一般に、上記ジブは、所要長さの複数のジブ体を順次接続して所定長さとしたのち、これを伸縮ブームの先端にジブ基台を介して取り付けるように構成されている。そして、このジブを組み立てて伸縮ブームの先端にジブ基台を介して連結する場合の手法としては、平組工法と立組工法がある。
ここで、図7を参照してラフィングジブの平組工法と立組工法の作業状態を簡単に説明する。
平組工法は、平坦な地面上において上記各ジブ体を順次継ぎ足して所要長さのジブ4(ここではラフィングジブを例示している)を構成するとともに、該ジブ4の基端にジブ基台5を連結する。しかる後、上記ジブ4の基端側を吊上げて、上記ジブ基台5を、全倒伏で且つ全縮小状態に姿勢設定された伸縮ブーム3の先端、即ち、ブームヘッド部分に締結固定する。この状態から、上記伸縮ブーム3を起仰させながら次第に伸長させ、上記ジブ4を上方へ引上げながら伸縮ブーム3側に引き寄せる。そして、上記ジブ4が上記伸縮ブーム3の先端側から垂下されるに近い状態となった時点で(図7の符号4Aの状態を参照)、バックテンションウィンチ47を巻き込むことで、上記ジブ4を次第に前方へ振り出しながら(図7の符号4Bの状態を参照)起仰させ、最終的には上記伸縮ブーム3の軸線上に近い角度まで起仰させる(図7の符号4Cの状態を参照)ものである。
一方、立組工法は、上記伸縮ブーム3を順次起仰及び伸長させながら、各ジブ体を順次一個ずつ吊上げ状態で接続していく工法であり、先端のジブ体が接続されて所要長さのジブ4が完成した時点では、該ジブ4は上記伸縮ブーム3の先端側から垂下されるに近い状態となる(図7の符号4Aの状態を参照)。このあと、上記ジブ4を前方へ振り出しながら(図7の符号4Bの状態を参照)起仰させ、最終的に上記伸縮ブーム3の軸線上に近い角度まで起仰させる(図7の符号4Cの状態を参照)点は、上記平組工法の場合と同様である。
尚、上記ジブ4を上記伸縮ブームの先端への装着状態から取外す場合は、上述のジブ装着時とは逆手順にて作業が行なわれる。
ところで、例えば、上記ジブ4の上記伸縮ブーム3の先端への装着作業において、上記ジブ4を前方へ振り出しながら起仰させる場合、上記ジブ4の自重によるモーメントは大きく変化する。即ち、図7の符号4Aで示す前倒伏姿勢から符号4Bで示す略水平姿勢までの間は上記ジブ4の起仰動に伴って自重モーメントは急激に増大変化する一方、上記略水平姿勢から図7の符号4Cで示す前起仰姿勢までの間は上記ジブ4の起仰動に伴って自重モーメントは急激に減少変化する。このような上記ジブ4の起仰動に伴う上記自重モーメントの変化に対応して、上記伸縮ブーム3の撓み量が大きくなり、該伸縮ブーム3に設けられた上記ブーム撓み抑制装置10のテンションロープ14にかかる張力も大きく増減変化することになる。
次に、上記テンションウィンチ15の油圧回路について説明する。このようなテンションウィンチ15の油圧回路としては、従来から次述する第1の回路構成と第2の回路構成が知られている。
第1の回路構成
図8には、上記テンションウィンチ15の油圧回路の第1の回路構成を示しており、同図において符号15は、ドラム15aとこれを駆動する油圧モータ15bと該油圧モータ15bの中立状態を保持する油圧駆動のメカニカルブレーキ15c及び減速機15dを備えたテンションウィンチである。また、符号23は、上記ドラム15aをロックするためのロックシリンダである。
上記油圧モータ15bには、上記メカニカルブレーキ15cとともにブレーキ手段30を構成するブレーキ弁が備えられている。即ち、図8に示すように、上記油圧モータ15bの巻込側ポートには巻込用油路32が、繰出側ポートには繰出用油路33がそれぞれ接続されている。この巻込用油路32と繰出用油路33は、ウィンチ切換バルブ31を介して油圧供給源側のPポートとTポートにそれぞれ択一的接続可能とされている。上記巻込用油路32と繰出用油路33の間には、上記繰出用油路33側の最高圧力を規定する機能をもつリリーフバルブで構成される繰出用ブレーキ弁34と、上記巻込用油路32側の最高圧力を規定する機能をもつリリーフバルブで構成される巻込用ブレーキ弁35が備えられている。さらに、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートには、切換バルブ37と高圧用リリーフバルブ38と低圧用リリーフバルブ39を備えたリリーフ圧切換バルブユニット36が接続されている。
さらに、上記メカニカルブレーキ15cの油室には切換バルブ29を介してブレーキ解除用の油圧が供給されるように構成されるとともに、該切換バルブ29には上記巻込用油路32と繰出用油路33の間に配置したシャトルバルブ28を介してパイロット圧が供給されるようになっている。このため、上記ウィンチ切換バルブ31が巻込側と繰出側の何れに操作された場合にも上記切換バルブ29を介して上記メカニカルブレーキ15cの油室に油圧が供給され、該メカニカルブレーキ15cはブレーキ解除状態とされ、上記ウィンチ切換バルブ31が操作されない限り上記メカニカルブレーキ15cがブレーキ状態とされ、上記ロックシリンダ23がロック状態で無い限り、該メカニカルブレーキ15cによって上記油圧モータ15bの回転、即ち、上記テンションロープ14に掛かる張力が保持されることになる。
また、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートに上記リリーフ圧切換バルブユニット36が接続されているため、例えば、上記テンションウィンチ15の巻込作動時には、上記切換バルブ37の切り替え操作によって、上記高圧用リリーフバルブ38により最高圧力が規定された状態での上記テンションウィンチ15の高圧巻込作動と、上記低圧用リリーフバルブ39により最高圧力が規定された状態での上記テンションウィンチ15の低圧巻込作動とが選択できることになる。
第2の回路構成
図9には、上記テンションウィンチ15の油圧回路の第2の回路構成を示している。この回路構成は、上記第1の回路構成(図8)において、上記リリーフ圧切換バルブユニット36を取り除いた構成となっており、それ以外の構成は全て上記第1の回路構成と同じとされている。従って、この第2の回路構成では、上記テンションウィンチ15の巻込作動時には、常時、上記巻込用ブレーキ弁35のリリーフ作用によって最高圧力が規定され、上記テンションウィンチ15は常に高圧での巻込作動を行なうことになる。
ジブ4の着脱作業における問題点
ここで、上記ジブ4の着脱作業における上記テンションウィンチ15の操作との関連における問題点について説明する。
上述のように、上記ジブ4に着脱作業においては、該ジブ4の基端を、ジブ基台5を介して上記伸縮ブーム3の先端に連結して略垂下姿勢とした状態で、該ジブ4を前方から上方へ振り出して該伸縮ブーム3の先端に装着する場合、及び上記伸縮ブーム3の先端に装着されたジブを前方から下方へ振り下げて上記伸縮ブーム3の先端から略垂下姿勢とする場合の何れにおいても、上記ジブ4の自重モーメントが大きく増減変化し、特に該ジブ4が上記伸縮ブーム3の先端から略水平方向に達した時点で上記自重モーメントが最大となり、これに伴って、上記伸縮ブーム3に設けられた上記ブーム撓み抑制装置10のテンションロープ14にかかる張力も大きく増減変化することは既述の通りである。
係る荷重条件の下で上記ジブ4の着脱作業を行なう場合における上記テンションウィンチ15側の操作形態としては以下の二つの操作形態が考えられる。
