JP2011053491A - 電子写真現像剤用キャリア芯材およびその製造方法、電子写真現像剤用キャリア、並びに電子写真現像剤 - Google Patents

電子写真現像剤用キャリア芯材およびその製造方法、電子写真現像剤用キャリア、並びに電子写真現像剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高い絶縁破壊電圧を有し、当該絶縁破壊電圧に至るまで適正な電気抵抗値を保ち、かつ、高い磁化率を有するキャリア芯材、およびその製造方法、当該キャリア芯材を用いたキャリア、並びに電子写真現像剤を提供する。
【手段】Liを10ppm以上、400ppm以下含有するマグネタイトを含むキャリア芯材、およびその製造方法、当該キャリア芯材を用いたキャリア、並びに電子写真現像剤を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は電子写真現像剤用キャリア芯材およびその製造方法、電子写真現像剤用キャリア、並びに電子写真現像剤に関するものである。
電子写真の乾式現像法は、電子写真現像剤である粉体のトナーを感光体上の静電潜像に付着させ、当該付着したトナーを所定の紙等の媒体へ転写して現像する方法である。この方法は、電子写真現像剤として、トナーのみを含む1成分系現像剤を用いる方法と、トナーと磁性を有する電子写真現像剤用キャリアとを含む2成分系現像剤を用いる方法に大別される。近年では、トナーの荷電制御が容易で安定した高画質を得ることができ、かつ高速現像が可能な2成分系現像剤が電子写真現像剤の主流となっている。
2成分系現像剤を用いた現像方法において、電子写真現像剤用キャリア(本発明において「キャリア」と記載する場合がある。)は現像機内でトナーと撹拌・混合される。このとき、当該トナーは所望の電荷を付与されて帯電する。当該帯電したトナーは、マグネットロール上に形成された磁気ブラシから感光体上へ搬送される。他方、マグネットロール上に残ったキャリアは、再び現像機内に戻り、新たなトナーと撹拌・混合される。このようにして、当該キャリアは一定期間繰り返し使用される。
近年、オフィスのネットワーク化が進むとともに、電子写真現像機のサービス体制が充実し、サービスマンが電子写真現像剤を交換するようなシステムから、メンテナンスフリーの時代へシフトしている。当該電子写真現像機のメンテナンスフリー化に伴い、キャリアの高耐久、長寿命化に対する要求がより一層高まってきている。
さらに、電子写真現像機は、フルカラー化、高画質化、高速化の傾向にある。特に、電子写真現像機の高速化に伴って、現像機内で電子写真現像剤への撹拌負荷が増加し、撹拌ストレスによるキャリアの割れ・欠けが発生する問題が生じている。その結果、当該発生した割れ・欠け粒子が、キャリア付着の原因となり、電子写真の画質劣化を招いている。
上記課題を解決するために、本発明者らは特許文献1において、電子写真現像剤用キャリア芯材(本発明において「キャリア芯材」と記載する場合がある。)にSiOを添加して焼結状態を調整し、当該キャリア粒子の真密度と(BET)比表面積とを制御することで、粒子の機械的強度を著しく向上させたキャリア芯材を提案している。
また、現像剤の高寿命化を目的として、本発明者らは特許文献2において、高機械的強度、かつ、キャリアのコート樹脂膜が劣化しても帯電量低下を起こし難い、高帯電特性を発揮するキャリア芯材を提案している。
また、近年、環境対策等の観点から、キャリアに含有されているMnの使用を控え、環境規制を考慮したキャリアが提案されている。
さらに、特許文献3〜6は、Liフェライトを用いたキャリアを提案している。
特願2009−92321号 特願2009−046243号 特開2008−175883号 特許第3238006号 特許第3429312号 特許第3235937号
しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記従来の技術に係る環境規制に適応したフェライト(マグネタイト、Mgフェライト、Liフェライト、Caフェライト等)において、高磁力、高抵抗を両立するため、酸化処理を施した場合、ヘマタイトをキャリア芯材表面に析出させているので、絶縁破壊電圧の低下を抑制できるものの、電子写真現像の際、キャリア付着を招く。これは、キャリア芯材表面に析出したヘマタイトの為、キャリア芯材の磁化率が低下するため、電子写真現像の際、マグロール上でのキャリアの保持力に対して遠心力が勝る為である。
さらに、上記従来の技術に係るキャリアは、キャリア芯材の電気抵抗値が1×1011Ω・cm以上となり、当該キャリア芯材で構成されるキャリア表面の電荷が動き難くなる為、新たに補給されたトナーへの帯電付与が出来なくなり、電子写真現像の際、かぶりなどによる画質の低下を招くと考えられる。
また、本発明者らの検討によれば、特許文献3〜6に記載のLiフェライトを用いたキャリアは、当該キャリアを構成するキャリア芯材を酸化し、高電気抵抗値のヘマタイトをキャリア芯材粒子表面に析出させることで、キャリア芯材粒子の絶縁破壊電圧の向上と、高電気抵抗値化とを図れることが解った。しかし、当該酸化処理を行った際、酸化の速度が著しく速く、キャリア芯材の磁化率の低下が大きくなり、キャリア付着による画像欠陥が生じることが判明した。
本発明は、上述の状況の下で成されたものであり、高い絶縁破壊電圧を有し、当該絶縁破壊電圧に至るまで適正な電気抵抗値(詳細は後述するが、1×10Ω・cm以上、1×1011Ω・cm以下)を保ち、高い磁化率を有し、かつ、環境規制に適応したキャリア芯材、およびその製造方法、当該キャリア芯材を用いたキャリア、並びに電子写真現像剤を提供することを目的とする。
