以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
光学ドライブ装置1は光ディスク11の再生及び記録を行う。光ディスク11としてはCD、DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、多層膜によって多層化された記録面を有する円盤状の光ディスクを用いる。また、光ディスクには、再生専用型(DVD−ROM、BD−ROMなど。)、追記型(DVD−R、DVD+R、BD−Rなど。)、書換型(DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、BD−REなど。)など、記録方法によって分類されるいくつかの種類があるが、本発明はいずれの型の光ディスクにも適用可能である。
図2(a)は、光ディスク11の1つの記録層の平面図である。図2(b)は、図2(a)のA−A’線におけるこの記録層の断面図を示している。
図2に示すように、記録層には周期的に溝が設けられており、溝の凸部はランドL、凹部はグルーブGと呼ばれる。ただし、溝の凸部と凹部は相対的なものであり、凸部と凹部のいずれをランドLと呼ぶかについては、光ディスク11の表面・裏面のいずれを下とするかによって変わってくる。なお、図2ではランドLとグルーブGを直線的に描いているが、実際には、半径方向にわずかに蛇行(ウォブル)している。
図2の例ではランドLが情報書込ラインであり、ランドLに情報を記憶するための符号(ピットまたは記録マーク)Mが設けられる。なお、図2では、符号Mの横幅がランドの幅に比べてかなり小さいように描いているが、これは図面の見易さを優先したためであり、実際の符号Mの横幅はランドの幅より少し小さい程度である。符号Mは、光ビームの照射によって記録又は消去される。光ディスク11の記録層の未記録領域は、この符号Mが記録されていない領域である。一方、記録領域は、符号Mが記録されている領域である。なお、情報書込ラインは、グルーブGに設けられる場合もあれば、ランドLとグルーブGの両方に設けられる場合もある。
図1に戻る。図1に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2、光学系3、光検出器6、及び処理部7を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、及び光検出器6は光ピックアップを構成する。
光学系3は、回折格子21、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ23、1/4波長板24、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)25、対物レンズ4、及びアクチュエータ5を有している。光学系3は、レーザ光源2が発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器6に導く復路光学系としても機能する。
まず、往路光学系では、回折格子21は、レーザ光源2が発した光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解しP偏光としてビームスプリッタ22に入射させる。ビームスプリッタ22は、入射されたP偏光を反射して、その進路を光ディスク11方向に折り曲げる。コリメータレンズ23は、ビームスプリッタ22から入射される光ビームを平行光とする。1/4波長板24は、コリメータレンズ23を通過した光ビームを円偏光とする。1/4波長板24を通過した光ビームは対物レンズ4に入射する。
対物レンズ4は、1/4波長板24から入射される光ビーム(平行光状態の光ビーム)を光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11の記録面で反射してきた戻り光ビームを平行光に戻す。この戻り光ビームは記録面のランド・グループで回折されており、0次回折光及び±1次回折光に分解されている。この0次回折光及び±1次回折光は、回折格子21により生ずる0次回折光及び±1次回折光とは異なるもので、紛らわしいので、以下では回折格子21により分解された0次回折光,+1次回折光,−1次回折光をそれぞれメインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2と称し、0次回折光及び±1次回折光という場合には記録面のランド・グループでの回折によって生じた回折光を指すことにする。メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2は、それぞれ独立して反射光を生ずる。
アクチュエータ5は、処理部7から入力される制御信号(コントロール電圧)に応じて、対物レンズ4の位置及び姿勢の制御を行う。アクチュエータ5は3軸構成とされており、対物レンズ4を光ディスク11の記録面に垂直な方向(フォーカスサーボ)と水平な方向(トラッキングサーボ)に直線移動させる他、光ディスク11の記録面(特にラジアル方向)に対して回転させる機能(チルトサーボ)も有する。対物レンズ4が光ディスク11の記録面に対して回転すると、光ディスク11への光ビームの入射角が変化する。
復路光学系では、対物レンズ4を通過し、1/4波長板24を往復することによりS偏光となった光ビームがコリメータレンズ23に入射する。コリメータレンズ23を通過した光ビームは、集光しつつビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、入射してきた光ビームを透過してセンサレンズ25(シリンドリカルレンズ)に入射させる。センサレンズ25は、ビームスプリッタ22から入射された光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された光ビームは光検出器6に入射する。
図3はセンサレンズ25によって付与される非点収差の説明図である。同図に示すように、センサレンズ25は一方方向(同図MY軸方向=子線方向。)にのみレンズ効果を有している。そのため、コリメータレンズ23(図1)とセンサレンズ25によって構成される光学系の焦点の位置は、MY軸方向と、MY軸方向に垂直な方向であるMX軸方向(母線方向)とで異なっている(図3に示すMY軸焦点とMX軸焦点)。なお、MY軸方向とMX軸方向の光ビームの長さが等しい点を合焦点と称する。
光学ドライブ装置1では、焦点を合わせようとする層(アクセス対象層)で反射した光ビーム(信号光)の合掌点がちょうど光検出器6上に位置するようにするための、対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。逆に言えば、アクセス対象層以外の層で反射した光ビーム(迷光)の合掌点は光検出器6上に位置しないこととなり、迷光が光検出器6上に形成するスポット(迷光スポット)は、信号光が光検出器6上に形成するスポット(信号光スポット)に比べ、MY軸方向とMX軸方向の少なくとも一方に広がった形状を有することとなる。
