JP2011116610A - 光学素子用成形型及び光学素子の成形方法 - Google Patents

光学素子用成形型及び光学素子の成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、光学素子の製造にあたって、光学素子の離型を容易に、かつ、安定して行うことができる光学素子用成形型及び光学素子の成形方法を提供する。
【解決手段】光学素子の有効径よりも大きな径の成形面2a及び3aを有し、該成形面2a及び3aが互いに対向する一組の光学素子用成形型であって、一組の成形型の少なくとも一方の成形型は、成形面において、成形面の外周に、該成形面とは不連続に曲率が変化する不連続線により境界が設けられた段差2bを有する光学素子用成形型1。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学素子のプレス成形に用いる光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法に係り、特に、凹面を有する光学素子を成形するのに好適な光学素子用成形型及び光学素子の成形方法に関する。
従来、光学素子の成形方法として、ガラス素材と成形型を、ガラス素材が軟化する温度(107.5 〜1011ポアズのガラス粘度に相当する温度)まで加熱し、軟化したガラス素材を成形型によってプレス成形し、光学素子形状が付与されたガラス素材をそのガラスの転移温度(1013ポアズ)付近又はそれ以下まで冷却してから離型させて、光学素子を成形型から取り出していた。
この成形方法により光学素子を成形する場合、離型の際に成形された光学素子が成形面に貼り付いたままとなることがある。上下一対の成形型を用いて成形操作を行った際、下型に光学素子が貼り付いた場合にはその後の光学素子の取り出し工程によって取り出しが行われるが、上型に貼り付いた場合にはそのまま取り出すことができず、連続稼働の妨げとなる問題があった。なお、この上型への貼り付きは、成形型の成形面の形状が凹面の場合よりも凸面形状の場合に生じやすいものである。
そこで、このような貼り付きを防止するために、成形された光学素子と成形型の間にくさび部材を挿入する方法(特許文献1参照)、上型と下型の隙間から光学素子に不活性ガスを噴射させる方法(特許文献2参照)、周辺部に複数個の段差を断続的に形成した成形面を有する型を用いる方法(特許文献3、4参照)、光学素子の有効径よりも大きな直径を有するリング状の段差を有する型を用いる方法(特許文献5参照)が提案されている。
特開平2−184531号公報 特開平2−184533号公報 特開平3−218932号公報 特開平11−189425号公報 特許第4072355号公報
しかしながら成形された光学素子と成形型の間にくさび部材を挿入する方法では、光学素子および成形面にキズをつけやすいという問題がある。また、上型と下型の隙間から光学素子に不活性ガスを噴射させるために、型の周囲を他の部材で覆うことができないため、上下型の位置ずれが生じやすく、均熱性も悪いという問題がある。さらに、周辺部に複数個の段差を断続的に形成した成形面を用いて成形する方法は、被成形素材のプレス時の延伸および冷却時の収縮が均一でなく、段差周辺と段差の無い部分とで面精度に違いが生じ、良好な面精度を有するプレス成形品が得られにくいという問題がある。また、リング状の段差を有する型を用いて成形する方法は、段差の加工が難しく、一定の形状とすることが困難であるため、成形型ごとに段差形状がバラツキ、その貼りつき防止効果も安定して得られないことが多かった。
そこで、本発明は、このような課題を解決するために、所定形状の成形型の加工が安定してでき、光学素子の製造にあたっては、光学素子の離型を容易に、かつ、安定して行うことができる光学素子用成形型及び光学素子の成形方法を提供することを目的とする。
本発明の光学素子用成形型は、光学素子の有効径よりも大きな径の成形面を有する上型及び下型を有し、該成形面が互いに対向する一組の光学素子用成形型であって、上型及び下型の少なくとも一方において、成形面の外周に、該成形面とは不連続に曲率が変化する不連続線により境界が設けられた段差を有することを特徴とするものである。
本発明の光学素子の成形方法は、本発明の光学素子用成形型にガラス素材を収容し、光学素子用成形型を加熱してガラス素材を軟化させる加熱工程と、軟化したガラス素材を、成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、成形型を冷却し、光学素子形状を付与したガラス素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、プレス工程において、光学素子用成形型の段差にもガラス素材が充填されるように押圧することを特徴とするものである。