本発明者等は、環境規制に適応したフェライト(マグネタイト、Mgフェライト、Liフェライト、Caフェライト等)を用い、さらなる画質向上を目的として高磁力、適正な電気抵抗値の両立を達成する為、検討を進めた。
その結果、高磁力を発揮し、環境規制に適応したフェライト(マグネタイト、Mgフェライト、Liフェライト、Caフェライト等)は、絶縁破壊電圧(ブレークダウン電圧)が低いという問題があることを知見した。ところが、当該問題を解決する為、キャリア芯材表面を酸化処理し、高電気抵抗値(高絶縁性)を有するヘマタイトをキャリア芯材表面に析出させると、上述した磁化率の低下を招いてしまう。
そこで、本発明者等は、キャリア芯材最表面にヘマタイト等の酸化皮膜が生成した後でも、さらに酸化が進行してしまうこと。当該過剰な酸化の進行により、キャリア芯材の磁化率の低下が起こり、過剰に高電気抵抗値化したキャリア芯材となってしまうという、キャリア芯材の酸化プロセスとその抑制方法とを研究した。
当該研究の結果、本発明者らは、キャリア芯材の構成元素の原子価制御により、酸化物中の格子欠陥濃度を変え、当該キャリア芯材の酸化速度を制御するという構成に想到した。具体的には、キャリア芯材へ微量のリチウム(Li)を添加することで、キャリア芯材
表面の酸化速度を制御し、磁化率の低下を抑制すると伴に、過剰な高電気抵抗値化を回避できるという、画期的な知見を得て本発明を完成した。
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
Liを10ppm以上、400ppm以下含有するマグネタイトを含む電子写真現像剤用キャリア芯材である。
第2の発明は、
さらに、SiOを0.01wt%以上、4wt%以下含有する第1の発明に記載のマグネタイトを、含む電子写真現像剤用キャリア芯材である。
第3の発明は、
第1または第2の発明のいずれかに記載のマグネタイトの平均粒径(D50)が、10μm以上、100μm以下であることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材である。
第4の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア芯材の表面が、樹脂で被覆されたものであることを特徴とする電子写真現像剤用キャリアである。
第5の発明は、
第4の発明に記載の電子写真現像剤用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤である。
第6の発明は、
所定のマグネタイトを生成する金属鉄またはその酸化物へ、当該マグネタイトに対して10ppm以上、400ppm以下のLiを供給するLi原料を添加し、水を加え混合攪拌して、固形分濃度を75wt%以上のスラリーとし、当該スラリーを噴霧乾燥して、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得る工程と、
当該造粒粉を、900〜1150℃、1〜24時間保持して焼成して焼成物を得、当該焼成物を分級して所望の粒径を持ったキャリア芯材粒子を得る工程と、
当該キャリア芯材粒子を熱処理する工程とを、有することを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法である。
本発明に係るキャリア芯材は、高い絶縁破壊電圧を有し、当該絶縁破壊電圧に至るまで適正な電気抵抗値を保ち、かつ、高い磁化率を保持していた。
キャリア芯材におけるLi含有量と磁化率(σ1000)との関係を示すグラフである。 キャリア芯材におけるLi含有量と電気抵抗値(LogR)との関係を示すグラフである。 キャリア芯材の酸化緩和曲線を示すグラフである。 キャリア芯材におけるLi含有量とコア帯電量との関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、1.電子写真現像剤用キャリア芯材、2.電子写真現像剤用キャリア、3.電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法、4.電子写真現像剤用キャリアの製造方法、5.電子写真現像剤、の順で説明する。
1.電子写真現像剤用キャリア芯材
<組成>
本発明に係るキャリア芯材は、Liを10ppm以上、400ppm以下含有するマグネタイトを含んでいる。
まず、本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイト中のLiおよびその含有量について説明する。
本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイトは、Liを10ppm以上、400ppm以下という極微量のLiを含有することで、マグネタイトの酸化速度が抑制され、目的とする電気抵抗値を得ることができる。
具体的には、キャリア芯材のLi含有量は、10ppm以上、400ppm以下、さらに好ましくは、30ppm以上、280ppm以下である。
Li含有量が10ppm以上、さらに好ましくは、30ppm以上であると、当該Liが、キャリア芯材を構成しているマグネタイトの酸化速度を抑制し、当該キャリア芯材の磁化率の低下を抑制するとともに、電気抵抗値を目的とする範囲内に制御出来る。
一方、Li含有量が400ppm以下、さらに好ましくは、280ppm以下であると、当該Liが、キャリア芯材を構成しているマグネタイトの酸化を促進することがなく、当該キャリア芯材の磁化率の低下を抑制出来る。
