JP2011115003A - 系統安定化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】人間系によるオフラインシミュレーション作業が不要で、実際の系統条件と事故条件を演算に反映できる事前演算形の系統安定化装置を提供すること。
【解決手段】現在の潮流状態を表す解析用系統モデルを作成し、その解析用系統モデルに基づいて事故条件を変えて複数の解析条件を設定し、制御テーブル作成手段4は、各解析条件について過渡安定度計算及び安定度判定量を算出し、系統現象が不安定と判定したときの安定度判定量を安定限界値とし、不安定現象を安定化できる最適な電制発電機の組み合わせを求め、安定限界値と必要電制発電機とを対応付けた制御テーブルを各解析条件毎に作成して記憶し、電制発電機決定手段7は、安定度判定量をリアルタイムに計算して事故条件に合致する制御テーブルを決定し、決定した制御テーブルを参照してリアルタイムに算出した安定度判定量に対応する必要電制発電機を電力系統から解列して電力系統の安定化を図る。
【選択図】 図1
【解決手段】現在の潮流状態を表す解析用系統モデルを作成し、その解析用系統モデルに基づいて事故条件を変えて複数の解析条件を設定し、制御テーブル作成手段4は、各解析条件について過渡安定度計算及び安定度判定量を算出し、系統現象が不安定と判定したときの安定度判定量を安定限界値とし、不安定現象を安定化できる最適な電制発電機の組み合わせを求め、安定限界値と必要電制発電機とを対応付けた制御テーブルを各解析条件毎に作成して記憶し、電制発電機決定手段7は、安定度判定量をリアルタイムに計算して事故条件に合致する制御テーブルを決定し、決定した制御テーブルを参照してリアルタイムに算出した安定度判定量に対応する必要電制発電機を電力系統から解列して電力系統の安定化を図る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、電力系統の事故によって複数の発電機が脱調する現象を、一部の発電機を電力系統から高速に解列することにより残りの発電機を安定化させる系統安定化装置に関するものである。
電力系統内に事故が発生した場合、これを放置すると系統設備の損傷を招くばかりでなく、系統全体の運転維持が困難な事態を生じかねない。このため、電力系統には系統事故発生時に事故設備を系統から迅速に切り離し、事故設備の損傷の軽減と系統の安定運転の維持を目的とした保護リレーシステムが設置されている。
保護リレーシステムは事故除去リレーシステムと事故波及防止リレーシステムとに大別される。事故除去リレーシステムは系統設備毎に設置され、事故区間を速やかに系統から除去することを目的としている。また、事故区間を系統から除去しても何らかの原因により事故の影響が系統脱調、電圧異常、周波数異常、設備過負荷などの様々な異常現象を引き起こし、系統全体に波及拡大する場合がある。
このような異常現象に対して、送電線などの設備の拡充や電力系統安定化装置PSSなどの制御装置の導入などによる系統自体の強化を図るとともに、事故波及防止リレーシステムを設置し、最適な緊急制御を行うことにより、異常現象が系統全体に波及することを防止し、系統の安定運転の維持を図っている。なお、事故波及防止リレーシステムは、系統安定化装置とも呼ばれる。
系統安定化装置の設置目的の一つとして過渡安定度対策がある。図24は発電機Gが送電線Lを介して主系統(同図においては無限大母線として示した)に接続される電力系統の一例を示したものである。常時は、発電機Gは機械的入力PMを入力として発電し電気的出力PEを出力し、送電線Lを経由して主系統へ送電している。ここで、送電線Lに事故Fが発生した場合、事故除去リレーによって送電線Lの両端の遮断器CBが開かれることによって事故が除去される。その後、条件が整えば事故除去リレーによって再閉路が実施され事故前の状態に戻る。
図25は系統事故発生後の系統の動きの一例を示す波形図であり、図25(a)は発電機Gの電気的出力である電力PEが安定となる場合の波形図、図25(b)は発電機Gの電気的出力である電力PEが不安定となる場合の波形図、図25(c)は発電機Gの内部位相角の動きの一例を示した波形図である。
図25(a)において、事故前は電力PEは機械的出力PMに相当する値で安定しており、事故発生時刻t0でPEが落ち込み、事故除去時刻t1まで電力PEの落ち込みが続く。この時間TJを事故継続時間という。事故除去時刻t1で電力PEが戻り、事故の影響が比較的軽微な場合は事故除去後の動揺は時間経過とともに収束し安定となる。一方、図25(b)に示すように、事故継続時間TJが安定限界となる事故継続時間TJ’の時刻t1+Δt’より長い場合、つまり事故除去が時刻t1+Δtの場合には、発電機の加速が大きくなり、事故除去後も電力PEが不安定で発電機Gは脱調する。
図25(c)に示すように、図25(a)の場合には発電機Gの内部位相角変化分Δδaは事故除去時刻t1から一時的に大きくなるが最終的には収束するが、図25(b)の場合には発電機Gの内部位相角変化分Δδbは事故除去時刻t1+Δtから大きくなり発散し、主系統と同期が保てなくなり発電機が脱調に至る。この場合、安定限界の事故除去時刻t1+Δt’で事故除去をする電制を実施すると、発電機Gの内部位相角変化分Δδb’は事故除去時刻t1+Δt’から一時的に大きくなるが最終的には収束する。
ここで、発電機脱調及び過渡安定度については、P−δ曲線を用いた加速及び減速エネルギーの関係によって理論的に説明されており、P−δ曲線上で面積を求め過渡安定度の判別を行う等面積法がよく知られている。また、発電機の運動方程式に基づいて、事故継続中の電力PEの落ち込みを時間積分することによって発電機の加速エネルギーが算出できることも広く知られている。この発電機脱調現象を安定化するための対策を過渡安定度対策という。この過渡安定度対策には緊急性を要するため、ガバナや自動電圧調整装置AVR、電力系統安定化装置PSSなどの発電機Gの制御系による制御では間に合わない。
そこで、発電機Gを遮断し、発電機脱調の影響が主系統側に波及することを未然に防ぐ。この制御には高速性が要求され、事故発生から発電機の遮断器開極までの制御仕上がり時間は数100msのオーダである。また、図24では発電機Gを1台として描いているが、発電機が複数台設置されている場合が通常であり、必要最小限の発電機遮断に留め、発電機を残して系統の安定化を図る。
過渡安定度対策用の系統安定化装置に適用する演算方式の一つとしてオフライン事前演算方式がある。図26は従来の事前演算形の系統安定化装置の一例を示すブロック構成図であり、図27は発電機遮断(以下、電源制限または電制という)の必要電制量を決定するための制御テーブルの一例の説明図である。ここで制御テーブルとは、電力系統内のある個所の潮流をパラメータ潮流とした場合の必要制御量の相関関係を表またはグラフ等で表現したものであり、オフライン事前演算形の系統安定化装置においては、これと同等もしくは同様の役割を果たす機構が不可欠である。ここでパラメータ潮流として、安定化対象の発電機群の事故前の出力電力値を選定することが一般的である。
図26を用いて、従来のオフライン事前演算形の系統安定化装置の構成と機能について説明する。系統安定化装置1は、インターフェイス手段10と、制御テーブル作成手段4と、有効電力計測手段5と、事故条件検出手段6と、電制発電機決定手段7と、制御手段8とから構成される。
電力系統の制御対象発電所の発電機G1〜G3は、遮断器CB1〜CB3を介して母線Busに接続され、母線Busから遮断器CB4、CB5を介して送電線Lに接続され、送電線Lは遮断器CB6、CB7を介して無限大母線の主系統に接続されている。電力系統の電圧V及び電流Iは、有効電力計測手段5及び事故条件検出手段6に入力され、遮断器CB4、CB5の開閉情報C4、C5及び保護リレー装置Ryの動作情報Rは事故条件検出手段6に入力される。
インターフェイス手段10は、事前にオフラインで求めておいた制御テーブル情報[Tab]を装置に設定するためのものであり、インターフェイス手段10を介して装置内に取り込まれた制御テーブル情報[Tab]は制御テーブル作成手段4に入力され、装置内部で使用する形に整列及び加工して制御テーブル作成手段4に記憶される。有効電力計測手段5は、制御対象の電力系統から取り込んだ電気量(電圧V、電流I)を用いて時々刻々変化する発電機出力有効電力Pをリアルタイムに計測し電制発電機決定手段7に出力する。
