JP2011099022A - オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】 (A)結晶性ポリプロピレン系樹脂5〜49重量部、(B)架橋されており、かつ、酢酸ビニル含有量が20〜70重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体89〜30重量部、(C)プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィン及び酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加されている不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンで、付加された不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン5〜50重量部を含有することを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
従来のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレンゴム等のゴムを用いて、これらをブレンドすることにより得られるエラストマーである。オレフィン系熱可塑性エラストマーは比重が軽く、耐熱性に優れ、耐候性、耐オゾン性も良好であり、またリサイクルが可能であることから、自動車関連分野を中心に幅広い用途で使用されている。
一方、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性が課題として挙げられ、圧縮永久歪みや永久伸びも大きい等の問題を有しており、これらの課題を改善できるオレフィン系熱可塑性エラストマーが望まれている。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐摩耗性、耐屈曲性、耐油性、及び圧縮永久歪み、永久伸びを改善するために、ポリオレフィンとエチレン−プロピレンゴム等のゴム成分混合物を加工中に架橋する動的加硫型オレフィン系熱可塑性エラストマーが開発されてきた(特許文献1及び2)。
しかしながら、ポリオレフィンとエチレン−プロピレンゴム等から成る動的加硫型オレフィン系熱可塑性エラストマーであっても、耐油性は不十分なものであり、高度な耐油性を要求される用途への適用は困難であった。
これらの背景から、高度な耐油性を要求される用途への適用が可能な動的加硫型オレフィン系熱可塑性エラストマーが望まれてきた。
特開昭53−149240号公報 特開昭53−149241号公報
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明は、(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂5〜49重量部、(B)架橋されており、かつ、酢酸ビニル含有量が20〜70重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体89〜30重量部、(C)プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィン及び酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加されている不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンで、付加された不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン5〜50重量部を含有することを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂5〜49重量部、(B)架橋されており、かつ、酢酸ビニル含有量が20〜70重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体89〜30重量部、(C)プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィン及び酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加されている不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンで、付加された不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン5〜50重量部を含有するものである。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が含有する(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、これらのうち、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの引張強度や熱変形温度を高く保持するため、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマーが好ましい。
結晶性ポリプロピレン系樹脂の分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、最終的な熱可塑性エラストマー組成物の材料強度及び成形加工性を維持するため、230℃、2160gの荷重下で測定した値が好ましくは0.01〜50000(g/10分、230℃)であり、さらに好ましくは0.01〜200(g/10分、230℃)である。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物における(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有量は、5〜49重量部である。結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有量が5重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、成形時の寸法安定性等に問題が生ずる。一方、結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有量が49重量部を超える場合には、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は硬く、セット性が劣る問題が生ずる。
結晶性ポリプロピレン系樹脂の製造方法についても特に限定されるものではなく、一般には、いわゆるチタン含有固体状遷移金属と有機金属とを組み合わせたチーグラー・ナッタ触媒、特に、遷移金属成分がチタンであり、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、有機金属成分が有機アルミニウム化合物である触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合、溶液重合など、またはこれらを組み合わせた重合法で製造される。ポリプロピレンホモポリマーの場合は、上記の重合法の1段または多段で、プロピレンを単独重合することによって得られ、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマーの場合は、プロピレンと炭素数2または4〜12のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを1種類以上、好ましくは炭素数2のエチレンとを1段または多段で共重合させることによって得られる。この中で、結晶性ポリプロピレン系樹脂がポリプロピレンブロックコポリマーの場合は、α−オレフィンの割合は一般に40重量%以下、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは2〜20重量%である。また、結晶性ポリプロピレン系樹脂がポリプロピレンランダムコポリマーの場合は、α−オレフィンの割合は10重量%以下が好ましく、0.5〜7重量%がさらに好ましい。これらの結晶性ポリプロピレン系樹脂は、2種類以上を併用してもよく、さらに、必要に応じて結晶性ポリプロピレン系樹脂にあらかじめ着色剤、充填剤、各種添加剤等をブレンドしておいても構わない。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が含有する(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体は、架橋されており、かつ、酢酸ビニル含有量が20〜70重量%である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、架橋されていることにより、引張強度、引張残存歪み、及び圧縮永久歪みが良好であり、架橋されていないと、これらの物性が劣り、エラストマー材料としての特性を有さなくなる。この架橋は、全部架橋されていてもよく、一部架橋されていてもよい。ここに、架橋とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体に三次元的に橋掛け構造が形成されている状態のことをいう。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が20重量%未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は硬く、セット性が劣る問題が生ずる。