本発明の光学素子用成形型及び光学素子の成形方法によれば、光学素子の有効径より外周側に段差を形成しているので、プレス成型後、成形した光学素子を冷却して収縮させる際、成形型の段差により盛り上がって形成された光学素子の突起部分が、ガラス素材の収縮により段差から乗り上げようとすることを利用して、光学素子を成形型から容易に離型することができる。
本発明の一実施形態である光学素子用成形型の断面図である。 図1の光学素子用成形型の上型の(a)側断面図及び(b)底面図である。 図2の上型における段差部の形成条件を説明する図である。 図2の上型から光学素子が離型する状態を示した図である。
本発明の光学素子用成形型は、光学素子の有効径よりも大きな径の成形面を有する上型及び下型を有し、該成形面が互いに対向する一組の光学素子用成形型であって、上型及び下型の少なくとも一方において、成形面の外周に、その成形面とは不連続に曲率が変化する不連続線により境界が設けられた段差を有することを特徴とするものである。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態である光学素子用成形型の断面図であり、図2は、図1の光学素子用成形型の上型の(a)側断面図及び(b)底面図を示した図であり、図3は、上型における段差部の形成条件を説明する図である。
まず、本発明の光学素子用成形型1は、光学素子の光学面を形成するための上型2及び下型3と、これら上型2及び下型3でガラス素材をプレス成形する際に、位置合わせを行うための胴型4と、から構成されている。
この上型2及び下型3には、それぞれ光学素子の成形面2a、3aが形成されており、これらの成形面2a及び3aが互いに対向するようにして一組の成形型として用いる。ここでは、上型2の成形面2aは凸面として形成され、下型3の成形面3aは凹面として形成され、これら成形面を用いてプレスを行うことにより、該形状に沿った凹メニスカス形状の光学素子が成形されるようになっている。
なお、図1では光学素子の形状として凹メニスカス形状を成形する成形型を例示しているが、これに限定されるものではなく、両凸、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス形状の光学素子のいずれの成形型にも適用することができる。なお、上型2及び下型3の少なくともいずれかが凸面の成形面を有する成形型(光学素子形状としては凹面が形成されるもの)であることが好ましい。
また、本実施形態においては、図1の上型の成形面2aの外周に光学素子を離形するための段差2bを設けるが、この上型の形状は、図2に詳細に示した。図1及び図2に示したように、本実施形態において、上型2の成形面2a及び下型3の成形面3aは、いずれも光学素子の有効径dよりも大きな径の成形面を有する構造であり、面精度の高い光学素子を成形するため、高度に精密加工されている。
そして、この光学素子用成形型1は、上型2の成形面2aの外周(すなわち、光学素子の有効径dの外周側)に、成形面2aとは不連続に曲率が変化する不連続線による境界2cが形成されるように段差2bが設けられている。この不連続線は、図2(a)のような断面図の曲率が不連続に変化した不連続点(境界2c部分)が集合して形成されるものであり、この不連続線自体は成形面2aの外周を取り囲むように切れ目なく連続して形成されている(図2(b))。なお、本明細書において、成形面とは、ガラス素材に形状を転写することが予定されている面をいう。
図2(a)には、上型2の断面図を示したが、併せて、成形面2aの外周に設けられた段差2bを拡大した拡大断面図も示した。この図2(a)に示したように、段差2bは、成形面2aに対して高低差を設けて形成されているが、これは、成形面2aとは不連続に曲率が変化する不連続線により境界が設けられているものである。
図2(a)では、成形面2aが凸面形状であり、その外周に形成される段差2bが凹面形状となるものであり、その成形面2aと段差2bとの境界2cである不連続線が尖部となっているものである。このとき、成形面2a及び段差2bにおいて、尖部は不連続線部分のみで、それ以外の面は、成形面2aも段差2bも曲率が連続する滑らかな曲面とすることが好ましい。
このように、その成形面2aにおいて、段差2bとの境界2c部分のみに尖部を有し、それ以外は段差2bも含めて曲面で滑らかに形成するようにすることで、尖部が1か所に限定され、成形型の製造が1つの砥石を用いることで可能となり、かつ、段差形状を精度よく形成することができる。そのため、成形型を量産した場合にも成形型間の形状バラツキがなく、型離れの良好な成形型を容易、かつ、安価に製造することができる。さらに、このような形状とすることで、成形型の保護膜が応力集中によって剥離することも抑制することができる。