さらに、本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイトに、SiOを0.01wt%以上、4wt%以下、さらに好ましくは0.5wt%以上、2wt%以下含有させることで、当該キャリア芯材の機械的強度を上げることが出来、好ましい構成である。
尚、本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイトに、SiOを含有させた場合、当該含有されているSiOは、マグネタイト合成時に、FeとSiO、LiとSiOとが反応し、複合酸化物(例えば、FeSiO、FeSiO、LiSiO等)の形で含有されている場合もある。
また、本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイトにおいてSiO含有量が0.01wt%以上あれば、キャリア芯材製造の際の焼結時において、マグネタイトの異常粒成長を防止出来るからである。これはSiOが、粒子の過剰焼結を抑止する為と考えられる。そして、当該異常粒成長防止によりキャリア芯材粒子における、低機械的強度粒子を減少させることが出来る。この低機械的強度粒子の減少によって、本発明に係るキャリア芯材の機械的強度を高く保つことが出来る。当該観点から、SiO含有量が0.5wt%以上であることがさらに好ましい。
一方、SiO含有量を4wt%以下とすることで、キャリア芯材製造の際の焼結時において、焼結不足を回避することが出来る。そして当該焼結不足回避により、低機械的強度粒子を減少させることができる。
さらに、キャリア芯材粒子内のSiOは、キャリア芯材の帯電量を低下させることから、当該帯電量を確保する観点からは、SiO含有量が2wt%以下であることが好ましい。
<磁気特性>
本発明に係るキャリア芯材は、外部磁場1000Oe下における磁化率:σ1000が、50emu/g以上である。キャリア芯材のσ1000が、50emu/g以上である結果、電子写真現像機内で形成される磁気ブラシの保持力が強くなり、キャリア付着現象が抑制されるためである。
<絶縁破壊電圧・電気抵抗値>
本発明に係るキャリア芯材は、250V以上の絶縁破壊電圧を有している。そして、印
加電圧250Vにおける電気抵抗値は、1×10〜1×1011Ω・cmである。
本発明に係るキャリア芯材において、250V印加時に電気抵抗値が測定できるということは、高い絶縁破壊電圧を有していることを示している。この高い絶縁破壊電圧を有している結果、電子写真現像において、キャリアにバイアス電圧をかけた際、バイアス電流がキャリアに注入することで磁気ブラシが逆帯電して起こる画像欠陥を防ぐことができる。
本発明に係るキャリア芯材において、電気抵抗値が1×10Ω・cm以上あることで、当該キャリア芯材へ樹脂コーティングを施してキャリア化した場合、電気抵抗値の電圧依存性が低くなり、電荷のリークが発生し難くなる。また前述のように、磁気ブラシの逆帯電による画像欠陥を防ぐことができる。
また、電気抵抗値が1×1011Ω・cm以下であることで、現像後のキャリアに電荷が残留することで生じる画像欠陥を防ぐことができる。
<BET比表面積>
本発明に係るキャリア芯材において、BET比表面積が0.005m/g以上、0.35m/g以下であることが好ましい。より好ましくは0.007m/g以上、0.2m/g以下、さらに好ましくは0.01m/g以上、0.1m/g以下である。
BET比表面積が0.005m/g以上であることは、本発明に係るキャリア芯材において、粒子同士の焼結や、過剰焼結によるグレインの粗大化が回避されている為であると考えられる。
一方、BET比表面積が0.35m/g以下であることは、本発明に係るキャリア芯
材を構成するマグネシウムフェライト粒子表面に開口した空孔(オープンポア)が少ない粒子であることの結果であると考えられる。そして、オープンポアが少ない粒子であることにより、当該オープンポアに起因する割れ、欠け粒子の発生を防ぐことが出来、さらに酸化処理工程での磁化の低下を防ぐことができるので好ましい。
<粒度分布>
本発明に係るキャリア芯材は、平均粒径(D50)が10μm以上、100μm以下であることが好ましい。
キャリア芯材の粒径が10μm以上あれば、キャリア粒子ひとつひとつの磁化が確保され、キャリア付着現象が抑制されることから好ましい。また粒径が100μm以下であれば電子写真現像した際に、所望の画質特性が得られ好ましい。
2.電子写真現像剤用キャリア
得られた本発明に係るキャリア芯材を、シリコーン系樹脂、アクリル樹脂等で被覆し、帯電性の付与および耐久性の向上させることで電子写真現像剤用キャリア(本発明において、単に、キャリアと記載する場合がある。)を得ることが出来る。当該シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等の被覆方法は、公知の手法により行うことができる。
<キャリアの機械的強度>
キャリアを構成するキャリア芯材を、後述する破砕試験機に投入して破砕したとき、当該破砕前後において、当該キャリア芯材の22μm以下の破砕片における、当該キャリアの電子写真現像機内での撹拌ストレスによる微粉の発生粒径の累積値(体積)の変化率(以下、微粉増加率と記載する場合がある。)を測定し微粉増加率を求めた。当該微粉増加率が4%以下であれば、電子写真現像100K枚後においても、キャリア付着を殆ど生じず、良好な電子写真画質が得られた。
当該観点から、上述したように、本発明に係るキャリア芯材を構成しているマグネタイトに0.01wt%以上、4wt%以下のSiOを含有させることは好ましい構成である。
<コア帯電量>
