JP4249792B2 - タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、導電性繊維材料をカーカスプライに用いることにより、タイヤの電気抵抗を低減した空気入りタイヤに関する。
従来、ウェットグリップ性能を維持し、かつ転がり抵抗を低減させる方法として、トレッド部を構成するゴム組成物にシリカを配合することが行なわれてきた。また、転がり抵抗をさらに低減させるために、たとえば、サイドウォール部を構成するゴム組成物にシリカを配合したタイヤ(特許文献1)が検討されている。
しかしながら、シリカを多量に配合した場合にはタイヤの電気抵抗が高くなるため、たとえば、車両の燃料補給時に静電気によるスパークが発生し、燃料に引火するという可能性もあり、使用時の安全性に欠けるという問題があるため、転がり抵抗の低減およびウェットグリップ性能の維持が実現されるとともに、静電気の発生を十分に防止したタイヤの提供が要求されている。
上記静電気の低減方法としては、たとえば、特許文献2に、トレッド部に電気抵抗の低いゴムを埋設する方法が開示されているが、トレッドにおける電気抵抗の課題を検討したものであり、上記のようにサイドウォール部やブレーカー部においてもシリカを配合したタイヤにおいて優れた転がり抵抗と十分に低減された電気抵抗とを付与できるものではなかった。
特開平10−36559号公報 特開平8−34204号公報
本発明は、ウェットグリップ性能を維持し優れた転がり抵抗を有するタイヤであって、電気抵抗を十分低減したタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、トレッド部、サイドウォール部、およびブレーカー部をそれぞれ構成するトレッドゴム、サイドウォールゴムおよびブレーカーゴムの体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以上で、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するクリンチゴムおよびチェーファーゴムの体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以下であり、
上記トレッド部から上記サイドウォール部を経てビード部に至るカーカスと、上記トレッド部と上記ブレーカー部との間に設けられた導電層とを有する空気入りタイヤであって、
上記導電層は、上記カーカスを構成するカーカスプライと上記ブレーカーゴムのエッジ部分と上記サイドウォール部との間に設けられる第1導電層と、該第1導電層と接し、上記トレッドゴムと上記カーカスの間の一部または全体に設けられる第2導電層と、該第2導電層からトレッド部表面にかけて連続するペンゴム層とからなり、
上記第1導電層、第2導電層およびペンゴム層は、その体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以下であり、
上記カーカスプライは、カーカスコードとゴム層とを備え、
前記カーカスコードは、0.5質量%〜20質量%の導電性繊維を含む導電性繊維材料で構成され、その体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であり、少なくとも上記クリンチ部、上記チェーファー部および上記第1導電層と接する構造である、空気入りタイヤに関する。
上記導電性繊維は、ポリピロールからなる繊維であることが好ましい。
本発明の空気入りタイヤは、導電性繊維を含む導電性繊維材料により構成される体積固有抵抗を制御したカーカスプライを用いることによりタイヤ全体の電気抵抗を低減できるものであって、トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー部、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するゴムを特定の体積固有抵抗を有するものとし、カーカスとブレーカー部のエッジ部分およびサイドウォールとの間に導電層を設け、さらに少なくともクリンチ部、チェーファー部および導電層と上記カーカスプライが接する構造とすることによって、タイヤの静電気をより効率よく低減することができ、ウェットグリップを維持し転がり抵抗を十分に低減させ、かつ使用時の安全性が向上させることができる。
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤの構造は、たとえば図1のタイヤ断面の右上半分に例示されるものである。タイヤ1は、トレッド部を構成するトレッドゴム7と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部を構成するサイドウォールゴム8と、各サイドウォール部の内方端に位置するクリンチ部を構成するクリンチゴム3およびリム上部に位置するチェーファー部を構成するチェーファーゴム2とを備える。またクリンチ部、チェーファー部間にはカーカス10が架け渡されるとともに、このカーカス10のタイヤ半径方向外側にブレーカー部を構成するブレーカーゴム9が配される。該カーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、トレッド部からサイドウォール部を経て、ビードコアと、該ビードコアの上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックスとの廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返され、折返し部によって係止される。ブレーカー部は、ブレーカーコードを配列した2枚以上のプライ(ブレーカーゴム9)からなり、各ブレーカーコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。本発明の空気入りタイヤにおいては、トレッド部とブレーカー部との間に導電層が設けられる。該導電層は、カーカス10を構成するカーカスプライとブレーカー部を構成するブレーカーゴム9のエッジ部分およびサイドウォール部との間に設けられる第1導電層4と、少なくとも該第1導電層4に接し、トレッドゴム7とブレーカーゴム9との間に配されるトレッド部の全面または一部に設けられる第2導電層5、および、トレッド部に埋設され第2導電層5とトレッド表面とを連続するペンゴム層6とからなる。
<トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー部>
本発明の空気入りタイヤにおいては、トレッド部、サイドウォール部、およびブレーカー部をそれぞれ構成するトレッドゴム、サイドウォールゴムおよびブレーカーゴムの体積固有抵抗がいずれも1×108Ω・cm以上に設定される。該体積固有抵抗が1×108Ω・cm以上であれば、十分な転がり抵抗を維持することができ、耐久性が損なわれたり、加工性が低下したりする危険性が少ない。
本発明においては、上記トレッド部、サイドウォール部、およびブレーカー部を構成するゴムのそれぞれに配合される上記の充填剤のうち50質量%以上がシリカであることが好ましい。充填剤のうち50質量%以上をシリカが占める場合、タイヤの転がり抵抗の低減効果が良好である。充填剤のうちシリカが占める割合は、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。本発明においては、上記充填剤のすべてがシリカであってもよいが、トレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムのそれぞれの導電性や機械的強度を調整する目的で他の充填剤が併用されることも好ましい。
上記トレッドゴム、サイドウォールゴムおよびブレーカーゴムに配合されるシリカとしては汎用ゴム一般に用いられるものを使用することができ、たとえば補強材として使用される乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ等が挙げられる。中でも含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。
上記シリカのBET法により測定した窒素吸着比表面積(BET比表面積)が、たとえば50〜300m2/gであることが好ましく、さらに100〜200m2/gの範囲内であることが好ましい。シリカのBET比表面積が50m2/g以上である場合、補強効果が十分得られることによりタイヤの耐摩耗性が良好に向上する。一方該BET比表面積が300m2/g以下である場合、それぞれのゴムの製造時の加工性が良好であり、タイヤの操縦安定性も良好に確保される。なお、BET比表面積は、ASTM D3037−81に準じて測定することができる。
上記トレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムのそれぞれにおけるシリカの配合量は、ゴム成分の100質量部に対してたとえば5質量部以上100質量部以下とすることができる。シリカの配合量がゴム成分100質量部に対して5質量部以上である場合、タイヤの耐摩耗性が良好であり、100質量部以下である場合、トレッドゴム、ブレーカーゴムおよびサイドウォールゴムの製造時における未加硫ゴム組成物の粘度上昇による加工性の低下やコストの過度な上昇を良好に防止できる。
ここで、トレッドゴム、サイドウォールゴムまたはブレーカーゴムにカーボンブラックを配合する場合は、タイヤを構成するゴムに補強効果を付与できる点から、その配合量をゴム成分100質量部に対して10質量部以上150質量部以下とすることが好ましい。また、上記カーボンブラックとしては、BET比表面積が70〜300m2/gの範囲内であり、DBP吸油量が5〜300ml/100gの範囲内であって、かつヨウ素吸着量が146〜152mg/gの範囲内を使用することが補強効果の点で好適である。
なお、本発明において体積固有抵抗とは、温度23℃および相対湿度55%の恒温恒湿条件で、印加電圧を1000VとしてJIS規格、K 6271にしたがい測定した体積低効率をいうものとする。
上述のように少なくともトレッド部、サイドウォール部およびブレーカー部をそれぞれ構成するゴムの体積固有抵抗がいずれも1×108Ω・cm以上である場合は、ビードのリムと接する部分に設けられるゴム層とトレッド表面とを電気的に連続した構造としなければ、タイヤの静電気をタイヤ外部に放出することが困難である。本発明においては、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するクリンチゴムおよびチェーファーゴムの体積固有抵抗を特定の値とし、かつ特定の体積固有抵抗を有する導電層を設けて、それらを特定のカーカスにより電気的に連続したものとなる構造とすることにより、タイヤの静電気をより効率よくタイヤ外部に放出することができる。
<クリンチ部、チェーファー部>
上述のように本発明の空気入りタイヤにおいて、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するクリンチゴム3およびチェーファーゴム2の体積固有抵抗はいずれも1×108Ω・cm以下に設定される。該体積固有抵抗は1×108Ω・cm以下であればよく、クリンチゴムおよびチェーファーゴムの体積固有抵抗を上記範囲とすることによって、タイヤの電気導電性を確保できる。
