JP2011064568A - 沸騰水型原子炉の炉心 - Google Patents

沸騰水型原子炉の炉心 Download PDF

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Abstract

【課題】外周領域で熱出力の軸方向分布がボトムピークとなる傾向を抑制する
【解決手段】実質的に円柱状の空間内に燃料集合体が装荷された沸騰水型原子炉の炉心11に、中央領域71と外周領域72とを形成する。中央領域71には、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2および低濃縮燃料集合体4が主として配列される。外周領域72には、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を含む燃料集合体が配列される。高濃縮出力分布調整用燃料集合体3および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、それぞれ、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1および高濃縮低ガドリニア燃料集合体2または低濃縮燃料集合体4に対して、所定の高さよりも下方の無限増倍率のその所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が小さい。
【選択図】図1

Description

本発明は、沸騰水型原子炉の炉心に関する。
原子炉は、中性子が核分裂性物質に吸収されて核分裂が起こり、その際にエネルギーとともに放出される中性子が次の核分裂を引き起こすという連鎖反応により、エネルギーを出し続けている。この連鎖反応が平衡にある状態を臨界といい、一定の出力で運転される原子炉はこの状態を保ち続けている。また、連鎖反応が増大していく状態を臨界超過といい、逆に減少していく状態を未臨界という。
原子炉は、たとえば1年程度の所定の期間にわたって燃料の補給なしに運転し続けねばならないために、炉心内には臨界維持に必要な量よりも多い核分裂性物質が装荷されている。したがって、所定の運転期間の途中までの期間では、原子炉は、制御材なしには臨界超過になる。
この超過した反応度を余剰反応度といい、余剰反応度を運転期間を通じて適切に制御することが重要である。余剰反応度を運転期間を通じて制御する技術としては、可燃性毒物を燃料中に混入するものがよく知られている。可燃性毒物とは、運転期間を通じて徐々に燃焼しその物質量が減少していく中性子吸収材のことで、核燃料物質に混ぜて使用されるガドリニアなどが知られている。
可燃性毒物を含有する燃料集合体の無限増倍率は、燃焼に伴って一旦上昇した後、減少していく。一般に、可燃性毒物を含有する燃料棒の本数が増加すれば、燃焼初期での無限増倍率が低下する。また、可燃性毒物の濃度を増加させれば、可燃性毒物が燃え尽きる時期を遅らせることができるため、無限増倍率の最大値を抑えることが可能になる。このため、可燃性毒物の混入濃度とそれが混入した燃料棒の本数の組み合わせにより、余剰反応度を適切に制御することができる。
初装荷炉心では、装荷された燃料集合体の一部が第1サイクルの運転終了後に取り出され、新しい取替燃料集合体と交換される。第1サイクルで取り出される燃料集合体は他の燃料集合体に比べて燃焼度が低く、発生エネルギーが少ない。このため、第1サイクルで取り出される燃料集合体の体数が少ないほど、燃料経済性が高くなる。
しかし、燃料経済性を向上させるために、単に炉心平均濃縮度を高めると、最小限界出力比や最大線出力密度などの熱的特性が悪化し、原子炉の安全性を損なう場合がある。そこで、核分裂性物質の有効活用を図るために、炉内滞在期間に応じてウラン濃縮度を変えた複数の燃料集合体を用いる初装荷炉心が知られている。
たとえば特許文献1には、2行2列の4体の燃料集合体からなる単位装荷ユニットを規則的に配置した初装荷炉心が開示されている。この単位装荷ユニットは、低濃縮燃料1体と高濃縮燃料3体とからなり、4つの単位装荷ユニットに含まれる低濃縮燃料4が隣接してコントロールセルを形成するように配置される。また、単位装荷ユニットに含まれる高濃縮燃料の低濃縮燃料に面する側にガドリニア入り燃料棒が多く位置するように、ガドリニア入り燃料棒を偏在させている。このような燃料棒の配置とすることにより、スペクトルミスマッチ効果による熱的特性の悪化を抑制している。
原子炉の運転サイクルの初期において、炉心内には臨界維持に必要な量よりも多い核分裂性物質が装荷されている。このため、運転サイクルの初期においては、炉心に制御棒を挿入することにより臨界状態を維持する。制御棒は、運転サイクル中の時間の経過に伴って引き抜かれ、運転サイクルの末期においては全ての制御棒が完全に引き抜かれた状態になる。
特許第3186546号公報
沸騰水型原子炉の炉心では、核分裂によって発生した熱により冷却水である水が加熱され、軸方向のある高さで沸騰する。このため、炉心の下部では、冷却材中のボイド率はほとんど0であるのに対して、炉心の上部では70%程度となる。その結果、炉心の上部では、下部に比べて中性子の減速が少なく、炉心の下部の方が、熱出力が大きくなりやすい。つまり、沸騰水型原子炉の熱出力の軸方向分布は、ボトムピークとなる傾向がある。