図1に戻る。光検出器6は、光学系3から出射される戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器6は3つの受光面を備えており、各受光面はそれぞれ複数の受光領域に分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、メインプッシュプル(MPP)信号MPP、サブプッシュプル(SPP)信号SPP、DPD信号DPD、トラッキング誤差信号TE、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)などの各種信号を生成することが可能となっている。その具体的内容については後述する。
処理部7は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器6の出力信号を受け付けて、MPP信号MPP、SPP信号SPP、DPD信号DPD、トラッキング誤差信号TE、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)を生成する。処理部7の処理の詳細についても後述する。
CPU8はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部7に対して再生又は書き込みのいずれか一方を指示するとともに光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部7は、対物レンズ4を制御し、光ディスク11の表面に平行に移動させる(この移動を「レンズシフト」という。)ことによりオントラック状態を実現する(トラッキングサーボ)。オントラック状態になると、CPU8は処理部7が生成するRF信号RFをデータ信号として取得する。
ここから、光検出器6の構成の詳細及び処理部7の処理の詳細について説明する。
図4は、本実施の形態による光検出器6の上面図である。同図には、信号光が受光面上に形成するスポットの例も示している。同図に示すX,Y方向はそれぞれ、光ディスク接線方向,光ディスク半径方向に対応している。
図4に示すように、光検出器6は、いずれも正方形の3つの受光面61〜63を備えている。このうち受光面61は、同一面積の4つの正方形(受光領域61A〜61D)に分割されている。また、受光面62及び63は、上下2つに同一面積で分割されている(受光領域62A,62B及び受光領域63A,63B)。受光面61〜63はそれぞれ、メインビームMB、サブビームSB1、及びサブビームSB2を受光できる位置に配置されている。
光ビームを受光した光検出器6は、受光領域ごとに、光ビームの強度を受光面で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力する。以下では、受光領域Xに対応する出力信号をIXと表す。
図5は、処理部7の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、処理部7は、フォーカス誤差信号生成部70、フォーカスサーボ部71、全加算信号生成部72、判定部73(判定手段)、信号生成部74(信号生成手段)、トラッキング誤差信号生成部75、トラッキングサーボ部76、増幅部77(増幅手段)、制御用信号生成部78(制御用信号生成手段)、チルトサーボ部79(チルトサーボ手段)を有している。
フォーカス誤差信号生成部70は、メインビームMBを受光するための受光面61を構成する各受光領域61A〜61Dの受光量に基づいて、フォーカス誤差信号FEを生成する。具体的には、次の式(1)の演算を行ってフォーカス誤差信号FEを生成する。
フォーカスサーボ部71は、上記フォーカス誤差信号FEの値が0となるように、対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と垂直な方向に制御するための制御信号を生成する。この制御信号はアクチュエータ5に出力され、アクチュエータ5は対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と垂直な方向に制御する。この制御により、光ビームの焦点を記録層に合わせることが可能になっている。
全加算信号生成部72は、メインビームMBを受光するための受光面61を構成する各受光領域61A〜61Dの受光量に基づいて、RF信号RF及びプルイン信号PIを生成する。具体的には、次の式(2)の演算を行ってこれらの信号を生成する。式(2)から明らかなように、RF信号RFとプルイン信号PIとは同一の信号である。ただし、プルイン信号PIは通常、ローパスフィルタを通すことにより帯域制限がなされた状態で出力される。帯域制限をするのは、符号Mの有無に応じた変動やノイズを除去するためである。
プルイン信号PIはフォーカスサーボ部71において層認識のために用いられる信号である。つまり、プルイン信号PIは、光ビームの焦点位置が層間を移動する際、記録層の表面に焦点が合っているときに極大になるという性質を有している。そこで、フォーカスサーボ部71は、プルイン信号PIの値と所定のしきい値とを比較し、このしきい値より高くなっている部分を検出することで、光ビームの焦点位置が記録層近辺に合っていることを検出する。
RF信号RFは、データ信号としてCPU8に入力される。CPU8は、RF信号RFに基づいて光ディスク11に書き込まれている情報を取得する。
判定部73は、RF信号RFを利用して光ビームの照射位置が記録領域、未記録領域のいずれであるかを判定し、その結果を示す記録未記録判定信号NRを制御用信号生成部78に出力する。
図6は、記録未記録判定信号NRを生成する処理の説明図である。同図に示すように、RF信号RFは、記録領域では短い周期で激しく振動し、未記録領域では変化しない信号である。RF信号RFの振動は符号Mによる反射率の変化に対応するものであるため、未記録領域ではRF信号RFの振動は生じない。RF信号RFには、図6の一番上の図に示すように、記録層の反射率不均一や共焦点クロストークによって変化するオフセットが現れ、ボトムの値がVrefからずれてくる。ここで、オフセットがない場合は、ボトムの値がVrefになっているとしている。また、RF信号RFの振幅も記録層の反射率不均一や共焦点クロストークによって変動し得る。そこで、判定部73はまず、RF信号RFの下値を揃えるためのボトムクランプ処理を行い、図6に示すクランプ信号RFCを得る。
クランプ信号RFCが得られたら、次に判定部73は、所定のドループレートでクランプ信号RFCの最大値を包絡してなるトップエンベ信号ENVを取得する。そして、このトップエンベ信号ENVを、予め記憶している所定のスライスレベルSLでスライスすることにより、スライス信号SSを取得する。なお、スライスレベルSLは、クランプ信号RFCの最大値と最小値の中間程度の値とすることが好ましい。