事故条件検出手段6は、制御対象の電力系統に事故が発生した場合に事故発生と事故様相とをリアルタイムに検出するものであり、これらの事故発生と事故様相とを事故条件Faとして電制発電機決定手段7に出力する。事故条件検出手段6は、電力系統から取り込んだ遮断器の開閉情報C4、C5、保護リレーRyの動作情報R、あるいは電圧V及び電流Iを用いて系統事故発生を検出する事故発生検出部6aと、送電線Lのどの相で事故が発生したかを判定する事故様相判定部6cとを備えている。
電制発電機決定手段7は、有効電力計測手段5で計測した発電機出力有効電力Pと、事故条件検出手段5で検出した事故条件Faと、制御テーブル作成手段4にて記憶した制御テーブルTabとを用いて系統の潮流状態と事故条件Faに合致する電制発電機を決定するものであり、事故条件検出手段6にて検出した事故条件に合致する制御テーブルTabを選択する制御テーブル決定部7aと、有効電力計測手段5で計測した発電機出力有効電力値Pについて事故前の値を保持する事前潮流保持部7eと、制御テーブル決定部7aで決定した制御テーブルTabと事前潮流保持部7eで保持した事故前の発電機出力有効電力値Pxとから電制発電機を決定する電制発電機決定部7cとから構成される。制御手段8は、電制発電機決定手段7で決定された電制発電機に対して電制指令を出力する。
インターフェイス手段10を経由して設定記憶される制御テーブル情報[Tab]は、図27に示すような事故前の発電機出力有効電力値Pxに対する必要電制発電機を相関付けたグラフまたは表であり、例えば、図27の一例では、事故前の発電機出力有効電力値PxがP1〜P2の間にある場合は必要電制発電機は1Gの1台、P2〜P3の間の場合は1Gと2Gの2台、P3〜P4の場合は1Gと2Gと3Gの3台として、事故前の発電機出力有効電力値Pxから必要電制発電機を決定することができる。
ここで、上述のように、事故条件すなわち事故の影響度合によって安定度が異なるため事故条件毎に、すなわち、1相2線事故や3相4線事故などの事故様相別にそれぞれの制御テーブルTabを用意しておく。このように構成とすることにより、予め事前のオフラインシミュレーション計算に基づいて求めた制御テーブル情報[Tab]を用いて、オフライン事前演算形の系統安定化装置が実現できる。
制御テーブルTabを求めるためには、事前にユーザが膨大な系統現象シミュレーション解析を行う必要がある。系統の安定度は事故点及び事故様相によって異なり、時間帯、季節、系統構成の変更、将来の系統変更等によって時々刻々変化するため、必要ケースについてそれぞれ制御テーブルTabを求めておく必要がある。よって、制御テーブルTabを事前に求めておくことは、系統安定化装置を運用していく上で重要かつ不可欠な作業であるが、多大な労力を必要とし、ユーザにとって大きな負担となる。よって、事前の系統現象シミュレーション解析は、特徴的な系統条件、すなわち、夏期日中や夜間の潮流条件をサンプルして実施することが通常であり、実系統で事故が発生したときの系統条件及び事故条件とは異なる。この点において、事前に行う系統現象シミュレーション解析をオフラインシミュレーションと呼び、この方式をオフライン事前演算形と呼ぶ。
ここで、実際の系統事故において事故点となりうる箇所は無限に存在しているため、制御テーブル作成時の系統現象シミュレーション解析においては、安定度上厳しいケースを想定した条件、すなわち、母線至近端事故を条件とする。また、事故継続時間についても、実際は遮断器開極時間の変動等によって毎回同じ時間ではなくばらつきが生じるが、シミュレーション解析においては事故除去リレー装置の主保護動作時間を最悪値で固定して扱う。さらに、パラメータ潮流と必要制御量の相関関係を求める段階においては、電制実施の結果確実に安定化できる制御量を必要制御量とする。よって、これらを条件として決定する制御テーブルTabは、想定される系統条件を全てカバーし、制御量不足が発生しないように多め制御の内容となる。以上のことから、事前演算形の系統安定化装置1は動作時間が速い利点はあるものの、制御テーブル作成に多大な労力を要すること、実事故現象を反映していないため多めに電制することになる。
最近、大規模系統を対象としたオンライン事前演算形の系統安定化システムが開発されて導入されるケースが増えてきた(例えば、非特許文献1参照)。オンライン事前演算形のシステムでは、計算機が自動で、オンラインで系統情報の収集、系統モデルの作成、想定した事故ケースについての系統現象シミュレーション解析し、制御テーブル作成を常時一定周期で行う。ユーザが人間系で制御テーブルを作成する作業から解放されるが、大規模系統を対象とした非常に高価なシステムであるため、図24のようなローカルな発電機系統への適用は難しい。また、制御量の誤差の面においては従来のオフライン事前演算形装置と根本的に同等である。
最近の過渡安定度対策用の系統安定化装置のニーズとして、大規模系統向けのオンライン事前演算形を志向する傾向があるものの、ローカル発電機系統向けのシンプルな事前演算形装置のニーズも今なお健在である(例えば、非特許文献2参照)。さらに後者については、今後の分散電源の増加に伴って新たな系統問題が現れることも予想されるので将来的に新たな市場となる可能性があり多くの需要が期待できる。
このように、過渡安定度対策用のオフライン事前演算形の系統安定化装置においては、電制量を求めるための制御テーブルの作成に多大な労力を要し、多めの電制実施となる。その対策として、系統情報を取り込んで現時点での系統モデルを常時作成しておき、事故発生後リアルタイムに事故条件の検出を行い、過渡安定度計算による安定度を判定し、不安定ケースの場合には更に電制発電機を決定する過渡安定度計算の実施を行い、電制実施を行う手法が考えられている(例えば、特許文献1参照)。この手法は、従来のオフライン事前演算形に対して、オンライン事後演算形と呼ぶことができる。これによれば、実際の系統条件において発生した実際の事故条件を反映した安定度判定及び発電機電制が行えるので、従来の系統安定化装置の課題を解決する方法として有望である。
電気学会技術報告 第801号「系統脱調・事故及防止リレー技術」,(社)電気学会,2000年10月、p5〜6、p52〜56、p61〜63
新田目倖造,「電力系統技術計算の応用」,電気書院,昭和56年6月1日,p357〜363
しかしながら、過渡安定度計算を実現象以上の速度で実行する必要があるため、現段階での実現性は乏しい。なお、特許文献1のもののうち、系統モデル作成、解析条件設定、過渡安定度計算については、定周期での常時実行であれば十分実現可能であり、その実現によって、系統安定化装置内部で事前にかつ自動的に実際の系統条件において想定される事故が発生した場合の過渡安定度計算を行い制御テーブルを作成しておくことが可能となる。
本発明の目的は、人間系によるオフラインシミュレーション作業が不要で、かつ、実際の系統条件と事故条件を演算に反映できる高精度な事前演算形の系統安定化装置を提供することである。