上記クリンチゴムおよびチェーファーゴムは、体積固有抵抗を上記範囲とするために、これらを構成するゴム成分100質量部に対して30〜100質量部の範囲内でカーボンブラックを配合することが好ましい。ゴム成分100質量部に対して30質量部以上のカーボンブラックが配合される場合、導電層の導電性が良好である点で好ましい。またカーボンブラックの含有量がゴム成分100質量部に対して100質量部以下である場合耐久性が良好である点で好ましい。カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して35質量部以上がより好ましく、さらに40質量部以上が好ましく、80質量部以下がより好ましく、さらに70質量部以下が好ましい。
クリンチゴムおよびチェーファーゴムに配合されるカーボンブラックのBET比表面積は、100m2/g以上1500m2/g以下とされることが好ましい。該BET比表面積が100m2/g以上である場合導電層の機械的強度が良好であり、1500m2/g以下である場合製造時の加工性を確保する点で好ましい。該BET比表面積は、105m2/g以上がより好ましく、また、1300m2/g以下、さらに1000m2/g以下がより好ましい。
本発明におけるクリンチゴムおよびチェーファーゴムは、カーボンブラック以外に、充填剤としてたとえばシリカ等を含有してもよいが、良好な導電性を付与するという観点から、これらのゴムに充填される全充填剤のうち8質量%以上、さらに15質量%以上、さらに100質量%をカーボンブラックが占めることがより好ましい。
<ペンゴム層>
本発明のタイヤにおいては、タイヤに発生する静電気を効率よく放出するために、上記トレッド部内に、後述のトレッド部とブレーカー部の間に配される第2導電層5に接し、トレッド部表面まで連続するペンゴム層6を備え、該ペンゴム層の体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下に設定される。該体積固有値が1×108Ω・cm以下であればタイヤの導電性の向上効果(静電気の放出効率)が所望の程度得られる。該導電層の体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、1×106Ω・cm以下に設定されることがより好ましい。タイヤの導電性を向上させる点で該導電層の体積固有抵抗は低い程好ましい。
ペンゴム層を構成するゴムとしては、上記クリンチゴムおよびチェーファーゴムの場合と同範囲でカーボンブラックを配合したゴムを用いることができる。また、配合するカーボンブラックとしても、上記クリンチゴムおよびチェーファーゴムと同様のBET比表面積を有するものとすることが好ましい。
本発明においてペンゴム層の厚みは0.2mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であればタイヤ導電性の向上効果が所望の程度得られる。また該ペンゴム層の厚みは2.0mm以下であることが好ましく、この範囲であればトレッド表面顕在する場合においてもタイヤの転がり抵抗を大きく悪化させることがない。導電層の厚みは、0.5mm以上、さらに0.9mm以上がより好ましく、また、1.5mm以下がより好ましい。
また、該ペンゴム層のトレッド部内における構造は、第2導電層とトレッド表面とを直接連続させる限り特に限定されるものではなく、たとえば、厚みが0.2mmのゴム層をタイヤ周方向に連続的に設けたり、厚みが0.2mm、幅が3mmの板状のゴムをトレッド内部の一部またはタイヤ周方向に断続的に設したりすることができる。なかでも、静電気の放出効率の点からは、タイヤ周方向に連続的に設けることが好ましい。また、上記ペンゴム層はトレッド内部である限り、タイヤ幅方向の中心側、サイドウォール側を問わず任意に設けることができるが、ペンゴム層を確実に接地させるためにはタイヤのトレッドの中央部付近に設けることが好ましい。
<第1導電層>
本発明における上記第1導電層4は、後述のカーカス10を構成するカーカスプライとブレーカー部のエッジ部分およびサイドウォール部との間に設けられる、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下に設定されたゴムからなる。該体積固有値が1×108Ω・cm以下であればタイヤの導電性の向上効果が所望の程度得られる。該導電層の体積固有抵抗は、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、1×106Ω・cm以下に設定されることがより好ましい。タイヤの導電性の向上効果という点で該導電層の体積固有抵抗は低い程好ましい。一方、該導電層の体積固有抵抗は1×103Ω・cm以上であることが好ましく、1×104Ω・cm以上に設定されることがより好ましい。
上記体積固有抵抗を有する第1導電層を構成するゴムは、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを30〜100質量部配合したゴムであることが好ましい。カーボンブラックを該範囲内とする場合、第1導電層の導電性を良好にすることができ、また耐久性が良好である点で好ましい。第1導電層を構成するゴムにおいて、カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して35質量部以上がより好ましく、さらに40質量部以上が好ましい。また、カーボンブラックの配合量を80質量部以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは70質量部以下である。
