JP2011113923A - 二次電池電極用バインダー用樹脂組成物、二次電池電極用バインダー、二次電池電極用バインダーを用いてなる電極及び二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)を含有し、(A)と(B)の質量比が99:1〜70:30であることを特徴とする二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
リチウムイオン電池の電極は、活物質と、必要に応じて主に炭素材料からなる導電材とが、バインダーを用いてアルミニウム箔や銅箔などの金属集電体上に層形成されたものである。正極用活物質としては、コバルト酸リチウムなどの遷移金属を含むリチウム複合酸化物などが用いられ、負極用活物質としては、炭素材料などが用いられる。そして、このようなリチウムイオン電池の電極は、通常、活物質に(必要に応じて)導電材およびバインダーを添加し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶媒の存在下で混練・調製した電極ペーストを、金属集電体上にドクターブレードなどによりに塗布し、乾燥することによって得られる。ここでバインダーは、活物質と導電材、さらにこれらと金属集電体とを接着するために用いられる。
したがって、電極形成のためのバインダーには、(1)活物質間、および必要に応じて添加する導電材との接着性に優れること、(2)活物質及び導電材と金属集電体との接着性に優れることなどの性能が要求される。
しかしながら、PVDFを用いた溶液をバインダーとして使用した場合、活物質間や導電材との接着性に劣り、また、活物質及び導電材と金属集電体との界面の接着性にも劣るため、極板の裁断工程や捲回工程等の製造工程時に活物質や導電材の一部が金属集電体から剥離・脱落し、微少短絡や電池容量のばらつきを生じる原因となっていた。
さらに、PVDFは電解液に対する耐膨潤性に劣るため、充放電を繰り返すことによってバインダーが電解液中で膨潤し、活物質と導電材との間や活物質及び導電材と金属集電体との接触抵抗が増大したり、活物質及び導電材の一部が金属集電体から剥離したりすることがあり、電池特性に劣り、さらには安全上の問題があった。
したがって、電極形成のためのバインダーには、(3)電解液に対する耐膨潤性に優れる性能も要求される。
また、PVDFを溶解させる溶媒として用いられているNMPは、電極ペーストを金属集電体上に塗布・乾燥する際に蒸発するため、これを安全に回収する必要がある。また昨今の環境関連の法規制によって、加工場によっては環境に影響を及ぼす可能性のある有機溶媒を使用できないところも多くなっている。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)を含有し、(A)と(B)の質量比が99:1〜70:30であることを特徴とする二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
(2)エラストマー樹脂(B)がスチレン系エラストマー樹脂である(1)記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が3〜70mgKOH/gであることを特徴とする(1)または(2)記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)いずれかに記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物と液状媒体とからなる二次電池電極用バインダー。
(5)液状媒体が水である(4)記載の二次電池電極用バインダー。
(6)(4)〜(5)いずれかに記載の二次電池電極用バインダーを用いて形成された二次電池電極。
(7)(6)に記載の二次電池電極を用いて形成された二次電池。
したがって、本発明の二次電池電極用バインダーは、放電レートが大きくても性能の低下の少ない放電レート特性に優れ、かつサイクル特性にも優れた二次電池を得ることが可能となる。
そして、本発明の二次電池電極及び二次電池は、本発明の二次電池電極用バインダーを用いているため、高放電レートでも劣化が生じにくい放電レート特性に優れ、かつサイクル特性にも優れるものであり、携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラなどの電子機器はもちろんのこと、電気自転車、電気自動車などにも広く使用することが可能となる。
本発明の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物(以下、バインダー用樹脂組成物と略記することがある)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)を含有するものであって、(A)と(B)を特定の割合で混合した樹脂を主成分するものである。バインダー用樹脂組成物中の(A)と(B)の合計質量は80質量%以上であることが好ましい。本発明のバインダー用樹脂組成物を用いることで、活物質及び導電材と金属集電体との接着性が良好な二次電池電極用バインダー(以下、バインダーと略記することがある)を得ることができる。
本発明のバインダー用樹脂組成物に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分を一定量含むものである。主成分であるオレフィン成分としては、プロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類が挙げられ、これらのモノマーは2種以上を用いてもよい。中でも、プロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のオレフィンが好ましく、プロピレン、エチレンがより好ましい。
本発明のバインダー用樹脂組成物はエラストマー樹脂(B)を含有することにより、活物質及び導電材と金属集電体との接着性に優れるバインダーとなるものであり、中でも高放電レートで使用しても活物質や導電材が金属集電体から脱落することがなく、放電レート特性に優れた電池を得ることを可能とするものである。
本発明のバインダー用樹脂組成物に用いられるエラストマー樹脂(B)としては、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、エステル系エラストマー樹脂、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー樹脂等を用いることができる。