本発明の系統安定化装置は、電力系統の接続状態及び電力の需給状態を系統情報として定周期で収集し、かつ当該収集された系統情報とあらかじめ記憶されている系統設備データとに基づいて、現在の潮流状態を表す解析用系統モデルを作成する系統モデル作成手段と、前記系統モデル作成手段により作成された解析用系統モデルに基づいて、事故条件を変えて複数の解析条件を設定する解析条件設定手段と、前記解析条件設定手段により設定された各解析条件について一部条件をパラメータとして変えながら過渡安定度計算を行い、前記過渡安定度計算と併せて事故前の発電機出力有効電力と時々刻々変化する発電機出力有効電力との差を事故発生時刻から事故除去時刻まで時間積分して得られる安定度判定量を算出するとともに、前記過渡安定度計算で得られる系統現象について安定度を判定し不安定と判定した場合には前記安定度判定量を安定限界値として決定し、前記過渡安定度計算の条件の一つである事故除去時刻を電制実施時刻とし電制発電機の組み合わせを変えて過渡安定度計算を行い、前記不安定現象を安定化できる最適な電制発電機の組み合わせを求めて必要電制発電機として決定し、前記安定限界値と前記必要電制発電機とを対応付けた制御テーブルを各解析条件毎に作成し記憶する制御テーブル作成手段と、前記電力系統から取り込んだ電気量を用いて時々刻々変化する発電機出力有効電力をリアルタイムに計測する有効電力計測手段と、前記電力系統に事故が発生した場合に事故発生と事故除去と事故様相とをリアルタイムに検出する事故条件検出手段と、前記制御テーブル作成手段によって作成した各解析条件毎の制御テーブルの中から前記事故条件検出手段によって検出した事故条件に合致する制御テーブルを決定し、前記有効電力計測手段にて計測した発電機出力有効電力を入力して前記制御テーブル作成手段の計算と同じ計算で前記安定度判定量をリアルタイムに計算し、前記決定した制御テーブルを参照して前記リアルタイムに算出した安定度判定量に対応する必要電制発電機を決定する電制発電機決定手段と、前記電制発電機決定手段によって決定した電制発電機を前記電力系統から解列して電力系統の安定化を図る制御手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、人間系によるオフラインシミュレーション作業が不要で、かつ、実際の系統条件と事故条件を演算に反映できる高精度な事前演算形の系統安定化装置を提供できる。
以下本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の基本的な考え方を説明する。図24において、前述したように、1機無限大系統において、発電機Gは送電線Lを介して主系統(無限大母線)に接続されており、機械的入力PMを入力として発電した電気的出力PEを送電線Lを経由して主系統に送電している。ここで、送電線Lに事故が発生した場合の系統現象について図25を用いて説明する。系統事故の影響度合いによって、図25(a)のような安定ケースの場合もあれば、図25(b)のような不安定ケースの場合もある。系統事故において、事故様相すなわち事故発生の相の組み合わせ、事故点及び事故点インピーダンスが同じ条件である場合には、事故発生から事故除去までの電力の落ち込み部分の時間積分(図25(a)及び図25(b)のハッチング部分の面積)によって系統の過渡安定度が決まる。
ここで、図25(a)の安定ケース(事故除去時刻がt1)より事故継続時間TJが長くなっていった場合、図25(b)の不安定領域に至る直前に限界値が存在する。この限界値を安定限界値Slimitと言うことにする。安定限界値Slimitは(1)式で示され、事故除去時間の差の関係は(2)式で示される。
[数2]
0(安定) < Δt’ (安定限界) < Δt(不安定) …(2)
ここで、PM:発電機Gの機械的入力、PE:発電機Gの電気的出力、t0:事故発生時刻、t1:図25(a)に示す安定ケースの事故除去時刻、t1+Δt:事故除去がΔt遅れた場合の事故除去時刻、t1+Δt’:安定限界ケースの事故除去時刻(事故除去の遅れ=Δt’)。
0(安定) < Δt’ (安定限界) < Δt(不安定) …(2)
ここで、PM:発電機Gの機械的入力、PE:発電機Gの電気的出力、t0:事故発生時刻、t1:図25(a)に示す安定ケースの事故除去時刻、t1+Δt:事故除去がΔt遅れた場合の事故除去時刻、t1+Δt’:安定限界ケースの事故除去時刻(事故除去の遅れ=Δt’)。
安定限界値Slimitは、事前にオフラインシミュレーションによって求めることができる。また、安定限界値Slimitを超えた場合の不安定現象を安定化するための必要電制発電機を求めることも可能である。そこで、実際に系統事故が発生した場合、事故継続中の発電機出力PEの落ち込みの時間積分Sをリアルタイムに算出し、事前に求めておいた安定限界値Slimitと大小比較することによって安定度判定ができる。ここで積分Sを安定度判定量ということにする。安定度判定量Sは(3)式で示され、(4)式の大小関係が成立する場合に不安定ケースと判断できる。
[数4]
S > Slimit …(4)
さらに、不安定ケースと判断した場合には、事前に求めておいた必要電制発電機を遮断することにより、不安定現象を安定化することができる。また、必要電制発電機は、従来方式と同様に制御テーブルTabを用意しておくことで求めることができる。
S > Slimit …(4)
さらに、不安定ケースと判断した場合には、事前に求めておいた必要電制発電機を遮断することにより、不安定現象を安定化することができる。また、必要電制発電機は、従来方式と同様に制御テーブルTabを用意しておくことで求めることができる。
図2は、本発明の実施の形態での制御テーブルTabの一例を示す説明図である。これは、安定度判定量Sと必要電制発電機の相関関係を示すものであり、事故除去時刻が遅れ事故継続時間が長くなるにつれて、現象を安定化するための必要電制量が増加する関係を示している。図2の一例では、安定度判定量SがS1(事故除去時刻t1時の安定限界値)乃至S2(事故除去時刻t2時の安定限界値)の間では必要電制発電機は1Gの1台、安定度判定量がS2(t2時の安定限界値)乃至S3(t3時の安定限界値)の間では必要電制発電機は1Gと2Gの2台、安定度判定量がS3(t3時の安定限界値)乃至S4(t4時の安定限界値)の間では必要電制発電機は1Gと2Gと3Gの3台となる。本発明の実施の形態においては、制御テーブルTabをユーザが事前のオフラインシミュレーションで求めるだけでなく、特許文献1に示す構成を一部取り入れ、系統安定化装置の内部で自動で実施することも可能である。
制御テーブルTabは想定される事故条件毎に設けておく必要があるが、事故条件には事故様相、事故点及び事故点インピーダンス、事故継続時間があり、これらの組み合わせは厳密には無限に存在する。そこで以下に、実際の想定事故条件の場合分けと、制御テーブルTabの横軸となる安定度判定量を決めるためのパラメータ選定について整理する。
事故継続中においては、これら事故条件はいずれも電力の落ち込みとして現れるので、各条件の違いは安定限界値Slimit及び安定度判定量Sを計算することによって反映できる。ただし、事故様相に限っては事故除去後の安定度にも大きな影響を与えるので、制御テーブルTabは想定される事故様相毎に設けることとする。また、制御テーブルTabの横軸となる安定度判定量Sを決めるためのパラメータ選定については、上記の安定限界値Slimitの定義及び説明に用いた事故継続時間を選ぶ方法や、事故点及び事故点インピーダンスを選ぶ方法、あるいは、これらのうちの複数の条件の組み合わせとする方法もある。上記の考え方により、従来のオフライン事前演算形の系統安定化装置の欠点を克服した、新しい系統安定化装置を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる系統安定化装置1のブロック構成図である。系統安定化装置1は、系統モデル作成手段2と、解析条件設定手段3と、制御テーブル作成手段4と、有効電力計測手段5と、事故条件検出手段6と、電制発電機決定手段7と、制御手段8とから構成される。図26に示した従来例と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
系統モデル作成手段2は、特許文献1のそれと同等であり、事前に定期的に実行される。すなわち、系統モデル作成手段2は、電力系統内の各変電所や発電所から伝送される電力系統の接続状態(例えば、遮断器や断路器等の開閉状態)、及び電力の需給状態(発電機出力や負荷の有効及び無効電力)を系統情報として収集する系統状態収集部2aと、系統状態収集部2aにより収集された系統情報を記憶する情報記憶部2bと、送電線Lのインピーダンスや発電機の諸定数を系統設備データとしてあらかじめ記憶している系統設備記憶部2cと、情報記憶部2b中の系統情報と系統設備記憶部2c中の送電線のインピーダンスや発電機の諸定数を用いて、解析用系統モデルMdを作成する系統モデル作成部2dとから成っている。
解析条件設定手段3は、系統モデル作成手段2により作成された解析用系統モデルMdを記憶する系統モデル記憶部3aと、電制対象発電機の各種運用制約条件をあらかじめ記憶している運用条件記憶部3bと、系統モデル記憶部3aと運用条件記憶部3bに記憶されている解析用系統モデルと電制対象発電機の運用制約条件、及び安定化対象系統において想定される事故条件を用いて、電制発電機の組み合わせを変えて複数の解析条件Atを設定する解析条件設定部3cとから成っている。
