JP2011089162A - Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法 - Google Patents

Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011089162A
JP2011089162A JP2009242874A JP2009242874A JP2011089162A JP 2011089162 A JP2011089162 A JP 2011089162A JP 2009242874 A JP2009242874 A JP 2009242874A JP 2009242874 A JP2009242874 A JP 2009242874A JP 2011089162 A JP2011089162 A JP 2011089162A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
surface treatment
lower support
jig
contact
alloy plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009242874A
Other languages
English (en)
Inventor
Koji Mori
宏治 森
Nobuyuki Okuda
伸之 奥田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority to JP2009242874A priority Critical patent/JP2011089162A/ja
Publication of JP2011089162A publication Critical patent/JP2011089162A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)

Abstract

【課題】Mg部材の表面処理の際に、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍で生じる色むらの発生を防止することができる表面処理用治具および表面処理を提供する。
【解決手段】表面処理用治具10は、Mg部材の底部を支持してMg部材の荷重を受ける下方支持部120と、下方支持部120で支持されたMg部材の側部を保持してMg部材の傾きを防止する側方保持部130と、下方支持部材120と側方保持部材130とを連結するフレーム110とを具えている。そして、下方支持部120及び側方保持部130における少なくともMg部材との接触箇所近傍を、水に対する接触角が65°以上の非金属材料で形成する。特に、非金属材料をフッ素樹脂とすることで、Mg部材を表面処理する際、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍の色むらの発生を抑制することが可能になる。
【選択図】図1