最後に、判定部73は、スライス信号SSに基づいて記録未記録判定信号NRを生成する。具体的には、スライス信号SSのハイが一定時間D以上継続した場合に記録未記録判定信号NRをハイとし、スライス信号SSがローが一定時間D以上継続した場合には記録未記録判定信号NRをローとすることにより、記録未記録判定信号NRを生成する。このように立ち上がり及び立ち下がりの遅延処理を行うのは、RF信号RFはノイズに大きく影響される性質を有するところ、ノイズによって誤った未記録領域又は記録領域の判定がなされてしまうことを防ぐためである。こうして生成した記録未記録判定信号NRは、ローである場合に光ビームの照射位置がアクセス対象層内の記録領域に入ったことを示し、ハイである場合に光ビームの照射位置がアクセス対象層内の未記録領域に入ったことを示す信号となる。
図5に戻る。信号生成部74は、光検出器6の受光量に基づき、MPP信号MPP、SPP信号SPP、及びDPD信号DPDを生成する。具体的には、次の式(3)〜式(5)に従って各信号を生成する。ただし、P(X,Y)は信号Xと信号Yの位相差を示す関数である。
図7は、信号生成部74により生成されるMPP信号MPP及びDPD信号DPDの例を示す図である。なお、同図の横軸は光ディスク半径方向に対応している。また、同図の下部には、参考のために記録層の平面図を示している。同図に示した線分CRは、記録層のトラック中心を示す線分である。
図7に示すように、MPP信号MPPは、ランドLとグルーブGの境界付近で極大値(極小値)を取る信号である。一方、DPD信号DPDは、ランドLとグルーブGのうち、符号Mの列が形成されていない方の中心付近で極大値(極小値)を取る信号である。したがって、トラック中心CRを挟んだ極大値間の距離をそれぞれ図示するようにa,bと置くと、これらの比a:bは概ね1:2となる。また、MPP信号MPPの振幅sとDPD信号DPDの振幅tとは、互いにほぼ等しくなるようにしている。
図5に戻る。トラッキング誤差信号生成部75は、信号生成部74が生成した各信号を用い、DPP法及びDPD法のいずれか一方により、トラッキング誤差信号TEを生成する。具体的には、DPP法を採用する場合には、MPP信号MPPとSPP信号SPPとを用いて次の式(6)により差動プッシュプル信号(DPP)信号DPPを生成し、トラッキング誤差信号TEとして出力する。ただし、kは正の定数であり、MPP信号MPPとSPP信号SPPそれぞれに生じたレンズシフトオフセット(上述したレンズシフトに伴って生ずるオフセット)及びチルトオフセット(光ディスクが傾いていることにより生ずるオフセット)を相殺するように決定される。通常k値は、MPP信号MPPとSPP信号SPPとの強度比(メイン信号光とサブ信号光合計との光強度比)となる。DPD法を採用する場合には、トラッキング誤差信号生成部75は、式(5)により生成されたDPD信号DPDを、そのままトラッキング誤差信号TEとして出力する。
書き込み時には、トラッキング誤差信号生成部75はDPP法を採用することが好適である。記録層に符号がない状態でトラッキングサーボを行わなければならないため、DPD法が使えないからである。一方、再生時には、トラッキング誤差信号生成部75は、DPP法のみを用いることとしてもよいし、上述した記録未記録判定信号NRに基づいてDPP法とDPD法を切り替えて用いることとしてもよい。つまり、符号がないためにDPD法が使用できない未記録領域ではDPP法を用い、符号がある記録領域ではDPD法を用いることとしてもよい。
トラッキングサーボ部76は、上記トラッキング誤差信号TEの値が0となるように、対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と水平な方向に制御するための制御信号を生成する。この制御信号はアクチュエータ5に出力され、アクチュエータ5は対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と水平な方向に制御する。この制御により、光ビームの焦点をトラック中心CRに合わせることが可能になっている。ただし、光ビームの照射位置は揺動するため、オントラック状態であっても光ビームの照射位置が必ずしも完全にトラック中心CR上にあるとは限らないという点は、上述した通りである。
増幅部77は、少なくとも光ビームの照射位置がトラック中心CR付近にあるときにDPD信号DPDとMPP信号MPPの傾きが互いに等しくなるよう、DPD信号DPD又はMPP信号MPPのいずれか少なくとも一方を増幅する。
図9は、増幅部77の処理の説明図である。図9に示したMPP信号MPPは、図7に示したMPP信号MPPを(a/b)×(t/s)倍に増幅し、その振幅をs’=(a/b)×tとしたものである。図7の例ではa:bは概ね1:2であったので、s’≒(1/2)×tとなる。図9に示したDPD信号DPDは、図7に示したDPD信号DPDと同一である。同図から明らかなように、MPP信号MPPを増幅したことにより、光ビームの照射位置がトラック中心CRから距離x(2x=ランドLの幅)の範囲にあるとき、MPP信号MPPとDPD信号DPDの傾きが等しくなっている。このように、増幅部77の処理により、DPD信号DPDとMPP信号MPPの傾きを互いに等しくすることが可能になっている。
増幅部77は、上記増幅を行うにあたり、予め記憶しておいた増幅率を用いてもよいし、帰還処理によって適応的に増幅率を決定してもよい。以下、帰還処理による増幅率の決定について、詳しく説明する。
増幅部77は初めに、所定の比較的小さい増幅率でMPP信号MPPの増幅を開始する。そして、増幅中の状態でトラックジャンプを実行し、MPP信号MPPの値が0と極大値の間の所与の値にあるとき、すなわち、光ビームの照射位置がトラック中心CRとトラック端の間の所与の位置にあるとき(図7に示した領域y内の特定の位置)に、MPP信号MPPとDPD信号DPDの値を取得する。そして、これらが等しくなるよう増幅率を調節する。増幅部77は、最終的に得られた増幅率を記憶し、以降のMPP信号MPPの増幅処理に用いる。