即ち、上記ジブ4の着脱作業は、上記テンションウィンチ15を停止させた状態(即ち、上記ウィンチ切換バルブ31を中立に保持した状態)で行なわれるが、その場合における上記テンションウィンチ15の第1の操作形態は、上記テンションウィンチ15のロックシリンダ23をアンロック側に設定し、上記メカニカルブレーキ15cのブレーキ力のみによって上記テンションウィンチ15の回転規制、即ち、上記テンションロープ14の張力保持を行なうようにした操作形態である。
これに対して、上記テンションウィンチ15の第2の操作形態は、上記テンションウィンチ15の上記ロックシリンダ23をロック側に設定し、上記ドラム15aのロック力によって上記テンションウィンチ15の回転規制、即ち、上記テンションロープ14の張力保持を行なう操作形態である。
ここで、上記テンションウィンチ15が上記第1の操作形態とされた場合には、上記ジブ4の振り出しに伴って上記テンションロープ14に掛かる張力が増大し、これが上記メカニカルブレーキ15cの保持能力を越えたような場合には、該メカニカルブレーキ15cとか減速機15dに過大な力が掛かり、これらに損傷を与えることが考えられる。これに対処する方法として、上記メカニカルブレーキ15c及び減速機15dの高能力化が考えられるが、係る方法では上記メカニカルブレーキ15c及び減速機15dが大形大重量化するため好ましくない。
一方、上記テンションウィンチ15が上記第2の操作形態とされた場合には、上記ジブ4の振り出しに伴って上記テンションロープ14に掛かる張力が増大し、これが上記メカニカルブレーキ15cの保持能力を越えたような場合でも、上記張力はドラムロック力で支持されるため、上記メカニカルブレーキ15cとか減速機15dに過大な力が掛かることはなく、この点においては好ましい操作形態と考えられる。しかし、上記ジブ4の着脱作業に際しては、事前に上記ロックシリンダ23によるドラムロック操作を行い、また事後に上記ロックシリンダ23によるドラムアンロック操作を行うことが必要であって、その操作が煩雑で作業性が悪く、また事前のドラムロック操作を忘れることも否定できず、係る場合には上記第1の操作形態の場合と同様に、上記メカニカルブレーキ15cとか減速機15dに過大な力が掛かり、これらに損傷を与えることになる。
なお、係る問題は、上記テンションウィンチ15の油圧回路が上記第1の回路構成である場合も、第2の回路構成である場合も同様である。
そこで本願発明は、ブーム付き作業機において、伸縮ブームの先端へのジブの着脱作業時におけるテンションウィンチの損傷の発生等を未然に且つ確実に防止して作業上の安全性及び信頼性を確保することを目的としてなされたものである。
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
本願の第1の発明では、車両1上に旋回台2を介して起伏自在に取付けられた伸縮ブーム3の先端ブーム3Cの先端部にジブ基台5を介してジブ4をチルト可能に取付けるとともに、上記ジブ基台5にジブ用マスト41,42をジブチルト方向に回動可能に取付け、上記ジブ4の先端部と上記ジブ用マスト41,42をバックテンション部材43で連結するとともに上記ジブ用マスト41,42を上記旋回台2側に配置したバックテンションウィンチ47から繰出されるバックテンションロープ44に接続し、該バックテンションロープ44の巻込み・繰出しによって上記ジブ4をチルトさせるようにしたジブ装置40と、上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aにブーム用マスト11を取付け、該ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の基端部とをテンション部材13によって連結する一方、該ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の先端部の間に、又は上記ジブ基台5の間にテンションロープ14を掛け回し、該テンションロープ14を上記ブーム用マスト11に配置したテンションウィンチ15によって巻込み繰出し可能とするとともに、上記テンションロープ14にテンション付与手段16によってプリテンションを付与して上記伸縮ブーム3の撓みを抑制するようにしたブーム撓み抑制装置10を備えたブーム付き作業機において、上記テンションウィンチ15に制動力を付与するブレーキ手段30と、上記ジブ4が張出又は格納作業中であるときに上記ブレーキ手段30を開放して上記テンションウィンチ15を巻込作動させる作動制御手段51を備えたことを特徴としている。
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係るブーム付き作業機において、上記ブレーキ手段30を、上記テンションウィンチ15の停止状態においてこれに制動力を付与するメカニカルブレーキ15cと、上記テンションウィンチ15の巻込用油路32と繰出用油路33にそれぞれ設けられた繰出用ブレーキ弁34と巻込用ブレーキ弁35で構成し、上記作動制御手段51を、上記ジブ4が張出又は格納作業中であるときには上記メカニカルブレーキ15cと巻込用ブレーキ弁35を開放し、上記テンションウィンチ15を巻込み作動させるように構成したことを特徴としている。
本願の第3の発明では、車両1上に旋回台2を介して起伏自在に取付けられた伸縮ブーム3の先端ブーム3Cの先端部にジブ基台5を介してジブ4をチルト可能に取付けるとともに、上記ジブ基台5にジブ用マスト41,42をジブチルト方向に回動可能に取付け、上記ジブ4の先端部と上記ジブ用マスト41,42をバックテンション部材43で連結するとともに上記ジブ用マスト41,42を上記旋回台2側に配置したバックテンションウィンチ47から繰出されるバックテンションロープ44に接続し、該バックテンションロープ44の巻込み・繰出しによって上記ジブ4をチルトさせるようにしたジブ装置40と、上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aにブーム用マスト11を取付け、該ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の基端部とをテンション部材13によって連結する一方、該ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の先端部の間に、又は上記ジブ基台5の間にテンションロープ14を掛け回し、該テンションロープ14を上記ブーム用マスト11に配置したテンションウィンチ15によって巻込み繰出し可能とするとともに、上記テンションロープ14にテンション付与手段16によってプリテンションを付与して上記伸縮ブーム3の撓みを抑制するようにしたブーム撓み抑制装置10を備えたブーム付き作業機において、上記テンションウィンチ15の作動をロック・アンロックするドラムロック機構20と、上記ジブ4の張出又は格納作業に際して、上記テンションウィンチ15がロック状態にあるときには上記バックテンションウィンチ47による上記ジブ4の張出又は格納作業を許容する一方、上記テンションウィンチ15がアンロック状態にあるときには上記張出又は格納作業を禁止するように上記バックテンションウィンチ47の作動を制御する作動制御手段51を備えたことを特徴としている。
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係るブーム付き作業機において、上記作業機の限界性能を作業時に対応する作業時限界性能と該作業時限界性能よりも低性能側の非作業時限界性能に設定する作業機限界性能設定手段66を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されているときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成したことを特徴としている。
