JP7322397B2 - 光学物品 - Google Patents

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Description

本発明は、光学物品に関する。
特許文献1には、「光学基材と、前記光学基材の上に直にまたは他の層を介して形成された、金属酸化物を含む透光性の第1の層であって、表層域に、イオン照射により酸素欠陥が導入された酸素欠損域を含む第1の層とを有する、光学物品。」が開示されている。
特許文献2には、「光透過性を有し、主面を有するプラスチックフィルムと、光透過性を有し、前記主面を覆うガスバリア層とを備え、前記ガスバリア層は、水素を含有した酸化アルミニウムであるAlOXHYからなる層であり、酸素組成比Xは、1.00<X<2.00を満たし、水素組成比Yは、0.10<Y<1.20を満たし、前記ガスバリア層おける水素量が30.0at%以下であるガスバリアフィルム。」が開示されている。
特許文献3には、「プラスチック基材(A)と、該プラスチック基材上に設けられた、二官能以上のアクリレート化合物、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物、及び金属酸化物粒子を含有する組成物を硬化してなり、膜厚が50~100nmのλ/4層(B)と、 該λ/4層の上に直接又は他の層を介して設けられたハードコート層(C)と、を備えるプラスチックレンズ。」が開示されている。
特許文献4には、「2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-クロロベンゾトリアゾールからなる紫外線吸収剤(a)と、ポリエピチオ化合物および/またはポリチエタン化合物、またはポリエピチオ化合物およびポリチオール化合物の組み合わせである重合性化合物(c)から得られるポリスルフィドと、を含み、紫外線吸収剤(a)の量が、重合性化合物(c)の重量総和に対し0.3~2重量%であり、厚み2mmで測定した光透過率が下記(1)~(3)の特性を満たす、光学材料;(1)波長410nmにおける光透過率が10%以下である。(2)波長420nmにおける光透過率が70%以下である。(3)波長440nmにおける光透過率が80%以上である。」が開示されている。
非特許文献1には、波長411nmの光における目に対する影響が報告されている。
特開2010-237637号公報 特開2016-203427号公報 特開2014-164271号公報 特開第5620033号公報
The European journal of neuro science, vol.34, Iss.4, 548-558、
本発明の課題は、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、撥水性が高い無機表面層を有する光学物品を提供することである。
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1>
基材と、
前記基材上に設けられた無機表面層であって、金属元素M、酸素O、及び水素Hを含有し、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0以下である無機表面層と、
を有する、光学物品。
<2>
前記金属元素Mが、第13族元素である、<1>に記載の光学物品。
<3>
前記第13族元素が、ガリウムである、<2>に記載の光学物品。
<4>
前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.35以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の光学物品。
<5>
前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.30以下である、<4>に記載の光学物品。
<6>
前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.15以上1.30以下である、<5>に記載の光学物品。
<7>
前記基材が、樹脂基材である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の光学物品。
<8>
光学フィルタである、<1>~<7>のいずれか1項に記載の光学物品。
<9>
レンズである、<1>~<7>のいずれか1項に記載の光学物品。
<10>
メガネレンズである、<8>に記載の光学物品。
<1>、<2>、<3>に係る発明によれば、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、撥水性が高い無機表面層を有する光学物品が提供される。
<4>、<5>に係る発明によれば、前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.35を超える光学物品である場合に比べ、埃が除去しやすい光学物品が提供される。
<6>に係る発明によれば、前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.30を超える光学物品である場合に比べ、380nm以上500nm以下の波長における平均透過率が抑制される光学物品が提供される。
<7>に係る発明によれば、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、基材が樹脂フィルムであって、撥水性が高い無機表面層を有する光学物品が提供される。
<8>に係る発明によれば、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、撥水性が高い無機表面層を有し、光学フィルタとしての光学物品が提供される。
<9>に係る発明によれば、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、撥水性が高い無機表面層を有し、レンズとしての光学物品が提供される。
<10>に係る発明によれば、基材上に無機表面層を備え、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0を超える光学物品である場合に比べ、撥水性が高い無機表面層を有し、メガネレンズとしての光学物品が提供される。
本実施形態に係る光学物品の層構成の一例を示す模式断面図である。 本実施形態に係る光学物品の層構成の他の一例を示す模式断面図である。 薄膜形成装置の一例を示す概略構成図である。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本実施形態に係る光学物品は、基材と、前記基材上に設けられた無機表面層であって、金属元素M、酸素O、及び水素Hを含有する無機表面層と、を有する。そして、無機表面層は、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0以下である。
光学物品(例えば、光学フィルタ、光学レンズ等)の表面には、種々の機能が求められるため、機能性層が設けられている。例えば、水滴が付着したときに、特に、光学レンズ(写真カメラ、眼鏡等)などでは、光学物品に水滴がつくと結像がゆがめられることがある。このため、光学物品には、水滴の除去のしやすさが求められる場合がある。本実施形態に係る光学物品は、上記構成を有することにより、撥水性が高い無機表面層を有する光学物品が得られる。
本実施形態に係る光学物品において、無機表面層は、金属元素と酸素と水素とを含んでいる。この無機表面層を赤外分光光度法によって測定したとき、得られた赤外吸収スペクトルは、少なくとも金属と水素との結合(M-H結合)に由来するシグナルが現れる。得られた赤外吸収スペクトルのうち、酸素と水素との結合(O-H結合)に由来するシグナルが現れ、O-H結合の吸光度IO-Hが、M-H結合の吸光度IM-Hに対して高すぎると、無機表面層の親水性が強くなり、撥水性が低くなる。これに対し、本実施形態に係る光学物品では、比(IO-H/IM-H)が1.0以下である。このため、無機表面層の疎水性が高まる結果、本実施形態に係る光学物品は、撥水性が高い無機表面層が得られると考えられる。
