JP2011051669A - マンコンベアの移動手摺及びマンコンベア用手摺 - Google Patents

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Abstract

【課題】加水分解による劣化や加熱による色褪せを防止し、長期に渡って性能及び意匠性を維持できるマンコンベアの移動手摺を提供する。
【解決手段】横断面C字状を呈し、無端状に形成された樹脂からなる本体樹脂部10と、本体樹脂部10の内側面に、本体樹脂部10の長手に沿って設けられた帆布12とを備える。そして、上記本体樹脂部10の表面層13を、ポリカーボネート系ウレタンによって形成する。
【選択図】図2

Description

この発明は、エスカレーターや動く歩道等のマンコンベアで使用される移動手摺と、マンコンベアでの使用を目的としたマンコンベア用手摺とに関するものである。
エスカレーターや動く歩道といったマンコンベアでは、例えば、横断面略C字状を呈する無端状の移動手摺が使用され、乗客が移動する際に乗る踏段と同期するように、移動手摺が駆動されている。この移動手摺は、その要部が樹脂によって構成されており、その内部に抗張体が、また、内側面に帆布が備えられているのが一般的である。
下記特許文献1には、移動手摺の要部を構成する樹脂として、エステル系のウレタンを使用するものが提案されている。
特開2008−133073号公報
エステル系のウレタンは、低価格で熱劣化による変色がない等、種々の優れた点を有しているが、加水分解し易いといった欠点がある。このため、夏季に高温多湿となる日本(アジア)においては、移動手摺の要部を構成する樹脂としてエステル系のウレタンを採用すると、その劣化が激しく、移動手摺の補修や交換を頻繁に行わなければならなくなるといった問題があった。
一方、マンコンベアの中には、エーテル系のウレタンを移動手摺の樹脂として使用しているものもある。しかし、このエーテル系のウレタンは、加水分解し難いものの、熱劣化によって色褪せし易いといった問題があった。移動手摺は、その製造時及び使用後において繰り返し加熱されるため、エーテル系のウレタンに特有のこの性質は、マンコンベアの意匠性を低下させる大きな要因となっていた。
即ち、移動手摺の製造においては、先ず、熱可塑性である樹脂を押出機を用いて溶融及び成型し、長尺の手摺本体を得る。なお、この成型は、手摺本体の断面形状の都合上、一般に複数回に分けて行われている。そして、長尺の手摺本体を所望の長さに切断して所定の加工及び処理を施した後、手摺本体をエンドレス型に設置して端部同士を溶融接続することにより、無端状の移動手摺を製作している。
なお、図3は移動手摺の製造方法を説明するための図であり、手摺本体の端部をエンドレス型15内に配置した状態を示している。
また、建物や交通機関等の設備としてマンコンベアの運転が開始されると、移動手摺は、塵埃や利用者の荷物等との接触によってその表面に傷が付いてしまう。現状においては、移動手摺の表面に付いた傷を補修する場合、例えば、移動手摺の表面層を加熱して部分的な溶融と成型とを行い、その光沢を回復させている。
このように、移動手摺は、その製造時及び使用後において繰り返し加熱される。このため、エーテル系のウレタンを移動手摺の樹脂として採用すると、加熱毎に熱劣化が促進され、移動手摺の交換時期が早まってしまう。また、移動手摺は、利用者や周囲の人の視界に入る意匠品であり、且つ動くものであるため、色斑等が生じると非常に目立つといった問題もあった。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、加水分解による劣化や加熱による色褪せを防止し、長期に渡って性能及び意匠性を維持できるマンコンベアの移動手摺と、移動手摺として使用された際に上記目的を達成することができるマンコンベア用手摺とを提供することである。
この発明に係るマンコンベアの移動手摺は、横断面C字状を呈し、無端状に形成された樹脂からなる本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、を備え、本体樹脂部は、ポリカーボネート系ウレタンによってその表面層が形成されたものである。
この発明に係るマンコンベア用手摺は、横断面C字状を呈し、長尺に形成された樹脂からなる本体樹脂部と、本体樹脂部の内側面に、本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、を備え、本体樹脂部は、ポリカーボネート系ウレタンによってその表面層が形成されたものである。
この発明に係るマンコンベアの移動手摺によれば、加水分解による劣化や加熱による色褪せを防止することができ、長期に渡って性能及び意匠性を維持することができるようになる。
マンコンベアの全体構成を示す側面図である。 この発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図である。 移動手摺の製造方法を説明するための図である。
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1はマンコンベアの全体構成を示す側面図、図2はこの発明の実施の形態1におけるマンコンベアの移動手摺を示す断面図である。図2は図1のA−A矢視に相当する。
なお、以下においては、マンコンベアの一例として、上下階床間の移動の際に利用されるエスカレーターの構成について具体的に説明し、動く歩道等の他の例については、その説明を省略する。
図1及び図2において、1は上下階床間に架け渡されたエスカレーターのトラス、2は乗客が上下階床間を移動する際に乗る踏段、3は踏段2上の乗客が安全のために掴む移動手摺である。また、4は踏段2や移動手摺3を駆動するための駆動電動機、5は駆動電動機4の制御等、エスカレーター全体の制御を司る制御盤である。