原子炉の炉心の径方向出力分布を平坦化させるため、運転中に炉心に挿入される制御棒としては、主として炉心の中央領域に位置するものが用いられる。相対的に、炉心の外周領域には挿入された制御棒の本数が少なくなる。
一般に出力運転中に使用される制御棒は部分挿入され、炉心下部での核分裂は抑制される一方、炉心上部での核分裂はあまり抑制されない。その結果、制御棒が多く挿入された炉心の中央領域では、熱出力の軸方向分布がボトムピークとなる傾向が抑制される。
一方、炉心の外周領域では、中央領域に比べて挿入された制御棒の本数が少なく、また、挿入された制御棒から離れているため、中央領域に比べて熱出力の軸方向分布がボトムピークとなる傾向が大きい。このため、炉心の外周領域では、中性子の漏れにより燃料集合体平均出力は高くないにもかかわらず、線出力密度が高くなりやすい。
そこで、本発明は、炉心の外周領域で熱出力の軸方向分布がボトムピークとなる傾向を抑制することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明は、実質的に円柱状の空間内に燃料集合体が装荷された沸騰水型原子炉の炉心において、第1燃料集合体を含む前記燃料集合体が装荷された中央領域と、所定の高さよりも下方の無限増倍率の前記所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が前記第1燃料集合体よりも小さい第2燃料集合体を含む前記燃料集合体が配列された前記中央領域よりも半径方向外側の外周領域と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、炉心の外周領域で熱出力の軸方向分布がボトムピークとなる傾向を抑制することができる。
本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態における燃料集合体の配置を示す1/4横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態における横断面(水平断面)図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる燃料集合体の横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる高濃縮高ガドリニア燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる高濃縮低ガドリニア燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる高濃縮出力分布調整用燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる低濃縮燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態に用いる低濃縮出力分布調整用燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。 本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第2の実施の形態に用いる低濃縮燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。
本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1の実施の形態]
図2は、本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第1の実施の形態における横断面(水平断面)図である。図3は、本実施の形態に用いる燃料集合体の横断面図である。図2は、炉心の横断面の左上1/4を示した図であって、残りの部分は炉心の鉛直方向中心軸を対称軸とする図示した部分の回転対称となっている。なお、炉心全体が回転対称になっている必要はなく、鏡面対称であってもよいし、対称性がない炉心であってもよい。
沸騰水型原子炉には、角筒状の燃料集合体26を配置する空間22が正方格子状に配列された領域10を有している。この領域10は、全体としてほぼ円筒形に形成されていて、燃料集合体26の軸は、その円筒の軸と同じ方向に向かっている。これらの空間22に燃料集合体26が配置されて、炉心を形成する。
また、燃料集合体26を配置する空間22は、燃料集合体26よりも若干大きく、隣り合う4体の燃料集合体26の間に、制御棒21が挿入できるようになっている。なお、領域10の半径方向の外側の一部には、制御棒21と隣接しない燃料集合体26を配置する空間22も存在する。
本実施の形態の炉心では、872体の燃料集合体26が装荷され、205本の制御棒21が配置される。
燃料集合体26は、正方格子状に9行9列で配列された円筒状の燃料棒24、および、燃料棒24の配列の中央部分に配置された角筒状のウォータチャンネル25を有している。ウォータチャンネル25は、燃料棒24の3行3列の9本分の領域を占めている。燃料棒24およびウォータチャンネル25は、軸方向の両端に設けられたタイプレート(図示せず)および軸方向の数箇所に設けられたスペーサ(図示せず)で保持されている。燃料集合体26の外周は、角筒状のチャンネルボックス23で囲まれている。
