JP2011054027A - 席種別設定計画作成方法、席種別設定計画作成システム、出札窓口システム及び座席割当通知システム - Google Patents

席種別設定計画作成方法、席種別設定計画作成システム、出札窓口システム及び座席割当通知システム Download PDF

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Abstract

【課題】席種別設定計画の新たな作成手法を提案すること。
【解決手段】各新幹線列車それぞれについて、席種別設定計画とする所定数の解候補が設定され、設定された所定数の解候補それぞれに対して、需要予測算出処理が行われる。そして、需要予測算出処理により算出された席種別の販売座席数と、設定された席種別の供給座席数とを用いて、当該新幹線列車の乗車効率が評価指標値として算出される。そして、評価指標値が最大となった解候補が最良解として選択され、全ての新幹線列車について得られた最良解を用いて、当該運行日の全ての新幹線列車に対する席種別設定計画が作成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、対象列車に対する席種別設定計画を作成する席種別設定計画作成方法等に関する。
我が国で現在運行されている新幹線や特急列車等の優等列車においては、同一列車内において指定席や自由席といった複数の座席種別(以下、「席種」という。)が設定されている。各列車に対する席種の設定については、過去の輸送動向実績等により、概ね列車系統毎に固定的に決められている。例えば、10両編成の新幹線を例に挙げると、4両は自由席車両で、残りの6両は指定席車両といったように固定的に決められている。
指定席の予約は先着順に行われ、指定席が満席となって予約ができない場合は、旅客は自由席の切符を購入することになる。鉄道事業者にとっては、指定席が満席で、自由席も満席となる状況が望ましいが、混雑の不均衡により、乗車効率(ロードファクタ)の低下の問題が発生している。例えば、自由席が満席であるにも関わらず指定席に空席が目立ったり、逆に、指定席は満席であるにも関わらず自由席に空席が目立つといった現象が少なくない。この問題に鑑みて、特許文献1には、指定席の利用を促進し、空き指定席を少なくするための仕組みが開示されている。
特開2008−40816号公報
ところで、混雑の不均衡により、乗車効率の低下に加えて、予約謝絶の問題も発生している。乗車区間は旅客によって様々であるため、指定席が部分的に空席になっているにも関わらず、この空席となっている指定席を旅客が予約することができない場合がある。乗車効率の低下や予約謝絶が発生した場合、鉄道事業者側にとっても、本来得られる可能性のある座席料金を得ることができなくなり、運輸収入が減少するという問題がある。
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、乗車効率の向上や鉄道事業者の収入向上といった作用効果を達成するための席種別設定計画の新たな作成手法を提案することにある。
以上の課題を解決するための第1の形態は、
席種別料金の算定対象とする列車である対象列車の各駅間の席種別料金候補を生成する候補生成ステップ(例えば、図3のステップA3、図4の指定席座席料金候補データ)と、
乗車時間及び席種別料金を用いて旅客が選択する席種の確率をモデル化した席種選択モデル(例えば、図5の席種別選択モデル)と、前記対象列車の各駅間の乗車時間(例えば、図5のその他データ)と、前記席種別料金候補(例えば、図5の指定席座席料金候補データ)とを用いて、前記席種別料金候補に対する席種選択確率(例えば、図5の指定席選択確率候補データ)を算出する席種選択確率算出ステップ(例えば、図3のステップA5、図5の席種別選択確率計算)と、
予め定められた前記対象列車の各駅間の利用者需要(例えば、図5の利用者需要ODデータ)と、前記席種選択確率算出ステップで算出された席種選択確率(例えば、図5の指定席選択確率候補データ)とを用いて、前記席種別料金候補に対する各駅間の席種別利用者数(例えば、図5の指定席需要候補データ)を推定する席種別利用者数推定ステップ(例えば、図3のステップA5、図5の席種別需要計算)と、
1)前記対象列車の席種別供給座席数と前記席種別利用者数推定ステップで推定された席種別利用者数とから求まる席種別利用率(例えば、図9の乗車効率)、2)前記席種別利用者数推定ステップで推定された席種別利用者数と前記席種別料金候補とから求まる料金収入、のうちの少なくとも1つを用いて、前記席種別料金候補を評価する評価ステップ(例えば、図3のステップA7)と、
を含み、前記対象列車に関する任意数の席種別料金候補(例えば、図4のN個の指定席座席料金候補データ)を前記候補生成ステップで生成して、前記席種選択確率算出ステップと、前記席種別利用者数推定ステップと、前記評価ステップとを実行し、最良の評価結果となった席種別料金候補を席種別料金として決定して前記対象列車に対する席種別設定計画を作成する(例えば、図3のステップA9〜A15)席種別設定計画作成方法である。
また、第6の形態として、
席種別料金の算定対象とする列車である対象列車の各駅間の席種別料金候補を生成する候補生成手段(例えば、図10の制御部10;図11のステップA3)と、
乗車時間及び席種別料金を用いて旅客が選択する席種の確率をモデル化した席種選択モデルと、前記対象列車の各駅間の乗車時間と、前記席種別料金候補とを用いて、前記席種別料金候補に対する席種選択確率を算出する席種選択確率算出手段(例えば、図10の制御部10;図11のステップA5)と、
予め定められた前記対象列車の各駅間の利用者需要と、前記席種選択確率算出手段により算出された席種選択確率とを用いて、前記席種別料金候補に対する各駅間の席種別利用者数を推定する席種別利用者数推定手段(例えば、図10の制御部10;図11のステップA5)と、
1)前記対象列車の席種別供給座席数と前記席種別利用者数推定手段により推定された席種別利用者数とから求まる席種別利用率、2)前記席種別利用者数推定手段により推定された席種別利用者数と前記席種別料金候補とから求まる料金収入、のうちの少なくとも1つを用いて、前記席種別料金候補を評価する評価手段(例えば、図10の制御部10;図11のステップA7)と、
を備え、前記候補生成手段が前記対象列車に関する任意数の席種別料金候補を生成し、当該各席種別料金候補について前記席種選択確率算出手段、前記席種別利用者数推定手段、前記評価手段が実行し、最良の評価結果となった席種別料金候補を席種別料金として決定して前記対象列車に対する席種別設定計画を作成する(例えば、図10の制御部10;図11のステップB9〜A15)席種別設定計画作成システム(図12の席種別設定計画作成システム3;図10の席種別設定計画作成装置1)を構成してもよい。
この第1の形態等によれば、対象列車の各駅間の席種別料金候補を生成し、所定の席種選択モデルと、対象列車の各駅間の乗車時間と、生成した席種別料金候補とを用いて、席種別料金候補に対する席種選択確率を算出する。そして、対象列車の各駅間の利用者需要と、算出した席種選択確率とを用いて、席種別料金候補に対する各駅間の席種別利用者数を推定する。そして、席種別利用率と、料金収入とのうちの少なくとも1つを用いて席種別料金候補を評価する。対象列車に関する任意数の席種別料金候補に対して、上述の処理を行って最良の評価結果となった席種別料金候補を席種別料金として決定して、対象列車に対する席種別設定計画を作成する。席種別利用率が最大となるような席種別料金候補を最良の評価結果とすれば、席種別の乗車効率を最大化することができる。また、料金収入が最大となるような席種別料金候補を最良の評価結果とすれば、鉄道事業者側の収入の向上を図ることができる。