スチレン系エラストマー樹脂としては、一般にスチレン系熱可塑性エラストマーとよばれているブロック共重合体やスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を挙げることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレンブチレン共重合体−スチレン(S−EB−S)、スチレン−エチレンプロピレン共重合体−スチレン(S−EP−S)、スチレン−ブタジエン−スチレン(S−B−S)、スチレン−イソプレン−スチレン(S−I−S)、スチレン−イソブチレン−スチレン(S−IB−S)を挙げることができる。
これらの中でもスチレン−エチレンブチレン共重合体−スチレン(S−EB−S)が好ましく、市販されているものとしては、例えばJSR社製DYNARON8630P(アミノ基変性S−EB−Sブロック共重合体)を用いることができる。
エラストマー樹脂(B)の質量比が1未満では、得られるバインダーはエラストマー樹脂(B)の添加効果がほとんど見られず、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のみを用いたバインダーと比べて十分な接着性向上の効果が得られず、放電レート特性に優れた電池を得ることができない。一方、エラストマー樹脂(B)の質量比が30を超えると、得られるバインダーは酸およびアルカリへの耐性が低下し、電解液中で膨潤しやすいものとなる。また、活物質間、および必要に応じて添加する導電材との接着性にも劣るものとなる。
このような親水性有機溶剤としては、20℃における水に対する溶解性が50g/L以上のものが好ましく、こうした親水性有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール(以下「IPA」と略称する)等のアルコール類、テトラヒドロフラン(以下、「THF」)ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体等が挙げられ、2種以上を混合して使用してもよい。これらの親水性有機溶剤の中でも、水性分散化を促進する点からIPA、n−プロパノール、THFが好ましい。
本発明において、不揮発性水性分散化助剤とは、水性分散化において、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物を指す。不揮発性水性分散化助剤を含むバインダーを用いた場合、不揮発性水性分散化助剤は電極形成後にも残存し、バインダー樹脂を可塑化することにより、電極の特性、例えば耐電解液特性を悪化させる。不揮発性とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
正極用活物質としては、リチウムイオンを可逆的に放出、吸蔵でき、電子伝導度が高い材料が好ましく、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどの遷移金属酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
負極用活物質としては、例えばグラファイトなどの炭素材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
導電材としては、炭素材または金属もしくはその化合物を用いることができる。炭素材としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、炭素繊維等を挙げることができ、金属もしくはその化合物としては、ニッケル、コバルト、チタン、酸化コバルト、酸化チタン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
なお、後述する各種の特性は、以下の方法によって測定または評価した。
(1)バインダーの集電体との接着強度
得られた二次電池電極用バインダーを銅箔に乾燥後の接着層の厚みが3μmになるようにメイヤーバーでコートし、90℃で90秒間乾燥した。銅箔のバインダー塗布面にバインダーをコートしていない銅箔を貼り合わせ、ヒートプレス機(シール圧0.3MPaで5秒間)にて160℃でプレスした。
得られた銅積層体から幅15mm、長さ10cmの測定サンプルを切り出し、引張り試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度100mm/分の条件にてT型剥離試験を行い、剥離強度を評価した。なお測定サンプル5個の剥離強度を測定し、その平均値とした。
得られた二次電池電極用バインダーをテフロン(登録商標)製の皿に入れた後、65℃で2時間乾燥し、さらに75℃減圧下で15時間乾燥した。固化した樹脂を約1.5g計り取り、正確な質量を測定したのち、電解液(四フッ化ホウ酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶媒(質量比1/1)に1モル/リットルの濃度で溶解させたもの)に50℃雰囲気下で24時間浸漬した。その後、樹脂の表面に付着した電解液をキムワイプで拭き取り、電解液浸漬後の樹脂の質量を測定し、その増分を電解液膨張率とした。
負極活物質として黒鉛粉末(日本黒鉛工業社製、CGC−20)92質量%と、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)4質量%と、カルボキシメチルセルロース(CMC)(第一工業製薬社製、セロゲンBSH−6)水溶液1質量%と、得られた二次電池電極用バインダー3質量%を、それぞれの固形分濃度が45質量%になるように配合し、十分に混練することにより二次電池電極用ペーストを調製した。
得られたペーストを厚さ18μmの銅箔の片面に、乾燥後の厚さが約80μmになるようフィルムアプリケーターを用いて塗布し、80℃で30分熱風乾燥させた後、さらに水分を除去するために120℃で15時間真空乾燥して、銅箔上に活物質層を形成して二次電池負極電極を調製した。銅箔上に形成した電極を幅2.5cm、長さ10cmに切り出し、測定サンプルとし、銅箔側を十分な厚みを有する鋼板に両面テープで貼り合わせた。測定サンプルの活物質層にセロハンテープ(ニチバン社製、CT−18、18mm幅)を貼り付け、その一辺から180度の方向に50mm/分の速度で引き剥がしたときの応力を測定した(180度剥離試験を行い測定した)。なお測定サンプル3個の応力を測定し、その平均値とした。
