JP2011117104A - 積層中間体、積層体、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、人工皮革等の表皮材と基材との接着性が充分で、且つ表皮材や基材の変形による外観不良等の問題が回避できる、表皮材と熱接着性樹脂層からなる積層中間体、表皮材と基材との積層体、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択される表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層してなる積層中間体、さらに、前記積層中間体の熱接着性樹脂層を介して、積層中間体と、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布から選択される基材を接着積層してなる積層体である。
【選択図】なし
【解決手段】人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択される表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層してなる積層中間体、さらに、前記積層中間体の熱接着性樹脂層を介して、積層中間体と、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布から選択される基材を接着積層してなる積層体である。
【選択図】なし
Description
本発明は、人工皮革、スエード調織物やスエード調編物、合成皮革等(以下、これらを総称して「繊維布帛等」ということがある。)の表皮材と熱接着性樹脂層とを積層した、靴の甲材や衣類、インテリア用途に用いられる熱可塑性ポリウレタン(以下、「TPU」という場合がある。)や織編物、不織布等の基材との接着積層が可能な積層中間体、当該積層中間体と基材とを接着積層した積層体、及び積層中間体,積層体の製造方法に関する。
従来より装飾等の意匠性向上や補強の目的で、比較的低強度の表皮材と、基材となる他素材とを接着する方法は知られている。
また、接着する方法としてホットメルトフィルム等を表皮材と基材間に介在させて、そのつど加熱・加圧して接着させる方法は公知であるが、この方法によるときは、表皮材と基材の軟化点や融点及び接着力を考慮してホットメルトフィルムを選択し、当該ホットメルトフィルムを軟化乃至溶融させて、表皮材と基材とを接着させる必要がある。この場合、表皮材として空隙の多い人工皮革や織物ベースやニットベースのスエードの裏面、あるいは基布にポリウレタンや塩ビ等の樹脂をコーティングした合成皮革の裏面は、平滑ではないので、ホットメルトフィルムがこれらの表皮材の裏面側へ溶融含浸する度合いは、基材の材質、加熱温度、圧力、ホットメルトフィルムの溶融粘度や軟化度合等に依存し、これを一定にコントロールすることは難しく、表皮材と基材との剥離強力にばらつきが生ずるのは避けられない状況にあった。
また、接着する方法としてホットメルトフィルム等を表皮材と基材間に介在させて、そのつど加熱・加圧して接着させる方法は公知であるが、この方法によるときは、表皮材と基材の軟化点や融点及び接着力を考慮してホットメルトフィルムを選択し、当該ホットメルトフィルムを軟化乃至溶融させて、表皮材と基材とを接着させる必要がある。この場合、表皮材として空隙の多い人工皮革や織物ベースやニットベースのスエードの裏面、あるいは基布にポリウレタンや塩ビ等の樹脂をコーティングした合成皮革の裏面は、平滑ではないので、ホットメルトフィルムがこれらの表皮材の裏面側へ溶融含浸する度合いは、基材の材質、加熱温度、圧力、ホットメルトフィルムの溶融粘度や軟化度合等に依存し、これを一定にコントロールすることは難しく、表皮材と基材との剥離強力にばらつきが生ずるのは避けられない状況にあった。
最近、環境に配慮しつつ生産性の向上を目的に、縫製に拠らない製靴方法(ノーソー・ボンディング法=No sew bonding)が一部採用されつつあり、人工皮革、熱接着性フィルム及び甲皮材となる基材としての他素材とを別々に型抜き等により作製し、それらを重ね合せて同時に熱接着するか、あるいは人工皮革と熱接着性フィルムを仮接着した後に、他素材を熱接着することが一般的であったが、その方法では接着状態が不安定で接着強力が弱くなる傾向があった。また、それを防ぐ為に接着時にさらに高温高圧をかけると人工皮革や靴の甲材が変形したり潰れたりして悪影響を及ぼすという問題があった。特に高比重の人工皮革の裏面を低比重のメッシュ状基材と張り合わせる場合、人工皮革の内部に熱接着性樹脂が埋設され難く、アンカー効果による接着強力が十分でないことや、加熱・加圧による熱接着性樹脂の機能が十分に発揮せず、また熱接着性フィルムとの積層状態が変動し易く、特に上記問題点が顕著であった。
一方、特許文献1には、低温での加熱成形に優れた皮革様シート状積層体が提案されている。この皮革様シート状積層体は、皮革様シート状物の表層、樹脂中間層及び基材層からなる積層体であって、中間層が他の層の成形温度より少なくとも30℃低い成形温度の樹脂で成っている。
また、特許文献2には、伸び止め性を改良しながら、ソフト性と座屈性のバランスをとる目的で、極細繊維および/または極細繊維束からなる繊維集合体と該繊維集合体の繊維間空隙に存在する高分子弾性体(A)とから構成されるシート層(1)と、主として繊維から構成させるシート層(2)とが、特定の100%伸長応力を有する高分子弾性体(B)により接着されている皮革様シート状物及びその製造方法が提案されている。しかしながら、該方法は、有機溶剤に溶解した高分子弾性体あるいは水分散体を塗布して2種類のシート層を接着するもので、溶液状の接着剤の塗布を伴うものである。
また、特許文献2には、伸び止め性を改良しながら、ソフト性と座屈性のバランスをとる目的で、極細繊維および/または極細繊維束からなる繊維集合体と該繊維集合体の繊維間空隙に存在する高分子弾性体(A)とから構成されるシート層(1)と、主として繊維から構成させるシート層(2)とが、特定の100%伸長応力を有する高分子弾性体(B)により接着されている皮革様シート状物及びその製造方法が提案されている。しかしながら、該方法は、有機溶剤に溶解した高分子弾性体あるいは水分散体を塗布して2種類のシート層を接着するもので、溶液状の接着剤の塗布を伴うものである。
しかしながら、特許文献1に記載の皮革様シート状物積層体は、特に高比重の人工皮革の裏面を低比重のメッシュ状基材と張り合わせる場合、人工皮革の内部に熱接着性樹脂が埋設され難く、アンカー効果による接着強力が十分でないという前述の問題点の改良については言及されていない。
また、特許文献2に記載の皮革様シート状物の製造方法では、有機溶剤に溶解した溶液状の接着剤を塗布して2種類のシート層を接着するものであり、各シート層への侵入深さ(浸透度合い)は各シート層の性状に依存するので、その制御は難しく、一定の柔軟性を有する皮革様シート状物を製造することは難しい。また、熱溶融性フィルムによる熱圧着での接着安定性については、何ら示唆されていない。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、人工皮革等の表皮材と基材との接着性が充分で、且つ表皮材や基材の変形による外観不良等の問題が回避できる、表皮材と熱接着性樹脂層からなる積層中間体、表皮材と基材との積層体、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
また、特許文献2に記載の皮革様シート状物の製造方法では、有機溶剤に溶解した溶液状の接着剤を塗布して2種類のシート層を接着するものであり、各シート層への侵入深さ(浸透度合い)は各シート層の性状に依存するので、その制御は難しく、一定の柔軟性を有する皮革様シート状物を製造することは難しい。また、熱溶融性フィルムによる熱圧着での接着安定性については、何ら示唆されていない。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、人工皮革等の表皮材と基材との接着性が充分で、且つ表皮材や基材の変形による外観不良等の問題が回避できる、表皮材と熱接着性樹脂層からなる積層中間体、表皮材と基材との積層体、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、あらかじめ繊維布帛等の表皮材の裏面に、表皮材との接着が適度な熱接着性樹脂層を形成して積層中間体とし、さらに表皮材との高い剥離強度が求められる場合には、表皮材を構成する繊維布帛等の厚みの少なくとも一部に熱接着性樹脂層を埋設(浸透)させた積層中間体を作製し(埋設の程度で剥離強力をコントロール)、その後、基材と貼り合せた積層体とすることで、表皮材や基材が変形するほどの高温高圧をかけなくとも積層一体化することが可能であることを知得した。