第1導電層を構成するゴムに配合されるカーボンブラックのBET比表面積は、100m2/g以上1500m2/g以下とすることが好ましい。該BET比表面積が100m2/g以上である場合第1導電層の機械的強度が良好であり、1500m2/g以下である場合製造時の加工性を確保する点で好ましい。該BET比表面積は、105m2/g以上がより好ましく、また、1300m2/g以下、さらに1000m2/g以下がより好ましい。
上記第1導電層を構成するゴムは、カーボンブラック以外に、充填剤としてたとえばシリカ等を含有してもよいが、良好な導電性を付与するという観点から、全充填剤のうち8質量%以上、さらに15質量%以上、さらに100質量%をカーボンブラックが占めることがより好ましい。
上記第1導電層の形状は特に限定されるものではなく、上述のようにカーカスを構成するカーカスプライとブレーカー部のエッジ部分およびサイドウォールとの間にタイヤ周方向に連続して配されていればよく、たとえば第1導電層の厚みなどは特に限定されない。
<第2導電層>
本発明における第2導電層5は、上記第1導電層4と上記ペンゴム層6とに接して設けられる、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下に設定されたゴムからなる。上記体積抵抗値が1×108Ω・cm以下であればタイヤの導電性の向上効果が所望の程度得られる。また、該体積固有抵抗は、上記第1導電層と同様に設定することができ、好ましくは1×107Ω・cm以下であり、より好ましくは1×106Ω・cm以下であり、また、1×103Ω・cm以上とすることが好ましく、1×104Ω・cm以上に設定することがより好ましい。
上記体積固有抵抗を有する第2導電層を構成するゴムは、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを30〜100質量部配合したゴムであることが好ましい。カーボンブラックを該範囲内とする場合、第2導電層の導電性を良好にすることができ、また耐久性が良好である点で好ましい。第1導電層を構成するゴムにおいて、カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して35質量部以上がより好ましく、さらに40質量部以上が好ましい。また、カーボンブラックの配合量を80質量部以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは70質量部以下である。
第2導電層を構成するゴムに配合されるカーボンブラックのBET比表面積は、100m2/g以上1500m2/g以下とすることが好ましい。該BET比表面積が100m2/g以上である場合第2導電層の機械的強度が良好であり、1500m2/g以下である場合製造時の加工性を確保する点で好ましい。該BET比表面積は、105m2/g以上がより好ましく、また、1300m2/g以下、さらに1000m2/g以下がより好ましい。
上記第2導電層を構成するゴムは、カーボンブラック以外に、充填剤としてたとえばシリカ等を含有してもよいが、良好な導電性を付与するという観点から、全充填剤のうち8質量%以上、さらに15質量%以上、さらに100質量%をカーボンブラックが占めることがより好ましい。
上記第2導電層の厚みは特に限定されないが、タイヤの導電性の向上効果の点から、0.2mm以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上である。また、該第2導電層の厚みの上限としては、タイヤの構造上トレッド部を構成するトレッドゴムとブレーカー部を構成するブレーカーゴムの間の間隔を超えない厚みであればよいが、タイヤの発熱を抑える点から、1.0mm以下としておくことが好ましい。
上記第2導電層は、第1導電層とペンゴム層と接する部分を有していればよく、トレッド部とブレーカー部の間全面にわたり設けたり、上記ペンゴム層が配された位置まで、またはそれを超える範囲で部分的に設けたりすることができる。
また、第2導電層と第1導電層およびペンゴム層の接する部分について、上記第1導電層とはタイヤ周方向に帯状の5mm以上の幅で接触している部分があることが好ましく、10mm以上接触していることがより好ましい。第1導電層と第2導電層とを上記の条件で接触させることにより、タイヤの導電性効果が十分に得られるものとなる。上記ペンゴム層との接触は、ペンゴム層のタイヤ幅方向の全面が接していることが好ましい。
<カーカス>
本発明におけるカーカス10は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから構成される。該カーカスプライは、カーカスコード(導電性繊維材料)およびゴム層を含む。本発明において、このカーカスコードは、0.5質量%〜20質量%の導電性繊維を含む導電性繊維材料からなり、体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下である。カーカスコードにおいて導電性繊維の占める割合は、該繊維の導電性に因るため特に限定されるものではないが、カーカスコードとして必要な強度や耐疲労性などの特性を大きく変えない点から0.5質量%〜12質量%とすることがより好ましい。
<導電性繊維>
上記導電性繊維としては、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどを挙げることができ、これらのいずれも好適に使用することができる。
<カーカスコード>
上記カーカスコードを構成する繊維材料としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、高強力ビニロンなどを例示することができ、これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。カーカスコードを構成する繊維材料なかでも、タイヤの操縦安定性の点からレーヨンを用いることが好ましい。
