JP2011052031A - 摺動性組成物および摺動製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス部材等に対して摺動性を有する摺動性組成物、グラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品において耐久性,柔軟性等の諸特性を向上させる。
【解決手段】少なくともEPDM100phrに対しオレフィン系樹脂材料200phr〜350phr,カーボンブラック100phr〜300phrを配合して混練し架橋された熱可塑性エラストマーと、少なくともシリカを含む無機充填剤50phr〜300phrと、シリコーン化合物50phr〜150phrと、を配合した複合材料を用いる。前記オレフィン系樹脂材料は、熱可塑性エラストマー全体の50wt%以下とする。前記の熱可塑性エラストマー中のカーボンブラックにより、EPDM成分とのバウンドラバーが形成され、オレフィン樹脂成分の結晶化が抑制される。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂等の高分子成分を含む複合材料から成りガラス部材等に対して摺動性を有する摺動性組成物に関するものであり、また、前記摺動性組成物を用いた例えば自動車のグラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品に関するものである。
ゴム成分や樹脂成分等の高分子成分を含んだ複合材料から成りガラス部材等に対して摺動性を有する摺動性組成物は、例えば自動車のグラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品における圧接部(リップ部等)に適用され、その高分子成分としてはエチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体(以下、EPDMと称する)等のゴム成分やオレフィン樹脂等が挙げられる。
摺動製品としては、例えば熱可塑性エラストマー組成物等から成るものであって、適用対象(グラスランの場合はドアパネル等)に取り付けるための基部と、その基部に設けられガラス部材等(窓ガラス等)に対し弾性(柔軟性)を有して圧接し気密性(ガラスシール性等)を保持する圧接部と、を備えたものが知られ、前記の摺動性組成物は該圧接部の接触面等に適用(例えば熱可塑性エラストマー組成物と摺動性組成物とを積層した構造で適用)されている。
例えば、熱可塑性エラストマー(ハードセグメントとしてのポリオレフィン樹脂の含有割合が全体の50wt%以上),固形粒子(平均粒子径1〜100μm),潤滑剤(常温液状)を含んだ複合材料から成る摺動性組成物を有するウェザーストリップであって、その摺動性組成物の表面(摺動する側の表面)に小凸部(摺動性組成物中の固形粒子に起因する凸部)から成る粗面部が形成されたものが知られている。このような摺動製品によれば、自動車の窓ガラス等に対して十分な摺動性を有し、十分な柔軟性(弾性)も得られるとされていた(例えば、特許文献1)。しかし、前記のような小凸部は特に摺動に対する耐久性(例えば、摺動に対する耐久性(耐摩耗性等))が低いため、摺動性を長期間保持させる場合には、圧接部に対し摺動性組成物を厚く形成する必要がある。この場合、摺動性組成物自体は厚くなるに連れて柔軟性が低く(曲げ弾性率等が更に高く)なるため、その摺動製品(特に圧接部)の諸特性(ガラスシール性等)も更に低下してしまう恐れがある。
また、ポリオレフィン樹脂100wt%に対し熱可塑性エラストマー10〜50wt%を配合した複合材料から成る摺動性組成物を有するウェザーストリップも知られている。このような摺動製品では、折れ皺の発生がなく、コーナー追従性を付与できるものとされていた(例えば、特許文献2)。しかしながら、ポリオレフィン樹脂が多量に配合(全体で過半数の割合で配合)されて結晶化すると柔軟性が低くなるだけでなく、耐熱性も低くなってしまう恐れがある。
特開2004−306937号公報(段落[0007],[0008]等) 特許第3063590号公報(段落[0008]〜[0012]等)。
本願発明者は、前記のような技術進歩等に伴って、高分子成分等を含んだ複合材料から成る摺動性組成物および摺動製品においては、以下に示す第1〜第3課題があることに着目した。
すなわち、第1課題としては、従来のように単に多量のオレフィン系樹脂材料を用いて結晶化させ耐久性(耐摩耗性等)を付与するのではなく、かつ柔軟性を付与することが挙げられる。また、第2課題としては、摺動性組成物において単に日常環境(例えば30℃前後の温度雰囲気下)での適用を想定するのではなく、過酷な環境下(例えば80℃前後の温度雰囲気下)での適用を想定し、高温下においても摺動組成物の諸特性(耐久性や摺動性等)を十分確保することが挙げられる。さらに、第3課題としては、前記の耐久性,柔軟性等の諸特性をより高めることが挙げられる。
この発明に係る摺動性組成物および摺動製品は、前記の課題を解決すべく創作された技術的思想であって、EPDM,オレフィン樹脂を含んだ熱可塑性エラストマーにおいて比較的多量のカーボンブラックを配合することにより、熱可塑性エラストマー中において、EPDM成分とのバウンドラバーを形成すると共に、オレフィン樹脂成分の結晶化を抑制することにより、第1課題を解決することが可能となる。また、前記の摺動性組成物に係る熱可塑性エラストマーの架橋度や各成分の種類,配合量等を設定することにより、第2または/および第3課題を解決することが可能となる。