さらに、これらの積層中間体、積層体は、表皮材として、人工皮革を選択した場合において、人工皮革を構成する絡合不織布に含浸されるポリウレタン等の高分子弾性体の比率が少なく、かつ絡合不織布の比重が高い時に効果が高く、また、短繊維不織布よりは長繊維不織布において接着効果が高いことを知得した。
さらに、これらの積層中間体、積層体は、表皮材として、人工皮革を選択した場合において、人工皮革を構成する絡合不織布に含浸されるポリウレタン等の高分子弾性体の比率が少なく、かつ絡合不織布の比重が高い時に効果が高く、また、短繊維不織布よりは長繊維不織布において接着効果が高いことを知得した。
すなわち、本発明は、
(1)人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択される表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層してなることを特徴とする積層中間体、
(2)前記熱接着性樹脂層は、表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に埋設して積層してなる前記(1)に記載の積層中間体、
(3)前記表皮材が人工皮革である前記(1)又は(2)に記載の積層中間体、
(4)前記熱接着性樹脂層が熱接着性樹脂フィルム層である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層中間体、
(5)前記積層中間体の熱接着性樹脂層を介して、積層中間体と、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布から選択される基材を接着積層してなることを特徴とする積層体、
(6)前記基材が靴の甲材である前記(5)に記載の積層体、
(7)連続して供給される長尺状の表皮材の裏面と、該表皮材を構成する素材、及び後に積層する基材を構成する素材よりも低融点で、かつ両素材に対して接着性を有する長尺状熱接着性樹脂フィルムを重ね合わせ、加熱・加圧下に表皮材の裏面側において、該表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に該熱接着性樹脂フィルムの一部が埋設するように積層し、冷却した後、巻き取ることを特徴とする積層中間体の製造方法、
(8)前記表皮材が人工皮革である前記(7)に記載の積層中間体の製造方法、
(9)積層中間体の熱接着性樹脂フィルム表面側と基材とを重ね合わせ、加熱・加圧下に該表皮材と該基材を熱接着して積層することを特徴とする積層体の製造方法、
(10)前記基材が靴の甲材である前記(9)に記載の積層体の製造方法、及び
(11)前記(6)に記載の積層体を甲皮材としてなることを特徴とする靴、
を提供する。
(1)人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択される表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層してなることを特徴とする積層中間体、
(2)前記熱接着性樹脂層は、表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に埋設して積層してなる前記(1)に記載の積層中間体、
(3)前記表皮材が人工皮革である前記(1)又は(2)に記載の積層中間体、
(4)前記熱接着性樹脂層が熱接着性樹脂フィルム層である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層中間体、
(5)前記積層中間体の熱接着性樹脂層を介して、積層中間体と、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布から選択される基材を接着積層してなることを特徴とする積層体、
(6)前記基材が靴の甲材である前記(5)に記載の積層体、
(7)連続して供給される長尺状の表皮材の裏面と、該表皮材を構成する素材、及び後に積層する基材を構成する素材よりも低融点で、かつ両素材に対して接着性を有する長尺状熱接着性樹脂フィルムを重ね合わせ、加熱・加圧下に表皮材の裏面側において、該表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に該熱接着性樹脂フィルムの一部が埋設するように積層し、冷却した後、巻き取ることを特徴とする積層中間体の製造方法、
(8)前記表皮材が人工皮革である前記(7)に記載の積層中間体の製造方法、
(9)積層中間体の熱接着性樹脂フィルム表面側と基材とを重ね合わせ、加熱・加圧下に該表皮材と該基材を熱接着して積層することを特徴とする積層体の製造方法、
(10)前記基材が靴の甲材である前記(9)に記載の積層体の製造方法、及び
(11)前記(6)に記載の積層体を甲皮材としてなることを特徴とする靴、
を提供する。
本発明の積層中間体は、基材と積層(貼り合せ)するのに、表皮材や基材が変形するほどの高温高圧をかけなくとも、適度な接着強度で積層一体化することができるので、例えば、表皮材として人工皮革、基材として靴用の甲材を積層する場合、熱接着性樹脂層が積層された表皮材の積層中間体を用いれば、当該積層中間体は人工皮革と熱接着性樹脂とが既に接着積層されているので、靴用の甲材との接着に必要な適度の加熱・加圧を施すことによって、人工皮革表面や靴用甲材の変形を伴うことなく好適な状態の積層体を得ることができる。
特に、運動靴用甲材は、足とのフィット性等を考慮して、厚みが底部側と開口側や足の部位によって異なっていたり、甲材の積層枚数を部位毎に変化させる場合等があって、甲材の厚みが均一でない場合もあるが、そのような甲材と表皮材としての人工皮革を接着する場合であっても、既に人工皮革の裏面側に熱接着性樹脂層が積層された積層中間体としてあるので、当該積層中間体の熱接着性樹脂層と甲材とを加熱・加圧して接着積層すればよいので、均一な仕上がりで接着することができ、かつ、従来に比べて加熱時間を短縮でき、接着作業の省エネ化、省力化を図ることができる。
人工皮革を運動靴の甲材の部分的補強や、意匠的な目的で使用する場合に、本発明の人工皮革の積層中間体を用いれば、甲材と十分な接着強度のものが得られるので、従来のように甲材に縫着する必要がなく、無縫製接着法(ノーソー・ボンディング法)による靴の製造方法における意匠材、補強材等として好適に利用できる。
製靴方法における無縫製接着法に応用できるので、縫製工程を省くことができ、作業効率を向上させ得ると共に、新しい製靴方法に対し、接着時の表皮材(繊維布帛)および基材(他素材)の形態変化を伴うことなく、接着強力を安定に維持することが出来、靴のデザインの変更等に容易に対応できる。
縫製工程を省くことで作業効率を向上させると共に、新しい製靴方法に対し、接着時の繊維布帛および他素材の形態変化に影響を与えることなく接着強力を安定に維持することが出来る。
特に、運動靴用甲材は、足とのフィット性等を考慮して、厚みが底部側と開口側や足の部位によって異なっていたり、甲材の積層枚数を部位毎に変化させる場合等があって、甲材の厚みが均一でない場合もあるが、そのような甲材と表皮材としての人工皮革を接着する場合であっても、既に人工皮革の裏面側に熱接着性樹脂層が積層された積層中間体としてあるので、当該積層中間体の熱接着性樹脂層と甲材とを加熱・加圧して接着積層すればよいので、均一な仕上がりで接着することができ、かつ、従来に比べて加熱時間を短縮でき、接着作業の省エネ化、省力化を図ることができる。
人工皮革を運動靴の甲材の部分的補強や、意匠的な目的で使用する場合に、本発明の人工皮革の積層中間体を用いれば、甲材と十分な接着強度のものが得られるので、従来のように甲材に縫着する必要がなく、無縫製接着法(ノーソー・ボンディング法)による靴の製造方法における意匠材、補強材等として好適に利用できる。
製靴方法における無縫製接着法に応用できるので、縫製工程を省くことができ、作業効率を向上させ得ると共に、新しい製靴方法に対し、接着時の表皮材(繊維布帛)および基材(他素材)の形態変化を伴うことなく、接着強力を安定に維持することが出来、靴のデザインの変更等に容易に対応できる。
縫製工程を省くことで作業効率を向上させると共に、新しい製靴方法に対し、接着時の繊維布帛および他素材の形態変化に影響を与えることなく接着強力を安定に維持することが出来る。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の積層中間体は、人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択された表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層して形成している。
