以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお本発明は、マイクロプロセッサ、画像処理回路などの集積回路や、RFタグ、半導体表示装置等、ありとあらゆる半導体装置の作製に用いることができる。半導体表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、半導体膜を用いた回路素子を駆動回路に有しているその他の半導体表示装置がその範疇に含まれる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る、SOI基板及び半導体装置の作製方法について説明する。
まず、図1(A)に示すように、ボンド基板100の一部を分離することで得られる薄膜の半導体膜101を、絶縁膜102を間に挟むように、ベース基板103上に形成する。
ボンド基板100として、シリコン、ゲルマニウムなどの単結晶半導体基板を用いることができる。その他に、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体で形成された単結晶半導体基板を、ボンド基板100として用いることができる。またボンド基板100として、結晶格子に歪みを有するシリコン、シリコンに対しゲルマニウムが添加されたシリコンゲルマニウムなどの半導体基板を用いていても良い。
なお、ボンド基板100に用いられる単結晶半導体基板は、結晶軸の方向が基板内において揃っていることが望ましいが、点欠陥、線欠陥、面欠陥などの格子欠陥が完璧に排除された完全結晶である必要はない。
ベース基板103は、アルミノシリケートガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどの電子工業用に使われる各種ガラス基板の他、石英基板、セラミック基板、サファイア基板などの基板を用いることが出来る。さらにベース基板103として、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの半導体基板などを用いることができる。或いは、ステンレス基板を含む金属基板をベース基板103として用いても良い。
ガラス基板としては、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることができる。マザーガラスとしては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mmまたは、730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)などのサイズの基板が知られている。大面積のマザーガラス基板をベース基板103として用いてSOI基板を製造することで、SOI基板の大面積化が実現できる。マザーガラス基板のような大型の基板をベース基板103として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、一度に多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
また、ベース基板103上に絶縁膜を形成しておいても良い。ベース基板103は、その表面に絶縁膜が必ずしも形成されていなくとも良いが、ベース基板103の表面に絶縁膜を形成しておくことで、ベース基板103からボンド基板100に、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。またベース基板103の表面に絶縁膜を形成しておく場合、ベース基板103上の絶縁膜が絶縁膜102と接合するので、ベース基板103として用いることができる基板の種類がさらに広がる。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、後の半導体素子の作製工程における処理温度に耐え得るのであれば、ベース基板103上に絶縁膜を形成する場合において、ベース基板103として用いることが可能である。プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。
ボンド基板100を分離することにより形成された半導体膜101は、結晶欠陥が形成されている、または、その表面の平坦性が損なわれている。そこで、本発明の一態様では、結晶欠陥を低減、および平坦性を向上するために、半導体膜101の表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜104を除去する処理を行った後、半導体膜101に第1のレーザ光の照射を行う。
酸化膜104の除去処理は、フッ酸に半導体膜101をさらす処理により行うことができる。フッ酸による処理は、半導体膜101の表面が撥水性を示すまで行うことが望ましい。撥水性を示すことで、半導体膜101から酸化膜104が除去されたことが確認できる。フッ酸を用いた湿式で酸化膜の除去を行う場合、薬液として、フッ化水素の水溶液である希フッ酸(DHF:Dilute Hydrogen Fluoride)、フッ化水素とフッ化アンモニウムを混合することで得られる水溶液(BHF:Buffered Hydrogen Fluoride)、フッ化水素と過酸化水素水を混合することで得られる溶液(FPM:Hydrogen Fluoride Hydrogen Peroxide Deionized Water Mixture)などを用いることが出来る。
本実施の形態では、例えば、フッ化水素の濃度が0.5wt%のDHFに半導体膜101を110秒間さらすことで、図1(B)に示すように半導体膜101の表面に存在する酸化膜104を除去する。以下に、スピン洗浄機を用いた酸化膜104の除去の手順について、一例として説明する。
まず、半導体膜101が形成されたベース基板103を回転テーブル上に固定し、回転テーブルを回転させながら、純水を用いてベース基板103に対しメガソニック洗浄を行うことで、半導体膜101または酸化膜104上に存在する塵埃などのごみを除去する。メガソニック洗浄は、回転テーブルに1MHz程度の高周波を加え、回転数が200rpmとなるように回転テーブルを回転させながら、ノズルから純水をベース基板103上に30秒間吐出させることで行う。次に、回転テーブルの回転数200rpmを維持しつつ、ノズルからフッ化水素の濃度が0.5wt%のDHFをベース基板103上に110秒間吐出させることで、半導体膜101上の酸化膜104が除去される。なお、ベース基板103の、半導体膜101が形成されている面とは反対側の面(裏面)側にDHFが回り込むのを防ぐために、DHFをベース基板103上に吐出するのと並行して、ベース基板103の裏面側を純水でリンスする。そして、DHFの吐出が終了した後も、回転テーブルの回転数200rpmを維持しながらベース基板103の裏面側を、さらに5秒間延長して、純水でリンスしておく。次に、回転テーブルの回転数200rpmを維持しつつ、純水を用いてベース基板103に対しメガソニック洗浄を行い、ベース基板103に付着しているDHFを除去する。メガソニック洗浄は、回転テーブルに1MHz程度の高周波を加え、ノズルから純水をベース基板103上に110秒間吐出させることで行う。このDHFを除去するためのメガソニック洗浄も、ベース基板103の裏面側にDHFが回り込むのを防ぐために、ベース基板103の裏面側を純水でリンスしながら行う。次に、ベース基板103を乾燥させる。ベース基板103の乾燥は、ベース基板103の中央部に窒素を吹き付けながら、回転テーブルを回転させることで行う。回転テーブルの回転数は、初めの5秒間は10rpmと低く保ち、その後2000rpmと高くして90秒間保つ。このように、回転数を最初に低く保つことで、純水への半導体の溶解や水滴の境界におけるシリコンの酸化によって生じる、ウォーターマークと呼ばれるしみが、半導体膜101の表面に発生するのを防ぐことが出来る。
なお、上述したベース基板103を洗浄するために用いられている純水は、帯電防止のために二酸化炭素が添加されているものを用いることが望ましい。また、酸素と水分の共存する雰囲気中だと、半導体膜の表面に自然酸化膜が生成されやすいので、酸素濃度が低減された純水を用いることで、洗浄の際に半導体膜101の表面に自然酸化膜が形成されるのを防ぐことが出来る。
本実施の形態ではDHFを用いる場合について例示したが、FPMを用いて酸化膜の除去を行うことで、DHFを用いて酸化膜の除去を行う場合に比べて、銅などの金属による汚染量を二桁程度少なく抑えることも出来る。
また、自然酸化膜を除去する方法として、上述したような湿式を用いることも出来るが、乾式を用いるようにしても良い。乾式を用いる場合、湿式を用いる場合と異なり、純水等で薬液を洗浄し、乾燥させた後にウォーターマークが半導体膜の表面に発生するのを避けることが出来る。乾式による自然酸化膜の除去は、例えば、アルゴンをプラズマ化することでドライエッチングする方法、三フッ化窒素と、ヘリウムなどの希ガスまたは水素をプラズマ化し、酸化膜とフッ素の反応を促し気化させる方法、フッ酸の蒸気にさらす方法などが挙げられる。
なお、酸化膜104の除去を行った後、第1のレーザ光の照射を行うまでの間、半導体膜101を不活性ガス雰囲気下もしくは減圧雰囲気下において保存することが望ましい。また、酸素と水分の共存する雰囲気中だと、半導体膜の表面に自然酸化膜が生成されやすいので、絶対湿度の低い雰囲気中にて半導体膜101を保存することが望ましい。酸化膜104の除去を行った後、大気雰囲気に半導体膜101をさらしておくと、時間の経過と共に半導体膜101の表面には自然酸化膜が形成される。この自然酸化膜の膜厚が大きくなると、後の第1のレーザ光の照射により半導体膜101にひび割れが生じやすくなるので、酸化膜104の除去を行った後、大気雰囲気下において30分以上経過した半導体膜101に対しては、再び上述したような酸化膜を除去する処理を行うことが望ましい。
次に、図1(C)に示すように、半導体膜101に第1のレーザ光の照射を行う。本発明の一態様では、第1のレーザ光の照射は、半導体膜101中の結晶欠陥の修復に重点を置いている。図1(C)では、レーザ光106を矢印で示した方向に走査させることで、半導体膜101の結晶欠陥が修復されている様子を示している。そして、第1のレーザ光の照射により、図2(A)に示すように、結晶欠陥が修復された半導体膜105が形成される。
第1のレーザ光の照射は、半導体膜101を部分溶融させる程度のエネルギー密度で行うことが好ましい。完全溶融させると、液相となった半導体膜101で無秩序な核発生が起こるために、半導体膜101が再結晶化された際に微結晶が生成し、結晶性が低下するからである。部分溶融させることで、半導体膜101では、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する、いわゆる縦成長が起こる。縦成長による再結晶化によって、半導体膜101の結晶欠陥が減少され、結晶性が回復される。なお、半導体膜101が完全溶融状態であるとは、半導体膜101が絶縁膜102との界面まで溶融され、液体状態になっていることをいう。他方、半導体膜101が部分溶融状態であるとは、上層が溶融して液相であり、下層が固相である状態をいう。
この第1のレーザ光の照射には、半導体膜101を部分的に溶融させるためにパルス発振でレーザ光の照射を行うことが望ましい。例えば、パルス発振の場合は、繰り返し周波数1MHz以下、パルス幅10n秒以上500n秒以下である。例えば、繰り返し周波数10Hz〜300Hz、パルス幅25n秒、波長308nmのXeClエキシマレーザを用いることができる。
そして、第1のレーザ光の照射では、半導体膜101の任意の一点におけるレーザ光のショット数を、7以上、より好ましくは10以上100以下とする。後に行われる第2のレーザ光の照射よりもショット数を多く設定することで、半導体膜101中の結晶欠陥を修復し、レーザ光照射後の半導体膜105の結晶性を良好にすることが出来る。
レーザ光は、半導体に選択的に吸収される固体レーザの基本波または第2高調波であることが望ましい。具体的には、例えば、波長が250nm以上700nm以下の範囲のレーザ光を用いることができる。また、レーザ光のエネルギーは、レーザ光の波長、レーザ光の表皮深さ、半導体膜101の膜厚などを考慮して決定することができる。例えば、半導体膜101の厚さが120nm程度で、レーザ光の波長が308nmのパルス発振レーザを用いる場合は、第1のレーザ光のエネルギー密度を600mJ/cm2〜700mJ/cm2とすれば良い。
なお、レーザ光のエネルギーは、ビームスポット内において完全に均一であることは稀であり、通常、ビームスポット内の位置によってその高さは異なる。また、ビームスポットの境界線は明確ではなく、理論上は無限大に及んでいる。本実施の形態では、ビームプロファイラーを用いて、レーザ光のエネルギー分布を測定し、該レーザ光の最高のエネルギー値を100%と仮定したときに、その最高のエネルギー値に対して約80%以上のエネルギー値を有するレーザ光が照射される領域を、1ショットのレーザ光が照射されるビームスポットの範囲とする。
パルス発振のレーザとして、例えばArレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、CO2レーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザを用いることができる。
そして、第1のレーザ光の照射は、希ガスまたは窒素雰囲気のような不活性雰囲気、または減圧雰囲気で行うことが好ましい。上記雰囲気中でレーザ光を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザ光を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザ光の被照射面に窒素ガスなど不活性ガスを吹き付けることで不活性雰囲気でのレーザ光の照射を実現することができる。不活性雰囲気または減圧雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うことで、大気雰囲気で行う場合よりも、自然酸化膜の発生をより抑え、レーザ光照射後に形成される半導体膜105にひび割れが生じる、またはピッチ縞が発生するのを抑え、半導体膜105の平坦性を向上させることができ、レーザ光の使用可能なエネルギー範囲を広くすることができる。
光学系により、レーザ光は、エネルギー分布を均一にし、かつ断面の形状を線状にすることが好ましい。このことにより、スループット良く、かつレーザ光の照射を均一に行うことができる。レーザ光のビーム長は、ベース基板103の1辺より長くすることで、1回の走査で、ベース基板103に貼り付けられた全ての半導体膜101にレーザ光を照射することができる。レーザ光のビーム長がベース基板103の1辺より短い場合は、複数回の走査で、ベース基板103に貼り付けられた全ての半導体膜101にレーザ光を照射することができるような、長さにすればよい。
例えば、本実施の形態では、第1のレーザ光の照射は、半導体膜101の膜厚が140nm程度の場合、具体的には次のように行うことができる。レーザ光のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いる。光学系により、レーザ光の断面を0.4mm×120mmの線状に整形する。レーザ光の走査速度を0.5mm/秒とし、ビームショット数を約24ショットで、レーザ光を半導体膜101に照射する。
第1のレーザ光を照射する前に、ドライエッチングにより半導体膜101の表面を平坦化している場合、ドライエッチングにより半導体膜101の表面付近で結晶欠陥などの損傷が生じていることがある。しかし上記レーザ光の照射により、ドライエッチングにより生じる損傷をも補修することが可能である。
なお、上述したように、不活性雰囲気、または減圧雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うことで、大気雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うよりも、半導体膜105の表面に自然酸化膜が発生するのを抑えることが出来るが、第1のレーザ光の照射は結晶性の改善に重点を置くために、後の第2のレーザ光の照射よりもショット数を多くしている。よって、第2のレーザ光の照射に比べて、雰囲気中の僅かな酸素と半導体とが反応しやすく、自然酸化膜が出来やすいと言える。そのため、半導体膜105の表面には、自然酸化膜に起因して、走査間隔に合わせ、クレーター状または粒状の凹凸を有する荒れた領域であるピッチ縞107が、発生する可能性がある。
第1のレーザ光の照射により、分離の際に生じた半導体膜の表面荒れはある程度抑えられるが、半導体膜105の平坦性をより高める、具体的には半導体膜105の表面に形成されたピッチ縞107による高低差を小さく抑える、またはピッチ縞の数を低減するため、本発明の一態様では、図2(B)に示すように、半導体膜105に第2のレーザ光の照射を行う。図2(B)では、レーザ光108を矢印で示した方向に走査させることで、半導体膜105の平坦性が高められている様子を示している。そして、第2のレーザ光の照射により、図2(C)に示すように、平坦性が高められた半導体膜109が形成される。