具体的に、この発明に係る摺動性組成物の一態様は、少なくともEPDM100phrに対しオレフィン系樹脂材料200phr〜350phr,カーボンブラック100phr〜300phrを配合して混練し架橋された熱可塑性エラストマーと、少なくともシリカを含む無機充填剤50phr〜300phrと、シリコーン化合物50phr〜150phrと、を配合し混練された複合材料を成形加工して成る摺動性組成物であって、前記オレフィン系樹脂材料は、熱可塑性エラストマー全体の50wt%以下であることを特徴とする。
また、別の態様は、前記熱可塑性エラストマーにおいて、EPDMが50%以上架橋されたことを特徴とする。
さらに、別の態様では、前記無機充填剤において、層状結晶性充填剤を含むことを特徴とする。
さらに、別の態様では、前記の無機充填剤において、前記シリカと層状結晶性充填剤との結合化合物が含まれていることを特徴とする。
さらに、別の態様では、前記のシリコーン化合物において、粘土状のものと液状のものとが含まれていることを特徴とする。
この発明に係る摺動製品の一態様は、車体パネルに組みつけられる基部と、その基部に設けられガラス部材に対して弾性を有する圧接部と、を備え熱可塑性エラストマー組成物から成る摺動製品であって、前記の圧接部のうち少なくともガラス部材に接する面に、請求項1〜5の何れかに記載の摺動性組成物を形成したことを特徴とする。
また、別の態様では、前記の摺動性組成物において、曲げ弾性率が350MPa以下であることを特徴とする。
さらに、別の態様では、前記の摺動性組成物において、JIS K 6253に準拠した硬度(D)が40〜60の範囲内であることを特徴とする。
以上のように、EPDM,オレフィン樹脂材料を含む熱可塑性エラストマーにおいてカーボンブラックを比較的多量配合して混練すると、EPDMとカーボンブラックとが物理的・化学的に反応(非晶質なバウンドラバー中にカーボンブラックが取り込まれている状態となるように結合)し易いため、該混練物中においてバウンドラバーが形成され、補強されることで耐摩耗性が向上する。
また、前記EPDMに取り込みきれなかったカーボンブラックは、オレフィン樹脂相側に移行し、オレフィン樹脂の結晶化を阻害することで熱可塑性エラストマーの柔軟性を向上させる。
そして、前記のような混練物を架橋して得られる熱可塑性エラストマーにおいては、非晶質なバウンドラバーに取り囲まれたゴム相とオレフィン樹脂相とが、互いに相溶性が高いことから、均一に溶融分散させ易い。
このように、良好に分散された状態で動的架橋させると、例えば図3Aの概略図に示すように、熱可塑性エラストマー組成物のマトリックス相(海相)であるオレフィン樹脂31中において、ドメイン相(島相)である架橋ゴム成分(カーボンブラックを含んだ架橋ゴム成分)32aが極めて微細な状態で分散して形成、される。
カーボンブラックは、一般的に石油(ナフサ等)を用いて製造され、少なからず硫黄成分を含んだものであるため、前記のようにカーボンブラックを用いたエラストマー成形体の場合、時間経過(例えば、屋外にて時間経過)と共に、該硫黄成分が樹脂成分中を移行(透過)して表面に露出し、白化現象が生じて外観性が更に悪化してしまうことがあった。
前記熱可塑性エラストマーは、ゴム相が微細に分散されているため、硫黄成分の移行経路は狭くなり、たとえ該成形体中に硫黄成分が含まれていても、白化現象が生じ難くなる。
さらに、前記のように微細な架橋ゴム成分が分散されていることにより、該架橋ゴム成分と結晶性オレフィン樹脂との接触面積は大きくなり、その両者のポアソン比の違いによって、弾性が大きくなると共に歪依存性が大きくなるものと予測できる。
なお、前記のようなゴム組成物においてバウンドラバーが形成されていない場合、オレフィン系樹脂材料との相溶性は低くなり、オレフィン樹脂中に対する分散性も悪くなる。このように分散性の低い状態で動的架橋されると、例えば図3Bの概略図に示すように、オレフィン樹脂成分31中に大きい架橋ゴム成分(カーボンブラックを含んだ架橋ゴム成分)32bが形成され、エラストマー成形体中における硫黄成分の移行経路が広くなってしまうため、白化現象が起こり易くなる。
熱可塑性エラストマーに加えられる無機充填剤中のシリカは、シラノール基で覆われた構造であるためシリコーン化合物(シリコーンオイル成分)を保持し、摺動耐久性の向上に寄与するものであると共に、オレフィン系樹脂材料の結晶化を部分的に促進する作用を有する。
したがって、以上示した摺動性組成物によれば、バウンドラバーによって補強された架橋ゴム領域(柔軟性,耐久性等を奏する領域)と、オレフィン系樹脂材料のうちカーボンブラックによって結晶化阻害された領域(柔軟性等を奏する領域)と、オレフィン系樹脂材料のうちシリカによって結晶化促進された部分(耐久性等を奏する部分)と、シリカによってシリコーン化合物が保持された部分(摺動性を奏し耐久性に寄与する部分)と、が混在する構造をとることで、摺動組成物の要求特性を発現できる。
以上示したように本発明によれば、摺動性組成物や摺動製品において、耐久性(耐摩耗性等)だけではなく、柔軟性等の諸特性を付与することができる。
