JP2011088830A - pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法および口腔用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
優れたpH緩衝作用を有し、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制することが可能な、新たな成分の製造方法、および、そのような成分を含むことにより、う蝕の発症を予防することが可能な口腔用組成物を提供する。
【解決手段】
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、得られた抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整した後、上清を回収することを含んでなる、pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法、および得られたセリシンを含んでなる口腔用組成物。
【選択図】 図1

Description

本発明は、pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法、および、かかる方法により得られたセリシンを含んでなる口腔用組成物に関する。
口腔内には、通常、絶えず唾液が分泌されている。唾液は、潤滑作用をはじめ、抗菌作用、粘膜保護作用、pH緩衝作用、歯の再石灰化作用、消化作用、自浄作用など、健康を維持するために欠かせない様々な機能を有している。しかしながら、唾液の分泌量は、唾液腺の障害や、各種薬剤の副作用、口呼吸、加齢、日常生活のストレスなどが原因で減少することが知られている。唾液の分泌量が減少し、乾燥した状態が長期間持続すると、口腔乾燥症(ドライマウス)が引き起こされる。
口腔乾燥症に罹患すると、単に口腔内乾燥感を覚えるだけでなく、疼痛、舌痛、味覚異常、口腔粘膜の炎症、びらん、潰瘍形成、舌や口角の亀裂などを発症し、咀嚼や会話、呼吸が困難になるなど、日常生活に重大な支障を来すことがある。また、唾液の抗菌作用の低下や、pH緩衝作用の低下、乾燥による口腔内の水分量の低下により、口腔微生物の増殖を容易にし、う蝕、歯周病、口臭などを発症またはその症状を悪化させたり、様々な感染症の発症リスクを高めたりする。このうち、う蝕は、永久歯を持つ日本人の約8割もが何らかのう歯を持つとされる、国民病の一つとも言える疾患であり、その発症予防に関する国民の関心は高い。
う蝕は、ストレプトコッカス・ミュータンスなどのう蝕原因菌が、飲食物に含まれるう蝕性(発酵性)糖質を代謝することにより酸を産生し、この酸が歯牙表面のエナメル質を脱灰することにより発症するとされている。エナメル質の主成分はヒドロキシアパタイトであり、う蝕原因菌の産生する酸によって分解し、リン酸イオンやカルシウムイオンを溶出する(脱灰)。唾液は、この脱灰部を、唾液中のリン酸イオンやカルシウムイオンにより再び結晶化(再石灰化)し、元の状態に戻す機能を有している。口腔内では、飲食の度に脱灰と再石灰化が繰り返し行われており、通常は平衡状態にあるが、唾液分泌機能の低下により乾燥した口腔内では、このバランスが崩れて脱灰が進みやすい。
そこで、口腔内の乾燥を予防または改善するため、人工唾液や口腔保湿剤をはじめ様々な口腔用組成物の開発が行われている。例えば、人工唾液は、ヒトの天然唾液と類似した成分から構成されており、主成分は無機電解質である。これに、pH調整・緩衝剤、増粘剤、矯味剤、防腐剤などを配合し、pH、比重、粘度などの性状を天然唾液に近付けている。天然唾液の有する機能を全て備えた人工唾液は存在しないが、目的に応じて、特定の機能を強化した口腔用組成物が多数提案されている。
例えば、特許文献1にはヒアルロン酸を保湿成分として含んでなる人工唾液が、特許文献2にはセリシンを保湿成分として含んでなる口腔ケア用組成物が開示されている。これらは、口腔内の乾燥を予防または改善するという点で一応の効果を発揮する。しかしながら、う蝕の発症を積極的に予防する効果は認められない。
う蝕予防に関連する唾液の機能のうち、特に重要視されているのがpH緩衝作用である。前記の通り、う蝕は、歯牙表面のエナメル質の脱灰により生じる。そして、脱灰は、口腔内のpHが5.5以下になることで起こりやすくなる。したがって、う蝕の発症を予防するには、口腔内のpH低下を抑制することが重要である。唾液は、特有のpH緩衝作用により口腔内のpHを中性付近に維持して、う蝕の発症を予防している。しかしながら、前記特許文献1および2に記載の組成物はpH緩衝効果が十分でないため、唾液機能を補助する組成物として用いた場合、飲食などによる口腔内のpH変動が激しく(例えば、清涼飲料水など一般飲料のpHは4.5以下のものが多く、これを飲用した後の口腔内のpHは著しく酸性になる)、加えてう蝕原因菌の産生する酸により口腔内のpHは5.5以下にまで低下して、エナメル質が脱灰を受けやすくなり、う蝕が発症しやすくなるのである。