本願の第5の発明では、上記第4の発明に係るブーム付き作業機において、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部又は上記ジブ基台5に接続された状態であることを入力する作業状態入力手段65と、上記ジブ4のチルト角を検出するジブチルト角検出手段61を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されていることに加えて、上記作業状態入力手段65における作業状態の入力を受けた場合において、上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であるときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成したことを特徴としている。
本願の第6の発明では、上記第5の発明に係るブーム付き作業機において、上記バックテンションウィンチ47が操作されたことを検出するバックテンションウィンチ操作検出手段63を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されていること、上記作業状態入力手段65から作業状態の入力を受けたこと、及びジブチルト角検出手段61において上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であることが検出されたことに加えて、上記バックテンションウィンチ操作検出手段63において上記バックテンションウィンチ47が操作されたことが検出されたときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成したことを特徴としている。
本願の第7の発明では、上記第1又は第2の発明に係るブーム付き作業機において、上記テンションウィンチ15の作動をロック・アンロックするドラムロック機構20の作動状態を検出するテンションウィンチドラムロック検出手段64を備え、上記ドラムロック機構20がアンロック状態にあるときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成したことを特徴としている。
本願発明では次のような効果が得られる。
(a)本願の第1の発明に係るブーム付き作業機によれば、上記テンションウィンチ15に制動力を付与するブレーキ手段30と、上記ジブ4が張出又は格納作業中であるときに上記ブレーキ手段30を開放して上記テンションウィンチ15を巻込作動させる作動制御手段51を備えているので、上記ジブ4の張出又は格納作業において、該ジブ4の前方振り出しに伴って上記ジブ4の自重モーメントが増大し、これに伴って、上記伸縮ブーム3の撓み量が増加し、該伸縮ブーム3に設けられた上記ブーム撓み抑制装置10のテンションロープ14にかかる張力が増大したとしても、上記ブレーキ手段30が開放され上記テンションウィンチ15が巻込作動されるので、上記張力が上記テンションウィンチ15の巻込力を越えるような状態となった場合には、上記テンションロープ14は上記巻込力に抗して上記テンションウィンチ15から引き出されることとなり、これによって上記テンションロープ14に掛かる張力の最大値は上記テンションウィンチ15の巻込力に維持され、これを越えることはない。この結果、上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えた上記ブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、延いては上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保される。
(b)本願の第2の発明では、上記第1の発明に係るブーム付き作業機において、上記ブレーキ手段30を、上記テンションウィンチ15の停止状態においてこれに制動力を付与するメカニカルブレーキ15cと、上記テンションウィンチ15の巻込用油路32と繰出用油路33にそれぞれ設けられた繰出用ブレーキ弁34と巻込用ブレーキ弁35で構成し、上記作動制御手段51を、上記ジブ4が張出又は格納作業中であるときには上記メカニカルブレーキ15cと巻込用ブレーキ弁35を開放し、上記テンションウィンチ15を巻込み作動させるように構成しているので、例えば、上記テンションロープ14の張力が上記テンションウィンチ15の巻込力を越えるような状態となった場合には、上記テンションロープ14は上記巻込力に抗して上記テンションウィンチ15から引き出されることで上記テンションロープ14に掛かる張力の最大値は上記テンションウィンチ15の巻込力に維持され、これを越えることはなく、この結果、上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか巻込用ブレーキ弁35等のブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、延いては上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保される。
(c)本願の第3の発明に係るブーム付き作業機によれば、上記テンションウィンチ15の作動をロック・アンロックするドラムロック機構20と、上記ジブ4の張出又は格納作業に際して、上記テンションウィンチ15がロック状態にあるときには上記バックテンションウィンチ47による上記ジブ4の張出又は格納作業を許容する一方、上記テンションウィンチ15がアンロック状態にあるときには上記張出又は格納作業を禁止するように上記バックテンションウィンチ47の作動を制御する作動制御手段51を備えているので、上記バックテンションウィンチ47の操作に先立って、上記ドラムロック機構20のロック操作が必要であるにも拘らず、このロック操作が行われないまま上記バックテンションウィンチ47が作動するという事態の発生が未然に且つ確実に防止され、延いては上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保される。
(d)本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係るブーム付き作業機において、上記作業機の限界性能を作業時に対応する作業時限界性能と該作業時限界性能よりも低性能側の非作業時限界性能に設定する作業機限界性能設定手段66を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されているときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成している。