本発明の積層中間体に用いられる表皮材としては、繊維布帛全般に属するもので、特に人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択された表皮材を挙げることができるが、特に人工皮革が、意匠性、補強性を兼ね備えているので表皮材として好適である。なお、スエード調織物、スエード調編物としては、織物又は編物表面に存在する繊維を、針布やサンドペーパーで切断することによって起毛し、スエード調にしたものをいう。該繊維布帛に使用される繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーからなる長繊維を使用することができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミドや半芳香族ポリアミド等が挙げられる。
また、本発明の表皮材に用いられる合成皮革としては、銀面層や表面凹凸が付与された合成皮革、あるいは銀面層を有しない普通の合成皮革のいずれであってもよい。
合成皮革は、一般に、繊維質基材に熱可塑性エラストマー層が積層されたものであって、その製造方法によっては、特に限定されない。
合成皮革は、一般に、繊維質基材に熱可塑性エラストマー層が積層されたものであって、その製造方法によっては、特に限定されない。
以下、表皮材としての人工皮革について説明する。
本発明に用いられる人工皮革としては、表面が起毛されたスエード調人工皮革、あるいは銀付調人工皮革のいずれでもよく、人工皮革を構成する極細繊維絡合不織布の構成繊維は、短繊維、及び長繊維のいずれであってもよいが、特に裏面側の熱接着性樹脂層を当該人工皮革の厚み方向に含浸埋設させる観点から長繊維不織布においてより高い剥離強力(接着強度)を得ることができる。
本発明に用いられる人工皮革としては、表面が起毛されたスエード調人工皮革、あるいは銀付調人工皮革のいずれでもよく、人工皮革を構成する極細繊維絡合不織布の構成繊維は、短繊維、及び長繊維のいずれであってもよいが、特に裏面側の熱接着性樹脂層を当該人工皮革の厚み方向に含浸埋設させる観点から長繊維不織布においてより高い剥離強力(接着強度)を得ることができる。
本発明に用いられる人工皮革の繊維絡合不織布を構成する繊維としては、例えば、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型繊維等を経由して得られる極細繊維が挙げられる。極細繊維発生型繊維とは、海成分が、水、溶剤又は水酸化ナトリウム等の分解剤により溶解又は分解することで極細繊維にフィブリル化する、断面が海島構造を有する抽出型繊維(海島型繊維と称する場合もある。)、或いは機械的に又は処理剤によって各ポリマーからなる極細繊維にフィブリル化する分割型繊維等を総称したものである。もちろん通常の太さの繊維からなるものであってもよいし、更に上記極細繊維と通常繊維とを混合使用したものでもよい。
極細繊維を構成するポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、イソフタル酸変性ポリエステル、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレートをはじめとする溶融紡糸可能な芳香族ポリエステル類や、6−ナイロン、66−ナイロンをはじめとする溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリプロピレンで代表されるポリオレフィン類などから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。また、抽出型繊維で抽出又は分解除去される成分としては、極細繊維成分と水、溶剤又は分解剤に対する溶解性又は分解性を異にし、水や特定の溶剤又は分解剤に対する溶解性又は分解性が極細繊維成分に比べて高いポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えばポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、変性ポリエステルなどのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。この抽出型繊維の抽出(海)成分と極細繊維(島)成分の容量比は1:2〜2:1であって、海成分を抽出した後の好適な極細繊維の繊度は、0.1dtex以下であり、好ましくは0.5dtex以下、より好ましくは0.01〜0.0001dtexの範囲である。0.1dtexを越える場合には、表面を起毛しても、ヌバック調或いはスエード調の高級で且つきめの細かい光沢や触感が得られないし、銀付調にした場合には繊維の太さに基づく表面凹凸感が生じ易く、薄膜の銀面層を形成し難い傾向にある。また0.0001dtex未満の場合には、ヌバック調或はスエード調とした場合に染色による着色では所望する濃度の色が得られ難い傾向がある。
これらの繊維は、20〜75mm長の短繊維として採取した後、捲縮しカード法によりウェッブとした後、あるいはスパンボンド法のような直接法により紡糸と同時に長繊維状のウェッブとした後、ニードルパンチや高速流体により絡合処理して繊維絡合不織布とする。
次にこの繊維絡合不織布において、その柔軟性を可能な限り保った状態で必要な強度および安定性を確保することが必要であるが、その方法としては、柔軟性を保ったまま繊維を固定するように弾性重合体溶液が含浸されてもよいし、後に述べるように不織布の収縮による繊維交絡を十分に促進することで必要な強度および安定性を確保できるのであれば必ずしも弾性重合体溶液を含浸する必要は無い。
次にこの繊維絡合不織布において、その柔軟性を可能な限り保った状態で必要な強度および安定性を確保することが必要であるが、その方法としては、柔軟性を保ったまま繊維を固定するように弾性重合体溶液が含浸されてもよいし、後に述べるように不織布の収縮による繊維交絡を十分に促進することで必要な強度および安定性を確保できるのであれば必ずしも弾性重合体溶液を含浸する必要は無い。
弾性重合体溶液を含浸する場合には含浸処理に先立って、必要に応じて繊維絡合不織布を熱プレスなどの方法により表面平滑化処理を行ってもよい。またその後に行われる弾性重合体液の含浸・凝固や繊維構成ポリマーの抽出処理の際に生じやすい繊維絡合不織布の形状破壊を防ぐために繊維絡合不織布表面を加熱プレスして、構成繊維間を一部融着させる方法や、あるいはポリビニルアルコールで代表される水溶性樹脂を繊維絡合不織布に含浸させて繊維間を糊付け固定する方法を用いても良い。更には、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールや変性ポリエステルのように容易に熱収縮可能な樹脂を繊維成分として用いた場合には、湿熱、加熱または熱水等により収縮発現させることでより強固な繊維交絡を有する高繊維密度不織布とすることが可能である。
このようにして形成される繊維絡合不織布の厚さとしては、1.0〜3.0mmが好ましい。
このようにして形成される繊維絡合不織布の厚さとしては、1.0〜3.0mmが好ましい。
次に、繊維絡合不織布を熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの繊維密度および絡合度合を向上させてもよい。こうすることで、ウェブ絡合シート内の繊維同士がお互いに拘束しあい、シートの形態安定性を向上させることが出来るとともに人工皮革に仕上げたときに発現する充実感を、より天然皮革に近いものに出来るからである。
なお、この熱収縮工程においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させる場合には、短繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、繊維絡合体の繊維密度が特に高くなる。熱収縮処理条件は、十分な収縮が得られる温度であれば特に限定されず、採用する収縮処理方法や処理対象物の処理量などに応じて適宜設定すればよい。
例えば温水中へ導入して収縮処理する場合には、70〜150℃の温度範囲における何れかの温度で収縮処理するのが好ましい。また、乾熱収縮も好ましく採用されるが、湿熱収縮処理がより好ましく、湿熱収縮処理方法としては、スチーム加熱により行うことが好ましい。スチーム加熱条件としては、雰囲気温度が60〜100℃の範囲、相対湿度70〜100%RHの条件で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。このような加熱条件の場合には、ウェブ絡合シートを高収縮率で収縮させることができるので好ましい。なお、海島型繊維の構成成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合、相対湿度が低すぎる場合には、繊維に接触した水分が速やかに乾燥することにより、収縮が不充分になる傾向がある。