第2のレーザ光の照射は、半導体膜105を部分溶融させる程度のエネルギー密度で行うことが好ましい。完全溶融させると、液相となった半導体膜105で無秩序な核発生が起こるために、半導体膜105が再結晶化された際に微結晶が生成し、結晶性が低下するからである。部分溶融させることで、半導体膜105では、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する、いわゆる縦成長が起こる。縦成長による再結晶化によって、半導体膜105の結晶欠陥が減少され、結晶性が回復される。なお、半導体膜105が完全溶融状態であるとは、半導体膜105が絶縁膜102との界面まで溶融され、液体状態になっていることをいう。他方、半導体膜105が部分溶融状態であるとは、上層が溶融して液相であり、下層が固相である状態をいう。
なお、半導体膜を部分溶融させる程度のエネルギー密度は、半導体膜の膜厚によって異なる。また、半導体膜の平均的な膜厚が同じであっても、表面の粗さによって、半導体膜を部分溶融させる程度のエネルギー密度は変わってくる。例えば、分離の際に生じた半導体膜の表面荒れに起因して、半導体膜の膜厚にはばらつきが生じている。この表面荒れに起因する膜厚のばらつきは、ピッチ縞の部分における膜厚のばらつきよりも大きい。よって、第2のレーザ光照射前の半導体膜105は、第1のレーザ光照射前の半導体膜101よりも膜厚のばらつきが小さく、よって、半導体膜105の最小膜厚は半導体膜101の最小膜厚よりも大きいことが予想される。したがって、半導体膜101と半導体膜105とは平均的な膜厚は同程度であるが、第2のレーザ光の照射におけるエネルギー密度は、第1のレーザ光の照射におけるエネルギー密度よりも、大きくすることができ、使用可能なエネルギー密度の範囲が広いと言える。
この第2のレーザ光の照射には、半導体膜105を部分的に溶融させるためにパルス発振でレーザ光の照射を行うことが望ましい。例えば、パルス発振の場合は、繰り返し周波数1MHz以下、パルス幅10n秒以上500n秒以下である。例えば、繰り返し周波数10Hz〜300Hz、パルス幅25n秒、波長308nmのXeClエキシマレーザを用いることができる。
そして、第2のレーザ光は、少なくともピッチ縞が形成されている領域のみを狙って照射を行うようすれば良く、ショット数は多くする必要ない。かえってショット数を増やすと、第1のレーザ光の照射の際に半導体膜105の表面に形成されているかもしれない自然酸化膜に起因して、半導体膜109にひび割れが生じてしまう恐れがある。したがって、第2のレーザ光の照射におけるショット数は、第1のレーザ光の照射よりも低くする。具体的に、第2のレーザ光の照射における、半導体膜105の任意の一点におけるショット数は、0より大きく2以下とする。
レーザ光は、半導体に選択的に吸収される固体レーザの基本波または第2高調波であることが望ましい。具体的には、例えば、波長が250nm以上700nm以下の範囲のレーザ光を用いることができる。また、レーザ光のエネルギーは、レーザ光の波長、レーザ光の表皮深さ、半導体膜105の膜厚などを考慮して決定することができる。例えば、半導体膜105の厚さが120nm程度で、レーザ光の波長が308nmのパルス発振レーザを用いる場合は、第2のレーザ光のエネルギー密度を600mJ/cm2〜700mJ/cm2とすれば良い。
パルス発振のレーザとして、例えばArレーザ、Krレーザ、エキシマレーザ、CO2レーザ、YAGレーザ、Y2O3レーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAlO3レーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、銅蒸気レーザまたは金蒸気レーザを用いることができる。
そして、第2のレーザ光の照射は、希ガスまたは窒素雰囲気のような不活性雰囲気、または減圧雰囲気で行うことが好ましい。上記雰囲気中でレーザ光を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザ光を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザ光の被照射面に窒素ガスなど不活性ガスを吹き付けることで不活性雰囲気でのレーザ光の照射を実現することができる。不活性雰囲気または減圧雰囲気において第2のレーザ光の照射を行うことで、大気雰囲気で行う場合よりも、自然酸化膜の発生をより抑え、レーザ光照射後に形成される半導体膜109にひび割れが生じる、またはピッチ縞が発生するのを抑え、半導体膜109の平坦性を向上させることができ、レーザ光の使用可能なエネルギー範囲を広くすることができる。
光学系により、レーザ光は、エネルギー分布を均一にし、かつ断面の形状を線状にすることが好ましい。このことにより、スループットが良く、かつレーザ光の照射を均一に行うことができる。レーザ光のビーム長は、ベース基板103の1辺より長くすることで、1回の走査で、ベース基板103に貼り付けられた全ての半導体膜105にレーザ光を照射することができる。レーザ光のビーム長がベース基板103の1辺より短い場合は、複数回の走査で、ベース基板103に貼り付けられた全ての半導体膜105にレーザ光を照射することができるような、長さにすればよい。
例えば、本実施の形態では、第2のレーザ光の照射は、半導体膜105の膜厚が140nm程度の場合、具体的には次のように行うことができる。レーザ光のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いる。光学系により、レーザ光の断面を0.4mm×120mmの線状に整形する。レーザ光の走査速度を8.0mm/秒とし、ビームショット数を約1.5ショットで、レーザ光を半導体膜105に照射する。
なお、第2のレーザ光の照射は、半導体膜の表面を平坦化することに重点を置いているため、そのショット数は第1のレーザ光の照射に比べて少ない。よって、自然酸化膜に起因する半導体膜のひび割れが生じにくい。しかし、より高い平坦性を望むのであれば、第2のレーザ光の照射を行う前に、半導体膜105の表面に形成されているかもしれない自然酸化膜を除去するようにしても良い。自然酸化膜の除去については、上述した酸化膜104の除去のプロセスを参照することが出来る。
レーザ光を照射した後、半導体膜109に500℃以上650℃以下の加熱処理を行うことが好ましい。この加熱処理によって、上述した第1のレーザ光または第2のレーザ光の照射で回復されなかった、半導体膜109の欠陥の消滅、半導体膜109の歪みの緩和をすることができる。この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、抵抗加熱炉を用いた場合は、500℃の温度で1時間加熱した後、550℃で4時間加熱するとよい。
上述した一連のプロセスを経て、本発明の一態様に係るSOI基板を作製することが出来る。さらに、半導体膜109を用いて各種半導体素子を作製することで、半導体装置を作製することが出来る。本発明の一態様により、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、平坦性を確保しつつ、結晶性の高い半導体膜を有する、SOI基板を提供することができる。或いは、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、特性のばらつきが抑えられ、なおかつ、良好な特性を得ることができる半導体素子を用いた、半導体装置の作製方法を提供することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る、SOI基板及び半導体装置のより詳しい作製方法について説明する。
図3(A)に示すように、ボンド基板200を洗浄した後、ボンド基板200上に絶縁膜201を形成する。
ボンド基板200として、シリコン、ゲルマニウムなどの単結晶半導体基板を用いることができる。その他に、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体で形成された単結晶半導体基板を、ボンド基板200として用いることができる。またボンド基板200として、結晶格子に歪みを有するシリコン、シリコンに対しゲルマニウムが添加されたシリコンゲルマニウムなどの半導体基板を用いていても良い。
なお、ボンド基板200に用いられる単結晶半導体基板は、結晶軸の方向が基板内において揃っていることが望ましいが、点欠陥、線欠陥、面欠陥などの格子欠陥が完璧に排除された完全結晶である必要はない。
また、ボンド基板200の形状は円形に限定されず、円形以外の形状に加工されていても良い。例えば、後に貼り合わせるベース基板203の形状が一般的に矩形状であること、及び縮小投影型露光装置などの露光装置の露光領域が矩形であること等を考慮し、ボンド基板200が矩形となるように、その形状を加工しても良い。ボンド基板200の形状の加工は、市販の円形状の単結晶半導体基板を切断することで、行うことができる。
絶縁膜201は、単数の絶縁膜を用いたものであっても、複数の絶縁膜を積層して用いたものであっても良い。絶縁膜201の厚さは、後に不純物が含まれる領域が除去されることを考慮して、15nm以上500nm以下とすると良い。
絶縁膜201を構成する膜には、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化ゲルマニウム膜、窒化ゲルマニウム膜、酸化窒化ゲルマニウム膜、窒化酸化ゲルマニウム膜などの珪素またはゲルマニウムを組成に含む絶縁膜を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物でなる絶縁膜、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物でなる絶縁膜、酸化窒化アルミニウムなどの金属の酸化窒化物でなる絶縁膜、窒化酸化アルミニウムなどの金属の窒化酸化物でなる絶縁膜を用いることもできる。
例えば本実施の形態では、ボンド基板200を熱酸化することによって形成された酸化珪素を、絶縁膜201として用いる例を示す。なお、図3(A)では、絶縁膜201がボンド基板200の全面を覆うように形成されているが、絶縁膜201は、ボンド基板200の少なくとも一面に形成されていればよい。
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質をいう。例えば、酸化窒化珪素とは、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれる物質とすることができる。また、窒化酸化珪素とは、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上30原子%以下の範囲で含まれる物質とすることができる。但し、上記組成の範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
また、ボンド基板200の表面を熱酸化することにより絶縁膜201を形成する場合、熱酸化は、含有水分量が低い酸素を用いるドライ酸化、酸素雰囲気中に塩化水素などのハロゲンを含むガスを添加する熱酸化、などを用いることができる。また、水素を酸素で燃焼させて水を作るパイロジェニック酸化、高純度純水を100度以上に加熱した水蒸気を用いて酸化を行う水蒸気酸化などのウェット酸化を、絶縁膜201の形成に用いても良い。
ベース基板203にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いる場合、上記不純物がベース基板203から分離後に形成される半導体膜に拡散することを防止できるようなバリア膜を、少なくとも1層以上、絶縁膜201が有することが好ましい。バリア膜として用いることが出来る絶縁膜には、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などが挙げられる。バリア膜として用いる絶縁膜は、例えば厚さ15nm〜300nmの膜厚で形成することが好ましい。これらのバリア膜は、不純物の拡散を防止する効果が高いが、内部応力が高い。そのため、ボンド基板200と接する下層の絶縁膜には、上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある膜を選択することが好ましい。上層の絶縁膜の応力を緩和する効果のある絶縁膜として、酸化珪素膜、およびボンド基板200を熱酸化して形成した熱酸化膜などがある。下層の絶縁膜の厚さは5nm以上200nm以下とすることができる。
酸化珪素を絶縁膜201として用いる場合、絶縁膜201はシランと酸素、TEOS(テトラエトキシシラン)と酸素等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の気相成長法によって形成することができる。この場合、絶縁膜201の表面を酸素プラズマ処理で緻密化しても良い。また、窒化珪素を絶縁膜201として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。また、窒化酸化珪素を絶縁膜201として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガス、またはシランと酸化窒素の混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。
また、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を、絶縁膜201として用いても良い。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
ソースガスに有機シランを用いることで、プロセス温度が350℃以下で、平滑な表面を有する酸化珪素膜を形成することができる。また、熱CVD法で、加熱温度が200℃以上500℃以下で形成されるLTO(低温酸化物、low temperature oxide)で形成することができる。LTOの形成には、シリコンソースガスにモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)などを用い、酸素ソースガスに一酸化二窒素(N2O)などを用いることができる。
例えば、ソースガスにTEOSとO2を用いて、酸化珪素膜でなる絶縁膜201を形成する場合、TEOSの流量15sccm、O2の流量750sccm、成膜圧力100Pa、成膜温度300℃、RF出力300W、電源周波数13.56MHzとすれば良い。
なお、有機シランを用いて形成された酸化珪素膜、または低温で成膜した窒化酸化珪素膜などの、比較的低温で成膜された絶縁膜は、表面にOH基を多く有する。OH基は水分子と水素結合することでシラノール基を形成して、ベース基板と絶縁膜とを低温で接合する。そして、最終的には共有結合であるシロキサン結合が、ベース基板と絶縁膜との間に形成される。よって、上記の有機シランを用いて形成された酸化珪素膜、または比較的低温で成膜されたLTOなどの絶縁膜は、Smart Cutなどで用いられているOH基が存在しない或いは飛躍的に少ない熱酸化膜よりも、低温での接合に向いていると言える。
絶縁膜201は、平滑で親水性の接合面をボンド基板200の表面に形成するための膜である。そのため、絶縁膜201の平均粗さRaが0.7nm以下、より好ましくは、0.4nm以下が好ましい。また、絶縁膜201の厚さは10nm以上200nm以下とすることができる。好ましい厚さは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
次に図3(B)に示すように、ボンド基板200に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを、矢印で示すように絶縁膜201を介してボンド基板200に注入し、ボンド基板200の表面から一定の深さの領域に、微小ボイドを有する脆化層202を形成する。例えば、脆化層は、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された層を意味し、その状態は脆化層を形成する手段によって異なる。なお、ボンド基板の一表面から脆化層までの領域も多少脆弱化される場合があるが、脆化層は後に分断される領域及びその付近の層を指す。
脆化層202が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。加速エネルギーは加速電圧などにより調節できる。イオンの平均侵入深さとほぼ同じ深さの領域に脆化層202が形成される。イオンを注入する深さで、ボンド基板200から後に分離される半導体膜204の厚さが決定される。脆化層202が形成される深さは、ボンド基板200の表面から例えば50nm以上500nm以下とすることができ、好ましい深さの範囲は50nm以上200nm以下とすると良い。