Description

本発明は、Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法に関するものである。特に、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍に発生する色むらを防止することができる表面処理用治具及びその治具を用いて行う表面処理方法に関するものである。
近年、軽量化が要求されている携帯電話やモバイル機器などの小型携帯機器類の筐体やノートパソコンの筐体、あるいは自動車部品などにMg合金を利用する例が増加してきている。
Mg合金は、比強度が高い金属であるが、耐食性を確保する必要から、通常、何らかの表面処理が行われる。例えば、特許文献1には、Mg部材の表面に施す表面処理技術が記載されている。具体的には、Mg部材をエッチング処理液に浸漬してエッチングするエッチング処理、及び化成処理液に浸漬してMg部材の表面に化成被膜を形成する化成処理が開示されている。
表面処理を施す際に用いる表面処理用治具は、Mg部材を収容した状態で処理液に浸漬できるよう、適宜な容器を利用することが考えられる。上記の表面処理用治具の材質としては、機械的強度の面から主に金属が挙げられる。
国際公開第2008/029497号
しかし、従来の表面処理技術では、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍に、不均一な表面処理に伴う色むらが生じることがある。
上記のような表面処理用治具を用いると、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所は、処理液が行き届かず表面処理されない。特に、この治具とMg部材とが面接触すると、表面処理されない面積が広くなり、表面処理の不均一性が顕著になる。さらに、治具で保持したMg部材を表面処理液から引き揚げても、表面処理液がMg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍に溜まる、液溜まりが生じやすい。そのため、その接触箇所近傍のみ表面処理の反応が過剰に進み、不均一な表面処理を招く。
また、治具が金属製の場合、治具とMg部材との間で電池反応を起こす虞がある。その際、Mg部材が溶出し、やはりMg部材の表面状態が不均一になる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、Mg部材の表面処理の際に、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍で生じる色むらの発生を防止することができる表面処理用治具を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記本発明Mg部材の表面処理用治具を用いて行うMg部材の表面処理方法を提供することにある。
本発明は、表面処理用治具におけるMg部材との接触箇所近傍の材質に工夫を施すことで上記目的を達成する。ここでいう接触箇所近傍とは、接触箇所自体をも含むこととする。
本発明の表面処理用治具は、Mg部材を表面処理する際に、Mg部材を表面処理液に浸漬するための表面処理用治具である。表面処理用治具は、Mg部材の底部を支持してMg部材の荷重を受ける下方支持部と、下方支持部で支持されたMg部材の側部を保持してMg部材の傾きを防止する側方保持部と、下方支持部材と側方保持部材とを連結するフレームとを具えている。そして、下方支持部及び側方保持部における少なくともMg部材との接触箇所近傍を、水に対する接触角が65°以上の非金属材料で形成したことが本発明の特徴である。
上記の構成によれば、下方支持部によってMg部材の底部を支持でき、側方保持部によってMg部材の傾きを防止することができる。さらに、Mg部材における下方支持部及び側方保持部との接触箇所及び接触箇所近傍は、水に対する接触角が65°以上の非金属材料で構成されているので、従来の金属製の表面処理用治具よりも撥水性が高い。つまり、下方支持部及び側方保持部の非金属材料で構成された箇所は、表面処理液が付着しにくい。ここでいう水に対する接触角は、「基盤ガラス表面のぬれ性試験方法 JIS R 3257(1999)」に定められた試験方法によって求めた値を用いる。
また、上記撥水効果により、表面処理用治具で支持されたMg部材を処理液から引き揚げた際、表面処理用治具から処理液を素早く切ることができる。そのため、不均一な表面処理の一因となっていた、液溜まりを抑制することができる。よって、Mg部材の引き揚げ後、Mg部材の接触箇所近傍だけ表面処理が過剰に進むといったことが起こり難い。
さらに、Mg部材と接触する下方支持部及び側方保持部は非金属材料で形成されているため、表面処理の一連の工程内において、表面処理用治具とMg部材との間で電池反応が生じない。そのため、Mg部材が溶出することもなくなる。
以上から、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍の色むらの発生を抑制することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、この非金属材料を、フッ素樹脂とすることが好ましい。
フッ素樹脂の水に対する接触角は約108°である。この接触角が高ければ高いほど、撥水性がよく、下方支持部及び側方保持部に処理液が付着しにくい。よって、液溜まりを抑制できるため、Mg部材の色むらをも抑制することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、この非金属材料を、塩化ビニルとしてもよい。
塩化ビニルの水に対する接触角は約68°である。水に対する接触角が65°以上なので、撥水性がよく、下方支持部及び側方保持部に処理液が付着しにくい。よって、液溜まりを抑制できるため、Mg部材の色むらを防止することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、下方支持部と側方保持部は、それぞれ、Mg部材の底部が嵌め込まれる下部切欠、側部が嵌め込まれる側部切欠を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、下部切欠にMg部材の底部を、側部切欠にMg部材の側部を嵌め込む形で保持することができる。そのため、Mg部材と表面処理用治具との接触箇所が少なく、かつ、安定的にMg部材を保持することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、前記下部切欠と側部切欠を設けた場合、下部切欠はU状溝を、側部切欠はV状溝を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、下部切欠をU状溝とすることで、Mg部材を支える際に、Mg部材との接触面積を少なくすることができる。それによって、処理液に治具を浸漬させた際、Mg部材と下方支持部との接触箇所周辺の処理液の流れがよくなり、さらに、治具を引き揚げた後、Mg部材と下方支持部との接触箇所近傍の処理液が切れやすくなるので、液溜まりがほぼなくなり、Mg部材における下方支持部との接触箇所近傍に発生する色むらを抑制することができる。さらにMg部材の自重がU状溝にかかることで安定して支えることができる。
側部切欠をV状溝とすることで、下部切欠によって支持されたMg部材の傾きを防止することができる。さらに、V状溝となっているため、Mg部材との接触面積も少なくすることができる。その上、Mg部材のぶれを防止できるので、複数のMg部材を表面処理する際、隣接するMg部材間の間隔を均一にでき、処理液をMg部材全体に均一に行き渡らせることができる。従って、処理液に治具を浸漬させた際、Mg部材と側方保持部との接触箇所近傍の処理液の流れがよくなり、さらに、治具を引き揚げた後、Mg部材と側方保持部との接触箇所近傍の処理液が切れやすくなるので、液溜まりがほぼなくなり、接触箇所近傍における色むらの発生を抑制することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、前記U状溝とV状溝とを有する場合、複数のMg部材を並列して保持できるように、U状溝が下方支持部の長手方向に複数並列され、V状溝が側方保持部の長手方向に複数並列されていることが好ましい。