このような非作業時限界性能の設定状態下においては、上記ジブ4の張出又は格納作業が実行され該ジブ4の前方振り出しに伴って該ジブ4の自重モーメントが増大し、上記伸縮ブーム3の撓み量の増加によって該伸縮ブーム3に設けられた上記ブーム撓み抑制装置10のテンションロープ14にかかる張力が過度に増大すると上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか減速機に損傷を与えることが懸念されるが、係る非作業時限界性能の設定状態をもって上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断され、この張出又は格納作業に適応した作動が実行されることで、即ち、上記ブレーキ手段30が開放されるとともに上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか巻込用ブレーキ弁35等のブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、あるいは上記バックテンションウィンチ47の操作に先立って上記ドラムロック機構20のロック操作が実行され、該ドラムロックの実行後に上記バックテンションウィンチ47が作動されることで上記ドラムロック機構20のロック操作が行われないまま上記バックテンションウィンチ47が作動するという事態の発生が未然に且つ確実に防止され、これら何れの場合においても、上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
(e)本願の第5の発明では、上記第4の発明に係るブーム付き作業機において、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部又は上記ジブ基台5に接続された状態であることを入力する作業状態入力手段65と、上記ジブ4のチルト角を検出するジブチルト角検出手段61を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されていることに加えて、上記作業状態入力手段65における作業状態の入力を受けた場合において、上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であるときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成しているので、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定された状態において、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部又は上記ジブ基台5に接続された状態であることが入力された場合、即ち、上記テンションロープ14の接続入力よって上記ブーム撓み抑制装置10が張出されて上記伸縮ブーム3の撓みによって上記テンションロープ14に張力が掛かる状態で、且つ上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であるとき、即ち、上記ジブ4の自重モーメントによって上記テンションロープ14に過大な張力が掛かることが想定される状態をもって初めて上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断され、この張出又は格納作業に適応した作動が実行されることで、即ち、上記ブレーキ手段30が開放されるとともに上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか巻込用ブレーキ弁35等のブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、あるいは上記バックテンションウィンチ47の操作に先立って上記ドラムロック機構20のロック操作が実行され、該ドラムロックの実行後に上記バックテンションウィンチ47が作動されることで上記ドラムロック機構20のロック操作が行われないまま上記バックテンションウィンチ47が作動するという事態の発生が未然に且つ確実に防止され、これら何れの場合においても、上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
また、上記ジブ4の張出又は格納作業中であるとの判断が、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されたことに加えて、上記テンションロープ14の接続状態が確認され、且つ上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であることが確認されたことをもって初めて行なわれることで、上記第4の発明の場合よりも上記判断の信頼性が高くなり、上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性がより一層高められることになる。
(f)本願の第6の発明では、上記第5の発明に係るブーム付き作業機において、上記バックテンションウィンチ47が操作されたことを検出するバックテンションウィンチ操作検出手段63を備え、上記作動制御手段51を、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されていること、上記作業状態入力手段65から作業状態の入力を受けたこと、及びジブチルト角検出手段61において上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であることが検出されたことに加えて、上記バックテンションウィンチ操作検出手段63において上記バックテンションウィンチ47が操作されたことが検出されたときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成しているので、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定された状態において、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部又は上記ジブ基台5に接続された状態であることが入力された場合、即ち、上記テンションロープ14の接続入力よって上記ブーム撓み抑制装置10が張出されて上記伸縮ブーム3の撓みによって上記テンションロープ14に張力が掛かる状態で、且つ上記ジブ4のチルト角が設定チルト角以上であるとき、即ち、上記ジブ4の自重モーメントによって上記テンションロープ14に過大な張力が掛かることが想定される状態において、さらに上記バックテンションウィンチ47が操作されたことが検出されたことをもって初めて上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断され、この張出又は格納作業に適応した作動が実行されることで、即ち、上記ブレーキ手段30が開放されるとともに上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか巻込用ブレーキ弁35等のブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、あるいは上記バックテンションウィンチ47の操作に先立って上記ドラムロック機構20のロック操作が実行され、該ドラムロックの実行後に上記バックテンションウィンチ47が作動されることで上記ドラムロック機構20のロック操作が行われないまま上記バックテンションウィンチ47が作動するという事態の発生が未然に且つ確実に防止され、これら何れの場合においても、上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
また、上記ジブ4の張出又は格納作業中であるとの判断が、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されたことに加えて、上記テンションロープ14の接続状態の確認と上記ジブ4のチルト角の確認、さらに上記バックテンションウィンチ47が操作されたことをもって初めて行なわれることで、上記第5の発明の場合よりも上記判断の信頼性が高くなり、上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性がより一層高められることになる。