以下、本実施形態に係る光学物品について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る光学物品の一例を示す模式断面図である。図2は、本実施形態に係る光学物品の他の一例を示す模式断面図である。
図1に示す光学物品100Aは、基材101と、基材101上に設けられた無機表面層103とを備える構造を有する。無機表面層103は、光学物品100Aの最表面に設けられる層である。
図2に示す光学物品100Bは、基材101と、基材101上に設けられた機能層105と、機能層105上に設けられた無機表面層103とを備える構造を有する。無機表面層103は、図1に示す光学物品100Aと同様に、光学物品100Bの最表面に設けられる層である。機能層105は、必要に応じて設けられる層である。光学物品100Bでは、単層の機能層105が設けられているが、これに限定されず、機能層105として、異なる機能又は類似の機能を有する層が多層に形成されていてもよい。光学物品100A及び光学物品100Bでは、無機表面層103又は機能層105との接合面が平面である場合を示しているが、基材101の形状は特に限定されない。例えば、基材101の形状は、基材101の表面側に向かって凸状の形状であってもよく、基材101の表面側に向かって凹状の形状であってもよい。基材101の両面が異なる形状であってもよく、一方の面が表面側に向かって凸状の形状であり、他方の面が表面側に向かって凹状の形状であってもよい。
以上、図1に示す光学物品100A、及び図2に示す光学物品100Bを例に挙げて説明したが、本実施形態に係る光学物品は、これらに限定されるものではない。光学物品100Aでは、無機表面層103が、基材101の片面側に設けられる層構造であるが、無機表面層103は、基材101の両面側に設けられる層構造であってもよい。光学物品100Bでは、機能層105と無機表面層103とが、それぞれ、基材101の片面側に設けられる層構造であるが、基材101の両面側に設けられる層構造であってもよい。また、基材101の一方の面に、機能層105と無機表面層103とを備え、他方の面に機能層105を備える層構造であってもよい。なお、図1及び図2に示す基材101は、光学物品本体としての基材101を表している。つまり、光学物品100A及び光学物品100Bでは、光学物品本体と、光学物品本体上に設けられた無機表面層103とを備える構造が示されている。
以下、本実施形態に係る光学物品の各要素について説明する。以下の説明において、符号は省略して説明する。
(基材)
基材(つまり、光学物品本体)は、特に限定されず、透光性を有する基材であることが好ましい。透光性とは、光を透過させる性質を意味し、例えば、全光線透過率が50%以上(好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上)であることを表す。光透過性を有するのであれば、透明であってもよく、半透明であってもよい。なお、例えば、全光透過率は、分光ヘイズメータ「SH7000(日本電色工業社製)」により測定される。
基材としては、無機基材及び樹脂基材が挙げられる。無機基材及び樹脂基材を構成する材料としては、無機ガラス材料及び樹脂材料が挙げられる。無機ガラス材料及び樹脂材料は特に限定されず、具体的には、例えば、バリウムガラス(BaK)、重クラウンガラス(SK)、特重クラウンガラス(SSK)、軽バリウムフリント、重バリウムフリントなどのガラス材料;ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリイミド、脂肪族アリルカーボネート、芳香族アリルカーボネート、ポリチオアクリル、ポリチオメタクリル、ポリチオウレタン、エピスルフィドなどの樹脂材料が挙げられる。
ガラスに比べて軽量で耐衝撃性に優れている観点から、基材としては、樹脂基材を用いることが好ましい。なお、樹脂基材を用いることで、無機表面層を設けた場合に、軽量化と傷に対する耐性の向上とが両立されるという利点がある。
基材の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上10mm以下であってもよい。基材の厚さは、10μm以上であってもよく、30μm以上であってよく、50μm以上であってもよい。また、5mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、1mm以下であってもよい。
(機能層)
機能層としては、必要な機能に応じて、設ければよい。機能層としては、例えば、ハードコート層、屈折率調整層などが挙げられる。基材に樹脂フィルムを用いた場合、ハードコート層を設けることにより、光学物品の傷に対する耐性が向上する傾向がある点で好適である。また、屈折率調整層としては、無機表面層よりも低屈折率である低屈折率層、無機表面層よりも高屈折率である高屈折率層が挙げられる。例えば、本実施形態の無機表面層に加えて、低屈折率層及び高屈折率層の少なくとも一方の層を積層し、光の干渉を制御することで、反射防止機能を得ることができる。
ハードコート層を形成する材料としては、特に限定されず、公知の材料が挙げられる。例えば、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂などを含む樹脂組成物が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂を含む樹脂組成物としては、例えば、重合性化合物及び重合開始剤を含む。必要に応じて、帯電防止剤、離型剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶剤を含んでいてもよい。
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合を有する化合物、分子中にカチオン重合性結合を有する化合物、オリゴマー、反応性重合体等が挙げられる。ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。単官能でも多官能でもよい。カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーなどが挙げられる。オリゴマー又は反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独重合体または共重合体などが挙げられる。
重合開始剤としては、ラジカルやカチオンを発生させる、カルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン、ベンゾインエーテル、アシルフォスフィンオキシド、アミノカルボニル化合物、ハロゲン化物等の一般に市販されている重合開始剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ハードコート層を形成する材料としては、アルコキシシラン系組成物又はオルガノアルコキシシランと、コロイダルシリカとを主成分とし、硬化触媒、溶媒などを含有す組成物も挙げられる。
ハードコート層は、スプレー法、浸漬法、フローコート法、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法により設けられる。
屈折率調整層を形成する材料は、特に限定されず、無機物、有機物、無機物と有機物との混合物などが挙げられる。無機物としては、NaF、NaAlF、LiF、MgF、CaF、SiO、LaF、CeF、Al、TiO、Ta、ZrO、ZnO、ZnS、SiOx(xは1.5以上2未満)などが挙げられる。有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリシロキサンなどが挙げられる。
(無機表面層)
-無機表面層の組成-