上記の構成によれば、複数のMg部材を同時に保持できるので、複数のMg部材を同時に表面処理することができる。
次に、本発明の表面処理用治具において、前記U状溝を有する場合、下方支持部は、Mg部材の一面側に当接する第一湾曲片と、Mg部材の反対面に当接する第二湾曲片とを具え、前記第一湾曲片と前記第二湾曲片は、前記Mg部材を挟んで互いに対向しない位置にずれて配置されていることが好ましい。この両湾曲片の配置により、U状溝が形成される。
上記の構成によれば、両湾曲片は互いにずれて配置されているので、Mg部材の一方の湾曲片に当接している箇所と対向する位置には表面処理用治具との接触箇所がなく、Mg部材と治具とで囲まれる閉鎖空間が形成されない。よって、処理液に治具を浸漬した際、Mg部材と下方支持部との接触箇所近傍の処理液の流れがよくなる。また、治具を引き揚げた後、Mg部材と下方支持部との接触箇所近傍の処理液が切れやすくなる。従って、Mg部材と各湾曲片との接触箇所近傍に、液溜まりしにくいため、色むらの発生も抑制できる。
次に、本発明の表面処理用治具において、前記V状溝とを有する場合、側方保持部は、Mg部材の一面側に当接する第一傾斜片と、Mg部材の反対面側に当接する第二傾斜片とを具え、前記第一傾斜片と第二傾斜片は、前記Mg部材を挟んで互いに対向しない位置に配置されていることが好ましい。この両湾曲片の配置により、V状溝が形成される。
上記の構成によれば、両傾斜片は互いにずれて配置されているので、Mg部材の一方の傾斜片に当接している箇所と対向する位置には表面処理用治具との接触箇所がなく、Mg部材と治具とで囲まれる閉鎖空間がない。よって、処理液に治具を浸漬したとき、Mg部材と側方保持部との接触箇所近傍の処理液の流れがよくなる。また、治具を引き揚げた後、Mg部材と側方保持部との接触箇所近傍の処理液が切れやすくなる。従って、Mg部材と各傾斜片との接触箇所近傍の処理液の流れを円滑にでき、液溜まりが起こりにくいため、色むらの発生も抑制できる。
次に、本発明の表面処理用治具において、フレームは、互いに組み合わせることで略直方体を形成する柱及び梁と、この直方体の少なくとも一つの面に形成される開口部とを具え、下方支持部及び側方保持部の各々は、前記梁と実質的に平行に配置されていることが好ましい。
上記の構成によれば、開口部を設けることで、治具内へのMg部材の出し入れ、及び表面処理液の導入・排出を容易に行える。さらに、下方支持部及び側方保持部が、前記梁と実質的に平行に配置されていることで、複数のMg部材を処理する際、デッドスペースを極力なくして、効率的なMg部材の収納ができる。
一方、本発明のMg部材の表面処理方法は、本発明の表面処理用治具を用いて、エッチング処理と化成処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする。
上記の構成によれば、撥水性が高い本発明の表面処理用治具を用いることで、表面処理の一連の工程内において、表面処理液がMg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍で溜まりにくくすることができる。よって表面処理液からMg部材を引き揚げてから次の工程へ移行する間などに、Mg部材の接触箇所近傍だけ表面処理が過剰に進むといったことが起こりにくい。
また、Mg部材と接触する下方支持部及び側方保持部は非金属材料で形成されているため、表面処理の一連の工程内において、表面処理用治具とMg部材との間で電池反応が生じない。そのため、Mg部材が溶出することもなくなる。
よって、Mg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍の色むらの発生を抑制することができる。
次に、本発明のMg部材の表面処理方法において、以下の各工程の少なくとも一つを追加工程として具え、各追加工程は、本発明の表面処理用治具でMg部材を保持して行うことが好ましい。
(A)加工時にMg部材に付着した油分をエッチング処理工程の前に除去する脱脂工程。
(B)エッチング処理工程でMg部材の表面に析出したスマットを化成処理工程の前に除去する脱スマット工程。
(C)脱スマット工程でMg部材の表面に付着した溶液を除去する表面調整工程。
上記の構成によれば、エッチング処理や化成処理する際、Mg部材表面に付着した異物などを除去して、Mg部材の表面を清浄化できる。よって、エッチング処理や化成処理が、効果的・効率的に行え、Mg部材に対する化成被膜の密着度を高められる。
次に、本発明のMg部材の表面処理方法において、本発明の表面処理用治具がMg部材を保持したまま、各工程間で、Mg部材が水洗いされる水洗工程を行うことが好ましい。
上記の構成によれば、各工程間に水洗いを行うことによって、各処理後にMg部材に付着した汚れを除去することができ、次に行う処理を効果的・効率的に働かせることができる。それによって、化成被膜の密着性が高くなり、耐食性を高めることができる。
本発明の表面処理用治具によれば、Mg部材と接触する部材に、水に対する接触角が65°以上の非金属材料を用いることにより、その接触箇所近傍の撥水性を高めることができる。よって、Mg部材と表面処理用治具との接触箇所近傍で液溜まりが生じにくい。さらにMg部材と接触する部材に非金属材料を用いたことで、Mg部材と治具との電池反応を抑制できる。従って、Mg部材における治具との接触箇所近傍に色むらが発生することを抑制できる。
また、本発明の表面処理方法によれば、本発明の表面処理用治具を用いて表面処理を行うことで、Mg部材における色むらの発生を抑制することができる。
実施形態1に係る本発明表面処理用治具の斜視図である。 図1の表面処理用治具を構成する下方支持部及び側方保持部の3面図であって、(A)は下方支持部の平面図、(B)は側方保持部(両面切欠タイプ)の平面図、(C)は側方保持部(片側切欠タイプ)の平面図を示す。 実施形態1に係る本発明表面処理用治具であって、(A)は正面図、(B)は上面図、(C)は右側面図を示す。 実施形態2に係る本発明表面処理用治具の部分拡大図である。 実施形態3に係る本発明表面処理用治具の部分拡大図である。 本発明方法により表面処理したMg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍の金属写真である。 従来の表面処理用治具を用いて表面処理したMg部材における表面処理用治具との接触箇所近傍の金属写真である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
Mg部材をMg合金板Wとし、この合金板に表面処理としてエッチング処理及び化成処理を行う場合を例として、本発明の表面処理用治具10及び表面処理方法を図1〜図3に基づいて説明する。この表面処理用治具10の最も特徴とするところは、表面処理用治具10を構成する部材のうち、Mg合金板Wと接触する部材の形態と材料に工夫を施した点にあるが、Mg部材を先に説明し、その後に順次、表面処理用治具10、表面処理方法を説明する。
<Mg部材>
表面処理対象となるMg部材には、Mg含有材料が少なくとも表面に現れる各種形状の部材が挙げられる。Mg含有材料にはマグネシウム合金は勿論、純マグネシウムも含むものとする。本例ではMg合金からなる矩形板をMg部材としているが、板材のほか、棒材、ブロック材、異形材など種々の形状の部材が利用できる。また、Mg部材は、単一材料からなる単一材は勿論、Mg含有材料と他の材料との複合材であってもよい。複合材には、Mg含有材料のマトリックス中に他の材料からなる粒子や繊維が分散された分散材、Mg含有材料と他の材料が積層された積層材、他の材料からなる基材の表面にMg含有材料が被覆された被覆材などが挙げられる。