燃料棒24の内部には、ウラン235などの核分裂性物質が、たとえばウラン238などとともに円筒状に焼き固められたペレットとして収められている。各燃料棒24中のウラン235の濃縮度は、燃料棒24ごとに異なっていて、各燃料棒24に収められた核分裂性物質量も燃料棒24ごとに異なっている。なお、燃料棒24の軸方向に濃縮度が異なる領域を設けてもよい。
図1は、本実施の形態における燃料集合体の配置を示す1/4横断面図である。符号1〜5はそれぞれ燃料集合体26の種類を示しており、同一の符号は、燃料棒24の配置が同一の燃料集合体を示している。
この炉心11は初装荷炉心であって、5種類の燃料集合体1,2,3,4,5が装荷されている。これらは、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3、低濃縮燃料集合体4、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5である。
この炉心11は、径方向の中央から外側に向かって、中央領域71、外周領域72、最外周領域73の3つの領域に分けられる。最外周領域73とは、炉心11の最外周から2層程度の領域である。内側外周領域72とは、炉心中心から炉心半径の約0.6よりも外側で、最外周領域73よりも内側の領域である。
炉心11の最外周から径方向内側に向かって1ないし2層目の最外周領域73には、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2が配置されている。外周領域72では、最外周領域73から炉心11の径方向内側に向かって1ないし3層程度の領域には、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5が配置されている。
中央領域71および外周領域72には、コントロールセル74,75が形成されている。コントロールセル74,75とは、ある制御棒21を囲む4体の燃料集合体が全て低濃縮燃料集合体4,5である燃料集合体の組(セル)である。運転中の炉心の制御棒21による制御には、主としてコントロールセル74,75に位置する制御棒21を用いる。特に、運転サイクルの大部分の期間では、炉心11の中央領域71に白抜きの四角で示した13箇所のコントロールセル74を用いる。これらのコントロールセル74には、低濃縮燃料集合体4が配置されている。
中央領域71では、コントロールセル74,75に面する位置には、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1が配置されている。コントロールセル74,75に対角する位置の大部分には、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2が装荷されている。中央領域71でコントロールセルに対角する位置の一部には、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3が配置されている。
図4は、本実施の形態に用いる高濃縮高ガドリニア燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。図5は、本実施の形態に用いる高濃縮低ガドリニア燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。図6は、本実施の形態に用いる高濃縮出力分布調整用燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。図7は、本実施の形態に用いる低濃縮燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。図8は、本実施の形態に用いる低濃縮出力分布調整用燃料の燃料棒配置を示す横断面図である。
図4ないし図8において、1〜5で示される位置はウラン燃料棒が配置され、G1、G2で示される位置はガドリニア入り燃料棒が配置されることを示している。Wは、ウォータチャンネルあるいはウォータロッドの位置を示している。
高濃縮高ガドリニア燃料集合体1、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2および高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、9行9列の正方格子の中央の3行3列を占める位置に角筒状のウォータチャンネルが配置されている。低濃縮燃料集合体4および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、9行9列の正方格子の中央に2本の円筒状のウォータロッドが設けられて、7つの格子位置を占めている。このように、1つの炉心11には、内部形状が異なる複数の種類の燃料集合体を用いてもよい。
ウラン燃料棒とは、内部にガドリニアなどの可燃性毒物を含有しない燃料棒24のことである。異なる数字の位置に配置されるウラン燃料棒は、互いにウラン235の濃縮度が異なる。ウラン燃料棒は、同一の燃料集合体内の数字が大きい位置に配置されるものほどウランの濃縮度が低い。つまり、1で示される燃料棒の濃縮度が最も高く、4で示される位置のウラン燃料棒の濃縮度が最も低い。1で示されるウラン燃料棒の濃縮度は、たとえば4.9wt%である。また、1’で示される位置に配置される燃料棒は、軸方向下部でウランの濃縮度が低い。2’で示される位置に配置される燃料棒は、軸方向上部でウランの濃縮度が低い。