ここで、唾液のpH緩衝作用について補足すると、歯周疾患の原因となる歯石の沈着は、口腔内のpHがアルカリ性側に傾くことで加速されると言われており、この点においても口腔内のpHを中性付近に維持することが重要といえる。
口腔用組成物には、製剤のpHを適切な範囲に調整するとともに、pH変動を抑制して製剤品質を安定させるため、pH緩衝剤(一般には、弱酸とその塩との組み合わせからなる)が配合されることが多い。しかしながら、その量は微量であって、口腔内のpH変動を抑制するものではない。口腔内のpH変動を抑制するため、口腔用組成物にpH緩衝剤を大量に配合すると、味に影響を及ぼしたり、糖尿病などで塩分摂取制限のある人には適用できなかったりするという問題がある。
そこで、一般のpH緩衝剤によることなく、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制し、もって、う蝕の発症を予防しようとする口腔用組成物の開発が行われている。例えば、特許文献3には少なくとも1単位がアルギニンであるオリゴペプチドを含んでなるむし歯予防組成物が、特許文献4にはイチョウなどの植物の有機溶媒抽出物を含んでなる口腔用組成物が、特許文献5にはキチン類・キトサン類を含んでなる人工唾液組成物が、特許文献6にはヒスチジンを含んでなる口腔用組成物が、特許文献7にはサンゴ粉末を含んでなる歯磨き用組成物が、特許文献8には塩基性ペプチドを含んでなる口腔用組成物が開示されている。しかしながら、口腔内のpH変動抑制効果は十分とは言えないものであった。また、成分によっては水溶性が低かったり、あるいは水に不溶であったりして、製剤安定性が低下したり、使用形態が限定されたりするという問題があった。
国際公開第2000/56344号パンフレット 特開2009−137860号公報 特公昭62−59093号公報 特公昭62−34005号公報 特公平6−84309号公報 特開平8−301742号公報 特開平10−45548号公報 特開2002−255773号公報
本発明は、優れたpH緩衝作用を有し、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制することが可能な、新たな成分の製造方法を提供することを目的とする。本発明はまた、そのような成分を含むことにより、う蝕の発症を予防することが可能な口腔用組成物の提供もその目的とする。
本発明者らは、繭糸から加水分解させて抽出したセリシン(以下、単に「抽出セリシン」または「セリシン」という場合がある)に、口腔内の乾燥を予防または改善する効果のあることを見出している(前記特許文献2)。本発明者らはさらに研究を進めた結果、抽出セリシンには解離したカルボキシル基やアミノ基に基づくpH緩衝作用が備わっていること、その効果は抽出セリシンから選択的に分画した特定のセリシン(以下、「分画セリシン」という場合がある)に顕著に認められることを見出した。そして、かかる特定の分画セリシンを口腔用組成物に配合することにより、これを適用した場合に、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制することを見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、
繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
得られた抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整した後、
上清を回収する
ことを含んでなる、pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法である。
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記方法は、水と、アルカリまたは酵素を用いて、繭糸からセリシンを抽出する。
本発明の別態様によれば、前記方法により得られたセリシンを含んでなる、口腔用組成物が提供される。
本発明の一つの好ましい態様によれば、前記口腔用組成物は、う蝕の発症を予防する効果を有する。
本発明によれば、優れたpH緩衝作用を有し、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制することが可能なセリシンを製造することができる。かかる特定のセリシンを口腔用組成物に配合することにより、唾液分泌機能の低下に対し、唾液機能を補助することが可能な口腔用組成物を提供することができる。具体的には、本発明による組成物を口腔内に適用することにより、口腔内の乾燥を予防または改善するとともに、口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制することができる。したがって、本発明による組成物は、口腔内の乾燥に伴う各種疾患の発症を予防または改善するのに有用であり、特には、乾燥した口腔内で発症リスクが高いう蝕の発症を予防するのに非常に有用である。本発明による組成物は、においや味といった問題がなく、安全性に優れている。したがって、本発明による組成物は、唾液分泌機能の低下した者だけでなく、う蝕に罹患しやすい者にも副作用を伴うことなく安全に適用できる。