イオンをボンド基板200に注入するには、質量分離を伴わないイオンドーピング法で行うことがタクトタイムを短縮するという点で望ましいが、本発明は質量分離を伴うイオン注入法を用いていても良い。
ソースガスに水素(H2)を用いる場合、水素ガスを励起してH+、H2 +、H3 +を生成することができる。ソースガスから生成されるイオン種の割合は、プラズマの励起方法、プラズマを発生させる雰囲気の圧力、ソースガスの供給量などを調節することで、変化させることができる。イオンドーピング法でイオン注入を行う場合、イオンビームに、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +が50%以上、より好ましくは80%以上含まれていることが好ましい。H3 +の割合を80%以上とすることで、イオンビームに含まれるH2 +イオンの割合が相対的に小さくなるため、イオンビームに含まれる水素イオンの平均侵入深さのばらつきが小さくなるので、イオンの注入効率が向上し、タクトタイムを短縮することができる。
また、H3 +はH+、H2 +に比べて質量が大きい。そのため、イオンビームにおいて、H3 +の割合が多い場合と、H+、H2 +の割合が多い場合とでは、ドーピングの際の加速電圧が同じであっても、前者の場合の方が、ボンド基板200の浅い領域に水素を注入することができる。また前者の場合、ボンド基板200に注入される水素の、厚さ方向における濃度分布が急峻となるため、脆化層202の厚さ自体も薄くすることができる。
水素ガスを用いて、イオンドーピング法でイオン注入を行う場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm2以上6×1016ions/cm2以下とすることで、イオンビームに含まれるイオン種及びその割合、絶縁膜201の膜厚にもよるが、脆化層202をボンド基板200の表面から深さ50nm以上500nm以下の領域に形成することができる。
例えば、ボンド基板200が単結晶シリコン基板であり、絶縁膜201が厚さ100nmの熱酸化膜で形成されている場合、ソースガスである100%水素ガスの流量が50sccm、ビーム電流密度5μA/cm2、加速電圧50kV、ドーズ量2.0×1016ions/cm2の条件では、ボンド基板200から厚さ146nm程度の半導体膜を分離することができる。なお、水素をボンド基板200に添加する際の条件が同じであっても、絶縁膜201の膜厚をより大きくすることで、半導体膜の膜厚をより小さくすることができる。
イオンビームのソースガスにヘリウム(He)を用いることもできる。ヘリウムを励起して生成されるイオン種がHe+が殆どであるため、質量分離を伴わないイオンドーピング法でも、He+を主たるイオンとしてボンド基板200に注入することができる。よって、イオンドーピング法で、効率良く、微小な空孔を脆化層202に形成することができる。ヘリウムを用いて、イオンドーピング法でイオン注入を行う場合、加速電圧10kV以上200kV以下、ドーズ量1×1016ions/cm2以上6×1016ions/cm2以下とすることができる。
ソースガスに塩素ガス(Cl2ガス)、フッ素ガス(F2ガス)などのハロゲンガスを用いることもできる。
なお、イオンドーピング法でボンド基板200にイオン注入を行う場合、イオンドーピング装置内に存在する不純物がイオンと共に被処理物に注入されるため、絶縁膜201の表面近傍にS、Ca、Fe、Mo等の不純物が存在する可能性がある。よって、絶縁膜201の表面近傍の最も不純物が多いと考えられる領域を、エッチングや、研磨などにより除去しておいても良い。具体的には、絶縁膜201の表面から10nm〜100nm、より望ましくは30〜70nm程度の深さまでの領域を除去すれば良い。ドライエッチングだと、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法などを用いることができる。例えば、窒化酸化珪素膜の表面近傍をICPエッチング法で除去する場合、エッチングガスであるCHF3の流量を7.5sccm、Heの流量を100sccm、反応圧力5.5Pa、下部電極の温度70℃、コイル型の電極に投入するRF(13.56MHz)電力475W、下部電極(バイアス側)に投入する電力300W、エッチング時間10sec程度とすることで、表面から50nm程度の深さまでの領域を除去することができる。
エッチングガスとして、フッ素系ガスであるCHF3の他に、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4などの塩素系ガス、CF4、SF6、NF3などのフッ素系ガス、O2を適宜用いることができる。また用いるエッチングガスにHe以外の不活性気体を添加しても良い。例えば、添加する不活性元素として、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種の元素を用いることができる。また窒化酸化珪素膜の表面近傍をウェットエッチングで除去する場合、フッ素水素アンモニウム、フッ化アンモニウム等を含むフッ酸系の溶液を、エッチャントとして用いれば良い。また研磨は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)または液体ジェット研磨などにより、行うことができる。
脆化層202の形成後に、絶縁膜201の表面近傍における汚染の著しい領域を、エッチングまたは研磨などにより除去することで、ベース基板203上に形成される半導体膜204に混入する不純物の量を抑えることができる。また、最終的に形成される半導体装置では、不純物の影響により、しきい値電圧の変動、リーク電流の増加などのトランジスタの電気的特性の低下及び信頼性の低下が生じるのを防ぐことができる。
次に、図3(C)、図3(D)に示すように、絶縁膜201を間に挟むように、ボンド基板200とベース基板203を貼り合わせる。
なお、ベース基板203とボンド基板200との貼り合わせを行う前に、貼り合わせに係る表面、すなわち本実施の形態では、ボンド基板200上に形成された絶縁膜201とベース基板203の表面に、絶縁膜201とベース基板203の接合強度を向上させるための表面処理を施すことが好ましい。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理およびドライ処理の組み合わせが挙げられる。異なるウェット処理、または異なるドライ処理を組み合わせて行っても良い。ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄などの超音波洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)、塩酸と過酸化水素水を用いた洗浄などが挙げられる。ドライ処理としては、不活性ガス中性原子ビーム処理、不活性ガスイオンビーム処理、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。上記のような表面処理を行うことで、貼り合わせに係る表面の親水性および清浄度を高め、その結果、接合強度を向上させることができる。
貼り合わせは、ベース基板203と、ボンド基板200上の絶縁膜201とを密着させた後、重ね合わせたベース基板203とボンド基板200の一部に、1N/cm2以上500N/cm2以下、好ましくは11N/cm2以上20N/cm2以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からベース基板203と絶縁膜201とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。
接合はファンデルワールス力や水素結合を用いて行われているため、室温でも強固な接合が形成される。なお、上記接合は低温で行うことが可能であるため、ベース基板203は様々なものを用いることが可能である。例えばベース基板203としては、アルミノシリケートガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどの電子工業用に使われる各種ガラス基板の他、石英基板、セラミック基板、サファイア基板などの基板を用いることが出来る。さらにベース基板203として、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの半導体基板などを用いることができる。或いは、ステンレス基板を含む金属基板をベース基板203として用いても良い。なお、ベース基板203として用いるガラス基板は、熱膨張係数が25×10−7/℃以上50×10−7/℃以下(好ましくは、30×10−7/℃以上40×10−7/℃以下)であり、歪み点が580℃以上680℃以下(好ましくは、600℃以上680℃以下)である基板を用いることが好ましい。また、ガラス基板として無アルカリガラス基板を用いると、不純物による半導体装置の汚染を抑えることができる。
ガラス基板としては、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることができる。マザーガラスとしては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mmまたは、730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)などのサイズの基板が知られている。大面積のマザーガラス基板をベース基板203として用いてSOI基板を製造することで、SOI基板の大面積化が実現できる。マザーガラス基板のような大型の基板をベース基板203として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、一度に多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
EAGLE2000(コーニング社製)等のように、加熱処理を加えることで大きくシュリンクするようなガラス基板をベース基板203として用いる場合、接合工程後に貼り合わせの不良が生じる場合がある。よって、シュリンクに起因する貼り合わせの不良を回避するために、接合を行う前に、ベース基板203に予め加熱処理を施しておいても良い。
また、ベース基板203上に絶縁膜を形成しておいても良い。ベース基板203は、その表面に絶縁膜が必ずしも形成されていなくとも良いが、ベース基板203の表面に絶縁膜を形成しておくことで、ベース基板203からボンド基板200に、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。またベース基板203の表面に絶縁膜を形成しておく場合、ベース基板203上の絶縁膜が絶縁膜201と接合するので、ベース基板203として用いることができる基板の種類がさらに広がる。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、後の半導体素子の作製工程における処理温度に耐え得るのであれば、ベース基板203上に絶縁膜を形成する場合において、ベース基板203として用いることが可能である。プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。ベース基板203上に絶縁膜を形成する場合、絶縁膜201と同様に、該絶縁膜の表面に表面処理を行ってから貼り合わせを行うと良い。
ベース基板203にボンド基板200を貼り合わせた後、ベース基板203と絶縁膜201との接合界面での結合力を増加させるための加熱処理を行うことが好ましい。この処理温度は、脆化層202に亀裂を発生させない温度とし、200℃以上400℃以下の温度範囲で処理することができる。また、この温度範囲で加熱しながら、ベース基板203にボンド基板200を貼り合わせることで、ベース基板203と絶縁膜201との間における接合の結合力を強固にすることができる。
なお、ボンド基板200とベース基板203とを貼り合わせるときに、接合面がゴミなどにより汚染されてしまうと、汚染部分は接合されなくなる。接合面の汚染を防ぐために、ボンド基板200とベース基板203との貼り合わせは、気密な処理室内で行うことが好ましい。また、ボンド基板200とベース基板203との貼り合わせるとき、処理室内を5.0×10−3Pa程度の減圧状態とし、接合処理の雰囲気を清浄にするようにしても良い。
次いで、加熱処理を行うことで、脆化層202において隣接する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、図4(A)に示すように、脆化層202においてボンド基板200の一部である半導体膜204が、ボンド基板200から分離する。絶縁膜201はベース基板203に接合しているので、ベース基板203上にはボンド基板200から分離された半導体膜204が固定される。半導体膜204をボンド基板200から分離するための加熱処理の温度は、ベース基板203の歪み点を越えない温度とする。
この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。GRTA装置を用いる場合は、加熱温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とすることができる。抵抗加熱装置を用いる場合は、加熱温度200℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とすることができる。
また、上記加熱処理は、マイクロ波などの高周波による誘電加熱を用いて行っても良い。誘電加熱による加熱処理は、高周波発生装置において生成された周波数300MHz乃至3THzの高周波をボンド基板200に照射することで行うことができる。具体的には、例えば、2.45GHzのマイクロ波を900W、14分間照射することで、脆化層内の隣接する微小ボイドどうしを結合させ、最終的にボンド基板200を脆化層において分断させることができる。
抵抗加熱を有する縦型炉を用いた加熱処理の具体的な処理方法を説明する。ボンド基板200が貼り付けられたベース基板203を、縦型炉のボートに載置し、該ボートを縦型炉のチャンバーに搬入する。ボンド基板200の酸化を抑制するため、まずチャンバー内を排気して真空状態とする。真空度は、5×10−3Pa程度とする。真空状態にした後、窒素をチャンバー内に供給して、チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にする。この間、加熱温度を200℃に上昇させる。
チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にした後、温度200℃で2時間加熱する。その後、1時間かけて400℃に温度上昇させる。加熱温度400℃の状態が安定したら、1時間かけて600℃に温度上昇させる。加熱温度600℃の状態が安定したら、600℃で2時間加熱処理する。その後、1時間かけて、加熱温度400℃まで下げ、10分〜30分間後に、チャンバー内からボートを搬出する。大気雰囲気下で、ボート上に並べられたボンド基板200、及び半導体膜204が貼り付けられたベース基板203を冷却する。
上記の抵抗加熱炉を用いた加熱処理は、絶縁膜201とベース基板203との結合力を強化するための加熱処理と、脆化層202を分割させる加熱処理が連続して行われる。この2つの加熱処理を異なる装置で行う場合は、例えば、抵抗加熱炉において、処理温度200℃、処理時間2時間の加熱処理を行った後、貼り合わされたベース基板203とボンド基板200を炉から搬出する。次いで、RTA装置で、処理温度600℃以上700℃以下、処理時間1分から数時間以内程度の加熱処理を行い、ボンド基板200を脆化層202で分断させる。
なお、ボンド基板200の周辺部は、ベース基板203と接合していないことがある。これは、ボンド基板200の周辺部が面取りされている、或いは周辺部が曲率を有しているため、ベース基板203と絶縁膜201とが密着しない、または、ボンド基板200の周辺部では脆化層202が分割しにくいなどの理由によるものと考えられる。また、その他の理由として、ボンド基板200を作製する際に行われるCMPなどの研磨が、ボンド基板200の周辺部で不十分であり、中央部に比べて周辺部では表面が荒れていることが挙げられる。また、ボンド基板200を移送する際に、キャリア等でボンド基板200の周辺部に傷が入ってしまった場合、該傷も、周辺部がベース基板203に接合しにくい理由になると考えられる。そのため、ベース基板203には、ボンド基板200よりもサイズの小さい半導体膜204が貼り付けられる。
なお、ボンド基板200を分離させる前に、ボンド基板200に水素化処理を行うようにしても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
