JP2011089046A - インクジェットプリンター用分散染料インク及びそれを用いた染色方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を精製し、溶媒を改良し、インクジェットプリンターのヘッドを改良し、発色工程での加熱等の条件を改良して、昇華堅牢度、乾熱堅牢度が、昇華染料インクと比較して、より良好なインクジェットプリンター用分散染料インク及び該インクを用いた染色方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
1気圧換算で摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を、物理的に細かくする方法又は不純物を取り除く方法によって、染料粒子サイズを100ナノメートルから1ミクロンとし、該染料粒子サイズを小さくした分散染料と溶媒とを混合して、分散化させたインクジェットプリンター用分散染料インク及び該インクを用いた染色方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、インクジェットプリンターから噴射され、基布又は転写紙に対して印刷可能なインクジェットプリンター用分散染料インク及びそのインクを用いた染色方法に関するものである。本発明はダイレクトプリント方式にも利用可能であるが、主として転写紙を用いた染色を主眼に開発されたものである。
分散染料には比較的低い温度(110℃から180℃)で発色する種類があり、それらは昇華染料と呼ばれている。この昇華染料は、例えば特許文献1に記載されるように転写紙を使用した昇華転写染色に用いられている。この昇華転写染色では、昇華染料を使用したインクを用い、インクジェットプリンターで転写紙に図柄などをプリント(出力)する。その後、図柄をプリントした転写紙とメディア(主にポリエステル系の布帛)を合わせて圧力をかけながら、スチームを用いない乾熱(180℃から190℃)で発色させる。水を使用しない発色法なので水を汚染することがなく、環境に優しい染色法である。
しかし、インクジェットプリンターで使用する昇華染料インクは、昇華堅牢度、乾熱堅牢度などが、良くなく、一部の染色には不向きであった(乾熱堅牢度試験B法で3級以下、乾熱堅牢度試験C法では1級)。しかも、乾熱堅牢度が乾熱堅牢度試験C法で3−4級以上が要求される場合もあり、昇華堅牢度、乾熱堅牢度がより良好なインクジェットプリンター用分散染料インクが求められていた。
ところが、昇華染料以外の分散染料を使用したインクジェットプリンター用インクは存在しなかった。昇華染料以外の分散染料は、染料粒子サイズが500ナノメートルから1ミクロン程度であり、昇華染料の染料粒子サイズが100から200ナノメートルであるのと比較して大きすぎ、これが原因の1つとなってインクジェットプリンターのヘッドからインクが巧く噴出しないからであった。
詳しくは、従来のインクジェットプリンターにおけるヘッドのノズル口径は26ミクロンから30ミクロンであり、このヘッドを使用して、従来の溶媒を使用した分散染料インクを用いた場合、分散染料インクの染料粒子サイズが200ナノメートルを超えると目詰まりを起こすものであった。実験的には染料粒子サイズが200ナノメートルを超えた時点で噴射安定性が落ち、染料粒子サイズが400ナノメートルの分散染料インクでは20パーセントの染料粒子しかヘッドを通過しなかった。すなわち、80パーセントの染料粒子はヘッドに詰まってしまっていた。
本願発明は、上記課題を解決するため、摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を精製し、溶媒を改良し、インクジェットプリンターのヘッドを改良し、発色工程での加熱等の条件を改良して、昇華堅牢度、乾熱堅牢度が、昇華染料インクと比較して、より良好なインクジェットプリンター用分散染料インク及び該インクを用いた染色方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため第1の発明は、1気圧換算で摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を、物理的に細かくする方法又は不純物を取り除く方法によって、染料粒子サイズを100ナノメートルから1ミクロンとし、該染料粒子サイズを小さくした分散染料と溶媒とを混合して、分散化させたインクジェットプリンター用分散染料インクを提供する。
第2の発明は、第1の発明に、上記染料粒子サイズを小さくした分散染料に、グリコール類を使用して当該染料を可溶化して、溶媒と混合した点を付加したインクジェットプリンター用分散染料インクを提供する。