一方、酢酸ビニル含有量が70重量%を超える場合には、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の低温特性が劣る。好ましくは40〜65重量%、さらに好ましくは55〜65重量%である。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性及びセット性を維持するため、示差走査熱量測定(DSC)で求めたエチレンに起因する結晶量が35mJ/mg以下であることが好ましく、5mJ/mg以下であることがさらに好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、最終的な熱可塑性エラストマー組成物の材料強度及び成形加工性を維持するため、230℃、2160gの荷重下で測定した値が好ましくは0.01〜50000(g/10分、230℃)であり、さらに好ましくは0.01〜200(g/10分、230℃)である。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物における(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、89〜30重量部である。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が89重量部を超える場合は、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、成形時の寸法安定性等に問題が生ずる。一方、エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が30重量部未満では、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は硬く、セット性が劣る問題が生ずる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体を合成するための重合方法は通常知られている方法で特に限定されるものではなく、一般には、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等が挙げられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたエチレン−酢酸ビニル共重合体ポリオレフィンを使用することができる。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が含有する(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィン及び酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加されている不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンで、付加された不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%である。
ここに、ポリオレフィン組成物とは、プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンと、酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むものであって、例えば、2種以上の原料であるポリオレフィンをグラフト反応したものや、2種以上の原料であるポリオレフィンをそれぞれグラフト反応した上で、得られたものを混合したもの等が挙げられる。
プロピレンユニットの比率は特に限定するものではないが、結晶性ポリプロピレン系樹脂との相溶性を維持しつつ、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のセット性をも維持するため、ポリオレフィン組成物重量当たり20〜80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは30〜70重量%である。一方、酢酸ビニルユニットの比率は特に限定するものではないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性を維持しつつ、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の低温特性をも維持するため、ポリオレフィン組成物重量当たり5〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜50重量%である。
プロピレンユニットを有するポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、これらのうち、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの引張強度や熱変形温度を高く保持するため、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー及びポリプロピレンランダムコポリマーから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、酢酸ビニルホモポリマー等が挙げられ、好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。酢酸ビニル含有量は特に制限されないが、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーのセット性と低温特性を維持するため、20〜70重量%であることが好ましい。
また、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)等が挙げられる。さらに、これらのポリオレフィンの塩素化物も同様に用いることができる。
これらのプロピレンユニットを有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンを合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等が挙げられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを使用することができる。
プロピレンユニットを有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンの分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、溶剤の溶解性を加温時でも良好とし、また、最終的なグラフト反応物の材料強度を維持するため、230℃、2160gの荷重下で測定した値が好ましくは0.01〜50000(g/10分)であり、さらに好ましくは0.01〜200(g/10分)である。
ポリオレフィンの塩素化方法は公知であり、例えば、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤に溶解させた溶液を、紫外線照射下で塩素含有ガスと接触させてポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開昭47−8643号公報)、ポリオレフィンの粉末を水に懸濁させたスラリー中に塩素ガスを吹き込んでオレフィンを塩素化する方法(例えば、特公昭36−4745号公報)、溶剤を使用せず、ポリオレフィンを、その融点以上に加熱し、溶融させた状態で塩素ガスと接触させることで、ラジカル発生剤、紫外線照射等を用いずにポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開平3−199206号公報)が開示されている。本発明で用いる塩素化したポリオレフィンはこれらの何れの方法でも製造することができ、塩素化ポリオレフィンの製造方法には何等制限はない。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、付加した不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%であり、好ましくは0.3〜8重量%である。不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%の範囲を外れる場合には、結晶性ポリプロピレン系樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性に乏しく、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は十分な耐油性を発現することが困難であり実用性に欠ける。
