JP2011069983A - 酸化物材料、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくともガリウムと、亜鉛と、酸素とを含み、ガリウムの原子数に対する亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、ガリウムと亜鉛の各原子数の和に対する酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下である酸化物材料。この酸化物材料は、特に電子写真感光体の表面層、下引き層、電荷輸送層などに有用である。
【選択図】図1
Description
特許文献2では、有機感光層の上に触媒CVD法による非晶質シリコンカーバイドからなる表面保護層を有する電子写真感光体が提案されている。
特許文献4では、電子写真感光体に有用な硬質な非晶質窒化炭素膜を形成する方法が提案されている。
特許文献6では、酸素と13族元素とを含み、最表面における酸素の含有量が15原子%を超える表面層を備えた電子写真感光体が提案されている。
請求項1の発明は、少なくともガリウムと、亜鉛と、酸素とを含み、前記ガリウムに対する前記亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、前記ガリウムと前記亜鉛の各原子数の和に対する前記酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下である酸化物材料である。
請求項2の発明は、非晶質である請求項1に記載の酸化物材料である。
請求項3の発明は、前記ガリウムと前記亜鉛と前記酸素の各原子数の和に対して、前記亜鉛が0.4原子%以上25原子%以下である請求項1に記載の酸化物材料である。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層を有する電子写真感光体である。
請求項5の発明は、無機感光層と、前記無機感光層上に配置され、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層と、を有する電子写真感光体である。
請求項6の発明は、有機感光層と、前記有機感光層上に配置され、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層と、を有する電子写真感光体である。
請求項7の発明は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジである。
請求項8の発明は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた画像形成装置である。
請求項2に係る発明によれば、多結晶である場合に比べ、化学的安定性が高い酸化物材料が提供される。
請求項3に係る発明によれば、亜鉛の含有量が請求項3の比率を満たさない場合に比べ、化学的安定性が高い酸化物材料が提供される。
請求項4に係る発明によれば、請求項1に記載の酸化物材料を含む層を有さない場合に比べ、化学的安定性が高い電子写真感光体が提供される。
請求項5に係る発明によれば、シリコン等を用いた無機感光層上に請求項1に記載の酸化物材料を含む層を有さない場合に比べ、化学的安定性が高い電子写真感光体が提供される。
請求項6に係る発明によれば、有機感光層上に請求項1に記載の酸化物材料を含む層を有さない場合に比べ、耐摩耗性及び光透過性が両立される電子写真感光体が提供される。
請求項7に係る発明によれば、請求項1に記載の酸化物材料を含む層を有する電子写真感光体を備えていない場合に比べ、画像ボケが抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
請求項8に係る発明によれば、請求項1に記載の酸化物材料を含む層を有する電子写真感光体を備えていない場合に比べ、画像ボケが抑制される画像形成装置が提供される。
十分な硬さの膜を得るためにはダイヤモンド型のsp3結合性を高める必要があるが、グラファイトのsp2結合の混合が避けられないため黒く着色してしまい、透明な膜が得られない。透明な膜を得ようとすると、有機的な柔らかい膜になってしまう。
また、近年、窒化炭素膜の研究開発も行われているが、ダイヤモンド膜やダイヤモンドライクカーボン膜以上の硬さや特性には至っていない。
さらに硬く緻密な膜を得るためには、例えば1000℃という高温処理や大きな放電電力の投入量が必要であるため、高分子フィルムなどへの応用は制限される。
本実施形態に係る酸化物材料は、少なくともガリウムと、亜鉛と、酸素とを含み、ガリウムの原子数に対する亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、ガリウムと亜鉛の各原子数の和に対する酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下である(以下、ガリウム、亜鉛、及び酸素を含み、上記組成比を有する酸化物材料を適宜「GaZnO材料」と略記する。)。
一方、本実施形態に係るGaZnO材料は、上記のような原子組成比を有することで、耐摩耗性と光透過性が両立され、さらに化学的安定性も高く、また、例えば、1×105Ωcm以上1×1013Ωcm以下の導電性を有する。本実施形態のGaZnO材料の用途は、上記特性が求められる部材であれば特に限定されないが、例えば、電子写真感光体の表面層として特に有用である。
図1、図2、図3は、それぞれ本実施形態に係るGaZnO材料が用いられる電子写真感光体の層構成の例を概略的に示している。
