JP2011088458A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カーカス10とサイドウォールゴム8との間に配置される内部導電層14、該内部導電層14と接しブレーカー9両端部の下側領域に配置される導電性ゴム4、該導電性ゴム4と接触領域を有してブレーカー9部上側を被覆するように配置される被覆ゴム5、該被覆ゴム5と接触し一部がトレッドの表面に露出するようにトレッド部に埋設される通電ゴム6、内部導電層14と接しビード部のリムフランジに接する領域に配置されるビード部ゴムを備え、前記内部導電層14が天然ゴムを30〜90質量%、エポキシ化天然ゴムを70〜10質量%含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを10〜50質量部、シリカを10〜50質量部含有する内部導電層用ゴム組成物を用いて作製されている。
【選択図】図1
Description
本発明の空気入りタイヤの構造は、例えば、図1のタイヤ断面の右上半分に例示されるものである。タイヤ1は、トレッド部を構成するトレッドゴム7と、その両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部を構成するサイドウォールゴム8と、各サイドウォール部の内方端に位置するクリンチ部を構成するクリンチゴム3及びリム上部に位置するチェーファー部を構成するチェーファーゴム2とを備える。またクリンチ部、チェーファー部間にはカーカス10が架け渡されるとともに、このカーカス10のタイヤ半径方向外側にブレーカー部を構成するブレーカーゴム9が配される。該カーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て、ビードコア13と、該ビードコア13の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス11との廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返され、折返し部によって係止される。ブレーカー部は、ブレーカーコードを配列した2枚以上のブレーカープライからなり、各ブレーカーコードがブレーカープライ間で交差するよう向きを違えて重置している。本発明の空気入りタイヤにおいては、トレッド部(トレッドゴム、ベーストレッド)とブレーカー部との間に、ブレーカー部の上側を被覆する被覆ゴム(アンダートレッド)5が設けられる。該被覆ゴム5と接触領域を有して、カーカスプライとブレーカー部の両端部及びサイドウォール部との間に導電性ゴム4が配置される。そして前記被覆ゴム5に接し一部が接地面に露出するようにトレッドゴム7中に通電ゴム6が配置される。また、前記導電性ゴム4と接触領域を有して、カーカス10とサイドウォールゴム8との間に、少なくとも導電性ゴム4からクリンチゴム3又はチェーファーゴム2に接する位置に亘る内部導電層14が配置される。空気入りタイヤ1では、通電ゴム6と被覆ゴム5と導電性ゴム4と内部導電層14とクリンチゴム3又はチェーファーゴム2とが電気的に接続する構造となっている。
タイヤを構成するトレッドゴム、ブレーカーゴム、サイドウォールゴムの体積固有抵抗は、いずれも1×108Ω・cm以上に設定される。従来、ゴム補強剤(充填剤)としてカーボンブラックが用いられていたが、これをシリカに置き換えることで転がり抵抗を軽減できる。更にシリカは石油由来の材料でないことから石油由来の材料であるカーボンブラックに比べ環境問題の観点からも好適に採用される。しかし、シリカを用いる場合、体積固有抵抗が大きくなる傾向にある。本発明ではシリカ配合を基本とすることでタイヤの転がり抵抗の軽減及びゴムの加工性等の基本特性を維持しつつ、前述の電気的に接続された構造によりゴム組成物の体積固有抵抗が1×108Ω・cm以上という高い電気抵抗の問題点を改善できる。
本発明における被覆ゴム5は、上記導電性ゴム4と上記通電ゴム6とに接し、ブレーカ部上部を被覆するように設けられる体積固有抵抗が1×108Ω・cm未満に設定されたゴムからなる。前記体積抵抗値が1×108Ω・cm未満であればタイヤの導電性の向上効果が所望の程度得られる。また、該体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、より好ましくは1×106Ω・cm以下に設定され、また、好ましくは1×103Ω・cm以上、より好ましくは1×104Ω・cm以上に設定される。
被覆ゴムにおいて、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20〜40質量部であることが好ましい。20質量部以上である場合、タイヤの転がり抵抗を低減でき、また、40質量部を超えると、転がり抵抗が悪化する傾向がある。
本発明における導電性ゴム4は、後述のカーカス10を構成するカーカスプライとブレーカー部のエッジ部分及びサイドウォール部との間に、内部導電層14と接触領域を有して設けられる体積固有抵抗が1×108Ω・cm未満に設定されたゴムからなる。前記体積固有値が1×108Ω・cm未満であれば、タイヤの導電性の向上効果が得られる。導電性ゴム4の体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下、より好ましくは1×106Ω・cm以下に設定され、また、好ましくは1×103Ω・cm以上、より好ましくは1×104Ω・cm以上に設定される。
本発明において、通電ゴムはトレッド部に埋設されその一部はタイヤ接地面に露出し、他の一部は被覆ゴムと連結(接触)しており、空気入りタイヤの走行時に発生した静電気を接地面に効果的に放出する。図1において通電ゴム6は、トレッド部の中央部に1箇所埋設された構造として示されているが、複数個の通電ゴムを埋設することもできる。そしてタイヤ幅方向の通電ゴムの幅は、例えば、0.2〜10mm、好ましくは0.9〜1.5mmである。0.2mm未満の場合は通電効果は少なく、一方、10mmを超えるとトレッド部における通電ゴムの接地領域が相対的に増加し、接地特性を損なうおそれがある。また、通電ゴムはタイヤ周方向に連続層として形成することが好ましいが、タイヤ周方向に断続的に形成することもできる。