なお、ベース基板203と複数のボンド基板200とを貼り合わせる場合、該複数のボンド基板200が異なる結晶面方位を有していても良い。半導体中における多数キャリアの移動度は、結晶面方位によって異なる。よって、形成する半導体素子に適した結晶面方位を有するボンド基板200を、適宜選択して半導体膜204を形成すればよい。例えば半導体膜204を用いてn型の半導体素子を形成するならば、{100}面を有する半導体膜204を形成することで、該半導体素子における多数キャリアの移動度を高めることができる。また、例えば半導体膜204を用いてp型の半導体素子を形成するならば、{110}面を有する半導体膜204を形成することで、該半導体素子における多数キャリアの移動度を高めることができる。そして、半導体素子としてトランジスタを形成するならば、チャネルの向きと結晶面方位とを考慮し、半導体膜204の貼り合わせの方向を定めるようにする。
次に、半導体膜204の表面を研磨により平坦化しても良い。平坦化は必ずしも必須ではないが、平坦化を行うことで、後に形成される半導体膜211及び半導体膜212とゲート絶縁膜の界面の特性を向上させることが出来る。具体的に研磨は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)または液体ジェット研磨などにより、行うことができる。半導体膜204の厚さは、上記平坦化により薄くなる。上記平坦化は、エッチングする前の半導体膜204に施しても良いが、後にエッチングにより形成される半導体膜211及び半導体膜212に施しても良い。
また研磨ではなく、半導体膜204の表面をエッチングすることでも、半導体膜204の表面を平坦化することができる。エッチングには、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いれば良い。
例えばICPエッチング法を用いる場合、エッチングガスである塩素の流量40sccm〜100sccm、コイル型の電極に投入する電力100W〜200W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W〜100W、反応圧力0.5Pa〜1.0Paとすれば良い。例えば、エッチングガスである塩素の流量100sccm、反応圧力1.0Pa、下部電極の温度70℃、コイル型の電極に投入するRF(13.56MHz)電力150W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W、エッチング時間25sec〜27secとすることで、半導体膜204を50nm乃至60nm程度にまで薄膜化することができる。エッチングガスには、塩素、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄または弗化窒素などのフッ素系ガス、酸素などを適宜用いることができる。
上記エッチングにより、後に形成される半導体素子にとって最適となる膜厚まで半導体膜204を薄膜化できるのみならず、半導体膜204の表面を平坦化することができる。
なお、ベース基板203に密着された半導体膜204は、脆化層202の形成、脆化層202における分断によって、結晶欠陥が形成されている、または、その表面の平坦性が損なわれている。そこで、本発明の一態様では、結晶欠陥を低減、および平坦性を向上するために、半導体膜204の表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜205を除去する処理を行った後、図4(B)に示すように、半導体膜204に第1のレーザ光の照射を行う。
なお、酸化膜205の除去処理の具体的な手順については、実施の形態1の記載を参照することが出来る。本実施の形態では、フッ化水素の濃度が0.5wt%のDHFに半導体膜204を110秒間さらすこと酸化膜205を除去する。
また、第1のレーザ光の照射は、半導体膜204中の結晶欠陥の修復に重点を置いている。図4(B)では、レーザ光206を矢印で示した方向に走査させることで、半導体膜204の結晶欠陥が修復されている様子を示している。そして、第1のレーザ光の照射により、図4(C)に示すように、結晶欠陥が修復された半導体膜207が形成される。
第1のレーザ光の照射の具体的な手順については、実施の形態1の記載を参照することが出来る。具体的に本実施の形態では、第1のレーザ光の照射は、半導体膜204の膜厚が146nm程度の場合、次のように行うことができる。レーザ光のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いる。光学系により、レーザ光の断面を0.4mm×120mmの線状に整形する。レーザ光の走査速度を0.5mm/秒とし、スキャンピッチを16.7μm、ビームショット数を約24ショットで、レーザ光を半導体膜204に照射する。
希ガスまたは窒素雰囲気のような不活性雰囲気、または減圧雰囲気にて、レーザ光を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザ光を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザ光の被照射面に窒素ガスなど不活性ガスを吹き付けることで不活性雰囲気でのレーザ光の照射を実現することができる。不活性雰囲気または減圧雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うことで、大気雰囲気で行う場合よりも、自然酸化膜の発生をより抑え、レーザ光照射後に形成される半導体膜207にひび割れが生じる、またはピッチ縞が発生するのを抑え、半導体膜207の平坦性を向上させることができ、レーザ光の使用可能なエネルギー範囲を広くすることができる。
第1のレーザ光を照射する前に、ドライエッチングにより半導体膜204の表面を平坦化している場合、ドライエッチングにより半導体膜204の表面付近で結晶欠陥などの損傷が生じていることがある。しかし上記レーザ光の照射により、ドライエッチングにより生じる損傷をも補修することが可能である。
なお、上述したように、不活性雰囲気、または減圧雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うことで、大気雰囲気において第1のレーザ光の照射を行うよりも、半導体膜207の表面に自然酸化膜が発生するのを抑えることが出来るが、第1のレーザ光の照射は結晶性の改善に重点を置くために、後の第2のレーザ光の照射よりもショット数を多くしている。よって、第2のレーザ光の照射に比べて、雰囲気中の僅かな酸素と半導体とが反応しやすく、自然酸化膜が出来やすいと言える。そのため、半導体膜207の表面には、自然酸化膜に起因して、走査間隔に合わせ、クレーター状または粒状の凹凸を有する荒れた領域であるピッチ縞208が、発生する可能性がある。
半導体膜207の平坦性を高める、具体的には半導体膜207の表面に形成されたピッチ縞208による高低差を小さく抑える、またはピッチ縞の数を低減するため、本発明の一態様では、図4(D)に示すように、半導体膜207に第2のレーザ光の照射を行う。図4(D)では、レーザ光209を矢印で示した方向に走査させることで、半導体膜207の平坦性が高められている様子を示している。そして、第2のレーザ光の照射により、図5(A)に示すように、平坦性が高められた半導体膜210が形成される。
第2のレーザ光の照射の具体的な手順については、実施の形態1の記載を参照することが出来る。具体的に、本実施の形態では、第2のレーザ光の照射は、半導体膜207の膜厚が146nm程度の場合、次のように行うことができる。レーザ光のレーザ発振器として、XeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いる。光学系により、レーザ光の断面を0.4mm×120mmの線状に整形する。レーザ光の走査速度を8.0mm/秒とし、スキャンピッチを267μm、ビームショット数を約1.5ショットで、レーザ光を半導体膜207に照射する。
なお、第2のレーザ光の照射は、半導体膜の表面を平坦化することに重点を置いているため、そのショット数は第1のレーザ光の照射に比べて少ない。よって、自然酸化膜に起因する半導体膜のひび割れが生じにくい。しかし、より高い平坦性を望むのであれば、第2のレーザ光の照射を行う前に、半導体膜207の表面に形成されているかもしれない自然酸化膜を除去するようにしても良い。自然酸化膜の除去については、実施の形態1の記載を参照することが出来る。
次に第2のレーザ光を照射した後に、半導体膜210の表面をエッチングしても良い。第2のレーザ光の照射後に半導体膜210の表面をエッチングする場合は、必ずしも第1のレーザ光の照射を行う前に半導体膜204の表面をエッチングする必要はない。また、第1のレーザ光の照射を行う前に半導体膜204の表面をエッチングした場合は、必ずしも第2のレーザ光の照射後に半導体膜210の表面をエッチングする必要はない。或いは、第1のレーザ光の照射後、第2のレーザ光の照射前に、半導体膜207の表面をエッチングするようにしても良い。また、第1のレーザ光の照射前、第1のレーザ光の照射後であり第2のレーザ光の照射前、第2のレーザ光の照射後の全てのタイミングにおいて、エッチングを行っても良い。
上記エッチングにより、後に形成される半導体素子にとって最適となる膜厚まで半導体膜210を薄膜化できるのみならず、半導体膜210の表面を平坦化することができる。
レーザ光を照射した後、半導体膜210に500℃以上650℃以下の加熱処理を行うことが好ましい。この加熱処理によって、レーザ光の照射で回復されなかった、半導体膜210の欠陥の消滅、半導体膜210の歪みの緩和をすることができる。この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。例えば、抵抗加熱炉を用いた場合は、500℃の温度で1時間加熱した後、550℃で4時間加熱するとよい。
次に、図5(B)に示すように、半導体膜210を部分的にエッチングすることで、半導体膜210から島状の半導体膜211と半導体膜212を形成する。半導体膜210をさらにエッチングすることで、半導体膜210の端部において接合の強度が不十分である領域を、除去することができる。
なお、本実施の形態では、一つの半導体膜210をエッチングすることで半導体膜211と半導体膜212を形成しているが、形成される半導体膜の数はこれに限定されない。
上記工程を経て形成された半導体膜211と半導体膜212を用い、例えば図5(C)に示すようにトランジスタ213、トランジスタ214などの各種半導体素子を形成することが出来る。
なお、半導体膜210が分離された後のボンド基板200は、その表面を平坦化することで、再度、半導体膜を分離させることができる。
具体的には、ボンド基板200の主に端部に残存した絶縁膜201を、エッチングなどにより除去する。絶縁膜201が酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素で形成されている場合、フッ酸を用いたウェットエッチングを用いることが出来る。
次に、半導体膜210の分離によりボンド基板200の端部に形成された凸部と、水素を過剰に含んでいる、残存した脆化層を除去する。ボンド基板200のエッチングには、ウェットエッチングを用いることが好ましく、エッチング液には、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide、略称:TMAH)溶液を用いることができる。
次に、ボンド基板200の表面を研磨する。研磨は、CMPを用いることができる。ボンド基板200の表面を平滑化するため、1μm〜10μm程度研磨することが望ましい。研磨後は、ボンド基板200表面に研磨粒子などが残るため、フッ酸などを用いたRCA洗浄を行う。
ボンド基板200を再利用することで、半導体基板の材料コストを削減することができる。
上述した一連のプロセスを経て、本発明の一態様に係るSOI基板を作製することが出来る。さらに、半導体膜210を用いて各種半導体素子を作製することで、半導体装置を作製することが出来る。本発明の一態様により、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、平坦性を確保しつつ、結晶性の高い半導体膜を有する、SOI基板を提供することができる。或いは、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、特性のばらつきが抑えられ、なおかつ、良好な特性を得ることができる半導体素子を用いた、半導体装置の作製方法を提供することができる。
なお本発明の一態様は、マイクロプロセッサ、画像処理回路などの集積回路や、質問器とデータの送受信が非接触でできるRFタグ、半導体表示装置等、ありとあらゆる半導体装置の作製に用いることができる。半導体表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、半導体膜を用いた回路素子を駆動回路に有しているその他の半導体表示装置がその範疇に含まれる。
本実施の形態は、上述した実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、ベース基板上に絶縁膜を形成した場合の、SOI基板及び半導体装置の作製方法について説明する。
まず、図6(A)に示すように、ベース基板203の少なくとも一面に絶縁膜220を形成する。ベース基板203の表面に絶縁膜220を形成しておくことで、ベース基板203からボンド基板200に、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。
ベース基板203は、実施の形態2に記載したとおり、様々なものを用いることが可能である。例えばベース基板203としては、アルミノシリケートガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどの電子工業用に使われる各種ガラス基板の他、石英基板、セラミック基板、サファイア基板などの基板を用いることが出来る。さらにベース基板203として、シリコン、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの半導体基板などを用いることができる。或いは、ステンレス基板を含む金属基板をベース基板203として用いても良い。なお、ベース基板203として用いるガラス基板は、熱膨張係数が25×10−7/℃以上50×10−7/℃以下(好ましくは、30×10−7/℃以上40×10−7/℃以下)であり、歪み点が580℃以上680℃以下(好ましくは、600℃以上680℃以下)である基板を用いることが好ましい。また、ガラス基板として無アルカリガラス基板を用いると、不純物による半導体装置の汚染を抑えることができる。
ガラス基板としては、液晶パネルの製造用に開発されたマザーガラス基板を用いることができる。マザーガラスとしては、例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm)、第4世代(680mm×880mmまたは、730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)などのサイズの基板が知られている。大面積のマザーガラス基板をベース基板203として用いてSOI基板を製造することで、SOI基板の大面積化が実現できる。マザーガラス基板のような大型の基板をベース基板203として用いることで、SOI基板の大面積化が実現できる。SOI基板の大面積化が実現すれば、一度に多数のIC、LSI等のチップを製造することができ、1枚の基板から製造されるチップ数が増加するので、生産性を飛躍的に向上させることができる。
EAGLE2000(コーニング社製)等のように、加熱処理を加えることで大きくシュリンクするようなガラス基板をベース基板203として用いる場合、接合工程後に貼り合わせの不良が生じる場合がある。よって、シュリンクに起因する貼り合わせの不良を回避するために、接合を行う前に、ベース基板203に予め加熱処理を施しておいても良い。
またベース基板203の表面に絶縁膜220を形成しておく場合、ベース基板203上の絶縁膜220が、ボンド基板200上の絶縁膜201と接合するので、ベース基板203として用いることができる基板の種類がさらに広がる。プラスチック等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は耐熱温度が一般的に低い傾向にあるが、後の半導体素子の作製工程における処理温度に耐え得るのであれば、ベース基板203として用いることが可能である。プラスチック基板として、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。
絶縁膜220を構成する膜には、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化ゲルマニウム膜、窒化ゲルマニウム膜、酸化窒化ゲルマニウム膜、窒化酸化ゲルマニウム膜などの珪素またはゲルマニウムを組成に含む絶縁膜を用いることができる。また、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの金属の酸化物でなる絶縁膜、窒化アルミニウムなどの金属の窒化物でなる絶縁膜、酸化窒化アルミニウムなどの金属の酸化窒化物でなる絶縁膜、窒化酸化アルミニウムなどの金属の窒化酸化物でなる絶縁膜を用いることもできる。