図1に示す電子写真感光体は、導電性支持体1上に、支持体1側から電荷発生層2、電荷輸送層3、表面層4が順次配置されている。図2に示す電子写真感光体は、導電性支持体1上に、支持体1側から下引き層(電荷注入阻止層)5、電荷発生層2、電荷輸送層3、中間層6、表面層4が順次配置されている。図3に示す電子写真感光体は、導電性支持体1上に、支持体1側から下引き層5、電荷輸送層と電荷発生層とが一体となった感光層7、表面層4が順次配置されている。
電荷発生層2、電荷輸送層3、及び電荷発生層と電荷輸送層とが一体となっている感光層7は、それぞれ有機高分子で構成されているものでも良いし、無機材料から構成されているものでも良いし、有機高分子と無機材料とから構成されていても良い。
電荷発生層2及び電荷輸送層3を形成する有機高分子化合物は、熱可塑性であっても熱硬化性のものであっても、また複数種の材料を反応させて形成したものでも良い。
有機高分子層の場合、表面層4との間に硬さや膨張率、密着性の向上などの観点から中間層を設けても良い。中間層は、表面層4と電荷輸送層等との中間的な物性を示すものが良い。また、中間層は電荷をトラップする層として機能しても良い。
以下、各構成要素についてより具体的に説明する。
導電性支持体1は表面に形成される感光層等を支持する。なお、本明細書中において導電性支持体の「導電性」とは、体積抵抗率が1013Ω・cm未満である性質を指す。
導電性支持体1としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、亜鉛、ニッケル等の金属ドラム;シート、紙、プラスチック、ガラス等の基材上にアルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス鋼、銅−インジウム等の金属を蒸着したもの;酸化インジウム、酸化スズ等の導電性金属化合物を上記基材に蒸着したもの;金属箔を上記基材にラミネートしたもの;カーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅等を結着樹脂に分散し、上記基材に塗布することによって導電処理したもの等が挙げられる。
特に、感光層との密着性向上や成膜性向上の点で、アルミニウム支持体の表面に陽極酸化処理を施したものを導電性支持体1として用いることが望ましい。
下引き層5を構成する材料としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、シリコン原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。
これらの化合物は単独であるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いる。これらの中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は、残留電位が低く、環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないため望ましく使用される。また、有機金属化合物は、これを単独又は2種以上を混合して用いてもよいし、さらに上述の結着樹脂と混合して用いてもよい。
電荷発生層2は、電荷発生材料を真空蒸着法により蒸着させて形成するか、有機溶剤及び結着樹脂を含む溶液を塗布することにより形成される。
また、これらの有機顔料は一般に数種の結晶型を有しており、特にフタロシアニン化合物ではα型、β型などをはじめとしてさまざまな結晶型が知られているが、目的にあった感度その他の特性が得られる顔料であるならば、これらのいずれの結晶型で用いてもよい。
(1)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.6°,10.0°,25.2°,28.0°の位置に回折ピークを有する結晶型のヒドロキシガリウムフタロシアニン。
(2)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも7.3°,16.5°,25.4°,28.1°の位置に回折ピークを有する結晶型のクロルガリウムフタロシアニン。
(3)電荷発生材料としてCukα線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)において、少なくとも9.5°,24.2°,27.3°の位置に回折ピークを有する結晶型のチタニルフタロシアニン。
即ち、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプなどのポリカーボネート樹脂及びその共重合体、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどである。
電荷発生層2を形成する為の塗布液の溶媒として公知の有機溶剤、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n―ブタノール等の脂肪族アルコール系溶剤、アセトン、シクロヘキサノン、2−ブタノン等のケトン系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチルエーテル等の環状あるいは直鎖状エーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。