本発明に係るキャリアおいて、Li含有量が400ppm以下、より好ましくは280ppm以下であると、当該キャリアを構成するキャリア芯材のコア帯電量が10μC/g以上となり、コーティング後のキャリアの帯電付与能力が高く、樹脂膜の劣化が起きた場合でもキャリアの帯電付与能力は維持され、帯電量の低下による画質劣化を防げるので好ましい。
3.電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法
本発明に係るキャリア芯材の製造方法について、キャリア芯材の原料、造粒工程、焼成工程の順に説明する。
<キャリア芯材の原料>
本発明に係るキャリア芯材を構成する鉄原料は、金属鉄またはその酸化物であればよい。具体的には、常温常圧下で安定に存在するFeやFe、Feなどが好適に用いられる。
キャリア芯材に添加するLi原料は、LiCOやLiOH、LiOH・HOなどが好適に用いられる。
一方、キャリア芯材の強度を上げる手段として、キャリア芯材を構成しているマグネタイトにSiOを添加しても良い。添加するSiO原料は、非晶質シリカ、結晶シリカ、コロイダルシリカなどが好適に用いられる。
また、これら原料を仮焼して粉砕した原料を用いても良い。
これらの原料を、キャリア芯材を構成するマグネタイト粒子の狙いとする組成に合わせて秤量し、混合してスラリー原料とする。
本発明に係るキャリア芯材の製造方法では、還元反応を進める。そこで、上述したスラリー原料へ、さらに還元剤を添加してもよい。当該還元剤としては、カーボン粉末やポリカルボン酸系有機物、ポリアクリル酸系有機物、マレイン酸、酢酸、ポリビニルアルコール系有機物(PVA)、及びそれらの混合物が好適に用いられる。
上述したスラリー原料に水を加え混合攪拌して、固形分濃度を75wt%以上、好ましくは77wt%以上とする。スラリー原料の固形分濃度が75wt%以上であれば、造粒時のペレット内部の空孔が均一になり、高機械的強度のキャリアを得ることができるので好ましい。
<造粒工程>
上記混合攪拌して得られたスラリーの造粒は、噴霧乾燥機を用いて行う。尚、当該スラリーに対し、当該造粒前に、さらに湿式粉砕を施すことも好ましい。
噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃程度とすればよい。これにより、概ね、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得ることができる。得られた造粒粉は製品最終粒径を考慮し、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し、粒度調整することが望ましい。
<焼成工程>
得られた造粒粉を、900〜1150℃程度に加熱した炉に投入し1〜24時間保持して焼成し、目的とする焼成物を生成させる。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下となるよう導入ガスの酸素濃度を調整しフロー状態下で、焼成を行う必要がある。
炉内の酸素濃度が1%以下であれば、造粒粉中の還元剤が有効に作用し、ヘマタイトからマグネタイトへの還元が進み、焼成物の磁力の低下を回避できる。
焼成温度に関しては、先の還元剤の調整によりマグネタイト化に必要な還元雰囲気に到達できる温度に設定する。尤も、工業化時に十分な生産性を確保できる反応速度を得る観点からは、900℃以上の温度が好ましい。一方、当該焼成温度が、1150℃以下であれば、粒子同士の過剰焼結が起こらず、粉体の形態で焼成物を得ることが出来、さらに、焼成中にLiが蒸発し、生成したマグネタイトにおいて組成ずれを生じるのを防ぐことができる。当該観点から、焼成温度は900〜1150℃の範囲にあることが好ましく、さらには、焼成温度は1000〜1100℃の範囲にあることが好ましい。当該温度で焼成することで、工業化時に十分な生産性を確保できる反応速度を得ることができ、また、粒子同士の過剰焼結が起こらず、粉体の形態で焼成物を得ることが出来、十分な機械的強度を持つため良好な形態となる。
得られた焼成物は、この段階で粒度調整をすることが望ましい。例えば、焼成物をハンマーミル等で粗解粒し、振動篩などで分級を行うことにより、所望の粒径を持ったキャリア芯材の粒子を得ることが出来る。
<酸化処理工程>
この段階で得られたキャリア芯材の粒子表面を熱処理(酸化処理)して、粒子の絶縁破壊電圧を250V以上に上げ、電気抵抗値を1×10〜1×1011Ω・cmとする。
具体的には酸素濃度10〜100%の雰囲気下において、200〜700℃で0.1〜24時間保持して、目的とするキャリア芯材を得る。より好ましくは250〜600℃で0.5〜20時間、さらに好ましくは300〜550℃で1時間〜12時間である。
得られたキャリア芯材は、絶縁破壊電圧が1000V以上を示し、250Vにおける電気抵抗値が1×10〜1×1011Ω・cmの範囲にある。さらに、キャリア芯材に上述した所定量のSiOを含有させた場合は、機械的強度が高く、かつ、帯電量が高いという特性を有している。
4.電子写真現像剤用キャリアの製造方法
得られた本発明に係るキャリア芯材をシリコーン系樹脂やアクリル樹脂等で被覆し、帯電性の付与および耐久性の向上させることで電子写真現像剤用キャリアを得ることが出来る。当該シリコーン系樹脂やアクリル樹脂等の被覆方法は、公知の手法により行うことができる。
5.電子写真現像剤
本発明に係る電子写真現像剤用キャリアと、適宜な公知のトナーとを混合することで、本発明に係る電子写真現像剤を得ることが出来る。