抽出セリシンのpH低下抑制効果を示すグラフである。 分画セリシンのpH低下抑制効果を示すグラフである。 抽出セリシンのpH上昇抑制効果を示すグラフである。 分画セリシンのpH上昇抑制効果を示すグラフである。 比較例および実施例の人工唾液組成物のpH低下抑制効果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明において、セリシンとは、繭糸に含まれる天然の絹タンパク質の一種であり、蚕が吐糸する際の潤滑剤や、糸と糸を結合する接着剤としての役割を持つと考えられているものである。セリシンについては、これまでに、保湿作用、抗酸化作用、大腸ガン予防効果、便秘解消効果など、種々の作用効果を有することが報告されている。本発明は、セリシンが有する保湿作用、および今般新たに見出したpH緩衝作用に着目したものである。
本発明によるセリシンの製造方法は、pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法であって、繭糸から抽出したセリシン(後述するように多様なセリシン分子を含む)に分画処理を施すことにより、特定のセリシンを選択的に調製するものである。
具体的には、例えば、次のようにして調製することができる。
はじめに、繭糸からセリシンを抽出する。
セリシンは、繭糸を含んでなる原料、例えば、家蚕や野蚕によって生産された繭や、生糸、およびそれらを用いて製造された絹織物などから、公知の方法により抽出して得ることができる。具体的には、例えば、前記原料を水で煮沸処理することによりセリシンを加水分解させて、水中に溶出させることができる。このとき、加水分解を促進して抽出効率を高めるため、アルカリや酵素を併用することが好ましく、コストおよび精製のしやすさの点で、アルカリを併用することがより好ましい。
このとき用いられるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。なかでも、食品添加物として使用できるという点で、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、劇物に指定されておらず安価であるという点で、炭酸ナトリウムがより好ましい。
また、酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、パパインなどのプロテアーゼを挙げることができる。
繭糸に含まれる天然のセリシンには、分子量が異なるいくつかの成分があることが知られている。例えば、特開2002−128691号公報によれば、分子量が約40万、約25万、約20万、約3万5千のセリシンが確認されている。前記の繭糸抽出液は、これらセリシンを混合した状態で含んでいる。また、セリシン分子が互いに水素結合し、見かけの分子量を増している場合もある。そして、アルカリまたは酵素を併用してセリシンを加水分解させて得た抽出液は、さらに多様な分子種を含む混合物である。
抽出液に含まれるセリシンの分子量は特に限定されないが、この段階で、抽出温度や時間、併用する剤の種類や濃度などの条件を制御し、重量平均分子量がおおよそ1,000〜70,000(後述するように、分画セリシンの好ましい重量平均分子量である)となるように調整しておくとよい。
次いで、抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整する。
周知の通り、加水分解されたセリシンは、pH4付近に等電点を有する。一般に、タンパク質(ポリペプチド)の水に対する溶解度は、等電点において最小となり、凝集して沈澱を生じる。これは、溶液中のタンパク質分子のプラス電荷とマイナス電荷がつりあうことにより、分子間の静電反発が最小となるためである。また、等電点より酸性側ではタンパク質分子のプラス電荷が多くなり、等電点よりアルカリ性側ではマイナス電荷が多くなる。
ここで、繭糸から水を用いて得た抽出液、あるいは、アルカリまたは酵素を併用して得た抽出液のpHは、セリシンの等電点よりもアルカリ性側にあり、抽出液に含まれるセリシン(前記の通り、多様なセリシン分子を含む)はマイナスに荷電している。かかる抽出液のpHを下げていくことにより、pH4.5あたりから沈澱を生じはじめ、pH4.0あたりで沈澱量が最大となる。さらにpHを下げると、沈澱が消失しはじめ、pHが2.5よりも低くなると沈澱が完全に消失する。
本発明においては、抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整することにより生じた沈澱を除去し、上清を回収する。さらに、回収した上清から、目的とするセリシン(分画セリシン)を得る。