解析条件設定手段3は、特許文献1のそれと機能的に同様であるが、特許文献1のものと異なる点は、事前に定期的に実行されることと、安定化対象系統において想定される事故条件、すなわち事故様相、事故点及び事故点インピーダンス、事故継続時間の組み合わせの中から必要ケースを設定することである。
ここで、事故点及び事故点インピーダンスのバリエーションは無限に存在する。そこで現実的なケース設定として、事故様相については想定されるパターンを設定し、事故点及び事故インピーダンスについては安定限界値及び安定度判定量に反映されることから代表1ケース(例えば、現象的に厳しめ条件として、制御対象発電所の母線至近端事故、事故点インピーダンス=0)に限定する。ここで設定した各事故条件は、後述の制御テーブル作成手段4において制御テーブルを求める条件として用い、事故継続時間を制御テーブルTabの横軸となる安定度判定量Sを決めるパラメータとして用いる。ここで他の方法として、事故継続時間を代表1ケースに設定し、事故点及び事故点インピーダンスも安定度判定量を決めるパラメータとする方法や、事故継続時間、事故点及び事故点インピーダンス各々をパラメータとして用いる方法も考えられる。なお、系統モデル作成手段2に特許文献1のように系統縮約部を持たせる構成も考えられる。
制御テーブル作成手段4は、解析条件記憶部4aと、過渡安定度計算部4bと、安定度判定部4cと、安定限界値記憶部4dと、電制発発電機選択部4eと、電制発電機記憶部4fとから構成され、系統モデル作成手段2で求めた解析用系統モデルMdと、解析条件設定手段3で求めた解析条件Atを用いて、安定度判定量Sと必要電制発電機との相関関係を表す制御テーブルTabを各解析条件Atごとに作成する。これら一連の機能は特許文献1のものにおける安定度判定手段及び電制発電機決定手段を併せたものと同様であるが、特許文献1のものとは異なり、系統モデル作成手段2と解析条件設定手段3とともに事前状態で定期的に、かつ、全ての解析条件Atについて実行される。また、過渡安定度計算部4cには安定限界値Slimitを解析条件毎に求める機能を追加し、そこで求めた安定限界値Slimitを安定度限界値記憶部4dにて記憶する。この制御テーブル作成手段4で求めた各解析条件At毎の安定限界値Slimitと電制発電機の相関関係が制御テーブルTabとなる。
有効電力計測手段5は、発電機出力の有効電力値Pをリアルタイムに計測するためのものである。事故条件検出手段6は、事故発生検出部6aと、事故除去検出部6bと、事故様相判定部6cとから構成され、実際に系統で発生した事故について事故発生及び事故除去の検出及び事故様相の判定を行い事故条件Faを出力する。
電制発電機決定手段7は、制御テーブル決定部7aと、安定度判定量計算部4bと、電制発電機決定部7cとから構成される。制御テーブル決定部7aでは、各解析条件毎の制御テーブルの中から、実際の事故条件Faに合致する制御テーブルTabを選択する。安定度判定量計算部7bでは、有効電力計測手段5でリアルタイムに計測する発電機出力有効電力Pの事故継続中の落ち込み部分の面積、つまり安定度判定量Sを計算する。電制発電機決定部7cでは、制御テーブル決定部7aで決定した制御テーブルTabと安定度判定量計算部7bで計算した安定度判定量Sとから必要電制発電機を決定する。制御手段8は、電制発電機決定手段7において決定した電制発電機に対して電制指令を出力するものである。
まず、全体機能の流れについて概要を説明する。系統モデル作成手段2、解析条件設定手段3、制御テーブル作成手段4では、その時点で実系統に事故が発生した場合の各事故点及び事故様相毎の安定度判定と不安定の場合には必要電制量を求める過渡安定度計算を行い制御テーブルを作成する。これら一連の処理は、常時一定周期で実行される。
有効電力計測手段5では、時々刻々変化する発電機出力有効電力をリアルタイムに計測する。事故条件検出手段6は、常時リアルタイムに実行され、実系統に系統事故が発生した場合に、その発生、除去、及び事故様相を検出する。電制発電機決定手段7、制御手段8は、事故条件検出手段6によって事故発生が検出されたときに起動され、制御対象事故に対して制御テーブルに従った適切な電制を実施する。
図3は、本発明の第1の実施の形態における制御テーブル作成手段4の処理内容の一例を示すフロー図である。ステップ(S1)において、系統モデル作成手段で作成した系統モデルを取り込む。次に、ステップ(S2)において、解析条件設定手段で作成した解析条件を取り込む。次に、ステップ(S3)において、複数の解析条件について次々と繰り返し過渡安定度判定を行うための初期設定として、最初の解析条件の設定を行う。次に、ステップ(S4)においては、各解析条件について事故継続時間を変えながら安定限界値を求めるための初期設定として事故除去時間の最小値を設定する。次に、ステップ(S5)において、電制発電機を初期状態となる選択なしの状態にしておく。以上のステップで、ステップ(S3)で選択した最初の解析条件についての初期設定が揃うので、ステップ(S6)ではそれらを含めて解析条件として記憶しておく。
ステップ(S7)において、ステップ(S6)で記憶した解析条件について、過渡安定度計算を行う。このステップ(S7)の中で、本発明の特徴である安定度判定量の計算を併せて行う。
ステップ(S8)では、過渡安定度計算の結果、安定か不安定かを確認し処理分岐を行う。安定の場合にはステップ(S10)へ、不安定の場合にはステップ(S8a)へ分岐し、発電機全選択かを判断し、発電機全選択でない場合にはステップ(S9)へ進む。
すなわち、不安定の場合には、不安定現象を安定化するために必要な電制発電機を求める必要がある。そこで、ステップ(S9)において、電制発電機を1台追加し、ステップ(S6)に戻る。このフロー構成によって、不安定現象を安定化できる必要電制発電機を求めることができる。制御対象とする発電機を全て電制発電機として選択しても現象を安定化できない場合には、ステップ(S8a)にて発電機全て選択か否かを判断してステップ(S10)へ分岐する。
以上のステップで1つの解析条件、事故除去時間に対して安定度判定量と必要電制発電機が求まるので、ステップ(S10)では、求めた安定度判定量と必要電制発電機を制御テーブルに記憶する。
次に、ステップ(S11)及びステップ(S12)において、事故除去時間t1に刻み時間Δtを加えた値を新たな事故除去時間t2として設定しステップ(S5)に戻る。以降、新たに設定した事故除去時間t2を新しい解析条件として、過渡安定度計算、安定判定及び必要電制発電機選択を行う。事故除去時間の設定が予め定めた最大時間を超えた場合は、事故除去時間の想定範囲について全て処理したことを意味するので、ステップ(13)へ分岐し、次の解析条件についての処理へ進む。
ステップ(S13)及びステップ(S14)において、全ての解析条件について処理が終了したか否かを判断し、まだ処理が終わっていない解析条件がある場合には、次の解析条件を選択し、ステップ(S4)へ戻って同様に繰り返し処理を行う。全ての解析条件について処理が終了した場合には、制御テーブル作成手段4の処理、すなわち、各解析条件について、安定限界値とそれに対する必要電制量を関係づけた制御テーブルが完了する。
図4は、本発明の第1の実施の形態における事故条件検出手段6の処理内容を示すフロー図である。ステップ(S1)及びステップ(S2)において、有効電力計測手段5で計測した発電機出力有効電力値の推移を観測し、落ち込みを検出した場合には事故が発生したと判断し、事故検出として記憶する。ステップ(S3)及びステップ(S4)において、有効電力計測手段5で計測した発電機出力有効電力値の推移を観測し、落ち込みの復帰を検出した場合には事故除去が行われたと判断し、事故除去検出として記憶する。ここで、事故検出及び事故除去検出の他の実現方法として、送電線Lの遮断器開閉状態を用いて送電線のオンオフ変化を見て判断する方法や、保護リレーRyの動作情報Rを用いて検出する方法もある。