本実施形態の光学物品は、金属元素M、酸素O、及び水素Hを含有する。金属元素としては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr),モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルニムウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、珪素(Si),ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、機械的強度に優れる無機表面層が得られる点で、金属元素は第13族元素を含むことが好ましい。特に、第13族元素として、ガリウムを含むことがより好ましい。特に、第13族元素は、ガリウムであることが好ましい。酸化ガリウムは化学的安定性が高いため、無機表面層の特性が維持されやすくなる点で好ましい。
電子写真感光体における無機表面層は、金属元素に結合した水素(M-H)として、水素が導入されることで、表面自由エネルギーが低くなり、撥水性が高くなる。そして、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0以下であると、撥水性の高い無機表面層となる。その結果として、水滴汚れ等の除去性が向上する。一方で酸素に結合した水素(O-H)の形で水素が導入されると撥水性が低下する。比(IO-H/IM-H)は、撥水性が高まる観点で、低いほど好ましく、0.5以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。下限は、0であってもよく、0超であってもよい。なお、無機表面層に水素は含んでいるが、本実施形態においては、ベースラインによって、比(IO-H/IM-H)は、0以下になる場合もある。0未満の場合は、0とみなす。
赤外分光光度法による測定方法は、以下のとおりである。
無機表面層の測定用試料を、シリコン基板上に形成し、シリコン基板を参照基準(リファレンス)として、赤外吸収スペクトルで得られた各シグナルを参照基準(リファレンス)に対する差分として得た各シグナルを、さらに干渉によるバックグラウンドの変動をベースライン処理して求めて、強度比(IO-H/IM-H)を得る。
赤外吸収スペクトルの測定は、装置:PerkinElmer社製Spectrum One FT―IR Spectrometerを用い、条件:透過モードで行う。また、赤外分光光度法による測定は、測定対象となる光学物品を測定用試料として、反射吸収法(RA法)、減衰全反射法(ATR法)などの測定方法により、表面層側から測定し、基材からのシグナルを差し引いて表面層からのシグナルとすることも可能である。
赤外吸収スペクトルにおいて、例えば、金属元素がガリウムの場合、Ga-H結合のシグナルは、例えば1900cm-1以上2200cm-1以下の間に現れる。また、O-H結合のシグナルは、例えば、2600cm-1以上3800cm-1以下の間に現れる。
本実施形態に係る無機表面層は、金属元素M、及び酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.35以下であることが好ましい。この範囲であると、帯電防止効果が優れ、埃の付着が抑制される点で好適である。特に、可視波長領域に対して透光性を有しつつ、適度な帯電防止効果が得られる。
また、金属元素M、及び酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.30以下であることが好ましく、1.15以上1.30以下がより好ましく、1.20以上1.28以下がさらに好ましい。この範囲であると、可視領域短波長側の光の透過が抑制される点で好適である。特に、可視波長領域に対して透光性を有しつつ、光学物品(メガネ等)に用いた場合の目の疲労を抑制する効果が得られる。
ここで、ガリウムと酸素と水素とを含んで構成された無機表面層は、機械的強度、透光性、撥水性等に優れる観点から、好適な元素組成比として、以下のように例示される。
ガリウムの元素組成比は、例えば、無機表面層の全構成元素に対して、0.20以上であることがよく、0.25以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましい。また、0.50以下であることがよく、0.40以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましい。
酸素の元素組成比は、例えば、無機表面層の全構成元素に対して、0.30以上であることがよく、0.30以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましい。また、0.70以下であることがよく、0.60以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましい。
水素の元素組成比は、例えば、機械的強度の点で、無機表面層の全構成元素に対して、0.05以上であることがよく、0.1以上であることが好ましい。同様の点で、0.25以下であることがよく、0.20以下が好ましい。
ここで、無機表面層における各元素の元素組成比等は、ラザフォード後方散乱法(以下、「RBS」と称する)により求められる。
なお、RBSでは、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS-400、システムとして3S-R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラム等を用いる。
なお、RBSの測定条件は、He++イオンビームエネルギーは2.275eV、検出角度160°、入射ビームに対してGrazing Angleは約109°とする。
RBS測定は、具体的には以下のように行う
まず、He++イオンビームを試料に対して垂直に入射し、検出器をイオンビームに対して、160°にセットし、後方散乱されたHeのシグナルを測定する。検出したHeのエネルギーと強度から組成比と膜厚を決定する。組成比及び膜厚を求める精度を向上させるために二つの検出角度でスペクトルを測定してもよい。深さ方向分解能や後方散乱力学の異なる二つの検出角度で測定しクロスチェックすることにより精度が向上する。
ターゲット原子によって後方散乱されるHe原子の数は、1)ターゲット原子の原子番号、2)散乱前のHe原子のエネルギー、3)散乱角度の3つの要素のみにより決まる。 測定された組成から密度を計算によって仮定して、これを用いて厚みを算出する。密度の誤差は20%以内である。
なお、水素の元素組成比は、ハイドロジェンフォワードスキャタリング(以下、「HFS」と称する)により求められる。
HFS測定では、加速器としてNEC社 3SDH Pelletron、エンドステーションとしてCE&A社 RBS-400を用い、システムとして3S-R10を用いる。解析にはCE&A社のHYPRAプログラムを用いる。そして、HFSの測定条件は、以下の通りである。
・He++イオンビームエネルギー:2.275eV
・検出角度:160°入射ビームに対してGrazing Angle30°
HFS測定は、He++イオンビームに対して検出器が30°に、試料が法線から75°になるようにセットすることにより、試料の前方に散乱する水素のシグナルを拾う。この時検出器をアルミ箔で覆い、水素とともに散乱するHe原子を取り除くことがよい。定量は参照用試料と被測定試料との水素のカウントを阻止能で規格化した後に比較することによって行う。参照用試料としてSi中にHをイオン注入した試料と白雲母を使用する。
白雲母は水素濃度が6.5原子%であることが知られている。
最表面に吸着しているHは、例えば、清浄なSi表面に吸着しているH量を差し引くことによって補正を行う。
ここで、レンズ等の光学物品は、光学物品の表面に求められる機能を得るために、多数の層が設けられること、多数の工程を経ることなどが行われている。光学物品の表面に求められる機能としては、例えば、傷がつきにくく、水滴が取れ易いなど、多種の機能が有することが望まれる。
これに対し、本実施形態に係る光学物品における無機表面層は、光学物品に求められる、撥水性を有する。無機表面層は、金属元素M、酸素O、及び水素Hを含有する金属酸化物で形成されている。金属酸化物は、一般に有機物に比べて硬質であるため、有機物よりも耐傷性を有する。そのため、本実施形態の無機表面層は、撥水性を有することの他、傷に対する耐性を有する。さらに、帯電防止効果、可視波長領域の透過性、可視波長領域短波長側の透過性抑制効果を有する。したがって、従来、これらの機能を多層、多数の工程などで形成していた構造に比べ、一つの層に上記の複数の機能を持たせることによって、層構造、工程を簡素化を可能にするという利点がある。