本実施の形態による摺動製品の一例を示す概略説明図。 本実施例の耐久性の観測方法を示す概略説明図。 熱可塑性エラストマー中の架橋ゴム成分の分散状態を説明するための概略図。
以下、本発明の実施の形態における摺動性組成物を図面等に基づいて説明する。
本実施形態は、少なくとも、EPDM,オレフィン系樹脂材料,カーボンブラックを含み架橋された熱可塑性エラストマーと、無機充填剤(少なくともシリカを含んだ無機充填剤)と、シリコーン化合物と、を加え混練して得た複合材料から成る組成物に関するものであって、前記の熱可塑性エラストマーにおいて比較的多量のカーボンブラックを配合したものであり、良好な耐久性,柔軟性等の諸特性を得ることができる。
摺動性組成物の各成分を単に適宜変更、例えばカーボンブラックにおいてEPDM成分とのバウンドラバー形成やオレフィン系樹脂成分の結晶化抑制を考慮せずに配合した場合、前記の諸特性を向上させることは困難であり、加工性が悪化する恐れもある。一方、以下に示すように各成分を適宜適用した場合には、摺動性組成物において良好な諸特性を得ることができ、例えば自動車のグラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品として十分適用可能となる。
[EPDM]
EPDMのα‐オレフィンとしては、例えばプロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセン等が挙げられ、好ましい一例としてプロピレンが挙げられる。これらα‐オレフィン群のなかから複数のものを選択し、例えばプロピレンと1‐ブテンの如く組み合わせて使用しても良い。また、ポリエン共重合体が5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5‐ビニル‐2‐ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン等の環状の非共役ポリエンであるものや、1,4ヘキサジエン、7‐メチル‐1,6‐オクタジエン、4‐エチリデン‐8‐メチル‐1,7‐ノナジエン、4‐エチリデン‐1,7ウンデカジエン、4,8‐ジメチル‐1,4,8‐デカトリエン等の鎖状の非共役ポリエンであるものが挙げられる。これら各非共役ポリエンは、単独、または2種類以上組み合わせたものでも良く、その構成単位(エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体における非共役ポリエンの含有比率)は例えば約1wt%〜約20wt%とし、好ましくは約1wt%〜約15wt%、より好ましくは約5wt%〜約11wt%である。このようなEPDMの具体例としては、住友化学社製のエスプレン7456等を挙げることができる。
[オレフィン系樹脂材料]
オレフィン系樹脂材料に含まれる結晶性オレフィン樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体,プロピレンの単独共重合体や、エチレン,プロピレン等を主体とする結晶性の共重合体等の一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができる。具体例として、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・ブテン‐1共重合体の結晶性エチレン系共重合体,アイソタクチックポリプロピレン,プロピレン‐エチレン共重合体,プロピレン・ブテン‐1共重合体,プロピレン・エチレン・ブテン‐1三元共重合体等が挙げられ、好ましくはポリプロピレン系重合体が挙げられる。また、前記の各結晶性オレフィン樹脂の何れかを単独で用いても良く、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。
前記の結晶性オレフィン樹脂の他に、非結晶性オレフィン樹脂が含まれても良い。この場合、単に結晶性オレフィン樹脂のみが含まれている場合と比較して、摺動性組成物の加工性や弾性を調整し易くなる。ただし、配合量が多過ぎると、耐摩耗性に影響を与える恐れがあるため、該配合量については留意することが好ましい。この非結晶性オレフィン樹脂としては、例えばα‐オレフィンの単独重合体や2種類以上の共重合体等を挙げることができる。ただし、共重合体の場合には、その主成分(実施例の非結晶性オレフィンの共重合体では、プロピレン・1‐ブテン)となるα‐オレフィン単位が、アタクチック構造で結合しているものを使用する。具体例としては、アタクチックポリ‐1‐ブテン等の単独重合体や、ポリプロピレン(50モル%以上含有)と他のα‐オレフィン(エチレン,1‐ブテン,1‐ペンテン,1‐ヘキセン,4‐メチル‐1‐ペンテン,1‐オクテン,1‐デセン等)との共重合体や、1‐ブテン(50モル%以上含有)と他のα‐オレフィン(エチレン,プロピレン,1‐ペンテン,1‐ヘキセン,4‐メチル‐1‐ペンテン,1‐オクテン,1‐デセン等)との共重合体等を挙げることができる。また、前記の各共重合体は、それぞれ単独で用いても良く、2種類以上を適宜組み合わせて用いても良い。特に好ましくは、アタクチックポリプロピレン(非晶性ポリプロピレン)、ポリプロピレンとエチレンとの共重合体や、ポチプロピレンと1‐ブテンとの共重合体が挙げられる。
