JP2011105936A - ポリフェニレンスルフィドを含む樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィドを含む樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、難燃性、延性、耐衝撃性などを具備し、電気・電子部品、通信部品、繊維、フィルム・シート、自動車部品などへ幅広く適用可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1):
Figure 2011105936

で示される繰り返し単位を70モル%以上含むポリフェニレンスルフィドを55〜99質量%、(B)エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位を含むエチレン系共重合体を1〜45質量%、ならびに(C)ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、およびこれらの混合物からなる群より選択されるポリスルホン系ポリマーを、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し1〜150質量部含む樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィドを含む樹脂組成物およびその製造方法に関する。
ポリフェニレンスルフィドは耐熱性、剛性、難燃性、耐薬品性等に優れた樹脂であり、電気・電子部品、自動車部品などに幅広く用いられている。しかしこれらの特性を有する反面、ポリフェニレンスルフィドは成形加工性、耐衝撃性等が不十分であった。そのため、ポリフェニレンスルフィドの用途展開には限界があり、これらの欠点の改良が強く要望されていた。
ポリフェニレンスルフィドの耐衝撃性、成形加工性等を改良する試みとして、ポリフェニレンスルフィドに共重合体を分散させた組成物が提案されている。例えば、特開昭58−154757号公報(特許文献1)には、ポリフェニレンスルフィドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体を含む樹脂組成物が開示されている。特開平1−198664号公報(特許文献2)には、ポリフェニレンスルフィドにエチレン/メタクリル酸グリシジル−ポリメタクリル酸メチルグラフト共重合体を配合した樹脂組成物が開示されている。特開平2−16160号公報(特許文献3)には、ポリフェニレンスルフィド樹脂にα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステル共重合体を配合した組成物が開示されている。特開2001−302917号公報(特許文献4)には、ポリフェニレンスルフィドが連続相、ポリオレフィンが分散相である組成物が靭性に優れることが記載されている。特開2005−248170号公報(特許文献5)には、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ基含有エチレン共重合体、ポリオレフィン樹脂および無機充填剤からなる組成物が剛性、耐衝撃性に優れることが記載されている。エポキシ基含有エチレン共重合体は、ポリフェニレンスルフィドとポリオレフィンとの相溶化剤として作用するとされている。国際公開第2009/008092号(特許文献6)には、ポリフェニレンスルフィドを65〜99質量%、ならびに成分(B)エチレン単位、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位、および酢酸ビニル単位またはアクリル酸メチル単位からなるエチレン系三元共重合体を1〜35質量%含む樹脂組成物であって、前記成分(B)が数平均粒子径が1μm未満の分散相を形成する脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は耐衝撃性、延性、難燃性に優れるとされる。
以上のように、ポリフェニレンスルフィドにエポキシ基を有するエチレン系共重合体を添加した耐衝撃性等に優れる樹脂組成物が提案されているが、用途によっては、さらなる耐衝撃性や耐熱性の向上が要求されている。
一方、近年、耐熱性、耐衝撃性、難燃性等に優れた樹脂としてポリスルホンやポリフェニレンスルホンが注目されつつある。ポリフェニレンスルホンの製造方法は、例えば、特開平5−209368号公報(特許文献8)等に記載されている。ポリフェニレンスルホンを用いた組成物として、例えば、特表2008−516028号公報(特許文献9)には、ポリフェニレンスルホンとポリエーテルイミドとポリエーテルエーテルケトン等との不混和性ポリマーを含む組成物が開示されている。この組成物は、高温性能と溶融加工性とコストのバランスに優れるとされる。
また、ポリスルホンは耐熱性、難燃性に優れることから、金属代替分野で用いられている。ポリスルホンを用いた組成物として、例えば、特開2007−197555号公報(特許文献10)には、ポリスルホンと窒化チューブからなる、優れた強度を有する組成物が記載されている。
特開昭58−154757号公報 特開平1−198664号公報 特開平2−16160号公報 特開2001−302917号公報 特開2005−248170号公報 国際公開第2009/008092号 特表2008−516028号公報 特開平5−209368号公報 特表2008−516028号公報 特開2007−197555号公報
上記のとおり、特許文献1〜7には、ポリフェニレンスルフィドと、エポキシ基含有エチレン系共重合体からなる耐衝撃性等に優れる樹脂組成物が提案されているが、用途によっては、さらなる耐衝撃性や耐熱性の向上が要求されている。
一方、特許文献9に開示のポリフェニレンスルホンを主成分とする組成物は耐衝撃性、延性等の性能が不十分であり、またポリフェニレンスルホンを主成分とするためコストが高いという問題がある。さらに当該文献には、エチレン系共重合体およびポリフェニレンスルフィドを用いることに関する記載はない。また、特許文献10に記載のポリスルホン組成物は、優れた強度を有するものの延性などが不十分である。