ここに、不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類の誘導体、不飽和ジカルボン酸類の誘導体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類の誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類の誘導体としては、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上併用しても良い。特に接着性の観点から無水マレイン酸単独又は無水マレイン酸とメチル(メタ)アクリレートの組み合わせが好ましい。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよいが、引張強度、引張残存歪み、及び圧縮永久歪みを良好に維持するため、架橋されていることが好ましい。この架橋は、全部架橋されていてもよく、一部架橋されていてもよい。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物における(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの含有量は、5〜50重量部である。不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの含有量が5重量部未満の場合には、引張特性が劣り、耐油性が低下する問題が生ずる。一方、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの含有量が50重量%を超える場合には、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーのコスト増となり、経済的な問題を有することになる。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンと酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを、沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応することにより製造することができる。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応してグラフトポリオレフィンを得て、一方、酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを沸点が80〜150℃の有機溶剤に溶解し、反応圧力が1MPa以下でポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト反応してグラフトポリオレフィンを得た上で、これらのグラフトポリオレフィンを混合することによっても製造することができる。
不飽和カルボン酸のグラフト化反応は、ラジカル発生剤を触媒として、沸点が80〜130℃の有機溶剤中に原料であるポリオレフィンと不飽和カルボン酸とを反応させることにより行われ、好ましくは1,1,2−トリクロロエタン、より好ましくは1,1,2−トリクロロエタンに不純物として含まれるアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタン中で原料であるポリオレフィンと不飽和カルボン酸とを反応させることにより行われる。
反応温度は特に限定するものではないが、十分な量の不飽和カルボン酸をグラフトさせるためとポリオレフィンを均一に溶解するため、70〜150℃が好ましく、80〜130℃がさらに好ましい。
反応圧力は、高圧反応においては特殊な反応装置が必要となる上、反応操作も煩雑となって製造コストの上昇につながるため、1MPa以下である。好ましくは0〜0.7MPaである。本反応においては反応温度、及び、反応させるポリオレフィンの種類によっては均一な溶液状態からけん濁状態でグラフト反応が進行するが、できる限り均一な溶液状態でグラフト反応を進めるため、ポリオレフィンの種類によって反応温度及び反応圧力を適宜選択することが好ましい。
ラジカル発生剤としては、アゾ系化合物又は有機過酸化物等が用いられる。アゾ系化合物としては、α,α―アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
アゾ系化合物又は有機過酸化物の添加量は特に制限されないが、不飽和カルボン酸のグラフト量を維持し、また、樹脂の溶融粘度の増加を防止することで成形性の低下を防止して製品品質を維持するため、ポリオレフィン100重量部に対して好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの製造で用いられる不飽和カルボン酸、プロピレンユニットを有するポリオレフィン、酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィン、必要に応じて使用することができる他のポリオレフィンは、先に述べた通りである。
グラフト反応の終了後、必要に応じて安定剤を添加する。安定剤にはグラフト反応時に発生するラジカルを消滅させ、グラフト反応を停止させるために添加し、通常ポリオレフィンに添加する酸化防止剤を用いるのが好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤が好適に用いられる。
グラフト反応に使用する反応容器は通常回分式(バッチ式)反応に使用する容器を用いることができ、上記反応温度、反応圧力に耐えられるものであれば差し支えなく、材質は通常ステンレス製が用いられ、必要に応じて内面がガラスライニング、フッ素コーティング処理を施したものも使用できる。
グラフト反応で生成した不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤と分離する方法には、水蒸気蒸留、ベント付き押出機等、通常用いられる方法により両者が分離される。
反応溶剤として用いる溶剤は、沸点が80〜150℃の有機溶剤であることが好ましく、例えば、シクロヘキサン、n−ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、また、ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン系炭化水素が挙げられる。特に好ましくは、1,1,2−トリクロロエタンである。1,1,2−トリクロロエタンは、1,1,2−トリクロロエタンよりアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去して反応を行うことが重要である。市販されている1,1,2−トリクロロエタンは、しばしば0.5〜2.0重量%のアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有している。ここでいうアルコール化合物とは水酸基を有する化合物であり、例えば、エチルアルコールやブチルアルコール等が挙げられる。また、ここでいうエポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物であり、例えば、1,2−エポキシプロパンや1,2−エポキシブタン等が挙げられる。
アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有する1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いて合成された不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは淡黄色に着色しており、その用途が限られるため、アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタンを用いて反応を行うことが好ましい。
アルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を除去した1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として合成された不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは着色がわずかであり、熱安定性が良好で、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の色調を損なうことなく、良好な相溶性を有する不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンとなる。
別々に製造したグラフトポリオレフィンを混合する方法としては、例えば、別々にグラフト反応して得られたグラフトポリオレフィンの各反応溶液を混合した後に、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと溶剤を分離する方法、別々にグラフト反応して得られたグラフトポリオレフィンの各反応溶液を溶剤と分離した後に、混練機等で混合する方法等が挙げられる。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、先に述べたような原料ポリオレフィンの種類に従い、例えば、メチルメタクリレートグラフトポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物、マレイン酸グラフトポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物、マレイン酸モノアルキルエステルグラフトポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン/エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物等が挙げられる。
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンには、必要に応じて、各添加剤等を配合することができる。