以上示したようなオレフィン系樹脂材料の好ましい配合量としては、EPDM100phrに対して200phr〜350phrとし、熱可塑性エラストマー全体の約50wt%以下とすることが挙げられる。当該50wt%を超える配合量の場合、耐熱性が不十分となり、例えば高温雰囲気下に曝されたウェザーストリップでは十分な機能を果たせない恐れがある。
[カーボンブラック]
カーボンブラックにおいては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えばオイルファーネス法等によって製造されたものが挙げられる。カーボンブラックの配合量は、EPDM100phrに対して100phr〜300phrとする。
この配合量が少な過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対して配合量100phr未満の場合)には、EPDM成分とのバウンドラバー形成が不十分になったり、オレフィン樹脂成分の結晶化抑制作用が不十分となる恐れがあり、曲げ弾性率が高くなることから、柔軟性が悪くなる。また、該配合量が多過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対して配合量300phr超の場合)には、複合材料中における分散性が悪化(分散不良)するだけでなく、結晶化阻害作用が強過ぎて脆弱なものとなったり、摺動性組成物表面にいわゆる摺動性組成物表面の「ブツ」が発生し、摺動性組成物の諸特性(耐久性等)や外観性に影響を及ぼす可能性がある。なお、平均粒子径を設定(例えば、40nm以上に設定)することが挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜変更して用いることができる。
[無機充填剤]
無機充填剤においては、少なくとも、前記オレフィン樹脂材料の結晶化に寄与する核剤として機能するシリカを含むものを用いる。
シリカにおいては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えば湿式シリカ(例えば、トクヤマ社製のトクシール),球状シリカ(例えば、トクヤマ社製のエクセリカ),多孔質シリカ(例えば、旭ガラス社製のサンフェア,鈴木油脂工業社製のゴッドボール,東海化学工業所社製のマイクロイド)等が挙げられる。
シリカは、外表面や内部がシラノール基(Si‐OH)で覆われていることから、内部にシリコーン化合物等が保持され易くなる。このため、例えば押出し加工時のいわゆるメヤニ現象(押出し成形機の口金縁等に発生するメヤニ)が抑制されると共に、摺動耐久性が高められる。
シリカの配合量を設定(例えば、EPDM100phrに対し50phr〜300phrの範囲で設定)することが挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。例えば、シリカの配合量が多過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対し300phr超)、摺動性組成物のいわゆる「ササクレ」が発生し易くなり、前記のメヤニ現象(粉状のメヤニ等)も発生し得ることになり、摺動性組成物の外観性を悪化させると共に、曲げ弾性率が高くなり柔軟性が悪化する可能性がある。また、前記の配合量が少な過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対し50phr未満)には、シリコーン化合物が保持され難くなり、前記のメヤニ現象(液状のメヤニ等)も発生し易くなる。
シリカの好ましい粒径としては、前記のように結晶化に寄与する核剤としての機能の他に、取り扱い性を考慮すると、約1μm〜約100μmの範囲が挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
また、シリカと共にカオリン,タルク,マイカ,スメクタイト等の板状,鱗片状の層状結晶性充填剤を適宜組み合わせた無機充填剤であっても良い。この場合、層状結晶性充填剤により摺動性組成物の表面に微細な粗面が形成されるため、圧接部と被摺動対象(ガラス等)との接触面積が小さくなり、摺動耐久性がより向上する可能性がある。さらに、外観が艶消し黒色となることから、折れ皺が目立たなくなる等の効果もある。
無機充填剤中にシリカが約10wt%〜約30wt%の範囲で含まれている場合、層状結晶性充填剤の好ましい配合量としては、約0wt%〜約20wt%の範囲が挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。例えば、層状結晶性充填剤の配合量が多過ぎる場合、前記のメヤニ現象が発生し易くなると共に、摺動製品の表面が荒れ脆弱となることから、摺動耐久性が低下する可能性がある。
また、シリカと層状結晶性充填剤との結合化合物、例えば球状シリカと板状カオリンとの結合化合物(例えば、HOFFMAN MINERAL社製のシリチン;シリカ68wt%〜84wt%,カオリン15wt%〜25wt%)から成る無機充填剤は、シリカによりシリコーン化合物を摺動性組成物中に保持する効果を有すると共に、適度な表面粗さによって接触面積が小さくなる効果を有し、摺動耐久性が長時間確保される。オレフィン樹脂材料に対する結合化合物の配合量としては、約10wt%〜約30wt%の範囲が挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。例えば、配合量が多過ぎる場合には、前記のメヤニ現象(白色系のメヤニ等)が発生し易く摺動製品の外観性を悪化させると共に、曲げ弾性率が高くなり柔軟性が悪化する可能性がある。また、前記の配合量が少な過ぎる場合には、シリコーン化合物が保持され難くなり、前記のメヤニ現象(液状のメヤニ等)も発生し易くなる。