以上、耐熱性、耐衝撃性、延性および難燃性を具備し、しかも安価な樹脂組成物が望まれているが、未だこの要求を満足する樹脂組成物は存在しなかった。従って、本発明は、耐熱性、耐衝撃性、延性および難燃性を有し、しかも安価な樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討をした結果、ポリフェニレンスルフィド、エポキシ基を有するエチレン系共重合体、および、ポリスルホンまたはポリフェニレンスルホンを特定量含む樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
(1) (A)特定構造のポリフェニレンスルフィドを55〜99質量%、(B)エポキシ基を含むエチレン系共重合体を1〜45質量%、ならびに(C)特定構造のポリスルホン系ポリマーを、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し1〜150質量部含む樹脂組成物。
(2)前記(A)〜(C)を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
(3)前記樹脂組成物から得られる射出成形体、押出成形体、シート・フィルム成形体、チューブ状の成形体、繊維、基板と前記基板の上に設けられた金属層または無機物からなる層とを含む積層体、電気・電子部品、通信機器部品、自動車部品、ならびにこれらの製造方法。
本発明により、耐熱性、耐衝撃性、延性および難燃性を有し、しかも安価な樹脂組成物が提供できる。
1.本発明の樹脂組成物
本発明の樹脂組成物(単に「組成物」ともいう)は、(A)特定のポリフェニレンスルフィド(以下「PPS」ともいう)、(B)エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位を含むエチレン系共重合体(以下「エチレン系共重合体」ともいう)、および(C)特定のポリスルホン(以下、「PSU」ともいう)、特定のポリフェニレンスルホン(以下「PPSU」ともいう)、およびこれらの混合物からなる群より選択されるポリスルホン系ポリマーを、それぞれ特定量含む。
(1) (A)ポリフェニレンスルフィド(PPS)
本発明の樹脂組成物は特定のポリフェニレンスルフィドを含む。ポリフェニレンスルフィドとは、フェニレン基と硫黄原子が結合した単位を主成分とするポリマーである。本発明で用いるポリフェニレンスルフィドは一般式(1)で示される単位を70モル%以上含むが、好ましくは80モル%以上含む。
Figure 2011105936
ポリフェニレンスルフィドのその他の単位は限定されないが、下記の化学式で示される単位を30モル%未満含むことが好ましい。
Figure 2011105936
ポリフェニレンスルフィドは、定法、例えば特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される方法により合成できる。また、市販されているポリフェニレンスルフィドを用いてもよい。
上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィドは、種々の処理が施されていてもよい。この処理の例には、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で行われる熱処理または熱水などによる洗浄、および酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物等の官能基含有化合物による活性化処理が含まれる。
ポリフェニレンスルフィドは、後述する(B)エチレン系共重合体中のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位と反応しうる官能基を有することが好ましい。かかる官能基を有するポリフェニレンスルフィドは、(B)エチレン系共重合体との間でグラフトポリマーを形成すると考えられる。これにより、ポリフェニレンスルフィドとエチレン系共重合体の相溶性が向上し、樹脂組成物の特性が向上すると考えられる。このような官能基としては、スルファニル基(メルカプト基)、エポキシ基、カルボキシル基などが挙げられるが、中でもスルファニル基が好ましい。
ポリフェニレンスルフィドのASTM D648に基づく熱変形温度(1.82MPa荷重)は、90〜130℃であることが好ましい。ポリフェニレンスルフィドの示差走査熱量測定による融点は、好ましくは265〜295℃、さらに好ましくは270〜290℃である。このようなポリフェニレンスルフィドは、特に耐熱性に優れた樹脂組成物を与える。また、ポリフェニレンスルフィドのASTM D792に基づく比重は、1.2〜1.4が好ましい。比重はポリフェニレンスルフィドの結晶化度の指標となるので、ポリフェニレンスルフィドの比重がこの範囲にあると、得られる樹脂組成物の結晶化度が高まり、耐摩耗性等が向上する。
ポリフェニレンスルフィドの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量で好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。分子量がこのような範囲にあるポリフェニレンスルフィドを用いると、組成物としての成形性、物性等が良好となる上に、末端に存在する官能基の量が適量となる。その結果、後述するように、(B)エチレン系共重合体中のエポキシ基等の官能基と反応して十分な相溶化効果を与えるので、(B)エチレン系共重合体を(A)ポリフェニレンスルフィド中に微分散させやすくなる。
本発明で用いるポリフェニレンスルフィドの溶融粘度は、キャピラリーフローメーターを用いて300℃、100mm/分 L/D=10/1の条件で測定した場合に、80〜700Pa・sであることが好ましく、100〜600Pa・sであることがより好ましい。ポリフェニレンスルフィドの溶融粘度が上記の範囲外であると、成形加工性や耐熱性などが不十分になる場合がある。
(2) (B)エチレン系共重合体
本発明の樹脂組成物は、エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位を含むエチレン系共重合体(エチレン系共重合体)を含む。エチレン単位とは共重合体におけるエチレンに由来する構造であり、具体的には−(CH−CH)−で表される単位である。
エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位とは、共重合体におけるエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸のグリシジルエステルに由来する構造である。エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステルの例には一般式(3)で表される化合物が含まれる。
Figure 2011105936
一般式(3)において、Rは、一つのエチレン性不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基である。Rの炭素数は、好ましくは2〜10である。エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステルの具体例には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル等のα,β−不飽和カルボン酸グリシジルが含まれる。
エチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位とは、共重合体におけるエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテルに由来する構造である。エチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテルの例には一般式(4)で表される化合物が含まれる。
Figure 2011105936
一般式(4)において、Rは一つのエチレン結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基である。また、Xは、−CH−O−または下記一般式(4−1)で表される基である。Rの炭素数は、好ましくは2〜10である。
Figure 2011105936
エチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテルの具体例には、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等のα−不飽和炭化水素基グリシジルエーテルが含まれる。
エチレン系共重合体のJIS K7210、190℃、21N(2.16kg荷重)にて測定したメルトインデックス(「MI」ともいう、MFRと同義である)は、好ましくは2〜50g/10分であり、さらに好ましくは3〜20g/10分である。また、エチレン系共重合体の示差走査熱量測定による融点は、45〜120℃が好ましく、50〜110℃がさらに好ましい。エチレン系共重合体のASTM D2240に基づく表面硬度(Shore D)は、10〜50が好ましい。エチレン系共重合体が上記の特性を有すると、得られる樹脂組成物の機械的性質が向上する。
本発明で用いる(B)エチレン系共重合体は、(B1)エチレン単位、および(B2)エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位からなるエチレン系二元共重合体が好ましい。かかる共重合体の(B1)単位:(B2)単位は、55〜95質量%:45〜5質量%が好ましく、65〜90質量%:35〜10質量%がさらに好ましい。
あるいは、本発明で用いる(B)エチレン系共重合体は、前記(B1)、(B2)および(B3)酢酸ビニル単位またはアクリル酸メチル単位からなるエチレン系三元共重合体であることが好ましい。かかる共重合体の(B1)単位:(B2)単位:(B3)単位は、40〜94質量%:1〜20質量%:5〜40質量%が好ましく、50〜90質量%:2〜15質量%:8〜35質量%が好ましい。
本発明で用いる(B)エチレン系共重合体が、エチレン系二元共重合体またはエチレン系三元共重合体であると、より耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得られる。特に、エチレン系三元共重合体は極めて優れた耐衝撃性を与える。
エチレン系共重合体は、公知の方法に準じて製造できる。例えば、エチレン、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステルおよび酢酸ビニルを、ラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下にランダム共重合させる方法により、エチレン系三元共重合体を製造できる。
前述のとおり、エチレン系共重合体のエポキシ基がポリフェニレンスルフィド等に含まれる官能基等と反応することにより、連続相中に微分散できると考えられる。このためエチレン系共重合体は、ある程度の量のエポキシ基を有することが好ましい。しかしながら、エポキシ基の量が多すぎると、エポキシ基同士が重合してしまう等により、エチレン系共重合体が微分散しにくくなると考えられる。従って、エチレン系共重合体中のエポキシ基の量には好適な範囲が存在する。例えば、本発明で用いる(B)エチレン系共重合体がエチレン系三元共重合体である場合は、エポキシ当量が2000〜5000g/eqであることが好ましい。エポキシ当量は、エポキシ基1個あたりの分子量であり、エポキシ当量が小さいほど、分子内に含まれるエポキシ基の量が多くなる。具体的に、エチレン系三元共重合体が、エチレン単位:グリシジルメタクリレート単位:メチルアクリレート単位=70:3:27(質量比)からなる場合、エポキシ当量は以下のように計算される。
エチレン単位、グリシジルメタクリレート単位、メチルアクリレートの各単位の分子量は、それぞれ28、114、86である。よって、各単位の比をモル比で表すと、エチレン単位:グリシジルメタクリレート単位:メチルアクリレート単位=2.5:0.026:0.314=88:0.9:11.1(モル比)となる。従って、このような共重合体は、エポキシ基0.009個あたり、0.88×28+0.009×114+0.111×86=35.2の分子量を有すると考えられる。よって、エポキシ当量は、35.2/0.009=3911g/eqと計算できる。