カーカスコードを構成する繊維材料と導電性繊維は、カーカスコードを構成する繊維材料の周りに上記導電性材料を巻きつける構造とすることが好ましい。このような構造とすることにより、カーカスコードの強度が好適なものとなる。
上記のような構成としたカーカスコードの体積固有抵抗は1×108Ω・cm以下である。カーカスコードの体積固有抵抗をこの範囲とすることにより、走行によりタイヤに発生する静電気を効率よく放出することができる。カーカスコードの体積固有抵抗は、1×107Ω・cm以下がより好ましい。
上記繊維材料の表面には、レゾルシン、ホルマリン、ゴムラテックスなどからなるRFL系の接着性を付与する液に浸して乾燥させることにより、一般にタイヤのカーカスコードに設けられる接着樹脂層が形成される。
本発明におけるカーカスを構成する上記カーカスプライは、少なくとも上記クリンチゴム、チェーファーゴムおよび第1導電層と接するように配置される。具体的には、たとえば、上記クリンチゴム、チェーファーゴムおよび第1導電層と接する部分のカーカスコードを被覆するゴム層を除去して、カーカスコードと上記のようなゴムおよび導電層と直接接触できるようにすることにより、上記のようなゴムおよび導電層と電気的に接触した状態とすることができる。上記第1導電層、第2導電層およびペンゴム層を連続した構造とすることに加えて、十分に低減された体積固有抵抗を有するカーカスプライを、クリンチゴム、チェーファーゴムおよび第1導電層とが接した配置とすることによって、リムを通じた静電気の放出効率を著しく向上させることができる。
<ゴム組成物>
本発明において用いられるゴム成分は、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴムの少なくともいずれかからなる天然ゴム成分を含むことが好ましい。
天然ゴム(NR)としては、ゴム工業において従来用いられているものを使用することができ、たとえば、RSS#3、TSRなどのグレードの天然ゴムを挙げることができる。
エポキシ化天然ゴム(ENR)は、天然ゴムの不飽和二重結合がエポキシ化された変性天然ゴムの一種であり、極性基であるエポキシ基により分子凝集力が増大する。そのため、天然ゴムよりもガラス転移温度(Tg)が高く、かつ機械的強度や耐磨耗性、耐空気透過性に優れる。特に、ゴム組成物中にシリカを配合した場合においては、シリカ表面のシラノール基とエポキシ化天然ゴムのエポキシ基との反応に起因して、カーボンブラックをゴム組成物中に配合する場合と同程度の機械的強度や耐磨耗性を得ることができる。
エポキシ化天然ゴム(ENR)としては、市販のものを用いてもよいし、天然ゴム(NR)をエポキシ化したものを用いてもよい。天然ゴム(NR)をエポキシ化する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえばクロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、たとえば天然ゴムのエマルジョンに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸をエポキシ化剤として反応させる方法を挙げることができる。
エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率は、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。ここで、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、たとえば滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析等により求められる。エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率が5モル%未満の場合、エポキシ化天然ゴム(ENR)のガラス転移温度が低いために、ゴム組成物のゴム硬度が低く、たとえば該ゴム組成物をインナーライナーゴムとして用いた場合には、空気入りタイヤの耐久性および耐疲労性が低下する傾向がある。また、エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率は、60モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率が60モル%を超える場合、ゴム組成物が硬くなることによって機械強度が低下する傾向がある。
エポキシ化天然ゴム(ENR)として、より典型的には、エポキシ化率25モル%のエポキシ化天然ゴムや、エポキシ化率50モル%のエポキシ化天然ゴムなどを例示できる。
本発明において、ゴム成分中の天然ゴム成分の含有率は10質量%以上とされることが好ましい。該含有率が10質量%未満である場合、石油資源由来の原料の使用量の低減効果が低くなる傾向がある。天然ゴム成分の該含有率は、30質量%以上、さらに50質量%以上、さらに60質量%以上であることがより好ましい。石油資源由来の原料の使用量の低減効果が良好である点で、天然ゴム成分の該含有率は100質量%であることが好ましいが、所望のタイヤ特性に応じて、たとえば該含有率を90質量%以下、さらに80質量%以下とし、ゴム成分中の残部として天然ゴム成分以外のゴムを配合してもよい。
本発明のゴム成分は、前述のように定義される天然ゴム成分以外にも、石油外資源由来のゴムとして、たとえば水素化天然ゴムなどの変性天然ゴムなどを含有することができる。