エスカレーターにおいて使用される上記移動手摺3は無端状を呈しており、案内レール(図示せず)等に案内されて上下乗降口間を循環移動する。なお、移動手摺3は、その上部側が、例えば、踏段2の両側に立設された欄干6の縁部に沿って移動する。また、移動手摺3は、エスカレーターの上下乗降口において上下に反転され、下端側が、踏段2の両側に設けられたスカートガード内等に配置される。なお、この移動手摺3の具体的な構成については後述する。
7は移動手摺3を駆動するための手摺駆動装置である。この手摺駆動装置7は、例えば、駆動ローラ8及び加圧ローラ9を備えた摩擦駆動方式によって移動手摺3を駆動し、踏段2に同期するように移動手摺3を走行させる。具体的には、図2に示されているように、駆動ローラ8と加圧ローラ9とによって移動手摺3を上下から挟み込むとともに、その状態で駆動ローラ8を回転させることにより、移動手摺3との間の摩擦力を利用して移動手摺3を駆動する。なお、駆動の際、駆動ローラ8は移動手摺3の内側面に、加圧ローラ9は移動手摺3の外側面(乗客が把持する把持面)に接触する。
次に、上記移動手摺3の構成について具体的に説明する。
移動手摺3は、横(短手方向)断面が略C字状を呈しており、長期に渡ってその性能及び意匠性を維持できる特有の構成を有している。具体的に、移動手摺3は、上記機能を実現するため、その要部が、本体樹脂部10、抗張体11、帆布12によって構成されている。
本体樹脂部10は、横断面が略C字状を呈し、且つ無端状に形成された熱可塑性樹脂からなり、移動手摺3の要部を構成する。具体的に、本体樹脂部10は、表面層13及び中間層14の二層構造を有している。表面層13は、移動手摺3の外側面である、乗客が掴む把持面を形成する。即ち、この表面層13の表面が、乗客等の視界に入る部分となる。そして、この表面層13は、ポリカーボネート系のウレタンによって構成されている。
ポリカーボネート系のウレタンは、上述したエステル系のウレタンやエーテル系のウレタンと比較して価格が高いものの、加水分解し難く、加熱による色褪せも生じない。このため、移動手摺3の把持面を形成する樹脂としては最適である。なお、ポリカーボネート系のウレタンは比較的高価であるため、図2に示すものでは、移動手摺3の補修、即ち再成型に必要な部分のみ表面層13として、ポリカーボネート系のウレタンを適用している。かかる場合、表面層13の厚さは、1mm乃至2mm程度が適当である。
一方、中間層14は、移動手摺3の外側面及び内側面には現れず、移動手摺3の内部に配置されている。即ち、この中間層14が乗客等の視界に入ることはない。このため、中間層14は、加熱によって色褪せるものの加水分解による劣化を生じ難いエーテル系のウレタンによって構成されている。かかる構成であれば、本体樹脂部10の多くをエーテル系のウレタンによって構成することができ、移動手摺3の価格を抑えることができる。また、補修等によって加熱が繰り返されたとしても、変色は移動手摺3の内部でのみ発生し、移動手摺3の意匠性が損なわれる恐れもない。
なお、上記抗張体11は、移動手摺3に所定の引張強度を付与し、その伸びを防止するためのものである。この抗張体11は、例えば、スチールテープや鋼製のワイヤを縒り合わせたもの等からなり、中間層14に内蔵され、本体樹脂部10の長手に沿って配置されている。
また、上記帆布12は、移動手摺3の走行抵抗を低減させるために備えられたものであり、ポリエステルやナイロン等の化学繊維からなる織編物によって構成されている。この帆布12は、本体樹脂部10の内側面に設けられており、本体樹脂部10の長手に沿って配置されている。即ち、この帆布12が、移動手摺3の内側面を形成する。
上記構成を有する移動手摺3であれば、加水分解による劣化や加熱による色褪せを生じることもなく、長期に渡ってその性能及び意匠性を維持することができるようになる。また、ポリカーボネート系のウレタンからなる表面層13を薄く形成し、この表面層13と帆布12との間をエーテル系のウレタンからなる中間層14によって構成しているため、移動手摺3の価格を抑えることも可能となる。
なお、上記構成の移動手摺3を製造するためには、先ず、移動手摺3と同じ構成の横断面を有する長尺の手摺本体を製作すれば良い。即ち、上記手摺本体は、横断面略C字状の上記二層構造を呈する長尺の手摺本体部によって要部が構成され、手摺本体部の内部に抗張体が、手摺本体部の内側面に帆布が設けられる。そして、この手摺本体を所望の長さに切断して所定の加工及び処理を施した後、手摺本体の各端部をエンドレス型15内に設置して端部同士を溶融接続し、無端状の移動手摺3を完成させる。
一方、建物や交通機関等の設備としてマンコンベアの実際の運転が開始されると、移動手摺3には、塵埃が付着した状態で加圧ローラ9が押し付けられたり、利用者の荷物が接触したりすること等により、その表面に傷が付いてしまう恐れがある。
そこで、出願人がウレタンの傷付き易さと硬度との関係を調査したところ、硬いウレタンほど傷が付き易いという結果を得た。具体的には、サンドペーパーによる傷付き性を実験したところ、ショアAスケールにおいて90以上の硬度を有するウレタンでは表面に容易に傷が付き、85以下の硬度を有するウレタンでは、その表面に殆ど傷が付くことはなかった。なお、この結果は、ウレタンの種類に関係なく、ポリカーボネート系のウレタンによっても同様であった。
なお、移動手摺3は、外力による変形性、即ち横断面C字状の変形し難さも考慮する必要があるため、本体樹脂部10の表面層13(移動手摺3の把持面)の硬度としては、ショアAスケールにおいて75乃至85の値を有することが望ましい。
1 トラス
2 踏段
3 移動手摺
4 駆動電動機
5 制御盤
6 欄干
7 手摺駆動装置
8 駆動ローラ
9 加圧ローラ
10 本体樹脂部
11 抗張体
12 帆布
13 表面層
14 中間層
15 エンドレス型