図8は、MPP信号MPPとDPD信号DPDの値を取得するタイミングを説明するための説明図である。ここで、MPP信号MPPの中点(基準値)は電圧値Vrefであるとする。まず、増幅部77は、MPP信号MPPを予め記憶している所定の電圧値Vrefでスライスすることにより、MPP信号MPPのゼロクロス信号TZC(MPP信号MPPの値が電圧値Vref以上のときにハイとなり、電圧値Vref未満のときにローとなる信号)を生成する。次に、ゼロクロス信号TZCの遅延信号の立ち上がりのタイミングで増幅処理を行う。例えば、ゼロクロス信号TZCを二種類の遅延時間d1,d2(d1<d2)に従って遅延させることにより、遅延信号TZC_delay1及びTZC_delay2を生成する。そして、遅延信号TZC_delay1の立ち上がりで立ち上がり、遅延信号TZC_delay2の立ち上がりで立ち下がるS/H信号を生成し、このS/H信号がハイであるときにMPP信号MPPとDPD信号DPDの値を取得する。なお、遅延時間d1,d2は、増幅部77が、光ビームの照射位置がトラック中心CRとトラック端の間の所与の位置にあるとき(図7に示した領域y内の特定の位置)に、MPP信号MPPとDPD信号DPDの値を取得することとなるよう、光ディスクの回転数などを考慮して予め適切に決定される。
ここで、MPP信号MPPとDPD信号DPDそれぞれに発生するオフセットはゼロとなるように打ち消されていることが好ましい。DPP信号DPPは、レンズシフトやチルトの影響によるオフセットが打ち消されるため、DPP信号DPPとDPD信号DPDを用いてこれらが等しくなるよう増幅率を調節し、MPP信号MPPはこの時の増幅率にDPP信号DPPとMPP信号MPPの振幅比(通常は信号MPPと信号kSPPの振幅が等しいため、2倍)を乗算したものを用いるようにしてもよい。
図5に戻る。制御用信号生成部78は、増幅部77による増幅処理の後、DPD信号DPDとMPP信号MPPの差分に基づいて、チルトサーボの制御用信号Vtcを生成する。具体的には、次の式(7)により制御用信号Vtcを生成する。ただし、Vrcはアクチュエータ5のコントロール電圧の関数であり、特に光ディスク11の記録面と水平な方向に制御するための制御信号によって生ずるコントロール電圧成分を示している。βは正の定数であり、MPP信号MPPとDPD信号DPDそれぞれに生じたレンズシフトオフセットが除去されるように決定される(βの値の具体的な決定方法については後述する。)。
以下、式(7)の原理について詳しく説明する。以下では、トラッキングサーボ部76がDPP法を用いてトラッキングサーボを行っているという前提の下で説明を行う。また、光ビームの照射位置は記録領域であるとする。
まず、MPP信号MPPの値を求める。今、光ビームの焦点位置がトラック中心から微小距離Δxだけ光ディスク半径方向にずれた位置にあるとする。この場合、信号MPPと信号kSPP(SPP信号SPPをk倍に増幅してなる信号)とはそれぞれ、次の式(8)及び式(9)で表される。ただし、Vr1,Vt1はそれぞれ、信号MPPと信号kSPPに現れるレンズシフトオフセット及びチルトオフセットである。信号MPPと信号kSPPとでこれらの値が同じであるのは、信号MPPの振幅と信号kSPPの振幅が同じになるように定数kを決めているからである。また、V0m,V0sはそれぞれ、信号MPPと信号kSPPに含まれる迷光成分である。また、(1/2)×γは、光ビームの焦点位置がトラック中心から微小距離Δxだけ光ディスク半径方向にずれた位置にあるために生じている信号成分である。
式(8)及び式(9)を式(6)に当てはめると、次の式(10)が得られる。
DPP法によるトラッキングサーボではDPP信号DPPの値が0となるように対物レンズ4の位置が制御されるので、式(10)の右辺を0と置くと、γ=−V0m+V0sとなる。ただし、現実には上述したように光ビームの照射位置が揺動するため、DPP信号DPPの値は0の周りで微小に振動する。この振動分をΔdppとすると、現実のγの値は式(11)のようになる。
式(11)を式(8)に当てはめることにより、DPP法によるトラッキングサーボ実行中のMPP信号MPPの値が、式(12)のように得られる。
なお、式(10)の右辺を0と置いたときのγの値が0でないということは、上述した微小距離Δxが0でないということを意味する。つまり、DPP法を用いてトラッキングサーボを行っている間、DPP信号DPPはΔdppの範囲で振動するが、その振動の中心はトラック中心にはならない。このことは、DPD信号DPDの値を求める際に影響する。
次に、DPD信号DPDの値を求める。DPP法によるトラッキングサーボ実行中においては、DPD信号DPDも原則的には0となるはずである。しかしながら、DPD信号DPDにはチルトオフセット、レンズシフトオフセット、迷光オフセットが生ずるので、DPP法によるトラッキングサーボ実行中のDPD信号DPDにはこれらのオフセット成分が現れる。
また、DPP法によるトラッキングサーボ実行中上述した微小距離Δxが0にならないことと、DPD信号DPDにも上記Δdppに対応する振動が現れることから、DPD信号DPDには(α/2)×γ=(α/2)×(Δdpp−V0m+V0s)のオフセットが生ずる。ただし、αは、MPP信号MPPのトラック中心付近における傾きに対する、DPD信号DPDのトラック中心付近における傾きの比である。本実施の形態では、増幅部77の処理によりα=1となっている。
結局、DPD信号DPDは次の式(13)で表されることになる。ただし、Vr2,Vt2,V1はそれぞれ、レンズシフトオフセット、チルトオフセット、及び迷光成分である。
式(12)及び式(13)を式(7)に当てはめることにより、制御用信号Vtcが次の式(14)のように求められる。
α=1を代入すると、式(14)は次の式(15)のように変形される。
式(15)右辺の括弧内は、βの値を予め適切に決定しておくことで除去できる。式(15)から分かるように、α=1とすることで、サブビームに対応する迷光成分V0sの影響が打ち消されている。通常、迷光の影響はサブビームに支配的に現れるため、式(15)は迷光の影響がほとんどないと言える。即ち、メインビームMBに対応する迷光成分V0m及びV1は通常無視して差し支えないので、結局、制御用信号Vtcは次の式(16)のように表される。
仮に「オントラック状態」と「トラック中心状態」とが同一であることとすると、式(16)の値が0となるようにチルトサーボを行うことで、光ディスクのチルトの影響を排除することが可能になる。チルトオフセットの大きさが位相差信号DPPとMPP信号MPPとで異なるためである。
実際には、何度も述べてきたようにオントラック状態においても光ビーム照射位置が揺動する。しかし、本実施の形態では、図9にも示したように、トラック中心付近においてDPD信号DPDとMPP信号MPPの傾きが互いに等しくなっている。このため、光ビーム照射位置がトラック中心から少しずれたところにあったとしても、α=1とすることでΔdppが打ち消されているため、位相差信号DPPとMPP信号MPPのチルトオフセットが互いに等しいときと、チルトオフセットが0になるときとはイコールの関係となる。したがって、式(16)の値が0となるようにチルトサーボを行うことで、光ビーム照射位置の揺動によらず、光ディスクのチルトの影響を排除することが可能になっている。
なお、式(7)の代わりに、次の式(17)を用いて制御用信号Vtcを生成してもよい。