また、核分裂性物質としては、ウランの代わりに、プルトニウム、トリウム、あるいはこれらの組み合わせを用いてもよい。この場合、ウラン濃縮度の代わりに、核分裂性物質濃度を考慮する。
ガドリニア入り燃料棒とは、ガドリニアなどの可燃性毒物を核分裂性物質とともに含有する燃料棒24のことである。G1で示される位置に配置されるガドリニア入り燃料棒は、燃料有効部の全体に亘って可燃性毒物が含有された全長ガドリニア入り燃料棒である。G2で示される位置に配置されるガドリニア入り燃料棒は、燃料有効部のたとえば下端から燃料有効長の1/3程度までの下部に可燃性毒物が含有され、それよりも上部には可燃性毒物が含有されていない部分長ガドリニア入り燃料棒である。
ガドリニア入り燃料棒であっても、燃料有効部の上端および下端の燃料有効長の1/24あるいは2/24程度の長さには、天然ウランのペレットを装填したブランケット領域を設けてもよい。また、可燃性毒物としては、ガドリニアの他に、エルビア、ホウ素、およびこれらの組み合わせを用いることができる。燃料集合体中の可燃性毒物量は、可燃性毒物入りの燃料棒の本数・体積、可燃性毒物の添加濃度、あるいはこれらの組み合わせによって変化させることができる。
高濃縮高ガドリニア燃料集合体1は、14本のガドリニア入り燃料棒が用いられており、そのうち2本が部分長ガドリニア入り燃料棒である。また、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2は、12本のガドリニア入り燃料棒が用いられており、そのうち1本がガドリニア入り燃料棒である。これに対し、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、14本のガドリニア入り燃料棒が用いられており、そのうち4本が部分長燃料棒である。つまり、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1あるいは高濃縮低ガドリニア燃料集合体2に比べて軸方向下部領域においてガドリニア入り燃料棒の本数が多い。このため、ガドリニウムが燃焼しつくす寿命の初期において、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1あるいは高濃縮低ガドリニア燃料集合体2に比べて、軸方向下部の軸方向上部に対する無限増倍率の比が小さい。無限増倍率とは、その燃料集合体のある断面を断面方向に無限に配置した場合の中性子の発生と消滅の比である。つまり、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1あるいは高濃縮低ガドリニア燃料集合体2に比べて、軸方向の出力分布がトップピークになりやすい燃料集合体である。
低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、コーナー部近傍に軸方向上部の濃縮度が低い燃料棒2’を8本用いているが、内周領域では軸方向下部の濃縮度が低い燃料棒1’を30本用いている。このため、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、低濃縮燃料集合体4に比べて、軸方向下部の軸方向上部に対する無限増倍率の比が小さい。つまり、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、低濃縮燃料集合体4に比べて、軸方向の出力分布がトップピークになりやすい燃料集合体である。
このように、本実施の形態では、所定の高さよりも下方の核分裂性物質量のその所定の高さよりも上方の核分裂性物質量に対する比が小さいこと、あるいは、所定の高さよりも下方の可燃性毒物量のその所定の高さよりも上方の可燃性毒物量に対する比が大きいこと、により、所定の高さよりも下方の無限増倍率のその所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が内周領域71に主として装荷される燃料集合体26よりも小さい燃料集合体26を形成している。また、所定の高さよりも下方のチャンネルボックス23の厚さを大きくして、所定の高さよりも下方の無限増倍率のその所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が内周領域71に主として装荷される燃料集合体26よりも小さい燃料集合体26を形成してもよい。あるいは、ウォータチャンネル25の形状を変化させるなどによって所定の高さよりも下方の水対重金属重量比を小さくして、所定の高さよりも下方の無限増倍率のその所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が内周領域71に主として装荷される燃料集合体26よりも小さい燃料集合体26を形成してもよい。
また、この所定の高さ、すなわち、無限増倍率を比較する軸方向下部と軸方向上部との境界は、たとえば炉心の下端から燃料有効長の1/3程度の高さとする。これは、沸騰水型原子炉では、一般的に、炉心の下端から燃料有効長の1/3程度の高さの位置からボイド率が大きくなるため、軸方向出力分布のボトムピークは、その高さよりも下方で現われやすいからである。