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、充填剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、天然油、合成油、ワックス、可塑剤、造核剤、重金属不活性化剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤等が挙げられる。安定剤としては、例えば、有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。充填剤としては、例えば、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等が挙げられる。滑剤としては、例えば、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物において、(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂と(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中のプロピレンユニットを有するポリオレフィンの重量と、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体と(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中の酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンの重量の比率は、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、成形加工時の寸法安定性、及びセット性を維持するため、好ましくは5/95〜50/50であり、さらに好ましくは10/90〜40/60であり、特に好ましくは15/85〜30/70である。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物には、上述の(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン以外に、鉱物系軟化剤、可塑剤、ラジカル禁止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、白色充填剤、発泡剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等、更に各種樹脂やゴム、ガラス繊維等を必要に応じて含有していてもよい。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、上述の(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを混練し、架橋することにより得ることができる。
(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを架橋するには、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを有機過酸化物等の存在下に動的熱処理することによって得ることができる。
動的熱処理で使用される有機化酸化物とは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中の酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンを流動しながら動的熱処理して架橋させるために配合するものであって、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド類等がある。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等が挙げられ、ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられ、ケトンパーオキサイドとしては、例えば、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられ、パーオキシエステルとしては、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。これらは単独又は混合して使用される。使用される有機過酸化物の量は、上述の(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの合計100重量部当たり0.1〜15重量部が使用される。0.1重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の引張強度、セット性が劣り好ましくない。15重量部を超えて使用すると、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の成形加工時の流動性が劣り好ましくない。
また、有機化酸化物と共に、必要に応じて、架橋助剤を併用できる。この架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系、又はメタクリル系多官能化合物や、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、液状ポリブタジエン等が挙げられる。架橋助剤の使用量は、(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの合計100重量部当たり0.1〜10重量部が使用される。
動的熱処理とは、樹脂用又はゴム用の混練機、例えば、ロール混練機、バンバリーミキサー、双腕型ニーダー、スクリュウ式混練機、ローター型連続連続混練機、各種押出機等を使用し、(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと有機化酸化物等を混練機中で有機化酸化物の分解温度以上の温度で各成分を溶融状態で混練することである。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法としては、上述の(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを混練し、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋するものであれば、特に制限されるものではないが、以下の方法が例示できる。1)まず、原料ポリオレフィンである(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと、各種架橋剤や架橋助剤を密閉式混練機にて溶融混練(動的熱処理)し、その後ラジカル禁止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等を混練機にて添加する方法、2)原料ポリオレフィンである(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンをバンバリーミキサーや双腕型ニーダー等の密閉式混練機にて溶融混練を行い、次に、得られたポリマー組成物に架橋反応が発生しない温度領域、例えば70℃以下に設定したオープンロール混練機を用いて各種架橋剤や架橋助剤を添加し、この未架橋ポリマー組成物を密閉式混練機にて溶融混練(動的熱処理)し、その後ラジカル禁止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等を混練機にて添加する方法、3)原料ポリオレフィンである(A)結晶性ポリプロピレン、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を各種架橋剤や架橋助剤と溶融混練(動的熱処理)することで得られるポリオレフィン組成物に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを添加する方法等が挙げられる。
上記の溶融混練の際の条件としては、通常、160〜300℃、好ましくは180℃〜250℃の混練温度で、0.5〜30分、好ましくは1〜10分の混練時間で行うが、この条件に制限されるものではない。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造工程において、鉱物系軟化剤、可塑剤、ラジカル禁止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、白色充填剤、発泡剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤等、更に各種樹脂やゴム、ガラス繊維等を必要に応じて使用することができる。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、周知の射出成型、押出成型、圧縮成型、ブロー成型等の成型法によって成形され、各種エラストマー材として使用される。
本発明であるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は優れた耐油性を有していることから、これまで市販されているオレフィン系熱可塑性エラストマーでは適用困難であった高度の耐油性が要求されるエラストマー製品への適用が可能となり、産業上、極めて広い範囲に応用できる。さらに、当該オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、耐油性が要求される自動車用、家電用、又は各種産業機械等向けのエラストマー部品に好適なエラストマー材料として提供できるものである。
次に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
なお、これらの実施例で用いた値は以下の測定法に準拠して得られたものである。
<原料>
本発明の実施例には以下の原料を使用した。
(1)PP1
