JP2011052162A - インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラスチック等の非吸収性基材への記録適性(密着性、耐折り曲げ性)を有すると共に、コックリングが抑制され、インク組成物の安定性、吐出性(吐出停止後の吐出回復性を含む)及び耐水性に優れたインクジェットインク組成物を提供すること。
【解決手段】(成分A)式(1)で表されるアゾ顔料、(成分B)式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤、及び、(成分C)(成分B)以外の有機溶剤、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物。
Figure 2011052162

【選択図】なし

Description

本発明は、溶剤型のインクジェットインク組成物、インクジェット記録方法及び印刷物に関する。
インクジェット記録方式は、圧力、熱、電界などを駆動源として液状のインク組成物をノズルから被記録媒体に向けて吐出させ、記録する記録方式である。このようなインクジェット記録方式は、ランニングコストが低く、高画質化が可能であるために、近年、オフィス用のみならず民生用としても急速に普及している。
インクジェット記録用のインク組成物としては、水溶性染料を水性媒体に溶解した水性染料インクが、着色力に優れる又はヘッドオリフィスでの目詰まりが少ない等の理由により広く使用されている。
一方、近年では、A−0サイズにも対応できる大型のインクジェットプリンターが開発され、屋外用ポスターなどの屋外用途での使用形態が増大している。また、デジタルカメラの普及により、印刷物の長期間の保存が必要となる用途も増加している。
顔料インクの中でも、水を溶媒とした水性顔料インクは、安全性、取り扱い易さの点から、コンシューマー向けインクジェットプリンター用途を中心として、近年広く用いられるようになってきた。その中でも、インクジェット記録用の水性顔料インクでは、イエロー顔料として例えばC.I.ピグメントイエロー74等のアゾ系顔料が色相の観点で好ましいとして使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、水性顔料インクを用いた場合、普通紙に記録した際にコックリング(紙が波打つ現象)が起こる。また、水性インク用に販売されている被記録媒体は、耐水性に欠けるものが多い。
これに対し、溶媒に有機溶剤を用いた溶剤顔料インクを用いた場合には、普通紙、マット紙などを用いてもコックリングを起こすことなく記録が行え、また、塩化ビニル樹脂製のフィルムなどの幅広い被記録媒体に記録が可能である。さらに、有機溶剤を用いた溶剤顔料インクは、水性インクに比べて、記録物の耐水性に優れている。
従来の溶剤顔料インクでは、有機溶剤として、一般に、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサンや灯油等の脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、あるいはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が使用されている。
溶剤顔料インクの例として、顔料と分散媒体としてオレイルアルコールとを用いたジェットプリンタ用溶剤系顔料インク(例えば、特許文献2参照)や、顔料と分散媒体としてノルマルパラフィン類、イソパラフィン類又はそれらの混合物を溶媒とした溶剤系のインクジェットインク(例えば、特許文献3参照)などが開示されており、脂肪族炭化水素や脂肪族炭化水素と長鎖アルコールの混合溶媒において、溶剤顔料インクの主溶媒として炭化水素の分子量が大きいものを用いたものが開示されている。
特開2000−239594号公報 特開2000−38533号公報 特開2001−329193号公報
しかしながら、脂肪族炭化水素やケトン類、エステル類など一般に使用されている有機溶剤を用いた上記従来の溶剤顔料インクを使用して記録する場合、被記録媒体としてポリ塩化ビニル基材等の被吸収性基材を用いると、画像品質、画像部の乾操性の点で満足できるものではない。従来のイエロー顔料は、分散させた際の分散性やその後の安定性が悪く、安定したインク性能や吐出性、吐出終了後の再吐出性(吐出回復性)が得られにくく、ポリ塩化ビニル等の非吸収性プラスチック基材に記録した際にはインクの密着性が悪い。
溶剤顔料インクの主溶剤として炭化水素の分子量が大きい溶剤を用いた特許文献2〜3の顔料インクでは、引火点が高く危険性が下がり、コックリングをある程度少なくし得ると考えられるが、記録物の密着性が不十分でインクが擦れやすい。
一般に、有機溶剤の沸点や引火点が低いと、乾燥が速いためにノズルは詰まりやすくなる。また、溶剤は、インク保存容器やプリンタなどの装置や部品に使用されているプラスチック(例えばポリスチレン樹脂やABS樹脂等)に対する溶解・膨潤性の点から、プリンタ仕様にコストがかからない溶剤を選択することが望まれる。これらのことから、溶媒に有機溶剤を用いた場合にも、引火などの危険性や排気設備の設置などの取り扱いが配慮されれば、有機溶剤を用いた溶剤顔料インクは記録用材料として有用である。
本発明が解決しようとする課題は、上記の事情に照らし成されたものであり、プラスチック等の非吸収性基材への記録適性(密着性、耐折り曲げ性)を有すると共に、コックリングが抑制され、インク組成物の安定性、吐出性(吐出停止後の吐出回復性を含む)及び耐水性に優れた印刷物が得られるインクジェットインク組成物を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の手段によって達成された。
<1>(成分A)式(1)で表されるアゾ顔料、(成分B)式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤、及び、(成分C)(成分B)以外の有機溶剤、を含有することを特徴とするインクジェットインク組成物、
Figure 2011052162
(式(1)中、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、G1及びG2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
Figure 2011052162
(式(2)及び式(3)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立に、−NR6−又は酸素原子を表し、R3、R5は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表し、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。)
<2>式(1)中のW1及びW2が、それぞれ独立に、炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基又は炭素数3以下のアルキルアミノ基である、<1>に記載のインクジェットインク組成物、
<3>式(1)中のG1及びG2が、それぞれ独立に、炭素数3以下のアルキル基である、<1>又は<2>に記載のインクジェットインク組成物、
<4>式(1)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<5>(成分B)がカーボネート化合物である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<6>(成分B)がエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートである、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<7>(成分C)が、グリコールエーテル類である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<8>さらに、(成分D)高分子分散剤及び/又は、(成分E)結着樹脂を含む、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物、
<9>被記録媒体上に、<1>〜<8>のいずれか1つに記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインクジェットインク組成物に熱を加え、前記インクジェットインク組成物を定着する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<10><9>に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする印刷物。
本発明によれば、プラスチック等の非吸収性基材への記録適性(密着性、耐折り曲げ性)を有すると共に、コックリングが抑制され、インク組成物の安定性、吐出性(吐出停止後の吐出回復性を含む)及び耐水性に優れた印刷物が得られるインクジェットインク組成物を提供することができる。
I.インクジェットインク組成物
本発明のインクジェットインク組成物は、(成分A)式(1)で表されるアゾ顔料、(成分B)式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤、及び、(成分C)(成分B)以外の有機溶剤、を含有することを特徴とする。本発明のインク組成物は、有機溶媒を必須成分として含有する、「溶剤型インクジェットインク組成物」である。
Figure 2011052162
(式(1)中、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、G1及びG2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
Figure 2011052162
(式(2)及び式(3)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立に、−NR6−又は酸素原子を表し、R3、R5は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表し、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。)
以下、本発明のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)について詳細に説明する。
本発明者等は、溶剤型のインクジェットインク組成物に、アゾ基が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に分子内水素結合を形成可能なカルボニル基を有するアゾ顔料を適用すると、該インク組成物を長期間保存後又は高温に曝した後であっても、吐出安定性に優れ、その結果、濃度ムラ及び筋ムラの発生を抑制し得ることを見出し、本発明を完成させた。以下、(成分A)、(成分B)及び(成分C)について、順に説明する。
(成分A)式(1)で表されるアゾ顔料
本発明に用いられるアゾ顔料は、代表的には式(1)で表すことができる。また、(成分A)のアゾ顔料は式(1)で表される構造である他に、その互変異性体であってもよく、また、それらの塩や水和物でもよい。