電荷輸送層3に用いられる電荷輸送材料としては、下記に示すものが例示される。即ち2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、トリ(p−メチル)フェニルアミン、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、ジベンジルアニリン、9,9−ジメチル−N,N−ジ(p−トリル)フルオレノン−2−アミンなどの芳香族第3級アミノ化合物、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4’−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4’−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン、[p−(ジエチルアミノ)フェニル](1−ナフチル)フェニルヒドラゾン、1−ピレンジフェニルヒドラゾン、9−エチル−3−[(2メチル−1−インドリニルイミノ)メチル]カルバゾール、4−(2−メチル−1−インドリニルイミノメチル)トリフェニルアミン、9−メチル−3−カルバゾールジフェニルヒドラゾン、1,1−ジ−(4,4’−メトキシフェニル)アクリルアルデヒドジフェニルヒドラゾン、β,β−ビス(メトキシフェニル)ビニルジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質が用いられる。あるいは、上記化合物を含む基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、単独又は2種以上を組み合せて使用する。
この結着樹脂の例として、ビスフェノールAやビスフェノールZ,ビスフェノールC,ビスフェノールTPなどを含む各種のポリカーボネート樹脂やその共重合体、ポリアリレート樹脂やその共重合体、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、アチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用する。
電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は10:1から1:5の範囲内が望ましい。
電荷輸送層の層厚は一般に5μm以上50μm以下の範囲内であることが望ましく、10μm以上40μm以下の範囲であることがより望ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン又はそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。
また電荷輸送層形成用塗布液には、塗布形成される塗膜の平滑性向上のためのレベリング剤としてシリコーンオイルを添加してもよい。
電荷輸送層3の層厚は一般には5μm以上50μm以下の範囲内とすることが望ましく、10μm以上30μm以下の範囲内がより望ましい。
表面層4は、ガリウムと、亜鉛と、酸素とを含み、ガリウムの原子数に対する亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、ガリウムと亜鉛の各原子数の和に対する酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下である材料から形成されている。このような組成比を有する酸化物材料であれば、硬度及び光透過性が高く、体積抵抗率が105Ωcm以上1013Ωcm以下であり、しかも、親水性が低く、化学的安定性に優れた層となる。
なお、ガリウムの原子数に対する亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)は、化学的安定性と光透過性の観点から、0.01以上0.5以下が望ましい。
また、ガリウムと亜鉛の各原子数の和に対する酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]は、化学的安定性と光透過性の観点から、1.1以上1.5以下が望ましい。
RBSは、例えば、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS−400、システムとして3S−R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いる。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは109°である。
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定してもよい。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度が向上する。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素により決まる。
測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて層厚を算出する。密度の誤差は20%以内である。
また、光透過性の低下の抑制、高抵抗化の抑制、親水性の抑制などの観点から、ガリウムと亜鉛と酸素の各原子数の和に対して、亜鉛の割合が0.4原子%以上25原子%以下であることが望ましく、0.4原子%以上20原子%以下であることが特に望ましい。
微結晶、多結晶、又は非晶質の場合には、単結晶に比べ、結合欠陥、転位欠陥、結晶粒界の欠陥などが多いため、GaZnO膜中の水素やハロゲン原子による結合欠陥等の不活性化に有効である。すなわち、水素やハロゲン原子は結晶内の結合欠陥や結晶粒界の欠陥などに取り込まれて電気的な補償を行う。このため、光キャリアの発生、キャリアの拡散や移動に関係するトラップが無くなり、反応活性点が無くなってより安定な表面層となる。
なお、水素の含有量についてはハイドロジェンフォワードスキャタリング(HFS)により絶対値を測定することにより求める。赤外吸収スペクトルによって推定してもよい。