[シリコーン化合物]
シリコーン化合物においては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えばジメチルシリコーンオイル,メチルフェニルシリコーンオイル,シリコーンゲル(いわゆる、ガム状シリコーン)等のシリコーンオイルが挙げられ(具体例としては、信越化学社製のKF96,KF50,KE72BSや、GE東芝シリコーン社製のTSF451,TSF456,TSF3051等)、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせて用いても良い。また、シリコーン化合物において、所定の粘度(例えば、粘度が約100cps〜100000cps)のものを用いたり、配合量を設定(例えば、EPDM100phrに対し50phr〜150phrの範囲で設定)することが挙げられ、粘土状のものと液状のものとを併用することが挙げられるが、目的とする摺動性組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜変更して用いることができる。なお、シリコーン化合物の配合量が少な過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対し50phr未満の場合)には十分な摺動性が得られず、耐久性にも影響を及ぼす可能性がある。また、前記の配合量が多過ぎる場合(例えば、EPDM100phrに対し150phr超の場合)には前記のメヤニ現象(液状のメヤニ等)が発生し易くなり、そのメヤニが摺動製品表面に付着し外観性を悪化させてしまう可能性がある。
[架橋剤(フェノール樹脂系架橋剤)]
前記の架橋剤としてはフェノール樹脂系架橋剤を適用し、例えばアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂等を適用できる。また、末端の水酸基を臭素化した臭化フェノール樹脂、例えば臭素化アルキルフェノール樹脂等のハロゲン化フェノール樹脂を用いることもでき、好ましくはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。フェノール樹脂系架橋剤の好ましい配合量として約3phr〜約20phrの範囲、より好ましい配合量として約4phr〜約15phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損わない程度であれば適宜用いることができる。
なお、配合量が少な過ぎる場合には架橋反応が起こり難くなり、エラストマー成形体の機械的物性は低下する可能性がある。特に高温下の耐久性は、大きく悪化する可能性がある。また、配合量が多過ぎる場合には、架橋反応が過剰に起こり、局所的に架橋が偏ることで、加工性(押出し加工性等)が低下する可能性がある。
また、架橋触媒を用いることができ、例えばハロゲン系化合物を適用できる。このハロゲン系化合物とは、金属ハロゲン化物,有機ハロゲン化物を示すものであり、該金属ハロゲン化物としては第一塩化錫,第二塩化鉄,第二塩化銅等が挙げられ、有機ハロゲン化物としては塩素化ポリプロピレン,塩素化ポリエチレン,臭化ブチルゴム,クロロプレンゴム等のハロゲン化樹脂が挙げられる。
さらに、ハロゲン化物の好ましい配合量として約0.1phr〜約20phrの範囲、より好ましい配合量として約1phr〜約15phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。なお、配合量が少な過ぎる場合には、架橋反応が起こり難くなり、エラストマー成形体の機械的物性が低下する可能性はある。また、配合量が多過ぎる場合には、加工性(押出し加工性等)が低下したり、架橋反応が過剰に成る可能性がある。
なお、本実施形態のゴム組成物においては、前記のような各種成分の他に、架橋促進剤,架橋助剤等の各種成分が配合されていても良い。例えば、前記の架橋促進剤としては、熱可塑性エラストマー組成物の分野で知られているものを適用でき、例えば酸化亜鉛,脂肪酸,脂肪酸金属塩等が挙げられ、ステアリン酸,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛等の市販品も好適に適用できる。また、架橋促進剤の好ましい配合量としては約0.5phr〜約7phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
[加工助剤]
加工助剤としては、熱可塑性エラストマー組成物の分野で知られてるものを適用でき、例えばステアリン酸,リシノール酸,パルミチン酸,ラウリン酸,エルカ酸等の高級脂肪酸、該高級脂肪酸のエステル類、ステアリン酸等の高級脂肪酸の塩が挙げられ、ステアリン酸,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛等の市販品も好適に適用できる。また、加工助剤の好ましい配合量として約0.5phr〜約7phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