式(1)で表される化合物は、その特異的な化学構造により分子間相互作用を及ぼしやすく、水又は有機溶媒等に対する溶解性が低いアゾ顔料とすることができる。ここで、顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体を形成する固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
Figure 2011052162
(式(1)中、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、G1及びG2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
式(1)において、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、それらはさらに縮環していてもよい。好ましい含窒素ヘテロ環としては、置換位置を限定せずに例示すると、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環が挙げられる。より好ましくは、6員含窒素ヘテロ環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環に由来する2価の基である。Zが6員含窒素ヘテロ環に由来する2価の基であることが、色素分子の分子内及び分子間の相互作用が、水素結合性及び分子の平面性の点から、向上しやすい点で好ましい。
式(1)において、Y1及びY2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基であり、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基中のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。)、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
1及びY2は、好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば、2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、特に好ましくは水素原子である。なお、Y1及びY2は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R11及びR12が、1価の置換基を表す場合、その例としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基(例えば、ベンジル)、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基(例えば、ビニル)、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基(例えば、エチニル)、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル)、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。
式(1)において、好ましいR11及びR12は、置換若しくは無置換の炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜18のアリール基又は置換若しくは無置換の炭素数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、イソプロピル基又はt−ブチル基であり、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。なお、R11及びR12は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)におけるG1及びG2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基であり、その中でも、メチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基又は2,5−ピラジニル基が特に好ましい。
また、G1及びG2がアルキル基を表す場合、炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。なお、G1及びG2は同一であっても異なっていてもよい。
式(1)において、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。W1及びW2で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が好ましく挙げられる。
1及びW2で表されるアミノ基としては、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
1及びW2で表されるアルキル基としては、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基が挙げられ、このアルキル基は、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5〜30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
1及びW2で表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
その中でも好ましいW1及びW2は、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアルキル基であり、より好ましくはアルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、炭素数5以下のアルキルアミノ基、炭素数10以下のジアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、炭素数3以下のアルコキシ基、炭素数3以下のアルキルアミノ基又は炭素数6以下のジアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基が最も好ましい。
1及びW2が、炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基又は炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内及び分子間で相互作用を強固に形成しやすくなり、より安定な分子配列の顔料を構成しやすくなることで、良好な色相、高い堅牢性(耐光・ガス・熱・水・薬品)の点で好ましい。なお、W1及びW2は、同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、Z、Y1、Y2、R11、R12、G1、G2、W1及びW2が、さらに置換基を有し得る基である場合、導入し得る置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
本発明におけるアゾ顔料は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含む。式(1)は、化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。例えば、式(1)で表されるアゾ顔料には、式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。本発明は、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の式(1’)で表される化合物もその範囲に含む。
Figure 2011052162
式(1’)中、R11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2及びZは、式(1)中のR11、R12、W1、W2、Y1、Y2、G1、G2及びZとそれぞれ同義である。
なお、前記式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明の式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)を含むものである。
(イ)W1、W2は、それぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、−NH2基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)又はアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でも、アルコキシ基、アミノ基又はアルキル基が好ましく、より好ましくはアルコキシ基、アミノ基であり、さらに好ましくは、炭素数5以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基(−NH2基)、炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH3基)が最も好ましい。
(ロ)R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基(例えば、置換若しくは無置換の炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜18のアリール基又は置換若しくは無置換の炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、炭素数1〜8の直鎖アルキル基又は分岐アルキル基がより好ましく、メチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基がさらに好ましい。その中でも特にtert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環基に由来する2価の基を表し、それらはさらに縮環していてもよい。Zにおける含窒素ヘテロ環としては、5又は6員の置換若しくは無置換の含窒素ヘテロ環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環が好ましく、炭素数3〜10の6員含窒素ヘテロ環基がより好ましく、ピリジン環、ピリミジン環、S−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環がさらに好ましく、ピリミジン環、S−トリアジン環が特に好ましい。その中でも、ピリミジン環が最も好ましい。
(ニ)G1、G2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、中でも、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基がより好ましい。その中でも、メチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基がさらに好ましい。また、G1、G2で表されるアルキル基としては、炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