次に、ステップ(S5)以降では、送電線Lのどの相で事故が発生したかを検出する事故相検出を行う。ステップ(S5)において、送電線2回線3相の全6相について電流振幅値を計測する。ここで電流振幅値が一定値未満の相は事故発生により保護リレーRyにて遮断されたことが判断できるので、ステップ(S7)及びステップ(S8)では電流振幅値が一定値未満である相を事故相として記憶する。ステップ(S6)及びステップ(S9)は、送電線全6相についての繰り返しを制御するステップであり、事故相検出を送電線全6相について判断及び記憶する。そして、ステップ(S9)で繰り返し終了かを判断し、繰り返しが終了していないときはステップ(S6)に戻り、繰り返しが終了したときは処理を終了する。
以上の説明では、ステップ(S7)において、送電線各相電流の振幅値が一定値未満であることに着目して事故相検出を行っているが、別の方法として、送電線の遮断器開閉状態を用いて判定してもよいし、保護リレーRyの動作情報Rを用いて判定するようにしてもよい。
図5は、本発明の第1の実施の形態における電制発電機決定手段7の処理内容を示すフロー図である。ステップ(S1)は電制発電機決定手段7の起動判定部分に該当し、事故条件検出手段6による事故検出がある場合に以降の処理を実行する。
ステップ(S2)において、制御テーブル作成手段4で求めた各解析条件の制御テーブルの中から、事故条件検出手段6にて検出した事故相が示す事故様相(たとえば、1相1線事故、3相4線事故、など)に合致する制御テーブルを選択する。ステップ(S3)及びステップ(S4)において、事故除去検出があるまで安定度判定量を計算する。前述のとおり、安定度判定量は事故継続中の有効電力の落ち込み部分の時間積分であるが、ソフトウェア処理の時間分解能ΔTがあるので、離散的な面積和にて行うのが実際である。ステップ(S5)において、ステップ(S2)で選択した制御テーブルと、ステップ(S3)及びステップ(S4)で計算した事故除去されたときの安定度判定量Sとを用いて、必要電制発電機を決定する。
これにより、従来の事前演算形の系統安定化装置の欠点を克服でき、人間系による事前オフラインシミュレーションが不要で、かつ、実系統状態と実事故条件を演算に反映できる高精度な系統安定化装置を提供できる。
以上の説明では、制御テーブル作成手段4は必要電制発電機を求める過渡安定度計算での電制実施タイミングを事故除去時刻t1としたが、系統安定化装置から電制指令を出力してから実際に発電機の遮断器が開極するまでに時間遅れがあることを考慮して、必要電制発電機を求める過渡安定度計算での電制実施タイミングを、電制指令出力から遮断器開極までの仕上がり時間を考慮して設定した制御テーブルを作成するようにしてもよい。すなわち、系統安定化装置1から電制指令を出力してから実際に発電機の遮断器が開極するまでに時間遅れがある。そこで、その遅れ時間を考慮して電制タイミングを補正し、電制発電機決定のための過渡安定度計算での解析条件とする。
図6は、本発明の第1の実施の形態における制御テーブル作成手段4の処理内容の他の一例を示すフロー図である。図3に示したフロー図に対し、ステップ(S9)において、発電機電制のタイミングに電制指令出力から遮断器開極までの時間τを加算し、電制仕上がりタイミングを事故除去時刻t1+τとして、電制発電機決定のための過渡安定度計算を行うようにしたものである。その他のステップは図3と同一であるので、同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。これにより、図3では考慮していなかった電制実施タイミングの遅れを補正でき、さらに精度のよい系統安定化装置が提供できる。
また、以上の説明では、安定度判定量計算は事故発生から事故除去までの間の有効電力の落ち込みの時間積分としていたが、事故除去直後の発電機出力有効電力が事故前の発電機出力有効電力を下回る場合には、事故除去検出時点から発電機出力有効電力値が事故前の発電機出力有効電力に戻る時点まで安定度判定量の計算を継続するようにしてもよい。安定度の判定量の計算は、制御テーブル作成手段4及び電制発電機決定手段7の双方で行われる。
すなわち、事故除去タイミングによっては事故除去による有効電力の戻りが低く、事故除去後も発電機が加速するケースがある。この場合には、事故除去後有効電力が事故前の値に戻るまで発電機の加速が継続するので、安定度判定量の計算は、事故除去後、有効電力が事故前の値に戻るまで継続するようにする。
図7は、事故除去後において発電機の電気的出力の電力PEが機械的入力PMより小さくなる電力の動きの一例を示す波形図である。これは、事故除去時刻t1で事故除去が行われ有効電力の事故中落ち込みが復帰するが、有効電力値PEが事故前の値PMまで戻らないケースである。この場合、発電機の加速は事故除去後も継続し、PE=PMとなるタイミングt2まで続く。よって、このケースにおいては、安定度判定量の計算は事故除去後も継続し、図7中のハッチングを施した部分の面積を安定度判定量Sとする。
図8は、事故除去後において発電機の電気的出力の電力PEが機械的入力PMより小さくなる場合の電制発電機決定手段7の処理内容の一例を示すフロー図である。図5に示したフロー図に対し、ステップ(S4a)を追加し、安定度判定量の計算を有効電力が事故前の値に戻るタイミング、すなわちPE=PMとなるまで継続するようにしている。その他のステップは図3と同一であるので、同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。なお、安定度判定量の計算は、制御テーブル作成手段4の過渡安定度計算の中でも行っているので、上記と同じくステップ(S4a)と同等のステップを追加しておく。これにより、事故除去後も発電機が加速するケースに対しても適用可能な系統安定化装置が提供できる。
以上の説明では、事故除去検出を待って電制を実施するようにしているが、安定度判定値Sが時間経過とともに増加する過程で安定限界値Slimitに達した時点で電制が順次実施できるようにしてもよい。すなわち、安定度判定量の計算が終わるタイミング(事故除去タイミング)で電制を実施する場合、事故継続中の安定度判定量計算の最中に既に安定限界値を超過することが判明しても電制実施が事故除去まで待たされることになる。ここで、電制実施タイミングを早めることができれば、電制によって発電機の加速エネルギーも脱落するので現象は安定方向に向かう。その結果、少ない必要電制量で現象を安定化できる可能性がある。そこで、安定度判定量の計算途中で安定限界値に達した時点で電制を行えるようにする。
そこで、安定度判定値Sが時間経過とともに増加する過程で安定限界値Slimitに達した時点で電制が順次実施できるように、制御テーブル作成手段4は、事故継続中の有効電力の時間積分によって時々刻々算出される安定度判定量が安定限界値に達した時点で発電機を順次電制する制御テーブルを作成する。また、事故条件検出手段6は事故継続中に事故相を検出できるようにし、電制発電機決定手段7は安定度判定値が安定限界値に達した時点で制御テーブルを参照して電制発電機を決定し制御手段8を実行する。
図9は、安定度判定量の計算途中で安定限界値に達した時点で電制を行う制御テーブルの一例を示す説明図である。図9には、図2に示した安定度判定量の計算が終わるタイミング(事故除去タイミング)で電制を実施する制御テーブル(太線)を重ねて示している。
図2に示した安定度判定量の計算が終わるタイミング(事故除去タイミング)で電制を実施する制御テーブルは、安定度判定量S1、S2、S3、S4、…が安定限界値Slimitとなり、安定度判定量SがS1乃至S2の場合は必要電制発電機は1Gの1台、安定度判定量SがS2乃至S3の場合は1Gと2Gの2台、安定度判定量SがS3乃至S4の場合は1Gと2Gと3Gの3台、…の相関関係を示している。
一方、安定度判定量の計算途中で安定限界値Slimitに達した時点で電制を行う制御テーブルにおいては、安定度判定量SがS1に達した時点で1Gを電制、S2’に達した時点で2Gを追加電制、S3’に達した時点で3Gを追加電制、…というように順次電制を実施する。安定度判定量の計算途中で安定限界値Slimitに達した時点で電制を行う制御テーブルでは、事故除去検出を待たずに安定度判定量Sが安定限界値S1、S2’、S3’、…に達した時点で順次電制を実施する。
これにより、安定限界値S2がS2’に増加し、安定限界値S3がS3’に増加することにより、制御テーブルの安定限界値を全体的に高くすることができる。その結果として、安定度判定量Sが同じであっても必要制御量を少なくできる効果が得られる。