このように湿熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、極細繊維発生型繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、繊維密度が高められてもよい。十分な繊維交絡を確保し、高い繊維密度を確保することで十分な形態安定性を発現させることで、後に弾性樹脂を付与することなく本発明に用いる人工皮革の基体層として使用可能な程度まで繊維密度を高められることから、その結果人工皮革に仕上げたときに発現する充実感を、より天然皮革に近いものに出来るからである。
湿熱収縮処理工程におけるウェブ絡合シートの目付量の変化としては、収縮処理前の目付量に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2.0倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
なお、この熱収縮工程においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させる場合には、短繊維を含有するウェブ絡合シートを熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、繊維絡合体の繊維密度が特に高くなる。熱収縮処理条件は、十分な収縮が得られる温度であれば特に限定されず、採用する収縮処理方法や処理対象物の処理量などに応じて適宜設定すればよい。
例えば温水中へ導入して収縮処理する場合には、70〜150℃の温度範囲における何れかの温度で収縮処理するのが好ましい。また、乾熱収縮も好ましく採用されるが、湿熱収縮処理がより好ましく、湿熱収縮処理方法としては、スチーム加熱により行うことが好ましい。スチーム加熱条件としては、雰囲気温度が60〜100℃の範囲、相対湿度70〜100%RHの条件で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。このような加熱条件の場合には、ウェブ絡合シートを高収縮率で収縮させることができるので好ましい。なお、海島型繊維の構成成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合、相対湿度が低すぎる場合には、繊維に接触した水分が速やかに乾燥することにより、収縮が不充分になる傾向がある。
このように湿熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、極細繊維発生型繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、繊維密度が高められてもよい。十分な繊維交絡を確保し、高い繊維密度を確保することで十分な形態安定性を発現させることで、後に弾性樹脂を付与することなく本発明に用いる人工皮革の基体層として使用可能な程度まで繊維密度を高められることから、その結果人工皮革に仕上げたときに発現する充実感を、より天然皮革に近いものに出来るからである。
湿熱収縮処理工程におけるウェブ絡合シートの目付量の変化としては、収縮処理前の目付量に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2.0倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。
次に、繊維絡合不織布の形態安定性を高める目的で、繊維絡合不織布の極細繊維化処理を行う前又は後に、必要に応じて、高分子弾性体を凝固させることにより弾性重合体液を含浸し、加熱乾燥することでゲル化させるか或いは弾性重合体の非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固することで緻密な発泡スポンジを形成させてもよい。あるいは、高分子弾性体の水性液を繊維絡合不織布に含浸させた後に凝固させることにより形態安定性を向上させてもよい。
繊維絡合不織布(以下、「ウェブ絡合シート」という場合がある。)に高分子弾性体を含浸させる方法としては、高分子弾性体の溶液又は分散液を含浸し、従来公知の乾式法又は湿式法により凝固させる方法が挙げられる。含浸方法としては、ウェブ絡合シートを高分子弾性体の溶液又は分散液で満たされた浴中へ浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
繊維絡合不織布(以下、「ウェブ絡合シート」という場合がある。)に高分子弾性体を含浸させる方法としては、高分子弾性体の溶液又は分散液を含浸し、従来公知の乾式法又は湿式法により凝固させる方法が挙げられる。含浸方法としては、ウェブ絡合シートを高分子弾性体の溶液又は分散液で満たされた浴中へ浸した後、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
本実施形態における高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、アクリロニトリルエラストマー、オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、アクリルエラストマー等が挙げられる。またこれらを混合した重合体組成物でもよい。しかし、柔軟性、弾性回復性、スポンジ形成性等より上記ポリウレタンが好ましく用いられる。ここで含浸する弾性重合体としては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系或いは脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネート化合物と、2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物で分子量300以下の化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール−1,5、1,4−シクロヘキサンジオール、キシレングリコール等のジオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン等のジアミン化合物、アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン或いはヒドラジド類等から選ばれた少なくとも1種類とを反応させて得たポリウレタンである。特に本発明の目的を達成する上では、好ましくは、1,4−ブタンジオール又は3−メチルペンタンジオール−1,5を主体とした鎖伸長剤を所定のモル比で反応させて得たポリウレタンである。
なお弾性樹脂液中の弾性樹脂濃度は10〜50質量%、ヤング率は10〜150N/mm2の範囲が好ましい。また上記ポリウレタンとしてポリマージオールと上記分子化合物のモル比が1:1〜1:7の範囲が好ましい。
なお弾性樹脂液中の弾性樹脂濃度は10〜50質量%、ヤング率は10〜150N/mm2の範囲が好ましい。また上記ポリウレタンとしてポリマージオールと上記分子化合物のモル比が1:1〜1:7の範囲が好ましい。
繊維絡合不織布に弾性重合体を含有させた後に、弾性重合体及び極細繊維発生型繊維の島成分に対しては非溶剤でかつ海成分に対しては、溶剤又は分解剤として働く液体で処理する事により極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成し、極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなるシートとし、これを本発明の人工皮革の基体層として用いる。
もちろん、弾性重合体を含有させるのに先立って、極細繊維発生型繊維を極細繊維またはその束に変成する方法を用いてシートとしたものを基体層とすることもできる。このようにして形成される繊維絡合不織布の比重としては、0.4〜0.8g/cm3の範囲が人工皮革の充実感のある風合いと物性を兼ね備える点で好ましい。さらには、熱接着性樹脂のアンカー効果による接着強力に優れる点で好ましい。
そして、このように弾性重合体を含有させる場合において、その含有割合は本発明の人工皮革としての目的を達するものであれば特に限定されるものではないが、熱接着性樹脂のアンカー効果による接着強力に優れるおよび天然皮革様の柔軟で充実感に優れる点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
このようにして得られた本発明の人工皮革の基体層厚さは、0.5〜5.0mmであるのが好ましい。