本発明に係る電子写真現像剤は、高性能な電子写真現像機やMFP(マルチ・ファンクション・プリンター)において、安定して良好な画質特性を発揮できる上、当該電子写真現像剤交換寿命を延ばすことができる。
以下に、本発明に係る電子写真用現像剤キャリア芯材について、実施例を参照しながら具体的に説明する。
本発明の実施例を説明するにあたり、まず、各物性値の測定方法について記述する。
<Li含有量の分析>
本発明に係るキャリア芯材を酸溶液中で溶解し、ICPにて定量分析を行った。本発明に記載したキャリア芯材のLi含有量は、当該ICPによる定量分析で得られたLi量である。
<SiO含有量の分析>
本発明に係るキャリア芯材のSiO含有量は、JIS M8214−1995記載の
二酸化珪素重量法に準拠して定量分析を行った。本発明に記載したキャリア芯材のSiO含有量は、当該二酸化珪素重量法で定量分析し得られたSiO量である。
<磁気特性の測定>
キャリア芯材の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化率の測定を行った。具体的には、外部磁場1000Oeにおける磁化率σ1000(emu/g)を測定した。
<絶縁破壊電圧・電気抵抗値の測定>
本発明に係るキャリア芯材の絶縁破壊電圧および電気抵抗値の測定について説明する。
キャリア芯材試料を、常温(25℃)常湿(50%)の環境下で1昼夜、調湿した後、測定を行う。
水平に置かれた絶縁板(例えばテフロン(登録商標)でコートされたアクリル板)の上に、電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を、電極間距離が2mmとなるように配置する。この時、2枚の電極板はその法線方向が水平方向となるようにする。2枚の電極板の間の空隙に被測定粉体200±1mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mmの磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させる。この状態で電極間に50V、100V、250V、500V、750V、1000Vの順に直流電圧を印加し、被測定粉体を流れる電流値を4端子法により測定し、電気抵抗値を算出する。
電気抵抗値=実測抵抗値×断面積(2.4cm)÷電極間距離(0.2cm)
その値をもって絶縁破壊電圧を測定する。
そして、絶縁破壊電圧が250V以上であること(電気抵抗値がブレークダウン(B.D.)しないこと。)が確認できたら、250V印加時の電気抵抗値をもって、当該キャリア芯材試料の電気抵抗値とした。
尚、使用する磁石は粉体がブリッジを形成できる限り、種々のものが使用できるが、本実施例では表面磁束密度が1000ガウス以上の永久磁石(フェライト磁石)を使用している。
<比表面積の測定>
本発明に係るキャリア芯材のBET比表面積は、JISZ8830−2001に基づいて測定を行った。
<粒度分布の測定>
本発明に係るキャリア芯材の粒度分布は、マイクロトラック(日機装株式会社製、Model:9320−X100)を用いて測定した。得られた粒度分布より、体積率50%までの積算粒径(本発明においてD50と記載する場合がある。)を算出した。尚、本発明においては、当該D50の値を芯材の平均粒径として記述した。
<キャリア機械的強度の測定>
本発明に係るキャリア30gをサンプルミル(協立理工株式会社SK―M10型)に投入し、回転数14000rpmで60秒間破砕試験を行ってキャリア機械的強度の測定を行った。
そして、当該破砕前と破砕後との、22μm以下の破砕片における累積値(体積)の変化率を微粉増加率として、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製マイクロトラック、Model 9320−X100)により測定した。
<コア帯電量の測定>
本発明に係るキャリア芯材9.5g、市販のフルカラー機のトナー0.5gを100mlの栓付きガラス瓶に入れ、25℃、50%の環境下で12時間放置して調湿する。調湿
したキャリア芯材とトナーを振とう機((株)ヤヨイ製、NEW−YS型、条件;200回/分、角度60°)で30分間、振とう、混合する。混合したキャリア芯材とトナーを200mg計量し、測定装置(日本パイオテク(株)製、STC−1−C1型、条件;吸引圧力5.0kPa、吸引用メッシュ500meshのSUS網)で帯電量を評価する。同一のサンプルを2回評価し、その帯電量の平均値をコア帯電量とした。
<初期画像評価>
本発明に係るキャリア芯材へ樹脂コーティングを施した、本発明に係るキャリア92重量%に対しトナー8重量部を混合して電子写真現像剤とする。当該電子写真現像剤に対し、20cpm機をベースにした現像域で交流バイアスを印加するデジタル反転現像方式の評価機を用いて、その初期画像の評価を行った。尚、評価項目および評価指標は次のとおりである。
〔画像濃度〕:上記評価機による初期画像3枚(5ポイント/枚)の平均に対し、次の三段階ランク付けを行った。
○:それぞれの測定値が平均値から大きくズレておらず均一で良好
△:画像濃度として,許容範囲内(使用可能)
×:ベタ領域内でムラがあり、濃度的にも許容範囲外
〔かぶり濃度〕:上記評価機による初期画像現像(白紙)を実施し、感光体(ドラム)上のかぶりをセロテーブ(登録商標)により剥がしとり、当該かぶり濃度を濃度計にて数値化して、次の三段階のランク付けを行った。
○:かぶり濃度が見られない
△:かぶり濃度がわずかで許容範囲内(使用可能)
×:かぶり濃度が高くて使用できない
〔キャリア飛び〕:かぶり濃度と同様に、初期画像現像時の感光体(ドラム)上のキャリア付着をセロテープ(登録商標)によって剥がし取り、当該キャリア飛びを単位面積当たりの個数に数値化して、次の三段階ランク付けを行った。