これらの燃料集合体を用いた炉心11では、運転サイクルの初期においては、制御棒21を挿入することにより臨界状態が維持される。この際、運転中に炉心に挿入される制御棒21としては、原子炉の炉心の径方向出力分布を平坦化させるため、主として炉心の中央領域に位置するものが用いられる。本実施の形態では、中央領域71のコントロールセル74の制御棒21が挿入される。相対的に、炉心の外周領域72には挿入された制御棒の本数が少なくなる。このため、炉心の外周領域72では、軸方向出力分布がボトムピークになる傾向にある。
しかし、本実施の形態では、炉心の外周領域72に、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1あるいは高濃縮低ガドリニア燃料集合体2の代わりとして、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3を装荷している。また、炉心の外周領域72では、低濃縮燃料集合体4の代わりとして、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を装荷している。
高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、下部にのみ可燃性毒物を含有させた部分長ガドリニア入り燃料棒を多く装荷している。このため、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3を外周領域72に配置することで、軸方向出力分布を均一化することができる。また、軸方向上部の濃縮度を高めた低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を外周領域75に配置することで、軸方向出力分布を均一化することができる。つまり、外周領域72における軸方向出力分布が、過度にボトムピークになることを抑制することができる。
炉心11の最外周領域73では、燃料集合体1体当たりの熱出力は、その内側の領域に比べて小さい。よって、最外周領域73において、ボイド率は、その内側の領域に比べて小さく、軸方向出力分布がボトムピークになる傾向は小さい。このため、最外周領域73に高濃縮出力分布調整用燃料集合体3あるいは低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を装荷して軸方向出力分布がボトムピークになる傾向を抑制すると、軸方向下部領域での燃焼が進みにくい。
しかし、初装荷炉心の場合、炉心11の最外周領域73に装荷された燃料集合体は、その後の運転サイクルで、炉心の内側の領域に移動される場合が多い。このため、初装荷炉心で、最外周領域73に高濃縮出力分布調整用燃料集合体3あるいは低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を装荷して軸方向出力分布がボトムピークになる傾向を抑制すると、これらの燃料集合体は、その後の運転サイクルで軸方向出力分布がよりボトムピークになりやすくなってしまう。そこで、本実施の形態では、最外周領域73には、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3あるいは低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を装荷していない。
中央領域71であっても、運転中に制御棒21がほとんど挿入されないコントロールセル75およびその近傍は、軸方向出力分布がややボトムピークになる。そこで、そのような位置に、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3あるいは低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を装荷することにより、最大線出力密度を抑制することができる。このように、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、中央領域71に装荷してもよいが、装荷体数が多くなると中央領域71における軸方向出力分布がトップピークに近づく。そこで、中央領域71に装荷される高濃縮出力分布調整用燃料集合体3および低濃縮出力分布調整用燃料集合体5の体数は、それぞれ高濃縮燃料集合体または低濃縮燃料集合体の全数に対する割合が、外周領域72に装荷される割合以下となるようにすべきである。
外周領域72では、炉心体系からの中性子の漏れによって、燃料集合体1体当たりの熱出力が低くなる傾向がある。また、最小限界出力比は、集合体出力に大きく依存する。そのため、外周領域72では、軸方向出力分布がボトムピークであることにより線出力密度は高いものの、最小限界出力比は大きくなる(楽になる)傾向がある。よって、軸方向出力分布を平坦化させた場合、その分、燃料集合体1体当たりの熱出力を増加させることができる。