ベース基板203にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属などの半導体装置の信頼性を低下させる不純物を含むような基板を用いる場合、上記不純物がベース基板203から分離後に形成される半導体膜に拡散することを防止できるようなバリア膜を、少なくとも1層以上、絶縁膜220が有することが好ましい。バリア膜として用いることが出来る絶縁膜には、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などが挙げられる。バリア膜として用いる絶縁膜は、例えば厚さ15nm〜300nmの膜厚で形成することが好ましい。これらのバリア膜は、不純物の拡散を防止する効果が高いが、内部応力が高い。そのため、バリア膜を絶縁膜220に用いる場合、ボンド基板200上の絶縁膜201には、絶縁膜220の応力を緩和する効果のある膜を選択することが好ましい。バリア膜の応力を緩和する効果のある絶縁膜として、酸化珪素膜、およびボンド基板200を熱酸化して形成した熱酸化膜などがある。
酸化珪素を絶縁膜220として用いる場合、絶縁膜220はシランと酸素、TEOS(テトラエトキシシラン)と酸素等の混合ガスを用い、熱CVD、プラズマCVD、常圧CVD、バイアスECRCVD等の気相成長法によって形成することができる。この場合、絶縁膜220の表面を酸素プラズマ処理で緻密化しても良い。また、窒化珪素を絶縁膜220として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。また、窒化酸化珪素を絶縁膜220として用いる場合、シランとアンモニアの混合ガス、またはシランと酸化窒素の混合ガスを用い、プラズマCVD等の気相成長法によって形成することができる。
また、有機シランガスを用いて化学気相成長法により作製される酸化珪素を、絶縁膜220として用いても良い。有機シランガスとしては、珪酸エチル(TEOS:化学式Si(OC2H5)4)、テトラメチルシラン(TMS:化学式Si(CH3)4)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリエトキシシラン(SiH(OC2H5)3)、トリスジメチルアミノシラン(SiH(N(CH3)2)3)等のシリコン含有化合物を用いることができる。
ソースガスに有機シランを用いることで、プロセス温度が350℃以下で、平滑な表面を有する酸化珪素膜を形成することができる。また、熱CVD法で、加熱温度が200℃以上500℃以下で形成されるLTO(低温酸化物、low temperature oxide)で形成することができる。LTOの形成には、シリコンソースガスにモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si2H6)などを用い、酸素ソースガスに一酸化二窒素(N2O)などを用いることができる。
例えば、ソースガスにTEOSとO2を用いて、酸化珪素膜でなる絶縁膜220を形成する場合、TEOSの流量15sccm、O2の流量750sccm、成膜圧力100Pa、成膜温度300℃、RF出力300W、電源周波数13.56MHzとすれば良い。
なお、有機シランを用いて形成された酸化珪素膜、または低温で成膜した窒化酸化珪素膜などの、比較的低温で成膜された絶縁膜は、表面にOH基を多く有する。OH基は水分子と水素結合することでシラノール基を形成して、ベース基板と絶縁膜とを低温で接合する。そして、最終的には共有結合であるシロキサン結合が、ベース基板と絶縁膜との間に形成される。よって、上記の有機シランを用いて形成された酸化珪素膜、または比較的低温で成膜されたLTOなどの絶縁膜は、Smart Cutなどで用いられているOH基が存在しない或いは飛躍的に少ない熱酸化膜よりも、低温での接合に向いていると言える。
絶縁膜201は接合面となるため、その平均粗さRaが0.7nm以下、より好ましくは、0.4nm以下が好ましい。また、絶縁膜201の厚さは10nm以上200nm以下とすることができる。好ましい厚さは5nm以上500nm以下であり、より好ましくは10nm以上200nm以下である。
次に、図6(B)に示すように、内部に脆化層202が形成され、なおかつ少なくともその一面に絶縁膜201が形成されたボンド基板200を、絶縁膜201と絶縁膜220が接するようにベース基板203と貼り合わせる。ボンド基板200、絶縁膜201及び脆化層202については、実施の形態2の記載を参照することができる。
なお、ベース基板203とボンド基板200との貼り合わせを行う前に、貼り合わせに係る表面、すなわち本実施の形態では、ボンド基板200上に形成された絶縁膜201と、ベース基板203上に形成された絶縁膜220の表面に、絶縁膜201とベース基板203の接合強度を向上させるための表面処理を施すことが好ましい。
表面処理としては、ウェット処理、ドライ処理、またはウェット処理およびドライ処理の組み合わせが挙げられる。異なるウェット処理、または異なるドライ処理を組み合わせて行っても良い。ウェット処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄などの超音波洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)、塩酸と過酸化水素水を用いた洗浄などが挙げられる。ドライ処理としては、不活性ガス中性原子ビーム処理、不活性ガスイオンビーム処理、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。上記のような表面処理を行うことで、貼り合わせに係る表面の親水性および清浄度を高め、その結果、接合強度を向上させることができる。
貼り合わせは、ベース基板203と、ボンド基板200上の絶縁膜201とを密着させた後、重ね合わせたベース基板203とボンド基板200の一部に、1N/cm2以上500N/cm2以下、好ましくは11N/cm2以上20N/cm2以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からベース基板203と絶縁膜201とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。
ベース基板203にボンド基板200を貼り合わせた後、絶縁膜201と絶縁膜220の接合界面での結合力を増加させるための加熱処理を行うことが好ましい。この処理温度は、脆化層202に亀裂を発生させない温度とし、200℃以上400℃以下の温度範囲で処理することができる。また、この温度範囲で加熱しながら、ベース基板203にボンド基板200を貼り合わせることで、ベース基板203と絶縁膜201との間における接合の結合力を強固にすることができる。
なお、ボンド基板200とベース基板203とを貼り合わせるときに、接合面にゴミなどにより汚染されてしまうと、汚染部分は接合されなくなる。接合面の汚染を防ぐために、ボンド基板200とベース基板203との貼り合わせは、気密な処理室内で行うことが好ましい。また、ボンド基板200とベース基板203との貼り合わせるとき、処理室内を5.0×10−3Pa程度の減圧状態とし、接合処理の雰囲気を清浄にするようにしても良い。
次いで、加熱処理を行うことで、脆化層202において隣接する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、図6(C)に示すように、脆化層202においてボンド基板200の一部である半導体膜204が、ボンド基板200から分離する。絶縁膜201と絶縁膜220は接合しているので、ベース基板203上にはボンド基板200から分離された半導体膜204が固定される。半導体膜204をボンド基板200から分離するための加熱処理の温度は、ベース基板203の歪み点を越えない温度とする。
この加熱処理には、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置、抵抗加熱炉、マイクロ波加熱装置を用いることができる。RTA装置には、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。GRTA装置を用いる場合は、加熱温度550℃以上650℃以下、処理時間0.5分以上60分以内とすることができる。抵抗加熱装置を用いる場合は、加熱温度200℃以上650℃以下、処理時間2時間以上4時間以内とすることができる。
また、上記加熱処理は、マイクロ波などの高周波による誘電加熱を用いて行っても良い。誘電加熱による加熱処理は、高周波発生装置において生成された周波数300MHz乃至3THzの高周波をボンド基板200に照射することで行うことができる。具体的には、例えば、2.45GHzのマイクロ波を900W、14分間照射することで、脆化層内の隣接する微小ボイドどうしを結合させ、最終的にボンド基板200を脆化層において分断させることができる。
抵抗加熱を有する縦型炉を用いた加熱処理の具体的な処理方法を説明する。ボンド基板200が貼り付けられたベース基板203を、縦型炉のボートに載置し、該ボートを縦型炉のチャンバーに搬入する。ボンド基板200の酸化を抑制するため、まずチャンバー内を排気して真空状態とする。真空度は、5×10−3Pa程度とする。真空状態にした後、窒素をチャンバー内に供給して、チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にする。この間、加熱温度を200℃に上昇させる。
チャンバー内を大気圧の窒素雰囲気にした後、温度200℃で2時間加熱する。その後、1時間かけて400℃に温度上昇させる。加熱温度400℃の状態が安定したら、1時間かけて600℃に温度上昇させる。加熱温度600℃の状態が安定したら、600℃で2時間加熱処理する。その後、1時間かけて、加熱温度400℃まで下げ、10分〜30分間後に、チャンバー内からボートを搬出する。大気雰囲気下で、ボート上に並べられたボンド基板200、及び半導体膜204が貼り付けられたベース基板203を冷却する。
上記の抵抗加熱炉を用いた加熱処理は、接合面における結合力を強化するための加熱処理と、脆化層202を分割させる加熱処理が連続して行われる。この2つの加熱処理を異なる装置で行う場合は、例えば、抵抗加熱炉において、処理温度200℃、処理時間2時間の加熱処理を行った後、貼り合わされたベース基板203とボンド基板200を炉から搬出する。次いで、RTA装置で、処理温度600℃以上700℃以下、処理時間1分から数時間以内程度の加熱処理を行い、ボンド基板200を脆化層202で分断させる。
なお、ボンド基板200の周辺部は、ベース基板203と接合していないことがある。これは、ボンド基板200の周辺部が面取りされている、或いは周辺部が曲率を有しているため、絶縁膜201と絶縁膜220とが密着しない、または、ボンド基板200の周辺部では脆化層202が分割しにくいなどの理由によるものと考えられる。また、その他の理由として、ボンド基板200を作製する際に行われるCMPなどの研磨が、ボンド基板200の周辺部で不十分であり、中央部に比べて周辺部では表面が荒れていることが挙げられる。また、ボンド基板200を移送する際に、キャリア等でボンド基板200の周辺部に傷が入ってしまった場合、該傷も、周辺部がベース基板203に接合しにくい理由になると考えられる。そのため、ベース基板203には、ボンド基板200よりもサイズの小さい半導体膜204が貼り付けられる。
なお、ボンド基板200を分離させる前に、ボンド基板200に水素化処理を行うようにしても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
なお、ベース基板203と複数のボンド基板200とを貼り合わせる場合、該複数のボンド基板200が異なる結晶面方位を有していても良い。半導体中における多数キャリアの移動度は、結晶面方位によって異なる。よって、形成する半導体素子に適した結晶面方位を有するボンド基板200を、適宜選択して半導体膜204を形成すればよい。例えば半導体膜204を用いてn型の半導体素子を形成するならば、{100}面を有する半導体膜204を形成することで、該半導体素子における多数キャリアの移動度を高めることができる。また、例えば半導体膜204を用いてp型の半導体素子を形成するならば、{110}面を有する半導体膜204を形成することで、該半導体素子における多数キャリアの移動度を高めることができる。そして、半導体素子としてトランジスタを形成するならば、チャネルの向きと結晶面方位とを考慮し、半導体膜204の貼り合わせの方向を定めるようにする。
次に、半導体膜204の表面を研磨により平坦化しても良い。平坦化は必ずしも必須ではないが、平坦化を行うことで、半導体膜とゲート絶縁膜の界面の特性を向上させることが出来る。具体的に研磨は、化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)または液体ジェット研磨などにより、行うことができる。半導体膜204の厚さは、上記平坦化により薄くなる。
また研磨ではなく、半導体膜204の表面をエッチングすることでも、半導体膜204の表面を平坦化することができる。エッチングには、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)エッチング法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチング法、平行平板型(容量結合型)エッチング法、マグネトロンプラズマエッチング法、2周波プラズマエッチング法またはヘリコン波プラズマエッチング法等のドライエッチング法を用いれば良い。
例えばICPエッチング法を用いる場合、エッチングガスである塩素の流量40sccm〜100sccm、コイル型の電極に投入する電力100W〜200W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W〜100W、反応圧力0.5Pa〜1.0Paとすれば良い。例えば、エッチングガスである塩素の流量100sccm、反応圧力1.0Pa、下部電極の温度70℃、コイル型の電極に投入するRF(13.56MHz)電力150W、下部電極(バイアス側)に投入する電力40W、エッチング時間25sec〜27secとすることで、半導体膜204を50nm乃至60nm程度にまで薄膜化することができる。エッチングガスには、塩素、塩化硼素、塩化珪素または四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄または弗化窒素などのフッ素系ガス、酸素などを適宜用いることができる。
上記エッチングにより、後に形成される半導体素子にとって最適となる膜厚まで半導体膜204を薄膜化できるのみならず、半導体膜204の表面を平坦化することができる。
なお、ベース基板203に密着された半導体膜204は、脆化層202の形成、脆化層202における分断によって、結晶欠陥が形成されている、または、その表面の平坦性が損なわれている。そこで、本発明の一態様では、結晶欠陥を低減、および平坦性を向上するために、半導体膜204の表面に形成されている自然酸化膜などの酸化膜205を除去する処理を行った後、第1のレーザ光の照射、次いで第2のレーザ光の照射を行う。自然酸化膜などの酸化膜205の除去処理、第1のレーザ光の照射、第2のレーザ光の照射については、実施の形態1及び実施の形態2の記載を参照することが出来る。
上述した一連のプロセスを経て、図6(D)に示すように、平坦性が高められ、なおかつ結晶性の良好である半導体膜210が、絶縁膜201及び絶縁膜220を間に挟んでベース基板203上に形成されたSOI基板を作製することが出来る。さらに、半導体膜210を用いて各種半導体素子を作製することで、半導体装置を作製することが出来る。本発明の一態様により、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、平坦性を確保しつつ、結晶性の高い半導体膜を有する、SOI基板を提供することができる。或いは、高レベルの雰囲気制御が可能なレーザ光の照射装置を用いずとも、特性のばらつきが抑えられ、なおかつ、良好な特性を得ることができる半導体素子を用いた、半導体装置の作製方法を提供することができる。
なお本発明の一態様は、マイクロプロセッサ、画像処理回路などの集積回路や、質問器とデータの送受信が非接触でできるRFタグ、半導体表示装置等、ありとあらゆる半導体装置の作製に用いることができる。半導体表示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)等や、半導体膜を用いた回路素子を駆動回路に有しているその他の半導体表示装置がその範疇に含まれる。
本実施の形態は、上述した実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体膜が貼り付けられたベース基板、所謂SOI基板を用いた半導体装置の作製方法の一例として、半導体素子の一つである薄膜トランジスタを作製する方法を説明する。複数の薄膜トランジスタを組み合わせることで、各種の半導体装置が形成できる。