また、ポリフェニレンスルフィドがスルファニル基を有する場合、当該基は、エポキシ基のみならずエステル基とも反応しうる。エチレン系三元共重合体は、単位(B2)に由来するエポキシ基と、単位(B3)に由来するエステル基を有する。よって、ポリフェニレンスルフィドがスルファニル基を含むと、エポキシ基およびエステル基とも反応できるので、エチレン系三元共重合体はポリフェニレンスルフィド中に、より微分散しやすくなる。
さらに(B)エチレン系共重合体は、前記エチレン系共重合体セグメントの幹にビニル系共重合体セグメントが枝として結合してグラフト変性されたグラフト共重合体であってもよい。セグメントとは、グラフト共重合体において、幹および枝を構成する高分子鎖をいう。エチレン系共重合体セグメントとしては、エチレン系二元共重合体からなるセグメントが好ましい。ビニル系重合体セグメントを形成するビニル単量体の例には、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酸基を有するビニル単量体、ヒドロキシル基を有するビニル単量体、エポキシ基を有するビニル単量体、シアノ基を有するビニル単量体、およびスチレンが含まれる。こられの具体例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン。これらの中でも、グラフト変性しやすい等の理由から(メタ)アクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
特に、ビニル単量体としてスチレンを用いると、得られる樹脂組成物の衝撃強度等がより高くなるので好ましい。これは、エチレン系共重合体にグラフト鎖として導入されたスチレン鎖と、分子内に存在するベンゼン環を有するポリスルホン、ビフェニレン骨格を有するポリフェニレンスルホンとの親和性が、π−π相互作用により向上することに起因すると考えられる。
(3) (C)ポリスルホン系ポリマー
本発明の樹脂組成物は(C)ポリスルホン、ポリフェニレンスルホン、およびこれらの混合物からなる群より選択されるポリスルホン系ポリマーを含む。
ポリスルホンとは、フェニレン基とスルホン基が結合した単位を主成分とするポリマーである。本発明で用いるポリスルホンは、下記一般式(2)で示される単位を50モル%以上含むが、好ましくは60モル%以上含む。一般式(2)の単位が50モル%未満であると樹脂組成物の耐熱性が不十分となる。
Figure 2011105936
ポリフェニレンスルホンとは、スルホン基とフェニレン基と結合した部位がさらにビフェニレン、ターフェニレン等のポリフェニレン基と酸素等の二価の元素を介して結合している単位を主成分とするポリマーであり、ポリスルホンの一種である。本発明で用いるポリフェニレンスルホンは、一般式(2−1)で示される単位を50モル%以上含むが、好ましくは60モル%以上含む。一般式(2−1)の単位が50モル%未満であると樹脂組成物の耐熱性が不十分となる。
Figure 2011105936
ポリスルホン系ポリマーにおける前記単位以外の単位は特に限定されない。また、前記ポリスルホンとポリフェニレンスルホンの混合比も限定されない。
ポリスルホン系ポリマーのASTM D648に基づく熱変形温度(1.82MPa荷重)は、180〜220℃であることが好ましい。ポリスルホン系ポリマーの示差走査熱量測定によるTgは、好ましくは200〜250℃である。このようなポリスルホン系ポリマーは、特に耐熱性に優れた樹脂組成物を与える。また、ポリスルホン系ポリマーの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量で好ましくは5,000以上である。分子量がこのような範囲にあるポリスルホン系ポリマーを用いると、組成物としての成形性、物性等が良好となる。
本発明の樹脂組成物における(A)ポリフェニレンスルフィドと(B)エチレン系共重合体の質量比は、好ましくは55:45〜99:1、さらに好ましくは60:40〜80:20、より好ましくは65:35〜95:5である。(C)ポリスルホン系ポリマーの含有量は、(A)と(B)の合計量100質量部に対して、1〜150質量部である。さらに(C)の含有量は、(A)と(B)の合計量100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、40質量部以上がよりさらに好ましい。またさらに(C)の含有量は、(A)と(B)の合計量100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量部がさらに好ましい。従って、好ましい(C)の添加量として、(A)と(B)の合計量100質量部に対し、20〜100質量部、20〜75質量部、または40〜70質量部を例示できる。各成分の含有量をこれらの範囲とすることにより、優れた耐熱性、延性、シャルピー衝撃強度等の耐衝撃性、難燃性を有する樹脂組成物が得られる。
(4)他の成分
本発明の樹脂組成物は、さらに電気伝導性付与物質を配合することにより電気伝導性樹脂組成物とすることができる。電気伝導性付与物質の例には、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、金属ファイバー、カーボンナノチューブ、金属酸化物、帯電防止用可塑剤が含まれる。なかでもカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの例には、ファーネスブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが含まれる。特にアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが好ましい。
本発明の樹脂組成物または電気伝導性樹脂組成物には、さらに用途、目的に応じて他の配合剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ワラスナイトのような無機充填剤、カップリング剤、補強剤、難燃助剤、安定剤、顔料、離型剤、または前記(B)以外のエラストマー等の耐衝撃改良剤等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、樹脂成分((A)、(B)および(C)の合計)100質量部に対して、45質量部以下、好ましくは35質量部以下である。