さらに、上記バックテンションウィンチ47が操作されていない状態、即ち、実際に上記ジブ4の張出又は格納作業が行われていない状態にも拘らず上記テンションウィンチ15が無駄に巻込み作動されるのが確実に回避され、上記ブーム付き作業機におけるエネルギロスが可及的に抑制されることにもなる。
(f)本願の第7の発明は、上記第1又は第2の発明に係るブーム付き作業機において、上記テンションウィンチ15の作動をロック・アンロックするドラムロック機構20の作動状態を検出するテンションウィンチドラムロック検出手段64を備え、上記作動制御手段51を、上記ドラムロック機構20がアンロック状態にあるときに上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断するように構成しているので、上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定された状態において、上記ドラムロック機構20がアンロック状態にあるとき、即ち、上記テンションウィンチ15による上記テンションロープ14の巻込作動が可能な状態であるときに初めて上記ジブ4の張出又は格納作業中であると判断され、この張出又は格納作業に適応した作動が実行されることで、即ち、上記ブレーキ手段30が開放されるとともに上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで上記テンションロープ14に過大な張力が掛かって上記テンションウィンチ15に備えたメカニカルブレーキとか巻込用ブレーキ弁35等のブレーキ手段30に損傷を与えるということが未然に且つ確実に防止され、延いては上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
図2には、本願発明に係るブーム撓み抑制装置10を備えたブーム付きクレーン車Zを示している。ここで、このクレーン車Zの全体構成を概説する。
上記クレーン車Zは、車両1上に搭載された旋回台2に伸縮ブーム3の基端部を連結し、該伸縮ブーム3を上記旋回台2との間に配置したブーム起伏シリンダ6によって起伏動させるとともに、上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部に張出・格納可能に取付けられたブーム用マスト11を張出させてその先端部と上記伸縮ブーム3の基端部をテンション部材13によって連結するとともに、上記ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の先端部、即ち、先端ブーム3Cの先端部に設けられたブームヘッド3Dを後述のテンションロープ14によって連結し、これらテンション部材13とテンションロープ14の張力によって上記伸縮ブーム3の縦方向(起伏面に沿う方向)の撓み変形を抑制するようになっている。
なお、この実施形態では、上述のように、「上記ブーム用マスト11を上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部に張出・格納可能に取付ける」としているが、ここでいう「基端ブーム3Aの先端部」とは、図2に示すように上記基端ブーム3Aの先端及びその近傍部位に限定されるものではなく、該基端ブーム3Aの先端寄りの広い範囲を示すものであり、その他の構成として、例えば、基端ブーム3Aの長手方向中間部位置を選んで取付けることも可能である。
また、上記ブームヘッド3D側における上記テンションロープ14の接続位置を上記ブームヘッド3Dの幅方向(伸縮ブーム3に起伏面に直交する方向)に適宜張出させて設けることで、上記伸縮ブーム3の横方向(伸縮ブーム3に起伏面に直交する方向)の撓み変形を抑制することもできるものである(上掲の特許文献1参照)。
さらに、上記伸縮ブーム3の上記ブームヘッド3Dの先端にはジブ基台5を介してラフィングジブ4が連結可能とされている。このラフィングジブ4は、特許請求の範囲中の「ジブ」に該当するもので、上記ジブ基台5に対して前後方向に揺動可能に取付けられた前後一対のジブ用マスト41,42を介してその一端が上記ラフィングジブ4の先端に連結されたバックテンション部材43の他端に折返しシーブ45を介してバックテンションロープ44が接続され、該バックテンションロープ44を上記旋回台2側に配置したバックテンションウィンチ47によって巻込み・繰出しすることで、上記バックテンションロープ44の上記折返しシーブ45と上記旋回台2側に設けた固定シーブ46との間のロープ長さを増減させて上記ラフィングジブ4のチルト角を調整し得るようにしている。さらに、このラフィングジブ4の先端部からジブ用吊荷フック8が吊下されており、該ジブ用吊荷フック8を、上記旋回台2側に配置したジブ作業用ウィンチ48から巻込み・繰出しされるジブ作業用ロープ9によって昇降させることで該ジブ用吊荷フック8を使用してのジブ作業が行なわれる。
一方、上記マスト11は、図3に示すように、その基端部11aが上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部3Aaに、該伸縮ブーム3の起伏面に沿う方向の回動可能に枢支され、該マスト11と上記基端ブーム3Aとの間に配置したマスト起伏シリンダ12の伸縮動によって、同図に実線図示するように上記基端ブーム3Aに略直交するように立ち上がる張出姿勢と、同図に鎖線図示するように上記基端ブーム3Aに沿って倒伏格納された格納姿勢の間で姿勢変更される。なお、上記マスト11の張出姿勢は、上記基端ブーム3Aの軸方向視において、該基端ブーム3Aから略鉛直方向へ立ち上がる姿勢のみを指すのではなく、該基端ブーム3Aから側方へ傾斜状態で立ち上がる姿勢をも含むものである。また、上記マスト11は、同一構造をもつ左右一対のマスト体を、所定間隔をもって略平行に並置した状態で、又はそれぞれ側方へ拡開させた先開き状態で一体化して構成されており、該各マスト体を上記基端ブーム3Aの左右両側面の外側にそれぞれ位置させた状態で、該基端ブーム3A側に格納保持されるようになっている。
また、上記ブーム用マスト11の先端部11bには、該ブーム用マスト11の側面に直交する方向に延びる回転軸に支持された状態で一対の固定シーブ18(図6参照)が取付けられている。そして、この一対の固定シーブ18には上記テンションロープ14が巻き掛けられる。このテンションロープ14の取り回しについては後述する。
さらに、上記ブーム用マスト11の軸方向の中間部位には、次述のテンションウィンチ15とプリテンションシリンダ16が備えられている。
上記テンションウィンチ15は、図6、図8にも示すように、油圧モータ15bによって回転駆動されるドラム15aを備え、このドラム15aには上記テンションロープ14の一端が巻き掛けられる。また、上記油圧モータ15bにはメカニカルブレーキ15cが備えられるとともに、上記ドラム15aと油圧モータ15bの間には減速機15dが介設されている。
このテンションウィンチ15は、巻込動及び繰出動を通常の作動形態とするものであるが、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業時には通常の作動形態とは異なった作動を行なうように構成されている。即ち、上記テンションロープ14の先端側に設けられた折返しシーブ19を介して連結されたテンションロープ17の先端(図6参照)を上記伸縮ブーム3のブームヘッド3D側に連結した状態で上記伸縮ブーム3の伸長作動させる場合は、通常の作動形態であれば上記テンションウィンチ15を繰出作動させるところ、これを巻込作動させる。