<表面処理用治具>
この表面処理用治具10は、図1に示すように、Mg合金板Wが収納されるフレーム110と、Mg合金板Wを下方から支持する下方支持部120と、Mg合金板Wの傾きを抑制する側方保持部130とを備える。Mg合金板Wは、この表面処理用治具10で支持されたまま表面処理液に浸漬・引き揚げを行うことで表面処理が行われる。以下、表面処理用治具10の各部の構成を詳しく説明する。
<フレーム>
フレーム110は、表面処理用治具10の内部にMg部材を収納して保持するために、下方支持部120と側方保持部130との位置関係を規定する骨格を形成する。フレーム110の全体形状は、下方支持部120と側方保持部130の相互位置を保持できれば、特に問わない。本例では、直方体の枠体でフレーム110を構成している(図1、図3)。このフレーム110は、柱150、長辺となる縦梁142、短辺となる横梁144、及び下方支持部120・側方保持部130を取り付けるための下方取付梁146・側方取付梁148を組み合わせて構成されている。そのうち、側方取付梁148は、中間縦梁148aと中間横梁148bとから構成される。具体的には、鉛直方向に延びる4本の柱150の端部同士を二対の縦梁142及び二対の横梁144で接合して直方体の各辺に相当する箇所を形成し、さらに各柱150の上端寄りの箇所を一対の中間縦梁148aと一対の中間横梁148bとでつないで矩形枠を形成している。各中間縦梁148aは縦梁142と平行に配され、各中間縦梁148aの中央部において対向する中間縦梁148aとの間に後述する両側切欠タイプ132の側方保持部が固定される。一方、下方取付梁146は、フレーム110の下方に位置する一対の縦梁142の間を架け渡すように同縦梁142に固定されている。より具体的には、フレーム110下方に位置する一対の横梁144の近傍と、縦梁142の2等分線の近傍とに合計4本の下方取付梁146が固定されている。これら柱150や各梁は、本例ではアングル材を用いているが、丸棒、角棒、長尺板などで構成してもよい。また、柱150と各梁同士の接合は、溶接が利用できるほか、ボルト締めやリベット止めでもよい。
このようなフレーム110は、直方体の六面が全て開口されている。各開口部は、Mg合金板Wを表面処理用治具10内に出し入れすることや、表面処理液を表面処理用治具10内に導入・排出することに利用される。この開口は、直方体の六面全てに設けられる必要はないが、Mg合金板Wの出し入れや表面処理液の導入・排出を考慮すると、上下面は開口していることが好ましい。
また、フレーム110の内部空間は、縦梁142方向に並ぶ2ブロックで構成されている。各ブロック内には、複数のMg合金板Wを、その表裏が対面するように横梁144方向に並列収納することができる。勿論、フレーム110の内部空間に3つ以上の複数ブロックを形成してもよいし、単一のブロックとしてもよい。さらには、複数のブロックを形成する場合、各ブロックの大きさが異なっていてもよい。
フレーム110の構成材料としては、表面処理液と反応せず、所定数のMg部材を保持した際に変形などしない程度の機械的強度を有するものが好適である。各種金属や樹脂材料を選択することができる。
<下方支持部>
下方支持部120は、Mg合金板Wを下方から支持して、同合金板Wの荷重を受ける。本例では、図2(A)に示すように、長尺の略矩形板からなり、その一方の側縁に複数のU状溝80aが等間隔で並列され、他方の側縁寄りに複数のボルト孔30が形成された下方支持部120としている。
このような下方支持部120は、ボルト孔30にボルトを挿通し、このボルトをフレーム110の下方取付梁146に締め付けることで固定される(図1、図3)。この固定により、各U状溝80aは上方に開口し、横梁144方向に並列される。本例では、フレーム110内の一ブロック当たり一対の下方支持部120を用いている。理論上、一ブロック当たりの下方支持部120の数は単一でもよいが、Mg合金板Wをより少ない接触箇所数で安定して支持するには、一対とすることが好ましい。その場合、一対の下方支持部120の各々は、Mg部材の幅以下の広い間隔で縦梁142方向に離間すればよい。
各U状溝80aは、Mg合金板Wの底部が嵌め込まれ、溝内面とMg合金板Wの下縁が線接触することでMg合金板Wを支持する。Mg部材が嵌め込まれる箇所の形状は、適宜な切欠であれば、U状溝80aに限定されない。また、U状溝80aの数は、支持するMg部材の数に応じて適宜選択すればよい。
下方支持部120の材質には、水に対する接触角が65°以上の非金属材料を用いる。このような材質を用いることで、Mg部材と下方支持部120との接触箇所近傍に表面処理液が滞留することをほぼ抑制することができる。本例では、下方支持部120の全体をフッ素樹脂で形成している。但し、下方支持部120のうち、少なくともMg部材と接触する箇所が所定の接触角を有する非金属材料であればよい。具体的には、金属やセラミックスからなる基材にMg部材が嵌め込まれる切欠を形成し、その切欠近傍を所定の接触角を有する非金属材料で被覆することが挙げられる。
この接触角は大きいほど表面処理液の撥水性に優れて好ましい。接触角の好ましい値は、70°以上(例えばポリアミド)、さらに好ましくは80°以上(例えばポリエチレン)、特に好ましくは90°以上(例えばシリコン樹脂)、最も好ましくは100°以上(例えばフッ素樹脂)である。
<側方保持部>
側方保持部130は、下方支持部120に支持されたMg合金板Wの両側部を保持してMg部材の傾きを防止する。この側方保持部130には、両側切欠タイプ132と片側切欠タイプ134とがある。一対の片側切欠タイプ134の側方保持部(単に片側タイプという)が間隔をあけて配され、双方の片側タイプ134の中間に両側切欠タイプ132の側方保持部(単に両側タイプという)を配することで、各片側タイプ134と両側タイプ132の間にMg合金板Wが収納される空間(ブロック)を形成する。
両側タイプ132は、図2(B)に示すように、断面が正方形の角棒の両側に複数のV状溝90aを長手方向に等間隔に並列し、両端部にボルト孔30を形成した構成である。一方の側縁のV状溝90aと他方の側縁のV状溝90aとは、互いに溝の最深部が対向しないように、側方保持部の長手方向にずれて配置されている。この配置により、一方の側縁のV状溝90aと他方の側縁のV状溝90aの最深部同士の間隔を確保し、両側タイプ132の幅を小さくしながらもその機械的強度を確保している。
この両側タイプ132は、ボルト孔30にボルトを挿通し、そのボルトを各中間縦梁148aの長手方向の中央位置に締め付けることで、一対の中間縦梁148aの間に架設される。このとき、各V状溝90aは、各中間横梁148bに対向して水平方向に開口している。もっとも、両側タイプ132の架設箇所は、各中間縦梁148aの長手方向の中央位置からずれた箇所でも構わない。その場合、両側タイプ132を挟んで縦梁142方向の一方のブロックと他方のブロックのサイズが異なるが、そのような表面処理用治具10は異なるサイズのMg合金板Wを一つの表面処理用治具10で表面処理することに利用できる。
一方、片側タイプ134は、図2(C)に示すように、両側タイプ132と同じ長さの長尺の略矩形板で構成され、その一方の側縁に複数のV状溝90aが等間隔で並列され、他方の側縁寄りに複数のボルト孔30が形成されている。このV状溝90a群の形成領域は、片側タイプ134の一端側に若干ずれている。このずれにより、片側タイプ134の各V状溝90aが両側タイプ132の一方の側縁のV状溝90aに対向され、片側タイプ134を裏返すことで、その片側タイプ134の各V状溝90aが両側タイプの他方の側縁のV状溝90aに対向される。
各片側タイプ134は、ボルト孔30にボルトを挿通し、V状溝90aをフレーム110の内側に向けた状態で、そのボルトを各中間横梁148bに締め付けることで、中間横梁148b沿いに固定される(図1、図3)。この固定により、片側タイプ134の各V状溝90aは、対向する中間横梁148bに面して水平方向に開口し、両側タイプの各V溝90aと対向される。
