PLの終端光学素子12の射出側(像面側)の光路が液体LQで満たされているが、例えば国際公開第2004/019128号パンフレットに開示されているように、終端光学素子12の入射側(物体面側)の光路も液体LQで満たされる投影光学系PLを採用することができる。
なお、上述の各実施形態においては、液体LQとして水を用いているが、水以外の液体であってもよい。液体LQとしては、露光光ELに対して透過性であり、露光光ELに対して高い屈折率を有し、投影光学系PLあるいは基板Pの表面を形成する感光材(フォトレジスト)などの膜に対して安定なものが好ましい。例えば、液体LQとして、ハイドロフロロエーテル(HFE)、過フッ化ポリエーテル(PFPE)、フォンブリンオイル等を用いることも可能である。また、液体LQとして、種々の流体、例えば、超臨界流体を用いることも可能である。
なお、上述の各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、例えば米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
また、本発明は、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6208407号明細書、米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
なお、上述の各実施形態においては、レーザ干渉計を含む干渉計システムを用いて各ステージの位置情報を計測するものとしたが、これに限らず、例えば各ステージに設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
上述の各実施形態においては、投影光学系PLを備えた露光装置を例に挙げて説明してきたが、投影光学系PLを用いない露光装置及び露光方法に本発明を適用することができる。例えば、レンズ等の光学部材と基板との間に液浸空間を形成し、その光学部材を介して、基板に露光光を照射することができる。
また、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板P上に形成することによって、基板P上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
上述の実施形態の露光装置EXは、各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図17に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクのパターンからの露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。基板処理ステップは、上述のアイドリング期間を含み、上述の実施形態に従って、第1領域81に液体LQを接触させることを含む。
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
2…基板ステージ、2P…所定領域、2U…上面、3…計測ステージ、3P…所定領域、3U…上面、7…液浸部材、8…制御装置、12…終端光学素子、13…射出面、14…下面、66…中間膜、68…撥液膜、81…第1領域、82…第2領域、100…タイマー、101…記憶装置、C1…スリット板、EL…露光光、EX…露光装置、LQ…液体、LS…液浸空間、P…基板
Claims (25)
- 液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
前記露光光を射出する射出面を有し、前記射出面側に液浸空間が形成される光学部材と、
前記射出面との間に前記液浸空間を形成可能であり、前記液浸空間の液体に対して親液性の第1領域を含む上面を有する可動部材と、を備え、
前記基板の非露光期間において、前記第1領域と前記液浸空間の液体とが接触しない非接液状態が第1時間を経過するとき、前記射出面と前記第1領域との間に液浸空間を形成して前記第1領域と前記液浸空間の液体とが接触する接液状態に変化させる露光装置。 - 前記接液状態が第2時間を経過した後、前記液浸空間を前記第1領域上から退かす請求項1記載の露光装置。
- 前記第2時間は、前記第1時間よりも短い請求項2記載の露光装置。
- 前記非接液状態は、前記射出面と前記第1領域以外の前記上面の所定領域との間に液浸空間が形成される状態を含む請求項1〜3のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記射出面と前記所定領域との間に液浸空間が形成されている状態で前記光学部材に対して前記可動部材を移動して、前記接液状態に変化させる請求項4記載の露光装置。
- 前記可動部材は、第1可動部材と、前記第1可動部材と独立して移動可能な第2可動部材とを含み、
前記上面は、前記第1可動部材に配置され前記第1領域を含む第1上面と、前記第2可動部材に配置され前記所定領域を含む第2上面とを含み、
前記非接液状態は、前記射出面と前記第2上面との間に液浸空間が形成される状態を含む請求項4記載の露光装置。 - 前記射出面と前記第2上面との間に液浸空間が形成されている状態で前記第1上面と前記第2上面とを接近又は接触させた状態で前記光学部材に対して前記第1可動部材と前記第2可動部材とを移動して、前記接液状態に変化させる請求項6記載の露光装置。
- 前記所定領域は、前記液体に対して撥液性である請求項4〜7のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記上面において前記第1領域の周囲の少なくとも一部に配置され、前記第1領域よりも前記液体に対して撥液性の第2領域を有し、
前記接液状態は、前記射出面と前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部との間に液浸空間が形成される状態を含む請求項1〜8のいずれか一項記載の露光装置。 - 前記第2領域の表面は、撥液膜の表面を含む請求項9記載の露光装置。
- 前記第1領域は、前記撥液膜の少なくとも一部に形成された開口の内側の領域を含む請求項10記載の露光装置。
- 液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
射出面を有する光学部材と、
前記射出面との間に液浸空間を形成可能であり、前記液体に対して親液性の第1領域を含む上面を有する可動部材と、を備え、
前記基板の非露光期間において、前記射出面と前記第1領域以外の前記上面の所定領域との間に液浸空間が形成される第1状態と、前記射出面と前記第1領域との間に液浸空間が形成される第2状態とを繰り返す露光装置。 - 前記第1状態で前記光学部材に対して前記可動部材を移動して、前記第2状態に変化させる請求項12記載の露光装置。
- 前記第2状態で前記光学部材に対して前記可動部材を移動して、前記第1状態に変化させる請求項12又は13記載の露光装置。
- 前記第2状態の時間は、前記第1状態の時間よりも短い請求項12〜14のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記可動部材の温度の検出結果に基づいて、前記第1状態と前記第2状態とを繰り返す請求項12〜15のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記可動部材が移動する空間に気体を供給して前記空間の環境を調整する空調システムを備え、
前記空調システムの調整条件に応じて、前記第1状態における前記光学部材に対する可動部材の位置が定められる請求項12〜16のいずれか一項記載の露光装置。 - 前記可動部材が目標温度になるまで、前記第1状態と前記第2状態とを繰り返す請求項12〜17のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記非露光期間は、アイドリング期間を含む請求項1〜18のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記第1領域に前記液浸空間の液体が接触された状態で前記露光光が照射される請求項1〜19のいずれか一項記載の露光装置。
- 前記第1領域を介した前記露光光を受光する光センサを備える請求項20記載の露光装置。
- 請求項1〜21のいずれか一項記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。 - 液体を介して露光光で基板を露光することと、
前記基板の非露光期間において、前記露光光が照射可能な位置に移動可能な可動部材の上面の前記液体に対して親液性の第1領域と前記液体とが接触しない非接液状態が第1時間を経過するとき、光学部材の射出面と前記第1領域との間に液体を保持して液浸空間を形成して前記第1領域と前記液体とが接触する接液状態に変化させることと、を含む露光方法。 - 液体を介して露光光で基板を露光する露光することと、
前記基板の非露光期間において、光学部材の射出面と前記露光光が照射可能な位置に移動可能な可動部材の上面の前記液体に対して親液性の第1領域以外の所定領域との間に液浸空間が形成される第1状態と、前記射出面と前記第1領域との間に液浸空間が形成される第2状態とを繰り返すことと、を含む露光方法。 - 請求項23又は24記載の露光方法を用いて基板を露光することと、
露光された前記基板を現像することと、を含む露光方法。
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