HFSは、加速器としてNEC社の3SDH Pelletronを用い、エンドステーションとしてCE&A社のRBS−400を用い、システムとしてCE&A社の3S−R10を用いる。
解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いる。
He++イオンビームエネルギー:2.275eV
検出角度160°入射ビームに対してGrazing Angle30°である。
白雲母は水素濃度が6.5原子%であることが知られている。
最表面に吸着しているHは、例えば、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって補正を行う。
感光層との密着性を高め、かつ、表面の滑りを良くするためには、表面層の下層側が微結晶性であり、最表面側が非晶質であってもよい。
シリコン原子を主体とする非晶質シリコン感光体は、正帯電でも負帯電用の感光体でも良く、中間層として設けた電荷注入阻止層の上に本実施形態に係るGaZnO材料を含む表面層を設けても良いし、第1の表面層の上に表面改質層として本実施形態に係るGaZnO材料を含む第2の表面層をさらに設けても良い。
機能分離型の場合には表面側に電荷発生層を設けたものでも良いし、表面側に電荷輸送層を設けたものでも良い。本実施形態に係るGaZnO材料から構成される表面層は、これらの感光層の上に直接設けても良いし、表面層と感光層との間に、硬度、膨張係数、弾力性などの調整のための中間層を設けても良い。例えば、感光層の上に、感光層の硬度と本実施形態に係るGaZnO材料の表面層の硬度との中間になる硬度を有する中間層(硬質層)を設けても良いし、弾性のひずみを小さくするための電荷輸送層と、表面層より柔らかい(硬度が低い)層を設けても良い。
また、短波長光が有機感光層に照射されないように、表面層の形成時に、バンドギャップの小さい膜を初期に形成してもよい。例えばInを含んだGaxIn1−xN膜(0≦x≦0.99)が使用される。
また、紫外線吸収剤や酸化防止剤を高分子樹脂に分散させた層を塗布などによって形成しても良いし、電荷輸送層の上に紫外線吸収剤を混合した層を設けても良い。
上記のような紫外線などの短波長光を吸収する層を表面層を形成する前に設けることで、表面層を形成するときの紫外線の影響が抑制されるだけでなく、画像形成装置の中でのプリント時のコロナ放電や各種の光源からの紫外線などの短波長光からの影響が抑制される。
表面層4の層厚は、耐摩耗性、化学的安定性、及び光透過性の観点から、0.1μm以上10μm以下の範囲内とすることが望ましい。
次に、本実施形態に係る表面層の形成方法について説明する。本実施形態に係るGaZnO材料の表面層を形成する方法として、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、有機金属気相成長法、分子線エキタピシー法、蒸着、スパッタリング等の公知の気相成膜法等が利用されるが、高い密着性を得る観点から、リモートプラズマ有機金属化学堆積法を用いることが望ましい。
このプラズマ発生装置は、高周波放電管部21と、高周波放電管部21内に配置され、放電面が排気口11側に設けられた平板電極19と、高周波放電管部21外に配置され、平板電極19の放電面と反対側の面に接続された高周波電力供給部18とから構成されている。なお、高周波放電管部21には、高周波放電管部21内にガスを供給するためのガス導入管20が接続されており、このガス導入管20のもう一方の端は、不図示の第1のガス供給源に接続されている。
まず、酸素(O2)ガス(又は、ヘリウム(He)希釈酸素ガス)、ヘリウム(He)ガス、及び必要に応じ水素(H2)ガスを、ガス導入管20から高周波放電管部21内に導入すると共に、高周波電力供給部18から平板電極19に、13.56MHzのラジオ波を供給する。この際、平板電極19の放電面側から排気口11側へと放射状に広がるようにプラズマ拡散部17が形成される。ここで、ガス導入管20から導入されたガスは成膜室10を平板電極19側から排気口11側へと流れる。平板電極19は電極の周りをアースシールドで囲んだものでもよい。
成膜する際、トリメチルガリウムと有機亜鉛は別々の容器から気体としてガス導入管15に導入するが、ガリウムの原子数に対する亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、ガリウムと亜鉛の各原子数の和に対する酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下となるように各原料ガスの濃度を調整する。
一方、非晶質シリコン感光体を用いる場合には、表面層の成膜時の基材14の表面温度は、例えば、50℃以上350℃以下とされる。
放電による基材14の表面温度の上昇を避けたい場合には、基材14の表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量、放電出力、圧力などの条件を目標温度となるように調整する。
具体的には、例えば、少なくとも一つ以上のドーパント元素を含むガスをガス導入管15、シャワーノズル16を介して成膜室10内に導入することによって、n型、p型等の導電型の表面層が得られる。
また、異なる2種類のプラズマ発生装置を同一の圧力下で利用する場合、例えば、マイクロ波発振装置と高周波発振装置とを用いる場合、励起種の励起エネルギーを大きく変えられ、膜質の制御に有効である。また、放電は大気圧近傍(70000Pa以上110000Pa以下)で行ってもよい。大気圧近傍で放電を行う場合にはキャリアガスとしてHeを使用することが望ましい。