(ホ)Y1、Y2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であることが好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であることがより好ましい。その中でも、水素原子が最も好ましい。
本発明における上記式(1)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは式(1−2)で表されるアゾ顔料である。
Figure 2011052162
上記式(1−2)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1及びY2は、上記式(1)中のG1、G2、R11、R12、W1、W2、Y1及びY2と、それぞれ同義である。また、式(1−2)における点線の結合は、水素結合が可能な箇所を表す。
11、X12は、それぞれ独立に、上記式(1)中のZで表される含窒素ヘテロ環化合物に由来する2価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
本発明において、上記式(1)で表されるアゾ顔料においては多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合又は分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における式(1)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、且つ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
式(1)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の式の例としては、上記式(1−2)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。この構造が好ましい要因としては、式(1−2)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子及びヘテロ原子(アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成することが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記式(1−2)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子及びヘテロ原子(例えば、アゾ基又はその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子又はアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し、且つ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成することが挙げられる。その結果、分子の平面性が上がり、さらに分子内・分子間相互作用が向上し、例えば式(1−2)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性及び又は耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
また、本発明におけるアゾ顔料においては、式(1)で表される化合物中に同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N)を含有していてもよい。
以下に、前記式(1)で表されるアゾ顔料の具体例として、Pig.−1〜Pig.−46を示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取り得る数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されているが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであってもよいことはいうまでもない。
Figure 2011052162
Figure 2011052162
Figure 2011052162
Figure 2011052162
本発明において、(成分A)として、Pig.−1又はPig.−18を好ましく使用することができる。
本発明における式(1)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が式(1)で表されるもの又はその互変異性体であればよく、その結晶形態についても特に制限はない。例えば、多形(結晶多形)とも呼ばれるいかなる結晶形態の顔料であってもよい。
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子又はイオン)の配置が異なる結晶のことをいう。結晶多形においては、その結晶構造によって化学的及び物理的性質が決定され、各結晶多形は、レオロジー、色相及び他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる結晶多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
本発明における式(1)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70%〜100%、好ましくは80%〜100%、より好ましくは90%〜100%、さらに好ましくは95%〜100、特に好ましくは100%である。
単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性及び耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料が酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基若しくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
さらに、本発明で使用するアゾ顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数含まれる場合は、その複数の酸基は、それぞれ独立に塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
本発明において、前記式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であってもよく、また結晶中に含まれる水分子の数にも特に制限はない。
次に、上記式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。
式(1)で表されるアゾ顔料は、例えば、式(A)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行うことで、製造することができる。
Figure 2011052162
式(A)及び(B)中、Wは式(1)におけるW1及びW2と同義であり、Gは式(1)におけるG1及びG2と同義であり、R11、R12及びZは式(1)におけるR11、R12及びZとそれぞれ同義である。
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。また、上記式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号パンフレットや特開2006−57076号公報に記載の方法及びそれに準じた方法で製造することができる。
上記式(A)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(B)で表される化合物とを、好ましくは40℃以下、より好ましくは25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出している場合もあるが、一般的には、反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
上記の製造方法によって、上記式(1)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明のインクジェットインク組成物に顔料として用いる場合、この粗アゾ顔料(クルード)に対して後処理を行うことが好ましい。
この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
式(1)で表されるアゾ顔料は、後処理として溶媒加熱処理及び/又は、ソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機又は有機の酸又は塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20重量倍とするのが好ましく、5〜15重量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用できるが、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
このような有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5重量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
本発明において、式(1)で表されるアゾ顔料粒子の平均粒径は、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.45μm、さらに好ましくは0.015〜0.4μmとなるよう、顔料、分散剤、媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。
本発明のインク組成物は、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体並びにそれらの塩及び水和物の少なくとも1種を含んでいればよく、これらの中から2種以上を併用してもよい。また、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体並びにそれらの塩及び水和物の含有量は、インク組成物の全量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、1〜7重量%がより好ましく、2〜5重量%がさらに好ましい。式(1)で表されるアゾ顔料の含有量がこの範囲であれば、所望のイエローの色相が得られ、且つ、吐出安定性にも優れることとなる。
なお、本発明のインク組成物には、式(1)で表されるアゾ顔料に加え、下記の顔料を併用することができる。併用可能な顔料の例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、14C、16、17、24、34、35、37、42、53、55、65、73、74、75、81、83、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、128、129、138、150、151、153、154、155、180を挙げることができる。