また、ゴム成分は、本発明の効果を損なわない範囲で石油資源由来のゴムを含有してもよい。石油資源由来のゴムとしては、たとえば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、イソブチレンとp−メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物などを例示できる。中でも、ゴム組成物の硬度を高くでき、空気入りタイヤに対して特に良好な耐久性および耐疲労性を付与できる点で、SBR、BR、IR、IIRが好ましい。
ゴム成分中の天然ゴム(NR)の含有率は、10質量%以上であることが好ましい。天然ゴム(NR)の該含有率が10質量%未満の場合、ゴム組成物の機械強度が低くなる傾向がある。天然ゴム(NR)の該含有率は、30質量%以上、さらに40質量%以上であることがより好ましい。また、ゴム成分中の天然ゴム(NR)の含有率は、90質量%以下であることが好ましい。天然ゴム(NR)の該含有率が90質量%を超える場合、ゴム組成物の耐屈曲性が低くなる傾向がある。天然ゴム(NR)の該含有率は、80質量%以下、さらに70質量%以下であることがより好ましい。
ゴム成分中のエポキシ化天然ゴム(ENR)の含有率は、5質量%以上であることが好ましい。エポキシ化天然ゴム(ENR)の該含有率が5質量%未満の場合、耐屈曲性の改善効果が低くなる傾向がある。エポキシ化天然ゴム(ENR)の該含有率は、10質量%以上、さらに20質量%以上、さらに30質量%以上であることがより好ましい。また、ゴム成分中のエポキシ化天然ゴム(ENR)の含有率は、60質量%以下であることが好ましい。エポキシ化天然ゴム(ENR)の含有率が60質量%を超える場合、ゴム硬度が大きくなり過ぎるためにゴム組成物の機械強度が低くなる傾向がある。エポキシ化天然ゴム(ENR)の該含有率は、50質量%以下であることがより好ましい。
本発明における上記ゴム組成物には、その他ゴム製品において一般的に配合される以下の成分を適宜配合することができる。
本発明におけるトレッド部、サイドウォール部およびブレーカー部を構成するゴムのようにゴム組成物にシリカを配合する場合は、タイヤの耐摩耗性および操縦安定性を向上させることができることから、シラン系カップリング剤や含硫黄シランカップリング剤などのシランカップリング剤を配合することが好ましい。なかでも含硫黄シランカップリング剤を配合することが好ましい。
上記シラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を使用することができる。
また、含硫黄シランカップリング剤としては、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が例示される。
上記シランカップリング剤は、各ゴム組成物におけるシリカの質量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲内で配合することが好ましい。シランカップリング剤の配合量が1質量%以上の場合、耐摩耗性および操縦安定性の向上効果が良好に得られる。またシランカップリング剤の配合量が20質量%以下の場合、ゴムの混練、押出工程での焼け(スコーチ)が生じる危険性が少ないので好ましい。
本発明においては、用途に応じてその他のカップリング剤、例えばアルミネート系カップリング剤、チタン系カップリング剤を単独またはシラン系カップリング剤と併用して使用することも可能である。
その他の充填剤としては、カーボンブラック、クレー、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等をあげることができ、これらの充填剤は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
ゴム組成物には、上記充填剤他に、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、発泡剤およびスコーチ防止剤等を適宜配合することができる。
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用できる。有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができ、なかでも硫黄が好ましい。
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
本発明ではゴム組成物の練り加工性を一層向上させるために軟化剤を併用してもよい。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、等が挙げられる。
上記可塑剤としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジラウリル(DLP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、無水ヒドロフタル酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)等が挙げられ、いずれも好適に用いることができる。
スコーチ防止剤としては、スコーチを防止または遅延させるためのものであり、たとえば無水フタル酸、サリチル酸、安息香酸などの有機酸、N−ニトロソジフェニルアミンなどのニトロソ化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等を使用することができる。
本発明において、ゴム組成物の混錬温度および時間などの諸条件は、各タイヤ部材を構成するゴムにおいて一般に行なわれている混錬条件とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物>