この点、例えば、従来技術として挙げた特許文献5記載の発明のように溝を形成するような場合には、その成形型の製造は、砥石での研磨による成形面の製造を行った後、別工程で成形面の外周に溝部を削って製造することとなり手間がかかってしまい、さらに溝部の形状を再現性良く形成することが困難で、成形型を量産した場合に、その形状がバラつくことが多く、成形型からの型離れの悪いものが混在し易くなっていた。
そして、本実施形態においては、この段差2bの形状を、上型2の成形面2aの外周から凹面形状に設けることで、プレス時にその部分にガラス素材を盛り上がらせて形成し(上型2の凹面形状部にガラス素材が充填されると、ガラス素材は光学面よりも盛り上がった凸状に形成される)、後述する冷却時に光学素子が成形型からの型離れを促進させることができる。
なお、段差2bを設けない従来公知の成形型においても、有効径の外周部分において、ある箇所から成形型の最外周部までは凹面形状に形成される(従来は、成形面から連続的に曲率が変化するようにして、尖部のない滑らかな面として最外周部まで形成される)ことが多い(図2(a)拡大図の延長面2d)。このように、成形面の外周部分を凹面にするのは、対向配置される光学面へ素材を押しつけるためであり、さらには金型長さを短くして加熱及び冷却を容易にするためである。
上記説明したように、上型2の成形面2aには、その周囲に段差2bが光学素子の有効径よりも外周側に設けられていればよく、その成形面2aに対する段差2bの配置は、プレス成形後のガラス素材の諸寸法との関係で適宜決定することができる。すなわち、光学素子の離型を行うためには、プレス時に、ガラス素材が段差2bにまで押し出され、その段差形状が、少なくとも境界2cを全周にわたって転写されるようにしなければならない。
このように成形型の形状が転写されて成形された光学素子は、成形面2aにおいて、有効径dで示された所定の範囲が光学的に機能する面(以下、光学機能面という)とされ、段差2bの形状が転写される箇所は、その光学機能面の外周側となる。したがって、プレス成形によって光学素子側に転写される段差2bは、光学機能面に影響を与えることはない。なお、光学素子の製造においては、プレス成型後、芯取り操作を行い、光学素子の外径(芯取径)を整えるが、その際に、段差2bの転写部分は切削されることとなる。
次に、段差2bについて図3を参照しながら説明する。この図3(a)及び(b)は、共に図2(a)の部分拡大図と同じ断面を示したものである。
この段差2bは、上型の成形面2aに対して、その外周部分のある箇所を起点として、形成面を連続的に滑らかに形成するのではなく、尖部を設けて凹状に形成されるものである。このとき、尖部は成形面2aと段差2bとの境界2cとなる。
これを図3(a)の断面(不連続線を横切る断面)で見てみると、不連続線(尖部である境界2c)を挟んだ成形面側の接線角θ1(断面図において、境界2cでの成形面側の接線の水平面に対する角度)に対して、段差は、接線角θ2(断面図において、境界2cでの段差側の接線の水平面に対する角度)を持つようにして形成され、このような角度をもたせることにより、例えば、成形面2aを連続的に延長させた延長面2d(成形面2aに対して曲率は変化していき外周は凹面形状となっている)に対して高さを有する段差形状が形成される。
ここで、接線角とは、一般に、図3(a)の側断面図において、成形面2a上又は段差2b上での任意の点での接線の水平面に対する角度のことをいい、本発明においては尖部である境界2cの成形面2a側の接線tの水平面lに対する角度を接線角θ1とし、尖部である境界2cの段差2d側の接線tの水平面lに対する角度を接線角θ2とするものである。ここで、θ1及びθ2は共に鋭角である。
これら接線角θ1と接線角θ2は、次の式、0<θ2−θ1<90°−θ1の関係を満たすようにして設けるものであり、1°≦θ2−θ1≦60°−θ1とすることが離型効果を促進させる点で好ましい。
また、境界2cにおいて、上記角度をもって段差を形成するが、さらに外側に向かっては、その表面は尖部を有することなく滑らかな曲面により延長面2b´を形成することが好ましい。ここで、段差部分の接線角θ2を20°<θ2<90°に設けたときは、その境界2cから開始する段差部分を、曲率半径が0.5〜50mmの範囲で曲面を形成して外周側に向かって段差及びその延長面を曲率半径が連続して変化しながら型の最外周部まで到達する凹曲面で形成することが好ましく、その曲面が延長していった型の最外周部に到達する直前の延長面の曲率半径が1〜100mmの範囲で曲面が形成されて型の端部に到達し、その最外周部における接線角θ3が80〜−60°の範囲で形成されることが好ましい。なお、接線角θ3は図3(b)の側断面図に示したように、型の最外周部における段差側の接線t3の水平面lに対する角度を表わすものである。ここで、境界2cから型の最外周部の中間部分では、境界2cから最外周部へ向かって、曲率半径が連続して変化しながら滑らかな凹曲面が形成されており、このときθ2とθ3の関係は、θ2>θ3≧0となることが特に好ましい。