このように巻込作動しているテンションウィンチ15から上記テンションロープ14を上記伸縮ブーム3の伸長力によって逆に引き出すことで、上記テンションウィンチ15の油圧回路(図8、図9参照)の油圧が上昇し、該油圧回路に設けた巻込用ブレーキ弁35が作動し上記テンションロープ14の引き出しが所定の抵抗をもった状態で行なわれ、その結果、上記テンションロープ14は上記伸縮ブーム3の伸長に伴って所定のブレーキ力が付与された状態で引き出されることになる(即ち、上記テンションロープ14には所定のテンションが掛けられた状態となる)。
なお、上記テンションウィンチ15の通常の巻込作動時、即ち、上記テンションロープ14を上記ドラム15aに巻き取るように該ドラム15aを回転させている場合(例えば、上記ブーム撓み抑制装置10の格納作業において上記伸縮ブーム3の縮小作動に追従させて上記テンションロープ14を上記テンションウィンチ15のドラム15aに巻き込んでいるような場合)において、上記テンションロープ14の巻き取り速度が上記伸縮ブーム3の縮小速度よりも大きくなって上記テンションロープ14に所定以上の張力が掛かったようなときには、油圧回路に設けた上記巻込用ブレーキ弁35が作動し上記油圧モータ15bがブレーキ装置として機能し、上記テンションロープ14の引き出し量が過大になるのが抑制される。
一方、上記テンションウィンチ15の一方のフランジ側には、ドラムロック機構20が備えられている。このドラムロック機構20は、掛止爪を備えた爪プレート21と該爪プレート21の掛止爪に選択的に掛止されるロック爪22を備え、該ロック爪22をロックシリンダ23によって揺動させてその爪を上記爪プレート21の爪に選択的に掛止させることで上記ドラム15aの回転をロックするようになっている。なお、このドラムロック機構20のロック・アンロック状態は、ロック・アンロック検出器24によって検出される。
上記プリテンションシリンダ16は、特許請求の範囲中の「テンション付与手段」に該当するもので、上記テンションロープ14に所定のプリテンションを付与するものであって、そのロッド端には上記テンションロープ14の一端が連結される。このプリテンションシリンダ16には、圧力検出器25又はストローク検出器26が付設され、上記圧力検出器25によって検出される上記プリテンションシリンダ16の油圧値によって、又は上記ストローク検出器26によって検出される上記プリテンションシリンダ16のストローク(即ち、上記テンションロープ14の長さの変化量)によって、それぞれ上記テンションロープ14に付与されたプリテンションの大きさが検出されるようになっている。
なお、この実施形態においては、上記プリテンションシリンダ16を用いて上記テンションロープ14にプリテンションを付与するようにしているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記プリテンションシリンダ16を設けることなく上記テンションウィンチ15を用いてプリテンションを付与する構成とか、上記プリテンションシリンダ16に代えてモータ駆動のウィンチを設け、該ウィンチによりプリテンションを付与する構成等、種々の形態を採用し得るものである。
ここで、図2、図3及び図6を参照して、上記テンションロープ14の取り回しについて説明する。
上記伸縮ブーム3の先端の上記ブームヘッド3Dには、テンションロープ17を介して折返しシーブ19が連結されている(図2参照)。また、上記折返しシーブ19には、図6に示すように、上記テンションロープ14が巻き掛けられている。そして、このテンションロープ14の一端側は、上記ブーム用マスト11の先端部に設けられた一対の固定シーブ18のうちの一方側を経て上記テンションウィンチ15のドラム15aに巻き付けられている。一方、上記テンションロープ14の他端は、上記一対の固定シーブ18のうちの他方側を経て上記プリテンションシリンダ16のロッド端に連結されている。
なお、この実施形態では、上記折返しシーブ19に巻き掛けられた上記テンションロープ14の先端部を、該折返しシーブ19に連結された上記テンションロープ17を介して上記伸縮ブーム3のブームヘッド3Dに接続するようにしているが、他の実施形態においては上記テンションロープ17の長さを短くするとか、場合によっては上記折返しシーブ19を直接上記ブームヘッド3Dに取付けるなど、種々の態様を採り得るものであり、この点においてこれらの構成は、請求項1における「ブーム用マスト(11)の先端部と上記伸縮ブーム(3)の先端部の間にテンションロープ(14)を掛け回し、」という構成の範囲内であって、これを逸脱しないものである。
従って、上記テンションウィンチ15が巻込動あるいは繰出動を行なうことで、上記テンションロープ14の上記ブーム用マスト11と上記折返しシーブ19との間の長さが変化し、上記伸縮ブーム3の伸縮動に上記テンションロープ14の長さを追従させることができる。
そして、上記伸縮ブーム3を所要長さに設定した時点で、上記ドラムロック機構20を作動させて上記テンションウィンチ15をロックし、その時点における上記テンションロープ14の長さを保持させる。このテンションウィンチ15のロック時点で上記テンションロープ14にはある大きさのプリテンションが付与されているが、上記ドラムロック機構20のロック位置(即ち、上記ロック爪22が選択的に掛止される上記爪プレート21における掛止爪の選択)のみによってはプリテンションの微調整を行なうことは困難である。
このため、上記ドラムロック機構20を作動させて上記テンションウィンチ15をロックした後、上記プリテンションシリンダ16を適宜伸縮させて上記テンションロープ14のプリテンションを微調整する。
このように、上記伸縮ブーム3を所要長さに設定し、それに対応させて上記テンションロープ14の長さを調整し且つ上記プリテンションシリンダ16によって上記テンションロープ14に所定のプリテンションを付与することで、上記伸縮ブーム3の自重による撓みが所定範囲内に抑制される。この状態で、上記伸縮ブーム3のブームヘッド3Dから吊下された吊荷フック7(図2に鎖線図示)を用いて荷物を吊り下げることでクレーン作業が行なわれるが、この場合、上記ブーム撓み抑制装置10によって上記伸縮ブーム3の自重による撓みが所定範囲内に抑えられているため、該伸縮ブーム3が過度に撓みを生じることがなく、安全性に高いクレーン作業が実現されるものである。
ここで、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業について説明する。
図4には、上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態を示している。また、図5には、上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態からの張出作業の初期状態を示している。
図4に示す上記ブーム撓み抑制装置10の格納状態では、上記車両1はこれに備えられた各アウトリガによって浮上支持されている。また、上記伸縮ブーム3は略水平な全倒伏状態で且つ全縮状態とされている。さらに、上記ブーム撓み抑制装置10は、格納姿勢とされている。即ち、上記ブーム用マスト11は、上記マスト起伏シリンダ12が全縮することで上記伸縮ブーム3の側面に沿った略水平姿勢とされ、図示しない固定手段によって固定保持されている。この固定保持状態から、上記ブーム撓み抑制装置10の張出作業が開始される。