表1に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てクリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物1aおよび1bを作製した。
得られたゴム組成物1aおよび1bのそれぞれを150℃で30分間加硫成形した後、厚み2mmで15cm四方の試験片を切り出し、23℃および相対湿度55%の恒温恒湿条件で、印加電圧を1000VとしてJIS規格、K 6271にしたがいADVANTES製の電気抵抗測定器(R8340A)を用いて体積固有抵抗(体積低効率)を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004249792
<第1導電層用ゴム組成物>
表3に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物2を作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物2を加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004249792
<第2導電層用ゴム組成物の作製>
表3に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物3を作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物3を加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0004249792
<ペンゴム層用ゴム組成物の作製>
表5に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物4を作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物4を加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0004249792
<トレッド部用ゴム組成物の作製>
表6に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物5を作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物5を加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表5に示す。
Figure 0004249792
<サイドウォール部用ゴム組成物の作製>
表7に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物6aおよび6bを作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物6aおよび6bをそれぞれ加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0004249792
<ブレーカー部用ゴム組成物の作製>
表8に示す配合成分のうち硫黄および加硫促進剤を除いた成分を、密閉式バンバリーミキサーを用いて140℃で4分間混練した後、硫黄および加硫促進剤を加えて95℃で2分間さらに練り込み、定法により押出し工程、カレンダー工程を経てゴムセメント層用のゴム組成物7aおよび7bを作製した。
また、クリンチ部およびチェーファー部用ゴム組成物と同条件において、得られたゴム組成物7aおよび7bをそれぞれ加硫成形した後、体積固有抵抗を測定した。結果を表7に示す。
Figure 0004249792
上記表1〜表7中における各配合は以下のものを用いた。
天然ゴム:タイ製、商品名「TSR20」
合成ゴム1:JSR(株)製、商品名「SBR1500」
合成ゴム2:JSR(株)製、商品名「SBR1502」
ポリブタジエン:日本ゼオン(株)製、商品名「BR150B」
カーボンブラックN220:東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」(BET比表面積:119m2/g)
カーボンブラックN330:三菱化学(株)製、商品名「ダイアブラック H」(BET比表面積:79m2/g)
シリカ:デグサ社製、商品名「VN3」(BET比表面積:180m2/g)
シランカップリング剤:デグサ社製、商品名「Si69」
アロマチックオイル:出光興産(株)、商品名「ダイアナプロセスAH40」
ワックス:大内新興化学工業(株)製、商品名「サンノックN」
老化防止剤:住友化学工業(株)製、商品名「アンチゲン6C」
ステアリン酸:日本油脂(株)製、商品名「ステアリン酸 椿」
ステアリン酸コバルト:大日本インキ工業(株)製、商品名「COST−F」
亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
硫黄:軽井沢製錬(株)製、商品名「粉末硫黄」
不溶性硫黄:四国化成工業(株)製、商品名「ミュークロンOT20」
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーNS−P」
<繊維材料の作製>
導電性繊維としてポリピロールを質量比で10%含み、その他の繊維材料がポリエチレンテレフタレートである繊維材料A(導電性繊維材料)を作製した。
また、比較例として、ポリエチレンテレフタレートのみからなる繊維材料Bを作製した。
上記導電性繊維材料AおよびBの体積固有抵抗の測定結果を表8に示す。なお、これらの繊維材料は、その表面を公知のRFLを主成分とする接着処理液により処理して、後述のタイヤの作製に供した。
Figure 0004249792