ランダムポリプロピレン:株式会社プライムポリマー製 F−724NP(MFR=6.9g/10分、密度=900kg/m
(2)PP2
ホモポリプロピレン:株式会社プライムポリマー製 J―900GP(MFR=13g/10分、密度=900kg/m
(3)EVA1
エチレン・酢酸ビニル共重合体:東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)751(酢酸ビニル含有量=28重量%、MFR=5.7g/10分、密度=952kg/m、DSC測定による残存エチレン結晶量=43.8mJ/mg)
(4)EVA2
エチレン・酢酸ビニル共重合体:東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)760(酢酸ビニル含有量=42重量%、MFR=70g/10分、密度=968kg/m、DSC測定による残存エチレン結晶量=28.4mJ/mg)
(5)EVA3
エチレン・酢酸ビニル共重合体:ランクセス社製 レバプレン(登録商標)600HV(酢酸ビニル含有量=60重量%、密度=1070kg/m、DSC測定による残存エチレン結晶量=2.3mJ/mg)
(6)EVA4
エチレン・酢酸ビニル共重合体:東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)626(酢酸ビニル含有量=15重量%、MFR=3g/10分、密度=936kg/m、DSC測定による残存エチレン結晶量=71.0mJ/mg)
(7)L−LDPE
エチレン・ヘキセン−1共重合体:東ソー株式会社製 ニポロン−Z(登録商標)ZF230(MFR=2.0g/10分、密度=920kg/m
(8)EP
エチレン・プロピレン共重合体:JSR株式会社製 EP11[プロピレン含有量:50重量%、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):40]
(9)ベンゾイルパーオキサイド(BPO)
日本油脂株式会社製 ナイパーB
(10)2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)
株式会社エーピーアイコーポレーション ヨシノックスBHT
(11)無水マレイン酸、1,1,2−トリクロロエタン、トルエン、メタノール、ジメチルホルムアミド、BHT、26%硫酸水溶液、チモールブルー指示薬、N/20のKOH溶液は関東化学株式会社製の1級試薬を用いた。
(12)パークミル D−40
ジクミルパーオキサイド、日油株式会社製
(13)TAIC
トリアリルイソシアヌレート、日本化成株式会社製
(14)ノクラック NS−6
2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール):大内新興化学工業株式会社製
(15)ノクラック TNP
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト:大内新興化学工業株式会社製
(16)市販のオレフィン系熱可塑性エラストマー
ミラストマー(登録商標)7030N(MFR=40g/10分(230℃、40kg荷重)、密度=880kg/m)、三井化学株式会社製
<無水マレイン酸付加量>
ポリマーサンプル1gを秤量し、トルエン100mlに加熱溶解させた後、メタノール10ml、ジメチルホルムアミド10ml、水0.5mlを加える。引き続き、チモールブルー指示薬1mlを加え、N/20のKOH溶液(n−プロパノール/ベンゼン溶液)で滴定し、青紫色が1分以上持続する点を終点として算出した。
<硬さ(Hs)>
JIS K6253に準拠して、デュロメーター硬さ試験タイプAにて測定した。
<引張強さ(TB)、伸び(EB)>
JIS K6251に準拠して、ダンベル状3号試験片にて500mm/minの引張速度にて測定した。
<耐油性>
JIS K6251に準拠し、プレス成形シート片をIRM903号油中70℃で3日浸漬後の体積変化率を測定することにより評価した。
<引張残存ひずみ>
試験片にJIS K6254に記載の短冊状2号を用い、テンシロン引張試験機にて引張速度500mm/minで標線間の伸長率が100%となるまで伸張する。100%伸長に達した後に試験片を収縮させ、試験片の応力が0MPaとなった際の残存ひずみを測定することにより評価した。
実施例及び比較例に用いた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、以下に示した合成例に従って合成を行った。
合成例1〜3
関東化学株式会社製の1,1,2−トリクロロエタン5000重量部と26%硫酸水溶液2500重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出した。次に抜き出した有機層と蒸留水5000重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出す操作を3回繰り返すことによって不純物の1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除いた。さらに抜き出した有機層にモレキュラーシーブス4Aを150重量部添加しスターラーで撹拌することによって脱水した。
30リッターのオートクレーブに上記の操作により1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン28800重量部、表1に示した組成のポリオレフィンを計2304重量部、並びに無水マレイン酸225重量部を仕込んだ。反応器を110℃に昇温し、その後110℃で3時間保持することによってポリオレフィンを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。次に反応器を110℃から100℃に降温し、グラフト反応の触媒(ラジカル発生剤)として3.7重量部のBPOを1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除去した1,1,2−トリクロロエタン1150重量部に溶解した触媒溶液を連続的に反応器へと3時間をかけて添加しつつグラフト反応を行った。続いて同温度で2時間反応を継続した。反応器の圧力は反応を通して1MPa以下に保った。反応の終了後、常圧に戻し、安定剤として2.3重量部のBHTを添加した後、この溶液をメタノールにより再沈させて、生成物としての不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤から分離した。
Figure 2011099022
得られた生成物の不飽和カルボン酸含有量は表1に示す。
得られた不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、単軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、200℃、50rpmで溶融押出し、ロッド状の溶融混練物を水冷した後にストランドカットし、60℃設定の乾燥機で水分を除去することによってペレット状の不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得た。
合成例4
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるPP1をEPに変更し、原料ポリオレフィンの量を表1に記載した内容で用いた以外は合成例1と同一の方法で不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得た。
合成例5
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン合成時の原料ポリオレフィンであるEVA1をEVA3に変更し、原料ポリオレフィンの量を表1に記載した内容で用いた以外は合成例1と同一の方法で不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得た。
実施例1〜3
表2に示す組成比の(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練した。得られた組成物に、表2に示す量のパークミル D−40を添加し、ロール温度を50℃に設定した東洋精機株式会社製8インチオープンロール混練機を用いて混練した。得られた未架橋組成物を、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、充填率83%、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練し、継続して、表2に示す重量部のノクラック NS−6及びノクラック TNPを添加して2分間混練した。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、16cm角で厚さ1mmの金型を用い、180℃に設定した電熱プレスにて、圧力10MPaで5分プレス成形した後、15℃に設定した冷却プレスにて圧力10MPaで3分処理することにより厚さ約1mmのプレス成形シートを得た。
Figure 2011099022
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表2に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例4