本発明における内部導電層14は、導電性ゴム4と接触領域を有して、カーカス10とサイドウォールゴム8との間に、少なくとも導電性ゴム4からクリンチゴム3又はチェーファーゴム2に接する位置に亘って配置され、例えば、該内部導電層14の上端部で導電性ゴム4、下端部でクリンチゴム3又はチェーファーゴム2と電気的に接続する構造となっている。内部導電層14の体積固有抵抗は1×108Ω・cm未満に設定されている。前記体積固有値が1×108Ω・cm未満であればタイヤの導電性の向上効果が得られる。該内部導電層14の体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下、より好ましくは1×106Ω・cm以下に設定される。導電性成分を多量に配合されたゴム組成物を採用すると電気抵抗が小さくなるが、一方ではタイヤがリムに接する領域における電気化学反応が促進されリムが錆び易くなる。これを回避するためには、該導電性ゴムの体積固有抵抗は、好ましくは1×103Ω・cm以上、より好ましくは1×104Ω・cm以上に設定される。
前記内部導電層において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、引き裂き強さが低く、ゴムの強度が不足する場合がある。また、該カーボンブラックの含有量は、50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。50質量部を超えると、耐屈曲亀裂性能が劣る。
内部導電層において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であり、好ましくは20質量部以上である。10質量部未満では、引き裂き強さが低く、ゴムの強度が不足する場合がある。また、該シリカの含有量は50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。50質量部を超えると、耐屈曲亀裂性能が劣る。
本発明で、ビード部のリムフランジに接する領域に配置されるビード部ゴムはクリンチゴム、チェーファー及びゴムチェファーを含む概念である。タイヤが走行する際にビード部ゴムを介してリムから駆動力が伝達されるが、この際にリムとビード部ゴムとの摩擦で静電気が発生しやすい。ビード部ゴムは前記内部導電層と接触領域を有するので、静電気は該内部導電層を通って接地面に有効に放出される。図1においてクリンチゴム、チェーファー又はゴムチェファーは、前記内部導電層14と電気的に接続している。
本発明におけるトレッド部からサイドウォール部を経てビード部に至るカーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから構成される。該カーカスプライは、カーカスコードを平行に引き揃えてゴム中に埋設した構成である。上記カーカスコードを構成する繊維材料としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミドなどを例示することができ、これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、天然資源材料であることからレーヨンを用いることが好ましく、カーカスコードを構成する繊維材料に対してレーヨンを90質量%以上配合することが好ましい。
本発明の空気入りタイヤにおける内部導電層、被覆ゴム、導電性ゴム、通電ゴム、チェーファーゴム、クリンチゴム、及びトレッドゴム、ブレーカーゴム、サイドウォールゴムは、例えば以下のゴム組成物から構成される。
<材料>
NR(天然ゴム):TSR20
BR(ブタジエンゴム):宇部興産(株)製のBR150B
ENR25:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製の(エポキシ化率25モル%のエポキシ化天然ゴム)
ENR50:クンプーランガスリー社(Kumpulan Guthrie Berhad)(マレーシア)製の(エポキシ化率50モル%のエポキシ化天然ゴム)
SBR1502:住友化学工業(株)製のSBR1502
SBR1500:住友化学工業(株)製のSBR1500
カーボンブラックN220:三菱化学(株)製のダイアブラックI(N2SA:110m2/g)
カーボンブラックN330:三菱化学(株)製のダイアブラックHM(N2SA:80m2/g)
シリカ:デグッサ社製ウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
石油系レジン:(株)日本触媒製のSP1068レジン
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「つばき」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸コバルト:日鉱金属(株)製のCOST−S
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
不溶性硫黄:三新化学(株)のサンフェルEX
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
表1〜5に示す配合成分のうち硫黄及び加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて150℃で4分間混練した後、硫黄及び加硫促進剤を加えて95℃で2分間更に練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経て、内部導電層ゴム組成物A−1〜A−6、導電性ゴム組成物B、被覆ゴム組成物C(アンダートレッドゴム組成物)、通電ゴム組成物D、クリンチゴム組成物Eを調製した。