第3の発明は、第1又は第2の発明に、上記溶媒が、イソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとを含むものであって、その3者の合計質量が、容積比で上記インクジェットプリンター用分散染料インクの総質量の5%から35%であることを付加したインクジェトプリンター用分散染料インクを提供する。
第4の発明は、第1又は第2又は第3の発明に、上記染料粒子サイズを小さくした分散染料の比率が重量比で上記インクジェットプリンター用分散染料インクの総質量の7%から10%であることを付加したインクジェットプリンター用分散染料インクを提供する。
第5の発明は、ノズル口径の大きさが30ミクロンを超え50ミクロンまでの非加熱型ヘッドを有するインクジェットプリンターを利用して、第1乃至第4の発明のうちいずれか1つに係るインクジェットプリンター用分散染料インクを基布又は転写紙に対して出力後、発色工程へと移行することを特徴とする染色方法を提供する。
第6の発明は、第5の発明に、上記非加熱型ヘッドが、クリーニング装置としてのエアータンクを内蔵し、該エアータンクのエアーの圧力で強制的に該ヘッドのクリーニングを行うものであることを付加した染色方法を提供する。
第7の発明は、第5又は第6の発明に、上記発色工程が、摂氏200度以上240度以下の温度で、180秒以上240秒以下の時間で、加圧するものであることを付加した染色方法を提供する。
第1の発明は、1気圧換算で摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料の染料粒子サイズを小さくした分散染料を用いることにより、従来の昇華染料とは異なり乾熱堅牢度の良いインクジェットプリンター用分散染料インクとなった。
第2の発明の効果ではあるが、染料粒子サイズを小さくした分散染料に、グリコール類を使用して当該染料を可溶化して、溶媒と混合したため、該分散染料が固まることを防げ、染料粒子の沈殿を防ぐことができた。このことによりインクジェットプリンターでの利用がより可能になった。
第3の発明の効果ではあるが、溶媒が、表面張力と動体粘度を調整するのではなく、溶液(水)にイソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)などのアルコール類を適量混入したものとすることにより、水を分断し、水切れを良くして、チューブ内の移動、ダンパーの吸い込み、ダンパー内のフィルターの抜け、又、ヘッドからの吐出などが容易になり、インクジェットプリンターでの利用をより可能とした。
第4の発明の効果ではあるが、染料粒子サイズを小さくした分散染料の比率が重量比でインクジェットプリンター用分散染料インクの総質量の7%から10%であるものとしたためインクジェットプリンター用分散染料インクとしての適正を高めることができた。
第5の発明は、ノズル口径の大きさが30ミクロンを超え50ミクロンまでの非加熱型ヘッドを有するインクジェットプリンターを利用して、第1乃至第4の発明のうちいずれか1つに係るインクジェットプリンター用分散染料インクを基布又は転写紙に対して出力後、発色工程へと移行するようにしたので、本願発明に係る分散染料インク及びインクジェットプリンターを利用した染色方法であっても、ヘッドの目詰まりをなくすことができるものとなった。
第6の発明の効果ではあるが、非加熱型ヘッドが、クリーニング装置としてのエアータンクを内蔵し、該エアータンクのエアーの圧力で強制的に該ヘッドのクリーニングを行うこととしたので、より確実にヘッドの目詰まりを防止することができるものとなった。
第7の発明の効果ではあるが、発色工程が、摂氏200度以上240度以下の温度で、180秒以上240秒以下の時間で、加圧するものとしたので、美しい発色を確保することが可能となった。
以下、実施例と共に本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、インクジェットプリンターから噴射され、基布又は転写紙に対して印刷可能なインクジェットプリンター用分散染料インク及びそのインクを用いた染色方法に関するものである。本発明はダイレクトプリント方式にも利用可能であるが、実施例では、転写紙を用いた染色法である。
本発明は、インクジェットプリンターから噴射され、基布又は転写紙に対して印刷可能なインクジェットプリンター用分散染料インク及びそのインクを用いた染色方法に関するものである。本発明はダイレクトプリント方式にも利用可能であるが、実施例では、転写紙を用いた染色法である。