特に本発明の樹脂組成物または電気伝導性樹脂組成物には、ガラス繊維を配合することが好ましい。ガラス繊維を配合することにより、該樹脂組成物の耐熱性、曲げ弾性率などがさらに向上する。ガラス繊維は、公知ものを使用できる。例えば、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどからなるガラス繊維が使用できる。ガラス繊維は表面処理が施されていてもよい。中でも、シランで表面処理したガラス繊維が好ましい。また、ガラス繊維の数平均ガラス繊維長は、好ましくは10〜1000μmである。このようなガラス繊維としては、チョップドストランド、ミルドガラス、長繊維などが挙げられるが、繊維径が3〜30μm、繊維長が1〜3mmのチョップドストランドのガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の含有量は、樹脂成分((A)、(B)および(C)の合計)100質量部に対して、好ましくは5〜90質量部、さらに好ましくは10〜70質量部である。
(5)本発明の樹脂組成物の相構造および物性
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィドが連続相であり、(B)エチレン系共重合体が分散相であることが好ましい。(A)を連続相とすることで耐熱性に優れた樹脂組成物となる。(B)エチレン系共重合体は、前述したような機構により、連続相中に微分散しうる。また(B)エチレン系共重合体は(C)ポリスルホン系ポリマー中に微分散していてもよい。本発明において微分散するとは、分散相の数平均粒子径が5μm以下で分散していることをいう。数平均粒子径は透過型電子顕微鏡像あるいは走査型電子顕微鏡像から、複数の分散粒子の粒子径、好ましくは100個以上の分散粒子の粒子径を測定し、その平均値を算出して得られる。分散相である(B)成分の数平均粒子径は、数平均粒子径にして1μm未満が好ましく、0.7μm未満がより好ましい。また、数平均粒子径は0.1μm以上が好ましい。
(C)ポリスルホン系ポリマーは添加量によって、連続相または分散相となりうる。しかしながらポリスルホン系ポリマーは高価であるためその添加量は少ないことが好ましいことから、ポリスルホン系ポリマーは分散相であることが好ましい。また、ポリスルホン系ポリマーは非晶性であるので、結晶性のポリフェニレンスルフィドよりも一般に溶融粘度が高く、添加量が多い場合でも分散相となりやすい。以上から、本発明の樹脂組成物においては、ポリスルホン系ポリマーは分散相であることが好ましい。この場合、分散相の粒子径は、数平均粒子径にして15μm未満が好ましく、10μm未満がより好ましく、5μm以下がよりさらに好ましい。また、当該粒子径は1μm以上であることが好ましい。
このように本発明の好ましい樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド中に(B)エチレン系共重合体が微分散し、さらに(A)中に(C)ポリスルホン系ポリマーも比較的小さな粒子径で分散する。(B)の微分散は、(B)エチレン系共重合体と(A)ポリフェニレンスルフィドが反応し、これらの反応生成物が相溶化剤として作用するために達成されると推察される。また、(C)の分散は、(A)ポリフェニレンスルフィドと(C)ポリスルホン系ポリマーの化学構造が類似するために達成されると考えられる。さらに、この類似する化学構造のために、(A)と(C)の界面の密着性は良好と考えられる。またさらに、(B)としてエチレン二元共重合体セグメントの幹にポリスチレンセグメントがグラフトしたグラフト共重合体を用いる場合は、前述のとおり(C)と(B)の界面の密着性がより向上する。
このような相構造のため、本発明の樹脂組成物は優れた耐熱性、耐衝撃性、引張強度、延性、難燃性を有すると考えられる。一般に、樹脂組成物において、耐衝撃性を向上させると、引張強度等の機械的強度および引張伸び率等の延性が低下する場合があるが、本発明においては機械的強度および延性がほとんど低下しない。この理由は、上記したような相構造、および各成分の界面の密着性の高さに起因すると考えられる。さらに、(C)ポリスルホン系ポリマーは(A)ポリフェニレンスルフィドより耐熱性に優れるため、本発明の樹脂組成物は耐熱性にもより優れると考えられる。
2.本発明の樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリフェニレンスルフィド、(B)エチレン系共重合体、および(C)ポリスルホン系ポリマーを溶融混練して得ることができる。溶融混練には、一軸押出機または二軸押出機などの混練機を用いることができるが、中でも強混練が可能な二軸押出機を用いることが好ましい。溶融混練温度は、260〜330℃が好ましく、280〜320℃がさらに好ましい。このように樹脂組成物を製造すると、(A)ポリフェニレンスルフィド連続相に、(B)のエチレン系共重合体が1μm以下の平均粒子径で微分散しやすくなるため、より耐衝撃性等が優れた樹脂組成物が得られる。
本発明の樹脂組成物において、前記(A)、(B)および(C)を溶融混練する工程は、以下のように定義される混練機のせん断速度の最大値が800sec−1以上となるように混練機を用いて混練されることが好ましい。
混練機のせん断速度Sは、以下の式(i)で定義される。
S=π・Dm・N/h (i)
Sはせん断速度、Nはスクリュー毎秒回転数、hはクリアランスである。混練機が一軸または二軸の押出機である場合は、Dmはスクリュー溝の平均径である。スクリュー溝の平均径とは、スクリューの各溝部分(凹部)におけるスクリュー径の平均値である。また、混練機がラボプラストミルのようなディスクを使用したバッチ式の混練機の場合には、Dmは、シリンダー内径とディスク長軸直径の差で定義される。