○:キャリア飛びが全く見られない
△:わずかにキャリア飛びが見られるが許容範囲内(使用可能)
×:キャリア飛びがあり、使用できない
〔ベタ画像、領域内のホワイトスポット〕:上記初期画像現像終了後に、A4全面ベタ画像をトナー無補給で連続5枚コピーし、キャリアから感光体(ドラム)への電荷リークによる白抜け(ホワイトスポット)の発生状況を数値化し、次の三段階ランク付けを行った。
○:白抜けが全く見られない
△:わずかな白抜けが見られるが許容範囲内(使用可能)
×:白抜けが見られ,使用できない
〔画質〕:初期画像の階調画像、ベタ黒部周辺・細線画像等について、目視により画像再現性を確認し、次の三段階ランク付けを行った。
○:画質が極めて良好
△:画質が良好(使用可能)
×:画質が良好ではなく使用できない
(実施例1)
Fe(平均粒径:0.6μm)と、LiCOとを、モル比でLi:Fe=1:5になるように秤量し混合した。
当該混合物を、大気下で700℃、3時間仮焼し仮焼物を得た。
当該仮焼物を振動ミルを用い体積平均粒径で1.5μmに粉砕し、仮焼原料を得た。
純水2.8kg中に分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を100g、還元剤としてカーボンブラックを100g、SiO原料としてコロイダルシリカ(固形分濃度50%)を133g添加し、当該仮焼原料0.05kgとFe(平均粒径:0
.6μm)10kgとを添加してスラリーとした。当該スラリーの固形分濃度を測定した結果、79wt%であった。
当該混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により、1PASS粉砕処理して混合スラリーを得た。
当該混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒粉を得た。このとき、粒径が100μmを超えるような造粒粉は、篩により除去した。
当該造粒粉を、酸素濃度が0.05%となるよう調整した雰囲気をフローした電気炉内に設置し、1050℃で3時間焼成し焼成物を得た。
得られた焼成物を解粒した後に篩を用いて分級し、平均粒径35μmの粒子を得た。
得られた粒子に、大気中で550℃、2時間の熱処理(酸化処理)を行い、実施例1に係るキャリア芯材を得た。
得られた実施例1に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
実施例1に係るキャリア芯材の微粉増加率は1.0%、コア帯電量は12.0μC/g
、250Vにおける電気抵抗値は1×109.6Ω・cmであった。当該測定結果から、実施例1に係るキャリア芯材は、高機械的強度、高帯電量、最適な電気抵抗値であることが判明した。
次に、シリコーン系樹脂(商品名:KR251、信越化学製)をトルエンに溶解させてコーティング樹脂溶液を準備した。
実施例1に係るキャリア芯材と、当該樹脂溶液とを、それぞれ重量比でキャリア芯材:樹脂溶液=9:1の割合にて撹拌機に装填した。そして、キャリア芯材を樹脂溶液に浸漬しながら150℃〜250℃にて3時間加熱撹拌した。
当該撹拌により、シリコーン系樹脂が、実施例1に係るキャリア芯材重量に対し1.0wt%の割合でコーティングされた。この樹脂被覆されたキャリア芯材を熱風循環式加熱装置に設置し250℃で5時間加熱を行い、当該被覆樹脂層を硬化させて、実施例1に係る磁性キャリアを得た。
実施例1に係るキャリアと、一般的なフルカラー複写機のトナー(シアン)とを、V型混合機で混合し、実施例1に係る電子写真現像剤を得た。
得られた実施例1に係る電子写真現像剤を用いて、初期画像評価を行った。
実施例1に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1にて説明した仮焼原料の添加量を0.1kgとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2に係るキャリア芯材を得た。
得られた実施例2に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を、表1に示す。
実施例2に係るキャリア芯材の微粉増加率は0.4%、コア帯電量は11.6μC/gであり、250Vにおける電気抵抗値は、1×109.4Ω・cmであり、高機械的強度、高帯電量、最適な電気抵抗値を有していることが判明した。
実施例2に係るキャリア芯材へ実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係るキャリアおよび実施例2に係る電子写真現像剤を得た。
得られた実施例2に係る電子写真現像剤を用いて、実施例1と同様に初期画像評価を行った。
実施例2に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1にて説明した仮焼原料の添加量を0.25kgとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例3に係るキャリア芯材を得た。
得られた実施例3に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を、表1に示す。
実施例3に係るキャリア芯材の微粉増加率は2.2%、コア帯電量は10.3μC/gであり、250Vにおける電気抵抗値は、1×109.4Ω・cmであり、高機械的強度、高帯電量、最適な電気抵抗値を有していることが判明した。