もちろん、弾性重合体を含有させるのに先立って、極細繊維発生型繊維を極細繊維またはその束に変成する方法を用いてシートとしたものを基体層とすることもできる。このようにして形成される繊維絡合不織布の比重としては、0.4〜0.8g/cm3の範囲が人工皮革の充実感のある風合いと物性を兼ね備える点で好ましい。さらには、熱接着性樹脂のアンカー効果による接着強力に優れる点で好ましい。
そして、このように弾性重合体を含有させる場合において、その含有割合は本発明の人工皮革としての目的を達するものであれば特に限定されるものではないが、熱接着性樹脂のアンカー効果による接着強力に優れるおよび天然皮革様の柔軟で充実感に優れる点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
このようにして得られた本発明の人工皮革の基体層厚さは、0.5〜5.0mmであるのが好ましい。
本発明の銀付調人工皮革は、上記のようにして得られた人工皮革の基体層の少なくとも片面に高分子弾性体からなる被覆層を形成することにより得られる。被覆層は、人工皮革用基材の表面全体を覆っていてもよいし、表面の一部を覆うだけで、人工皮革用基材を構成する繊維あるいは高分子弾性体が露出していてもよい。前者は銀付き調と呼ばれ、後者は半銀付き調と呼ばれる。何れの場合であっても本発明の効果が得られる。被覆層の厚さは、基体層の厚さの0.1〜300%であるのが好ましい。
被覆層を形成する方法としては、乾式法、湿式法、あるいは乾式法と湿式法とを組み合わせた方法の何れもが採用可能であり、特に限定はない。乾式法としては、高分子弾性体の溶液、分散液または溶融液を人工皮革用基材の表面に直接塗布して熱乾燥などの熱処理により凝固させる方法や、高分子弾性体液を支持体に一旦塗布して乾燥などにより凝固する前、凝固する途中、凝固した後などの何れかの段階でシート状高分子弾性体を人工皮革用基材の表面に接着させる方法などがある。
被覆層を構成する高分子弾性体としては、絡合不織布に含浸させる高分子弾性体との接着性や感性面でのバランスを考慮して、含浸高分子弾性体と同種の高分子弾性体が好ましく、人工皮革用基材に関して説明した理由からポリウレタンが好ましい。
被覆層を形成する方法としては、乾式法、湿式法、あるいは乾式法と湿式法とを組み合わせた方法の何れもが採用可能であり、特に限定はない。乾式法としては、高分子弾性体の溶液、分散液または溶融液を人工皮革用基材の表面に直接塗布して熱乾燥などの熱処理により凝固させる方法や、高分子弾性体液を支持体に一旦塗布して乾燥などにより凝固する前、凝固する途中、凝固した後などの何れかの段階でシート状高分子弾性体を人工皮革用基材の表面に接着させる方法などがある。
被覆層を構成する高分子弾性体としては、絡合不織布に含浸させる高分子弾性体との接着性や感性面でのバランスを考慮して、含浸高分子弾性体と同種の高分子弾性体が好ましく、人工皮革用基材に関して説明した理由からポリウレタンが好ましい。
本発明のスエード調人工皮革は、上記にて得られた人工皮革の基体層の少なくとも片面を所望の立毛外観、タッチになるように従来の方法にて適宜起毛、あるいは起毛および整毛することにより得られる。立毛長さは、立毛の根元と先端の特定がしにくいので、正確な測定自体は困難であるが、通常、0.1〜5.0mmである。採用可能な起毛方法としては、エンドレスのサンドペーパーがセットされたバフィング機による方法、針布がセットされた起毛機による方法、人工皮革用基材を湿潤状態で起毛する方法などが挙げられる。立毛調人工皮革の外観、タッチに高級感を付与したい場合には、一般的にはバフィング機の使用を主体とした起毛方法が好ましい。
本発明の立毛調人工皮革は、起毛する前、または起毛した後に染色により着色することも好ましい。本発明においては使用する染料、あるいは染色方法について特に制約はない。
本発明の立毛調人工皮革は、起毛する前、または起毛した後に染色により着色することも好ましい。本発明においては使用する染料、あるいは染色方法について特に制約はない。
次に本発明の積層中間体を構成する熱接着性樹脂層の熱接着性樹脂は、一度溶融し、固化する際に当該人工皮革及び基材を接着する能力を有する熱可塑性樹脂であればよく、一般に熱接着性樹脂と呼ばれる樹脂であることが好ましい。
より好ましくは融点60〜160℃程度の熱接着性樹脂であれば樹脂種等で特に限定されるものではない。例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリオレフィン系(ポリエチレン系)、ポリエステル系、ポリアミド系(ナイロン系)、ポリスチレン系、ポリウレタン系の各種熱可塑性、あるいは尿素系、メラミン系、フェノール系、レゾシノール系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系の架橋タイプ樹脂いずれもが使用可能である。また、より強固な接着を発現させたい場合は、熱解離性の架橋剤(ブロック化架橋剤)を樹脂に添加しても良い。
より好ましくは融点60〜160℃程度の熱接着性樹脂であれば樹脂種等で特に限定されるものではない。例えば、酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルアセタール系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリオレフィン系(ポリエチレン系)、ポリエステル系、ポリアミド系(ナイロン系)、ポリスチレン系、ポリウレタン系の各種熱可塑性、あるいは尿素系、メラミン系、フェノール系、レゾシノール系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリウレタン系の架橋タイプ樹脂いずれもが使用可能である。また、より強固な接着を発現させたい場合は、熱解離性の架橋剤(ブロック化架橋剤)を樹脂に添加しても良い。
そしてこれらの熱接着性樹脂は、表皮材と基材との接着において、その接着強度と接着後の柔軟性を良好に保持するために、接着時に適度にその両者に浸透することが好ましい。そのため、本発明で使用する熱接着性樹脂は、その溶融時の流動性において所定の範囲にあることが好ましい。すなわち、樹脂の溶融流動性(MFR:melt flow rate)において、その値が1〜200の範囲にあることが好ましい。
この値が低すぎると、接着時に樹脂が流れやすくするように、より高温での接着が必要になり表皮材や基材を熱で劣化させてしまう可能性がある。逆に流動性が高すぎると表皮材あるいは基材の空隙に容易に流れ込んでしまうため、多量の接着剤を塗布することが必要になり、できた積層体が硬くなるとともに繊維の目を詰めてしまうため、通気性および透湿性を確保することも困難になる。
この値が低すぎると、接着時に樹脂が流れやすくするように、より高温での接着が必要になり表皮材や基材を熱で劣化させてしまう可能性がある。逆に流動性が高すぎると表皮材あるいは基材の空隙に容易に流れ込んでしまうため、多量の接着剤を塗布することが必要になり、できた積層体が硬くなるとともに繊維の目を詰めてしまうため、通気性および透湿性を確保することも困難になる。
本発明の熱接着性樹脂としては、表皮材と基材に対する親和性があればいいのであるが、より広範な種々の樹脂との接着性を有するウレタン系熱接着性樹脂が好ましい。該ポリウレタン樹脂を構成する成分としては、上記した含浸用のポリウレタン樹脂成分と同じ物を用いることができるが、各構成成分の平均分子量を変えたり、平均重合度を低下させる、あるいは含浸用ポリウレタンを構成する成分と異なる成分を選択することにより、該含浸用ポリウレタン樹脂よりも、軟化点が20℃以上低くした樹脂を選択することも、人工皮革からなる表皮材と基材を加熱・加圧して接着する際に人工皮革が潰れ難く、接着が十分に行える点で好ましい。
また、該熱接着性樹脂層は熱接着性樹脂フィルムからなる層であることが、取り扱い性と接着安定性に優れる点で好ましい。そして、熱接着性樹脂フィルムの厚みは、取り扱い性と接着強力に優れる点で、1mm〜5mmであることが好ましい。
また、該熱接着性樹脂層は熱接着性樹脂フィルムからなる層であることが、取り扱い性と接着安定性に優れる点で好ましい。そして、熱接着性樹脂フィルムの厚みは、取り扱い性と接着強力に優れる点で、1mm〜5mmであることが好ましい。
本発明の積層体に用いられる基材は、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布等の繊維布帛全般から選択される。
靴の甲材とは、甲皮とも称されるもので、本発明の積層体の基材に用いられる靴の甲材としては、足の全体を覆う内部甲皮材として、通気性を有する合成繊維布地、合成繊維の斜文織(ツイル)やメッシュ等の布状物や、補強を必要とする柔軟な人工皮革や、積層中間体により装飾されて意匠的効果を発現できる合成皮革等を挙げることができる。