また、第2の形態として、第1の形態の席種別設定計画作成方法であって、
前記評価ステップは、
前記席種別利用者数推定ステップで推定された各駅間の席種別利用者数から、前記対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数(例えば、図9の指定席販売座席数候補データ)を算出する隣接停車駅間利用者数算出ステップと、
前記算出された前記隣接停車駅間それぞれの利用者数(例えば、図9の指定席販売座席数候補データ)と、前記対象列車の席種別供給座席数(例えば、図9の指定席供給座席数候補データ)とを用いて、前記対象列車全体における前記席種別利用率(例えば、図9の乗車効率の平均値)を算出する利用率算出ステップと、
を含む、
席種別設定計画作成方法を構成してもよい。
この第2の形態によれば、推定された各駅間の席種別利用者数から、対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出する。そして、算出された隣接停車駅間それぞれの利用者数と、対象列車の席種別供給座席数とを用いて、対象列車全体における席種別利用率を算出する。対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出すれば、対象列車全体の利用者数がわかるため、対象列車全体の利用者数と席種別供給席数との比率によって、対象列車全体における席種別利用率を求めることができる。
また、第3の形態として、第2の形態の席種別設定計画作成方法であって、
前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれにおける席種別供給座席数(例えば、図4の指定席供給座席数候補データ)を設定する供給座席数設定ステップを更に含み、
前記利用率算出ステップは、前記供給座席数設定ステップで設定された前記隣接停車駅間それぞれの席種別供給座席数を用いて、前記席種別利用率を算出するステップである、
席種別設定計画作成方法を構成してもよい。
この第3の形態によれば、席種別利用率の算出において、対象列車の隣接停車駅間それぞれにおける席種別供給座席数を設定することが可能となる。また、当該席種別供給座席数を用いて席種別利用率が算出される。
また、第4の形態として、第1の形態の席種別設定計画作成方法であって、
前記席種別利用者数推定ステップで推定された各駅間の席種別利用者数から、前記対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出する隣接停車駅間利用者数算出ステップと、
前記算出された前記隣接停車駅間それぞれの利用者数を用いて、前記隣接停車駅間それぞれにおける前記席種別供給座席数を可変に設定する席種別供給座席数設定ステップと、
を更に含む席種別設定計画作成方法を構成してもよい。
この第4の形態によれば、推定された各駅間の席種別利用者数から、対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出する。そして、算出された隣接停車駅間それぞれの利用者数を用いて、隣接停車駅間それぞれにおける席種別供給座席数を可変に設定する。席種別料金ばかりでなく、席種別供給座席数も任意に設定することが可能となり、旅客の需要に見合った席種別設定を行うことが可能となる。
また、第5の形態として、第3又は第4の形態の席種別設定計画作成方法であって、
前記席種別供給座席数設定ステップで設定された席種別供給座席数に基づいて、前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれの席種別の座席割当計画を作成する座席割当計画作成ステップを更に含む席種別設定計画作成方法を構成してもよい。
また、第7の形態として、第6の形態の席種別設定計画作成システムであって、
前記対象列車の隣接停車駅間それぞれの前記席種別供給座席数を設定する席種別供給座席数設定手段(例えば、図12の座席割当計画作成装置2)と、
前記席種別供給座席数設定手段により設定された席種別供給座席数に基づいて、前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれの席種別の座席割当計画を作成する座席割当計画作成手段(例えば、図12の座席割当計画作成装置2)と、
を更に備えた席種別設定計画作成システムを構成することも可能である。
この第5の形態等によれば、設定された席種別供給座席数に基づいて、対象列車の隣接停車駅間それぞれの席種別の座席割当計画を作成することができる。すなわち、対象列車の隣接停車駅間それぞれにおける席種別供給座席数を可変し、席種別の座席を割り当てることが可能となる。
また、第8の形態として、
第7の形態の席種別設定計画作成システムから前記対象列車の席種別料金と前記座席割当計画とを取得する取得手段(例えば、図12のサーバ51)と、
旅客又は駅係員によって前記対象列車の切符の購入操作がなされる際に、前記取得手段により取得された席種別料金及び前記座席割当計画を提示する提示手段(例えば、図12の券売機53)と、
を備えた出札窓口システムを構成してもよい。
この第8の形態によれば、旅客又は駅係員によって対象列車の切符の購入操作がなされる際に、席種別設定計画作成システムから取得した対象列車の席種別料金と座席割当計画とが提示されるため、旅客又は駅係員にとって座席の選択・指定が容易となる。
また、第9の形態として、
鉄道車両と通信可能な通信手段と、
第7の形態の席種別設定計画作成システムから前記座席割当計画を取得する取得手段と、
鉄道車両と当該車両で運用される列車との対応関係を記憶する記憶手段(例えば、図12の車両運用DB73)と、
前記対応関係に基づいて、前記取得手段により取得された座席割当計画に該当する列車を運用する鉄道車両を選択する対応車両選択手段と、
前記通信手段を制御して、前記対応車両選択手段により選択された鉄道車両に前記座席割当計画を送信する送信手段(例えば、図12の地上通信制御装置71)と、
を備えた座席割当通知システムを構成してもよい。
この第9の形態によれば、鉄道車両と当該車両で運用される列車との対応関係に基づいて、席種別設定計画作成システムから取得した座席割当計画に該当する列車を運用する鉄道車両を選択する。そして、選択した鉄道車両と通信を行って、当該鉄道車両に座席割当計画を送信する。座席割当通知システムから座席割当計画を受信した鉄道車両は、当該席種割当計画を客室に表示するなどして、座席の割り当てに関する情報を旅客に報知することができる。
新幹線車両の編成及び座席数の説明図。 新幹線列車の線区の説明図。 席種別設定計画作成の流れを示すフローチャート。 解候補の一例を示す図。 需要予測算出処理の説明図。 利用者需要ODデータのデータ構成の一例を示す図。 席種別需要計算の説明図。 指定席販売座席数計算の説明図。 乗車効率の算出方法の説明図。 席種別設定計画作成装置の機能構成を示すブロック図。 席種別設定計画作成処理の流れを示すフローチャート。 新幹線運行システムのシステム構成図。 自由席特急券の一例を示す図。 券売機に表示される座席案内画面の一例を示す図。 席種表示システムの一例を示す図。 席種個別案内装置の一例を示す図。