ここで、「抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整する」とは、抽出液のpHを、2.5〜4.5の範囲にある所定の一点、例えばpH4.0に調整する、という意味であり、沈澱の除去は、その所定のpHで生じた沈澱を除去すれば足りる。すなわち、pH2.5〜4.5の範囲で生じ得る沈澱を全て除去するという意味ではない。もちろん、pH2.5〜4.5の範囲で生じ得る沈澱を全て除去しても構わない。
前記の上清から得られた分画セリシンは、分画前のセリシンと比較して、アルギニン、リジン、ヒスチジンといった塩基性アミノ酸を高い割合で含むことが判明した。かかるセリシンは、分画前のセリシンと比較して塩基性領域、具体的にはpH7〜8に電荷の平衡状態があると考えられ、これにより顕著に優れたpH緩衝効果を発揮すると考えられる。なお、これら作用メカニズムに関する説明は、一つの理論的考察であって、本発明を限定するものではない。
塩基性アミノ酸をより高い割合で含むセリシンを得るのに好ましいpHは、2.6〜4.3である。
pH調整に用いられる酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、塩酸などを挙げることができる。なかでも、食品添加物として使用できるという点で、クエン酸、リンゴ酸、乳酸が好ましく、安価であるという点で、クエン酸がより好ましい。
次いで、濾過、遠心分離などにより、抽出液から不溶物を除去し、上清を回収する。次いで、必要に応じて、中和処理や、透析、ゲル濾過クロマトグラフィーなどによる脱塩処理、その他公知の処理を施して精製することにより、抽出セリシンから選択的に分画した特定のセリシンを高純度で含む水溶液を得ることができる。さらに、加熱、減圧、逆浸透膜などにより濃縮してもよいし、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥し、粉体などの固体形態としてもよい。本発明においては、これら分画セリシンの水溶液または固体を、口腔用組成物にそのまま配合することができるが、必要に応じて、水や緩衝液、生理食塩水などに希釈、溶解または懸濁した後、口腔用組成物に配合してもよい。
分画セリシンの重量平均分子量は特に限定されないが、1,000〜70,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、口腔内の乾燥を予防または改善する効果、および口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制する効果が十分に得られない虞がある。重量平均分子量が70,000を超えると、溶解度が低下し、口腔用組成物の製剤安定性が低下したり、使用形態が限定されたりする虞がある。
かくして得られた分画セリシンは、分画前のセリシンと同様、易水溶性であり、水溶液として安定な性状を維持することができる。このため、口腔用組成物に通常添加され得る成分との混和性に優れている。また、セリシンは、無毒、無味、無臭であって、安全性にも優れている。このため、においや味といった官能特性への影響や、副作用の心配がない。
本発明による口腔用組成物は、前記の方法により得られた特定の分画セリシンを含んでなるものである。ここで、「分画セリシンを含んでなる」とは、本発明による口腔用組成物が、有効成分である分画セリシンを、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)で必然的に含むことを意味し、その限りにおいて、必要により他の成分を含んでいても良いことを意味する。
口腔用組成物における分画セリシンの含有量は、口腔用組成物の形態や他の成分の種類などによって異なるが、人工唾液や口腔保湿剤など一般的な形態の口腔用組成物の場合には、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましい。含有量が0.01重量%未満であると、口腔内の乾燥を予防または改善する効果、および口腔内のpH変動、特にはpH低下を抑制する効果が十分に得られない虞がある。含有量が10重量%を超えても作用効果のさらなる向上は得られ難く実用的でないばかりか、口腔内にべたつき感を生じ、使用感が低下する虞がある。
口腔用組成物には、本発明における所望の効果を損なわない範囲内で、その形態に応じた公知の成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、水、保湿剤、増粘剤、薬理活性剤、防腐剤、矯味剤、香料、pH調整・緩衝剤、無機塩などを挙げることができる。これらは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、口腔用組成物とは、口腔内に導入され、歯に接触し得るすべての組成物を意味する。したがって、口腔用組成物は、医薬品であっても、医薬部外品であっても、さらには化粧品であっても、食品であってもよい。具体的には、例えば、人工唾液、口腔保湿剤、含嗽剤、歯みがき類、トローチ、キャンディー、ガムなどを挙げることができる。