図10は、本発明の第1の実施の形態で安定度判定量の計算途中で安定限界値に達した時点で電制を行う場合の制御テーブル作成手段4のフロー図である。これは、図3の制御テーブル作成手段4のフロー図を基本とし、ステップ(S12)後の処理フローの戻り位置をステップ(S5)からステップ(S6)に変更したものである。その他は、図3と同一であるので同一部分の説明は省略する。
このようにすることにより、先に求めた安定度判定量の小さい領域での電制発電機選択を次の新たな事故継続時間における過渡安定度計算及び必要電制発電機選択の解析条件として反映することができる。その結果、安定限界値に達した時点で順次追加電制を行うための制御テーブルを得ることができる。
図11は、本発明の第1の実施の形態で安定度判定量の計算途中で安定限界値に達した時点で電制を行う場合の事故条件検出手段6のフロー図である。図4の事故条件検出手段6のフロー図を基本とし、ステップ(S7)において事故相判定を電流振幅値が一定以上であることによって判定するよう変更したものである。判定を電流振幅値が一定以上とすることにより、事故中電流によって事故相を検出できるので、事故継続中の事故相判定が可能となる。その他は図4と同一であるので説明は省略する。
図12は、本発明の第1の実施の形態で安定度判定量の計算途中で安定限界値に達した時点で電制を行う場合の電制発電機決定手段7のフロー図である。これは、図5の電制発電機決定手段のフロー図を基本とし、安定度判定量が安定限界値に達した時点で電制発電機決定及び電制実施を行えるように構成したものである。すなわち、ステップ(S3a)において、安定度判定量が安定限界値に達したか否かを判定し、安定限界値に達していない場合は引き続き安定度判定量の計算を続ける。安定度判定量が安定限界値に達した場合には、電制発電機決定部7cにて制御テーブルを用いて必要電制発電機を決定し(ステップS5)、制御手段8にて選択した発電機に対して電制指令を出力する(ステップS6)。これにより、電制実施タイミングを早めることによって必要電制発電機をより少なく抑えることができる。
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図13は、本発明の第2の実施の形態に係わる系統安定化装置のブロック構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、事故条件検出手段6に主保護動作検出部6dを追加したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
制御テーブル作成手段4は、主保護動作失敗・後備保護動作に対応した制御テーブルをも作成して有しており、電制発電機決定手段7は、事故条件検出手段6の主保護動作検出部6dで主保護動作が検出され、かつ事故が継続しているときは、主保護動作失敗・後備保護動作に対応した制御テーブルを決定するようにしたものである。
図14は、本発明の第2の実施の形態における後備保護動作時の電力の動きの一例を示す波形図である。時刻t0で事故が発生し、時刻t1で主保護が動作して事故除去を行うも、何らかの原因で送電線Lの遮断器が開極できずに系統事故が完全に除去できないケースがある。この場合には、時刻t2のタイミングで後備保護が動作し事故除去が行われる。後備保護動作は主保護動作失敗ケースで初めて動作するように主保護との時間協調を設け、動作タイミングを遅く(事故発生から数百ms程度)設定する。
図14に示すように、時刻t1の主保護動作による事故除去によって電力の落ち込みの復帰があるが、事故が残っているため電力が完全に戻らない状態が継続する。その後、時刻t2の後備保護動作による事故除去によって完全に事故が除去され電力が復帰する。この場合、図14中のハッチングを施した部分の面積が発電機の加速エネルギーとなるが、主保護動作成功時の面積よりも大きくなるため、事故自体が軽微で安定ケースであっても主保護動作失敗によって不安定ケースとなる可能性がある。
本発明の第2の実施の形態では、事故条件検出手段6に主保護動作検出部6dを追加して主保護動作タイミングを検出し、さらに電制発電機決定手段7において主保護動作タイミング後の事故相の有無とその状態から主保護動作失敗と事故継続相とを認識し、これら条件に合致する制御テーブルを選択して必要電制発電機を決定する。
当然ながら、主保護動作失敗ケースの場合の制御テーブルを事前に用意しておく必要があるので、解析条件設定手段3においては、主保護動作失敗後の各事故継続相のパターンを解析条件Atとして見込んでおく。また制御テーブル作成手段4においては、解析条件設定手段3で見込んだ主保護動作失敗の各ケースについても、過渡安定度計算及び必要電制発電機選択を行い制御テーブルを作成しておく。
図15は、本発明の第2の実施の形態の事故条件検出手段6の処理内容の一例を示すフロー図である。これは、図4に示した第1の実施の形態の事故条件検出手段6のフロー図に対して、主保護動作を検出するために、ステップ(S10)及びステップ(S11)を追加したものである。その他は図4と同一であるので、同一ステップについては重複する説明は省略する。
主保護動作は事故発生から約70ms程度で送電線遮断器開極まで行われる。この点に着目し、ステップ(S10)及びステップ(S11)では事故検出からの時間経過によって主保護動作を判断しようとするものである。その他の方法として、送電線遮断器開閉情報や保護リレー動作情報を用いて主保護動作を検出する方法もある。
図16は、本発明の第2の実施の形態の電制発電機決定手段7の処理内容の一例を示すフロー図である。これは、図5に示した第1の実施の形態の電制発電機決定手段7のフロー図に対して、ステップ(S1a)、ステップ(S1b)及びステップ(S2a)を追加し、主保護動作後の事故継続状態を判定して条件に合致する制御テーブルを選択するようにしたものである。その他は図5と同一であるので、同一ステップについては重複する説明は省略する。
ステップ(S1a)では、主保護動作の有無により処理を分岐させる。主保護動作なしの場合は図5に示した第1の実施の形態と同様にステップ(S2)で事故様相に合致する制御テーブルを選択する。一方、主保護動作があった場合には、ステップ(S1b)へ分岐し、事故継続の有無によってさらに処理を分岐させる。ここで事故継続がない場合には主保護動作成功であるためステップ(S2)へ戻し、事故継続がある場合には、ステップ(S2a)で主保護動作失敗かつ事故様相の組み合わせに合致する制御テーブルを選択した後、ステップ(S5)の電制発電機決定の処理実行に移る。
主保護動作失敗ケースにおいては、主保護動作後も事故が残っている状態であるため電制実施が急がれる。そこで、ステップ(S1b)及びステップ(S2a)にて主保護動作失敗の判定と適切な制御テーブル決定を行った後、即ステップ(S5)にて電制発電機を決定するようにし、さらに後段の制御手段8にて即電制指令を出力できるようにする。これにより、主保護動作失敗、後備保護動作ケースに対しても対応可能な系統安定化装置が提供できる。
ここで、安定限界値及び安定度判定量の計算期間を事故発生から主保護動作までの短時間とすることによって機械的入力PMを事故前の値のまま一定で扱うことができるが、後備保護動作までの時間経過の間にAVRやガバナ等の発電機制御系によって機械的入力PMが制御され変化するので、機械的入力PMの値を事故前の値で一定として扱うことができない。そこで、機械的入力PMの時間的推移を推定または計測し安定度判定量の計算にリアルタイムに反映することによって、安定限界値及び安定度判定量の計算期間を事故発生から後備保護動作まで拡大するようにすることも十分実現可能である。
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図17は、本発明の第3の実施の形態に係わる系統安定化装置のブロック構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、事故条件検出手段6に事故点標定部6eを追加したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