このように、式(1)で表されるアゾ顔料とその他の顔料を併用する場合、式(1)で表されるアゾ顔料の含有量は、顔料全体に対して20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。
(成分B)式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤
本発明のインク組成物は、式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤
を含有する。
Figure 2011052162
(式(2)及び式(3)中、R1、R2及びR4は、それぞれ独立に、−NR6−又は酸素原子を表し、R3、R5は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表し、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。)
式(2)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、−NR6−又は酸素原子を表し、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。R6は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は水素原子であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であることがより好ましい。R1及びR2のうち、少なくとも1つは酸素原子であることが好ましく、両方とも酸素原子である、すなわち、式(2)で表される有機溶媒がカーボネート化合物であることがより好ましい。
式(2)中、R3は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表す。R3におけるmは、2〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。R3におけるnは、(2m−2)又は2mであることが好ましく、2mであることがより好ましい。
また、R3として具体的には、エチレン基、1−メチルエチレン基及びプロピレン基などが好ましく例示できる。中でもエチレン基又は1−メチルエチレン基が特に好ましい。
式(3)中、R4は−NR6−又は酸素原子を表し、−NR6−であることがより好ましい。R6は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又は水素原子であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であることがより好ましい。
式(3)中、R5は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表す。R5におけるmは、2〜6の整数であることが好ましく、2〜4の整数であることがより好ましく、2又は3であることがさらに好ましい。R5におけるnは、(2m−2)又は2mであることが好ましく、2mであることがより好ましい。
本発明において、式(2)で表される有機溶媒の方が、式(3)で表される有機溶媒よりも好ましく使用できる。
また、本発明のインク組成物は、式(2)で表される有機溶媒を少なくとも含有することが好ましく、式(2)で表されるカーボネート化合物を少なくとも含有することがより好ましい。
本発明のインクジェットインク組成物は、有機溶剤として、少なくとも1種の環状ウレア化合物、オキサゾリジノン化合物(例えば、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、3−プロピル−2−オキサゾリジノン等)、環状カーボネート化合物を含有することが好ましく、環状カーボネート化合物を含有することがより好ましく、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートを含有することが特により好ましい。これらの有機溶媒を主成分とすることにより、環状ラクトンやグリコール類などと比べて、より低分子量で、且つ高沸点の溶剤を含有するインク組成物を作ることができる。
インク組成物に用いる有機溶剤は、環境上は高沸点であることが望まれるが、定着性を考慮すると浸透性に優れる低分子量化合物が望ましい。一方、水を少なくし、高沸点溶剤を主成分とすることで、水を主成分とするインクに比べて、より疎水的な被記録媒体に対しての親和性を上げることが可能となる。紙媒体には、オフセットインクのような油を主成分とするインクに対して適性を持たせた紙から、インクジェット記録用の水性インク専用の媒体まで種々の被記録媒体がある。水性インクで、オフセット印刷に使われるような紙に印字するとインクがはじかれ、ムラが発生してしまう。一方、高分子量で高沸点の溶媒にすると紙への浸透が緩慢になり、定着性が劣る結果になる。
(成分C)(成分B)以外の有機溶剤
本発明のインクジェットインク組成物は、(成分B)以外の有機溶剤の少なくとも1種を含有する。(成分B)以外の有機溶剤としては、例えば、アルコール系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、アミン系化合物、グリコール系化合物、グリコールエーテル系化合物、芳香族系化合物などの溶剤や、炭化水素系溶剤などを挙げることができる。
(成分C)として好ましい有機溶媒としては、ノズル部やチューブ内等の機器内における溶剤型インクの揮発抑制、固化防止、また、固化した際の再溶解性に優れ、普通紙のコックリング抑制の点で、グリコールエーテル類が好ましく、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシプロピレングリコールいずれかのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテルがより好ましく挙げられる。詳しくは、下記の式(α)、式(β)又は式(γ)で示される有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、式(α)で表されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルが好ましい。
21−(OC24n−OR22 ・・・(α)
式(α)において、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基を表す。nは、2〜4の整数を表し、2又は3であることが好ましい。
21、R22で表される炭素数1〜3のアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
式(α)で表されるポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルの具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコール−ジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−ジ−iso−プロピルエーテル等が挙げられる。中でも、好ましくは、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルである。
また、好ましい有機溶媒として、ノズル部やチューブ内等の機器内における溶剤型インクが固化した際の再溶解性に優れる点で、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。具体的には、式(β)で表されるポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル及び/又は、式(γ)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
31−(OC24n−OH ・・・(β)
41−(OC36n−OH ・・・(γ)
前記の式(β)において、R31は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは3〜6の整数を表す。R31で表される炭素数1〜6のアルキル基の中でも、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。前記の式(β)で表されるポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
また、前記の式(γ)において、R41は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは2〜3の整数を表す。R41で表される炭素数1〜4のアルキル基の中でも、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。
前記の式(γ)で表されるポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
上記のほか、(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテルモノアルキルエステル化合物が挙げられる。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノメチルエステル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノメチルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノエチルエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノブチルエステル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメチルエステル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノエチルエステル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルモノメチルエステル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルモノメチルエステル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルモノメチルエステル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルモノエチルエステル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルモノブチルエステル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルモノメチルエステル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノメチルエステル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルモノメチルエステル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルモノメチルエステル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルモノメチルエステル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルモノメチルエステル等が例示される。