口腔用組成物の形態や、口腔への適用方法は特に限定されない。例えば、水溶液として調製し、噴霧器、アトマイザーで口腔に霧状あるいは泡状に塗布してもよいし、ジェル状物やペースト状物などとして調製し、口腔に塗布してもよい。これらは、粉剤、粒剤、錠剤、濃縮液剤などとして調製しておき、使用時に水に溶かしたり、懸濁させたりして使用する用時調製型の組成物としてもよい。
さらに、粉剤、粒剤、錠剤(舌下錠、トローチ、キャンディーなど)やガムなどに成型して口腔に含ませてもよい。
以下、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.セリシンの調製
(1)セリシンA(抽出セリシン)
家蚕の切り繭50gを水洗した後、1kgの水に浸漬し、溶液のpHが9.5になるように炭酸ナトリウムを添加した。この条件で繭を2時間煮沸し、セリシンを加水分解して抽出した。
得られた抽出液にクエン酸を添加してpH7.0に調整した後、遠心分離(6,000rpm、10分、20℃)を行い、上清を回収した。次いで、平均孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、凝集物を除去した後、脱塩カラムより脱塩し、セリシン(セリシンA)の水溶液を得た。この水溶液を凍結乾燥して、セリシンAの粉末49.6gを得た。
得られたセリシンAの分子量分布は5,000〜70,000、重量平均分子量は約30,000であった。
(2)セリシンB(分画セリシン)
家蚕の切り繭50gを水洗した後、1kgの水に浸漬し、溶液のpHが9.5になるように炭酸ナトリウムを添加した。この条件で繭を2時間煮沸し、セリシンを加水分解して抽出した。
得られた抽出液にクエン酸を添加してpH3.5に調整した後、遠心分離(6,000rpm、10分、20℃)を行い、上清を回収した。次いで、平均孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、凝集物を除去した。次いで、濾液に炭酸ナトリウムを添加してpH5.5に調整した。
次いで、濾液を分画分子量5,000の透析用セルロースチューブ(セロチューブ、ナカライテスク株式会社)に入れ、水に対して一晩透析し、セリシン(セリシンB)の水溶液を得た。この水溶液を凍結乾燥して、セリシンBの粉末48.8gを得た。
得られたセリシンBの分子量分布は5,000〜70,000、重量平均分子量は約22,000であった。
2.評価試験
(1)pH低下抑制効果
前記で得られたセリシンAを、0.1重量%、0.5重量%、1.0重量%の濃度で含む生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム)、および前記で得られたセリシンBを、0.1重量%、0.5重量%の濃度で含む生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム)をそれぞれ100mL調製した。各生理食塩水に、0.1N塩酸を滴下し、塩酸の消費量に対するpH変化をモニターした。また、pHを6.5から5.5に低下させるのに必要な0.1N塩酸の量を算出した。
比較対照として、セリシンを含まない生理食塩水についても、同様にpH変化をモニターした。
結果は、図1(セリシンA)、図2(セリシンB)および表1に示される通りであった。
セリシンはpH低下抑制作用を有しており、その効果は濃度依存的であることが確認された。また、その効果は、セリシンAよりもセリシンBの方が優れていることが確認された。
(2)pH上昇抑制効果
0.1N塩酸にかえて、0.05M水酸化ナトリウムを滴下した以外は、前記(1)と同様にして、水酸化ナトリウムの消費量に対するpH変化をモニターした。
結果は、図3(セリシンA)および図4(セリシンB)に示される通りであった。
セリシンはpH上昇抑制作用を有しており、その効果は濃度依存的であることが確認された。また、その効果は、セリシンAよりもセリシンBの方が優れていることが確認された。
(3)人工唾液組成物によるpH低下抑制効果
前記で得られたセリシンBを用いて、表2に示す組成のジェル状人工唾液組成物を調製した。表2中のクエン酸およびクエン酸ナトリウムの適量とは、組成物のpHを6.5に調整するために必要な量を示し、水の残量とは、合計を100重量%とするために必要な量を示す。これらを用いて、pH低下抑制効果を評価した。
すなわち、比較例および実施例の組成物を、それぞれ10重量%の濃度で含む生理食塩水30mLを調製した。各生理食塩水に、0.03N塩酸を滴下し、塩酸の消費量に対するpH変化をモニターした。
また、ヒトの天然唾液を含む生理食塩水についても、同様にpH変化をモニターした。ヒトの天然唾液は、健常成人2名より、食後2時間以上、かつ、口腔清掃(歯みがき)後1時間以上経過した後に採取した。採取した唾液を遠心分離(3,000rpm、10分、20℃)し、上清を試験に用いた。