原料ポリマーの(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表2に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から1.5重量部に変更した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表2に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例5
原料ポリマーの(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表2に示す組成比に変更した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表2に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例6
原料ポリマーの(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表2に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に変更した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表2に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例7
原料ポリマーの(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3からEVA2に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表2に示す組成比に変更した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表2に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例8
原料ポリマーの(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3からEVA2に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.2重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
Figure 2011099022
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例9
原料ポリマーの(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更に架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で0.8重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例10
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例11
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例3に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例12
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例4に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例13
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3からEVA5に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例5に変更し、原料ポリマーの組成比を表3に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
実施例14
表3に示す組成比の(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂及び(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練した。得られた組成物に、表3に示す量のパークミル D−40を添加し、ロール温度を50℃に設定した東洋精機株式会社製8インチオープンロール混練機を用いて混練した。得られた未架橋組成物を、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、充填率83%、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練し、継続して、表3に示す重量部のノクラック NS−6及びノクラック TNPを添加して2分間混練した。得られた組成物に、表3に示す比率となるように(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを添加して同様のラボプラストミルを用い、充填率83%、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練した。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、実施例1と同一の方法でプレス成形シートとした。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表3に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は良好な耐油性を示すことがわかる。
比較例1
原料ポリマーの(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3からEVA4に、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
Figure 2011099022
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表4に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が少ないために耐油性に劣ることがわかる。
比較例2
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂を配合せず、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.8重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.8重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを作成した。
しかし、(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂を配合しなかったことから、プレス成形シートの収縮が大きく、表面が平滑なプレス成形シートが得られなかった。従って、硬さ以外の物性評価は実施しなかった。以上のことから、得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は寸法安定性が劣るため、実用性に乏しい材料と云える。
比較例3
原料ポリマーの(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から1.2重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で0.4重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
しかし、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体の組成比率が小さいことから、室温雰囲気におけるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が非常に硬く、ゴム弾性を示さなかった。従って、硬さ以外の物性評価は実施しなかった。以上のことから、得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物はエラストマー材料としての実用性に乏しい材料と云える。
比較例4
原料ポリマーの(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3から酢酸ビニル成分を含有しないL−LDPEに、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から2.6重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で1.7重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
しかし、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を配合せず、結晶性の高いL−LDPEを配合したことから、室温雰囲気におけるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が非常に硬く、ゴム弾性を示さなかった。従って、硬さ以外の物性評価は実施しなかった。以上のことから、得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物はエラストマー材料としての実用性に乏しい材料と云える。
比較例5