実施例3に係るキャリア芯材へ実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係るキャリアおよび実施例3に係る電子写真現像剤を得た。
得られた実施例3に係る電子写真現像剤を用いて、実施例1と同様に初期画像評価を行った。
実施例3に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1にて説明した仮焼原料の添加量を行わない以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1に係るキャリア芯材を得た。
得られた比較例1に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を、表1に示す。
比較例1に係るキャリア芯材の微粉増加率は2.0%、コア帯電量は11.8μC/gであり、250Vにおける電気抵抗値は、1×1011.1Ω・cmであった。即ち、電気抵抗値が高く、機械的強度・帯電量と、電気抵抗値とのバランスがとれていないことが判明した。
比較例1に係るキャリア芯材へ実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係るキャリアおよび比較例1に係る電子写真現像剤を得た。
得られた比較例1に係る電子写真現像剤を用いて、実施例1と同様に初期画像評価を行った。
比較例1に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
表1より、比較例1に係る電子写真現像剤の場合、キャリア飛びが発生しており、さらに、電気抵抗値が高いことによる画質上の劣化が観察された。当該キャリア飛びは、キャリア芯材の酸化速度が速いことによる粒子間ばらつきに起因すると考えられる。
(比較例2)
実施例1にて説明した仮焼原料の添加量を0.5kgとし、得られた粒子に、大気中で480℃、2時間の熱処理(酸化処理)を行った以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例2に係るキャリア芯材を得た。
得られた比較例2に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を、
表1に示す。
比較例1に係るキャリア芯材の微粉増加率は3.3%、コア帯電量は8.2μC/gであり、250Vにおける電気抵抗値は、1×109.0Ω・cmであった。即ち、帯電量が低く、機械的強度・電気抵抗値と、帯電量とのバランスがとれていないことが判明した。
比較例2に係るキャリア芯材へ実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係るキャリアおよび比較例2に係る電子写真現像剤を得た。
得られた比較例2に係る電子写真現像剤を用いて、実施例1と同様に初期画像評価を行った。
比較例2に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
表1より、比較例2に係る電子写真現像剤の場合、電気抵抗値は適正な範囲内にあるが、酸化後の磁化の低下が著しい。初期画像評価においてキャリア飛びが発生しており、さらに、その他の評価項目においても画質上の劣化が観察された。
(比較例3)
実施例1にて説明した仮焼原料の添加量を1.0kgとし、得られた粒子に、大気中で480℃、2時間の熱処理(酸化処理)を行った以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例3に係るキャリア芯材を得た。
得られた比較例3に係るキャリア芯材の物質的特性、磁気的特性および電気的特性を、表1に示す。
比較例3に係るキャリア芯材の微粉増加率は2.3%、コア帯電量は5.0μC/gであり、250Vにおける電気抵抗値は、1×107.9Ω・cmであった。即ち、帯電量が低く、機械的強度・電気抵抗値と、帯電量とのバランスがとれていないことが判明した。
比較例3に係るキャリア芯材へ実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係るキャリアおよび比較例3に係る電子写真現像剤を得た。
得られた比較例2に係る電子写真現像剤を用いて、実施例1と同様に初期画像評価を行った。
比較例3に係るキャリア芯材、キャリアおよび電子写真現像剤の評価結果を表1に示す。
表1より、比較例3に係る電子写真現像剤の場合、電気抵抗値は適正な範囲内より、わずかに低いが、ほぼ満足できるレベルにある。しかし、酸化後の磁化の低下が著しく、初期画像評価としてキャリア飛びが発生しており、さらに、その他の評価項目においても画質上の劣化が観察された。
(実施例1〜3および比較例1〜3のまとめ)
図1は、実施例・比較例に係るキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)を縦軸に、Li含有量を横軸にとったグラフである。
そして、実施例1〜3に係るキャリア芯材試料の酸化処理前におけるキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)を●でプロットし、酸化処理後におけるキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)を○でプロットし、比較例1〜3に係るキャリア芯材試料の酸化処理前におけるキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)を▲でプロットし、酸化処理後におけるキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)を△でプロットした。