本実施形態の電子写真感光体を用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置について説明する。
本実施形態のプロセスカートリッジは、本実施形態の電子写真感光体を備えたものであれば特に限定されないが、具体的には、本実施形態の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段から選択された少なくとも1つとを一体として有するものであり、画像形成装置の本体に脱着自在である構成を有する。
<実施例1>
アルミニウム製の支持体(外径:84mm)上に下引き層(電荷注入阻止層)と電荷発生層と電荷輸送層を以下の工程に従って順次形成した有機感光体を作製した。
電荷注入阻止層となる下引き層は、ジルコニウム化合物(商品名:オルガノチックスZC540、マツモト製薬社製)20質量部、シラン化合物(商品名:A1100、日本ユニカー社製)2.5質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBM−S、積水化学社製)10質量部、及びブタノール45質量部を攪拌混合し、この混合物を支持体表面に塗布して150℃で10分間加熱乾燥することにより、厚さ1.0μmの下引き層とした。
He希釈酸素ガスを20sccmとHeガスを100sccmそれぞれガス導入管20より直径50mmの電極部19に導入し、高周波電源18とマッチング回路を介して13.56MHzのラジオ波を出力50Wにセットし、チューナでマッチングを取り放電を行った。このときの反射波は0Wであった。
基材(感光体)の加熱は行わなかった。有機感光体の表面には表面温度を測定するため温度測定用ステッカー(Wahl社製、テンプ・プレート P/N101)を貼り付けた。
この状態で60分間成膜して、有機感光体の上に、厚さ0.4μm、水素、ガリウム、亜鉛、酸素を含む非晶質膜を形成した。温度測定用ステッカーによる温度測定結果は45℃であった。
純水との接触角は80°であった。
この膜は透明であり、ステンレス鋼で擦っても、膜の表面は傷が付かなかった。
RHEED(反射高速電子線回折)での回折像には点や線が全く見られず非晶質であることがわかった。
触針段差測定によって求めた。試料基板は5×10mmにカットされた厚さ400μmのSiウェハーを用いた。感光体表面に固定用のポリイミド製粘着テープによって形成された非着膜部と着膜部の段差を東京精密社製サーフコム550Aにより測定した。
(白筋)
画像上の白筋欠陥をハーフトーン画像(画像密度30%)2万枚プリント終了後の画像について評価した。評価基準は以下の通りである。
A:白筋状の画像欠陥は全く見られない。
B:感光体の傷に起因すると考えられる白筋状の画像欠陥がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:感光体の傷に起因すると考えられる白筋状の画像欠陥が見られる多数見られ、実用上の許容範囲を超えていた。
1000枚プリント後に、エリアカバレッジ100%のベタ画像を100枚連続で印画し、得られた画像について、下記評価基準に従って画像濃度を評価した。
A:100枚印画後も画像濃度低下が全くみられない。
B:90枚を超えて100枚未満において、印画後に画像濃度低下がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:70枚を超えて90枚以下において、印画後に画像濃度低下がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
D:70枚以下において、一見して画像濃度低下が起こっており、実用上許容範囲を超えていた。
画像ボケは、画質評価における2万枚プリント後に、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部分のみを水拭きした。
その後、ハーフトーン画像(画像密度30%)をプリントし、ハーフトーン画像中に感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応するような濃度差の有無を目視で確認し、下記評価基準に従って評価した。
A:濃度差の有無が全くみられない。
B:濃度差の有無がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:一見して濃度差が確認でき、実用上の許容範囲を超えていた。
上記画質評価における2万枚プリントテスト後の感光体表面を目視により観察し、表面の傷の有無を調べた。
評価基準は以下のとおりである。
A:表面の傷が全くみられない。
B:表面の傷がわずかに見られるものの、実用上許容範囲内である。
C:一見して表面の傷が確認でき、実用上の許容範囲を超えていた。
まず、上記画質評価における2万枚のプリントテスト前に、保護層付き電子写真感光体について、波長780nmにおける残留電位Aを測定した。
次に、上記画質評価における2万枚のプリントテスト後に、保護層付き電子写真感光体について、波長780nmにおける残留電位Aを測定した。
これらの結果に基づき、繰り返し使用時の残留電位の増加(変化電位V)を、下記評価基準に従って評価した。
総合画質評価として
A:白筋、画像濃度、画像ボケの全項目A
B:1−2項目でB
C:3項目でB
D:1項目でC
また、プリント評価後の感光体の表面には傷の発生は無く、初期のすべりを維持していた。
実施例1と同様の手順で電荷輸送層まで作製した有機感光体を用い、実施例1と同様にして厚さ0.5μm、水素と亜鉛を含んだ酸化ガリウム膜の表面層を形成した。水素をキャリアとしてトリメチルガリウム0.15sccmとジメチル亜鉛0.14sccmとの混合ガスをガス導入管15を通じてリモートプラズマ中に導入した。プラズマはスリット状の拡散部17を通して整えられる。このときバラトロン真空計で測定した反応圧力は40Paであった。