Claims (5)

  1. 横断面C字状を呈し、無端状に形成された樹脂からなる本体樹脂部と、
    前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、
    を備え、
    前記本体樹脂部は、ポリカーボネート系ウレタンによってその表面層が形成されたことを特徴とするマンコンベアの移動手摺。
  2. 前記本体樹脂部は、
    ポリカーボネート系ウレタンによって形成された表面層と、
    前記表面層及び前記帆布の間に設けられ、エーテル系ウレタンによって形成された中間層と、
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載のマンコンベアの移動手摺。
  3. 前記本体樹脂部は、その表面層が、ショアAスケールにおいて85以下の硬度を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマンコンベアの移動手摺。
  4. 横断面C字状を呈し、長尺に形成された樹脂からなる本体樹脂部と、
    前記本体樹脂部の内側面に、前記本体樹脂部の長手に沿って設けられた帆布と、
    を備え、
    前記本体樹脂部は、ポリカーボネート系ウレタンによってその表面層が形成されたことを特徴とするマンコンベア用手摺。
  5. 前記本体樹脂部は、
    ポリカーボネート系ウレタンによって形成された表面層と、
    前記表面層及び前記帆布の間に設けられ、エーテル系ウレタンによって形成された中間層と、
    を備えたことを特徴とする請求項4に記載のマンコンベア用手摺。
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