まず図7(A)に示すように、ベース基板600上に、絶縁膜601を間に挟んで、島状の半導体膜602と島状の半導体膜603とが形成されている。
半導体膜602と半導体膜603には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物、若しくはリン、砒素などのn型不純物が添加されていても良い。例えば、p型を付与する不純物としてボロンを添加する場合、5×1016cm−3以上1×1017cm−3以下の濃度で添加すれば良い。閾値電圧を制御するための不純物の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜602と半導体膜603に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、またはパターニングにより形成された半導体膜602及び半導体膜603に対しても行うようにしても良い。
また半導体膜602と半導体膜603を形成した後、ゲート絶縁膜604を形成する前に水素化処理を行っても良い。水素化処理は、例えば、水素雰囲気中において350℃、2時間程度行う。
次に図7(B)に示すように、半導体膜602と半導体膜603を覆うように、ゲート絶縁膜604を形成する。ゲート絶縁膜604は、高密度プラズマ処理を行うことにより半導体膜602と半導体膜603の表面を酸化または窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成される。この5〜10nmの絶縁膜をゲート絶縁膜604として用いる。例えば、亜酸化窒素(N2O)をArで1〜3倍(流量比)に希釈して、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して半導体膜602と半導体膜603の表面を酸化若しくは窒化させる。この処理により1nm〜10nm(好ましくは2nm〜6nm)の絶縁膜を形成する。さらに亜酸化窒素(N2O)とシラン(SiH4)を導入し、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して気相成長法により酸化窒化シリコン膜を形成してゲート絶縁膜を形成する。固相反応と気相成長法による反応を組み合わせることにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁膜を形成することができる。
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化または窒化は固相反応で進むため、ゲート絶縁膜604と半導体膜602及び半導体膜603との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また高密度プラズマ処理により半導体膜602及び半導体膜603を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また半導体膜が結晶性を有する場合、高密度プラズマ処理を用いて半導体膜の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界においてのみ酸化が速く進んでしまうのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えることができる。
或いは、半導体膜602と半導体膜603を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜604を形成するようにしても良い。また、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムまたは酸化タンタルを含む膜を、単層で、または積層させることで、ゲート絶縁膜604を形成しても良い。
或いは、水素を含んだゲート絶縁膜604を形成した後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜604中に含まれる水素を半導体膜602及び半導体膜603中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜604は、プロセス温度を350℃以下で、プラズマCVD法で窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを堆積することで、形成すれば良い。半導体膜602及び半導体膜603に水素を供給することで、半導体膜602及び半導体膜603中、及びゲート絶縁膜604と半導体膜602及び半導体膜603の界面での、捕獲中心となるような欠陥を低減することができる。
次に図7(C)に示すように、ゲート絶縁膜604上に導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体膜602と半導体膜603の上方に電極607を形成する。導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることが出来る。導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタル(Ta)を、2層目にタングステン(W)を用いることが出来る。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型を付与する不純物がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型を付与する不純物がドーピングされたSiとWSix等も用いることが出来る。
また、本実施の形態では電極607を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。電極607は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。3つ以上の導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
なお電極607を形成する際に用いるマスクとして、レジストの代わりに酸化珪素、窒化酸化珪素等をマスクとして用いてもよい。この場合、パターニングして酸化珪素、窒化酸化珪素等のマスクを形成する工程が加わるが、エッチング時におけるマスクの膜減りがレジストよりも少ないため、所望の幅を有する電極607を形成することができる。またマスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極607を形成しても良い。
なお液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また電極607は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
次に図7(D)に示すように、電極607をマスクとして一導電型を付与する不純物元素を半導体膜602、半導体膜603に添加する。本実施の形態では、半導体膜602にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を、半導体膜603にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する。なお、p型を付与する不純物元素を半導体膜603に添加する際、n型の不純物元素が添加される半導体膜602はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜602に添加する際、p型の不純物元素が添加される半導体膜603はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。或いは、先に半導体膜602及び半導体膜603にp型もしくはn型のいずれか一方を付与する不純物元素を添加した後、一方の半導体膜のみに選択的により高い濃度でp型もしくはn型のうちの他方を付与する不純物元素のいずれか一方を添加するようにしても良い。上記不純物元素の添加により、半導体膜602に不純物領域608、半導体膜603に不純物領域609が形成される。
次に、図8(A)に示すように、電極607の側面にサイドウォール610を形成する。サイドウォール610は、例えば、ゲート絶縁膜604及び電極607を覆うように新たに絶縁膜を形成し、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、新たに形成された該絶縁膜を部分的にエッチングすることで、形成することが出来る。上記異方性エッチングにより、新たに形成された絶縁膜が部分的にエッチングされて、電極607の側面にサイドウォール610が形成される。なお上記異方性エッチングにより、ゲート絶縁膜604も部分的にエッチングしても良い。サイドウォール610を形成するための絶縁膜は、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、珪素膜、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜や、有機樹脂などの有機材料を含む膜を、単層または積層して形成することができる。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化珪素膜をプラズマCVD法によって形成する。またエッチングガスとしては、CHF3とヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール610を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に図8(B)に示すように、電極607及びサイドウォール610をマスクとして、半導体膜602、半導体膜603に一導電型を付与する不純物元素を添加する。なお、半導体膜602、半導体膜603には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。なお、p型を付与する不純物元素を半導体膜603に添加する際、n型の不純物元素が添加される半導体膜602はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。逆にn型を付与する不純物元素を半導体膜602に添加する際、p型の不純物元素が添加される半導体膜603はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体膜602に、一対の高濃度不純物領域611と、一対の低濃度不純物領域612と、チャネル形成領域613とが形成される。また上記不純物元素の添加により、半導体膜603に、一対の高濃度不純物領域614と、一対の低濃度不純物領域615と、チャネル形成領域616とが形成される。高濃度不純物領域611、614はソース又はドレインとして機能し、低濃度不純物領域612、615はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体膜603上に形成されたサイドウォール610と、半導体膜602上に形成されたサイドウォール610は、キャリアが移動する方向における幅が同じになるように形成しても良いが、該幅が異なるように形成しても良い。p型トランジスタとなる半導体膜603上のサイドウォール610の幅は、n型トランジスタとなる半導体膜602上のサイドウォール610の幅よりも長くすると良い。なぜならば、p型トランジスタにおいてソース及びドレインを形成するために注入されるボロンは拡散しやすく、短チャネル効果を誘起しやすいためである。p型トランジスタにおいて、サイドウォール610の幅より長くすることで、ソース及びドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となり、ソース及びドレインを低抵抗化することができる。
次に、ソース及びドレインをさらに低抵抗化するために、半導体膜602、半導体膜603をシリサイド化することで、シリサイド層を形成しても良い。シリサイド化は、半導体膜に金属を接触させ、GRTA法、LRTA法等の加熱処理により、半導体膜中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド層としては、コバルトシリサイド若しくはニッケルシリサイドを用いれば良い。半導体膜602、半導体膜603の厚さが薄い場合には、この領域の半導体膜602、半導体膜603の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いる金属の材料として、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等を用いることができる。また、レーザ照射やランプなどの光照射によってシリサイド層を形成しても良い。
上述した一連の工程により、nチャネル型トランジスタ617と、pチャネル型トランジスタ618とが形成される。
次に図8(C)に示すように、トランジスタ617、トランジスタ618を覆うように絶縁膜619を形成する。絶縁膜619は必ずしも設ける必要はないが、絶縁膜619を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がトランジスタ617、トランジスタ618へ侵入するのを防ぐことが出来る。具体的に絶縁膜619として、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いるのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化珪素膜を、絶縁膜619として用いる。この場合、上記水素化の工程は、該窒化酸化珪素膜形成後に行っても良い。
次に、トランジスタ617、トランジスタ618を覆うように、絶縁膜619上に絶縁膜620を形成する。絶縁膜620は、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることができる。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜620を形成しても良い。絶縁膜620は、その表面をCMP法などにより平坦化させても良い。
なおシロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、または芳香族炭化水素のうち、少なくとも1種を有していても良い。
絶縁膜620の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に図9に示すように、半導体膜602と半導体膜603がそれぞれ一部露出するように絶縁膜619及び絶縁膜620にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体膜602と半導体膜603に接する導電膜621、導電膜622を形成する。コンタクトホール開口時のエッチングに用いられるガスは、CHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電膜621、導電膜622は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的に導電膜621、導電膜622として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることが出来る。また上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。導電膜621、導電膜622は、上記金属が用いられた膜を単層または複数積層させて形成することが出来る。
アルミニウムを主成分とする合金の例として、アルミニウムを主成分としニッケルを含むものが挙げられる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方とを含むものも例として挙げることが出来る。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜621、導電膜622を形成する材料として最適である。特にアルミニウムシリコン膜は、導電膜621、導電膜622をパターニングで形成するとき、レジストベークにおけるヒロックの発生をアルミニウム膜に比べて防止することができる。また、珪素(Si)の代わりに、アルミニウム膜に0.5%程度のCuを混入させても良い。
導電膜621、導電膜622は、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造を採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物を用いて形成された膜である。アルミニウムシリコン膜を間に挟むようにバリア膜を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体膜602と半導体膜603上に薄い酸化膜ができていたとしても、バリア膜に含まれるチタンがこの酸化膜を還元し、導電膜621、導電膜622と、半導体膜602及び半導体膜603とがそれぞれ良好なコンタクトをとることができる。またバリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電膜621、導電膜622を下層からTi、窒化チタン、Al−Si、Ti、窒化チタンの5層構造とすることが出来る。