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態がこれらに限定されるわけではない。
1.原理
先ず、本実施形態における席種別設定計画作成の原理について説明する。ここでは、優等列車の一種である「新幹線」の席種別設定計画を作成する場合を例に挙げて説明する。また、新幹線の車両のことを「新幹線車両」、運用される列車のことを「新幹線列車」として説明する。
図1は、本実施形態における新幹線車両の編成及び座席数を説明するための図である。本実施形態における新幹線車両は、紙面の右方向から左方向に向かって1号車〜4号車の4両で編成されている。1号車及び4号車の座席数は「65席」、2号車及び3号車の座席数は「85席」であり、全座席数は「300席」である。
図2は、本実施形態における新幹線列車の線区の構成を示す図である。線区は、4つの駅と、各駅間を結ぶ線路とで構成されている。線区は、紙面の左方向から右方向に向かってA駅〜D駅の4つの駅で構成されており、新幹線列車は、各駅に停車する。また、本実施形態では、A駅を始発駅としD駅を終着駅とする紙面向かって右方向への列車に着目した実施形態とし、隣接停車駅間であるA駅とB駅間の区間を「第1区間」、B駅とC駅間の区間を「第2区間」、C駅とD駅間の区間を「第3区間」として説明する。
さらに、本実施形態では、新幹線列車の座席種別(以下、「席種」という。)を、「指定席」と「自由席」の2種類の席種とする。そして、各席種に割り当てる座席数をOD単位で決定する。以下、発着駅の組合せのことを「OD(Origin to Destination)」と称する。例えば図2の線区では、A駅からD駅に至るまでの「A駅→B駅」、「A駅→C駅」、「A駅→D駅」、「B駅→C駅」,「B駅→D駅」、「C駅→D駅」の6つの発着駅の組合せがODとなる。
本実施形態の特徴の1つとして、席種別の座席料金及び座席数をOD単位で可変に設定して、新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する。
図3は、本実施形態における席種別設定計画作成の流れを示すフローチャートである。ある1日に運行する全ての新幹線列車の席種別設定計画を作成する場合を例に挙げて説明する。また、新幹線車両の全座席数は決まっているので、指定席の座席数が決まれば、自由席の座席数も自ずと決まることになる。そこで、座席数に関しては、指定席にのみ着目して説明する。
先ず、処理対象とする各新幹線列車それぞれについて、ループAの処理を実行する(ステップA1〜A13)。ループAの処理では、最初に解候補の設定を行う(ステップA3)。
図4は、本実施形態において設定する解候補の一例を示す図である。各解候補(i=1,2,・・・,N)には、当該解候補の番号と対応付けて、指定席の供給座席数を区間単位で定めた指定席供給座席数候補データと、指定席の座席料金をOD単位で定めた指定席座席料金候補データと、指定席の販売係数をOD単位で定めた指定席販売係数候補データとが対応付けて記憶されている。これらの3種類の候補データを一組の解候補として、全部でN個(N組)の解候補を最初に設定する。
指定席供給座席数候補データは、指定席の供給座席数の候補が区間単位で定められたデータである。具体的には、図4に示すように、第1区間〜第3区間のそれぞれにおける指定席の供給座席数が定められている。各区間における供給座席数は、新幹線車両の全座席数である「300席」以下となるように、例えばランダムに設定される。
指定席座席料金候補データは、指定席の座席料金の候補がOD単位で定められたデータである。具体的には、図4に示すように、A駅〜D駅に至るまでの発着駅の組合せそれぞれについて、指定席の座席料金がテーブル形式で定められている。指定席の座席料金は、予め定められた範囲内の値(例えば310円〜710円)となるように、例えばランダムに設定される。尚、図4において、対象とする新幹線列車はA駅からD駅に向かって運行するため、運行方向と逆方向のODについては、座席料金を「−(なし)」としている。
指定席販売係数候補データは、指定席の販売係数の候補がOD単位で定められたデータである。販売係数とは、指定席の需要座席数に対して実際に販売する販売座席数の割合を示す値である。具体的には、図4に示すように、A駅〜D駅に至るまでの発着駅の組合せそれぞれについて、指定席の販売係数がテーブル形式で定められている。販売係数は、「0〜1」の範囲内の値となるように、例えばランダムに設定される。尚、この場合も、対象とする新幹線列車の運行方向と逆方向のODについては、販売係数を「−(なし)」としている。
本来であれば、全てのODについて、指定席の販売係数を「1」として需要座席数と同数の座席を販売することが望ましいのであるが、乗車区間は旅客によって様々であるため、全てのODについて販売係数を「1」としてしまうと、区間によっては全ての旅客に座席が配分されなくなるおそれがある。そこで、「0〜1」の範囲で指定席の販売係数を設定し、座席の割り当てが柔軟に行われるように調整することとしている。
図3のフローチャートに戻って、ステップA3において解候補の設定を行った後、設定した解候補を用いて需要予測算出処理を行う(ステップA5)。
図5は、需要予測算出処理の流れを説明するための図である。
最初に、指定席座席料金候補データと、席種別選択モデルと、その他データとを用いて、指定席選択確率候補データを算出する。その他データには、乗車時間、着席因子等の要素がOD単位で含まれている。指定席選択確率候補データは、旅客が指定席を選択する確率である指定席選択確率がOD単位で定められたデータである。
席種別選択モデルは、席種別の選択確率を算出するための予め定められた数理モデルである。本願発明者は、旅客を対象としたトリップ調査を実施し、席種別の選択行動のモデル化を行った。その結果、旅客の席種の選択行動には、乗車時間や席種別料金といった因子の他に、選択行動の背後に存在すると想定した意識因子である「着席の確実性」の因子と、「着席の自由度」の因子とが影響を与えていることが判明した。この調査結果に基づいて、席種別料金と、乗車時間と、着席の確実性と、着席の自由度とを変数として、席種別の選択確率を算出するための数理モデルを構築した。
席種別の選択確率は、次式(1)に従って算出される。
「Pij」は、席種別の選択確率を示している。添え字の「i」は、ODそれぞれの識別番号を示しており、本実施形態では6つのODがあるため、1,2,・・・,6の何れかの値をとる。また、添え字の「j」は、1又は2の値をとり、2種類の席種それぞれの番号を示している。例えば、1が指定席、2が自由席を示している。
また、式(1)における「Uij」は、次式(2)及び(3)に従って算出される。
式(2)において、「cij」はi番目のODにおいてj番目の席種を利用した場合の席種別料金、「ti」はi番目のODにおける乗車時間、「ri」はi番目のODにおける着席の確実性、「fi」はi番目のODにおける着席の自由度をそれぞれ示している。また、「α1」〜「α4」は、それぞれ席種別料金、乗車時間、着席の確実性、着席の自由度の重みを示している。
指定席座席料金候補データに含まれる指定席の座席料金と、その他データに含まれる乗車時間及び着席因子(着席の確実性及び着席の自由度)とを式(1)に代入することで、席種別の選択確率を算出する。そして、算出した選択確率をOD単位で纏めて、指定席選択確率候補データを生成する。