昇華染料は、通常1気圧換算で摂氏180度から190度で発色するが、実施例でのインクジェットプリンター用分散染料インク(以下実施例でのインクと表記する)は、1気圧換算で摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を用いる。この種の分散染料は染料粒子サイズが大きいため、この分散染料の染料粒子サイズを100ナノメートルから1ミクロンとする(この分散染料を以下小さくした分散染料と称する)。分散染料の染料粒子サイズは、好ましくは300から500ナノメートルである。染料粒子サイズを100ナノメートル以下にすると堅牢度が悪くなる。染料粒子サイズが小さいと小さな力(時間、温度、圧力)で再昇華が始まる。又1ミクロン以上ではインクジェットプリンターのヘッドの目詰まりが発生しやすくなる。
この小さくした分散染料を作成する方法として、物理的に細かくする方法又は不純物を取り除く方法がある。物理的に細かくする方法とは、上記分散染料を、破砕や練るなどして染料粒子サイズを小さくすることであり、不純物を取り除く方法とは、上記分散染料に結合している塩基などの不純物をフィルターや化学処理などよって取り除くことで染料粒子サイズを小さくすることである。
この小さくした分散染料に、グリコール類を使用して当該染料を可溶化する。分散染料はもともと溶媒の主成分である水に溶けないものであるからである。グリコール類とは、エチレングリコール類であり、エチレングリコールは多価アルコール類である。エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコールなどがエチレングリコール類に該当する。
グリコール類と染料粒子との量の関係(重量比)は、チオジエチレングリコールの場合は、チオジエチレングリコール(I/O値1.83)1に対して当該小さくした染料粒子0.25程を溶解する。ジエチレングリコールの場合は、ジエチレングリコール(I/O値2.75)1に対して当該小さくした染料粒子0.2程を溶解する。エチレングリコールの場合は、エチレングリコール(I/O値5)1に対して当該小さくした染料粒子0.1程を溶解する。尚、グリコール類のI/O値が低ければ低いほど溶解性は高くなる。ここで、グリコール類を使用するとは、混合攪拌することである。
次に、上記可溶化した分散染料を溶媒と混合する。実施例での溶媒は、イソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとを含むものであって、その3者の合計質量が、容積比で実施例でのインクの総質量の5%から35%のものである。実験の結果、上記イソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとの合計質量が、総質量の5%未満であると、連続して噴射することができなくなり、ヘッドなどの目詰まりが発生した。又、イソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとの合計質量が、総質量の35%を超すと乾燥によるヘッドの目詰まりが発生した。
上記溶媒におけるイソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとの含有量の容積比の最適例を実験で求めると、小さくした分散染料自体が7%から10%に対し、イソプロピルアルコールが2%から3%、ノルマルプロピルアルコールが6%、グリセリンが2%から3%であり、残りの部分は蒸留水であった。
実施例でのインクでは、小さくした分散染料の比率が実施例でのインクに対して重量比で7%から10%であることが必要である。7%以下であると小さくした分散染料が少なすぎて色が薄くなる。濃くするためにヘッドより多量に吹くといろいろと弊害が出る。10%以上であると小さくした分散染料が多すぎて薄色の調整ができなくなる。以上のようにして実施例でのインクを作成する。
以上のようにして作成した実施例でのインクを、本発明ではノズル口径の大きさが30ミクロンを超え50ミクロンまでの非加熱型ヘッドを有するインクジェットプリンターで利用するのである。ノズル口径の大きさが30ミクロン以下であると目詰まりを起こし、50ミクロンを超えるとプリント時の吐出が粗くなり、吐出画像解像度が低くなる。尚、実施例では50ミクロンのノズル口径を有する非加熱型ヘッドが最適であった。
実施例ではノズル口径39ミクロンの非加熱型ヘッドのインクジェットプリンターで実施した。ノズル口径39ミクロンの非加熱型ヘッドの噴出孔面積は,従来最も多いノズル口径である26ミクロンのヘッドの2.25倍、大きめのノズル口径である30ミクロンのヘッドの1.69倍となる。
実施例での非加熱型ヘッドは、クリーニング装置としてのエアータンクを内蔵し、該エアータンクのエアーの圧力で強制的に該ヘッドの噴出孔よりエアーを噴出させてクリーニングを行うものである。このような機構とすることにより、従来より強力なクリーニング装置となった。すなわち従来のヘッドのクリーニング装置は、小型のモーターを利用し、使用インクをヘッドの噴出孔より吸引することでヘッドのクリーングを行うものであるが、実施例でのクリーニング装置は、エアーの圧力で強制的にヘッドのクリーニングを行うという点で強力なクリーニング装置となったのである。