両側タイプ132及び片側タイプ134の各々は、フレーム110の高さ方向のどの位置に配置してもよいが、より下方支持部120から離れた上部に配置した方が、Mg合金板Wの傾きを抑制しやすい。
両側タイプ132及び片側タイプ134の各V状溝90aは、Mg合金板Wの側部が嵌め込まれ、溝内面とMg合金板Wの側縁が線接触することでMg合金板Wを保持する。Mg部材が嵌め込まれる箇所の形状は、適宜な切欠であれば、V状溝90aに限定されない。また、V状溝90aの数は、支持するMg部材の数に応じて適宜選択すればよい。
側方保持部130の材質は、下方支持部120の材質と同様に、水に対する接触角が65°以上の非金属材料を用いる。この材質の具体例や、その材質の適用箇所、或いは好ましい接触角の角度は、下方支持部120に関して述べた事項と同様である。
以上の例では、両側タイプ132と片側タイプ134の2タイプの側方保持部130を用いてMg合金板Wを収納するブロックを2つ設けたが、一対の片側タイプ134のV状溝90aを対向させて一ブロックを構成してもよい。また、単一の部材で両側タイプ132を構成する代わりに、一対の片側タイプ134を用意し、各片側タイプ134を互いにV状溝90aを形成した側縁が離反する向きに配置してもよい。この場合、2種類のタイプの側方保持部を用意する必要がない。その他、上記の例では1枚のMg合金板Wの傾きを防止するために、一対の側方保持部130でMg合金板Wを左右から保持しているが、1枚の合金板の一方の側部を一つの側方保持部で保持する構成としても、傾き防止効果はある程度期待できる。
<表面処理方法>
上記の表面処理用治具10を用いた表面処理の手順を説明する。本例では、表面処理の一連の工程として、Mg合金板Wの製造過程で付着した不純物や同合金板の表面に析出した異物などを同合金板Wの表層ごと除去するエッチング処理と、エッチング処理後のMg合金板表面Wに化成被膜を形成する化成処理を順次行う。
まず、フレーム110内にMg合金板Wを収納する。具体的には、フレーム110の上面開口部からMg合金板Wを導入し、Mg合金板Wの両側部が側方保持部のV状溝90a内を通るようにする。続いて、下方支持部120のU状溝80aにMg合金板Wの下部を嵌め込み、フレーム110内に同合金板を保持する。同様の作業をMg合金板の枚数分繰り返して、Mg合金板を表面処理用治具10内に収納する作業を完了する。
次に、エッチング処理を行う。フレーム110内にMg合金板Wを保持したまま、その表面処理用治具10ごとエッチング処理液に浸ける。このとき、Mg合金板Wがエッチング処理液から露出しないようにする。エッチングの好ましい温度と時間は20〜70℃と0.5〜10分である。エッチング後、表面処理用治具10をエッチング処理液から引き揚げる。
次に、化成処理を行う。この処理も、エッチング処理と同様、表面処理用治具10ごとMg合金板Wを化成処理液に浸漬し、引き揚げることで行う。化成処理の好ましい処理液、温度及び時間は、P系の処理液、20〜70℃で0.5〜4分である。
そして、引き揚げられた表面処理用治具10のフレーム110内からMg合金板Wを取り出す。
その他、追加工程として、エッチング処理前に脱脂、化成処理の前に脱スマット、表面調整を行ってもよい。これらの各追加工程は、必要に応じて少なくとも一つを行えばよい。これらの各追加工程も、表面処理用治具10に保持したMg合金板を表面処理用治具10ごと処理液に浸漬し、引き揚げることで行える。
脱脂は、アルカリ脱脂により切削油を除去し、加工時に使用される離型剤を軟化して除去し易くする。脱脂の好ましい温度と時間は20〜70℃、1〜20分である。
脱スマットは、酸エッチング時に析出したスマット(酸化物)をアルカリ溶液で溶解除去し、同時にマグネシウムとの反応により不動態化膜を生成する。脱スマットの好ましい温度と時間は20〜70℃、2〜20分である。
表面調整は、脱スマットで使用したアルカリ溶液を清浄して除去する。表面調整の好ましい温度と時間は20〜70℃、1〜10分である。
さらに、エッチング、化成処理、追加工程の各々の間に水洗いを行ってもよい。水洗いは、脱イオン水による水洗が好ましい。
<作用効果>
上述した実施形態に係る表面処理用治具10及び処理方法によれば、次の効果を奏することができる。
(1)下方支持部120がU状溝80aを有することで、下方支持部120とMg合金板Wとの接触面積を小さくしながらも、Mg合金板Wを安定して支持できる。また、側方保持部130がV状溝90aを有することによって、Mg合金板Wの側部を均等に安定して保持できるうえに、Mg合金板Wとの接触箇所を少なくすることができる。
(2)治具10を処理液に浸漬させた際、各溝における処理液の流れをよくすることができ、また、治具10を引き揚げた後、Mg合金板Wと下方支持部120及び側方保持部130との接触箇所近傍の処理液が切れやすくなるので、液溜まりがほぼなくなり、Mg合金板Wの色むらを抑制することができる。
(3)複数のU状溝80a、V状溝90aを等間隔に並列することで、複数のMg合金板Wを等間隔で保持できるため、表面処理液がどのMg合金板Wにも均等に行き届く。
(4)Mg合金板Wにおける表面処理用治具10の接触箇所近傍を非金属材料で形成しているので、表面処理する際、Mg合金板Wと下方支持部120及び側方保持部130とで電池反応が起こらない。よってMgが溶出することもない。
(5)従って、表面処理をしても、Mg合金板Wにおける治具10との接触箇所近傍に色むらが生じない。
[実施形態2]
実施形態1と異なる実施形態を図4に基づいて説明する。実施形態1では、下方支持部のU状溝、側方保持部のV状溝により、Mg合金板の表裏の対向箇所を支持したが、本例では、Mg合金板(破線表示)Wの表側の支持箇所と裏側の支持箇所とが互いにずれた支持構造を実現できる表面処理用治具10を説明する。本例の表面処理用治具10は、下方支持部120と側方保持部130の構成を除き、基本的な構成は実施形態1と共通であるため、以下の説明は相違点を中心に行う。従って、図4では、下方支持部120、側方保持部130及びMg合金板Wの各配置のみを示し、表面処理用治具10の他の構成部材は図示を省略している。この図示の仕方は、後述する実施形態3を示す図5でも共通である。
<表面処理用治具>
<下方支持部>
実施形態1では1枚の長尺板に複数のU状溝を形成した下方支持部を用いたが、本例の下方支持部120は、図4に示すように、2枚の長尺板(表側支持面120hと裏側支持面120t)を一つのセットとし、各支持面120h、120tがMg合金板Wにおける表裏の下縁の一方とのみと接触して同合金板を支持する。
各支持面120h、120tは、その一方の側縁に、変形扇状の切欠が多数形成されて、互いに合同に構成されている。各切欠は、2辺が長さの異なる直線で構成され、残る1辺が曲線で構成される。この切欠の形成により、各切欠の間には、略直角台形状の第一・第二湾曲片124a・124bが等間隔に並列された状態となる。各湾曲片124a・124bの斜辺は、凹型の曲線からなる。
このような2枚の支持面120h、120tは、間隔をあけて平行に保持してフレーム110に固定される。その際、表側支持面に形成される第一湾曲片124aと、裏側支持面に形成される第二湾曲片124bとは、互いに裏返しの関係になるように両支持面120h、120tが配置される(図4の右上拡大図)。その結果、2枚の支持面120h、120tの並列方向に切欠を見た場合(図4のX矢視図)、第一湾曲片124aの凹型の曲線と第二湾曲片124bの凹型の曲線とが交差し、両曲線で挟まれる空間に底部が尖ったU状溝80bが形成される。
このU状溝80bにMg合金板Wを嵌め込むと、Mg合金板Wの一面の下縁は第一湾曲片124aに当接し、他面の下縁は第二湾曲片124bに当接することになる。つまり、Mg合金板Wにおける一方の湾曲片で接触される箇所の裏側には、何も接触する部材が存在しない。その結果、Mg合金板の下端面とMg合金板Wを支持する部材とで囲まれる空間が形成されない。