(3)の方法で得られた二次電池負極電極を用い、面積が2cm2の円形になるように切断し、集電体上の塗膜をプレスにて膜密度が1.15g/cm3 となるように成形し、コバルト酸リチウム電極(宝泉社製)と組み合わせるとともに両極の間にセパレーターを挟んでコイン型電池を作製し、充放電試験を行った。25℃環境下、0.2C−4.1V定電流定電圧充電後、0.2C−2.5V定電流放電を行い、続けて3C−4.1V定電流定電圧充電後、3C−2.5V定電流放電を行うことにより、放電レート特性の評価を行った。0.2C放電後の放電容量を100%とした時の、3C放電後の放電容量の維持率を下記の基準に基づいて算出し、80%以上の容量維持率を示すものを○、60%以上の容量維持率を示すものを△、60%未満の容量維持率を示すものを×とした。
容量維持率(%)=(3C放電容量/0.2C放電容量)×100
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として、三洋化成社製ユーメックス1001(無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、酸価26mgKOH/g、質量平均分子量40000)を用い、エラストマー樹脂(B)として、JSR社製DYNARON8630P(アミノ基変性S−EB−Sブロック共重合体)を用い、(A)と(B)の質量比99:1の割合で160℃に設定したラボプラストミル中に供給し、50rpmで5分間混練し、混練樹脂(バインダー用樹脂組成物)を得た。撹拌機とヒーターを備えた密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器に、混練樹脂を30g、塩基性化合物としてN,N−ジメチルエタノールアミンを3g、THFを120g、蒸留水を147g仕込み、密閉した後、300rpmで撹拌翼しながら140℃(内温)まで加熱した。撹拌下、140℃で1時間保持した後、ヒーターの電源を切り60℃まで自然冷却し、乳白色の均一な水性分散体(酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度10質量%)を得た。
この水性分散体290gを1Lのナスフラスコに入れ、エバポレーターに設置し、60℃で減圧することにより水性媒体を留去した。約180gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、常圧に戻して室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な水性分散体であるバインダー「T-1」を得た。
得られたバインダー「T-1」は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度が25質量%、塩基性化合物の濃度が1.5質量%であった。
バインダー用樹脂組成物中の酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の質量比を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で、二次電池電極用バインダー「T−2」〜「T−6」、「E−1」〜「E〜3」を得た。なお、比較例1においては、エラストマー樹脂(B)を添加しなかった。
実施例3において、乳白色の均一な水性分散体(酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度10質量%)を得た後、エバポレーターで水性媒体を留去する際に、水性媒体の留去量を約150gに変更した以外は、実施例3と同様に行い、乳白色の均一な水性分散体であるバインダー「T−7」を得た。
得られたバインダー「T−7」は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度が20質量%、塩基性化合物の濃度が1.5質量%であった。
実施例3において、乳白色の均一な水性分散体(酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度10質量%)を得た後、蒸留水を50g加え、エバポレーターで水性媒体を留去する際に、水性媒体の留去量を約150gに変更した以外は、実施例3と同様に行い、乳白色の均一な水性分散体であるバインダー「T−8」を得た。
得られたバインダー「T−8」は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエラストマー樹脂(B)の固形分濃度が15質量%、塩基性化合物の濃度が1.5質量%であった。
一方、比較例1で得られた二次電池電極用バインダーは、バインダー用樹脂組成物が酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のみからなるものであったため、集電体との接着強度に劣るものであり、得られた二次電池は放電レート特性に劣るものであった。比較例2、3で得られた二次電池電極用バインダーは、バインダー用樹脂組成物中のエラストマー樹脂(B)の割合が多すぎたため、電解液膨潤率が高く、さらに電極内部の接着強度が低く、これらのバインダーを用いた二次電池は、放電レート特性に劣るものであった。
Claims (7)
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及びエラストマー樹脂(B)を含有し、(A)と(B)の質量比が99:1〜70:30であることを特徴とする二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
- エラストマー樹脂(B)がスチレン系エラストマー樹脂である請求項1記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が3〜70mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれかに記載の二次電池電極用バインダー用樹脂組成物と液状媒体とからなる二次電池電極用バインダー。
- 液状媒体が水性媒体である請求項4記載の二次電池電極用バインダー。
- 請求項4〜5いずれかに記載の二次電池電極用バインダーを用いて形成された二次電池電極。
- 請求項6に記載の二次電池電極を用いて形成された二次電池。
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