図5の説明に戻って、旅客数がOD単位で定められた利用者需要ODデータと、生成した指定席選択確率候補データとを用いて、席種別需要計算を行う。利用者需要ODデータは、図6に示すように、利用旅客数がOD単位で定められたデータである。利用者需要ODデータは、利用者の実績値のデータとしてもよいし、利用者の推定値のデータとしてもよい。但し、新幹線列車それぞれについて個別に定められる。
図7は、席種別需要計算の流れを説明するための図である。利用者需要ODデータに対して、N個(i=1,2,・・・,N)の指定席選択確率候補データそれぞれを乗算することで、N個(i=1,2,・・・,N)の指定席需要候補データを求める。具体的には、利用者需要ODデータに含まれる利用者数と、指定席選択確率候補データに含まれる指定席選択確率とをOD単位でそれぞれ乗算して、該当するODの指定席の需要座席数を求めることで、指定席需要候補データを求める。指定席の需要座席数は、該当するODの指定席の利用者数を示しているとも言える。
図5の説明に戻って、指定席需要候補データを求めたら、指定席需要候補データと、指定席販売係数候補データとを用いて、指定席販売座席数計算を行う。
図8は、指定席販売座席数計算の流れを説明するための図である。指定席需要候補データと、指定席販売係数候補データとを乗算して、指定席販売候補データを求める。具体的には、N個(i=1,2,・・・,N)の指定席需要候補データと、N個(i=1,2,・・・,N)の指定席販売係数候補データとを、同じ番号の候補データ同士を乗算対象として、指定席需要座席数と指定席販売係数とをOD単位で乗算して、N個(i=1,2,・・・,N)の指定席販売候補データを求める。
尚、利用者需要ODデータと、指定席販売候補データとの差分を算出することで、自由席の需要座席数の候補をOD単位で定めたデータである自由席需要候補データを求めることができる。自由席の需要座席数は、該当するODの自由席の利用者数を示しているとも言える。この自由席需要候補データは、例えば第2実施例で後述するように、自由席の予想混雑率を算出するために使用することができる。
再び図5の説明に戻って、指定席販売座席数候補データを求めたら、各指定席販売座席数候補データそれぞれに対して、制約条件のチェックを行う。制約条件は、例えば、指定席販売座席数候補データに含まれる指定席販売座席数が、新幹線車両の全座席数である300席を超えていないことである。そして、制約条件を満たさない指定席販売座席数候補データを含む解候補は廃棄する。一方、制約条件を満たす指定席販売座席数候補データを含む解候補は保存して、需要予測算出処理を終了する。
図3のフローチャートに戻って、需要予測算出処理を行った後、保存された各解候補それぞれについて、当該解候補を評価するための評価指標値算出処理を行う(ステップA7)。本実施形態では、席種別の乗車効率(ロードファクタ)を評価指標値として用いて、各解候補を評価する。
図9は、乗車効率の算出方法の説明図である。先ず、各解候補それぞれについて、図5を参照して説明した需要予測算出処理において算出された指定席販売座席数候補データに基づいて、OD単位の指定席販売座席数から区間単位の指定席販売座席数を求める。
そして、求めた区間単位の指定席販売座席数候補データと、当該解候補に含まれる区間単位の指定席供給座席数候補データ(図4参照)とを用いて、乗車効率を区間単位で算出する。具体的には、各区間それぞれについて、指定席販売座席数を指定席供給座席数で除算して、当該区間の乗車効率を算出する。そして、全ての区間の乗車効率の平均値を算出した値を当該新幹線列車における乗車効率とし、この値を評価指標値とする。
図3のフローチャートに戻って、評価指標値算出処理を行った後、算出した評価指標値に基づいて、複数の解候補の中から最良解を選択する(ステップA9)。運輸収入確保の観点からみても、乗車効率が大きいほど鉄道事業者にとって望ましいため、N個の解候補の中から評価指標値が最も大きい解候補を最良解として選択する。
そして、選択した最良解を保存し(ステップA9)、次の新幹線列車へと処理を移行する。そして、全ての列車についてステップA3〜A11の処理を行った後、ループAの処理を終了する。
ループAの処理を終了したら、各新幹線列車それぞれについてステップA11で保存された最良解を用いて、当該運行日に運行する全ての新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する(ステップA15)。すなわち、最良解から得られるOD単位の指定席供給座席数、指定席座席料金及び指定席販売係数を新幹線列車とユニークに対応づけて、当該運行日における席種別設定計画を作成する。
2.第1実施例
次に、上述した原理に従って新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する装置である席種別設定計画装置1の実施例について説明する。
2−1.機能構成
図10は、席種別設定計画作成装置1の機能構成を示すブロック図である。席種別設定計画作成装置1は、制御部10と、入力部20と、表示部30と、通信部40と、記憶部50とを備え、各部がバス60で接続された一種のコンピューターシステムである。
制御部10は、記憶部50に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って席種別設定計画作成装置1を統括的に制御する制御部であり、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。本実施形態では、制御部10は、記憶部50に記憶されている席種別設定計画作成プログラム501に従って、席種別設定計画作成処理を行う。
入力部20は、例えばキーボードやタッチパネル等により構成される入力装置であり、押下されたキーやアイコンの信号を制御部10に出力する。この入力部20の操作により、各種データの入力や席種別設定計画の作成指示等がなされる。
表示部30は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、制御部10から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部30には、制御部10により作成された席種別設定計画等が表示される。
通信部40は、制御部10の制御に基づいて、装置内部で利用される情報をインターネット等の通信ネットワークを介して外部とやりとりするための通信装置である。
記憶部50は、制御部10が席種別設定計画作成装置1を制御するための各種プログラムや各種データを記憶した記憶装置であり、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、ハードディスク等により構成される。
記憶部50には、プログラムとして、制御部10により読み出され、席種別設定計画作成処理(図11参照)として実行される席種別設定計画作成プログラム501が記憶されている。また、データとして、利用者需要ODデータ502と、席種別選択モデルデータ503と、乗車時間や着席因子等を含むその他データ504と、複数の解候補505(席種別供給座席数候補データ5051、席種別料金候補データ5053及び席種別販売係数候補データ5055)と、席種別選択確率候補データ506と、席種別需要座席数候補データ507と、席種別販売座席数候補データ508と、最良解データ509と、席種別設定計画データ510とが記憶される。