また、水素は、膜中のGaとZnとOとHの総原子数に対して19原子%含まれていた。
純水との接触角は80°であった。
この膜は透明であり、ステンレス鋼で擦っても、膜の表面は傷が付かなかった。
RHEEDでの回折像には点や線が全く見られず非晶質であることがわかった。
帯電特性に変化が少なく、光照射後の残留電位は20V以下の変化であり、感度への影響は赤外領域から可視領域全体にわたってほとんど無かった。
さらに膜の接着性に関しては、粘着テープによっても剥離せず、表面性も元の有機感光体よりも平滑でかつすべりが良かった。
アルミニウム支持体上に3μm厚のn型のSi3N1の電荷注入阻止層と、20μm厚のi型の非晶質シリコン光導電層と、0.5μm厚のp型のSi2C1の電荷注入阻止表面層を形成した負帯電型の非晶質シリコン感光体を用い、図4Aの装置を用いて、実施例1と同じ条件で酸化亜鉛ガリウム膜の表面層を形成した。
またRHEEDでの回折像には点や線が全く見られず非晶質であることがわかった。
帯電特性に変化は無く、光照射後の残留電位は30V以下の変化であり、感度への影響は赤外領域から可視領域全体にわたって無かった。
さらに接着性に関しては粘着テープによっても剥離せず、表面性も元の非晶質シリコン感光体よりも平滑でかつすべりが良かった。
実施例1と同様の手順で電荷輸送層まで作製した有機感光体を用い、実施例1と同様にして厚さ0.5μm、水素と亜鉛を含んだ酸化ガリウム膜の表面層を形成した。
その際、実施例1と同じ図4Aに示す装置を用い、水素をキャリアとしてトリメチルガリウム0.2sccmとジメチル亜鉛0.02sccmとの混合ガスをガス導入管15を通じてリモートプラズマ中に導入したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。プラズマはスリット状の拡散部17を通して整えられる。このときバラトロン真空計で測定した反応圧力は40Paであった。
実施例1と同様の手順で電荷輸送層まで作製した有機感光体を用い、実施例1と同様にして厚さ0.5μm、水素と亜鉛を含んだ酸化ガリウム膜の表面層を形成した。
その際、実施例1と同じ図4Aに示す装置を用い、水素をキャリアとしてトリメチルガリウム0.15sccmとジメチル亜鉛0.2sccmとの混合ガスをガス導入管15を通じてリモートプラズマ中に導入したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。プラズマはスリット状の拡散部17を通して整えられる。このときバラトロン真空計で測定した反応圧力は40Paであった。
実施例1と同様の手順で電荷輸送層まで作製した有機感光体を用い、実施例1と同様にして厚さ0.5μm、水素を含んだ酸化ガリウム膜の表面層を形成した。その際、実施例1と同じ図4Aに示す装置を用い、水素をキャリアとしてトリメチルガリウム0.3sccmとの混合ガスをガス導入管15を通じてリモートプラズマ中に導入したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。プラズマはスリット状の拡散部17を通して整えられる。このときバラトロン真空計で測定した反応圧力は40Paであった。
実施例1と同様の手順で電荷輸送層まで作製した有機感光体を用い、実施例1と同様にして厚さ0.5μm、水素と亜鉛を含んだ酸化ガリウム膜の表面層を形成した。その際、実施例1と同じ図4Aに示す装置を用い、水素をキャリアとしてトリメチルガリウム0.05sccmとジメチル亜鉛0.4sccmの混合ガスをガス導入管15を通じてリモートプラズマ中に導入したこと以外は実施例1と同じ条件で作製した。プラズマはスリット状の拡散部17を通して整えられる。このときバラトロン真空計で測定した反応圧力は40Paであった。
Claims (8)
- 少なくともガリウムと、亜鉛と、酸素とを含み、
前記ガリウムに対する前記亜鉛の原子数比(亜鉛の原子数/ガリウムの原子数)が0.01以上0.6以下であり、かつ、
前記ガリウムと前記亜鉛の各原子数の和に対する前記酸素の原子数比[酸素の原子数/(ガリウムの原子数+亜鉛の原子数)]が1.0以上1.6以下である酸化物材料。 - 非晶質である請求項1に記載の酸化物材料。
- 前記ガリウムと前記亜鉛と前記酸素の各原子数の和に対して、前記亜鉛が0.4原子%以上25原子%以下である請求項1に記載の酸化物材料。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層を有する電子写真感光体。
- 無機感光層と、
前記無機感光層上に配置され、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層と、
を有する電子写真感光体。 - 有機感光層と、
前記有機感光層上に配置され、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の酸化物材料を含む層と、
を有する電子写真感光体。 - 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ。
- 請求項4〜請求項6のいずれか1項に電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成された潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
を備えた画像形成装置。
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