無機表面層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.1μm以上10.0μm以下であってもよい。無機表面層の厚さは、0.15μm以上であってもよく、0.2μm以上であってもよい。また、5.0μm以下であってもよく、3.0μm以下であってもよく、1.0μm以下であってもよい。
-無機表面層の形成-
無機表面層の形成には、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、有機金属気相成長法、分子線エキタピシー法、蒸着、スパッタリング等の公知の気相成膜法が利用される。
以下、無機表面層の形成について、薄膜形成装置の一例を図面に示しつつ具体例を挙げて説明する。
図3に示すように、薄膜形成装置10は、真空排気される反応容器12と、薄膜形成装置10の装置各部を制御するための制御部16と、を含んで構成されている。
反応容器12の内部には、円柱状部材18が設けられている。円柱状部材18は、反応容器12内において長尺方向を回転軸方向として、予め定められた方向に回転可能に設けられている。円柱状部材18の円柱軸方向の一端は、図示を省略する複数のギアを介して回転手段としてのモータに接続されている。モータ30の駆動力が図示を省略する複数のギア及び支持部材を介して円柱状部材18に伝達されることにより、円柱状部材18は予め定められた方向に回転する。なお、本実施形態では、円柱状部材18は円柱状であるものとして説明するが、回転軸方向に平坦な形状であればよく、柱状部材や多角形の長尺状部材であってもよい。
円柱状部材18の外周面には、薄膜形成装置10によって薄膜を形成する対象となる、基材としての薄膜形成対象部材40が固定可能となっている。具体的には、薄膜形成対象部材40を1箇所又は複数箇所保持するための止め具(図3中、保持部材32参照)などの機構が備えられているか、または粘着テープ(図3中、保持部材32参照)などによって薄膜形成対象部材40を固定可能となっている。
なお、上記「薄膜」とは、基材上に成長して得られる膜であり、具体的には、0.1nm以上100μm以下程度の膜を示している。
本実施形態における薄膜の結晶構造は、単結晶や多結晶などの結晶性のものでもよく、非晶質でもよい。また、非晶質中に5nm以上100μm以下程度結晶粒径の結晶粒が分散された微結晶構造でもよい。
反応容器12の内部に設けられた円柱状部材18の近傍には、円柱状部材18の回転方向に沿って、排気管14と、非成膜性ガス供給管22及び放電電極20と、遮蔽部材26と、成膜性ガス供給管24と、が設けられている。
排気管14は、反応容器12の開口12Aを介して連続し、且つ反応容器12内のガスを排気するための管である。排気管14の一端は、開口12Aを介して反応容器12内に連らなっており、他端は、反応容器12内のガスを真空排気するための真空排気装置28に接続されている。
真空排気装置28の駆動によって、反応容器12の内部は、予め定められた圧力まで減圧される。真空排気装置28は、一つ又は複数のポンプと必要に応じてコンダクタンスバルブなどの排気速度調整機構からなる。ガス供給量と排気速度から決まる膜形成時の反応容器12内の圧力は、反応容器12内においてプラズマを発生可能な程度の圧力であればよく、ガスの種類、電源の種類にも依存するが、具体的には、1Pa以上200Pa以下であることが好ましい。
反応容器12の内壁を構成する材料としては、ここではデガスが少なく用いるガスに対して化学的に安定であるステンレス鋼を用いているがこれに限定されるものではない。
放電電極20は、マッチングボックス34を介して高周波電源36に電力供給可能に接続されている。高周波電源36としての電力供給源としては、直流電源または交流電源を用いることができる。効率的にガスを励起できることから交流の高周波電源、マイクロ波電源等を用いることが好ましい。
放電電極20は、円柱状部材18と対向するように円柱状部材18の回転軸方向に向けて設けられ、且つ円柱状部材18の外周面から予め定められた距離で離間されて設けられている。放電電極20の向きは、生成したプラズマの少なくとも一部が円柱状部材18と接していればよく、完全に対向する向きでなくてもよい。
なお、図3に示す一例では、放電電極20による放電方式は、容量型である場合を説明するが、誘導型であってもよい。
放電電極20は、中空状(空洞構造)で放電面に非成膜性ガスを供給するための複数のガス供給孔(図示省略)を有するガス透過型のものである。放電電極20が空洞構造でなく放電面にガス供給孔が無いものである場合、別に設けられた非成膜性ガス供給口から供給された非成膜性ガスが放電電極20と円柱状部材18の間を通過するようにした構成でもよい。また、放電電極20と反応容器12との間で放電が起こらないように、円柱状部材と対向している面以外の電極面が約3mm以下程度のクリアランスを有してアースされた部材により覆われていることが好適である。非成膜性ガス供給管22は、反応容器12内に非成膜性ガスを供給するための管である。非成膜性ガス供給管22の一端は、放電電極20の放電面に直交する方向に予め開けられた1または複数の非成膜性ガス供給口22Aを通して反応容器12内に連なっており、他端は、電磁弁38を介して非成膜性ガス供給源42に接続されている。非成膜性ガス供給源42は、非成膜性ガスが充填された容器と、レギュレーターなどの圧力を調整する機構と、マスフローコントローラーなどの原料ガスの流量を調整する機構と、を必要に応じて備えている。複数の非成膜性ガスを用いる場合、これらのガスを合流させて供給してもよい。
非成膜性ガスは、非成膜性ガス供給源42から非成膜性ガス供給管22を介して非成膜性ガス供給口22Aから反応容器12内へと供給される。
真空排気装置28によって反応容器12内が、予め定められた圧力まで減圧された状態で、マッチングボックス34を介して高周波電源36から放電電極20に高周波電力が供給されると共に、非成膜性ガス供給源42から非成膜性ガス供給管22及び非成膜性ガス供給口22Aを通って反応容器12内の放電電極20と円柱状部材18との対向する領域へ非成膜性ガスが供給されると、非成膜性ガスのプラズマ(以下、非成膜性プラズマと称する場合がある)が生成される。
なお、上記「非成膜性ガス」とは、本実施形態における非成膜性ガスに相当し、プラズマ状態に励起したとき、又は、プラズマに曝されたときに単体では反応生成物を生ぜず、膜を形成しえない、すなわち成膜性を有さないガスである。このため、非成膜性ガスが反応活性領域44に単体で供給された場合であっても、非成膜性ガス単体では反応生成物の生成は、なされない。
非成膜性ガスの一例には、N、H、NH、N、O、O、NO、NO、He、Ar、Ne、Kr、及びXe等の気体またはこれらの混合ガスを使用することができる。反応生成物として、酸化物を生成する場合(酸化物による薄膜形成の場合)には、非成膜性ガスとしてO(酸素)を含むガスを用いることができる。
この非成膜性ガスのプラズマが生成された領域に、詳細を後述する成膜性ガス供給管24から供給された成膜性を有する成膜性ガス(詳細後述)が到ると、少なくとも成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする反応生成物が生成される。この生成された反応生成物が薄膜形成対象となる薄膜形成対象部材40上に堆積されると、薄膜形成対象基材上に上記反応生成物によって構成された薄膜が形成される。
この「成膜性ガス」とは、本実施形態における原料ガス及び成膜性ガスに相当し、プラズマに曝されたときに励起分解して単体で、又は、プラズマ状態にある励起、分解された非成膜性ガスと反応して反応生成物を生成しうる、すなわち成膜性を有するガスである。この「成膜性を有する」とは、膜を形成しうる性質を有することを示している。
具体的には、成膜性ガスは、プラズマに曝されたときに励起及び分解されて反応生成物を析出するもの、又は、プラズマに曝されたときに励起及び分解されて上記非成膜性ガスを構成する元素と反応して反応生成物を析出するガスである。