靴の甲材とは、甲皮とも称されるもので、本発明の積層体の基材に用いられる靴の甲材としては、足の全体を覆う内部甲皮材として、通気性を有する合成繊維布地、合成繊維の斜文織(ツイル)やメッシュ等の布状物や、補強を必要とする柔軟な人工皮革や、積層中間体により装飾されて意匠的効果を発現できる合成皮革等を挙げることができる。
本発明の積層体は、例えば靴の甲皮材として用いられる場合には、展開状で内部甲皮材と積層中間体とを積層した後、例えば、所望のデザインの靴の甲皮材に立体成形し、靴底部と貼り合わせて靴とされる。
本発明の積層体に用いられる基材としての、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布は、積層中間体と当該基材との積層目的によって、適宜選択される。すなわち、表皮材が基材の補強を目的とする場合は、当該基材の全面又は所用部位に貼り合わされた積層体を、また基材が表皮材の補強を目的する場合や、表皮材を意匠材として用いる場合には、強度の高い布帛や人工皮革、合成皮革等による基材を適宜選択すればよい。
本発明の積層中間体の製造方法について説明する。図1は、本発明の積層中間体の製造方法の一例の説明図である。同図において1は積層中間体、2は熱接着性樹脂フィルム、3は表皮材(例えば人工皮革)であり、両者とも長尺状のロール巻きから供給される。これらは、表皮材の裏面側が熱接着性樹脂フィルムと向き合うように重ね合されて、加熱・加圧装置4に供給される。加熱・加圧装置4中を、通過するに従って、熱接着性樹脂フィルムが加熱・溶融され、表皮材3の裏面に熱接着性樹脂フィルムの厚みの一部が埋設された状態で含浸される。次いで、冷却・固化装置5で、溶融軟化状の熱接着性樹脂が冷却・固化され表皮材3の裏面に固着された積層中間体が形成され、その熱接着性樹脂層の表面に、ロール巻きされた離型紙6が連続して供給され、当該離型紙6を介在させた状態で巻取装置(図示省略)により連続的に巻き取られる。図1においては、加熱・加圧装置4は、エンドレスベルトによるダブルベルトプレスを例示したが、ローラー対を複数配置したもの等であってもよい。冷却・固化装置5は、液体による冷却ではなく、冷風、冷媒等による乾式の冷却手段を用いることが、表皮材への水分等の影響を防止する点で好ましい。なお、上記の離型紙6を介在させての巻き取りは、熱可塑性樹脂フィルムの粘着性が高い場合等に適宜採用されるものであって、熱可塑性樹脂フィルムの性状によっては必ずしも必要ではない。
表皮材が人工皮革である場合には、人工皮革の銀面又はスエード加工面を外表面とし、人工皮革の基体層としての繊維絡合不織布による繊維層が露出している裏面に、熱接着性樹脂フィルムの厚みの1/5〜1/2程度が埋設される程度に熱接着性樹脂を含浸させて、図3に模式的に示す埋設部Mが存在するような構成とすることが、例えば、靴の甲材との積層(貼り合せ)に用いるための積層中間体として好適である。このような、層構成の積層中間体とすれば、人工皮革の裏面側の繊維層と熱接着性樹脂とが、相互の親和性による接着に加えて、アンカー(投錨)効果によっても接着しているので、靴の甲皮材として積層して、靴に使用した場合、人工皮革が剥離し難い、実用的な剥離強力、接着強力を得ることができる。
図2は、表皮材の裏面が平滑な場合の積層中間体の層構成を模式的に示しており、表皮材として、合成皮革等を選択した場合、合成皮革の基材によって裏面が平滑で、熱接着性樹脂が、埋設層を形成するほどに含浸できない。そのような場合は、接着力の高い熱接着性樹脂を選択して積層中間体を形成すればよい。
本発明の積層体の製造方法は、積層中間体の熱接着性樹脂フィルム表面側と基材とを重ね合わせ、加熱・加圧下に該表皮材と該基材を熱接着して積層することを特徴としている。具体的には、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布等を基材として、これらと表皮材とを長尺や不定形で積層して、しかる後デザインされた寸法で使用する場合には、前述の積層中間体の製造方法に準じて、図1に示す装置を用いて連続的に積層する製造方法を採用できる。
一方、積層中間体を装飾等、意匠性向上の目的で基材に積層する場合には、型抜き等された所定の寸法形状の積層中間体を準備し、その熱接着性樹脂層を加熱溶融又は軟化して、基材の所定部位に積層すればよい。積層手段としては、加熱プレスが一般的である。
一方、積層中間体を装飾等、意匠性向上の目的で基材に積層する場合には、型抜き等された所定の寸法形状の積層中間体を準備し、その熱接着性樹脂層を加熱溶融又は軟化して、基材の所定部位に積層すればよい。積層手段としては、加熱プレスが一般的である。
表皮材として人工皮革の積層中間体を靴の甲皮と積層する場合であって、積層体を靴の甲皮材全体として使用する場合には、前述のように連続的な積層方法を採用できる。一方、靴の甲皮材の部分的補強や、意匠性の向上を目的として部分的に積層する場合には、所定形状に型抜きした積層中間体を、甲皮材の所定の位置に配置し、しかる後、加熱プレス等により積層すればよい。
なお、靴の甲材の補強部位としては、布製運動靴の踵補強部、爪先補強部、靴紐通し孔部、開口部、スケルトン状補強部等が挙げられる。
積層された靴用甲皮材は、その後立体成形等を施されて、靴底部材と接着されて靴に加工される。
なお、靴の甲材の補強部位としては、布製運動靴の踵補強部、爪先補強部、靴紐通し孔部、開口部、スケルトン状補強部等が挙げられる。
積層された靴用甲皮材は、その後立体成形等を施されて、靴底部材と接着されて靴に加工される。
次に、本発明の実施態様を具体的な実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、表皮材と基材の剥離強力は次の方法にて測定し、表皮材としての人工皮革スエード及び熱接着性樹脂フィルム、熱可塑性ポリウレタンシートは以下に記載するものを用いた。
〈積層体の表皮材と基材との剥離強力〉
測定試料:巾2.5cm、長さ23cm 接着板:巾3.0cm、長さ5.0cm、厚さ5.0mmのポリウレタン系ゴム板
接着剤 :二液タイプのポリウレタン系接着剤測定試料の作製:測定資料及び接着板に接着剤を塗布して、予備乾燥後に重ね合わせしてプレスし、25℃で24時間キュアリングしてから測定。
測定装置:島津オートグラフ引張速度100mm/分、記録用紙速度50mm/分
判定:最初の極大ピーク及び極小ピークを除外して、極大ピークの中から値の大きい5個(Ma1,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5)及び極小ピークの中から値の小さい5個(Mi1, Mi2, Mi 3, Mi4, Mi5)を選び出し、それら10個の平均値を求める。
測定試料:巾2.5cm、長さ23cm 接着板:巾3.0cm、長さ5.0cm、厚さ5.0mmのポリウレタン系ゴム板
接着剤 :二液タイプのポリウレタン系接着剤測定試料の作製:測定資料及び接着板に接着剤を塗布して、予備乾燥後に重ね合わせしてプレスし、25℃で24時間キュアリングしてから測定。
測定装置:島津オートグラフ引張速度100mm/分、記録用紙速度50mm/分
判定:最初の極大ピーク及び極小ピークを除外して、極大ピークの中から値の大きい5個(Ma1,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5)及び極小ピークの中から値の小さい5個(Mi1, Mi2, Mi 3, Mi4, Mi5)を選び出し、それら10個の平均値を求める。
<スエード調人工皮革>
人工皮革1
変性PVA(水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール:海成分)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(島成分)を、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度が2.0dtexの海島型長繊維をネット上に捕集し、目付37g/m2の長繊維ウェブを得た。
上記長繊維ウェブに油剤を付与し、クロスラッピングにより16枚重ねて総目付が592g/m2の重ね合わせウェブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3200パンチ/cm2でニードルパンチし、絡合ウェブを作成した。このニードルパンチ処理による面積収縮率は80%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は650g/m2であった。