結果は、図5に示される通りであった。
天然唾液のpH低下抑制効果には個人差がみられたが、一般的に知られているpH低下抑制効果の範囲内であった。セリシンBを配合した本発明による人工唾液組成物は、pH低下抑制作用を有しており、その効果は天然唾液と同等以上であることが確認された。
(4)人工唾液組成物による口腔内のpH中和効果
前記で得られた実施例の人工唾液組成物を用いて、口腔内のpH中和効果を評価した。
健常成人2名の口腔内のpHを測定して、pHが平常値(平常時(飲食しないとき)の値で、中性付近にある)であることを確認した後、清涼飲料水50mLを飲用し、飲用直後、15分経過後および30分経過後の口腔内のpHを測定した。
次いで、口腔内のpHが平常値に戻ったことを確認した後、清涼飲料水50mLを飲用し、引き続き、実施例の組成物約2gを口腔内にまんべんなく塗布し、塗布直後、15分経過後および30分経過後の口腔内のpHを測定した。
さらに、口腔内のpHが平常値に戻ったことを確認した後、実施例の組成物約2gを口腔内にまんべんなく塗布し、引き続き、清涼飲料水50mLを飲用し、飲用直後、15分経過後および30分経過後の口腔内のpHを測定した。
清涼飲料水としては、その代表格である「ポカリスエット(登録商標)」(大塚製薬株式会社、pH3.6)を用いた。また、pH測定には、pH試験紙を用いた。測定部位は、唾液の影響を受けにくいと考えられる内頬と歯茎の間とした。
結果は、表3に示される通りであった。
平常時の口腔内のpHは中性であったが、清涼飲料水を飲用することで口腔内のpHは酸性になった。しかしながら、清涼飲料水を飲用後に実施例の組成物を塗布することで、口腔内のpHはほぼ中性になった。また、実施例の組成物を塗布後に清涼飲料水を飲用しても、口腔内のpHは中性のままであった。このことから、セリシンBを配合した本発明による人工唾液組成物は、優れたpH中和作用を有することが認められた。
(5)人工唾液組成物による口腔内の乾燥を改善する効果
前記で得られた比較例及び実施例の人工唾液組成物を用いて使用試験を行ない、口腔内の乾燥を改善する効果を評価した。
口腔内乾燥を自覚する成人(評価者)10名に、1日2回、約1gを口腔内に塗り広げるという方法で1週間使用してもらい、その後、口腔内のうるおい、口腔内の滑らかさ、疼痛、口臭について、下記の3段階で自己評価してもらった。
+:大いに改善された、±:改善された、−:変化なしまたは悪化した
結果は、表4および表5に示される通りであった。
実施例の組成物は比較例の組成物と比較して、有意に優れた効果が認められた。このことから、セリシンBを配合した本発明による人工唾液組成物は、唾液機能を補助することが可能であることが示唆された。また、口腔内への刺激や異常は認められず、安全性が高いことも確認された。
3.口腔用組成物の処方例
本発明による口腔用組成物の他の処方例を示す。
処方例1:ジェル状人工唾液組成物
(1)セリシンB 2(重量%)
(2)ムクロジエキス 0.02
(3)水 残量
(4)グリセリン 10
(5)プロピレングリコール 5
(6)カルボキシメチルセルロースナトリウム 4
(7)塩化カリウム 0.12
(8)塩化ナトリウム 0.084
(9)塩化マグネシウム 0.005
(10)クエン酸 0.05
(11)クエン酸ナトリウム 0.09
(12)亜硫酸ナトリウム 0.05
(13)安息香酸ナトリウム 0.2
(14)パラオキシ安息香酸エチル 0.05
得られた組成物のpHは6.5であった。
処方例2:液状人工唾液組成物
(1)セリシンB 4(重量%)
(2)ムクロジエキス 0.02
(3)水 残量
(4)グリセリン 10
(5)塩化カリウム 0.12
(6)塩化ナトリウム 0.084
(7)塩化マグネシウム 0.005
(8)塩化カルシウム 0.015
(9)クエン酸 0.048
(10)クエン酸ナトリウム 0.02
(11)リン酸水素二カリウム 0.035
(12)亜硫酸ナトリウム 0.05
(13)安息香酸ナトリウム 0.2
(14)パラオキシ安息香酸エチル 0.05
得られた組成物のpHは6.5であった。

Claims (4)

  1. 繭糸から水を用いてセリシンを抽出し、
    得られた抽出液のpHを2.5〜4.5の範囲に調整した後、
    上清を回収する
    ことを含んでなる、pH緩衝作用に優れたセリシンの製造方法。
  2. 水と、アルカリまたは酵素を用いて、繭糸からセリシンを抽出する、請求項1に記載の方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法により得られたセリシンを含んでなる、口腔用組成物。
  4. う蝕の発症を予防する効果を有する、請求項3に記載の口腔用組成物。
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