また、面精度への影響を抑制できるという点から、平面円状に設けられた段差の開始部分(境界2c;図2(b))の中心は成形面2aの中心とおおむね一致していることが好ましく、この中心が成形面の中心と一致していることがより好ましい。段差は成形される光学素子の有効径より外側にあれば良いが、有効径に近すぎると面形状への影響が生じる場合があり、遠すぎると離型促進の効果が低減することがある。そのため、段差の開始部分である不連続線の直径が光学素子の有効径より50μm〜10mm大きいものであることが好ましく、0.1〜2mm大きいものであることがより好ましい。
次に、図1の示した光学素子用成形型1を用いた光学素子の成形方法について説明する。基本的な成形方法は、従来の光学素子の成形型によるプレス成型と同様に、光学素子用成形型1にガラス素材を収容し、光学素子用成形型1を加熱してガラス素材を軟化させる加熱工程と、軟化したガラス素材を、光学素子用成形型1により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、光学素子用成形型1を冷却し、光学素子形状を付与したガラス素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法である。
このようにすることで、プレス工程において、成形面2a及び3aの形状がガラス素材に転写され、所望の形状の光学素子を得ることができるが、本発明の特徴部分も含め、以下、詳細に説明する。
本実施形態の成形方法を行うに先立って、成形型及び供給されるガラス素材は、非酸化性雰囲気中で、所定の温度、例えば、ガラス素材の軟化点付近にまで予熱される。
この予熱されたガラス素材は、上型2に対し離間させた下型3の成形面3a上に供給される。ここで用いるガラス素材の組成は、成形するガラスの種類や用途、化学的耐久性、熱膨張係数、成形型の材料との関係等を考慮して決定すればよい。また、ガラス素材としては、プレス成型に用いることができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、球、円板又は球面又は非球面を有する扁平な球形状その他の形状のガラス素材を用いることができる。
次に、上型2を下型3に対して下降させて両者の成形面を近づけていき、下型3の成形面3a上に供給されたガラス素材を所定圧力でプレスする。成形面間の距離やプレスの圧力は、必要とされる光学ガラスの形状に応じて決定すればよく、該プレスにより、ガラス素材は、上型2及び下型3の両成形面2a及び3aに沿って圧延され、所望の形状となる。ここで、上型2の成形面2aの周囲には、上述したように段差2bが形成されており、上記プレス工程において、ガラス素材は成形面2aと接触しながら圧延されていき、段差2bの領域にまで至り、成形されたガラスの周囲表面に段差2bに対応した突起部が転写されることになる。
成形型によるプレスは所定時間維持され、その後、光学素子用成形型1及びガラス素材が冷却される。この冷却工程は、成形型1と成形されたガラスとの線膨張係数差によって、段差2bの凹凸と成形されたガラスに転写された突起部とが位置ずれを起こすようになる。
プレス工程から冷却工程における、上型とプレス成型されたガラス素材との状態を説明する図を図4に示した。まず、図4(a)に示したようにプレス成形直後は、ガラス素材はプレスにより光学素子形状が上記のごとく転写され、光学素子10となる。ここでは、光学素子10の形状は上型の成形面2aと一致しており、光学素子10の最外周部は段差2bに対応した突起が形成されている。
プレス工程が終わり冷却工程に入ると、冷却が進むにつれて上型2の素材の熱膨張率と光学素子10のガラスの熱膨張率とが相違することにより、成形面2aと光学素子10の形状にずれが生じていく。そして、図4(b)に示したように、成形面2aの段差2bに嵌まっている光学素子の突起部分が、光学素子10の冷却に伴って収縮すると段差2bから乗り上げようとして、上型2と光学素子10との間に隙間を形成する力が発生する。
この力が十分に大きくなると、光学素子10が収縮し、段差によって形成された突起部の少なくとも一部が、段差の周囲から成形面に乗り上げ、上型2と光学素子10との間に形成された隙間に外気を流入させて、光学素子10を上型2から離型させる。
また、この位置ずれを良好に生じさせることができる点から、ガラス素材の熱膨張係数は光学素子用成形型1を形成する素材の熱膨張係数よりも大きいことが好ましく、例えば、ガラス素材の熱膨張係数が60〜150×10−7/℃の範囲であり、光学素子用成形型の熱膨張係数が30〜95×10−7/℃の範囲であることが好ましい。ただし、ここで熱膨張係数は100〜300℃における値である。成形型の具体的な材質としては、シリコンカーバイド、シリコンナイトライドなどのセラミックや、タングステンカーバイドなどの超硬合金が好ましい。