利用者需要ODデータ502と、席種別選択モデルデータ503と、その他データ504とは、予め定められた固定的なデータである。一方、複数の解候補505と、席種別選択確率候補データ506と、席種別需要座席数候補データ507と、席種別販売座席数候補データ508と、最良解データ509と、席種別設定計画データ510とは、席種別設定計画作成処理において随時更新されるデータである。
2−2.処理の流れ
図11は、記憶部50に記憶されている席種別設定計画作成プログラム501が制御部10により読み出されて実行されることで、席種別設定計画作成装置1において実行される席種別設定計画作成処理の流れを示すフローチャートである。尚、図3のフローチャートと同一のステップについては同一の符号を付して説明を省略し、図3とは異なるステップを中心に説明する。
制御部10は、各新幹線列車それぞれについて行うループBの処理において、ステップA3〜A7の処理を行った後、複数の解候補505の中から最良解を選択し、暫定最良解として記憶部50に一時的に記憶させる(ステップB9)。具体的には、N個の解候補505の中から、ステップA7の評価指標値算出処理で算出された評価指標値が最大の解候補を選択して、暫定最良解として記憶部50に記憶させる。
次いで、制御部10は、ステップB9で選択・記憶した暫定最良解を除いた解候補505を用いて、解候補更新処理を行う(ステップB11)。具体的には、各解候補505それぞれについて、当該解候補505に含まれる席種別供給座席数候補データ5051、席種別料金候補データ5053及び席種別販売係数候補データ5055の3つの候補データに含まれる一部の値を変更して、各解候補505を更新する処理を行う。
この値の変更は、例えば、変更対象の値として所定数をランダムに選択し、変更量をランダムに決定して変更することとしてもよいし、各候補解505に含まれる3つの候補データ(席種別供給座席数候補データ5051、席種別料金候補データ5053及び席種別販売係数候補データ5055)の組合せを入れ替えて新たな解候補を生成することで、値の変更を行うこととしてもよい。また、全く新しい解候補を新たにランダムに生成し直してもよい。
その後、制御部10は、解候補更新処理で得られた全ての解候補505について、需要予測算出処理及び評価指標値算出処理を行う(ステップA5,A7)。そして、制御部10は、ステップB9で選択・記憶した暫定最良解である解候補505と、ステップB11の解候補更新処理で得られた解候補505との中から、評価指標値が最大の解候補505を最良解として選択する(ステップA9)。
次いで、制御部10は、選択した最良解がOKであるか否かを判定する(ステップB13)。具体的には、ステップA9で選択した最良解(今回選択された最良解)の評価指標値と、記憶部50に既に記憶されている最良解(前回選択された最良解)の評価指標値とを比較して、今回選択された最良解の評価指標値の方が大きい場合に、選択した最良解はOKであると判定する。
そして、選択した最良解がOKであると判定した場合は(ステップB13;Yes)、制御部10は、当該最良解で記憶部50の最良解データ509を更新する(ステップB15)。また、選択した最良解がNGであると判定した場合は(ステップB13;No)、制御部10は、ステップB17へと処理を移行する。
その後、制御部10は、終了条件が成立したか否かを判定する(ステップB17)。具体的には、例えば、(1)新たに選択された最良解の評価指標値が前回選択された最良解の評価指標値以下となる連続回数が所定回数(例えば3,000回)に達したこと、(2)ステップB9〜B15の繰り返し回数が所定の上限回数(例えば100,000回)に達したこと、の何れかの条件が成立した場合に、終了条件が成立したものと判定する。
そして、制御部10は、まだ終了条件が成立していないと判定した場合は(ステップB17;No)、ステップB9に戻る。また、終了条件が成立したと判定した場合は(ステップB17;Yes)、次の新幹線列車へと処理を移行する。
全ての新幹線列車についてステップA3〜B17の処理を行った後、制御部10は、ループBの処理を終了する(ステップB19)。その後、制御部10は、各新幹線列車について記憶部50の最良解データ509に記憶された最良解を用いて、当該運行日の全ての新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する(ステップA15)。そして、制御部10は、作成した席種別設定計画を表示部30に表示させた後(ステップB21)、席種別設定計画作成処理を終了する。
2−3.作用効果
席種別設定計画作成装置1において、各新幹線列車について、席種別設定計画とするN個の解候補が設定され、設定されたN個の解候補それぞれに対して、需要予測算出処理が行われる。そして、各解候補それぞれについて、需要予測算出処理により算出された席種別の販売座席数と、設定された席種別の供給座席数とを用いて、当該新幹線列車の乗車効率が評価指標値として算出される。
その後、N個の解候補の中から暫定的な最良解が選択・記憶され、残余の解候補に対して解候補更新処理が行われて、解候補が新たに生成・更新される。そして、新たに生成・更新された解候補それぞれに対して需要予測算出処理と評価指標値算出処理とが行われ、保存されている暫定最良解と、新たに生成・更新された解候補との中から評価指標値が最良となった解候補が最良解とされる。これらの処理が各新幹線列車それぞれについて繰り返し行われ、最終的に得られた最良解を用いて、全ての新幹線列車に対する席種別設定計画が作成される。
処理対象とする新幹線列車の乗車効率が最大となるような解候補を最良解として選択することで、旅客の需要に適合した席種別設定計画を作成することができる。また、このようにして作成した席種別設定計画に基づく列車の運行を行うことで、各列車の乗車効率が向上する。
3.第2実施例
次に、第1実施例の席種別設定計画作成装置1を具備するシステムである新幹線運行システム100の実施例について説明する。
図12は、新幹線運行システム100のシステム構成の一例を示す図である。新幹線運行システム100は、席種別設定計画作成システム3と、乗車券販売システム5と、座席割当通知システム7と、複数の新幹線車両9とを備えて構成される。
席種別設定計画作成システム3は、新幹線列車全ての席種別設定計画及び座席割当計画を作成するコンピューターシステムであり、例えば、席種別設定計画作成装置1と、座席割当計画作成装置2とを備えて構成される。席種別設定計画作成システム3は、作成した席種別設定計画及び座席割当計画を、所定のネットワークNを通じて、乗車券販売システム5及び座席割当通知システム7に送信する。
席種別設定計画作成装置1は、第1実施例で説明した席種別設定計画作成装置に対応し、全ての新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する。席種別設定計画作成装置1は、作成した席種別設定計画を座席割当計画作成装置2に提供する。
座席割当計画作成装置2は、席種別設定計画装置1から取得した席種別設定計画に基づいて、新幹線列車それぞれに対する座席割当計画を作成する装置である。座席割当計画作成装置2は、席種別設定計画に含まれる席種別供給座席数候補データ、席種別料金候補データ及び席種別販売係数候補データに基づいて、当該新幹線列車の隣接停車駅間それぞれの席種別販売座席数を算出し、算出した席種別販売座席数分の座席の割り当てを決定する。