薄膜形成装置10によって薄膜形成対象部材40に薄膜を形成することにより、13族元素の酸化物を形成する反応においては、成膜性ガスとしては、13族元素を含む有機および無機の化合物ガスが用いられる。
具体的には、成膜性ガスとして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルガリウム、トリエチルインジウム、トリエチルアルミニウム、t-ブチルガリウム、t-ブチルインジウム、ジボラン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、及び三臭化ホウ素などが好ましく用いられる。
薄膜形成対象部材40上に、薄膜として酸化亜鉛膜を形成するには、成膜性ガスとして、ジメチル亜鉛、及びジエチル亜鉛などを用いることができる。
なお、反応容器12内の非成膜性ガスのプラズマが生成された領域を、以下、「反応活性領域」44と称する。
すなわち、非成膜性ガスのプラズマが生成されることによって、反応容器12内の全ての領域は、成膜性ガスが励起分解されて反応生成物を析出しうる領域としての反応活性領域44と、この反応活性領域44に連続する領域であって成膜性ガスが励起分解されえない領域としての反応不活性領域48と、に分けられる。このため、反応容器12内には、円柱状部材18の回転方向に沿って、反応活性領域44と反応不活性領域48とが連続して設けられることとなる。
成膜性ガス供給管24は、反応容器12の外部から反応容器12の内部へと成膜性ガスを供給するための管である。成膜性ガス供給管24は、成膜性ガス供給管24の一端に設けられた成膜性ガス供給口24Aを介して反応容器12内に連なっており、成膜性ガス供給管24の他端は、電磁弁46を介して成膜性ガス供給源49に接続されている。
成膜性ガス供給源49は、成膜性ガスである原料ガスが充填された容器と、恒温槽などの原料ガス温度を調整する機構と、レギュレーターなどの圧力を調整する機構と、マスフローコントローラーなどの原料ガスの流量を調整する機構と、を必要に応じて備えている。成膜性ガスが液体や固体を気化させて供給されるガスである場合は、成膜性ガスは恒温槽の中に所望の温度に保たれていて、必要に応じてキャリアガスとともに供給される。キャリアガスを供給する場合、キャリアガスは所望の圧力に調整して供給することが可能である。
成膜性ガス供給源49から成膜性ガス供給管24に供給された成膜性ガスは、成膜性ガス供給管24を通って成膜性ガス供給口24Aに到り、成膜性ガス供給口24Aから反応容器12内部へと噴き出される。
この成膜性ガス供給口24Aは、反応容器12内の反応不活性領域48に位置するように、成膜性ガス供給管24に設けられている。
この成膜性ガス供給口24Aの反応不活性領域48内における位置は、反応不活性領域48内に位置されている。反応不活性領域48内において、反応活性領域44との境界から、予め定められた距離以上離れた領域に位置されていることが好ましい。なお、この「予め定められた距離」とは、反応不活性領域で原料ガスの密度が平均化されるための拡散が行われるための距離で、具体的には、20mm以上で有ることが好ましい。
成膜性ガス供給口24Aが、反応不活性領域48との境界から予め定められた距離以上離れた位置に設けられることによって、不均一な密度で、原料ガスが反応活性領域に導入されて不均一な膜厚や膜質の薄膜が形成されることを抑制すると言う効果が得られる。
反応容器12中で、この成膜性ガス供給口24Aから成膜性ガスを噴き出す方向は、好ましくは、薄膜形成対象となる薄膜形成対象部材40に向かって成膜性ガスを噴き出すことが可能となるように、円柱状部材18の外周面に向かって噴き出し可能に設けられていることが好ましい。
すなわち、薄膜形成装置10によれば、反応不活性領域48、すなわち非成膜性プラズマの遮蔽された領域において、反応活性領域44以外の方向に向かって成膜性ガスが噴き出される。このように、円柱状部材18の外周面に向かって成膜性ガスが噴き出されることによって、噴き出された成膜性ガスが均一に近い状態、又は均質とならずに反応容器12内を移動して反応活性領域44に到ることを抑制することができる。成膜性ガスが円柱状部材18の外周面や薄膜形成対象部材40の表面に噴き付けられると、成膜性ガスはこれら表面上を流れ、薄膜形成対象部材40の表面で拡散、吸着、再蒸発が起こる。これらの効果により原料ガスは薄膜形成対象部材40の表面に密度が均一に近い状態となることが促進された状態で滞在し、薄膜形成対象部材40の移動とともに反応活性領域44に入り反応生成物を生じることが可能である。
成膜性ガス供給管24を構成する材料としては、真空排気装置28によって減圧状態とされた反応容器12内の反応不活性領域48内に、上述のような方向に向かって成膜性ガスを噴き出すことが可能な程度の硬度を有する材料であればよく、例えば、ステンレスパイプを用いることができる。
上述のように、上記反応不活性領域48と、上記反応活性領域44とは、反応容器12内の連続した領域であり、遮蔽部材26を設けない構成も可能であるが、遮蔽部材26によって反応不活性領域48を、反応活性領域44から遮蔽することが好ましい。このような遮蔽部材を設けることにより、放電電極、非成膜性ガス供給口、原料ガス供給口などの構成要素をコンパクトに配置することが可能となる。
遮蔽部材26は、反応不活性領域48と反応活性領域44との境界の一部を遮蔽するように反応容器12の内周面に設けられている。遮蔽部材26は、反応不活性領域48に成膜性ガスが供給された場合であっても、励起分解により目的の生成物が生じない程度に、反応活性領域44の非成膜性プラズマを遮蔽可能に設けられていればよく、どのような形状であってもよく、例えば板状であってもよい。
遮蔽部材26と円柱状部材18との最小間隔は、反応不活性領域48と反応活性領域44との間の領域の一部を遮蔽し、且つ保持部材によって円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材40表面への薄膜形成を妨げない程度の距離であることが好ましい。例えば、円柱状部材18上に保持され、かつ、薄膜形成装置10による薄膜形成が成される前の状態の薄膜形成対象部材40が、遮蔽部材26と円柱状部材18との対向領域に位置した状態において、薄膜形成対象部材40と遮蔽部材26との最短距離は、10mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが好ましい。
薄膜形成対象部材40と遮蔽部材26との間の距離が調整されることが好ましい。この距離の調整は、例えば、遮蔽部材26を反応容器12に対して着脱可能に設けるようにし、薄膜形成対象部材40の厚みや目的とする層厚に応じた幅を有する遮蔽部材26を取付けるようにすればよい。
遮蔽部材26と円柱状部材18とは、接触していてもよいが、遮蔽部材26と、円柱状部材18表面に保持された薄膜形成対象部材40上と、の間で摩擦が生じない程度の押し当て力で接触していることが好ましい。遮蔽部材26が円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材40に対して摩擦が生じる程度の押し当て力で接触されると、薄膜形成対象部材40上に形成された膜に傷が生じたり、形成された膜が削れるおそれがあるために好ましくない。
遮蔽部材26の材質は、適度な機械強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、導電性のものであっても、また絶縁性のものであってもよいが、上述のように遮蔽部材26が薄膜形成対象部材40に接触するように設けられている場合には、薄膜形成対象部材40または薄膜形成対象部材40上に形成された膜に傷が発生することを抑制するために、薄膜形成対象部材40及び薄膜形成対象部材40上に形成された膜よりも硬度が低い材料を用いる。
制御部16は、上記真空排気装置28、モータ30、電磁弁46、電磁弁38、及びマッチングボックス34に信号授受可能に接続されている。このため、制御部16によって真空排気装置28の制御が行われることで、反応容器12内の圧力を目的とする圧力に減圧することができる。また、制御部16によって、モータ30の回転数が制御されることによって、目的とする速度で円柱状部材18を回転することができる。また、制御部16によって、電磁弁46及び電磁弁38各々と成膜性ガス供給源49に含まれるマスフローコントローラーが制御されることによって、成膜性ガス及び非成膜性ガス各々の供給量を調整することができる。