実施例でのインクを実施例でのインクジェットプリンターに入れ、コンピュータ制御で転写紙に色や柄をプリント(出力)する。発色工程では、プリントされた転写紙と基布(通常ポリエステル系生地)を重ねて乾熱(スチームを利用しない方式)で、高温、強圧、長時間で乾熱圧着して発色させる。これにより染料粒子に充分な拡散力を与えることができ、鮮明に染色することが可能となった。具体的には、温度200℃から240℃(好ましくは220℃)、時間180秒から240秒、圧力300g/平方センチメートル以上の乾熱で発色させる。
発色工程での上記乾熱圧着の温度は220℃を標準として基布がたえられれば240℃にて圧着する。基布の風合いが損なわれるようなら210℃にて時間を240秒とする。240℃以上とすると基布に影響が出る。基布として用いられるポリエステルの溶解温度は260℃から265℃であるためである。上記乾熱圧着の時間は、180秒以下だと染料粒子に充分な拡散力を与えられず、発色が悪く、色むらがおき、色が濃くならない。240秒以上だと拡散力が強すぎ、染料粒子が飛散してしまい、色や柄が全体にボケてしまう。
以上の実施例は、転写紙を用いた染色方法であったが、ダイレクトプリントすなわち基布に対しインクジェットプリンターを用いてプリントし、その後乾熱圧着して発色させる染色方法であっても、乾熱圧着の時間や温度は同じ条件で染色できる。尚、ダイレクトプリントの場合の乾熱圧着に関しては、転写紙を用いる場合と比較して圧力をあまりかけなくても良い。
Claims (7)
- 1気圧換算で摂氏200度から240度の高温で発色する分散染料を、物理的に細かくする方法又は不純物を取り除く方法によって、染料粒子サイズを100ナノメートルから1ミクロンとし、該染料粒子サイズを小さくした分散染料と溶媒とを混合して、分散化させたインクジェットプリンター用分散染料インク。
- 上記染料粒子サイズを小さくした分散染料に、グリコール類を使用して当該染料を可溶化して、溶媒と混合したことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンター用分散染料インク。
- 上記溶媒が、イソプロピルアルコールとノルマルプロピルアルコールとグリセリンとを含むものであって、その3者の合計質量が、容積比で上記インクジェットプリンター用分散染料インクの総質量の5%から35%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェトプリンター用分散染料インク。
- 上記染料粒子サイズを小さくした分散染料の比率が重量比で上記インクジェットプリンター用分散染料インクの総質量の7%から10%であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載のインクジェットプリンター用分散染料インク。
- ノズル口径の大きさが30ミクロンを超え50ミクロンまでの非加熱型ヘッドを有するインクジェットプリンターを利用して、
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載のインクジェットプリンター用分散染料インクを基布又は転写紙に対して出力後、
発色工程へと移行することを特徴とする染色方法。
- 上記非加熱型ヘッドが、クリーニング装置としてのエアータンクを内蔵し、該エアータンクのエアーの圧力で強制的に該ヘッドのクリーニングを行うものである請求項5に記載の染色方法。
- 上記発色工程が、摂氏200度以上240度以下の温度で、180秒以上240秒以下の時間で、加圧するものである請求項5又は6に記載の染色方法。
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JP2009244151A JP2011089046A (ja) | 2009-10-23 | 2009-10-23 | インクジェットプリンター用分散染料インク及びそれを用いた染色方法 |
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CN103897491A (zh) * | 2014-03-13 | 2014-07-02 | 深圳市墨库图文技术有限公司 | 一种高温直喷分散墨水及其制备方法和应用 |
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2009
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