式(17)を用いて制御用信号Vtcを生成する場合、上記同様にα=1とすると、制御用信号Vtcは次の式(18)のように書ける。この場合、Δdppは打ち消されるが、サブビームの迷光成分V0sは打ち消されずに残ることになる。なお、α=−1とすることも可能であるが、この場合には迷光成分V0sが打ち消される一方で、V0mとΔdppが残ることになる。
次に、βの決定方法について説明する。光ビームの照射位置が記録領域にある場合については、式(15)から明らかなように、βVrc=Vr1−Vr2となるようにβを決定すればよい。一方、光ビームの照射位置が未記録領域にある場合には、DPD信号DPDの値が常に0となるため、βの値を変更する必要がある。以下、詳しく説明する。
光ビームの照射位置が未記録領域にある場合、DPD信号DPDの値が0であることから、式(14)は次の式(19)のように書き換えられる。
式(19)から理解されるように、制御用信号Vtcからレンズシフトオフセット成分を除去するためには、βVrc=Vr1となるようにβを決定すればよい。
具体的には、Vrc=0の時のVtcの値Vtc0を求める。次に、ある所定のVrcの値の時に、Vtc−Vtc0=0となるようにβを決定すればよい。迷光の影響を少なくするには、ある所定のVrcの値をあまり大きくしない方がよい。
制御用信号生成部78は、それぞれ記録領域及び未記録領域に対応した2つのβの値を記憶する。そして、判定部73の判定結果(記録未記録判定信号NR)により光ビームの照射位置が記録領域であることが示される場合には記録領域に対応したβを、未記録領域であることが示される場合には未記録領域に対応したβを選択し、選択したβによりVrcを増幅する。あとは、増幅したVrc(=βVrc)を式(7)に代入することにより、DPD信号DPDとMPP信号MPPの差分から、レンズシフトオフセット成分を除去することが可能になる。この時、図6に示した記録未記録判定信号NRにより光ビームの照射位置が未記録領域にあることが示される場合にDPD信号DPDをオフにするようにしてもよい。
なお、上述したように、式(7)に代えて式(17)を用いて制御用信号Vtcを生成してもよいが、βを決める際には、式(17)を用いる場合であっても迷光の影響が少ないMPP信号MPPを用いることが好ましい。
なお、式(17)の制御用信号VtcではサブビームSB1,SB2に対応する迷光成分V0sと振動成分Δdppとが残ってしまっている。しかしながら、光ビームの照射位置が未記録領域にある場合、そもそも精密なチルトサーボは要求されない。したがって、式(17)の制御用信号Vtcを用いてチルトサーボを行って差し支えない。
チルトサーボ部79(図5)は、制御用信号生成部78によって生成された制御用信号Vtcに基づいて、光ディスク11への光ビームの入射角を制御する。具体的には、式(7)に示した制御用信号Vtcの値が0となるように、対物レンズ4をラジアル方向に回転させる。なお、対物レンズ4の回転に代えて光学系3をラジアル方向に回転させるようにしてもよいし、光ディスク11の傾きを直接制御するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施の形態による光学ドライブ装置1によれば、DPD信号DPDとMPP信号MPPの傾きが互いに等しくなるので、オントラック状態において光ビーム照射位置が揺動しても、チルトがない状態でのDPD信号DPDとMPP信号MPPの値を互いに等しい状態に保つことができる。したがって、オントラック状態における光ビーム照射位置の揺動がチルトサーボに及ぼす影響を低減できる。
なお、上記第1の実施の形態において式(7)の原理について説明する際、トラッキングサーボ部76がDPP法を用いてトラッキングサーボを行うことを前提とした。DPD法を用いてトラッキングサーボを行う場合も同様であるが、以下に詳しく説明しておくこととする。
DPD法を用いてトラッキングサーボを行う場合、DPD信号DPDは、次の式(20)で表される。ただし、Δdpdは、光ビームの照射位置の揺動によるDPD信号DPDの振動成分である。
MPP信号MPPの値を求める。今、光ビームの焦点位置がトラック中心から微小距離Δxだけ光ディスク半径方向にずれた位置にあるとする。トラッキングサーボがかかっていない場合、DPD信号DPDは、次の式(21)で表される。ただし、Vr2,Vt2,V1はそれぞれ、レンズシフトオフセット、チルトオフセット、及び迷光成分である。また、δは、光ビームの焦点位置がトラック中心から微小距離Δxだけ光ディスク半径方向にずれた位置にあるために生じている信号成分である。
式(20)と式(21)から、δは、次の式(22)で表される。
DPD法によるトラッキングサーボ実行中上述した微小距離Δxが0にならないことと、MPP信号MPPにも上記Δdpdに対応する振動が現れることから、MPP信号MPPには、上述したαを用いてδ/α=(Δdpd−Vr2−Vt2−V1)/αのオフセットが生ずる。したがって、MPP信号MPPは、式(8)と同様にして、次の式(23)で表すことができる。
式(20)及び式(23)を式(7)に当てはめることにより、制御用信号Vtcが次の式(24)のように求められる。
α=1を代入すると、式(24)は次の式(25)のように変形される。
式(25)右辺の括弧内は、βの値を予め適切に決定しておくことで除去できる。また、メインビームMBに対応する迷光成分V0m及びV1は通常無視して差し支えないので、結局、制御用信号Vtcは次の式(26)のように表される。
式(26)は、式(16)と同一である。つまり、DPD法を用いてトラッキングサーボを行う場合も、DPP法を用いてトラッキングサーボを行う場合と同様に、制御用信号Vtcを求め、チルトサーボを行うことが可能になっている。また、光ビーム照射位置が揺動しても、Δdpdは打ち消されるため、式(24)の値が0となるようにチルトサーボを行うことで、光ディスクのチルトの影響を排除することが可能になっている。
図10は、本発明の第2の実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
本実施の形態では、光ディスク11として、記録面に記録層12とサーボ専用層13とが設けられ、かつ記録層12が多層膜によって多層化されている円盤状の光ディスクを用いる。
図11(a)は、光ディスク11の記録面の平面図である。図11(b)は、図11(a)のB−B’線における断面図を示している。
図11に示すように、光ディスク11の記録面には複数の記録層12と1つのサーボ専用層13とが設けられる。サーボ専用層13には周期的に溝が設けられており、溝の凸部はランドL、凹部はグルーブGと呼ばれる。ただし、溝の凸部と凹部は相対的なものであり、凸部と凹部のいずれをランドLと呼ぶかについては、光ディスク11の表面・裏面のいずれを下とするかによって変わってくる。なお、図11ではランドLとグルーブGを直線的に描いているが、実際には、半径方向にわずかに蛇行(ウォブル)している。