本実施の形態においては、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は高濃縮高ガドリニア燃料集合体1、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2に比較して全長ガドリニア入り燃料棒の本数を少なくしている。つまり、高濃縮出力分布調整用燃料集合体3は、外周領域72に配置されながらも燃料集合体1体当たりの熱出力を高めている。さらに、低濃縮燃料集合体4よりも集合体平均濃縮度の高い低濃縮出力分布調整用燃料集合体5を外周領域72に装荷することにより、外周領域72の燃料集合体1体当たりの熱出力を高めている。このため、中央領域71に配置された燃料集合体の1体当たりの熱出力は、相対的に小さくなる。その結果、最小限界出力比が小さくなりやすい中央領域71の特性を改善することができる。なお、チャンネルボックス23の軸方向平均厚さを小さくすること、または、水対重金属重量比を大きくすることにより燃料集合体1体当たりの熱出力を高めてもよい。
また、低濃縮燃料集合体4,5が装荷されたコントロールセル74,75に面する高濃縮燃料は、スペクトルミスマッチ効果により熱的特性が悪化しやすい傾向がある。そこで、本実施の形態では、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1の低濃縮燃料に面する側、すなわち反制御棒側には、ガドリニア入り燃料棒を多く配置している。これにより、熱的特性の悪化を緩和させている。なお、コントロールセル74,75に対角する位置ではスペクトルミスマッチ効果は大きくないため、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2のガドリニア入り燃料棒の配置はほぼ均一に分散されている。
低濃縮出力分布調整用燃料集合体5は、外周領域72の燃料集合体の1体当たりの熱出力を高くすることで中央領域の熱的特性を改善させているが、低濃縮燃料集合体4に比べると炉停止余裕が悪化しやすい。そこで、本実施の形態では、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5に炉停止余裕の改善のための対策を施している。
低濃縮出力分布調整用燃料集合体5に施した炉停止余裕の改善のための対策とは、たとえば低濃縮出力分布調整用燃料集合体5のコーナー部近傍の燃料棒の濃縮度を低くすることである。また、低温時において出力が高くなる軸方向上部の濃縮度を低くした燃料棒を用いてもよい。炉停止余裕に対しては、より多くの水に面するコーナー部およびその近傍の燃料棒の影響が大きい。そこで、たとえば図8の2’に示される位置に、このような燃料棒を用いるとよい。
このように濃縮度が低いウランを用いた領域を炉停止余裕の改善に効果的な燃料有効部の上部にのみ設けることにより、燃料集合体の平均濃縮度をそれほど低下させずに炉停止余裕を改善できる。また、燃料有効部の全体の濃縮度を低減した燃料棒は、たとえば炉停止余裕の改善に最も効果的なコーナー部およびその近傍にのみ用いることにより、燃料集合体の平均濃縮度の低下を抑制できる。
このようにして、低濃縮出力分布調整用燃料集合体5の集合体平均濃縮度を低濃縮燃料集合体4よりも高いまま、炉停止余裕を改善することができる。高濃縮出力分布調整用燃料3においても、同様に、コーナー部近傍の濃縮度あるいは軸方向上部の濃縮度を低くすることにより、炉停止余裕を改善することができる。
冷温時、すなわち炉停止時の軸方向出力分布は、炉心の下端から20/24程度の高さにピークを持つ。このため、炉停止余裕に対して影響が大きいのは、燃料有効部の上端から燃料有効長の1/3程度の長さの領域である。よって、炉停止余裕の改善のためには、燃料有効部の上端から燃料有効長の1/3程度の長さの領域の濃縮度を小さくすればよい。
[第2の実施の形態]
図9は、本発明に係る沸騰水型原子炉の炉心の第2の実施の形態に用いる低濃縮燃料集合体の燃料棒配置を示す横断面図である。
図9において、2’、3’で示される位置に配置される燃料棒は、軸方向上部でウランの濃縮度が低い。本実施の形態では、低濃縮燃料集合体4が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態の低濃縮燃料集合体は、制御棒の軸中心に最も近いコーナー部近傍に配置される燃料棒の濃縮度を下げ、また、上部領域の濃縮度を低下させている。
第1の実施の形態あるいは本実施の形態のように、軸方向下部の軸方向上部に対する無限増倍率の比が小さい燃料集合体を用いてボトムピークを抑制すると、すなわち、軸方向出力分布を均一化すると、運転中に挿入された制御棒の周囲の領域では、軸方向出力分布がトップピークになる可能性もある。この傾向は、制御棒を比較的浅く引き抜いた場合に、顕著である。ある一定期間、制御棒を挿入した状態で運転したセルでは、制御棒引抜時に制御棒履歴効果により熱的特性が悪化することがある。
しかし、本実施の形態では、制御棒が挿入される側の特にコーナー燃料棒近傍について、濃縮度を下げ、また制御棒挿入時にプルトニウムが蓄積されやすい上部領域の濃縮度を低下させているため、熱的特性の低下を緩和することができる。これにより、炉心中央領域の軸方向出力分布が極端なトップピークになることを抑制することができる。また、高濃縮高ガドリニア燃料集合体1(図4参照)、高濃縮低ガドリニア燃料集合体2(図5参照)の上部濃縮度を同様に低減させてもよい。
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。たとえば、ここでは初装荷炉心を例として説明したが、本発明は取り替え炉心にも適用できる。取り替え炉心に適用する場合には、運転サイクル初期における燃料集合体のそれぞれの断面の無限増倍率に基づいて、上述の初装荷炉心と同様の関係となるように燃料を配置するとよい。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。