これらの中では、ジ又はトリエチレングリコール系化合物に比べ、ジ又はトリプロピレングリコール系化合物の方が、より安全性が高い点で好ましく、インク溶媒として特に好適である。
前記ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテルは、沸点が大気圧下で150℃以上が好適であり、より好ましくは180℃以上のものである。上限値は、特に制限はないが、インクジェット記録用としての機能上240℃以下であることが好ましい。また、20℃での密度は0.9g/cm3以上のものが好ましく、インクとした際のレベリング性、乾燥性が(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテルモノアルキルエステル化合物より優れることから、主溶媒としてより好適である。
前記ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテルは、揮発抑制性をインクに付与する観点から、沸点が大気圧下で200〜305℃であることが好ましく、240〜305℃であることがより好ましい。
前記ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルは、揮発抑制性をインクに付与する観点から、沸点が大気圧下で170〜245℃であることが好ましく、180〜240℃であることがより好ましい。
本発明のインク組成物に使用する(成分C)として、ポリオキシアルキレングリコールのジアルキルエーテルの好ましい具体例には、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びトリエチレングリコールジエチルエーテルが含まれ、ポリオキシアルキレングリコールのモノアルキルエーテルの好ましい具体例には、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールモノメチルエーテルが含まれる。
上記のほか、揮発抑制性をインクに付与する点では、クエン酸トリエチルも好ましい有機溶媒として用いることができる。
有機溶媒としては、溶剤インク組成物の引火点を70℃以上とする観点から、その引火点が70℃以上のものを使用することが望ましい。危険物第四類、第三石油類又はそれ以上に設計することで、引火などの危険性が低減し、比較的容易に取り扱いできる。溶剤型インクの引火点を70℃以上とすると、消防法の法別表に掲げられる危険物第四類、第三石油類又はそれ以上に分類され、製造、貯蔵、運搬などの際に取り扱いやすくなる。また、漏洩などのトラブルの際、引火などの危険も抑制される。有機溶媒の引火点が70℃未満であると、引火点の高い溶媒を他に加えてもインク全体の引火点を70℃以上にしにくいが、主溶媒の引火点が70℃以上であると、これに引火点が70℃未満の他の溶媒が添加された場合でも、その添加量を調整することでインク全体の引火点を容易に70℃以上に設計できる。
また、引火点が70℃以上である主溶媒は、その沸点が150℃以上、20℃における蒸気圧が5mmHg以下であり、作業環境にも優れる。
〜炭化水素系溶剤〜
本発明においては、上記の有機溶媒に加えあるいはそれとは別に、炭化水素系溶剤を用いることができる。有機溶媒と親和性のある顔料分散剤や樹脂などは、炭化水素系溶剤を添加することにより、溶媒に対する溶解力が多少低下し、顔料への吸着力が向上し、インクの流動性が増し、保存安定性を高めることができる。このような効果を有する炭化水素系溶剤を用いる場合、好ましくは、インクの引火点が70℃未満とならないようにその量を決め、通常は全有機溶媒に対して1〜30重量%とすることが好ましく、3〜20重量%とすることがより好ましい。
炭化水素系溶剤は、炭素原子と水素原子だけでできた化合物であり、通常は単一の成分又は混合物からなる天然又は合成の炭化水素混合物からの留出物であり、その分子構造によりアルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、芳香族炭化水素などが含まれる。このような炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィンやイソパラフィンなどのパラフィン、ナフテン、パラフィン/ナフテン混合系などが挙げられる。炭化水素系溶剤の性状は、流動状でも固体状でもよい。これらの中でも、イソパラフィン系溶剤、ノルマルパラフィン系溶剤、流動パラフィン系溶剤、パラフィン/ナフテン系溶剤などが好ましく、これらは市販品として容易に入手可能である。
具体的には、エクソンモービル社製のイソパラフィン系溶剤であるアイソパーG、H、L、M、ノーパー12、13、15、パラフィン/ナフテン混合系溶剤であるエクソノールD110、D130、出光興産(株)製のイソパラフィン系溶剤であるIPソルベント1620、2028、新日本石油(株)製のノルマルパラフィン系溶剤であるノルマルパラフィンSL、L、M、H、O型ソルベントL、M、H、イソパラフィン系溶剤であるアイソゾール300、400、ナフテン系溶剤であるAF−4、AF−7、AF−5、AF−6、テクリーンN16、N20、N22、パラフィン系溶剤であるドライソルベント、ドライソルベントハイソフト、クレンゾル、ミネラルスピリットA、Aソルベント、ハイアロム2S、丸善石油化学(株)製のイソパラフィン系溶剤であるマルカゾールR、出光興産(株)製のパラフィン系溶剤である出光スーパゾルLA25、LA30、LA35、LA41、FP20、FP25、FP30、FP38、CA25、ダイアナフレシアP02、P05、S02、シェルケミカルズジャパン(株)製のイソパラフィン系溶剤であるシェルゾール71、72、パラフィン/ナフテン混合系溶剤であるシェルゾールD100、(株)松村石油研究所製の流動パラフィン系溶剤であるモレスコホワイトP−40、P−55、P−60、P−70、P−80、P−100、P−120、P−150、P−200、P−230、P−260、P−300、P−350P、モレスコバイオレスなどが挙げられる。炭化水素系溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用できる。
これらの炭化水素系溶剤のうち、分子量が低いものをインク組成物に添加することにより、流動性を増大させることができ、逆に分子量が高いものをインク組成物に添加することにより、引火点が高くなり安全性を高めることができる。炭化水素系溶剤は、引火点が安全性を保ち得る程度に低くなり過ぎないようにし、乾燥性向上によるヘッド目詰まりを抑えたインク吐出性、顔料分散剤や樹脂の溶解性、分散性の観点から、インク組成物の流動性を損なわない程度に分子量が高く、安全性のために引火点が70℃以上のものが好ましい。
本発明における有機溶媒としては、ポリオキシエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルに、水や、アルコール系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、アミン系化合物、グリコール系化合物、グリコールエーテル系化合物、芳香族系化合物などの他の一般的な溶媒を併用した混合溶媒としてもよい。この場合、併用する水やアルコール系化合物等の量は、各物性、安全性などを熟知した上で、各溶媒に応じて適宜選択すればよい。
本発明のインクジェットインク組成物中における有機溶媒((成分B)及び(成分C))の含有量としては、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。有機溶媒の割合が前記範囲内であると、顔料の分散安定性がより良好になるとともに、ポリ塩化ビニル基材への浸透性、レベリング性、画像部の乾燥性に優れる。
本発明のインク組成物において、(成分A)の総量を100重量部とした場合に、(成分B)の総量は、100〜1,000重量部使用することが好ましく、300〜800重量部使用することがより好ましい。
さらに、(成分A)の総量を100重量部とした場合に、(成分C)の総量は、500〜2,000重量部使用することが好ましく、1,000〜1,500重量部使用することがより好ましい。
(成分A)の総量を100重量部とした場合に、(成分B)及び(成分C)の総量は、1,000〜3,000重量部使用することが好ましく、1,500〜2,000重量部使用することがより好ましい。
本発明のインク組成物は、上記の(成分A)、(成分B)及び(成分C)を必須成分とするが、必要に応じて、下記の(成分D)高分子分散剤及び/又は、(成分E)結着樹脂を含有することができ、また、(成分D)及び(成分E)を含有することが好ましい。
(成分D)高分子分散剤
本発明のインクジェットインク組成物は、少なくとも1種の高分子分散剤を含有することが好ましい。高分子分散剤を用いることにより、(成分A)のアゾ顔料の分散安定性を向上させることができる。高分子分散剤としては、溶剤インク組成物に一般に用いられている高分子顔料分散剤を任意に用いることができる。なお、本発明における「高分子」とは、重量平均分子量が3,000以上の樹脂であることをいう。
高分子顔料分散剤は分子内に疎水基を含むものが好ましく、水に不溶性であるものがより好ましい。疎水基を含む高分子顔料分散剤は、記録物(印刷物)の耐水性をより向上させることができる。好ましい高分子顔料分散剤の例として、分子内にポリエステル鎖を有するポリエステル系顔料分散剤を挙げることができる。柔軟なポリエステル鎖を含むことにより、顔料に対する吸着性が増し分散性が向上する。具体的には、例えば、特開昭54−37082号公報、特開昭61−174939号公報などに記載のポリアルキレンイミンとポリエステル化合物を反応させた化合物、特開平9−169821号公報に記載のポリアリルアミンの側鎖のアミノ基をポリエステルで修飾した化合物、特開平9−171253号公報に記載のポリエステル型マクロモノマーを共重合成分とするグラフト重合体、特開昭60−166318号公報に記載のポリエステルポリオール付加ポリウレタン等が好適に挙げられる。
高分子分散剤としては、例えば前記ポリエステル系分散剤として、例えば、ルーブリゾール社製の「SOLSPERSE」(例えば、ソルスパース17000、24000GR、28000、32000、38500)、ビックケミー社製の「DISPERBYK」(例えば、DISPERBYK−161、162、167、168)、エフカアディティブズ社製の「EFKA」(例えば、EFKA4047、4050)、味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパー」(例えば、アジスパーPB711、PN411、PA111、PB821、PB822)などが挙げられ、いずれも上市されている。