図11の例ではランドLが情報書込ラインであり、各記録層12では、ランドLに対応する位置に情報を記憶するための符号(ピットまたは記録マーク)Mが設けられる。なお、図11では、符号Mの横幅がランドの幅に比べてかなり小さいように描いているが、これは図面の見易さを優先したためであり、実際の符号Mの横幅はランドの幅より少し小さい程度である。符号Mは、光ビームの照射によって記録又は消去される。各記録層12の未記録領域は、この符号Mが記録されていない領域である。一方、記録領域は、符号Mが記録されている領域である。なお、情報書込ラインは、グルーブGに対応する位置に設けられる場合もあれば、ランドLとグルーブGそれぞれに対応する位置に設けられる場合もある。
図11に示すように、符号Mはサーボ専用層13のランドLにも設けられる。この符号Mは情報を記憶するための符号ではなく、後述するDPD信号DPDSを生成するためのものであり、全面に予め設けられている。同様に、符号MはグルーブGに対応する位置に設けられる場合もあれば、ランドLとグルーブGそれぞれに対応する位置に設けられる場合もある。
図10に戻る。図10に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2−1,2−2、光学系3、光検出器6−1(第1の光検出器)、光検出器6−2(第2の光検出器)、及び処理部7を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、及び光検出器6は光ピックアップを構成する。
光学系3は、偏光ビームスプリッタ41、コリメータレンズ42、ダイクロイックプリズム43、1/4波長板44、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)46、回折格子47、ビームスプリッタ48、コリメータレンズ49、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)51、対物レンズ4、及びアクチュエータ5を有している。光学系3は、レーザ光源2−1,2−2がそれぞれ発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器6−1,6−2に導く復路光学系としても機能する。
まず、レーザ光源2−1が発した光ビーム(第1の光ビーム。以下、記録層用光ビームと称する。)の往路光学系では、記録層用光ビームはまず偏光ビームスプリッタ41に入射する。偏光ビームスプリッタ41は、入射された記録層用光ビームを通過させ、コリメータレンズ42に入射させる。コリメータレンズ42は、記録層用光ビームを平行光とし、ダイクロイックプリズム43に入射させる。ダイクロイックプリズム43は、入射された平行光を光ディスク11方向に反射させ、1/4波長板44に入射させる。1/4波長板44は、入射された平行光を円偏光とし、対物レンズ4に入射させる。
一方、レーザ光源2−2が発した光ビーム(第2の光ビーム。以下、サーボ専用層用光ビームと称する。)の往路光学系では、まず回折格子47がサーボ専用層用光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解し、ビームスプリッタ48に入射させる。ビームスプリッタ48は、入射されたサーボ専用層用光ビームを通過させ、コリメータレンズ49に入射させる。コリメータレンズ49は、入射されたサーボ専用層用光ビームを平行光とし、ダイクロイックプリズム43に入射させる。ダイクロイックプリズム43は、入射された平行光を通過させ、1/4波長板44に入射させる。1/4波長板44は、入射された平行光を円偏光とし、対物レンズ4に入射させる。ここで、サーボ専用層ではDPD法のみを行う場合は回折格子47はなくてもよい。
光学系3は、対物レンズ4に入射された2種類の光ビーム(平行光状態の光ビーム)の光軸が一致するように構成される。対物レンズ4は、これら同一の光軸を有する2種類の光ビームを光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11の記録面で反射してきた戻り光ビームを平行光に戻す。
ここで、コリメータレンズ49は、フォーカス方向(記録面と垂直な方向)に駆動可能に構成されている。また、対物レンズ4は、フォーカス方向、光ディスク11の記録面に平行な方向、及び光ディスク11の記録面に対して回転する方向の3方向に駆動可能に構成されている。対物レンズ4の位置及び姿勢の制御は、第1の実施の形態と同様、アクチュエータ5によって行われる。光学ドライブ装置1では、サーボ専用層用光ビームをサーボ専用層に合焦させ、かつ記録層用光ビームがアクセス対象層に合焦させるために、コリメータレンズ49及び対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。
サーボ専用層用光ビームの戻り光ビームはサーボ専用層13のランド・グループで回折されており、メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2に分解されている。
記録層用光ビームの復路光学系では、対物レンズ4を通過した記録層用光ビームが、1/4波長板44を介してダイクロイックプリズム43に入射され、ダイクロイックプリズム43で折り曲げられてコリメータレンズ42に入射する。コリメータレンズ42を通過した光ビームは、集光しつつ偏光ビームスプリッタ41で反射して、センサレンズ46(シリンドリカルレンズ)に入射する。センサレンズ46は、入射された記録層用光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された記録層用光ビームは光検出器6−1に入射する。
サーボ専用層用光ビームの復路光学系では、対物レンズ4を通過したサーボ専用層用光ビームが、1/4波長板44及びダイクロイックプリズム43を介してコリメータレンズ49に入射する。コリメータレンズ49を通過した光ビームは、集光しつつビームスプリッタ48で反射して、センサレンズ51(シリンドリカルレンズ)に入射する。センサレンズ51は、センサレンズ46と同様、入射されたサーボ専用層用光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与されたサーボ専用層用光ビームは光検出器6−2に入射する。