なお、本実施形態では、形成される薄膜の結晶性の向上、及び薄膜形成のための反応の促進等を目的として、薄膜形成対象部材40に熱を加えるための加熱装置(図示省略)を設けることも可能である。薄膜形成装置10によれば、薄膜形成対象部材40に熱を加えない状態においても、反応生成物を形成し膜を形成することができる。また、薄膜形成対象部材40の温度が高くなるほど、成膜性ガスの平衡蒸気圧が高くなり薄膜形成基板表面からの原料ガスの再蒸発が増加する点、成膜性ガスが反応活性領域44に到る前に、反応不活性領域48に位置する薄膜形成対象部材40上で分解する点から、薄膜形成対象部材40に熱を加えることは必須ではない。
次に、薄膜形成装置10における薄膜形成方法を説明する。
制御部16の制御によって真空排気装置28が駆動して、反応容器12の内部が予め定められた圧力まで減圧されると、制御部16は、円柱状部材18を予め定められた速度で回転するようにモータ30を制御する。この回転速度の制御は、例えば、モータ30に円柱状部材の回転速度を測定するためのセンサを設けて、このセンサからの入力信号に基づいて、目的とする回転速度となるようにモータ30の回転速度を調整するようにすればよい。
円柱状部材18の回転によって、円柱状部材18上に保持された薄膜形成対象部材40が反応容器12内で回転移動する。
次に、制御部16は、電磁弁38を制御することによって、反応容器12内への非成膜性ガスの供給を開始すると共に、高周波電源36からマッチングボックス34を介して放電電極20に高周波電力を供給する。このとき、放電電極20の放電面から円柱状部材18の外周面の対向領域に向かって広がるように非成膜性プラズマが生成される。この非成膜性プラズマの生成により、反応容器12内に反応活性領域44が形成される。また、この反応活性領域44の形成により、反応容器12内には、反応活性領域44以外の領域としての反応不活性領域48が、反応活性領域44に連続して形成されることとなる。
次に、制御部16は、反応容器12内の反応不活性領域48に成膜性ガスを供給するように、電磁弁46を制御する。この電磁弁46の制御によって、成膜性ガスが成膜性ガス供給管24の成膜性ガス供給口24Aを介して、反応容器12内の反応不活性領域48に噴き出される。
成膜性ガス供給口24Aから反応不活性領域48に噴き出され薄膜形成対象部材40に滞在している成膜性ガスは、円柱状部材18の回転による薄膜形成対象部材40の移動に伴って移動し、反応活性領域44に到る。なお、円柱状部材18の回転方向は、薄膜形成対象部材40の移動に伴って成膜性ガスを反応不活性領域48から遮蔽部材26との対向領域を介して反応活性領域44へと到る方向に移動させる方向であってもよく、反対に、成膜性ガスを反応不活性領域48から遮蔽部材26との対向領域を介さずに反応活性領域44へと到る方向に移動させる方向であってもよい。
反応不活性領域48から反応活性領域44に到った成膜性ガスは、反応活性領域44において、非成膜性ガスによる非成膜性プラズマに曝されることによって、励起分解されて、成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする反応生成物、又は成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする反応生成物が生成される。この生成された反応生成物が薄膜形成対象部材40上に堆積されることにより、反応活性領域44に位置する薄膜形成対象部材40上には、成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする薄膜、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする薄膜が形成される。
円柱状部材18の回転が継続されることによって、薄膜形成対象部材40は、反応容器12内において、反応活性領域44と反応不活性領域48との間を繰り返し移動することとなり、薄膜形成対象部材40上には、除々に成膜性ガスに含まれる元素、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする反応生成物が堆積されて、より層厚の厚い膜が形成される。
なお、上記実施の形態では、成膜性ガス供給口24Aから反応不活性領域48に噴き出された成膜性ガスは、薄膜形成対象部材40の表面に滞在し円柱状部材18の回転による薄膜形成対象部材40の移動に伴って移動して、反応不活性領域48から反応活性領域44に到る場合を説明したが、反応不活性領域48に供給された成膜性ガスが、薄膜形成対象部材40の移動に伴わずに反応容器12内を拡散移動することにより反応活性領域44に到り、反応活性領域44に位置する薄膜形成対象部材40上に薄膜を形成することも可能である。
この場合には、薄膜形成対象部材40の繰り返し移動は必須ではなく、むしろ円柱状部材18を繰り返し回転させない状態に近づける、すなわち成膜性ガスを薄膜形成対象部材40の移動とともに移動させることが困難な程度の低速で円柱状部材18を回転させるようにすればよい。
この場合、反応不活性領域48に供給された成膜性ガスが自然に拡散移動して、遮蔽部材26と円柱状部材18との間隙を通って反応活性領域44に到り、この反応活性領域44に到達した成膜性ガスが非成膜性プラズマに曝されることで、薄膜形成対象部材40上に成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする薄膜、または成膜性ガスに含まれる元素と非成膜性ガスに含まれる元素とを構成要素とする薄膜が、反応活性領域44内に配置された薄膜形成対象部材40上に形成される。この場合、反応不活性領域48において、円柱状部材18に向かって噴き付けられた成膜性ガスが円柱部材上、又は、薄膜形成対象部材40表面上を流れ、拡散することによって、反応不活性領域48において成膜性ガス密度の均一化が促進された後に、反応活性領域44に入る。その結果、反応活性領域44で不均一な膜厚、膜質の薄膜が形成されることを抑制することが可能である。
なお、薄膜形成対象部材40の表面に成膜性ガスが滞在し薄膜形成対象部材40の移動とともに移動して行われる成膜性ガスの供給と、拡散移動による原料ガスの移動による供給は、同時に行われることが可能である。その割合は、成膜性ガスの成膜時基板温度における平衡蒸気圧、円柱状部材18の回転数、成膜性ガス供給口24Aの反応活性領域44との境界からの距離などに依存して変化する。これらを制御することにより、どちらか片方、または両方による成膜性ガスの供給により成膜が行われてもよい。
薄膜形成対象部材40の移動とともに移動して行われる成膜性ガスの供給によれば、薄膜形成対象部材40への着膜位置の選択性が特に優れている。
なお、成膜性ガス及び非成膜性ガス各々の種類、成膜性ガスと非成膜性ガスとの組み合わせ、制御部16による電磁弁38及び電磁弁46各々の制御による反応容器12内に供給する成膜性ガスと非成膜性ガスとの供給量の調節等により、形成される薄膜の組成等を容易に調整することができる。
なお、薄膜形成対象部材40上に形成される薄膜の組成は、膜厚に直交する方向について均一に近い状態であればよく、膜厚方向については、均一に近い状態であってもよく、ばらつきがあってもよい。
膜厚方向に組成を変化させる場合には、例えば、円柱状部材18を予め定められた回転数回転させる毎に、成膜性ガス及び非成膜性ガスの種類、及び成膜性ガスと非成膜性ガスの供給量等を変更するようにすればよい。
以上説明したように、薄膜形成装置10によれば、成膜性ガス供給管24の成膜性ガス供給口24Aを反応不活性領域48に位置するように配置することで、反応不活性領域48に成膜性ガスを供給することができる。このため、反応不活性領域48に供給された成膜性ガスは、反応容器12内において反応不活性領域48から反応不活性領域48に連続する反応活性領域44に移動する。このように、反応不活性領域48から反応不活性領域48に向かって成膜性ガスが移動することにより、成膜性ガスに含まれる元素の組成比が略一様な状態に拡散された成膜性ガスが、略一定の密度または量で反応活性領域44に到る。このため、反応活性領域44に到達した成膜性ガスの励起分解による反応生成物の、薄膜形成対象部材40上への堆積が、薄膜形成対象部材40に略均一に近い状態で生じる。