クリアランスとは、スクリューまたはディスクと混練機壁面との間の距離であり、チップクリアランスともいう。スクリューは、一部にニーディング部分を含む場合等があり、そのクリアランスはスクリューの長手方向で異なる場合がある。このような場合、本発明においては、クリアランスはスクリュー全体の平均値とするか、またはニーディング部分以外のクリアランスの平均値として計算することもできる。
せん断速度の最大値とは、溶融混練工程において発生する最大のせん断速度を意味する。通常の溶融混練工程においては、Dmとhは変更されないため、Nの回転数によって、せん断速度Sは調整される。溶融混練工程とは、ポリフェニレンスルフィドが溶融する温度である、混練機の設置温度を280〜320℃とした場合を意味する。
混練機のせん断速度が大きくなるほど、混練の度合いを強めることができる。よって、本発明においては、混練機のせん断速度の最大値は800sec−1以上が好ましく、900sec−1以上がより好ましい。生産性に優れるため、二軸の押出機が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、例えば、(A)ポリフェニレンスルフィド、(B)エチレン系共重合体および(C)ポリスルホン系ポリマーを一括して溶融混練して得てよい。または、(A)および(B)をあらかじめ溶融混練した後に(C)を加えて溶融混練する方法、あるいは(A)と(B)を押出機の上流側から押出機に供給し、(C)を押出機の下流側から押出機に供給して溶融混練する方法(以下これらをまとめて「二段混練法」ともいう)を用いてもよい。二段混練法によると耐衝撃性に極めて優れた樹脂組成物が得られる。この理由は(B)エチレン系共重合体と(A)ポリフェニレンスルフィドとの反応が混練機中でまず進行して、(B)の微細化がより一層進行するためと考えられる。従って、これら製造方法のなかでも、前記二段混練法が特に好ましい。
上記成分以外の充填材等を配合する場合には、(A)、(B)および(C)とともに一括して溶融混練すればよい。また(A)および(B)をあらかじめ溶融混練した後に、(C)および充填材などを加えて溶融混練してもよく、あるいは(A)、(B)および(C)をあらかじめ溶融混練した後に、充填材などを加えて溶融混練してもよい。
3.本発明の樹脂組成物の加工方法および用途等
本発明の樹脂組成物は、通常の加工方法により容易に成形品に加工できる。加工方法の例には、射出成形や押出成形、フィルム・シート成形、繊維成形、真空成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等が含まれる。本発明の樹脂組成物は上記の成形加工法の適用により、電気・電子部品、通信部品、包装用などのフィルム・シート、繊維、自動車部品などへ幅広く適用できる。特に、樹脂組成物が電気伝導性付与物質を含む場合、その配合量を調整することによって、帯電防止材料、静電防止材料、導電性材料、高導電性材料などへ適用することができる。本発明の樹脂組成物は、ポータブル機器など強度が求められる分野への適用が期待されるため、シャルピー衝撃強度が60kJ/m以上であることが好ましく、80kJ/m以上であることがさらに好ましい。また、本発明の樹脂組成物は、UL94難燃性試験における評価がV−0またはV−1であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物から得られる基板、およびこの基板の上に金属層を含む積層体として用いられる。基板とは、積層体のベースとなる板状またはフィルム状部材であり、公知の方法で得てよい。例えば、基板は、フィルム、シート、押出成形品、あるいは射出成形により得ることができる。
金属層は、基板の表面にメッキ処理や金属箔の張り合わせ処理を施して形成できる。かかるメッキ処理には、電解メッキ、気相メッキ、化学メッキ、溶融メッキなど、既存の方法を適用できるが、電解メッキ、化学メッキが好ましい。電解メッキは、電解液中に基板を浸漬したのち電気を通し、液中の金属イオンを基板の表面に析出させる方法である。電解液中のメッキ金属としては、銅、ニッケル、金、銀、錫、アルミ、亜鉛、クロムなどを挙げることができるが銅が好ましい。
金属箔の張り合わせ処理は樹脂組成物のフィルム・シートに対して熱圧着、あるいは接着層を両者間に介在させる方法などの周知の方法を適用して行うことができる。金属箔は、特に限定されないが、その例には、金箔、銀箔、ステンレス箔、電解銅箔、圧延銅箔、銅合金箔、チタン箔、アルミ箔、ニッケル箔、銅−ニッケル箔、ニッケル−銅箔が含まれる。中でも電解銅箔、圧延銅箔、銅−ニッケル箔が好ましい。金属層の厚みは1〜500μmであることが好ましく、2〜300μmの厚みがさらに好ましい。本発明の積層体は、回路を形成することにより、フレキシブルプリント基板、多層プリント基板などとして利用できる。
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物からなる基板、およびこの基板の上に無機物層を含む積層体として用いてもよい。無機物層を形成する無機物の例には、炭素、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化マグネシウム、窒化チタン、酸化インジウム、シリコンなどが含まれる。無機物層を形成する方法の例には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが含まれる。真空蒸着法においては、イオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
これらの積層体を製造するにあたり、基板に表面処理を施してもよい。表面処理法には、周知の方法を適用することができる。その例には、研磨処理、酸処理、アルカリ処理、UV照射処理、アルゴンまたは酸素雰囲気下での高周波放電によるプラズマ処理、イオンビーム処理が含まれる。本発明の積層体は、基板と、金属層もしくは無機層からなる二層構造でもよく、金属層と基板と金属層、または無機層と基板と無機層等からなる三層以上の積層体であってもよい。このような積層体はプリント配線基板、電気・電子部品、自動車構造材などへ適用可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
(1)物性試験