表6〜8に示す配合成分のうち硫黄及び加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄及び加硫促進剤を加えて95℃で2分間更に練り込み、従来法により押出し工程、カレンダー工程を経て、トレッドゴム組成物F、サイドウォールゴム組成物G、ブレーカーゴム組成物Hを調製した。
表1〜8のゴム組成物A−1〜Hを用いて厚さ2mm、15cm×15cmの試験片を作成し、ADVANTEST社製の電気抵抗測定R8340Aを用いて電圧500V、気温25℃、湿度50%の条件で測定した。その結果を表1に示す。値が大きいほどゴム組成物の体積固有抵抗は高い。
JIS−K6260の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムのデマッチャ屈曲亀裂成長試験方法」の試験方法に準じて、室温25℃の条件でサンプル(内部導電層ゴム組成物A−1〜A−6)に1mmの破断が生じるまでの回数を測定し、得られた回数を対数で表した。数値が大きいほど耐屈曲亀裂性能が良好である。なお、70%及び110%とは、もとのサンプルの長さに対する伸び率を表す。結果を表1に示す。
表1〜8のゴム配合で調整したゴム組成物を表9に示す組合せでそれぞれ用い、トレッドゴム、サイドウォールゴム、ブレーカーゴム、クリンチゴム、内部導電層、導電性ゴム、被覆ゴム及び通電ゴムに適用し、常法にて加硫成形し、図1に示す構造を有するサイズ195/65R15の空気入りタイヤを作製した。
<カーカスプライ>
コード角度:タイヤ周方向に90度
コード材料:ポリエステル 1670dtex/2
<ブレーカー>
コード角度:タイヤ周方向に24度×24度
コード材料:スチールコード(2+2×0.25)
また、被覆ゴムと導電性ゴムの接触はタイヤ周方向に帯状で5mmの幅、被覆ゴムと通電ゴムの接触は通電ゴムのタイヤ幅方向の全面、内部導電層と導電性ゴムの接触はタイヤ周方向に帯状で5mmの幅、内部導電層とクリンチゴムの接触はカーカス形状に沿って5mm以上の幅の構造のものを採用した。
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧2.0MPaを充填して、荷重4.7kNで鉄板にトレッド部を接地させ、印加電圧100Vにおいてタイヤリム部と鉄板との間の電気抵抗値を測定した。結果を表9に示す。
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧2.0MPaを充填して、STL社製の転がり抵抗試験機を用い、速度80km/h、荷重4.7kNで転がり抵抗を測定した。転がり抵抗の測定値を荷重で除した転がり抵抗係数(RRC)につき、各タイヤの転がり抵抗を下記式により比較例1を100として指数表示した。値が大きいほど転がり抵抗が小さく性能が良好である。結果を表9に示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1の転がり抵抗係数)/(各タイヤの転がり抵抗係数)×100
<耐クラック性能>
上記で作製した195/65R15空気入りタイヤを装着し、速度80km/h、荷重4.7kNで30000km走行させ、内部導電層のクラック成長量を測定し、耐クラック性能を評価した。なお、成長量が5mm以下の場合を○、5mmを超える場合を×とした。
2 チェーファーゴム
3 クリンチゴム
4 導電性ゴム
5 被覆ゴム
6 通電ゴム
7 トレッドゴム
8 サイドウォールゴム
9 ブレーカー
10 カーカス
11 ビードエーペックス
12 バンド
13 ビードコア
14 内部導電層
Claims (4)
- トレッド部と、サイドウォール部と、ビード部と、前記トレッド部から前記サイドウォール部を経て前記ビード部に至るカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側にブレーカー部とを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッド部、前記ブレーカー部及び前記サイドウォール部にそれぞれ形成されるトレッドゴム、ブレーカーゴム及びサイドウォールゴムの体積固有抵抗は、いずれも1×108Ω・cm以上であり、
前記空気入りタイヤは、前記カーカスと前記サイドウォールゴムとの間に配置される内部導電層、該内部導電層と接しブレーカー両端部の下側領域に配置される導電性ゴム、該導電性ゴムと接触領域を有してブレーカー部上側を被覆するように配置される被覆ゴム、該被覆ゴムと接触し一部がトレッドの表面に露出するようにトレッド部に埋設される通電ゴム、前記内部導電層と接しビード部のリムフランジに接する領域に配置されるビード部ゴムを備え、
前記内部導電層、前記導電性ゴム、前記被覆ゴム、前記通電ゴム及び前記ビード部ゴムの体積固有抵抗値は、いずれも1×108Ω・cm未満であり、
前記内部導電層は、天然ゴムを30〜90質量%、エポキシ化天然ゴムを70〜10質量%含むゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを10〜50質量部、シリカを10〜50質量部含有する内部導電層用ゴム組成物を用いて作製されている空気入りタイヤ。 - 前記内部導電層の厚みが0.2〜1.0mmである請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記ビード部ゴムがクリンチゴム又はチェーファーゴムである請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
- 前記通電ゴムがタイヤ周方向に連続して形成される請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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