さらに、段差2bの表面の少なくとも一部が粗面化されていると、引き離し開始時点では段差2bの作用により位置ずれが生じて、少なくともこの部分においてはオプティカルコンタクト状態が解除されているので、上型2の成形面2aに対して成形されたガラス素材の離型が良好に行われるようになる。
上記したように、本発明の段差が形成されている成形型は、凸面形状の成形面を有している場合すなわち凹面形状を有する光学素子を成形する場合に特に有効である。これは、図4で説明したように、凸面形状の成形面を有している場合、プレス後のガラスの冷却の過程で、上型2と光学素子10の間に生じることがある密閉空間に外気が侵入し易くなるためである。このような現象は、ガラスの線膨張係数が成形型のそれよりも大きい場合、ガラスが成形型の成形面に沿って相対的に収縮していくために生じる。
また、本発明の光学素子用成形型においては、離型性向上という観点から、段差の表面の少なくとも一部の表面粗さが成形面の表面粗さより大きくなるようにすることが好ましい。例えば、段差の表面に設けた粗面におけるRmaxで表わされる凹凸の最大高さが、成形型の成形面、特に、光学的機能面以外の領域においてRmaxにより表わされる凹凸の最大高さよりも大きくなるようにすればよい。
例えば、本実施形態の成形型1を用いてガラス素材をプレスする場合、段差2bが成形面2aよりも粗面として形成されていると、その成形されるガラス素材の突起部の面も粗面となって転写される。プレス後のガラス素材の収縮時に、転写されたガラス素材の面の粗面になった突起部が上型2の段差2bの粗面の凹凸に乗り上げ、その結果、上型2と光学素子10の間に外部と連通する僅かな隙間が形成される。この僅かな隙間から外気が上型2の成形面2aと光学素子10の間へ入ることが可能となり、上型2に対する光学素子10の離型がより良好となる。
この粗面は段差2b及びその延長面2b´の表面の全面に形成することが、光学素子10の収縮時においてガラス素材の一点に応力が生じることを回避させ、該応力に起因するクラックやガラス面の歪みを防ぐことができるという点で好ましい。
段差2bの表面に設ける粗面は、最大高さRmax0.1μm以上の粗面であることが好ましく、段差の表面に設ける粗面は、より好ましくは、最大高さRmaxが0.5〜10μmの範囲である。一方、成形面2aの表面粗さは、最大高さRmax0.03μm以下の鏡面であることが好ましい。
また、段差2bが全周にわたって形成されているために、ガラス素材のプレス時の延伸および冷却時の収縮が均一となり、面精度の高い光学素子を得ることができる。さらに段差を形成する本発明においては、従来のように溝を形成する等よりも、成形型の製造工程を簡略化することができ、精度・生産性の両面から好ましい。
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では段差を成形型の上型に形成したが、下型に形成してもよい。さらに、本実施形態では凹面の光学素子の成形面に段差を形成したが、平面状の成形面や曲率半径の大きな凸面の光学素子の成形面に形成することもでき、この場合も離型性の点で効果がある。それに加えて、段差部分もその断面が凸面や平面形状になるようにすることもできる。また、ガラス素材の成形だけでなく、プラスチック素材の成形にも本発明を適用することができる。
次に、実施例により本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。なお、この実施例においても図1を参照しながら、以下説明する。
ここで用いた光学素子用成形型は、タングステンカーバイドからなる超硬合金製のものであり、プレス成形により、直径12.5mm、中心厚さ0.8mm、周辺厚さ2.5mmの凹メニスカス形状の光学素子が得られるものである。
上型2は、フランジ付きの円柱形状の成形型であり、光学素子の有効径はφ9.4mm、成形面2aと段差2bとの境界2cはφ9.4mmに設けられており、段差2bの最外周部の大きさはφ15mmである。また、上型のフランジ部分はφ28mmである。
この光学素子用成形型の下型3の成形面3aに、直径φ13mm、中心厚み4.2mmの断面楕円状のランタンボロン系のガラス素材を収容し、成形型を700℃に加熱した。なお、このガラス素材の歪点は580℃、ガラス転移点(Tg)は616℃、屈伏点(At)は662℃である。
ガラス素材を収容した成形型を、加熱プレートを用いて上型、下型及びガラス素材を300秒間充分に加熱し、ガラス素材を軟化状態とした。この加熱プレートの温度は700℃であった。次に、加熱された成形型をプレスプレートによりプレス成形を行った。このとき、プレスプレートの温度は690℃であり、成形時の荷重は2kNで、この荷重で 70秒間加圧状態を保持した。