乗車券販売システム5は、乗車券や特急券等の切符の販売を行う出札窓口システムであり、旅客自身が列車の指定等を行って切符を購入する券売機窓口や、旅客と駅係員とが対面して駅係員が列車の指定等を行って切符を発券する一般窓口のシステムを含む。例えば、サーバ51と、複数の券売機53とを備えて構成され、一般窓口のシステムとして不図示の駅係員用の発券システムを更に具備して構成される。乗車券販売システム5は、ネットワークNによって席種別設定計画作成システム3及び座席割当通知システム7と通信接続される。
サーバ51は、席種別設定計画作成システム3から取得した席種別設定計画及び座席割当計画に基づいて、各新幹線列車に対して計画された席種別料金及び座席割当を含む座席案内を、各券売機53の表示部に表示させる制御を行う。また、各券売機5を制御して、座席案内が印字された切符を発券させる。
また、サーバ51は、席種別設定計画に含まれる各新幹線列車の席種別の供給座席数と販売座席数とを用いて、席種別の予想される混雑率(以下、「予想混雑率」という。)を、隣接停車駅間毎に算出する。例えば、席種が自由席である場合は、各隣接停車駅間それぞれについて、当該区間の自由席の販売座席数及び供給座席数を算出し、販売座席数と供給座席数との比率を算出することによって、当該区間の予想混雑率を算出する。そして、算出した予想混雑率を、座席割当計画と併せて券売機53の表示部に表示させる。
尚、自由席の需要座席数は、図5で説明したように、利用者需要ODデータと指定席販売候補データとの差分を算出することで得られる自由席需要候補データを、区間単位の候補データに変換することで取得することができる。ここで、自由席は立席が認められるため、自由席需要座席数を自由席販売座席数と等しくする。また、自由席の供給座席数は、全座席数と指定席供給座席数との差分である。
券売機53は、サーバ51の制御に従って、乗車券や特急券等の切符を発券する発券装置である。券売機53は、タッチパネルと一体化された表示部を備えて構成されている。そして、新幹線列車の切符の購入操作に従って、当該新幹線列車の座席案内を表示部に表示させる。また、乗車を希望する乗車区間における座席の割り当てや予想混雑率等に関する情報を印字した切符を発券する。
図13は、乗車券販売システム5の券売機53が発券する切符の一例である自由席特急券TK1を示す図である。自由席特急券TK1は、利用者が新幹線列車の自由席に乗車するために必要な特急券である。
自由席特急券TK1の上部には、旅客の乗車区間として、「A駅→C駅」が印字されている。また、乗車区間の下には、当該新幹線列車が運行される日付と、当該新幹線列車の列車番号と、当該新幹線列車のA駅及びC駅の発着時刻と、当該新幹線列車の自由席の座席料金とが印字されている。
また、自由席特急券TK1の下部には、自由席案内が表示されている。具体的には、乗車区間である「A駅→C駅」の区間に含まれる各ODそれぞれについて、当該ODにおいて自由席が割り当てられた座席番号及び予想混雑率が印字されている。例えば、「A駅→C駅」の区間では、「4号車7番〜10番のABC席と5番〜9番のDE席」が自由席であり、当該区間における自由席の予想混雑率は「150%」である。
図14は、券売機53の表示部に表示される座席案内画面の一例である座席案内画面W1を示す図である。券売機のみならず、一般窓口システムに係る発券システムでも同様の画面が表示される。ここでは、乗車区間として「A駅→D駅」が選択された場合について説明する。
座席案内画面W1には、A駅〜D駅までの隣接停車駅間それぞれについて、指定席と自由席で色分けされた新幹線列車の座席案内図が表示されている。座席の割当は、新幹線列車ごとに異なり得る。例えば、指定席が割り当てられた座席は橙色、自由席が割り当てられた座席は青色といったように、旅客又は駅係員が座席の割り当てを一目で把握することができるように、席種別に色分けがなされている。旅客や駅係員は、例えば指定席の予約を希望する場合は、予約を取りたい席の部分を指又はタッチペンでタッチすることで、当該席の予約を行うことができる。
また、各隣接停車駅間の座席案内図の下には、自由席の予想混雑率が表示されている。座席案内画面W1では、「A駅→B駅」の自由席の予想混雑率は「91%」であり、「B駅→C駅」の自由席の予想混雑率は「105%」であり、「C駅→D駅」の自由席の予想混雑率は「82%」である旨が表示されている。区間単位で予想混雑率が表示されることで、旅客は、選択すべき席種の判断を容易に行うことができる。また、一般窓口システムを操作する駅係員であれば、自由席の混雑率の予想を旅客に案内することができる。
座席割当通知システム7は、席種別設定計画作成システム3から各新幹線列車の座席割当計画を取得して、当該新幹線列車を運用する新幹線車両9へ通知を行う通信システムである。例えば、所定の通信システムにより各新幹線車両9と通信可能に接続された地上通信制御装置71と、車両運用DB(Data Base)73とを備えて構成される。車両運用DB73は、新幹線車両9と、当該車両で運用される新幹線列車との対応関係を定めた車両運用データが蓄積記憶されたデータベースである。
座席割当通知システム7は、ネットワークNによって席種別設定計画作成システム3及び乗車券販売システム5と通信接続されている。また、座席割当通知システム7は、所定の通信システムを介して各新幹線車両9との間でデータ通信が可能に構成されている。
座席割当通知システム7は、各新幹線列車それぞれの座席割当計画を席種別設定計画作成システム3から受信する。そして、車両運用DBに蓄積記憶された車両運用データを参照して、当該新幹線列車を運用する新幹線車両9を選択する。そして、地上通信制御装置71を制御して、選択した新幹線車両9に、対応する座席割当計画を送信・通知する。
新幹線車両9は、複数の席種(例えば自由席、指定席及びグリーン席)を有する優等列車である。本実施例における新幹線車両9は、席種表示システム91と、各座席に席種個別案内装置93と、これらの制御装置95とを備えて構成されている。
図15は、席種表示システム91の一例を示す図である。席種表示システム91は、客室200の天井部から吊り下げられるように配設された移動式の客室電子表示板210と、この客室電子表示板210を搬送(移動)させる搬送機構とを備えて構成される。
客室200の天井部には、2本のレール230が列車の進退方向(前後方向)に沿って延設されており、レール230の溝に嵌め込まれた可動部220と一体的に客室電子表示板210が設置される。可動部220がレール230内を移動することで、客室電子表示板210は客室200内を前後方向に移動する。客室電子表示板210の搬送機構は、公知の搬送機構を適用できる。例えば、レール230内に螺旋状の溝或いは凸部を外周に設けたシャフトを設け、このシャフトを回転することで搬送する螺旋状搬送機構などを適用できる。この搬送機構によって、客室電子表示板210は、自由席と指定席との境界位置に搬送される。
客室電子表示板210には、客室200内の座席に割り当てられた席種に関する情報が表示される。例えば、指定席及び自由席がそれぞれ割り当てられた座席番号と、自由席の予想混雑率とが隣接停車駅間単位で表示される。図15では、「A駅→B駅」の区間では「1番〜5番」の座席が指定席であり、「6番〜20番」の座席が自由席である旨が表示されている。
制御装置95は、座席割当通知システム7から通知された当該新幹線列車の座席割当計画をもとに、各客室の各座席の席種を判定する。そして、自由席と指定席との境界位置を算出して、当該位置に向けて搬送機構を制御して客室電子表示板210を移動させるとともに、客室電子表示板210に座席割当計画に従った表示を行わせる制御をする。