図4では、2セットの下方支持部120にて1ブロック内のMg合金板Wを支持しているが、その代わりに、表側支持面をMg合金板Wの右下に、裏側支持面を同合金板の左下に配置し、1セットの下方支持部120にて1ブロック内のMg合金板を支持してもよい。
<側方保持部>
本例の側方保持部130も、実施形態1と同様に両側タイプ132及び片側タイプ134ある。いずれのタイプ132(134)も上記下方支持部120と同様、2枚の長尺板(表側保持面130hと裏側保持面130t)を一つのセットとし、各保持面130h、130tがMg合金板Wにおける表裏の側縁の一方とのみ接触して同合金板Wを保持する。また、各タイプ132(134)の各保持面は、互いに合同構成されている。
各保持面130h、130tは、その一方の側縁に、直角台形の切欠が多数形成されて、互いに合同に構成されている。各切欠は、この直角台形の上底が下底よりも長い辺で構成され、残る2辺のうち1辺が斜辺で、もう1辺が垂線で構成される。この切欠の形成により、各切欠の間には、直角台形の第一・第二傾斜片134a・134bが等間隔に並列された状態となる。
このような2枚の保持面130h、130tは、間隔をあけて平行に保持してフレーム110に固定される。その際、いずれのタイプ132(134)も、表側保持面130hに形成される第一傾斜片134aと、裏側保持面130tに形成される第二傾斜片134bとは、互いに裏返しの関係になるように両保持面130h、130tが配置される(図4の左上拡大図)。その結果、2枚の保持面130h、130tの並列方向に切欠を見た場合(図4のZ矢視図)、第一傾斜片134aの斜辺と第二傾斜片134bの斜辺とが交差し、両斜辺で挟まれる空間にV状溝90bが形成される。
このV状溝90bにMg合金板Wを嵌め込むと、Mg合金板Wの一面の側縁は第一傾斜片134aに当接し、他面の側縁は第二傾斜片134bに当接することになる。つまり、Mg合金板Wにおける一方の傾斜片で接触される箇所の裏側には、何も接触する部材が存在しない。その結果、Mg合金板Wの側端面とMg合金板Wを支持する部材とで囲まれる空間が形成されない。
<作用効果>
上述した実施形態に係る表面処理用治具10及び処理方法によれば、実施形態1の作用効果に加えて、次の効果を奏することができる。
Mg合金板Wにおける一方の湾曲片124a、124b(傾斜片134a(134b))で接触される箇所の裏側は、何も接触する部材が存在しないため、Mg合金板Wと下方支持部120又は側方保持部130との接触箇所近傍に表面処理液が溜まることをより確実に回避できる。
[実施形態3]
実施形態1及び2と異なる実施形態を図5に基づいて説明する。実施形態2では、Mg合金板の表側の支持箇所と裏側の支持箇所とが互いにずれた支持構造により下方支持部にはU状溝を、側方保持部にはV状溝を形成した。本例では、実施形態2と同様に2枚の支持板(保持板)を1セットとして用いるが、下方支持部120及び側方保持部130のいずれにも同様の湾曲V状溝を形成した治具を説明する。本例の表面処理用治具10は基本構造が実施形態2と共通であり、かつ下方支持部120と片側タイプの側方保持部134との構成も共通であるため、以下の説明は下方支持部120に基づいて行う。
<下方支持部>
各支持面120h、120tは、その一方の側縁に、略直角台形状の切欠が多数形成されている。各切欠は、略直角台形状の上底が下底よりも長い直線で構成され、残る2辺のうち1辺が曲線で、もう1辺が垂線で構成される。この切欠の形成により、各切欠の間には、変形扇形の第一・第二湾曲傾斜片128a・128bが等間隔に並列された状態となる。
このような2枚の支持面は、間隔をあけて平行に保持してフレーム110に固定される。その際、表側支持面に形成される第一湾曲傾斜片128aと、裏側支持面に形成される第二湾曲傾斜片128bとは、互いに裏返しの関係になるように両支持面が配置される(図5の右上拡大図)。その結果、2枚の支持面の並列方向に湾曲傾斜片をみた場合(図5のX矢視図)、第一湾曲傾斜片128aの凸型の曲線と第二湾曲傾斜片128bの凸型の曲線とで挟まれる空間に湾曲V状溝が形成される。この湾曲V状溝に、Mg合金材Wが嵌め込まれる。
<作用効果>
上述した実施形態に係る表面処理用治具10及び処理方法によれば、実施形態2と同様の作用効果を奏することに加えて、片側タイプの側方保持部134を下方支持部120と共通する部材で構成できる。
<試験例>
実施例に係る表面処理用治具、及びこの実施例とは下方支持部及び側方保持部の材質が異なる比較例に係る表面処理用治具を用いてMg合金板に表面処理を行い、各合金板の表面状態を比較した。表面処理は、化成処理とし、その前処理として脱脂、エッチング、脱スマット、表面調整の各処理を順次行って、各処理の間では水洗い処理を行った。各処理は、Mg合金板を表面処理用治具で保持したまま処理液に浸漬し、引き揚げることで行った。具体的試験条件を以下に示す。
<実施例>
治具の構成:図1に記載の表面処理用治具
治具の材質
フレーム:ステンレス
下方支持部及び側方保持部:ポリテトラフルオロエチレン
治具の寸法
外寸:455×350×166mm
フレームを構成するアングル材:20×20mm−厚さ3mm
U状溝:深さ10mm、幅6mm、中心間距離12mm
V状溝:深さ7.5mm、最大幅7mm、中心間距離12mm
<比較例>
下方支持部及び側方保持部をステンレスで構成した点を除き、実施例と同様の表面処理用治具とする。
<表面処理条件>
Mg合金板
組成:AZ91相当材(Mg−9.0質量%Al−0.7質量%Zn)
寸法:200×310×0.8mm
枚数:20枚
脱脂:10%KOHとノニオン系界面活性剤0.2%溶液の攪拌下、60℃で10分
エッチング:5%リン酸溶液の攪拌下、40℃で1分
脱スマット:10%KOH溶液の攪拌下、60℃で5分
表面調整:pH8に調整した炭酸水溶液の攪拌下、60℃で5分
化成処理:10%リン酸を主成分とするP系処理液及び1%KOH溶液の攪拌下、30℃で2分
水洗い:脱イオン水への浸漬
<結果>
実施例での表面処理結果を図6に、比較例での表面処理結果を図7に示す。いずれの図も、下方支持部のU状溝近傍におけるMg合金板の表面を示しており、図の中央付近でほぼ左右に伸びる線より上部がMg合金板、この線より下部が背景である。
実施例に係る表面処理では、Mg合金板に色むらはできておらず、均一な表面処理が行われていることがわかる。一方、比較例に係る表面処理では、Mg合金板の縁部に半円状の色むら(濃色部)ができており、表面処理が不均一にしかできなかったことがわかる。このような結果となった理由は、実施例に係る表面処理用治具では、各工程での処理液を下方支持部(側方保持部)とMg合金板との接触箇所近傍からすばやく切ることができたため、接触箇所近傍での液溜まりの発生を回避でき、過剰な表面処理の進行が抑制されたからであると考えられる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
本発明の表面処理用治具は、表面処理する際に利用することができる。特に、意匠性を問うような部材を表面処理する際に利用することができる。
10 表面処理用治具
110 フレーム
120 下方支持部 120h 表側支持面 120t 裏側支持面
124a、128a 第一湾曲(傾斜)片
124b、128b 第二湾曲(傾斜)片
130 側方保持部 130h 表側保持部 130t 裏側保持部
132 両側切欠タイプ(両側タイプ) 134 片側切欠タイプ(片側タイプ)
134a 第一傾斜片 134b 第二傾斜片
142 縦梁 144 横梁 146 下方取付梁 148 側方取付梁
148a 中間縦梁 148b 中間横梁
150 柱
30 ボルト孔
80a、80b U状溝
90a、90b V状溝
W Mg合金板