[その他]
以上示した各種成分の他には、液状ポリマー(液状ゴム),酸化防止剤,老化防止剤,脱水剤,熱安定剤,光安定剤,紫外線吸収剤,摺動性パウダー(例えば、PMMA,フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)系パウダー,アクリル系パウダー,シリコーンゴムパウダー,シリコーン樹脂パウダー,ポリカーボネート系パウダー,超高分子系ポリエチレンパウダー等),防雲剤,アンチブロッキング剤,スリップ剤,分散剤,難燃剤,帯電防止剤,導電性付与剤,粘着付与剤,架橋助剤,着色剤(酸化チタン等),金属粉末(フェライト等),ガラス繊維,炭素繊維,有機繊維(アラミド繊維等),複合繊維,ガラスバルーン,ガラスフレーク,グラファイト,カーボンナノチューブ,フラーレン,黒粉体,各種ゴム,有機発泡剤,熱膨張カプセル,ワックス,再生ゴム等が挙げられ、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせ、目的とする摺動製品の諸特性等を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
[製法]
本実施形態の摺動性組成物においては、EPDM,オレフィン系樹脂材料,カーボンブラックを含み混練し架橋された熱可塑性エラストマーと、無機充填剤と、シリコーン系化合物等と、を配合し混練して複合材料を得、所望の形状で成形加工して摺動製品が得られる方法であれば、摺動製品等の分野で用いられている手法(混練機,二軸押出し成形機等を用いた手法)を適宜適用することができる。前記の複合材料に係る混練には種々のミキサーを適用することができ、例えばラボプラストミル等のバッチ式ミキサーや二軸押出し式の成形機(例えば、混練しながら押出し成形可能なもの)等が挙げられる。
これら製法により、前記の摺動性組成物を押出し成形して成る圧接部と、熱可塑性エラストマー組成物を架橋して成る基部と、を構成した自動車用グラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品を得ることができる。
[摺動製品]
本実施形態の摺動性組成物においては、例えば自動車用のグラスラン,ウェザーストリップのように圧接部を有する摺動製品に適宜適用することができ、その一例として図1の概略図に示すような断面形状のグラスラン10が挙げられる。この図1においては、横断面略コ字状で長尺の基部1と、その基部1の内壁から突出した複数個(図中では4個)のリップ状の圧接部2と、が設けられている。符号3は、基部1の外壁から突出した係止爪部を示すものであり、車体パネル4に組みつけられたグラスラン10が該車体パネル4から抜けないようにするためのものである。前記の圧接部2における少なくともガラス5との接触面側、および基部1の底面側内壁は摺動性組成物6により形成されている。このような構成によれば、圧接部2(摺動性組成物6)がガラス5に対し弾性を有して摺動自在に圧接し、ガラスシール性が保持される。
このような摺動製品に適用される摺動性組成物においては、例えば曲げ弾性率350MPa以下、硬度(JIS K 6253に準拠した硬度(D))40〜60の範囲内にすることが挙げられるが、それぞれ目的とする摺動製品の特性を大きく損なわない程度であれば適宜設定しても良い。
次に、本実施形態に基づいて種々の複合材料を得、その複合材料を各々用いて成る各摺動性組成物の試料S1〜S12(実施例),P1〜P9(比較例)の特性を調べた。
まず、EPDMの一つであるエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(ダウケミカル社製のノーデルIP 4760P)100phrに対し、オレフィン系樹脂材料として結晶性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製のE‐200GP)任意量、カーボンブラック(旭カーボン社製の旭♯60H)任意量、軟化剤としてパラフィンオイル(JOMO社製のP300)50phr、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂化合物(田岡化学社製のタッキロール201)任意量、架橋助剤としてハロゲン系架橋触媒(日本化学産業社製の塩化第一錫)1phr,エルカ酸アミド(日油社製のエルカ酸アミド)1phr,酸化亜鉛(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛)1phr、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製のIrganox1010)1phr、を東洋精機社製のラボプラストミルB600(密閉式バンバリータイプ混練機)に一括投入して、チャンバー温度200℃,ロータ回転数100rpmの条件で混練し動的架橋を行い、その混練物の温度が220℃に到達した時点で当該混練物を取り出し、試料S1〜S12,P1〜P9に係る種々の熱可塑性エラストマー(表1中ではTPV)を得た。なお、熱可塑性エラストマーにおけるフェノール樹脂化合物の配合量において、試料S1〜S9,S12,P1〜P9の場合は5phrとし、試料S10の場合は3phr、試料S11の場合は2phrとする。