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3から酢酸ビニル成分を含有しないEPに、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例2に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から3.4重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で2.0重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表4に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を配合せず、酢酸ビニルを含有しないEPを配合したため耐油性に劣ることがわかる。
比較例6
原料ポリマーの(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂をPP1からPP2に、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVA3から酢酸ビニル成分を含有しないEPに、(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを合成例1から合成例3に変更し、原料ポリマーの組成比を表4に示す組成比に変更し、更にパークミル D−40の添加量を2.1重量部から5.1重量部に、架橋助剤としてTAICをパークミル D−40添加と同じ工程で2.3重量部添加した以外は実施例1に記載の方法に従ってオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表4に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を配合せず、酢酸ビニルを含有しないEPを配合したため耐油性に劣ることがわかる。
比較例7
表4に示す組成比の(A)結晶性ポリプロピレン系樹脂及び(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体を、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練した。得られた組成物に、表4に示す量のパークミル D−40を添加し、ロール温度を50℃に設定した東洋精機株式会社製8インチオープンロール混練機を用いて混練した。得られた未架橋組成物を、東洋精機株式会社製のラボプラストミル 30C150型を用い、充填率83%、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練し、継続して、表3に示す重量部のノクラック NS−6及びノクラック TNPを添加して2分間混練した。得られた組成物に、表4に示す比率となるように(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを添加して同様のラボプラストミルを用い、充填率83%、設定温度180℃、回転数100rpm、混練時間5分の条件で混練した。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、実施例1と同一の方法でプレス成形シートとした。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物のプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果を表4に示す。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が少ないために耐油性に劣ることがわかる。
比較例8
市販のオレフィン系熱可塑性エラストマー(ミラストマー(登録商標)7030N、三井化学株式会社製)を使用して、16cm角で厚さ1mmの金型を用い、180℃に設定した電熱プレスにて、圧力10MPaで5分プレス成形した後、15℃に設定した冷却プレスにて圧力10MPaで3分処理することにより厚さ約1mmのプレス成形シートを得た。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーのプレス成形シートを用いて物性評価を行った。その結果、硬さ72°、破断強さ4.6MPa、伸び430%、耐油性における体積膨潤率+167%、引張残存ひずみ10%であり、市販のオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に劣ることがわかる。
本発明は耐油性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、耐油性が要求されるホースやゴムパッキンとしての適用の可能性がある。

Claims (9)

  1. (A)結晶性ポリプロピレン系樹脂5〜49重量部、(B)架橋されており、かつ、酢酸ビニル含有量が20〜70重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体89〜30重量部、(C)プロピレンユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィン及び酢酸ビニルユニットを有する少なくとも1種のポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物に不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が付加されている不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンで、付加された不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の含有量が0.1〜10重量%である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン5〜50重量部を含有することを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  2. (C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中の酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンが架橋されていることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  3. (A)結晶性ポリプロピレン系樹脂及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中のプロピレンユニットを有するポリオレフィンの重量と、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体及び(C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン中の酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンの重量の比率が5/95〜50/50であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  4. (A)結晶性ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー及びポリプロピレンランダムコポリマーから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  5. (B)エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が40〜65重量%であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 示差走査熱量測定(DSC)で求めた、(B)エチレン−酢酸ビニル共重合体のエチレンに起因する結晶量が35mJ/mg以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  7. (C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンにおけるポリオレフィン組成物中のプロピレンユニット含有量が20〜80重量%であり、酢酸ビニルユニット含有量が5〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  8. (C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンにおけるプロピレンユニットを有するポリオレフィンが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー及びポリプロピレンランダムコポリマーから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
  9. (C)不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンにおける酢酸ビニルユニットを有するポリオレフィンの酢酸ビニル含有量が20〜70重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかの項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
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