Claims (12)

  1. Mg部材を表面処理する際に、前記Mg部材を表面処理液に浸漬するための表面処理用治具であって、
    前記Mg部材の底部を支持して前記Mg部材の荷重を受ける下方支持部と、
    前記下方支持部で支持された前記Mg部材の側部を保持して前記Mg部材の傾きを防止する側方保持部と、
    前記下方支持部と前記側方保持部とを連結するフレームとを具え、
    前記下方支持部及び前記側方保持部における少なくとも前記Mg部材との接触箇所は、水に対する接触角が65°以上の非金属材料で形成されていることを特徴とする表面処理用治具。
  2. 前記非金属材料が、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理用治具。
  3. 前記非金属材料が、塩化ビニルであることを特徴とする請求項1に記載の表面処理用治具。
  4. 前記下方支持部は、Mg部材の底部が嵌め込まれる下部切欠を有し、
    前記側方保持部は、Mg部材の側部が嵌め込まれる側部切欠を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
  5. 前記下部切欠は、U状溝で、
    前記側部切欠は、V状溝であることを特徴とする請求項4に記載の表面処理用治具。
  6. 複数のMg部材を並列して支持できるように、
    前記U状溝が下方支持部の長手方向に複数並列され、
    前記V状溝が側方保持部の長手方向に複数並列されていることを特徴とする請求項5に記載の表面処理用治具。
  7. 前記下方支持部は、
    Mg部材の一面側に当接する第一湾曲片と、
    Mg部材の反対面側に当接する第二湾曲片とを具え、
    前記両湾曲片が前記Mg部材を挟んで互いに対向しない位置にずれて配置されることで前記U状溝を構成することを特徴とする請求項5または6に記載の表面処理用治具。
  8. 前記側方保持部は、
    Mg部材の一面側に当接する第一傾斜片と、
    Mg部材の反対面側に当接する第二傾斜片とを具え、
    前記両傾斜片が前記Mg部材を挟んで互いに対向しない位置にずれて配置されることで前記V状溝を構成することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の表面処理用治具。
  9. 前記フレームは、
    互いに組み合わせることで略直方体を形成する柱及び梁と、
    この直方体の少なくとも一つの面に形成される開口部とを具え、
    前記下方支持部及び側方保持部の各々は、前記梁と実質的に平行に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面処理用治具。
  10. Mg部材をエッチング処理液に浸漬してエッチングするエッチング処理工程と、エッチング工程を経たMg部材を化成処理液に浸漬してMg部材の表面に化成被膜を形成する化成処理工程とを具えるMg部材の表面処理方法であって、
    前記両工程の少なくとも一方は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理用治具が前記Mg部材を保持したまま行うことを特徴とする表面処理方法。
  11. さらに、以下の各工程の少なくとも一つを追加工程として具え、
    各追加工程は請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理用治具でMg部材を保持して行うことを特徴とする請求項10に記載のMg部材の表面処理方法。
    (A) 加工時にMg部材に付着した油分をエッチング処理工程の前に除去する脱脂工程
    (B) エッチング処理工程でMg部材の表面に析出したスマットを化成処理工程の前に除去する脱スマット工程
    (C) 脱スマット工程でMg部材の表面に付着した溶液を除去する表面調整工程
  12. さらに、請求項1〜9のいずれか1項に記載の表面処理用治具が前記Mg部材を保持したまま、前記各工程間で、Mg部材が水洗いされる水洗工程を具えることを特徴とする請求項10または11に記載の表面処理方法。
JP2009242874A 2009-10-21 2009-10-21 Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法 Pending JP2011089162A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009242874A JP2011089162A (ja) 2009-10-21 2009-10-21 Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009242874A JP2011089162A (ja) 2009-10-21 2009-10-21 Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011089162A true JP2011089162A (ja) 2011-05-06