引張試験:(株)東洋精機製作所製、ストログラフ VES 50型を使用し、ロードセル1kN、チャック間距離40mm、延伸速度10mm/分で引張試験を行った。
シャルピー衝撃試験:(株)東洋精機製作所製、DG digital impact testerを使用し、ハンマーの質量による負荷4J、ハンマーの回転軸中心から重心までの距離0.23mm、ハンマー持ち上げ角度150°、周期0.962sec、温度20℃で、JIS7160に準拠して測定を行った。
難燃性試験:TAインスツルメント(株)製 熱量計測装置 TG−Q50型を使用し、試料を窒素雰囲気下で5℃/分で室温から600℃まで昇温し、試料の質量が5質量%減少するときの温度を求めた。この温度が高いほど難燃性に優れる。
溶融粘度:東洋精機株式会社製 キャピログラフ E3B型を使用し、300℃、100mm/分、L/D=10/1の条件で溶融粘度を測定した。
(2)樹脂組成物の成分
(A)ポリフェニレンスルフィド(表中PPSと表記):クレハ(株)製 フォルトランKPS W−220Aを使用した。このポリマーは、一般式(1)で表される繰り返し単位を70モル%以上含んでいる。
(B)エチレン系三元共重合体
1)住友化学株式会社製 ボンドファースト7L(表中BF−7Lと表記)を使用した。この共重合体の組成は、エチレン/グリシジルメタクリレート/アクリル酸メチル=70/3/27(質量比)であり、エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位を含むエチレン系共重合体である。物性値等は以下のとおりである。

MFR(JIS K7210、190℃、21N(=2.16kg)荷重) 7g/10分
融点 68℃
密度 0.964g/cm
表面硬度(ASTM D2240、Shore D) 18
2)日油株式会社製 モディパー A4100を使用した。このエチレン系共重合体は、エチレン単位/エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位からなるセグメントに、スチレンセグメントがグラフトしているグラフト共重合体(セグメント比は70/30(質量比))である。
(C)ポリフェニレンスルホン(表中PPSUと表記):ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製 レーデル R−5800を使用した。このポリマーは、前記一般式(2−1)で表される繰り返し単位を50モル%以上含んでいる。熱変形温度(ASTM D648、1.82MPa荷重)は207℃である。
その他の成分として、三井化学(株)製ポリエチレン ハイゼックス 2100J (表中PEと表記)を使用した。物性値等は以下のとおりである。
MFR(JIS K7210、190℃、21N荷重) 8.5g/10分
融点 124℃
密度 0.916g/cm
表面硬度(ASTM D2240、Shore D) 63
[実施例1〜3]
表1に示す配合でPPSとBF−7Lをドライブレンドしてよく混ぜ合わせた後、混練機として(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル4M150型を使用して混練を行った。混練条件は、混練温度300℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間7分とした。続いて混練機を停止して混練機内にPPSUを装入し、さらに混練温度300℃、スクリュー回転数100rpmで混練を7分間続けた。
混練機の混練部は、内容積が約70mL、シリンダー内径が47.7mm、ディスク長軸外径が46.9mm、ディスク単軸外径が29.3mm、ディスクと混練機壁面のクリアランスが0.4mm、軸間距離が38.5mm、噛み合い比(ディスク長径/ディスク短径)が1.6であった。前述の式(i)におけるDmは0.8mmであり、hは0.4mmである。よって、せん断速度Sは、1.2×10(sec−1)と算出された。得られた混練物を温度310℃で予熱3分、圧力20MPaで5分間プレスし、その後20℃に急冷して、厚さ約0.5mmのシートを得た。引張試験には、プレスシートを、平行直線部の長さ16mmのミニダンベル形状に打ち抜いたものを使用した。シャルピー衝撃試験には、プレスシートをダンベル形状に、全長80mm、厚さ0.5mm、平行部の幅10mm、平行部の長さ10mm、つかみ部の幅15mmに打ち抜いたものを使用した。サンプルにノッチは形成しなかった。
本例で得られた樹脂組成物は、PPSが連続相を、BF−7LおよびPPSUが分散相を形成していた。
[実施例4]
PPS、BF−7LおよびPPSUを一括して前記の混練機に装入し、混練温度300℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間10分で溶融混練を行った。得られた組成物を用い、実施例と同様にプレス成形してサンプルを得て評価した。本例で得られた樹脂組成物は、PPSが連続相を、BF−7LおよびPPSUが分散相を形成していた。
[実施例5、6]
BF−7Lの代わりに、A4100を使用し、各成分の配合比を表1のとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を製造し、評価した。
[比較例1、2]
表1に示す配合でPPSとBF−7Lをドライブレンドしてよく混ぜ合わせた後、混練することなく実施例と同様にプレス成形して樹脂組成物を製造し、評価した。
[比較例3]
BF−7Lの代わりに、PEを用いた以外は実施例4と同様にして樹脂組成物を製造(一括混練)し、評価した。
[比較例4]
PPSペレットを用いて、溶融混練を行うことなく実施例と同様にプレス成形して樹脂組成物を製造し、評価した。
Figure 2011105936
本発明の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物に比べて極めて優れた耐衝撃性を有することが明らかである。また本発明の樹脂組成物は、PPS本来の引張強度、伸び率および難燃性をほとんど損なわないことも明らかである。