高分子分散剤としては、上記の市販品以外にも、塩基性基を含有するカチオン性モノマーと酸性基を有するアニオン性モノマーと疎水基を有するモノマーと必要によりノニオン性モノマーや親水基を有するモノマーなどの他のモノマーとを共重合させて合成したものを用いることができる。カチオン性モノマー、アニオン性モノマー、疎水基を有するモノマー及びノニオン性モノマーや親水基を有するモノマーなどの他のモノマーの詳細については、特開2004−250502号公報の段落0034〜0036に記載のモノマーを挙げることができる。
本発明のインクジェットインク組成物中における高分子分散剤の含有量としては、顔料や溶媒の種類、分散条件などにもよるが、前記式(1)で表される顔料に対して、10〜100重量%の割合が好ましく、20〜80重量%の割合がより好ましい。高分子分散剤の含有量が前記割合であると、分散粒子径を小径にでき、より分散性を安定化させることができる。
(成分E)結着樹脂
本発明のインクジェットインク組成物は、少なくとも1種の結着樹脂を含有することが好ましい。結着樹脂を含有することにより、画像の耐擦過性をより向上させることができる。
結着樹脂としては、アニオン性樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。アニオン性樹脂は、酸価が5〜150mgKOH/gであることが好ましく、20〜100mgKOH/gであることがより好ましく、30〜80mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価は、5mgKOH/g以上であると顔料や媒体表面との親和性が良好になり、150mgKOH/g以下であると、インク粘度を抑えながら、耐擦過性の向上効果が効果的に得られる。
前記アニオン性樹脂は、重量平均分子量として5,000〜100,000が好ましく、8,000〜60,000がより好ましく、10,000〜30,000がさらに好ましい。分子量は、5,000以上であると、インク組成物中で顔料粒子にアニオン性樹脂が吸着した際に立体反発の効果が得られ易く、保存性の向上効果が高くなると共に、画像部の強度が向上し、また、100,000以下であると、インク粘度を抑えてインク組成物の流動性を保つことができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算分子量として求められる。
前記アニオン性樹脂は、アクリロイル基やメタクリロイル基を有する樹脂、並びにポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造の少なくとも1つを含むポリエーテル構造を有する樹脂が好ましい。アクリロイル基やメタクリロイル基を有する樹脂は、(メタ)アクリル樹脂であり、ポリ塩化ビニル基材に対する顔料分散体の密着性に優れる点で、メチルメタクリレートの単独重合体又はメチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体が好ましい。
また、前記ポリエーテル構造は、前記有機溶媒との親和性がよく、顔料の分散安定性に優れており、記録物の定着性を高めることができる。このようなアニオン性樹脂としては、ポリエーテル構造を有するマクロモノマーと、アニオン性モノマーと、必要に応じてカチオン性モノマー、ノニオン性モノマー、疎水性モノマー、親水性モノマーなどの他のモノマーとを共重合させて合成されたものを用いることができる。ポリエーテル構造を有するマクロモノマーには、アクリロイル基やメタクリロイル基に直接又はアルキル基を介してメトキシポリエチレングリコールやメトキシポリプロピレングリコールが結合したマクロモノマーが好適に用いられ、また、アニオン性モノマーなどの他のモノマーには、前記高分子分散剤を合成するためのモノマーとして例示したのと同様のものが好適に用いられる。前記アニオン性樹脂としては、これらモノマーを共重合してなる(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
前記ポリエーテル構造を有するマクロモノマーとしては、市販品として、日油(株)製のPE−200、PE−350、AE−200、AE−350、AP−400、AP−550、AP−800、70PEP−350B、10PEP−550B、AEP、50POEP−800B、50AOEP−800B、PLE、ALE、PSE、ASE、PNE、ANE、PNP、ANP、PNEP−600、PME−200、PME−400、PME−1000、AME−400、PP−500、PP−800、PP−1000、新中村化学工業(株)製のAMP−10G、AMP−20G、AMP−60G、AM−90G、大阪有機化学工業(株)製のビスコート#355HP、ビスコート#310、ビスコート#310HP、ビスコート#310HG、ビスコート#312、ビスコート#700、共栄社化学(株)製のライトアクリレートEHDG−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EA、ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、新中村化学工業(株)製のNKエステルM−20G、NKエステルM−40G、NKエステルM−90G、(株)ADEKA製のアデカリアソープNE−10、アデカリアソープNE−20、アデカリアソープNE−40などが挙げられる。
結着樹脂のインクジェットインク組成物中における含有量としては、前記式(1)で表される顔料等を含む顔料合計量に対して、10〜200重量%が好ましく、15〜150重量%がより好ましく、20〜100重量%がさらに好ましい。結着樹脂の含有量は、10重量%以上であると、顔料との比率が良好で良好な定着性が得られ、200重量%以下であると、インク粘度を抑えられる。
本発明のインクジェットインク組成物中における結着樹脂及び顔料等からなるインク固形分は、1〜20重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
(その他の成分)
本発明のインクジェットインク組成物は、上記の任意成分である(成分D)及び(成分E)に加え、必要に応じて、界面活性剤、表面調整剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、pH調整剤、電荷付与剤、殺菌剤、防腐剤、防臭剤、電荷調整剤、湿潤剤、皮はり防止剤、香料、顔料誘導体などの公知の添加剤を任意成分として添加してもよい。
(インク組成物の調製方法)
本発明に係る溶剤型のインクジェットインク組成物の調製方法としては、特に制限はなく、各成分を、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミルなどの容器駆動媒体ミル、サンドミルなどの高速回転ミル、撹拌槽型ミルなどの媒体撹拌ミル、ディスパーなどの簡単な分散機により撹拌、混合し、分散させることにより調製することができる。各成分の添加順序については任意である。好ましくは、前記の式(1)で表されるアゾ顔料、高分子分散剤及び有機溶媒をプレミックスした後に分散処理し、得られた分散物を樹脂(例えばアニオン性樹脂)と有機溶剤とともに混合する。この場合、添加時や添加後、スリーワンモーター、マグネチックスターラー、ディスパー、ホモジナイザーなどの簡単な撹拌機にて均一に混合する。ラインミキサーなどの混合機を用いて混合してもよい。また、分散粒子をより微細化するために、ビーズミルや高圧噴射ミルなどの分散機を用いて混合してもよい。また、顔料や高分子分散剤の種類によっては、顔料分散前のプレミックス時にアニオン性樹脂を添加するようにしてもよい。
本発明のインクジェットインク組成物は、25℃における表面張力が20〜40mN/mであることが好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、25℃の条件下で測定されるものである。また、粘度は、1〜20mPa・sが好ましく、3〜15mPa・sがより好ましい。粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定されるものである。
本発明のインク組成物は、粘度が上記範囲になるように適宜組成比を調整することが好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク組成物の浸透を回避できる。さらにインク組成物の液滴着弾時のインク組成物の滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善されるので好ましい。
また、インク組成物中の顔料粒子の分散平均粒子径としては、体積基準平均粒径D50で50〜150nmが好ましく、60〜100nmがより好ましい。D50は、50nm以上であると、記録物の耐光性の点で適当であり、150nm以下であると、吐出性が良好であり、より解像度の高い精細な記録物が得られる。これらは、前記有機溶媒の選択や他の成分の種類や量を適宜調整することにより容易に調整することができる。
また、本発明のインク組成物の25℃における表面張力は、20〜35mN/mであることが好ましく、23〜33mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点では、35mN/m以下が好ましい。
II.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、吐出されたインクジェットインク組成物に熱を加え、前記インクジェットインク組成物を定着する工程、を含むことを特徴とする。これらの工程を行うことで、被記録媒体上に定着したインク組成物による画像が形成される。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法における被記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることのできるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、加熱手段を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、さらに好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
上記のインクジェット記録装置を用いて、インク組成物の吐出はインク組成物を好ましくは25〜80℃、より好ましくは25〜50℃に加熱して、インク組成物の粘度を、好ましくは3〜15mPa・s、より好ましくは3〜13mPa・sに下げた後に行うことが好ましい。特に、本発明のインク組成物として、25℃におけるインク組成物の粘度が50mPa・s以下であるものを用いると、良好に吐出が行えるので好ましい。この方法を用いることにより、高い吐出安定性を実現することができる。
インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、さらに好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