したがって、薄膜形成装置10によれば、膜厚及び膜質の不均一な薄膜が薄膜形成対象部材40上に形成されることを抑制することができる。
また、薄膜形成装置10によれば、薄膜形成対象部材40を、反応不活性領域48と反応活性領域44との間を、繰り返し移動することによって、薄膜形成対象部材40上に薄膜を形成するので、原料ガスが、拡散、吸着、再蒸発により密度均一化が促進された状態で反応させることができ、形成される膜厚及び膜質のばらつきを抑制することができる。
また、薄膜形成装置10によれば、成膜性ガスを反応容器12内に噴き出す成膜性ガス供給口24Aは、反応不活性領域48内に位置していることから、成膜性ガス供給口24Aのノズル詰まりの発生を抑制することができる。このため、従来技術における生成物が成膜性ガス供給口24Aの内側に付着してノズル詰まりが生じ、それを除去するための分解、清掃作業により製造装置の稼働率が低下するという問題を解決することができる。
また、薄膜形成装置10によれば、反応不活性領域48、すなわちプラズマ流の遮蔽された領域で反応活性領域44以外の方向に向けて成膜性ガスを供給するので、未反応状態の成膜性ガスは拡散、吸着、再蒸発可能であり、これらの効果により供給原料密度の平均化が得られる。
また、薄膜形成装置10によれば、成膜性ガス供給管24の成膜性ガス供給口24Aを介して、反応容器12内の反応不活性領域48に成膜性ガスを噴き出すことによって反応容器12内に成膜性ガスを供給するので、成膜性ガス供給管24が反応活性領域44内に入ることがないことから、ステンレスパイプ等のような加工性に優れるものの反応活性領域44内に入るとプラズマ影を発生しうる材料を、成膜性ガス供給管24を構成する材料として用いることが可能となる。このため、成膜性ガス供給管24を構成する材料の選択肢を、従来技術に比べて広げることが可能となる。
なお、反応容器12内に1つの放電電極20が設けられている場合を説明したが、複数設けられるようにしてもよい。この場合には、放電電極20毎に、非成膜性ガス供給管22、電磁弁38、非成膜性ガス供給源42、マッチングボックス34、及び高周波電源36を設けるようにすればよい。また、非成膜性ガス供給源42、マッチングボックス34、及び高周波電源36は、共有し可能であり、その場合、電力、ガスを分岐させて供給する。
また、成膜性ガスを供給するための成膜性ガス供給管24は、反応容器12内に1つ設けられている場合を説明したが、成膜性ガス供給口24Aが反応不活性領域48に位置していればよく、反応容器12に複数設けられるようにしてもよい。
このように、複数の放電電極20を設けることによって、1つの反応容器12内に複数の反応活性領域44及び反応不活性領域48を設けることができるとともに、さらに複数の成膜性ガス供給管24を反応容器12に設ければ、複数の反応不活性領域48各々に成膜性ガスを供給することが可能となる。このようにすれば、1つの反応容器12内に放電電極20及び成膜性ガス供給管24が各々1つ設けられている場合に比べて、成膜速度をあげることができ、薄膜の形成能の高い薄膜形成装置10を提供することが可能となる。
なお、反応活性領域44は、反応容器12内の非成膜性ガスのプラズマが生成された領域であるものとして説明したが、成膜性ガスから該成膜性ガスに含まれる元素を構成要素とする反応生成物を生成可能な領域であればよく、プラズマが生成された領域に限られるものではない。
例えば、反応活性領域44は、光や熱により成膜性のガスを励起分解する領域であったり、光、電子線、触媒などにより励起状態にある非成膜性ガスの活性種に成膜性ガスを曝して化学反応や熱分解を促進させる領域であってもよい。
光により反応活性領域44を形成する場合には、図3中の放電電極20に変えて、励起光源の光を透過可能な窓を有し、真空封止可能な光導入ポートを設けるようにすればよい。そして、光源から導かれた光を、光導入ポートを通して反応容器12内に導くことにより、反応容器12内に反応活性領域44を形成すればよい。
この場合には、非成膜性ガスを反応容器12内に供給せずともよい。励起光源としては、重水素ランプ、Xeランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、エキシマランプ、窒素レーザー、ArFレーザーなどの各種レーザー光源などの紫外光、または真空紫外光を含む光源を用いることができる。
また、触媒により反応活性領域44を形成する場合には、図3中の放電電極20に変えて、通電可能なタングステンフィラメントなどを設けて、通電により昇温したタングステンフィラメント表面を非成膜性のガスが通過するようにすればよい。そして、励起状態にある非成膜性ガスを、円柱状部材18に向かって照射することにより、反応容器12内に反応活性領域を形成すればよい。
この場合について、オリフィスなどの圧力差を生じ得る機構を介して反応容器12と別区画にタングステンフィラメントが配置され、その区画内を触媒による高い励起、分解効率が得られる圧力に保たれていてもよい。
また、熱により反応活性領域44を形成する場合には、上記に示したように光により反応活性領域44を形成するときに紫外線光源を反応容器内に導く方法と同様の構成で、COレーザーその他の赤外光源により光を照射することによって加熱すればよい。
無機表面層の形成は、例えば、以下のように実施する。以下、薄膜形成装置10を用いて基材上に、無機表面層を形成する場合について説明する。
基材上に、薄膜形成装置10によって薄膜を形成する場合には、基材を、薄膜形成対象部材40として、薄膜形成装置10に設置する。そして、例えば、酸素ガス(又は、ヘリウム(He)希釈酸素ガス)、ヘリウム(He)ガス、及び水素(H)ガスを用いればよい。このようにして、上記制御部16によるモータ30の制御によって基材を回転させて、上記説明したように反応容器12内に反応活性領域44と反応不活性領域48とを形成することにより、基材上に、ガリウムと酸素と水素とを含む薄膜を成膜することができる。
なお、成膜時の無機表面層の形成温度は特に限定されず、樹脂基材を用いた光学物品を作製する場合において、無機表面層の成膜時の、基材の温度は、150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。基材の温度が150℃以下であっても、プラズマの影響で150℃より高くなる場合には基材が熱で損傷を受ける場合があるため、このような影響を考慮して基材の温度を設定することが好ましい。基材の温度は図示していない方法で制御してもよく、放電時の自然な温度の上昇に任せてもよい。基材を加熱する場合には、ヒータを基材の少なくとも一方の面側に設置してもよい。基材を冷却する場合には、基材の少なくとも一方の面側に冷却用の気体または液体を循環させてもよい。
放電による基材の温度の上昇を避けたい場合には、基材の表面に当たる高エネルギーの気体流を調節することが効果的である。この場合、ガス流量や放電出力、圧力などの条件を所要温度となるように調整する。
(光学物品の用途)
本実施形態に係る光学物品が適用される用途は特に限定されない。例えば、光学フィルタ、光学レンズ、光スイッチ、光ファイバー、集光レンズ、回折格子等が挙げられる。
光学レンズとしては、メガネレンズ(視力矯正レンズ、サングラス等)、ゴーグルレンズ、フレネルレンズ(集光用レンズ、LED照明レンズ、光学センサー用レンズ等)、ピックアップレンズ(CD、DVD等の情報記録機器等)、撮影機器用レンズ(デジタルカメラ、ビデオカメラ、等)、望遠鏡用レンズ、顕微鏡用レンズなどが挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る光学物品は、撥水性を有し、さらに、傷に対する耐性を有し、可視波長領域短波長側の透過性抑制効果を有する観点で、光学フィルタ、光学レンズに適用されることがよく、メガネレンズに適用されることが好ましい。