次に、前記の各熱可塑性エラストマーに対し、無機充填剤として試料S1〜S11,P1〜P9の場合はシリカ(日本シリカ工業社製のニップシールER)任意量,試料S12の場合はシリカ−カオリン結合化合物(HOFFMAN MINERAL社製のシリチン)200phr計量し、更にシリコーン化合物(信越化学社製のKF96‐1000cpsとKE76BSとが1:1の割合で混合されたもの)任意量計量し、その配合物をラボプラストミルB600(密閉式バンバリータイプ混練機)に一括投入して混練(チャンバー温度200℃,ロータ回転数100rpmの条件で混練)した。その混練物の温度が220℃に到達した時点で当該混練物を取り出し、試料S1〜S12,P1〜P9に係る種々の複合材料をそれぞれ得た。
Figure 2011052031
そして、前記の表1に示す各複合材料において、D20−10型ラボプラストミル一軸押出し機(東洋精機製作所製,20Φ)を用いてそれぞれ押出し加工(押出し加工条件;シリンダー前段の温度180℃,シリンダー中段の温度190℃,シリンダー後段の温度200℃,ヘッドの温度200℃,口金形状2mm×10mm,回転速度50rpm)することにより、種々の摺動性組成物の試料S1〜S12,P1〜P9をそれぞれ作製し、それら試料S1〜S12,P1〜P9の硬度(D)(JIS K 6253),柔軟性(曲げ弾性),耐久性(摺動に対する耐久性),架橋度を以下に示す方法により調べ、その結果を下記表2に示した。なお、各試料S1〜S12,P1〜P9の加工性(押出し加工性)においても調べ、その結果も下記表2に示した。
<加工性(「メヤニ」等の有無)>
前記の各複合材料の押出し加工により、長さ300mmの試料S1〜S12,P1〜P9をそれぞれ5時間連続で作製し続け、いわゆる口金の「メヤニ」や摺動性組成物表面の「ブツ」,「ササクレ」の有無を観測した。なお、後述の表2中の押出し加工性の欄において、記号「◎」は「メヤニ」等が全く観られなかった場合、記号「○」は「メヤニ」等が若干観られたが成形体への付着は観られなかった場合、記号「△」は「メヤニ」等が観られ2〜5時間経過時の成形体において付着が観られた場合、記号「×」は「メヤニ」等が観られ0〜2時間経過時の成形体において付着が観られた場合であったものとする。
<硬度>
JIS K 6253に準拠して、各試料S1〜S12,P1〜P9の硬度をタイプDのデュロメータにより測定した。
<柔軟性>
JIS K 7171に準拠して、各試料S1〜S12,P1〜P9の曲げ弾性(MPa)を測定した。
<耐久性>
まず、前記の各複合材料の押出し加工により、短冊状((7.0mm±0.5mm)×(120mm±0.5mm)×(0.7mm±0.5mm))の試料S1〜S12,P1〜P9を作製した。次に、図2の概略図に示すように、支持台(試験台)21上に試料20(試料S1〜S12,P1〜P9)を固定し、ガラス部材22の端部(JIS R 3211に準拠した自動車窓ガラスに相当するR10球面を有する端部)22aを29.4Nの荷重で圧接させた。この状態で、試料20表面(ガラス部材22が摺動する面)に泥水(ダスト:水=1:3の混合液)を滴下しながら、そのガラス部材22を水平方向(試料20の長手方向;図示矢印23方向)に対して摺動(ストローク;100±0.5mm、サイクル;60回/分、温度雰囲気;30℃〜80℃)させ、その摺動による試料20の磨耗状況を観測した。この観測では、前記の摺動による試料20の磨耗が400μmに達した際におけるガラス部材22のストローク回数を測定した。
<架橋度>
各試料S1〜S12,P1〜P9において、それぞれ1グラム切り出し1mm角の試験片となるように刻み、その試験片を100メッシュの鉄製籠内に入れ、シクロヘキサン中にて37℃に保ち72時間放置した。その後、前記の試験片を80℃の温度雰囲気下にて24時間乾燥を施し、その乾燥重量を測定した。そして、下記式(1)〜(3)に基づいて、各試料のEPDM成分(ゴム成分)に係る架橋度を算出(各配合成分の理論質量をそれぞれ求めて算出)した。
なお、下記式(1)〜(3)の各記号において、Pは乾燥後の試料片の質量,Qは浸漬される前の試料片の質量,Rはシクロヘキサン溶液に対して不溶な成分(充填剤,顔料等(EPDM,結晶性オレフィン系樹脂を除く))の質量,Sは浸漬される前の試料片における結晶性オレフィン系樹脂の質量,Tはシクロヘキサン溶液に対して可溶な成分(軟化剤等(EPDM,結晶性オレフィン系樹脂を除く))の質量とする。
X=P−(R+S) …… (1)
Y=Q−(R+S+T) …… (2)
「架橋度(%)」=(X/Y)×100 …… (3)
<総合評価>
加工性,硬度,柔軟性,耐久性,架橋度の各種検証結果を比較し総合的に判定した。なお、後述の表2中の「総合判定」の欄において、記号「◎」は自動車のグラスラン,ウェザーストリップ等の摺動製品に適用する場合を想定して好適な結果が得られた場合、記号「×」は不適格な結果が得られた場合、記号「○」は良好な結果が得られた場合(「◎」よりは劣るが、「×」よりも良好な場合)、記号「△」は十分な結果が得られた場合(「○」よりは劣るが、「×」よりも良好で摺動製品として十分適用できる場合)であったものとする。
Figure 2011052031
<オレフィン樹脂系材料の配合量や割合が過多の試料P1〜P4>