先ず、上記ブーム用マスト11の固定保持状態を解除し、しかる後、図5に示すように、上記伸縮ブーム3を全倒伏且つ全縮状態のまま、上記マスト起伏シリンダ12を伸長させて上記ブーム用マスト11を略水平の格納位置から略鉛直に立ち上がる張出位置まで回動させ、この張出位置で停止させる。
次に、上記ブーム用マスト11の先端部と上記伸縮ブーム3の基端部の間にテンション部材13を張設し、上記ブーム用マスト11の前倒を規制し得るように上記テンション部材13によって該ブーム用マスト11をその後方側から支持する。
次に、上記テンションウィンチ15を適宜巻込・繰出作動させながら、上記テンションロープ14の先端側に上記折返しシーブ19を介して連結された上記テンションロープ17の先端を、上記伸縮ブーム3の上記ブームヘッド3D側に接続する。しかる後、図5に矢印Aで示すように上記伸縮ブーム3を伸長させながら、矢印Dで示すように上記伸縮ブーム3を起仰させ、最終的に図2に示すような作業姿勢とする。この場合、上記伸縮ブーム3の伸長に伴って、上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで、上記テンションロープ14は所定のテンションが付与された状態のまま上記テンションウィンチ15から引き出される。
また、上記ブーム撓み抑制装置10の格納作業は、上記張出作業時とは逆の手順で行なわれる。即ち、図2に示す作業姿勢から、上記伸縮ブーム3を倒伏且つ縮小作動させながら図5に示す姿勢とする。この場合、上記伸縮ブーム3の縮小に伴って、上記テンションウィンチ15が巻込作動されることで、上記テンションロープ14は所定のテンションが付与された状態のまま上記テンションウィンチ15側に巻き取られる。
そして、図5に示す姿勢に達した時点で、上記テンションロープ17の先端を上記ブームヘッド3D側から切り離してこれを上記ブーム用マスト11側に格納保持させる。しかる後、上記マスト起伏シリンダ12を縮小作動させて上記ブーム用マスト11を立ち上がり姿勢から後傾させて、最終的に、図4に示すように該ブーム用マスト11を上記伸縮ブーム3側に固定保持する。
また、上記ブーム撓み抑制装置10の張出及び格納作業時の他に、作業姿勢において上記伸縮ブーム3を伸縮させる場合もあり、この場合は、上記伸縮ブーム3の伸縮作動に伴って上記テンションウィンチ15を巻込・繰出作動させて、常時上記テンションロープ14に一定のテンションが作用するようにする。
次に、上記伸縮ブーム3の先端に対する上記ラフィングジブ4の張出・格納作業について説明する。
上記ラフィングジブ4は、所定長さをもつ複数のジブ体を順次継ぎ足して所要長さのラフィングジブ4とされ、組立後、上記ジブ基台5を介して上記ブームヘッド3Dの先端に連結され、且つその前方側へ所要のチルト角をもって張出される。
ここで、上記ラフィングジブ4の組立工法には平組工法と立組工法がある点、及びこれら何れかの工法にて組み立てられたラフィングジブ4の基端を上記伸縮ブーム3のブームヘッド3Dの先端側に上記ジブ基台5を介して連結し、さらにこれを前方上方へ振り出して上記ブームヘッド3Dの先端側において所要のチルト角をもって張出させる点については、図7を参照して既述した通りである。
また、上記ラフィングジブ4の張出・格納作業(着脱作業)に際して操作される上記テンションウィンチ15の二つの油圧回路の回路構成についても図8及び図9を参照して既述した通りである。
さらに、ラフィングジブ4の張出・格納を上記バックテンションウィンチ47の巻込・繰出作動によって行なう場合において、上記テンションウィンチ15の作動を停止させて上記テンションロープ14に掛かる張力を該テンションウィンチ15に付設されたメカニカルブレーキ15cによって保持する場合における問題点、及び上記テンションウィンチ15をロックして上記テンションロープ14に掛かる張力をドラムロック機構20において保持する場合における問題点についても、既述した通りである。
従って、以下においては、これら既述事項を踏まえた上で、上記問題点を解決するための第1及び第2の制御手法を説明する。
先ず、上記各制御手法に共通する制御内容を、図1に示す制御ブロック図に基づいて説明する。
この実施形態における制御系は、図1に示すように、情報入力系60と、該情報入力系60からの入力情報に基づいて各種の演算処理を行なう制御系50と、該制御系50からの出力信号を受けて動作する出力系70を備えて構成される。
上記情報入力系60は、
上記ラフィングジブ4の現在のチルト角を検出し、これをチルト角信号「C1」として出力するジブチルト角検出手段61と、
上記ブーム撓み抑制装置10の上記テンションロープ14の接続状態(接続されているか、接続されていないか)がオペレータによって入力され、これを接続状態信号「C2」として出力するロープ接続状態入力手段62と、
上記バックテンションウィンチ47が操作されているか否かを検出し、これをウィンチ操作信号「C3」として出力するバックテンションウィンチ操作検出手段63と、
上記テンションウィンチ15のドラム15aが上記ドラムロック機構20によってロックされているか否かを検出し、これをドラムロック信号「C4」として出力するテンションウィンチドラムロック検出手段64(図6に示すロック・アンロック検出器24に該当する)と、
上記テンションウィンチ15がアンロック状態で且つ上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部に接続された状態であることを入力し、作業状態信号「C5」を出力する作業状態入力手段65と、
クレーン車Zの限界性能を作業時に対応する作業時限界性能と該作業時限界性能よりも低性能側の非作業時限界性能に設定し、限界性能信号「C6」を出力する作業機限界性能設定手段66と、
を備えて構成される。
なお、ここでは、ラフィングジブ4のチルト角を上記ジブチルト角検出手段61によって直接検出するように構成しているが、係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記伸縮ブーム3の起伏角(対地角)と上記ラフィングジブ4の起伏角(対地角)に基づいて上記ラフィングジブ4のチルト角を演算にて求めるように構成することもできる。
上記出力系70は、次述の制御系50側からの信号を受けて所定の出力態様を実現するものであって、上記テンションウィンチ15を作動させるべく油圧系を制御するテンションウィンチ作動バルブ71と、上記バックテンションウィンチ47を作動させるべく油圧系を制御するバックテンションウィンチ作動バルブ72と、警報を発する警報手段73を備えて構成される。
なお、上記警報手段73における警報内容としては、例えば、上記ジブ4の張出又は格納作業に際して、作業機限界性能設定手段66が非作業時限界性能に設定されていないとき、上記テンションロープ14が上記伸縮ブーム3の先端部に接続されていないとき、バックテンションウィンチ47が操作されていないとき、テンションウィンチ15をロックすべきであるにもロックされていないとき、等において、これらを警報音、音声あるいはモニター画像にて報知する。
上記制御系50は、作動制御手段51を備えて構成され、該作動制御手段51は上記情報入力系60の各手段61〜66からの信号「C1」〜「C6」を受けて、上記出力系70の上記各構成要素の作動を制御する。この作動制御手段51による制御手法としては、以下に述べる第1の制御手法と第2の制御手法がある。これら各制御手法についてそれぞれ説明する。