また導電膜621、導電膜622として、WF6ガスとSiH4ガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WF6を水素還元して形成したタングステンを、導電膜621、導電膜622として用いても良い。
なお、導電膜621はnチャネル型トランジスタ617の高濃度不純物領域611に接続されている。導電膜622はpチャネル型トランジスタ618の高濃度不純物領域614に接続されている。
図9には、nチャネル型トランジスタ617及びpチャネル型トランジスタ618の上面図が示されている。ただし図9では導電膜621、導電膜622、絶縁膜619、絶縁膜620を省略した図を示している。
また本実施の形態では、nチャネル型トランジスタ617とpチャネル型トランジスタ618が、それぞれゲートとして機能する電極607を1つずつ有する場合を例示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の作製方法で形成された半導体装置が有するトランジスタは、ゲートとして機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
また本発明の作製方法で形成された半導体装置が有するトランジスタは、ゲートプレナー構造を有していても良い。
なお、SOI基板が有する半導体膜は、ほぼ単結晶に近いものが得られる。そのため、多結晶の半導体膜と比べて、配向のばらつきが小さいのでトランジスタの閾値電圧のばらつきを小さくすることができる。また、多結晶の半導体膜に比べて結晶粒界が著しく少ないので、結晶粒界に起因するリーク電流を抑え、半導体装置の省電力化を実現することができる。そしてレーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜では、ビームスポット内のエネルギー密度の分布に起因して、半導体膜の表面に突起(リッジ)が現れやすい。しかし、SOI基板が有する半導体膜は、貼り合わせにより生じた半導体膜内の欠陥を修復できる程度に、低いエネルギー密度でレーザ光を照射すれば良い。よって、SOI基板が有する半導体膜の表面の平坦性は、レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜に比べて飛躍的に高いため、SOI基板が有する半導体膜上に形成されるゲート絶縁膜の膜厚を5nm乃至50nm程度まで薄くすることが可能である。よって、ゲート電圧を抑えつつも高いオン電流を得ることができる。また、レーザ結晶化により得られる多結晶の半導体膜を用いる場合、高い移動度を得るために、レーザ光の走査方向に沿ってトランジスタが有する半導体膜の配置を決める必要があったが、SOI基板が有する半導体膜ではその必要がないため、半導体装置の設計における制約が少なくなる。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の半導体装置の作製方法を用いて形成される、液晶表示装置の画素の具体的な構成について説明する。図10は、液晶表示装置の画素の上面図を一例として示している。図11は図10に示した上面図の破線A1−A2における断面図に相当する。
図10及び図11に示す画素は、走査線1810と、信号線1811と、スイッチング素子として機能するトランジスタ1812と、画素電極1813と、液晶素子に印加される電圧を保持するための保持容量1814とを、少なくとも有している。また、図10及び図11に示す画素は、トランジスタ1812及び保持容量1814と、画素電極1813とを電気的に接続するための配線1815を有している。
トランジスタ1812と保持容量1814とは、半導体膜1816を共有しており、上記半導体膜1816は、本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を用いることで形成された半導体膜を、所望の形状に加工(パターニング)することで形成することができる。
また、半導体膜1816上には絶縁膜1817が形成されており、絶縁膜1817上には導電膜1818と、走査線1810とが形成されている。導電膜1818と、走査線1810とは、絶縁膜1817に形成された導電膜を所望の形状に加工することで形成することができる。なお、走査線1810の一部は、トランジスタ1812のゲート電極として機能し、半導体膜1816と重なっている。また、導電膜1818と、半導体膜1816とが、絶縁膜1817を間に挟んで重なっている部分が、保持容量1814に相当する。
また、配線1815と信号線1811とは、保持容量1814と、トランジスタ1812とを覆っている層間絶縁膜1820に形成された導電膜を、所望の形状に加工することで形成することができる。
半導体膜1816は、本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を用いて作製されているので、結晶性が良好である。よって、トランジスタ1812の移動度を高め、オン電流を高くすることが出来る。また、半導体膜1816は、本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を用いて作製されているので、高い平坦性を有している。よって、トランジスタ1812のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜1817が半導体膜1816の有する凹凸によって部分的に薄くなるなどして絶縁耐圧が低くなるのを防ぎ、ゲート絶縁膜の膜厚を薄くすることが可能である。よって、素子の微細化を実現することが出来る。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態6)
本実施の形態では、1枚のベース基板を用いて複数の半導体装置を形成する場合の手順について説明する。
図12(A)に、ベース基板1800にボンド基板1801を貼り合わせている様子を斜視図で示す。貼り合わせは、ボンド基板1801に形成された絶縁膜とベース基板1800とが接合することで、もしくはボンド基板1801に形成された絶縁膜とベース基板1800に形成された絶縁膜とが接合することで、行われる。
次に、図12(B)に示すように、ボンド基板1801を部分的に分離させることで、ボンド基板1801の一部である半導体膜1802を、ベース基板1800上に形成する。
次に、半導体膜1802上に形成されている自然酸化膜などの酸化膜を除去した後、図13(A)に示すようにレーザ光の照射を行う。本発明の一態様では、レーザ光の照射は、第1のレーザ光の照射と、第2のレーザ光の照射の2回行う。第1のレーザ光の照射と第2のレーザ光の照射の間に、自然酸化膜などの酸化膜の除去を行うようにしても良い。第1のレーザ光の照射及び第2のレーザ光の照射において、ビームスポット1804を矢印で示す方向に走査させることで、結晶性の改善及び平坦性の向上を図る。
そして図13(B)に示すように、図13(A)においてレーザ光の照射が行われた半導体膜1802を用いて、半導体装置1806を複数形成し、ダイシングなどでベース基板1800ごと半導体装置1806どうしを切り離す。上記構成により、複数の半導体装置1806を形成することが出来る。
なお、本実施の形態ではベース基板1800とボンド基板1801とを一対一で貼り合わせる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。1つのベース基板1800にボンド基板1801を複数貼り合わせるようにしても良い。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るSOI基板の作製方法を用いることにより、SOI基板が有する半導体膜の平坦性が向上することを説明する。
表面の平坦性を、原子間力顕微鏡による観察像(AFM像)の解析により得られる表面粗さの指標となる測定値で、評価した。評価に用いる試料A、試料B、試料Cは、旭硝子社製のガラス基板(厚さ0.7mm、商品名AN100)上に、酸素雰囲気中に塩化水素を含むガスを添加することによる熱酸化で形成された膜厚約100nmの酸化珪素である絶縁膜と、ボンド基板を分離することで上記絶縁膜上に形成された半導体膜と、を有するSOI基板を用いた。全ての試料は、1回目のレーザ光の照射前に、0.5wt%の希フッ酸を用いて約110秒間半導体膜の表面を洗浄することにより、半導体膜上に形成されている自然酸化膜を除去した。
また、全ての試料において、1回目のレーザ光の照射は、レーザ発振器としてXeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いた。そして、1回目のレーザ光は、走査速度を0.5mm/秒、ビームショット数を約24ショットとし、室温にて窒素ガスを試料に吹き付けながら行った。
また、全ての試料において、2回目のレーザ光の照射は、1回目と同様に、レーザ発振器としてXeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いた。そして、2回目のレーザ光は、ビームショット数を約1ショットとし、室温にて窒素ガスを試料に吹き付けながら行った。
そして、全ての試料において、2回目のレーザ光の照射は、1回目のレーザ光の照射におけるエネルギー密度を100%としたときに、60%、65%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、95%、100%のエネルギー密度となるように条件振りを行った。
なお、1回目のレーザ光のエネルギー密度は、完全溶融する直前のエネルギー密度とした。完全溶融する直前のエネルギー密度は、半導体膜の膜厚などにより異なるため、各試料において1回目のレーザ光のエネルギー密度を条件振りし、各条件においてレーザ光照射後の半導体膜の断面をSTEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)にて観察した。そして、STEM画像を用いて、完全溶融に達するぎりぎりのエネルギー密度を割り出し、各試料において、該エネルギー密度を1回目のレーザ光として用いた。
具体的に、試料Aは、面方位(100)の単結晶シリコン基板から分離した膜厚約146nmの半導体膜を用いる。1回目のレーザ光のエネルギー密度は、その膜厚から約582.7mJ/cm2とした。そして、1回目のレーザ光の照射後、酸化膜除去の処理を行わずに、2回目のレーザ光の照射を行った。
試料Bは、面方位(110)の単結晶シリコン基板から分離した膜厚約138nmの半導体膜を用いる。1回目のレーザ光のエネルギー密度は、その膜厚から約552.9mJ/cm2とした。そして、1回目のレーザ光の照射後、酸化膜除去の処理を行わずに、2回目のレーザ光の照射を行った。
試料Cは、面方位(100)の単結晶シリコン基板から分離した膜厚約146nmの半導体膜を用いる。1回目のレーザ光のエネルギー密度は、その膜厚から約582.7mJ/cm2とした。そして、1回目のレーザ光の照射後、酸化膜除去の処理を行ってから、2回目のレーザ光の照射を行った。2回目のレーザ光の照射前の酸化膜除去の処理は、1回目のレーザ光の照射前の酸化膜除去の処理と、同じ条件で行った。
また、AFMの測定条件は以下の通りである。
・原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI3800N/SPA500(セイコーインスツルメンツ(株)製)
・測定モード:ダイナミックフォースモード(DFM:Dynamic Force Mode)
・カンチレバー:SI−DF40(シリコン製、バネ定数42N/m、共振周波数250〜390kHz、探針の先端R≦10nm)
・測定面積:10μm×10μm
・測定点数:256×256点
なお、ダイナミックフォースモードとは、固有振動数でカンチレバーを共振させた状態で、カンチレバーの振動振幅が一定になるように、カンチレバーに付いている探針と試料との間の距離を制御しながら、試料の表面形状を評価する測定モードのことである。このダイナミックフォースモードでは、試料の表面とカンチレバーとが非接触であるため、試料の表面を傷つけることなく、元の形状を保ったまま測定できる。そして、付属のソフトウェアにより、表面粗さ解析を行い、平均面粗さRa、山谷の最大高低差P−Vを算出した。
図17に、AFM像をもとに計算された各試料の、半導体膜の平均面粗さRaを示す。縦軸は、平均面粗さRa(nm)を示している。横軸は、1回目のレーザ光に対する2回目のレーザ光の、相対的なエネルギー密度の強さ(%)を示している。
図17に示すように、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行わなかった試料Aと試料Bでは、相対的なエネルギー密度が約60%〜70%の範囲において、平均面粗さRaが約2.5nm以上と、最高値を示した。一方、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行った試料Cでは、相対的なエネルギー密度が約55%〜65%の範囲において、平均面粗さRaが約1.2nm以上と、最高値を示した。これらの平均面粗さRaの最高値の比較から、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行うことで、平均面粗さRaを低く抑え、平坦性を高くできることが分かった。
また、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行わなかった試料Aと試料Bでは、最大高低差(P−V)が、それぞれ約30nm、約32nmであった。一方、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行った試料Cでは、最大高低差(P−V)が約26nmであり、試料A、試料Bと比較して低い値が得られた。よって、これらの最大高低差(P−V)の比較からも、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜の除去を行うことで、最大高低差(P−V)を低く抑え、平坦性を高くできることが分かった。
なお、平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値である。測定面とは全測定データの示す面である。指定面とは、粗さ計測の対象となる面である。基準面とは、指定面の高さの平均値をZ0とするとき、Z=Z0で表される平面である。山谷の最大高低差(P−V)は、指定面において、最も高い山頂の標高Zmaxと最も低い谷底の標高Zminの差である。また、山頂と谷底とはJISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている「山頂」「谷底」を三次元に拡張したものであり、山頂とは指定面の山において最も標高の高いところ、谷底とは指定面において最も標高の低いところと表現される。
次に、上記各試料のAFM像を、図18に示す。図18(A)は、2回目のレーザ光の相対的なエネルギー密度が約66%のときの、サンプルAにおける半導体膜表面のAFM像である。図18(B)は、2回目のレーザ光の相対的なエネルギー密度が約66%のときの、サンプルBにおける半導体膜表面のAFM像である。図18(C)は、2回目のレーザ光の相対的なエネルギー密度が約66%のときの、サンプルCにおける半導体膜表面のAFM像である。図18から、サンプルAとサンプルBでは、半導体膜の表面にクレーター状の凹凸が生じていることが確認できるが、サンプルCでは上記クレーターは殆ど確認できない。全てのサンプルにおいて、2回目のレーザ光のエネルギー密度を上記条件より高くしていくと、クレーター状の凹凸の数は減っていく。よって、図17と図18から、クレーター状の凹凸の発生が抑えられる2回目のレーザ光のエネルギー密度の範囲は、サンプルCが最も広いことが分かった。
次に、光学顕微鏡でSOI基板上の半導体膜の表面を観察した。観察に用いる試料1と試料2は、旭硝子社製のガラス基板(厚さ0.7mm、商品名AN100)上に、酸素雰囲気中に塩化水素を含むガスを添加することによる熱酸化で形成された膜厚約100nmの酸化珪素である絶縁膜と、ボンド基板を分離することで上記絶縁膜上に形成された半導体膜と、を有するSOI基板を用いた。全ての試料は、1回目のレーザ光の照射前に、0.5wt%の希フッ酸を用いて約110秒間半導体膜の表面を洗浄することにより、半導体膜上に形成されている自然酸化膜を除去した。
また、試料1と試料2共に、1回目のレーザ光の照射は、レーザ発振器としてXeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いた。そして、1回目のレーザ光は、走査速度を0.5mm/秒、ビームショット数を約24ショットとし、室温にて窒素ガスを試料に吹き付けながら行った。