絡合ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃熱水中に20秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップニップ処理を実施して変性PVAを溶解除去し、極細長繊維を25本含む、平均繊度2.4dtexの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作成した。乾燥後に測定した面積収縮率は50〜55%であり、目付は520g/m2、見掛け密度は0.55であった。また、剥離強力は、10.0kg/25mmであった。次いで、5%owfの分散染料により茶色に染色した。工程通過性(染色時の繊維の素抜けやほつれ、バフィング時の繊維の抜け等がない)は良好で、発色の良好な比重0.52g/cm3極細長繊維からなるスェード調人工皮革1を準備した。
人工皮革1
変性PVA(水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール:海成分)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(島成分)を、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より吐出した。紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、平均繊度が2.0dtexの海島型長繊維をネット上に捕集し、目付37g/m2の長繊維ウェブを得た。
上記長繊維ウェブに油剤を付与し、クロスラッピングにより16枚重ねて総目付が592g/m2の重ね合わせウェブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3200パンチ/cm2でニードルパンチし、絡合ウェブを作成した。このニードルパンチ処理による面積収縮率は80%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は650g/m2であった。
絡合ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃熱水中に20秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップニップ処理を実施して変性PVAを溶解除去し、極細長繊維を25本含む、平均繊度2.4dtexの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作成した。乾燥後に測定した面積収縮率は50〜55%であり、目付は520g/m2、見掛け密度は0.55であった。また、剥離強力は、10.0kg/25mmであった。次いで、5%owfの分散染料により茶色に染色した。工程通過性(染色時の繊維の素抜けやほつれ、バフィング時の繊維の抜け等がない)は良好で、発色の良好な比重0.52g/cm3極細長繊維からなるスェード調人工皮革1を準備した。
人工皮革2
人工皮革1と同様の方法で目付け650g/m2の絡合ウェブを作成し、表面から水分を10%付与させ、乾燥させないように70℃の温度で該絡合ウェブを面積で45%収縮させた。該収縮絡合ウェブを170℃の熱プレスで圧着し、比重を0.68g/m2に調整後、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなるポリウレタン(融点が180〜190℃、損失弾性率のピーク温度が−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%の高分子弾性体)を用いて固形分濃度が25質量%の水分散体を調製した。この水分散体を高分子弾性体と極細長繊維の質量比が15:85なるように上記の絡合不織布に含浸した後、120℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥させ、次いで90〜95℃の熱水中で変性PVAを溶解除去し、極細長繊維を25本含む、平均繊度2.3dtexの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作成した。次いで表裏をバフィング加工して染色仕上げを施し、比重0.58g/cm3極細長繊維からなるスェード調人工皮革2を準備した。
人工皮革1と同様の方法で目付け650g/m2の絡合ウェブを作成し、表面から水分を10%付与させ、乾燥させないように70℃の温度で該絡合ウェブを面積で45%収縮させた。該収縮絡合ウェブを170℃の熱プレスで圧着し、比重を0.68g/m2に調整後、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなるポリウレタン(融点が180〜190℃、損失弾性率のピーク温度が−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%の高分子弾性体)を用いて固形分濃度が25質量%の水分散体を調製した。この水分散体を高分子弾性体と極細長繊維の質量比が15:85なるように上記の絡合不織布に含浸した後、120℃の熱風を表面から吹きつけて乾燥させ、次いで90〜95℃の熱水中で変性PVAを溶解除去し、極細長繊維を25本含む、平均繊度2.3dtexの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作成した。次いで表裏をバフィング加工して染色仕上げを施し、比重0.58g/cm3極細長繊維からなるスェード調人工皮革2を準備した。
<熱接着性樹脂フィルム>
融点が100℃の低融点ポリエステルフィルム厚み150μm(マタイ社製)を準備した。
<熱可塑性ポリウレタンシート>
融点170℃、厚み3mm(マタイ社製)を用いた。
融点が100℃の低融点ポリエステルフィルム厚み150μm(マタイ社製)を準備した。
<熱可塑性ポリウレタンシート>
融点170℃、厚み3mm(マタイ社製)を用いた。
実施例1
<積層中間体の製造>
上記スエード調人工皮革の裏面(起毛面の反対側)に、上記の熱接着性樹脂フィルムを重ねて、表面温度115℃、プレス線圧30kg/cmで熱ロールプレス機を用いて加熱圧着した。用いた熱ロールプレス機は、加熱された金属ロール(表面温度115℃)とバックロール(ゴム)で構成され、熱接着性樹脂フィルムが金属ロールに接触するようにして、ロール接触時間1分でスエード調人工皮革と熱接着性樹脂フィルムとを圧着し、その後室温(25℃)まで冷却した後、捲き取った。
その結果、フィルム元厚み150μmの1/3、すなわち50μmがスエード調人工皮革の裏面に沈み込んだ、積層中間体を得た。
<積層体の製造>
次に、上記の熱可塑性ポリウレタンシートの表面に上記積層中間体の熱接着性フィルム面を重ねて、熱プレス機(盤面温度120℃、プレス圧40kg/cm2、プレス時間15sec)で接着積層した。
上記の測定方法による人工皮革と熱可塑性ポリウレタンシートの剥離強力は、2.5kg/cmであり、スポーツ靴用甲皮材(表皮材)として耐え得る剥離強力を保持するものであった。
また、得られた積層体の表面を構成する人工皮革は、スエード(立毛)感に優れ、熱可塑性ポリウレタンシートは特に変形も起きていないものであり、靴甲皮材としての外観に優れたものであった。
<積層中間体の製造>
上記スエード調人工皮革の裏面(起毛面の反対側)に、上記の熱接着性樹脂フィルムを重ねて、表面温度115℃、プレス線圧30kg/cmで熱ロールプレス機を用いて加熱圧着した。用いた熱ロールプレス機は、加熱された金属ロール(表面温度115℃)とバックロール(ゴム)で構成され、熱接着性樹脂フィルムが金属ロールに接触するようにして、ロール接触時間1分でスエード調人工皮革と熱接着性樹脂フィルムとを圧着し、その後室温(25℃)まで冷却した後、捲き取った。
その結果、フィルム元厚み150μmの1/3、すなわち50μmがスエード調人工皮革の裏面に沈み込んだ、積層中間体を得た。
<積層体の製造>
次に、上記の熱可塑性ポリウレタンシートの表面に上記積層中間体の熱接着性フィルム面を重ねて、熱プレス機(盤面温度120℃、プレス圧40kg/cm2、プレス時間15sec)で接着積層した。
上記の測定方法による人工皮革と熱可塑性ポリウレタンシートの剥離強力は、2.5kg/cmであり、スポーツ靴用甲皮材(表皮材)として耐え得る剥離強力を保持するものであった。
また、得られた積層体の表面を構成する人工皮革は、スエード(立毛)感に優れ、熱可塑性ポリウレタンシートは特に変形も起きていないものであり、靴甲皮材としての外観に優れたものであった。
比較例1
実施例1において積層中間体を得ることなく、実施例1と同一のスエード調人工皮革、熱接着性樹脂フィルム及び熱可塑性ポリウレタンシートを同時に重ねて、プレス温度140℃、プレス圧力50kg/cm2、時間15secで加熱プレスすることで、一体成形を行った。