次に、吐出された溶剤型インクジェット記録用インク組成物に熱を加え、前記溶剤型インクジェット記録用インク組成物を定着する工程について説明する。
被記録媒体上に吐出されたインク組成物は、加熱手段により溶剤が蒸発されることにより定着される。また、インク組成物に結着樹脂が含まれる場合には、インク組成物は、結着樹脂を軟化させることによって被記録媒体表面に定着される。
加熱手段としては、溶媒を乾燥させることができればよく、限定されないが、ヒートドラム、温風、赤外線ランプ、熱オーブン、ヒート版加熱などを使用することができる。
本発明のインクジェット記録方法には、本発明のインク組成物を含むインクセットを好適に使用することができる。例えば、本発明のインク組成物(イエロー色)に、シアン色のインク組成物、マゼンタ色のインク組成物、ブラック色の組成物を組み合わせてインクセットとして使用することが例示できる。
本発明のインク組成物を使用してフルカラー画像を得るためには、インクセットは、イエロー(本発明のインク組成物)、シアン、マゼンタ、ブラックよりなる4色の濃色インク組成物を組み合わせたインクセットであることが好ましく、イエロー(本発明のインク組成物)、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトよりなる5色の濃色インク組成物群と、ライトシアン、ライトマゼンタのインク組成物群と、を組み合わせたインクセットであることがより好ましい。
なお、本発明における「濃色インク組成物」とは、顔料の含有量がインク組成物全体の1重量%を超えているインク組成物を意味する。
なお、本発明のインクジェット記録方法にてカラー画像を得るためには、各色のインク組成物(インクセット)を用い、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。具体的には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのインク組成物からなるインクセットを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。さらに、ライトシアン、ライトマゼンタ色のインク組成物群と、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイト、イエローの濃色インク組成物群と、の計7色が少なくとも含まれるインクセットを使用する場合には、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で被記録媒体上に付与することが好ましい。
本発明において、被記録媒体としては、特に限定されず、支持体や記録材料として公知の被記録媒体を使用することができる。被記録媒体としては、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。中でも、本発明のインク組成物は密着性に優れるため、被記録媒体として非吸収性被記録媒体に対して好適に使用することができ、密着性の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等のプラスチック基材が好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂基材がより好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂シート又はフィルムがさらに好ましい。
III.印刷物
本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする。本発明の印刷物は、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることから、色再現、光沢、基材密着、画像表面強度に優れた印刷物となる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は重量基準である。
[合成例1]
〜例示化合物(Pig.−1)の合成〜
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
Figure 2011052162
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分撹拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)δ=7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H).
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分撹拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)δ=7.82(s,1H),7.55(s,2H),5.96(s,1H),4.12(s,4H).
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で撹拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間撹拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、さらに1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d6−DMSO)δ=8.73(s,1H),7.97(s,1H),6.88(s,4H),5.35(s,2H),1.22(s,18H).
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で撹拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間撹拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分撹拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で撹拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間撹拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて撹拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間撹拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
なお、上記合成スキームと同様にして、例示化合物(Pig.−18)、例示化合物(Pig.−21)及び例示化合物(Pig.−33)を合成した。
−イエロー顔料分散体の調製−
以下の組成中の諸成分を混合し、ディゾルバーで均一になるまで撹拌し、得られた予備分散液をさらに縦型ビーズミル(アイメックス(株)製のレディーミル)で0.1mmφジルコニアビーズを用いて3〜6時間分散し、イエロー顔料分散体YP−1〜YP−3を調製した。
<イエロー顔料分散体YP−1の組成>
・例示化合物(Pig.−1;式(1)で表されるアゾ顔料) 20.0部
・ソルスパース32000(ルーブリゾール社製、ポリエステル系化合物) 12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 68.0部
<イエロー顔料分散体YP−2の組成>
・例示化合物(Pig.−18;式(1)で表されるアゾ顔料) 20.0部
・ソルスパース32000(ルーブリゾール社製、ポリエステル系化合物) 12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 68.0部
<イエロー顔料分散体YP−3の組成>
・顔料:Yellow HG AF(クラリアント社製C.I.ピグメント・イエロー・180) 20.0部
・ソルスパース32000(ルーブリゾール社製、ポリエステル系化合物) 12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 68.0部
−イエロー分散体の粒子径の測定−
得られたイエロー顔料分散体YP−1について、光散乱回折式の粒度分布測定装置LA910((株)堀場製作所製)を用い、体積基準平均粒径D50を測定した。
−インク組成物の調製−
次に、得られたイエロー顔料分散体YP−1〜YP−3を用い、下記組成の諸成分を混合してインク組成物YI−1〜YI−8を調製した。
<インク組成物YI−1の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(引火点71℃、沸点189℃)34.0部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 36.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−2の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−2 25.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(引火点71℃、沸点189℃)34.0部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 36.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−3の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−3 25.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(引火点71℃、沸点189℃)34.0部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 36.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−4の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(引火点71℃、沸点189℃)34.0部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 18.0部
・エチレンカーボネート(引火点150℃、沸点260.7℃) 18.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−5の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(引火点71℃、沸点189℃)34.0部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 18.0部
・N,N−ジメチルイミダゾリジノン(引火点121℃、沸点246℃) 18.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−6の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(引火点74℃、沸点190℃)
18.0部