第1の制御手法
第1の制御手法は、図8に示す油圧回路の第1の回路構成を前提とした制御手法である。即ち、この制御手法では、図8に示すように、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートに上記リリーフ圧切換バルブユニット36が備えられた回路構成をもつものにおいて、上記ラフィングジブ4の張出・格納作業時には上記ドラム15aを上記ロックシリンダ23によってアンロックとし、上記テンションロープ14に掛かる張力を上記メカニカルブレーキ15cで保持することを基本とするものである。
そして、この制御手法では、上記ラフィングジブ4の張出・格納作業時には、上記リリーフ圧切換バルブユニット36を低圧用リリーフバルブ39側に切り換えるとともに、上記ウィンチ切換バルブ31を巻込側へ操作して上記テンションウィンチ15を巻込作動させる。この場合、上記メカニカルブレーキ15cは、その油室に上記切換バルブ29から油圧が供給されることで、ブレーキ解除状態に保持されている。
このように上記テンションウィンチ15を上記低圧用リリーフバルブ39によって最高圧が規定された低圧状態で巻込作動させて上記ラフィングジブ4の張出・格納作業が行なわれると、上記ラフィングジブ4の前方振り出しによって該ラフィングジブ4の自重モーメントが増大し、上記伸縮ブーム3の撓み量が過大となり、これに伴って上記テンションロープ14の張力が増大し、この張力が、上記低圧用リリーフバルブ39によって低圧設定された上記テンションウィンチ15の巻込力を越えると、上記テンションロープ14は上記巻込力に抗して上記ドラム15aから引き出され、これによって上記テンションロープ14に掛かる張力の最大値は常時所定値、即ち、上記低圧用リリーフバルブ39によって低圧設定された油圧に対応する張力に維持される。
この結果、従来のように、上記テンションロープ14の過大な張力によって上記メカニカルブレーキ15cとか減速機15dが損傷を受けることが未然に且つ確実に回避され、延いては上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
ここで、上記ラフィングジブ4が張出・格納作業中であるとの判断は、
(a) 上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されているとき、
(b) 上記(a)に加えて、上記ロープ接続状態入力手段62から上記テンションロープ14が接続状態にあることが入力され、しかも上記ジブチルト角検出手段61により上記ラフィングジブ4のチルト角が設定チルト角以上であることが検出されたとき、
(c) 上記(a)及び(b)に加えて、上記バックテンションウィンチ操作検出手段63により上記バックテンションウィンチ47が操作されたことが検出されたとき、
(d) 上記(a)に加えて、上記テンションウィンチドラムロック検出手段64により上記ドラムロック機構20がアンロック状態にあることが検出されたとき、
これら(a)〜(d)の何れかによって行なわれる。
また、通常、クレーン車Zに備えられている過負荷防止装置は、該クレーン車Zの安定性能確保の観点から、限界性能として、通常のクレーン作業に対応する作業時限界性能と該作業時限界性能よりも低性能側の非作業時限界性能を備え、これら両性能をオペレータが実際の作業状態をみて設定するものであることから、この過負荷防止装置を上記作業機限界性能設定手段66として用いることができる。
第2の制御手法
第2の制御手法は、図9に示す油圧回路の第2の回路構成を前提とした制御手法である。即ち、この制御手法では、図9に示すように、上記巻込用ブレーキ弁35のベントポートに上記リリーフ圧切換バルブユニット36が備えられていない回路構成をもち、上記テンションウィンチ15の通常の巻込作動は上記巻込用ブレーキ弁35によって設定された最高油圧の下で実行されるものにおいて、上記バックテンションウィンチ47を使用して行なわれる上記ラフィングジブ4の張出又は格納作業を、上記ドラムロック機構20がロック状態にあるとき(即ち、上記テンションウィンチ15がロック状態にあるとき)には許容し、上記テンションロープ14に掛かる張力を上記ドラムロック機構20のロック力で保持させる一方、上記ドラムロック機構20がアンロック状態にあるとき(即ち、上記テンションウィンチ15がアンロック状態にあるとき)には禁止することを基本とするものである。従って、この制御手法では、上記ラフィングジブ4の張出・格納作業時には、上記テンションウィンチ15は作動停止され、従って上記メカニカルブレーキ15cはブレーキ状態に保持されている。
このように上記テンションウィンチ15をロックした状態で上記バックテンションウィンチ47による上記ラフィングジブ4の張出・格納作業が実行されると、例え上記ラフィングジブ4の前方振り出しによって該ラフィングジブ4の自重モーメントが増大し、上記伸縮ブーム3の撓み量が過大となって上記テンションロープ14の張力が増大したとしても、上記テンションロープ14に掛かる張力は、上記ドラムロック機構20におけるロック力で保持されるため、上記テンションロープ14の過大な張力によって上記メカニカルブレーキ15cとか減速機15dが損傷を受けるという事態は起こり得ない。
しかし、この制御手法では、上記バックテンションウィンチ47の操作に先立って、上記ドラムロック機構20によって上記テンションウィンチ15をロックすることが必須の操作であるところ、係る操作を忘れることも否定できず、仮に上記テンションウィンチ15のロック操作を忘れた場合には、上記テンションロープ14の過大な張力によって上記メカニカルブレーキ15cとか減速機15dが損傷を受けることも起こり得る。
しかし、この制御手法では、上述のように、上記テンションウィンチ15がロック状態にあるときには上記バックテンションウィンチ47の作動が許容されるものの、上記テンションウィンチ15がアンロック状態にあるときには上記バックテンションウィンチ47の作動が禁止されるようになっているので、上記テンションウィンチ15がロックされないまま上記バックテンションウィンチ47が作動するという事態の発生が未然に且つ確実に防止され、これによって上記ブーム付き作業機の作業上の安全性及び信頼性が確保されることになる。
ここで、上記ラフィングジブ4が張出・格納作業中であるとの判断は、
(a) 上記作業機限界性能設定手段66において非作業時限界性能が設定されているとき、
(b) 上記(a)に加えて、上記ロープ接続状態入力手段62から上記テンションロープ14が接続状態にあることが入力され、しかも上記ジブチルト角検出手段61により上記ラフィングジブ4のチルト角が設定チルト角以上であることが検出されたとき、
(c) 上記(a)及び(b)に加えて、上記バックテンションウィンチ操作検出手段63により上記バックテンションウィンチ47が操作されたことが検出されたとき、
これら(a)〜(c)の何れかによって行なわれる。
その他
上記実施形態においては、ジブとしてラフィングジブ4を採用した場合を例にとって説明したが、例えば、伸縮式で且つ伸縮ブーム3との間に配置したチルトシリンダによってチルト角を調整可能とした構成のジブであっても、これを前方へ振り出して上記伸縮ブーム3の先端側に張出・格納する場合において自重モーメントが大きく変化するという点は上記ラフィングジブ4の張出・格納時と同様であり、従って、本願発明は係る構成のジブを備えた場合にも同様に適用できるものである。