Family

ID=44107668

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009242874A Pending JP2011089162A (ja) 2009-10-21 2009-10-21 Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011089162A (ja)

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH04661U (ja) * 1990-04-18 1992-01-07
JPH0440531U (ja) * 1990-02-23 1992-04-07
JPH05239661A (ja) * 1992-03-02 1993-09-17 Hitachi Cable Ltd パターン状金属層を有するプラスチック成形品
JPH0722781A (ja) * 1991-08-26 1995-01-24 Matsushita Electric Works Ltd 表面処理用ラック治具
JP2001271189A (ja) * 2000-01-18 2001-10-02 Nippon Techno Kk 液体処理装置、それを用いた滅菌装置、それを用いた洗浄処理方法、表面処理方法および滅菌方法
JP2001288580A (ja) * 2000-03-31 2001-10-19 Nippon Parkerizing Co Ltd マグネシウム合金の表面処理方法、およびマグネシウム合金部材
JP2003187819A (ja) * 2001-12-18 2003-07-04 Honda Motor Co Ltd 燃料電池用セパレータの製造方法及び同製造装置
JP2009097093A (ja) * 2007-09-27 2009-05-07 Nippon Paint Co Ltd 表面処理金属材料および金属塗装物の製造方法

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0440531U (ja) * 1990-02-23 1992-04-07
JPH04661U (ja) * 1990-04-18 1992-01-07
JPH0722781A (ja) * 1991-08-26 1995-01-24 Matsushita Electric Works Ltd 表面処理用ラック治具
JPH05239661A (ja) * 1992-03-02 1993-09-17 Hitachi Cable Ltd パターン状金属層を有するプラスチック成形品
JP2001271189A (ja) * 2000-01-18 2001-10-02 Nippon Techno Kk 液体処理装置、それを用いた滅菌装置、それを用いた洗浄処理方法、表面処理方法および滅菌方法
JP2001288580A (ja) * 2000-03-31 2001-10-19 Nippon Parkerizing Co Ltd マグネシウム合金の表面処理方法、およびマグネシウム合金部材
JP2003187819A (ja) * 2001-12-18 2003-07-04 Honda Motor Co Ltd 燃料電池用セパレータの製造方法及び同製造装置
JP2009097093A (ja) * 2007-09-27 2009-05-07 Nippon Paint Co Ltd 表面処理金属材料および金属塗装物の製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2006270105A (ja) ウェーハとの接触面積を最小化できるウェーハキャリヤ及びこれを用いたウェーハ洗浄方法
JP2011089162A (ja) Mg部材の表面処理用治具と表面処理方法
US20200211890A1 (en) Method and apparatus for fabricating display panel
JP7122235B2 (ja) 保持治具
JP6910600B2 (ja) めっき装置
EP2699712B1 (en) Edge bending jig and method for mesh-type electrode substrate, and hanging jig and method for mesh-type electrode substrate
KR20110133191A (ko) 도금 장치
JP2000311881A (ja) ウェットエッチング処理装置
JP2572504B2 (ja) めっき用バレル
CN210474916U (zh) 一种微透镜清洗夹具及微透镜清洗装置
JP2011032515A (ja) ラックめっき方法およびラックめっき装置
WO2007066867A1 (en) Method of manufacturing heavy clad material (hcm) using anchor-treated cold-rolled copper foil
CN110144609A (zh) 一种多次沉锌的电镀加工方法
CN215403869U (zh) 玻璃加工一体架
CN1841866A (zh) 半导体用冷却器及半导体用冷却器层叠体
CN220189585U (zh) 一种用于硅片清洗及生产线的承载花篮
KR101000598B1 (ko) 박판유리 강화열처리장치에 사용되는 유리 적재 카세트용 랙장치
JPH10259500A (ja) 線材の電解脱スケール装置
CN213570700U (zh) 装料装置
KR102031047B1 (ko) 무전해 도금용 지그를 이용한 터미널 플레이트의 도금방법
US20240093379A1 (en) Metal machined component, component-mounted module equipped with same, and method for manufacturing same
JP2005179706A (ja) 無電解めっき用治具および無電解めっき方法
KR20190036340A (ko) 센서 하우징의 무전해 도금용 지그
JPH08195431A (ja) 基板保持具及び洗浄装置
RU2201478C2 (ru) Способ подготовки поверхности изделий из нержавеющей стали перед гальваническим никелированием

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Effective date: 20120621

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20120710

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A02 Decision of refusal

Effective date: 20130306

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02