・トリエチレングリコールジエチルエーテル(引火点111℃、沸点216℃)
30.5部
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル(引火点138℃、沸点249℃)
6.5部
・プロピレンカーボネート(引火点132℃、沸点242℃) 15.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−7の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(引火点74℃、沸点190℃)
18.0部
・トリエチレングリコールジエチルエーテル(引火点111℃、沸点216℃)
30.5部
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル(引火点138℃、沸点249℃)
6.5部
・γ−バレロラクトン(ラクトン系溶剤)(引火点81℃、沸点205−208℃)
15.0部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
<インク組成物YI−8の組成>
・前記イエロー顔料分散体YP−1 25.0部
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(引火点74℃、沸点190℃)
18.0部
・トリエチレングリコールジエチルエーテル(引火点111℃、沸点216℃)
30.5部
・トリエチレングリコールモノメチルエーテル(引火点138℃、沸点249℃)
21.5部
・Elvacite 2013(樹脂)(デュポン(株)製、メチルメタクリレート・ブチルメタクリレート共重合体) 5.0部
−評価−
得られたインク組成物YI−1〜YI−8について、下記の測定、評価を行った。測定及び評価の結果は、表1に示す。
(1.インク安定性)
得られたインク組成物を、PET製容器に入れて密栓し、60℃恒温槽中で30日間保存し、保存後の粘度及び平均粒子径を測定した。また、同様の方法で保存前のインク組成物の粘度及び平均粒子径も測定した。粘度は、R100型粘度計(東機産業(株)製)により25℃、コーンの回転数20rpmの条件にて測定した。平均粒子径は、光散乱回折式の粒度分布測定装置LA910〔(株)堀場製作所製〕を用い、体積基準平均粒径D50を測定した。それぞれの測定値を指標にして、下記の評価基準にしたがってインク安定性の評価をした。評価結果は表1に示す。
<評価基準>
A:粘度及び平均粒子径ともに、保存前の値の±6%以内であった。
B:粘度及び平均粒子径いずれかの値が、保存前の値の±6%を超えるものであった。
(2.吐出回復性)
得られたインク組成物を、PET製容器に入れて密栓し、60℃恒温槽中で30日間保存した。被記録媒体として富士フイルム(株)製の「画彩 写真仕上げPro」を、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッド及び加熱定着手段としてヒート版加熱を備えたインクジェット装置を用意した。60℃恒温槽中で30日間保存して得たインク組成物をインクジェット装置に装填し、ヘッドから30分間吐出した後、メンテナンス作業として、15KPaの圧力で10秒間加圧した後にクリーンワイパーFF−390c((株)クラレ製)でワイプを行った後、さらに30分間吐出を継続し、30分経過した後に前記被記録媒体(画彩写真仕上げPro)上に描画し、直後に描画部直下50℃に加熱したヒート版上にて2分間乾燥し、ベタ記録及び細線記録して得られた画像(5cm×5cm)を観察した。そして、観察した画像を下記の評価基準にしたがって目視により評価した。
<評価基準>
A:白抜けの発生等によるドット欠けの発生が認められず、良好な画像が得られた。
B:白抜けの発生等によるドット欠けなどの画像故障が僅かに認められたが、実用上支障を来さない程度であった。
C:白抜けの発生等によるドット欠けなどの画像故障が多く認められた。
(3.塩化ビニル樹脂シートへの密着性)
前記「2.吐出回復性」の評価と同様に、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意し、これに得られたインク組成物を装填して、ポリ塩化ビニルフィルム(ビューカル900:リンテック(株)製)に記録を行った。その記録面(記録画像)に対して、ラビングテスター(テスター産業(株)製、型式AB301)を用い、試験用布片(金巾3号)にて加重200g、50往復の条件で擦過試験を行い、下記の評価基準にしたがって目視によりインキの剥がれの有無を評価した。評価結果は表1に示す。
<評価基準>
A:インクの剥がれは認められなかった。
B:僅かにインクの剥がれが認められたが、実用上支障を来さない程度であった。
C:インクの剥がれが目立ち、実用上支障を来す程度であった。
(4.普通紙の耐水性)
前記「2.吐出回復性」の評価と同様に、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意し、これに得られたインク組成物YI−1を装填して、富士フイルム(株)製の「画彩 写真仕上げPro」に細線を記録した後、40℃のイオン交換水中に24時間浸漬した。浸漬後、細線の滲みの有無を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は表1に示す。
<評価基準>
A:滲みは認められなかった。
B:僅かに滲みが認められたが、実用上支障を来さない程度であった。
C:滲みが認められた。
(5.コックリング)
前記「2.吐出回復性」の評価と同様に、インクジェット記録装置として、600dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを備えたインクジェット装置を用意し、これに得られたインク組成物を装填して、富士フイルム(株)製の「画彩 写真仕上げPro」にベタ記録を行った。乾燥後、ベタ画像部のコックリング(波打ち)の有無を目視により観察した。観察した画像を下記の評価基準にしたがって評価した。評価結果は表1に示す。
<評価基準>
A:コックリング(波打ち)の発生は認められなかった。
B:コックリング(波打ち)の発生が僅かに認められたが、実用上支障を来さない程度であった。
C:コックリング(波打ち)の発生が目立ち、実用上支障を来す程度であった。
(6.折り曲げテスト)
有機溶剤の描画基材へのダメージを評価する方法として、折り曲げテストを実施した。
上記インクジェット画像記録方法に従い、被記録媒体として、塩化ビニル樹脂シート(厚み150μm)を用い、画像部の平均膜厚が4μmのベタ画像を描画した。折り曲げテストは画像を形成した被記録材を25℃条件下で30回折り曲げ、画像部の割れの有無によって評価した。
<評価基準>
A:サンプル表面に割れが発生しない。
B:サンプル表面に折り曲げ20回で割れが発生する。
C:サンプル表面に折り曲げ10回で割れが発生する。
Figure 2011052162
実施例では、粒子径の小さい分散安定性の高い顔料分散体が得られ、これを用いて調製したインク組成物は、安定性に優れており、良好な吐出回復性を保つことができた。また、ポリ塩化ビニル樹脂への記録が行え、このときの画像の密着性も良好であり、基材へのダメージもない。普通紙を用いた場合には、画像の耐水性が良好でコックリングの発生も抑えられた。
これに対し、比較例1では、顔料分散体とした際の分散性及びその安定性が悪く、インク組成物としたときのインク安定性、吐出回復性に劣っていた。また、比較例2では安定性、吐出回復性が劣化し、ポリ塩化ビニル樹脂に対するダメージが大きく、印刷物強度に問題がある。一方、比較例3では、安定性、吐出回復性が劣化し、塩化ビニルに対する密着性が悪く、ポリ塩化ビニル樹脂への記録は難しく、普通紙を用いた場合には画像の耐水性、コックリングの点で劣っていた。

Claims (10)

  1. (成分A)式(1)で表されるアゾ顔料、
    (成分B)式(2)又は式(3)で表される少なくとも1種の有機溶剤、及び、
    (成分C)(成分B)以外の有機溶剤、を含有することを特徴とする
    インクジェットインク組成物。
    Figure 2011052162
    (式(1)中、Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y1、Y2、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、G1及びG2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、W1及びW2は、それぞれ独立に、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基又はアリール基を表す。)
    Figure 2011052162
    (式(2)及び式(3)中、R1、R2、及びR4は、それぞれ独立に、−NR6−又は酸素原子を表し、R3、R5は−Cmn−で表される炭化水素基を表し、分岐を有していてもよく、mは2〜8の整数を表し、nは(2m−4)、(2m−2)又は2mいずれかの整数を表し、R6は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基又は水素原子を表す。)
  2. 式(1)中のW1及びW2が、それぞれ独立に、炭素数3以下のアルコキシ基、アミノ基又は炭素数3以下のアルキルアミノ基である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
  3. 式(1)中のG1及びG2が、それぞれ独立に、炭素数3以下のアルキル基である、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
  4. 式(1)中のZが、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  5. (成分B)がカーボネート化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  6. (成分B)がエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  7. (成分C)が、グリコールエーテル類である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  8. さらに、(成分D)高分子分散剤、及び/又は、(成分E)結着樹脂を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物。
  9. 被記録媒体上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク組成物を吐出する工程、及び、
    吐出されたインクジェットインク組成物に熱を加え、前記インクジェットインク組成物を定着する工程、を含むことを特徴とする
    インクジェット記録方法。
  10. 請求項9に記載のインクジェット記録方法によって記録されたことを特徴とする
    印刷物。
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