実施例1と比較例3を比較すると、エポキシ基を含有するポリエチレン系共重合体を含む本発明は、極めて優れた耐衝撃性、引張強度および伸び率を有することが明らかである。また、実施例1と4を比較すると、予めPPSとBF−7Lを混練した後でさらにPPSUを添加して混練して得た樹脂組成物は、極めて耐衝撃性に優れることも明らかである。
さらに、実施例4と実施例6とを比較すると、エチレン系共重合体としてグラフト共重合体(A1100)を用いると、衝撃強度に優れた樹脂組成物が得られることが明らかである。

Claims (19)

  1. (A)下記一般式(1):
    Figure 2011105936

    で示される繰り返し単位を70モル%以上含むポリフェニレンスルフィドを55〜99質量%、
    (B)エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位を含むエチレン系共重合体を1〜45質量%、ならびに
    (C)下記化学式(2):
    Figure 2011105936

    で示される繰り返し単位を50モル%以上含むポリスルホン、
    下記化学式(2−1):
    Figure 2011105936

    で示される繰り返し単位を50モル%以上含むポリフェニレンスルホン、および
    これらの混合物からなる群より選択されるポリスルホン系ポリマーを、前記(A)と(B)の合計100質量部に対し1〜150質量部含む樹脂組成物。
  2. 前記(C)を前記(A)と(B)の合計100質量部に対し20〜100質量部含む、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  3. 前記(B)エチレン系共重合体が、エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位からなるセグメントと、ビニル系重合体セグメントとからなるグラフト共重合体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ビニル系重合体セグメントがポリスチレンセグメントである、請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 前記(B)エチレン系共重合体が、
    エチレン単位、およびエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位のいずれかからなるエチレン系二元共重合体、あるいは
    エチレン単位、エチレン性不飽和結合を有するカルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン性不飽和結合を有するグリシジルエーテル単位のいずれか、および酢酸ビニル単位またはアクリル酸メチル単位のいずれかからなるエチレン系三元共重合体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(B)エチレン系共重合体が数平均粒子径が1μm未満の分散相を形成する、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
  7. 前記(A)ポリフェニレンスルフィドが連続相であり、前記(C)ポリスルホン系ポリマーが分散相である、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 前記(B)エチレン系共重合体の、JIS K7210に準じ、190℃、21Nの荷重にて測定したメルトインデックスが2〜50g/10分であり、示差走査熱量測定における融点が45〜120℃である、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
  9. 前記(A)ポリフェニレンスルフィドの、示差走査熱量測定による融点が265℃〜295℃であり、比重が1.2〜1.4の範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
  10. 前記(A)ポリフェニレンスルフィドが、前記(B)エチレン系共重合体中のグリシジルエステル単位またはグリシジルエーテル単位と反応しうる官能基を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
  11. 前記(A)ポリフェニレンスルフィド、前記(B)エチレン系共重合体、および前記(C)ポリスルホン系ポリマーを溶融混練する工程を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
  12. 前記溶融混練工程は、(A)ポリフェニレンスルフィドおよび前記(B)エチレン系共重合体を溶融混練して得た混合物に、前記(C)ポリスルホン系ポリマーを添加してさらに溶融混練する工程である、請求項11に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる射出成形体、押出成形体、シート成形体、またはフィルム成形体。
  14. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物から得られるチューブ状の成形体または繊維。
  15. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる基板、および前記基板の上に設けられた金属層または無機物からなる層を含む積層体。
  16. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる基板、および前記基板の上に設けられた金属めっき層を含む積層体。
  17. 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる電気・電子部品、通信機器部品、または自動車部品。
  18. 請求項11または12に記載の方法で製造された樹脂組成物を、射出成形、押出成形、シート成形、またはフィルム成形する工程を含む成形体の製造方法。
  19. 請求項18に記載の方法で製造された成形体の表面に、金属層または無機物層を積層する工程を含む、積層体の製造方法。
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