制御テーブル作成手段4は、解析条件Atとして事故点を複数個所変えた制御テーブルも作成して有しており、電制発電機決定手段7は、事故条件検出手段6の事故点標定部6eで事故点が標定されたとき、標定された事故点に最も近く安定度上厳しめの条件の制御テーブルを決定するようにしたものである。
第1の実施の形態では、解析条件設定手段3の事故点想定を現象的に厳しい条件、すなわち送電線Lの制御対象発電所の至近端に設定し、実系統の事故条件との間に事故点のずれがあっても有効電力の事故中落ち込み部分の面積、すなわち安定度判定量Sに反映されるものとして扱うこととしている。そこで、さらに精度を高めるために、第3の実施の形態においては事故点標定部6eを設け、実際の事故条件を忠実に安定化演算に反映するようにした。当然ながら、事故点及び事故点インピーダンスを変えた解析条件とそれに対応した制御テーブルを事前に求めておく必要があるので、解析条件設定手段3及び制御テーブル作成手段4においては想定ケースの拡張が伴う。
図18は、本発明の第3の実施の形態の事故条件検出手段6の処理内容の一例を示すフロー図である。これは、図4に示した第1の実施の形態の事故条件検出手段6のフロー図に対して、ステップ(S10)及びステップ(S11)を追加したものである。その他は図4と同一であるので、同一ステップについては重複する説明は省略する。
これらステップ(S10)及びステップ(S11)において、送電線の事故中の電圧及び電流からインピーダンス計算に基づく事故点標定演算を行い、演算結果すなわち事故点の距離及び事故点インピーダンスを記憶する。
図19は、本発明の第3の実施の形態の電制発電機決定手段7の処理内容の一例を示すフロー図である。これは、図5に示した第1の実施の形態の電制発電機決定手段7のフロー図に対して、ステップ(S2)において、実際の事故条件と合致する制御テーブルを選択する際に、第1の実施の形態での条件である事故様相に加えて事故点標点演算結果も条件として用いるようにしたものである。
なお、実際の事故においては、事故点の場所、事故インピーダンスは無限の組み合わせがあるが、制御テーブル作成の際の解析条件は限りがあるため、実際の事故条件と完全に合致する制御テーブルは存在しないことが実際である。その場合は、事故条件が最も近く、かつ、安定度上厳しめの条件に該当する制御テーブルを選択することとなる。
これにより、第1の実施の形態では事故点を安定度上厳しめ条件である至近端事故として割り切って扱っていたものを、実際の事故条件すなわち事故点の位置及び事故点インピーダンスを反映したことによって、より高精度な制御ができる。
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図20は、本発明の第4の実施の形態に係わる系統安定化装置のブロック構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、有効電力計測手段5を除去し、制御テーブル作成手段4の安定限界値記憶部4dの代わりに安定限界事故継続時間記憶部4gを設け、電制発電機決定手段7の安定度判定量計算部7bの代わりに事故継続時間測定部7dを設けたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
事故の重さは、事故継続中の有効電力の落ち込み部分の面積の大きさで計ることができる。ここで、事故中の有効電力の落ち込みは事故条件、すなわち事故様相、事故点、及び事故点インピーダンスで決まるので、事故継続時間が測定できれば事故条件との組み合わせで事故の重さを判断することができる。事故条件の区別は、事故条件に合致する制御テーブルを選択することと等価であるので、第1の実施の形態における安定限界値及び安定度判定量の代わりに事故継続時間を用いて簡略化することができる。
そこで、第1の実施の形態では安定限界値及び安定度判定量として事故継続中の有効電力の落ち込み部分の時間積分値を用いていたものを簡略化して、第4の実施の形態では事故継続時間で代用する。さらに、有効電力を判定量に用いない構成となるため、有効電力計測手段5の省略も可能となる。この場合、事故条件検出手段6における事故検出及び事故除去検出は、有効電力を用いないこととして、送電線遮断器開閉状態、保護リレー動作情報等を用いたものとする。
図21は、本発明の第4の実施の形態における電制発電機決定手段7の処理内容の一例を示すフロー図である。これは、図5に示した第1の実施の形態における電制発電機決定手段7のフロー図に対して、ステップ(S3)の安定度判定量計算を事故継続時間測定に置き換えたものである。当然ながら、制御テーブルは事故継続時間と必要電制発電機との相関関係を示すものにし、それを各事故条件毎に設けておくこととする。また、制御テーブル作成手段4においては安定限界値計算が不要となり、事故継続時間と必要電制発電機とを関係づけて制御テーブルとして記憶することとする。また、その制御テーブルを使用するステップ、すなわち図21のステップ(S5)において選択した制御テーブルを用いて必要電制発電機を決定する際に、ステップ(S3)で求めた事故継続時間をパラメータとするようにする。これにより、第1の実施の形態に比べて簡素化を図った系統安定化装置を提供できる。
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図22は、本発明の第5の実施の形態に係わる系統安定化装置のブロック構成図である。この第5の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、内部演算にて得られた情報のうち運用者にとって有用な情報を収集し外部へ出力する解析用情報出力手段9を追加したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
解析用情報出力手段9は、系統安定化装置1の内部演算にて得られた情報のうち、運用者にとって有用な情報を収集し外部へ出力する。解析用情報出力手段9においては、系統安定化装置1の内部演算情報を収集する機能と、不安定ケースの有無及びその事故様相、全て発電機を選択しても制御量が不足することを表す制御量不足などを外部に出力する機能を持たせる。前者の機能により系統安定化装置1の解析用データの収集が可能となる。また後者の機能により、運用者は警報出力を参考にして系統運用の制限操作や系統構成の変更等を行うなど系統運用に役立てることができる。これにより、系統安定化装置1の内部の演算で得られた情報を収集及び出力することができるので、運用者にとって有用な情報を適宜提供することができる。
次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。図23は、本発明の第6の実施の形態に係わる系統安定化装置のブロック構成図である。この第6の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、系統モデル作成手段2と解析条件設定手段3の代わりに、制御テーブル情報[Tab]を装置外部から設定入力するためのインターフェイス手段10を付加し、制御テーブル作成手段4にはインターフェイス手段10を介して取り込んだ制御テーブル情報[Tab]を記憶するための安定限界値記憶部4d及び電制発電機記憶部4fを設けたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
第6の実施の形態は、第1の実施の形態において、系統モデル作成手段2、解析条件設定手段3、制御テーブル作成4により系統安定化装置内部で制御テーブルを作成していたものを、それと同等の機能を系統安定化装置1の外部に設けたものである。
想定する解析条件のバリエーションによっては、系統安定化装置1内部での演算処理に時間を要してしまい、全ての演算を系統安定化装置内で行うことが実現性に乏しい場合もある。その場合には、外部に計算機を設置し制御テーブル作成までを実施させ、汎用の通信手段で系統安定化装置1と接続して制御テーブル情報[Tab]を受け渡す構成が現実的である。また、外部に計算機を設置する代わりに、従来のオフライン事前演算形の系統安定化装置と同様に、人間系にて制御テーブル情報[Tab]をオフラインシミュレーションによって求め、インターフェイス手段10を介して外部から設定する構成も実現可能である。なお、従来のオフラインシミュレーションによる構成とした場合であっても、実際の系統条件及び事故条件を反映した高精度な系統安定化装置が実現できる。