図16は、席種個別案内装置93の一例を示す図である。席種個別案内装置93は、座席300の背面上部に座席電子表示板310を備えて構成される。座席電子表示板310には、座席300の真後ろの座席に割り当てられた席種に関する情報や席種別の予想混雑率等の情報が表示される。
制御装置95は、座席割当通知システム7から通知された座席割当計画をもとに各客室の各座席の席種を判定するとともに、当該座席に対応する席種個別案内装置93に表示させる表示情報を生成・送信して、当該表示情報を表示させる。例えば、図16では、「お客様の座席はA駅→C駅が自由席、C駅から先が指定席です」というメッセージが表示されている。従って、座席300の真後ろの座席に着席している旅客は、C駅までは現在の座席を利用可能であるが、C駅から先は別の座席に移動しなければならないことを知ることができる。
4.変形例
4−1.適用システム
上述した実施形態では、優等列車の一種である新幹線列車に対する席種別設定計画を作成する場合を例示して説明したが、新幹線以外の優等列車についても本発明の手法を適用可能である。例えば、特急列車や急行列車における指定席及び自由席の席種別設定計画の作成も、上述した実施形態と同様に行うことができる。
また、席種についても、上述した指定席と自由席の2種類に限られるわけではない。例えば、各種の優等列車に既に採用されている、或いは、採用予定のグリーン席(例えば、デラックスグリーン席やスーパーグリーン席)を席種に含めて席種別設定計画の作成を行うことも可能である。
4−2.評価指標値の種類
上述した実施形態では、列車全体の乗車効率を評価指標値とするものとして説明したが、評価指標値を以下の値としてもよい。何れの評価指標値を用いるかは、列車の運用状況・運用時期、鉄道事業者側の目的等に応じて決定することが好適である。
例えば、鉄道事業者の運輸収入を評価指標値とすることができる。具体的には、各席種それぞれについて、販売座席数に座席料金を乗算して運輸収入を算出する。そして、全ての席種について算出した運輸収入を合算した値を評価指標値とする。この場合は、運輸収入が大きいほど鉄道事業者にとっては望ましいため、運輸収入が最大となった解候補を最良解として選択することにすればよい。
また、座席の予約謝絶数を評価指標値としてもよい。指定席を例に挙げると、指定席需要座席数と指定席販売座席数との差分が、指定席の予約を希望した旅客が指定席を予約することができなかった数、すなわち予約謝絶数を表している。そこで、予約が可能である席種について、需要座席数から販売座席数を減算して予約謝絶数を算出して評価指標値とする。この場合は、予約謝絶数が少ないほど、鉄道事業者にとっても旅客にとっても望ましいため、予約謝絶数が最小となった解候補を最良解として選択すればよい。
4−3.評価指標値に基づく最良解の選択方法
また、1種類の評価指標値を用いて最良解を選択するのではなく、複数種類の評価指標値を組み合わせて用いて最良解の選択を行うことも可能である。例えば、各解候補それぞれについて、上述した3種類の評価指標値を全て算出する。そして、3種類の評価指標値を用いて総合的に解候補を評価し、評価結果が最良となった解候補を最良解として選択する。
また、評価指標値に優先順位を付けて最良解を選択してもよい。例えば、(1位)乗車効率、(2位)運輸収入、(3位)予約謝絶数といったように、予め評価指標値の優先順位を定めておく。そして、優先順位の高い評価指標値を優先的に用いて最良解を選択するが、複数の解候補の評価指標値が同点となったような場合は、下位の評価指標値を用いて解候補の優劣を決めて最良解を選択する。
さらに、2以上の評価指標値を組み合わせて総合評価指標値を算出し、この総合評価指標値に基づいて最良解を選択することも可能である。例えば、乗車効率と運輸収入との2種類の評価指標値を加重平均計算して総合評価指標値を算出し、総合評価指標値が最大となった解候補を最良解として選択することにしてもよい。
4−4.供給座席数の設定
上述した実施形態では、解候補とする供給座席数をランダムに設定するものとして説明したが、列車の席種別の利用者数、言い換えると席種別の需要座席数に基づいて、供給座席数を設定することにしてもよい。
具体的には、席種別需要計算を行うことで得られた席種別の需要候補データから、区間単位の需要座席数を算出する。すなわち、OD単位の席種別需要座席数から区間単位の席種別需要座席数を算出する。そして、各区間それぞれについて、当該区間の需要座席数を供給座席数として設定する。
また、需要座席数を供給座席数として設定するのではなく、販売座席数を供給座席数として設定してもよい。すなわち、OD単位の席種別販売座席数候補データから、区間単位の席種別販売座席数候補データを生成する。すなわち、OD単位の席種別販売座席数から区間単位の席種別販売座席数を算出する。そして、各区間それぞれについて、当該区間の販売座席数を供給座席数として設定する。
4−5.最良解の探索方法
上述した実施形態では、N個の解候補に対する更新処理を繰り返し行い、最良の評価結果となった解候補を選択することにより最良解の探索を行うものとして説明した。この最良解の探索手法はあくまでも一例であり、適宜設定変更可能である。
例えば、N=1として、解候補を1つだけ設定して最良解の探索を行うことにしてもよい。この際、解候補に含まれる値のうち、変更する値の選択方法や変更する量の決定方法としては、例えば次のようにしてもよい。すなわち、乗車効率を評価指標値とする場合は、乗車効率が増加する方向に席種別供給座席数、席種別料金及び席種別販売係数を変化させる(例えば所定値だけ増加させる)方法である。
4−6.解候補の設定
上述した実施形態では、席種別供給座席数と、席種別料金と、席種別販売係数との3種類の候補データを対応付けて1組の解候補として設定するものとして説明したが、他の候補データを解候補として含める、或いは置換して設定してもよく、適宜設定変更可能である。
また、上述した実施形態では、席種別供給座席数候補データを区間単位の候補データとし、席種別料金候補データ及び席種別販売係数候補データを各駅間のOD単位の候補データとするものとして説明したが、候補データの形式も任意に定めることができる。例えば、全ての候補データを区間単位の候補データとしてもよいし、全ての候補データをOD単位の候補データとしてもよい。
4−7.席種別販売係数の設定
上述した実施形態では、N個の解候補の席種別販売係数候補データそれぞれについて、「0〜1」の範囲で値をランダムに設定するものとして説明した。これは、乗車区間が旅客によって様々であるため、全てのODについて販売係数を「1」としてしまうと、乗車区間によっては全ての旅客に座席が配分されなくなる場合があることを考慮したためである。
しかし、例えば、N個の解候補のうちの20%の解候補の席種別販売係数候補データについては、全てのODについて販売係数を「1」に設定し、残りの80%の解候補の席種別販売係数候補データについては、販売係数に「0〜1」の範囲の値をランダムに設定して計算を行うなどして、販売係数が「1」である席種別販売係数候補データが最良解として選択される確率が高くなるように調整を行ってもよい。
4−8.座席割当計画の作成
上述した実施例では、席種別設定計画作成装置1により作成された席種別設定計画に基づいて、座席割当計画作成装置2が座席割当計画を作成するものとして説明したが、席種別設定計画作成装置1が座席割当計画を作成することとし、座席割当計画作成装置2を省略することも可能である。
4−9.客室電子掲示板