得られた積層体は、人工皮革と熱可塑性ポリウレタンシートとの剥離強力が2.5kg/cmと十分に接着したものであったが、人工皮革が潰れた状態でスエード感に劣るものであった。かつ、熱可塑性ポリウレタンシートは熱収縮による変形が生じていた。
実施例1において積層中間体を得ることなく、実施例1と同一のスエード調人工皮革、熱接着性樹脂フィルム及び熱可塑性ポリウレタンシートを同時に重ねて、プレス温度140℃、プレス圧力50kg/cm2、時間15secで加熱プレスすることで、一体成形を行った。
得られた積層体は、人工皮革と熱可塑性ポリウレタンシートとの剥離強力が2.5kg/cmと十分に接着したものであったが、人工皮革が潰れた状態でスエード感に劣るものであった。かつ、熱可塑性ポリウレタンシートは熱収縮による変形が生じていた。
比較例2
比較例1において、スエード感を維持させるためプレス条件を、プレス温度120℃、プレス圧力20kg/cm2、時間15secに変更して、前記人工皮革、熱接着性樹脂フィルムおよび熱可塑性ポリウレタンシートを同時に重ねて、加熱プレスすることで、一体成形を行った。得られた積層体は、人工皮革のスエード感は維持され、かつ熱可塑性ポリウレタンシートも特に変形は生じていなかったが、剥離強力が1.5kg/cmであって、熱可塑性ポリウレタンシートと人工皮革とが十分に接着されておらず、部分的に簡単に剥がれてしまい、スポーツ靴用甲皮材としての使用に耐え得るものではなかった。
比較例1において、スエード感を維持させるためプレス条件を、プレス温度120℃、プレス圧力20kg/cm2、時間15secに変更して、前記人工皮革、熱接着性樹脂フィルムおよび熱可塑性ポリウレタンシートを同時に重ねて、加熱プレスすることで、一体成形を行った。得られた積層体は、人工皮革のスエード感は維持され、かつ熱可塑性ポリウレタンシートも特に変形は生じていなかったが、剥離強力が1.5kg/cmであって、熱可塑性ポリウレタンシートと人工皮革とが十分に接着されておらず、部分的に簡単に剥がれてしまい、スポーツ靴用甲皮材としての使用に耐え得るものではなかった。
本発明の積層中間体は、基材と積層(貼り合せ)するのに、表皮材や基材が変形するほどの高温高圧をかけなくとも、適度な接着強度で積層一体化することができるので、靴の甲材や衣類、インテリア用途に用いられる熱可塑性ポリウレタンや織編物、不織布等の基材との積層用材料として利用できる。
特に、表皮材として人工皮革、基材として靴用の甲材を積層して靴用甲皮材を目的とする積層体を製造する場合、熱接着性樹脂層が積層された表皮材の中間体を用いれば、当該中間体は、人工皮革と熱接着性樹脂とが既に接着積層されているので、靴用の甲材との接着に必要な適度の加熱・加圧を施すことによって、人工皮革表面や靴用甲材の変形を伴うことなく好適な状態の積層体を得ることができ、特に、運動靴用甲皮材として好適に利用できる。人工皮革を運動靴の甲材の部分的補強や、意匠的な目的で使用する場合に、本発明の人工皮革の積層中間体を用いれば、甲材と十分な接着強度のものが得られるので、従来のように甲材に縫着する必要がなく、無縫製接着法(ノーソー・ボンディング法)による靴の製造方法における意匠材、補強材等として好適に利用できる。
特に、表皮材として人工皮革、基材として靴用の甲材を積層して靴用甲皮材を目的とする積層体を製造する場合、熱接着性樹脂層が積層された表皮材の中間体を用いれば、当該中間体は、人工皮革と熱接着性樹脂とが既に接着積層されているので、靴用の甲材との接着に必要な適度の加熱・加圧を施すことによって、人工皮革表面や靴用甲材の変形を伴うことなく好適な状態の積層体を得ることができ、特に、運動靴用甲皮材として好適に利用できる。人工皮革を運動靴の甲材の部分的補強や、意匠的な目的で使用する場合に、本発明の人工皮革の積層中間体を用いれば、甲材と十分な接着強度のものが得られるので、従来のように甲材に縫着する必要がなく、無縫製接着法(ノーソー・ボンディング法)による靴の製造方法における意匠材、補強材等として好適に利用できる。
1.表皮材(人工皮革)の積層中間体
2.熱可塑性樹脂フィルム
3.表皮材(人工皮革)
4.加熱・加圧装置
5.冷却・固化装置
6.離型紙
M.埋設層
2.熱可塑性樹脂フィルム
3.表皮材(人工皮革)
4.加熱・加圧装置
5.冷却・固化装置
6.離型紙
M.埋設層
Claims (11)
- 人工皮革、スエード調織物、スエード調編物、及び合成皮革から選択される表皮材の裏面に、熱接着性樹脂層を積層してなることを特徴とする積層中間体。
- 前記熱接着性樹脂層は、表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に埋設して積層してなる請求項1に記載の積層中間体。
- 前記表皮材が見かけ比重0.4〜0.8g/cm3の人工皮革である請求項1又は2に記載の積層中間体。
- 前記熱接着性樹脂層熱軟化温度が上記人工皮革を構成する繊維の熱軟化温度の50℃以下である熱接着性樹脂フィルム層である請求項1〜3のいずれかに記載の積層中間体。
- 前記積層中間体の熱接着性樹脂層を介して、積層中間体と、靴の甲材、衣類、インテリア用熱可塑性ポリウレタンシート、インテリア用織編物、及びインテリア用不織布から選択される基材を接着積層してなることを特徴とする積層体。
- 前記基材が靴の甲材である請求項5に記載の積層体。
- 連続して供給される長尺状の表皮材の裏面と、該表皮材を構成する素材、及び後に積層する基材を構成する素材よりも低融点で、かつ両素材に対して接着性を有する長尺状熱接着性樹脂フィルムを重ね合わせ、加熱・加圧下に表皮材の裏面側において、該表皮材の裏面の少なくとも一部において、該表皮材の厚み方向に該熱接着性樹脂フィルムの一部が埋設するように積層し、冷却した後、巻き取ることを特徴とする積層中間体の製造方法。
- 前記表皮材が人工皮革である請求項7に記載の積層中間体の製造方法。
- 積層中間体の熱接着性樹脂フィルム表面側と基材とを重ね合わせ、加熱・加圧下に該表皮材と該基材を熱接着して積層することを特徴とする積層体の製造方法。
- 前記基材が靴の甲材である請求項9に記載の積層体の製造方法。
- 請求項6に記載の積層体を甲皮材としてなることを特徴とする靴。
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JP2009276277A JP2011117104A (ja) | 2009-12-04 | 2009-12-04 | 積層中間体、積層体、及びそれらの製造方法 |
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Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013132783A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-07-08 | Kuraray Co Ltd | 加飾成形用シート、加飾成形体、及び、加飾成形体の製造方法 |
JP2013224019A (ja) * | 2012-03-19 | 2013-10-31 | Kuraray Co Ltd | 加飾成形用シート、加飾成形用プレフォーム成形体、加飾インサート成形体及びその製造方法 |
JP2013226815A (ja) * | 2012-03-28 | 2013-11-07 | Kuraray Co Ltd | 加飾シート、プレフォーム成形体及び加飾成形体 |
JP2015512688A (ja) * | 2012-03-07 | 2015-04-30 | ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティドW.L. Gore & Associates, Incorporated | ストローベル履物構造 |
JP2016074996A (ja) * | 2014-10-06 | 2016-05-12 | グンゼ株式会社 | 衣類 |
JP2018159166A (ja) * | 2018-05-29 | 2018-10-11 | グンゼ株式会社 | 衣類 |
WO2023189269A1 (ja) * | 2022-03-28 | 2023-10-05 | 東レ株式会社 | 人工皮革およびその製造方法、複合人工皮革 |
-
2009
- 2009-12-04 JP JP2009276277A patent/JP2011117104A/ja active Pending
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