また、試料1と試料2共に、2回目のレーザ光の照射は、1回目と同様に、レーザ発振器としてXeClエキシマレーザ(波長:308nm、パルス幅:20n秒、繰り返し周波数30Hz)を用いた。そして、2回目のレーザ光は、走査速度を8.0mm/秒、ビームショット数を約1.5ショットとし、室温にて窒素ガスを試料に吹き付けながら行った。
具体的に、試料1は、面方位(100)の単結晶シリコン基板から分離した膜厚約110nmの半導体膜を用いる。1回目のレーザ光と2回目のレーザ光のエネルギー密度は、その膜厚から約582.7mJ/cm2とした。そして、1回目のレーザ光の照射後、酸化膜除去の処理を行わずに、2回目のレーザ光の照射を行った。
試料2は、面方位(100)の単結晶シリコン基板から分離した膜厚約110nmの半導体膜を用いる。1回目のレーザ光と2回目のレーザ光のエネルギー密度は、その膜厚から約582.7mJ/cm2とした。そして、1回目のレーザ光の照射後、酸化膜除去の処理を行ってから、2回目のレーザ光の照射を行った。2回目のレーザ光の照射前の酸化膜除去の処理は、1回目のレーザ光の照射前の酸化膜除去の処理と、同じ条件で行った。
図19(A)に、試料1が有する半導体膜の光学顕微鏡写真を、図19(B)に、試料2が有する半導体膜の光学顕微鏡写真を、それぞれ示す。各写真は、ピッチ縞の部分を強調するために、画像処理が施されている。図19(A)に示す写真に比べて図19(B)に示す写真では、ピッチ縞の数が少なく、よって、2回目のレーザ光の照射前に酸化膜除去の処理を行った試料2の方が、平坦性が高いことが分かった。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を用いて形成された発光装置の構成について説明する。図14に、発光素子を駆動させるためのトランジスタがp型の場合における、画素の断面構造の一例を示す。なお図14では、第1の電極が陽極、第2の電極が陰極の場合について説明するが、第1の電極が陰極、第2の電極が陽極であっても良い。
図14(A)に、トランジスタ6001がp型で、発光素子6003から発せられる光を第1の電極6004側から取り出す場合の、画素の断面図を示す。
トランジスタ6001は絶縁膜6007で覆われており、絶縁膜6007上には開口部を有する隔壁6008が形成されている。隔壁6008の開口部において第1の電極6004が一部露出しており、該開口部において第1の電極6004、電界発光層6005、第2の電極6006が順に積層されている。
第1の電極6004は、可視光に対して透光性を有する材料または膜厚で形成し、なおかつ陽極として用いるのに適する材料で形成する。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウム、酸化ガリウム、及び酸化亜鉛からなる酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)、などその他の透光性酸化物導電材料を第1の電極6004に用いることが可能である。またITO及び酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(以下、ITSOとする)や、酸化珪素を含んだ酸化インジウムに、さらに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したものを第1の電極6004に用いても良い。また上記透光性酸化物導電材料の他に、例えば窒化チタン、窒化ジルコニウム、チタン、タングステン、ニッケル、白金、クロム、銀、アルミニウム等の1つまたは複数からなる単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を第1の電極6004に用いることもできる。ただし透光性酸化物導電材料以外の材料を用いる場合、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で第1の電極6004を形成する。
また第2の電極6006は、光を反射もしくは遮蔽する材料及び膜厚で形成し、なおかつ仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などで形成することができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、これらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li、Mg:Inなど)、およびこれらの化合物(フッ化カルシウム、窒化カルシウム)の他、YbやEr等の希土類金属を用いることができる。また電子注入層を設ける場合、Alなどの他の導電層を用いることも可能である。
電界発光層6005は、単数または複数の層で構成されている。複数の層で構成されている場合、これらの層は、キャリア輸送特性の観点から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などに分類することができる。電界発光層6005が発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層のいずれかを有している場合、第1の電極6004から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の順に積層する。なお各層の境目は必ずしも明確である必要はなく、互いの層を構成している材料が一部混合し、界面が不明瞭になっている場合もある。各層には、有機系の材料、無機系の材料を用いることが可能である。有機系の材料として、高分子系、中分子系、低分子系のいずれの材料も用いることが可能である。なお中分子系の材料とは、構造単位の繰返しの数(重合度)が2から20程度の低重合体に相当する。正孔注入層と正孔輸送層との区別は必ずしも厳密なものではなく、これらは正孔輸送性(正孔移動度)が特に重要な特性である意味において同じである。便宜上正孔注入層は陽極に接する側の層であり、正孔注入層に接する層を正孔輸送層と呼んで区別する。電子輸送層、電子注入層についても同様であり、陰極に接する層を電子注入層と呼び、電子注入層に接する層を電子輸送層と呼んでいる。発光層は電子輸送層を兼ねる場合もあり、発光性電子輸送層とも呼ばれる。
図14(A)に示した画素の場合、発光素子6003から発せられる光を、白抜きの矢印で示すように第1の電極6004側から取り出すことができる。
次に図14(B)に、トランジスタ6011がp型で、発光素子6013から発せられる光を第2の電極6016側から取り出す場合の、画素の断面図を示す。トランジスタ6011は絶縁膜6017で覆われており、絶縁膜6017上には開口部を有する隔壁6018が形成されている。隔壁6018の開口部において第1の電極6014が一部露出しており、該開口部において第1の電極6014、電界発光層6015、第2の電極6016が順に積層されている。
第1の電極6014は、光を反射もしくは遮蔽する材料及び膜厚で形成し、なおかつ陽極として用いるのに適する材料で形成する。例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウム、チタン、タングステン、ニッケル、白金、クロム、銀、アルミニウム等の1つまたは複数からなる単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を第1の電極6014に用いることができる。
また第2の電極6016は、可視光に対して透光性を有する材料または膜厚で形成し、なおかつ仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などで形成することができる。具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、これらを含む合金(Mg:Ag、Al:Li、Mg:Inなど)、およびこれらの化合物(フッ化カルシウム、窒化カルシウム)の他、YbやEr等の希土類金属を用いることができる。また電子注入層を設ける場合、Alなどの他の導電層を用いることも可能である。そして第2の電極6016を、光が透過する程度の膜厚(好ましくは、5nm〜30nm程度)で形成する。なお、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などその他の透光性酸化物導電材料を用いることも可能である。またITO及びITSOや、酸化珪素を含んだ酸化インジウムに、さらに2〜20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したものを用いても良い。透光性酸化物導電材料を用いる場合、電界発光層6015に電子注入層を設けるのが望ましい。
電界発光層6015は、図14(A)の電界発光層6005と同様に形成することができる。
図14(B)に示した画素の場合、発光素子6013から発せられる光を、白抜きの矢印で示すように第2の電極6016側から取り出すことができる。
次に図14(C)に、トランジスタ6021がp型で、発光素子6023から発せられる光を第1の電極6024側及び第2の電極6026側から取り出す場合の、画素の断面図を示す。トランジスタ6021は絶縁膜6027で覆われており、絶縁膜6027上には開口部を有する隔壁6028が形成されている。隔壁6028の開口部において第1の電極6024が一部露出しており、該開口部において第1の電極6024、電界発光層6025、第2の電極6026が順に積層されている。
第1の電極6024は、図14(A)の第1の電極6004と同様に形成することができる。また第2の電極6026は、図14(B)の第2の電極6016と同様に形成することができる。電界発光層6025は、図14(A)の電界発光層6005と同様に形成することができる。
図14(C)に示した画素の場合、発光素子6023から発せられる光を、白抜きの矢印で示すように第1の電極6024側及び第2の電極6026側から取り出すことができる。
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る作製方法を用いて形成された液晶表示装置の構成について説明する。
図15に、本発明の液晶表示装置の断面図を一例として示す。基板1400上の薄膜トランジスタ1401は、導電膜1402を間に介して画素電極1403と電気的に接続されている。
また、スペーサ1404は、液晶素子のセルギャップを制御している。スペーサ1404は、絶縁膜を所望の形状にエッチングすることで形成することが可能であるが、フィラーを用いることでセルギャップを制御するようにしても良い。
そして、画素電極1403上には、配向膜1405が形成されている。配向膜1405は、例えば絶縁膜にラビング処理を施すことで、形成することができる。また画素電極1403と対峙する位置には、対向電極1406が設けられており、対向電極1406の画素電極1403に近い側には配向膜1407が形成されている。そして、画素電極1403と、対向電極1406の間においてシール材1408に囲まれた領域には、液晶1409が設けられている。なおシール材1408にはフィラーが混入されていても良い。
画素電極1403と対向電極1406は、例えばITSO、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、ガリウムを添加した酸化亜鉛(GZO)などの透明導電材料を用いることができる。なお、本実施の形態では、画素電極1403及び対向電極1406に光を透過する導電膜を用い、透過型の液晶素子を作製する例を示すが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様に係る液晶表示装置は、半透過型または反射型であっても良い。
カラーフィルタや、ディスクリネーションを防ぐための遮蔽膜(ブラックマトリクス)などが、図15に示した液晶表示装置に設けられていても良い。
なお、本実施の形態では、液晶表示装置として、TN(Twisted Nematic)型を示したが、VA(Vertical Alignment)型、OCB(optically compensated Birefringence)型、IPS(In−Plane Switching)型等の、その他の液晶表示装置にも、本発明の薄膜トランジスタを用いることができる。
本発明の一態様に係る液晶表示装置は、移動度及びオン電流が高く、なおかつ信頼性の高い薄膜トランジスタを用いているため、コントラスト及び視認性が高い。
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
本発明の一態様に係る作製方法を用いることで、特性のばらつきが抑えられ、なおかつ、オン電流が高い、絶縁耐圧が高いなどの良好な特性を持った半導体素子を有する半導体装置を、形成することができる。また、半導体素子の微細化を実現することが出来る。よって、上記半導体装置を用いた電子機器は、半導体装置をその構成要素に追加することにより、より高機能のアプリケーションを搭載することができるようになる。本発明の作製方法を用いた半導体装置は、表示装置、ノート型パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図16に示す。
図16(A)は表示装置であり、筐体5001、表示部5002、支持台5003等を有する。本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置は、表示部5002またはその他の信号処理回路に用いることができる。表示部5002またはその他の信号処理回路に本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることで、より高機能のアプリケーションが搭載された表示装置を提供することができる。なお、表示装置には、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
図16(B)は携帯情報端末であり、筐体5101、表示部5102、スイッチ5103、操作キー5104、赤外線ポート5105等を有する。本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置は、表示部5102またはその他の信号処理回路に用いることができる。表示部5102またはその他の信号処理回路に本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることで、より高機能のアプリケーションが搭載された携帯情報端末を提供することができる。
図16(C)は現金自動預け入れ払い機であり、筐体5201、表示部5202、硬貨投入口5203、紙幣投入口5204、カード投入口5205、通帳投入口5206等を有する。本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置は、表示部5202またはその他の信号処理回路に用いることができる。表示部5202またはその他の信号処理回路に本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることで、より高機能のアプリケーションが搭載された現金自動預け入れ払い機を提供することができる。
図16(D)は携帯型ゲーム機であり、筐体5301、筐体5302、表示部5303、表示部5304、マイクロホン5305、スピーカー5306、操作キー5307、スタイラス5308等を有する。本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置は、表示部5303、表示部5304またはその他の信号処理回路に用いることができる。表示部5303、表示部5304またはその他の信号処理回路に本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることで、より高機能のアプリケーションが搭載された携帯型ゲーム機を提供することができる。なお、図16(D)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5303と表示部5304とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されない。
図16(E)は携帯電話であり、筐体5401、表示部5402、音声入力部5403、音声出力部5404、操作キー5405、受光部5406等を有する。受光部5406において受信した光を電気信号に変換することで、外部の画像を取り込むことができる。本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置は、表示部5402またはその他の信号処理回路に用いることができる。表示部5402またはその他の信号処理回路に本発明の一態様に係る作製方法を用いた半導体装置を用いることで、より高機能のアプリケーションが搭載された携帯電話を提供することができる。
本実施例は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。