プレス後、成形型を、設定温度を580℃とした冷却プレートにより冷却し、光学素子形状を付与したガラス素材を固化させた。この光学素子がそのガラスの歪点以下の温度となったところで、さらに成形型を水冷プレートで、光学素子が200℃以下になるまで冷却し、十分に冷却したところで、成形型から取り出し、光学素子を得た。
このとき、このプレス成型を20ショット行い、冷却工程後、上型に光学素子が貼りついていたものを確認したところ、全て貼りつくことなく離型していた。
(比較例1)
光学素子用成形型として段差を設けていない以外は実施例1と同様の成形型(図2の延長面2dの形状を有する成形型)を用い、実施例1と同様の操作により光学素子を得た。
このとき、このプレス成型を20ショット行い、冷却工程後、上型に光学素子が貼りついていたものを確認したところ、全て上型に貼りついており、光学素子を離型させるための工程を行わなければならなかった。
(比較例2)
光学素子用成形型として、比較例1の成形型における光学素子の有効径の外周に、溝を形成した成形型(特許文献5の形状の成形型)を用い、実施例1と同様の操作により光学素子を得た。ここで用いた成形型は、溝の大きさが幅 0.3mm、深さ0.05mmのものとした。
このとき、このプレス成型を20ショット行ったところ、成型品全数にクラックまたは面ワレが発生した。ここで、面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良が生じる離型異常のことを言う。
以上の通り、本発明によれば、プレス成型後、成形した光学素子を冷却させるだけで、成形型から容易に離型させることができることができ、光学素子の生産性及び歩留まりを向上させられることがわかった。
本発明の光学素子用成形型及び光学素子の成形方法は、プレス成形による光学素子の製造に用いることができる。
1…光学素子用成形型、2…上型、3…下型、4…胴型、2a,3a…成形面、2b…段差、2c…境界、2d…延長面、10…光学素子

Claims (7)

  1. 光学素子の有効径よりも大きな径の成形面を有する上型及び下型を有し、該成形面が互いに対向する一組の光学素子用成形型であって、
    前記上型及び下型の少なくとも一方において、前記成形面の外周に、該成形面とは不連続に曲率が変化する不連続線により境界が設けられた段差を有することを特徴とする光学素子用成形型。
  2. 前記成形面及び段差において、前記不連続線が尖部となっており、それ以外の面は曲率が連続する滑らかな面とされていることを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型。
  3. 前記不連続線を横切る断面において、前記不連続線における成形面側の接線角θ1と、段差側の接線角θ2とが、0<θ2−θ1<90°−θ1の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子用成形型。
  4. 前記段差を有するのが上型であって、前記成形面が凸面形状であり、その外周の段差が凹面形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
  5. 前記接線角θ2が20°<θ2<90°の関係を満たし、前記境界から開始する段差が曲率半径0.5〜50mmの範囲で曲面を形成して外周側に向かって段差及びその延長面を曲率半径が連続して変化しながら型の最外周部に到達するまで凹曲面で形成され、その最外周部に到達する直前の延長面の曲率半径が1〜100mmの範囲で、その最外周部における接線角が80°〜−60°であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学素子用成形型にガラス素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱してガラス素材を軟化させる加熱工程と、軟化したガラス素材を、前記成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記成形型を冷却し、光学素子形状を付与したガラス素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、
    前記プレス工程において、前記光学素子用成形型の段差にもガラス素材が充填されるように押圧することを特徴とする光学素子の成形方法。
  7. 100〜300℃における前記ガラス素材の熱膨張係数が前記光学素子用成形型の熱膨張係数よりも大きく、かつ、ガラス素材の熱膨張係数が60〜150×10−7/℃の範囲であり、光学素子用成形型の熱膨張係数が30〜95×10−7/℃の範囲であることを特徴とする請求項6記載の光学素子の成形方法。
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