光検出器6−1は、光学系3から出射される記録層用光ビームの戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。一方、光検出器6−2は、光学系3から出射されるサーボ専用層用光ビームの戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器6−1は1つの受光面、光検出器6−2は3つの受光面をそれぞれ備えており、各受光面はそれぞれ複数の受光領域に分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、記録層用MPP信号MPPR、サーボ専用層用MPP信号MPPS、サーボ専用層用SPP信号SPPS、記録層用DPD信号DPDR、サーボ専用層用DPD信号DPDS、トラッキング誤差信号TE、記録層用フォーカス誤差信号FER、サーボ専用層用フォーカス誤差信号FES、全加算信号(記録層用プルイン信号PIR、サーボ専用層用プルイン信号PIS、RF信号RF)などの各種信号を生成することが可能となっている。その具体的内容については後述する。
処理部7は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器6−1,6−2の出力信号を受け付けて、MPP信号MPPR,MPPS、SPP信号SPPS、DPD信号DPDR,DPDS、トラッキング誤差信号TE、フォーカス誤差信号FER,FES、全加算信号(プルイン信号PIR,PIS、RF信号RF)を生成する。処理部7の処理の詳細についても後述する。
CPU8はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部7に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部7は、対物レンズ4を制御し、光ディスク11の表面に平行に移動させることによりオントラック状態を実現する(トラッキングサーボ)。オントラック状態になると、CPU8は処理部7が生成するRF信号RFをデータ信号として取得する。
ここから、光検出器6の構成の詳細及び処理部7の処理の詳細について説明する。
図12は、本実施の形態による光検出器6−1の上面図である。また、図13は、本実施の形態による光検出器6−2の上面図である。図12及び図13には、信号光が受光面上に形成するスポットの例も示している。図12及び図13に示すX,Y方向はそれぞれ、光ディスク接線方向,光ディスク半径方向に対応している。
光検出器6−1は、図11に示すように、正方形の受光面61を備えている。受光面61は同一面積の4つの正方形(受光領域61A〜61D)に分割され、記録層用光ビームの戻り光ビームを受光できる位置に配置されている。
光検出器6−2は、図13に示すように、いずれも正方形の3つの受光面62〜64を備えている。このうち受光面62は、同一面積の4つの正方形(受光領域62A〜62D)に分割されている。また、受光面63及び64は、上下2つに同一面積で分割されている(受光領域63A,63B及び受光領域64A,64B)。受光面62〜64はそれぞれ、メインビームMB、サブビームSB1、及びサブビームSB2を受光できる位置に配置されている。
光ビームを受光した光検出器6−1,6−2は、受光領域ごとに、光ビームの強度を受光面で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力する。受光領域Xに対応する出力信号は、第1の実施の形態と同様、IXと表す。
図14は、処理部7の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、処理部7は、フォーカス誤差信号生成部70、フォーカスサーボ部71、全加算信号生成部72、判定部73(判定手段)、信号生成部74(信号生成手段)、トラッキング誤差信号生成部75(トラッキング誤差信号生成手段)、トラッキングサーボ部76(トラッキングサーボ手段)、増幅部77(増幅手段)、制御用信号生成部78(制御用信号生成手段)、チルトサーボ部79(チルトサーボ手段)を有している。
フォーカス誤差信号生成部70は、記録層用光ビームを受光するための受光面61を構成する各受光領域61A〜61Dの受光量に基づいて記録層用フォーカス誤差信号FERを生成するとともに、サーボ専用層用光ビームのメインビームMBを受光するための受光面62を構成する各受光領域62A〜62Dの受光量に基づいてサーボ層用フォーカス誤差信号FESを生成する。具体的には、次の式(27)及び式(28)の演算を行って、これらのフォーカス誤差信号FER,FESを生成する。
フォーカスサーボ部71は、コリメータレンズ49及び対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と垂直な方向に制御し、上記各フォーカス誤差信号FER,FESの値が0となるようにすることで、記録層用光ビームの焦点を記録層に合わせ、サーボ専用層用光ビームの焦点をサーボ専用層に合わせる(フォーカスサーボ)。
全加算信号生成部72は、記録層用光ビームを受光するための受光面61を構成する各受光領域61A〜61Dの受光量に基づいて、RF信号RF及び記録層用プルイン信号PIRを生成する。また、サーボ専用層用光ビームを受光するための受光面62を構成する各受光領域62A〜62Dの受光量に基づいて、サーボ専用層用プルイン信号PISを生成する。具体的には、次の式(29)及び式(30)の演算を行ってこれらの信号を生成する。式(27)から明らかなように、RF信号RFとプルイン信号PIとは同一の信号である。ただし、記録層用プルイン信号PIR及びサーボ専用層用プルイン信号PISは通常、ローパスフィルタを通すことにより帯域制限がなされた状態で出力される。帯域制限をするのは、符号Mの有無に応じた変動やノイズを除去するためである。
記録層用プルイン信号PIR及びサーボ専用層用プルイン信号PISは、フォーカスサーボ部71において層認識のために用いられる信号である。つまり、これらプルイン信号は、光ビームの焦点位置が層間を移動する際、層表面に焦点が合っているときに極大になるという性質を有している。そこで、フォーカスサーボ部71は、プルイン信号の値と所定のしきい値とを比較し、このしきい値より高くなっている部分を検出することで、光ビームの焦点位置が記録層やサーボ専用層近辺に合っていることを検出する。
RF信号RFは、データ信号としてCPU8に入力される。CPU8は、RF信号RFに基づいて光ディスク11に書き込まれている情報を取得する。
判定部73は、RF信号RFを利用して光ビームの照射位置が記録領域、未記録領域のいずれであるかを判定し、その結果を示す記録未記録判定信号NRを制御用信号生成部78に出力する。記録未記録判定信号NRの具体的な生成方法は、第1の実施の形態で図6を参照しながら説明したものと同様であるので、説明を省略する。
信号生成部74は、光検出器6−1,6−2の受光量に基づき、MPP信号MPPR,MPPS、SPP信号SPPS、及びDPD信号DPDR,DPDSを生成する。具体的には、次の式(31)〜式(35)に従って各信号を生成する。