表2の結果に示すように、オレフィン系樹脂材料の配合量や比較的多い、または熱可塑性エラストマー中の割合が50wt%超の試料P1〜P4においては、曲げ弾性値が大きく、柔軟性が低くいことを確認できた。また、試料P2以外は日常環境温度下での耐久性を有するが、高温雰囲気下では耐久性が低いことを確認できた。さらに、試料P3のように比較的多量のカーボンブラックが配合されても、オレフィン樹脂系材料の配合量が多い場合には柔軟性が不十分であることを確認できた。
<カーボンブラックが多過ぎる試料P5>
試料P5のようにカーボンブラックの配合量が極めて多い場合、柔軟性は良好となるが、加工性や耐久性が低くなってしまうことを確認できた。
<シリコーン化合物や無機充填剤の配合量が過多または過少の試料P6,P7>
試料P6のようにシリコーン化合物の配合量が少ない場合には、加工性や柔軟性は良好となるものの、耐久性が低くなってしまう。一方、試料P7のようにシリコーン化合物の配合量が多過ぎる場合には、柔軟性が良好であり、たとえ高温雰囲気下でも耐久性が良好となるものの、加工性が低くなってしまう。
<無機充填剤の配合量が過多または過少の試料P8,P9>
試料P8のように無機充填剤が少な過ぎる場合には、日常環境下では耐久性を有し、柔軟性も良好となるが、加工性が低くなってしまうことを確認できた。一方、試料P9のように無機充填剤の配合量が多過ぎる場合には、耐久性は良好となるが、加工性や耐熱性が低くなってしまうことを確認できた。
<本実施形態に基づく試料S1〜S12>
試料S1〜S10,S12のように、オレフィン系樹脂材料の配合量を200phr〜350phrの範囲内かつ熱可塑性エラストマー中での割合を50wt%以下とし、カーボンブラックを比較的多く配合し、無機充填剤,シリコーン化合物を所定量配合した場合には、試料P1〜P9と比較すると柔軟性および耐久性が良好であることを確認できた。また、試料S11のように架橋度が50%未満になると、高温雰囲気下での耐久性が劣ってしまうものの、少なくとも日常環境温度下では十分な耐久性が得られ、摺動製品に十分適用できることを読み取れる。
以上示した結果から、実施例のように各種成分が配合された熱可塑性エラストマーを用い、その熱可塑性エラストマーに対し比較的多量のカーボンブラックと、所定量の無機充填剤やシリコーン化合物とを配合して成る摺動性組成物によれば、良好な加工性,柔軟性,耐久性が得られることを判明した。また、架橋度を50%以上とすることにより、高温雰囲気下での耐久性がより良好となることを判明した。
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
例えば、実施例では、試料S1〜S11等を用い比較検証して説明したが、ウェザーストリップ,グラスラン等の摺動製品分野の技術常識に基づき、熱可塑性エラストマー中のEPDM,ポリオレフィン樹脂材料,カーボンブラックや無機充填剤,シリコーン系化合物以外の各種添加剤において、配合量や種類等を適宜変更しても実施例同様の作用効果が得られることは明らかである。
1…基部
2…圧接部
3…係止爪部
4…車体パネル
5…ガラス部材
6…摺動性組成物

Claims (8)

  1. 少なくともエチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体100phrに対しオレフィン系樹脂材料200phr〜350phr,カーボンブラック100phr〜300phrを配合して混練し架橋された熱可塑性エラストマーと、少なくともシリカを含む無機充填剤50phr〜300phrと、シリコーン化合物50phr〜150phrと、を配合し混練された複合材料を成形加工して成る組成物であって、
    前記オレフィン系樹脂材料は、熱可塑性エラストマー全体の50wt%以下であることを特徴とする摺動性組成物。
  2. 前記熱可塑性エラストマーは、エチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体が50%以上架橋されたことを特徴とする請求項1記載の摺動性組成物。
  3. 前記無機充填剤は、層状結晶性充填剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の摺動性組成物。
  4. 前記の無機充填剤は、前記シリカと層状結晶性充填剤との結合化合物が含まれていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の摺動性組成物。
  5. 前記のシリコーン化合物は、粘土状のものと液状のものとが含まれていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の摺動性組成物。
  6. 車体パネルに組みつけられる基部と、その基部に設けられガラス部材に対して弾性を有する圧接部と、を備え熱可塑性エラストマー組成物から成る摺動製品であって、
    前記の圧接部のうち少なくともガラス部材に接する面に、請求項1〜5の何れかに記載の摺動性組成物を形成したことを特徴とする摺動製品。
  7. 前記の摺動性組成物は、曲げ弾性率が350MPa以下であることを特徴とする請求項6記載の摺動製品。
  8. 前記の摺動性組成物は、JIS K 6253に準拠した硬度(D)が40〜60の範囲内であることを特徴とする請求項7または8記載の摺動製品。
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