(実施例1、比較例1〜4)
表9に示す組合せで上記のように作製したゴム組成物をそれぞれ、トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー部、クリンチ部、チェーファー部、ペンゴム層、第1導電層および第2導電層に適用し、160℃で20分間プレスにより加硫成形し、図1に示す構造または図1に示す構造に準じた構造を有するサイズ195/65R15の空気入りタイヤを作製した。得られた空気入りタイヤの構造は以下のとおりである。
<空気入りタイヤの構造>
カーカス:材料 表8に記載の導電性繊維材料
ブレーカー部:材料 スチールコード、構造 2+2×0.23HT
40コード/5cm
角度 24°×24°
<タイヤ導電性>
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧2.0MPaを充填して、荷重4.7kNで鉄板にトレッド部を接地させ、印加電圧100Vにおいてタイヤリム部と鉄板との間の電気抵抗値を測定した。結果を表9に示す。
<転がり抵抗>
上記で作製した空気入りタイヤを正規リムに装着し、規定内圧2.0MPaを充填して、STL社製の転がり抵抗試験機を用い、速度80km/h、荷重4.7kNで転がり抵抗を測定した。転がり抵抗の測定値を付加荷重で除した転がり抵抗係数(RRC)につき、実施例1,比較例1〜4の転がり抵抗を、下記の式、
(転がり抵抗)=(比較例1の転がり抵抗係数)/(実施例1,比較例1〜4のそれぞれの転がり抵抗係数)×100
により比較例1を100として表示した。値が大きいほど転がり抵抗が小さく性能が良好である。結果を表9に示す。
Figure 0004249792
表9に示す結果より、導電性繊維材料として体積固有抵抗が十分低減されていない繊維材料Bを用いた比較例1においては、タイヤの静電気の低減効果が向上しないことが分かる。また、体積固有抵抗が十分低減された導電性繊維材料を用いた場合でも、サイドウォール部やブレーカー部にシリカを配合しない比較例2および3の場合では、タイヤの静電気の低減と転がり抵抗の向上というバランスを達成できたタイヤとはならないことが分かる。また、体積固有抵抗が十分低減された導電性繊維材料を用いた場合でも、クリンチ部およびチェーファー部に用いるゴム組成物の体積固有抵抗が十分に低減されていなければ、タイヤ全体の静電気を低減することはできないことがわかる。これに対して、実施例1で作製された、トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー部をそれぞれ構成するゴム組成物の体積固有抵抗を1.0×10Ω・cm以上とし、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するゴム組成物の体積固有抵抗を1.0×10Ω・cm以下として、体積固有抵抗を十分に低減した第1導電層、第2導電層およびペンゴム層を設け、これらを体積固有抵抗が1.0×10Ω・cm以下に設定された導電性繊維材料からなるカーカスプライによって電気的に連続した構造とした本発明の空気入りタイヤは、転がり抵抗と静電気の抑制のいずれにも優れることが分かる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
転がり抵抗が大きく増大することなく路面とタイヤとの間における静電気の発生が防止された本発明の空気入りタイヤは、たとえば乗用車、トラック、バス、重機等の各種車両に対して好ましく適用され得る。
本発明に係る空気入りタイヤの断面図の右半分を例示した図である。
符号の説明
1 タイヤ、2 チェーファーゴム、3 クリンチゴム、4 第1導電層、5 第2導電層、6 ペンゴム層、7 トレッドゴム、8 サイドウォールゴム、9 ブレーカーゴム、10 カーカス。

Claims (2)

  1. トレッド部、サイドウォール部、およびブレーカー部をそれぞれ構成するトレッドゴム、サイドウォールゴムおよびブレーカーゴムの体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以上で、クリンチ部およびチェーファー部をそれぞれ構成するクリンチゴムおよびチェーファーゴムの体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以下であり、
    前記トレッド部から前記サイドウォール部を経てビード部に至るカーカスと、前記トレッド部と前記ブレーカー部との間に設けられた導電層とを有する空気入りタイヤであって、
    前記導電層は、前記カーカスを構成するカーカスプライと前記ブレーカーゴムのエッジ部分と前記サイドウォール部との間に設けられる第1導電層と、該第1導電層と接し、前記トレッドゴムと前記カーカスの間の一部または全体に設けられる第2導電層と、該第2導電層からトレッド部表面にかけて連続するペンゴム層とからなり、
    前記第1導電層、第2導電層およびペンゴム層は、その体積固有抵抗がそれぞれ1×108Ω・cm以下であり、
    前記カーカスプライは、カーカスコードとゴム層とを備え、
    前記カーカスコードは、0.5質量%〜20質量%の導電性繊維を含む導電性繊維材料で構成され、その体積固有抵抗が1×108Ω・cm以下であり、少なくとも前記クリンチ部、前記チェーファー部および前記第1導電層と接する構造である、空気入りタイヤ。
  2. 前記導電性繊維は、ポリピロールからなる繊維である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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