なお、図11に示したように、記録層12にはランドグルーブは設けられていない。しかしながら、符号Mのエッジがランドグルーブのエッジと同様に働くため、有意なMPP信号MPPRを得ることは可能である。図15は、図7と同様にして、こうして得られるMPP信号MPPRの例を描いた図である。同図に示すように、MPP信号MPPRは、光ビームの焦点位置が符号Mのエッジにあるとき、極大値を取る。
トラッキング誤差信号生成部75は、信号生成部74が生成した各信号を用い、DPP法及びDPD法のいずれか一方により、トラッキング誤差信号TEを生成する。具体的には、DPP法を採用する場合には、MPP信号MPPSとSPP信号SPPSとを用いて次の式(36)によりDPP信号DPPSを生成し、トラッキング誤差信号TEとして出力する。ただし、kは正の定数であり、MPP信号MPPSとSPP信号SPPSそれぞれに生じたレンズシフトオフセット及びチルトオフセットを相殺するように決定される。通常k値は、MPP信号MPPSとSPP信号SPPSとの強度比(メイン信号光とサブ信号光合計との光強度比)となる。DPD法を採用する場合には、トラッキング誤差信号生成部75は、それぞれ式(32)及び式(35)により生成されたDPD信号DPDR及びDPDSのいずれか一方を、そのままトラッキング誤差信号TEとして出力する。
書き込み時には、トラッキング誤差信号生成部75は、DPP信号DPPS及びDPD信号DPDSのいずれか一方をトラッキング誤差信号TEとして出力することが好適である。記録層に符号がない状態では記録層でのDPD法が使えないからである。一方、再生時には、トラッキング誤差信号生成部75は、判定部73から入力される記録未記録判定信号NRに基づいてDPP信号DPPS(又はDPD信号DPDS)とDPD信号DPDRを切り替えて出力することが好ましい。つまり、符号がないために記録層でのDPD法が使用できない未記録領域ではサーボ専用層でのDPP法(又はDPD法)を用い、符号がある記録領域では記録層でのDPD法を用いることが好ましい。このように、可能な限り記録層を用いてトラッキングサーボを行うことで、トラッキングサーボの精度を高めることが可能になる。とはいえ、再生時において、トラッキング誤差信号生成部75は、DPP信号DPPS(又はDPD信号DPDS)のみをトラッキング誤差信号TEとして出力することとしてもよいのは勿論である。
トラッキングサーボ部76は、上記トラッキング誤差信号TEの値が0となるように、対物レンズ4の位置を光ディスク11の記録面と水平な方向に制御するための制御信号を生成する。その詳細は、第1の実施の形態で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
増幅部77は、少なくとも光ビームの照射位置がトラック中心CR付近にあるときにDPD信号DPDSとMPP信号MPPSの傾きが互いに等しくなるよう、DPD信号DPDS又はMPP信号MPPSのいずれか少なくとも一方を増幅する。また、少なくとも光ビームの照射位置がトラック中心CR付近にあるときにDPD信号DPDRとMPP信号MPPRの傾きが互いに等しくなるよう、DPD信号DPDR又はMPP信号MPPRのいずれか少なくとも一方を増幅する。それぞれの具体的な増幅処理及び増幅率の決定方法については、第1の実施の形態で説明したものと同様であるので、説明を省略する。
制御用信号生成部78は、トラッキング誤差信号生成部75がDPD信号DPDRを用いてトラッキング誤差信号TEを生成しているとき(再生中において光ビームの焦点位置が記録領域にあるとき)、DPD信号DPDRとMPP信号MPPRの差分に基づいて制御用信号Vtcを生成する。具体的には、次の式(37)により制御用信号Vtcを生成する。一方、トラッキング誤差信号生成部75がDPP信号DPPS又はDPD信号DPDSを用いてトラッキング誤差信号TEを生成しているとき(書き込み中、又は再生中において光ビームの焦点位置が未記録領域にあるとき)には、DPD信号DPDSとMPP信号MPPSの差分に基づいて制御用信号Vtcを生成する。具体的には、次の式(38)により制御用信号Vtcを生成する。ただし、再生中において光ビームの焦点位置が未記録領域にあるときには、式(37)により制御用信号Vtcを生成することとしてもよい。この時、DPD信号DPDRをオフにして選択しないようにしたほうがより確実である。なお、式(37)及び式(38)内のβは、第1の実施の形態で説明した方法と同様な方法により決定される。
表1に、書き込み、再生の別と、トラッキング誤差信号TE及び制御用信号Vtcとの関係の典型的な例をまとめておく。ただし、書き込み、再生の別と、各信号との関係が表1に記載した例に限定されるものではない。例えば再生中においては、上述したように、光ビームの焦点位置が記録領域にあるか否かに関わらず、トラッキング誤差信号TEとしてDPP信号DPPS又はDPD信号DPDSを用いることとしてもよい。換言すれば、書き込み中、再生中と常にサーボ専用層のみを用いてチルトサーボを行ってもよい。その際には、式(38)を用いてもよい。
チルトサーボ部79は、制御用信号生成部78によって生成された制御用信号Vtcに基づいて、光ディスク11への光ビームの入射角を制御する。具体的には、式(37)及び式(38)に示した制御用信号Vtcの値が0となるように、対物レンズ4をラジアル方向に回転させる。なお、対物レンズ4の回転に代えて光学系3をラジアル方向に回転させるようにしてもよいし、光ディスク11の傾きを直接制御するようにしてもよい。
式(37)及び式(38)に示した制御用信号Vtcの値が0となるようにチルトサーボを行うことで、オントラック状態において光ビーム照射位置が揺動しても、チルトがない状態でのDPD信号DPDとMPP信号MPPの値を互いに等しい状態に保つことができることの原理は、第1の実施の形態で説明したとおりである。したがって、本実施の形態による光学ドライブ装置1によっても、オントラック状態における光ビーム照射位置の揺動がチルトサーボに及ぼす影響を低減できる。
なお、上記第2の実施の形態では、サーボ専用層にランドグルーブと符号Mの両方が設けられていることを前提にして説明したが、いずれか一方のみが設けられている場合であっても、同様な処理が可能である。つまり、まずサーボ専用層にランドグルーブのみが設けられている場合、DPD信号DPDSは常時0となるが、第1の実施の形態において式(19)を参照して説明したように、DPD信号DPDSが常時0となる場合であっても、チルトサーボは可能である。サーボ専用層に符号Mのみが設けられている場合には、図15を参照して説明したMPP信号MPPRと同様のMPP信号MPPSが得られるので、ランドグルーブと符号Mの両方が設けられている場合と同様に、オントラック状態における光ビーム照射位置の揺動がチルトサーボに及ぼす影響を低減できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。