例えば、本実施形態に係る光学物品がメガネレンズである場合、メガネレンズを構成する基材(つまり、レンズ本体)の両面に無機表面層を設けてもよい。また、レンズ本体としての基材の両面に機能層(例えば、ハードコート層)を設け、機能層を介して、基材の両面に無機表面層を設けてもよい。具体的には、基材の一方の面が凸面、他方の面が凹面である樹脂材料から構成される基材(レンズ本体)を準備する。基材の凸面側が物体面側であり、基材の凹面側が眼球側である。そして、凸面側に、機能層としてのハードコート層を設け、ハードコート層上に、無機表面層を設けてもよい。また、基材の凸面側及び凹面側の両面にハードコート層を設け、両面に設けたハードコート層上に無機表面層を設けてもよい。もちろん、ハードコート層は設けず、基材上に無機表面層を設けてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例において「部」は質量部を意味する。
<実施例1>
図3に示す薄膜形成装置10のような成膜装置を用いて、基材上に無機表面層を形成した。基材1として、レンズ本体の厚さ1mmの樹脂製レンズを用意した。この樹脂レンズを薄膜形成装置にセットし、プラズマCVDにより、基材上に、無機表面層の形成を行った。
円筒基材に、基材1として、予め準備した樹脂レンズを粘着テープで貼り付けた。さらに参照試料作製のためのSi基板(5mm×10mm)を粘着テープで貼り付け、図3に示すプラズマCVD装置(つまり、保持部材)に導入し、反応容器内を、圧力が1×10-2Paとなるまで真空排気した。次に、ガス供給管から、マスフローコントローラーを介して反応容器に、水素ガス200sccm、He希釈酸素(4%)6sccm、及び水素希釈トリメチルガリウム(約10%)10sccmを供給すると共に、コンダクタンスバルブを調整することにより、反応容器内の圧力を10Paとし、高周波電源58及びマッチングボックス56により、13.56MHzのラジオ波を出力100Wにセットし、チューナでマッチングを取り放電電極54から放電を行った。このときの反射波は0Wであった。この状態で、保持部材を、反応時間40分間、50rpmの速度で回転させながら成膜し、基材上に無機表面層が設けられた光学物品を得た。なお、この水素希釈トリメチルガリウムガスの供給は、0℃に保たれたトリメチルガリウムに、水素をキャリアガスとしてバブリングすることによって行った。
Si参照試料を癖開した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、成膜された無機表面層の厚さは0.24μmであった。
また、Si参照試料に形成された無機表面層の組成分析を、ラザフォードバックスキャッタリング(RBS)とハイドロジェンフォワードスキャッタリング(HFS)により行ったところ、Ga:44原子%、O:17原子%、H:17原子%、C:3%であり、酸素とガリウムの元素組成比(O/Ga)は1.50であった。
さらに、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)として、既述の方法にしたがって、(IO-H/IGa-H)を求めた結果を表1に示す。
<実施例2>
He希釈酸素(4%)3.5sccm、反応時間を50分とした以外は実施例1と同様にして、光学物品を得た。
<実施例3>
He希釈酸素(4%)3.0sccm、反応時間を60分とした以外は実施例1と同様にして、光学物品を得た。
<実施例4>
He希釈酸素(4%)3.0sccm、反応時間を65分、反応容器内圧力を5Paとした以外は実施例1と同様にして、光学物品を得た。
<実施例5>
He希釈酸素(4%)1.7sccm、反応時間を70分とした以外は、実施例1と同様にして、光学物品を得た。
<比較例1>
無機表面層を設けない基材1をそのまま光学物品とした。
<比較例2>
コンダクタンスバルブを調整し圧力を60Pa、反応時間を33分とした以外は、実施例1と同様にして、光学物品を得た。
<評価>
(傷テスト(耐摩耗性効果))
ターンテーブルに、各例で得られた光学物品を置き、キムタオル(登録商標)をはさみ1.0kg/cmの荷重を印加して100回転させた。荷重を除去して光学物品を取り出し、擦った表面の傷の発生状況を目視で観察し、下記評価基準で評価した。
-評価基準-
A(○):傷がみられなかった
B(×):傷がみられた
(水の接触角(撥水性効果))
水の接触角の測定は、接触角計(協和界面化学(株)製、CA-X)を用い、温度25℃湿度50%の環境下で、純水を測定対象面に3.1μl滴下し、滴下してから15秒後の液滴を光学顕微鏡により撮影し、その写真から純水の接触角を求めた。
(埃除去性テスト(帯電防止効果))
各例における光学物品の無機表面層面に、ティッシュペーパーで500gの荷重をかけながら10回擦った。次いで、1mm以上2mm以下の大きさに砕いた発泡スチロールをふりかけた。次いで、光学物品の面が垂直になるように立てかけた。立てかける前後で写真を撮影し、立てかける前と立てかけた後の写真において、発泡スチロール粉の数を数え、下記評価基準で評価した。
-評価基準-
A(○):立てかけた時点でほとんど発泡スチロール粉が落ちた
(残ったものは10%未満)
B(△):立てかけた時点で発泡スチロール粉が半分以上落ちた
(残ったものは10%以上50%以下)
C(×):立てかけた時点で発泡スチロール粉がほとんど落ちなかった
(残ったものは50%超)
(青色透過率テスト(青色カット効果))
各例の光学物品を、紫外-可視分光光度計で波長300nmから800nmまでの範囲の光線透過率を10nm間隔で測定し、380nm以上500nm以下の平均透過率を求め、下記評価基準で評価した。
-評価基準-
A(○):50%以下
B(△):50%超85%以下
C(×):85%超100%
(可視光透過率テスト(可視光透過効果))
各例の光学物品を、紫外-可視分光光度計で波長300nmから800nmまでの範囲の光線透過率を10nm間隔で測定し、400以上800nm以下の平均透過率を求め、下記評価基準で評価した。
-評価基準-
A(○):85%超100%以下
B(△):50%超85%以下
C(×):50%以下
評価結果から、各実施例は、比較例に比べ、水の接触角が高いことがわかる。
10、11、13 薄膜形成装置
12 反応容器
14 排気管
18 円筒状部材
20 放電電極
22 非成膜性ガス供給管
24 成膜性ガス供給管
24A 成膜性ガス供給口
26 遮蔽部材
30 モータ
32 保持部材
40 薄膜形成対象部材
42 非成膜性ガス供給源
44 反応活性領域
48 反応不活性領域
52、54、56 張架搬送ロール
58 支持ロール
60、62、64 ローラ

Claims (7)

  1. 透光性を有する基材と、
    前記基材上に設けられた無機表面層であって、金属元素M、酸素O、及び水素Hを含有し、赤外分光光度法による赤外吸収スペクトルにおいて、M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、1.0以下であり、
    前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.35以下である無機表面層と、
    を有する、メガネレンズ
  2. 前記M-H結合の吸光度IM-Hに対するO-H結合の吸光度IO-Hの比(IO-H/IM-H)が、0.8以下である請求項1に記載のメガネレンズ
  3. 前記金属元素Mが、第13族元素である、請求項1又は請求項2に記載のメガネレンズ
  4. 前記第13族元素が、ガリウムである、請求項3に記載のメガネレンズ
  5. 前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.1以上1.30以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のメガネレンズ
  6. 前記金属元素M、及び前記酸素Oの元素組成比(酸素O/金属元素M)が、1.15以上1.30以下である、請求項に記載のメガネレンズ
  7. 前記基材が、樹脂基材である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のメガネレンズ
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