図1より、実施例1〜3に係るキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)は、酸化処理の前後において値の低下が小さいことが判明した。そして磁化率(σ1000)の値は、いずれも60emu/g以上であった。
これに対し、Li未添加である比較例1とLi含有量の高い比較例2、3に係るキャリア芯材試料の磁化率(σ1000)は、酸化処理の前後において値の低下が大きいことが判明した。
当該結果より、キャリア芯材試料中の含有率は400ppm以下が好ましいことが判明した。
図2は、実施例・比較例に係るキャリア芯材試料の250V印加時の電気抵抗値の対数値(LogR)を縦軸に、Li含有量を横軸にとったグラフである。
そして、実施例1〜3に係るキャリア芯材試料の電気抵抗値の対数値を●でプロットし、比較例1〜3に係るキャリア芯材試料の電気抵抗値の対数値を▲でプロットした。
図2より、実施例1〜3、比較例2に係るキャリア芯材試料の250V印加時の電気抵抗値は、1×10〜1×1010Ω・cmであり、最適な電気抵抗値であることが分かる。
これに対し、Liを添加していない比較例1に係るキャリア芯材試料は、電気抵抗値は1×1011Ω・cmと高く、最適な電気抵抗値でないことが分かる。また、Li含有量の高い比較例3に係るキャリア芯材試料は、電気抵抗値が1×107.9(Ω・cm)と低く、最適な電気抵抗値でないことが分かる。
当該結果より、キャリア芯材試料中のLi含有量は10ppm以上、400ppm以下が好ましいことが判明した。
図3は、実施例・比較例に係るキャリア芯材試料を、480℃のairフロー(200ml/min)空気雰囲気中に置いた場合における酸化緩和曲線を示したグラフである。縦軸にはキャリア芯材試料の重量増加率(以下、「TG」と記載する場合がある。)をとり、横軸には時間をとり、実施例1は実線、実施例2は短波線、実施例3は中破線でプロットし、比較例1は1点鎖線、比較例2は長破線、比較例3は2点鎖線でプロットしたものである。
図3より、Li含有量が10ppm以上、400ppm以下である実施例1〜3に係るキャリア芯材試料は、Liを添加していない比較例1係るキャリア芯材試料に比べて、TG曲線の傾きが小さく、酸化速度が抑制されていることが分かった。また、Li含有量が400ppmを超える比較例2、3に係るキャリア芯材試料はTG曲線の傾きが大きく、酸化が促進されていることが判明した。
以上の結果から、キャリア芯材試料のLi含有量が10ppm以上、400ppm以下であることによりキャリア芯材試料の酸化速度が制御されて、磁化率の低下が抑制され、かつ、電気抵抗値が目的の範囲に制御できたものと考えられる。
図4は、実施例・比較例に係るコア帯電量を縦軸に、Li含有量を横軸にとったグラフである。
そして、実施例1〜3に係るキャリア芯材試料のコア帯電量を●でプロットし、比較例1〜3に係るキャリア芯材試料のコア帯電量を▲でプロットした。
図4より、コア帯電量はLi含有量の増加により低下する。因みに、Li含有量が400ppmを超える比較例2、3に係るキャリア芯材試料では、コア帯電量が10μC/g以下であって、十分な帯電量を保持していないことが判明した。
表1に示した、キャリア芯材、キャリア、および電子写真現像剤の特性および評価結果より、実施例1〜3に係る電子写真現像剤は、初期画像評価として十分満足できるレベルにある。しかし、比較例1〜3に係る電子写真現像剤は、前述のように初期画像評価項目
のいずれかにおいて画質上の劣化が観察された。
当該評価結果より、高性能な電子写真現像機やMFP(マルチ・ファンクション・プリンター)において、当該キャリアを含む本発明に係る電子写真現像剤を用いることで、安定して良好な画質特性を発揮できる上、当該電子写真現像剤交換寿命を延ばすことができると考えられる。
Figure 2011053491

Claims (6)

  1. Liを10ppm以上、400ppm以下含有するマグネタイトを含む電子写真現像剤用キャリア芯材。
  2. さらに、SiOを0.01wt%以上、4wt%以下含有する請求項1に記載のマグネタイトを含む電子写真現像剤用キャリア芯材。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載のマグネタイトの平均粒径(D50)が、10μm以上、100μm以下であることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の電子写真現像剤用キャリア芯材の表面が、樹脂で被覆されたものであることを特徴とする電子写真現像剤用キャリア。
  5. 請求項4に記載の電子写真現像剤用キャリアと、トナーとを含むことを特徴とする電子写真現像剤。
  6. 所定のマグネタイトを生成する金属鉄またはその酸化物へ、当該マグネタイトに対して10ppm以上、400ppm以下のLiを供給するLi原料を添加し、水を加え混合攪拌して、固形分濃度を75wt%以上のスラリーとし、当該スラリーを噴霧乾燥して、粒子径が10〜200μmの造粒粉を得る工程と、
    当該造粒粉を、900〜1150℃、1〜24時間保持して焼成して焼成物を得、当該焼成物を分級して所望の粒径を持ったキャリア芯材粒子を得る工程と、
    当該キャリア芯材粒子を熱処理する工程とを、有することを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法。
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