上述した実施例では、新幹線列車の客室内に、前後方向に移動可能な移動式の客室電子掲示板を配設するものとして説明した。しかし、我が国で現在運行している優等列車の中には、各客室の最前部に非移動式の客室電子掲示板が配設されているものがある。そこで、移動式の客室電子掲示板を設けずに、非移動式の客室電子掲示板に座席の割り当てや予想混雑率等の情報を表示することにしてもよい。
4−10.自由席案内
上述した実施例では、座席案内として、旅客の乗車区間に含まれる各ODそれぞれにおける座席の割り当てに関する情報が切符に印字されるものとして説明したが、旅客の乗車区間における座席の割り当てに関する情報のみを印字することにしてもよい。例えば、図13の自由席特急券では、「A駅→B駅」、「B駅→C駅」、「A駅→C駅」の全ての区間の自由席案内を印字するのではなく、旅客の乗車区間である「A駅→C駅」の区間の自由席案内のみを印字するようにしてもよい。
1 席種別設定計画作成装置
10 制御部
20 入力部
30 表示部
40 通信部
50 記憶部
60 バス
2 座席割当計画作成装置
3 席種別設定計画作成システム
5 乗車券販売システム
51 サーバ
53 券売機
7 座席割当通知システム
71 地上通信制御装置
73 車両運用DB
9 新幹線車両
91 席種表示システム
93 席種個別案内装置
95 制御装置
200 客室
210 客室電子表示板
220 可動部
230 レール
300 座席
310 座席電子表示板
TK1 自由席特急券
W1 座席案内画面

Claims (9)

  1. 席種別料金の算定対象とする列車である対象列車の各駅間の席種別料金候補を生成する候補生成ステップと、
    乗車時間及び席種別料金を用いて旅客が選択する席種の確率をモデル化した席種選択モデルと、前記対象列車の各駅間の乗車時間と、前記席種別料金候補とを用いて、前記席種別料金候補に対する席種選択確率を算出する席種選択確率算出ステップと、
    予め定められた前記対象列車の各駅間の利用者需要と、前記席種選択確率算出ステップで算出された席種選択確率とを用いて、前記席種別料金候補に対する各駅間の席種別利用者数を推定する席種別利用者数推定ステップと、
    1)前記対象列車の席種別供給座席数と前記席種別利用者数推定ステップで推定された席種別利用者数とから求まる席種別利用率、2)前記席種別利用者数推定ステップで推定された席種別利用者数と前記席種別料金候補とから求まる料金収入、のうちの少なくとも1つを用いて、前記席種別料金候補を評価する評価ステップと、
    を含み、前記対象列車に関する任意数の席種別料金候補を前記候補生成ステップで生成して、前記席種選択確率算出ステップと、前記席種別利用者数推定ステップと、前記評価ステップとを実行し、最良の評価結果となった席種別料金候補を席種別料金として決定して前記対象列車に対する席種別設定計画を作成する席種別設定計画作成方法。
  2. 前記評価ステップは、
    前記席種別利用者数推定ステップで推定された各駅間の席種別利用者数から、前記対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出する隣接停車駅間利用者数算出ステップと、
    前記算出された前記隣接停車駅間それぞれの利用者数と、前記対象列車の席種別供給座席数とを用いて、前記対象列車全体における前記席種別利用率を算出する利用率算出ステップと、
    を含む、
    請求項1に記載の席種別設定計画作成方法。
  3. 前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれにおける席種別供給座席数を設定する供給座席数設定ステップを更に含み、
    前記利用率算出ステップは、前記供給座席数設定ステップで設定された前記隣接停車駅間それぞれの席種別供給座席数を用いて、前記席種別利用率を算出するステップである、
    請求項2に記載の席種別設定計画作成方法。
  4. 前記席種別利用者数推定ステップで推定された各駅間の席種別利用者数から、前記対象列車が停車する隣接停車駅間それぞれの利用者数を算出する隣接停車駅間利用者数算出ステップと、
    前記算出された前記隣接停車駅間それぞれの利用者数を用いて、前記隣接停車駅間それぞれにおける前記席種別供給座席数を可変に設定する席種別供給座席数設定ステップと、
    を更に含む請求項1に記載の席種別設定計画作成方法。
  5. 前記席種別供給座席数設定ステップで設定された席種別供給座席数に基づいて、前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれの席種別の座席割当計画を作成する座席割当計画作成ステップを更に含む請求項3又は4に記載の席種別設定計画作成方法。
  6. 席種別料金の算定対象とする列車である対象列車の各駅間の席種別料金候補を生成する候補生成手段と、
    乗車時間及び席種別料金を用いて旅客が選択する席種の確率をモデル化した席種選択モデルと、前記対象列車の各駅間の乗車時間と、前記席種別料金候補とを用いて、前記席種別料金候補に対する席種選択確率を算出する席種選択確率算出手段と、
    予め定められた前記対象列車の各駅間の利用者需要と、前記席種選択確率算出手段により算出された席種選択確率とを用いて、前記席種別料金候補に対する各駅間の席種別利用者数を推定する席種別利用者数推定手段と、
    1)前記対象列車の席種別供給座席数と前記席種別利用者数推定手段により推定された席種別利用者数とから求まる席種別利用率、2)前記席種別利用者数推定手段により推定された席種別利用者数と前記席種別料金候補とから求まる料金収入、のうちの少なくとも1つを用いて、前記席種別料金候補を評価する評価手段と、
    を備え、前記候補生成手段が前記対象列車に関する任意数の席種別料金候補を生成し、当該各席種別料金候補について前記席種選択確率算出手段、前記席種別利用者数推定手段、前記評価手段が実行し、最良の評価結果となった席種別料金候補を席種別料金として決定して前記対象列車に対する席種別設定計画を作成する席種別設定計画作成システム。
  7. 前記対象列車の隣接停車駅間それぞれの前記席種別供給座席数を設定する席種別供給座席数設定手段と、
    前記席種別供給座席数設定手段により設定された席種別供給座席数に基づいて、前記対象列車の前記隣接停車駅間それぞれの席種別の座席割当計画を作成する座席割当計画作成手段と、
    を更に備えた請求項6に記載の席種別設定計画作成システム。
  8. 請求項7に記載の席種別設定計画作成システムから前記対象列車の席種別料金と前記座席割当計画とを取得する取得手段と、
    旅客又は駅係員によって前記対象列車の切符の購入操作がなされる際に、前記取得手段により取得された席種別料金及び前記座席割当計画を提示する提示手段と、
    を備えた出札窓口システム。
  9. 鉄道車両と通信可能な通信手段と、
    請求項7に記載の席種別設定計画作成システムから前記座席割当計画を取得する取得手段と、
    鉄道車両と当該車両で運用される列車との対応関係を記憶する記憶手段と、
    前記対応関係に基づいて、前記取得手段により取得された座席割当計画に該当する列車を運用する鉄道車両を選択する対応車両選択手段と、
    前記通信手段を制御して、前記対応車両選択手段により選択された鉄道車両に前記座席割当計画を送信する送信手段と、
    を備えた座席割当通知システム。
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