1…高濃縮高ガドリニア燃料集合体、2…高濃縮低ガドリニア燃料集合体、3…高濃縮出力分布調整用燃料集合体、4…低濃縮燃料集合体、5…低濃縮出力分布調整用燃料集合体、11…炉心、21…制御棒、23…チャンネルボックス、24…燃料棒、25…ウォータチャンネル、26…燃料集合体、71…中央領域、72…外周領域、73…最外周領域、74…コントロールセル、75…コントロールセル、22…空間、10…領域

Claims (10)

  1. 実質的に円柱状の空間内に燃料集合体が装荷された沸騰水型原子炉の炉心において、
    第1燃料集合体を含む前記燃料集合体が装荷された中央領域と、
    所定の高さよりも下方の無限増倍率の前記所定の高さよりも上方の無限増倍率に対する比が前記第1燃料集合体よりも小さい第2燃料集合体を含む前記燃料集合体が配列された前記中央領域よりも半径方向外側の外周領域と、
    を有することを特徴とする沸騰水型原子炉の炉心。
  2. 第1条件を前記所定の高さよりも下方の核分裂性物質量の前記所定の高さよりも上方の核分裂性物質量に対する比が前記第1燃料集合体よりも小さいこと、
    第2条件を前記所定の高さよりも下方の可燃性毒物量の前記所定の高さよりも上方の可燃性毒物量に対する比が前記第1燃料集合体よりも大きいこと、
    第3条件を前記所定の高さよりも下方のチャンネルボックスの厚さの前記所定の高さよりも上方のチャンネルボックスの厚さに対する比が前記第1燃料集合体よりも大きいこと、
    第4条件を前記所定の高さよりも下方の水対重金属重量比の前記所定の高さよりも上方の水対重金属重量比に対する比が前記第1燃料集合体よりも小さいこと、
    としたときに、前記第2の燃料集合体は、前記第1条件、前記第2条件、前記第3条件および前記第4条件の少なくとも一つの条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  3. 前記燃料集合体は高濃縮燃料集合体群とこの高濃縮燃料集合体群よりも核分裂性物質量が小さい低濃縮燃料集合体群とを含み、
    前記第1燃料集合体および前記第2燃料集合体はいずれも前記高濃縮燃料集合体群に属することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  4. 前記高濃縮燃料集合体群に属する前記燃料集合体の数に対する前記外周領域に装荷された前記第2燃料集合体の割合は、前記高濃縮燃料集合体群に属する前記燃料集合体の数に対する前記中央領域に装荷された前記第2燃料集合体の割合よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  5. 前記燃料集合体は高濃縮燃料集合体群とこの高濃縮燃料集合体群よりも核分裂性物質量が小さい低濃縮燃料集合体群とを含み、
    前記第1燃料集合体および前記第2燃料集合体はいずれも前記低濃縮燃料集合体群に属することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  6. 前記低濃縮燃料集合体群に属する前記燃料集合体の数に対する前記外周領域に装荷された前記第2燃料集合体の割合は、前記低濃縮燃料集合体群に属する前記燃料集合体の数に対する前記中央領域に装荷された前記第2燃料集合体の割合よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の燃沸騰水型原子炉の炉心。
  7. 前記第2燃料集合体は、核分裂性物質濃度が燃料有効部の全体の平均に比べて小さい上部領域が形成された燃料棒を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  8. 第5条件を燃料集合体全体の核分裂性物質量が前記第1燃料集合体よりも大きいこと、
    第6条件を燃料集合体全体の可燃性毒物量が前記第1燃料集合体よりも小さいこと、
    第7条件をチャンネルボックスの軸方向平均厚さが前記第1燃料集合体よりも小さいこと、
    第8条件を水対重金属重量比が前記第1燃料集合体よりも大きいこと、
    としたときに、前記第2の燃料集合体は、前記第5条件、前記第6条件、前記第7条件および前記第8条件の少なくとも一つの条件を満足することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  9. 前記第2燃料集合体の制御棒に最も近いコーナー部およびこのコーナー部に隣接する位置に配置される燃料棒の核分裂性物質量の燃料集合体全体の核分裂性物質量に対する比、および、前記第2燃料集合体の燃料有効部の上端から下方に所定の長さの領域の核分裂物質量の燃料集合体全体の核分裂性物質量に対する比の少なくとも一方が、前記第1燃料集合体に比べて小さいことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
  10. 初装荷であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の炉心。
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