これにより、系統モデル作成手段2、解析条件設定手段3、制御テーブル作成手段4の過渡安定度計算部分を外部に設けることにより、構成のシンプル化を図りながら、本発明の特徴である実際の系統条件及び事故条件を演算に反映できる高精度な系統安定化装置が提供できる。
次に、第1の実施の形態乃至第3の実施の形態、第5の実施の形態及び第6の実施の形態での制御テーブル作成手段4における安定限界値計算と、電制発電機決定手段7の安定度判定量計算部7bにおける安定度判定量計算とにおいては、時間についての二階積分によって安定限界値及び安定度判定量を計算する。発電機の運動方程式として、次の(5)式がよく知られている。
ここで、PM:発電機Gの機械的入力、PE:発電機Gの電気的出力、M:発電機の慣性定数、ωn:定格角速度、δ:発電機内部電圧位相角。
ここで、Δδ:発電機内部電圧位相角δの増加分。
(6)式は、事故発生後の電力の落ち込みを時間について二階積分し、さらに定数(ωn/M)を乗ずることによって発電機内部電圧位相角δの増加分Δδを求めることができることを示している。本発明では、(6)式を安定限界値及び安定度判定量の計算式として用いる。なお、(6)式を簡略化し、定数(ωn/M)の掛け算を省略して二階積分計算までに留めるようにしてもよい。
これにより、安定限界値及び安定度判定量に物理的な意味合いを持たせること、すなわち、発電機内部電圧位相角として求めることができる。その結果、制御テーブルが直感的に分かりやすいものになるので、制御テーブルの妥当性確認、安定度判定の検証及び応動評価が容易な系統安定化装置を提供できる。
1…系統安定化装置、2…系統モデル作成手段、2a…系統状態収集部、2b…情報記憶部、2c…系統設備記憶部、2d…系統モデル作成部、3…解析条件設定手段、3a…系統モデル記憶部、3b…運用条件記憶部、3c…解析条件設定部、4…制御テーブル作成手段、4a…解析条件記憶部、4b…過渡安定度計算部、4c…安定度判定部、4d…安定限界値記憶部、4e…電制発電機選択部、4f…電制発電機記憶部、4g…安定限界事故継続時間記憶部、5…有効電力計測部、6…事故条件検出手段、6a…事故発生検出部、6b…事故除去検出部、6c…事故様相判定部、6d…主保護動作検出部、6e…事故点標定部、7…電制発電機決定手段、7a…制御テーブル決定部、7b…安定度判定量計算部、7c…電制発電機決定部、7d…事故継続時間測定部、7e…事前潮流値保持部、8…制御手段、9…警報出力手段、10…インターフェイス手段
Claims (10)
- 電力系統の接続状態及び電力の需給状態を系統情報として定周期で収集し、かつ当該収集された系統情報とあらかじめ記憶されている系統設備データとに基づいて、現在の潮流状態を表す解析用系統モデルを作成する系統モデル作成手段と、
前記系統モデル作成手段により作成された解析用系統モデルに基づいて、事故条件を変えて複数の解析条件を設定する解析条件設定手段と、
前記解析条件設定手段により設定された各解析条件について一部条件をパラメータとして変えながら過渡安定度計算を行い、前記過渡安定度計算と併せて事故前の発電機出力有効電力と時々刻々変化する発電機出力有効電力との差を事故発生時刻から事故除去時刻まで時間積分して得られる安定度判定量を算出するとともに、前記過渡安定度計算で得られる系統現象について安定度を判定し不安定と判定した場合には前記安定度判定量を安定限界値として決定し、前記過渡安定度計算の条件の一つである事故除去時刻を電制実施時刻とし電制発電機の組み合わせを変えて過渡安定度計算を行い、前記不安定現象を安定化できる最適な電制発電機の組み合わせを求めて必要電制発電機として決定し、前記安定限界値と前記必要電制発電機とを対応付けた制御テーブルを各解析条件毎に作成し記憶する制御テーブル作成手段と、
前記電力系統から取り込んだ電気量を用いて時々刻々変化する発電機出力有効電力をリアルタイムに計測する有効電力計測手段と、
前記電力系統に事故が発生した場合に事故発生と事故除去と事故様相とをリアルタイムに検出する事故条件検出手段と、
前記制御テーブル作成手段によって作成した各解析条件毎の制御テーブルの中から前記事故条件検出手段によって検出した事故条件に合致する制御テーブルを決定し、前記有効電力計測手段にて計測した発電機出力有効電力を入力して前記制御テーブル作成手段の計算と同じ計算で前記安定度判定量をリアルタイムに計算し、前記決定した制御テーブルを参照して前記リアルタイムに算出した安定度判定量に対応する必要電制発電機を決定する電制発電機決定手段と、
前記電制発電機決定手段によって決定した電制発電機を前記電力系統から解列して電力系統の安定化を図る制御手段とを備えたことを特徴とする系統安定化装置。 - 前記制御テーブル作成手段は、必要電制発電機を求める過渡安定度計算での電制実施タイミングを、電制指令出力から遮断器開極までの仕上がり時間を考慮して設定した制御テーブルを作成することを特徴とする請求項1記載の系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成手段は、事故除去直後の発電機出力有効電力が事故前の発電機出力有効電力を下回る場合には、事故除去検出時点から発電機出力有効電力値が事故前の発電機出力有効電力に戻る時点まで、安定限界値及び安定度判定量の計算を継続して制御テーブルを作成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成手段は、事故継続中の有効電力の時間積分によって時々刻々算出される安定度判定量が安定限界値に達した時点で発電機を順次電制する制御テーブルを作成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成手段は、主保護動作失敗・後備保護動作に対応した制御テーブルを有し、前記事故条件検出手段は主保護動作検出部を有し、前記電制発電機決定手段は、主保護動作検出部で主保護動作が検出され、かつ事故が継続しているときは、主保護動作失敗・後備保護動作に対応した制御テーブルを決定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成手段は、解析条件として事故点を複数個所変えた制御テーブルを有し、前記事故条件検出手段は事故点標定部を有し、前記電制発電機決定手段は、事故点標定部で事故点が標定されたとき、標定された事故点に最も近く安定度上厳しめの条件の制御テーブルを決定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の系統安定化装置。
- 前記制御テーブル作成手段は、安定限界値及び安定度判定量の計算を、時間についての二階積分によって行うことを特徴とする請求項1ないし6に記載の系統安定化装置。
- 前記有効電力計測手段を除去し、前記制御テーブル作成手段及び前記電制発電機決定手段にて算出する安定限界値及び安定度判定量を、事故継続時間に置き換え、前記制御テーブル作成手段は、前記事故継続期間と必要電制発電機とを対応付けた制御テーブルを各解析条件毎に記憶し、前記電制発電機決定手段は、リアルタイムに算出した事故継続時間に対応する必要電制発電機を決定することを特徴とする請求項1記載の系統安定化装置。
- 内部演算にて得られた情報のうち運用者にとって有用な情報を収集し外部へ出力する解析用情報出力手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の系統安定化装置。
- 前記系統モデル作成手段及び前記解析条件設定手段の代わりに、前記制御テーブルに相当する制御テーブル情報を装置外部から設定するためのインターフェイス手段を設け、前記制御テーブル作成手段には前記インターフェイス手段を介して取り込んだ制御テーブル情報のうち安定限界値を記憶するための安定限界値記憶部及び電制発電機を記憶するための電制発電機記憶部を持たせたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の系統安定化装置。
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