JP2011043410A - 水素ガスセンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】水素ガスセンサの設置環境が急激に変化しても、水素ガスセンサの出力特性の変動を抑制して、適正に水素ガス濃度を検知することができる水素ガスセンサを提供する。
【解決手段】プロトン導電層2と、プロトン導電層2と触媒層3を介して接合される第一の電極層4aと、プロトン導電層2と接合される第二の電極層4bを備えたガス検知部7が、基板上10に積層形成され、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8がその上部に積層形成されている水素ガスセンサ。
【選択図】図1
【解決手段】プロトン導電層2と、プロトン導電層2と触媒層3を介して接合される第一の電極層4aと、プロトン導電層2と接合される第二の電極層4bを備えたガス検知部7が、基板上10に積層形成され、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8がその上部に積層形成されている水素ガスセンサ。
【選択図】図1
Description
本発明は、気相または液相中の水素ガス濃度を検出する水素ガスセンサに関する。
燃料電池に代表される水素エネルギーシステムを構成する上で、水素の濃度を精度良く検出する水素ガスセンサの必要性は極めて高く、気相中或いは液相中における水素濃度を測定するにあたり、感応部に高温をかける必要がなく、且つ隔膜や電解液を不要としてこれらの劣化を防止するとともに小型軽量化を可能とすることができる水素ガスセンサが望まれている。
本願出願人は、特許文献1に、このような用途に適した水素ガスセンサとして、プロトン導電層としての固体高分子電解質で構成される基材の一側面に、触媒層を形成し、触媒層とプロトン導電層のそれぞれに電極を接合した水素ガスセンサを提案している。
上述の水素ガスセンサは、接触燃焼式のガスセンサに比較して、良好な水素ガス選択性を備え、且つ、小型で消費電力が小さいという良好な特性を備えているのであるが、出力特性が温湿度環境による影響を受け易いという問題があった。
特に、乾燥環境下で急に湿潤な被検知ガスに晒され、或いは湿潤環境下で急に乾燥した被検知ガスに晒されると、被検知ガスに含まれる水素ガス濃度が等しい場合であっても、出力特性が変動して適正に水素ガスを検知し辛いという問題があった。
例えば、図9(b)に示すように、含有水素ガス濃度が等しい乾燥した被検知ガスに断続的に晒される場合に、水素ガスセンサの環境温湿度が異なると、出力電圧の基準レベルや出力電圧のピークレベルが変動する傾向が見られる。
そのため、例えば、所定の閾値電圧と、水素ガスセンサの出力電圧とを比較して、一定濃度の水素ガスを検知する場合であれば、環境の急激な変動を検知して閾値電圧を変化させるような信号処理回路を設ける必要があるが、そのような急激な環境変化を検知するための別途のセンサや信号処理回路を設けるとコストが嵩むという問題があり、そのような信号処理回路を備えても、高温高湿環境下で乾燥した被検知ガスに晒されると、出力電圧が鈍り、適正に検知することが困難になる。
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、水素ガスセンサの設置環境が急激に変化しても、水素ガスセンサの出力特性の変動を抑制して、適正に水素ガス濃度を検知することができる水素ガスセンサを提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による水素ガスセンサの特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、プロトン導電層と、プロトン導電層と触媒層を介して接合される第一の電極層と、プロトン導電層と接合される第二の電極層を備えたガス検知部と、ガス検知部を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層を備えている点にある。
上述の構成によれば、ガス検知部に水素ガス透過性の環境保護層が被覆されるため、ガス検知部が湿潤な被検知ガス、或いは乾燥した被検知ガスに曝されても、環境保護層によりガス検知部の環境の急激な変動が抑制され、適正に水素ガス濃度を検知することができるようになる。特に、ガス検知部に環境保護層が密着して被覆されるため、水素ガスセンサを大きな環境保護ケースに収容するといった必要がなく、小型の水素ガスセンサという特徴を損なうことがない。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、プロトン導電層と、プロトン導電層と触媒層を介して接合される第一の電極層と、プロトン導電層と接合される第二の電極層を備えたガス検知部が、基板上に積層形成され、ガス検知部を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層がその上部に積層形成されている点にある。
上述の構成によれば、ガス検知部が基板上に積層形成され、その上部に環境保護層が積層形成されるため、耐環境特性に優れた小型且つ薄膜の水素ガスセンサを得ることができる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、環境保護層が熱硬化性樹脂または紫外線硬化樹脂または熱可塑性樹脂で形成されている点にあり、このような樹脂を用いることにより、極めて容易に製造することができ、水素ガスセンサに曝気される被検知ガスの温湿度による環境変動を効果的に緩衝させることができる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、環境保護層が撥水性樹脂で形成されている点にあり、水素ガスセンサに曝気される被検知ガスの湿度による環境変動を効果的に緩衝させることができる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述した第四の特徴構成に加えて、撥水性樹脂がシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂である点にある。
以上説明した通り、本発明によれば、水素ガスセンサの設置環境が急激に変化しても、水素ガスセンサの出力特性の変動を抑制して、適正に水素ガス濃度を検知することができる水素ガスセンサを提供することができるようになった。
以下、本発明による水素ガスセンサについて説明する。図1から3に示すように、水素ガスセンサ1は、プロトン導電層2と、プロトン導電層2と触媒層3を介して接合される第一の電極層4aと、プロトン導電層2と接合される第二の電極層4bを備えたガス検知部7が、基板上10に積層形成され、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8がその上部に積層形成されている。このような水素ガスセンサ1は、複数の態様で構成することができる。
第一の態様として、図1(a)に示すように、基板10上に形成された第二の電極層4bと、第二の電極層4bに積層されたプロトン導電層2と、プロトン導電層2に積層された触媒層3と、触媒層3に積層された第一の電極層4aを備えたガス検知部7と、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8をその上部に積層形成することにより、基板縦型の水素ガスセンサ1を構成することができる。
基板10は、その上面に成膜されるプロトン導電層2を安定に保持できるものであれば、ガラス、セラミック、シリコーン等の無機材料を用いた基板から樹脂材料を用いた柔軟性のある基板まで様々な材料を用いて構成することができる。
基板10は、プロトン導電層2の成膜時に高温環境に晒されるため、一定の耐熱性が要求される。
基板を構成する樹脂材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、環状オレフィン、ポリエチレンスルフォネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ウレタン、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂(PTFE,PFA,ETFE,FEP,PVDF等)等を用いることができる。
プロトン導電層2として、固体高分子電解質Sを採用することができ、高いプロトン導電性を有するパーフルオロスルホン酸系、パーフルオロカルボン酸系等のパーフルオロ系高分子や、Poly(styrene-ran-ethylene),sulfonated等のpartially sulfonated styrene-olefin copolymerでなる固体高分子電解質膜を採用することが好ましく、ナフィオン(デュポン社登録商標:NAFION)やアシプレックス(旭化成株式会社登録商標:ACIPLEX)等が好適に使用できる。
また、プロトン導電層2として、イオン液体と樹脂の混合物を硬化処理した固体イオン導電体を用いることも可能である。
固体イオン導電体は、光硬化樹脂、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れかにイオン液体を混合した後に硬化処理されて得られる。
イオン液体として、イミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、脂肪族アミン系イオン、脂環式アミン系イオン、脂肪族ホスホニウム系イオンの何れかから一種または複数種選択されるカチオン部位と、ハロゲンイオン、ハロゲン系イオン、ホスフォネート系イオン、ホウ酸系イオン、トリフラート系イオンの何れかから一種または複数種選択されるアニオン部位を有するものが好適に選択できる。
光硬化樹脂としてエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ジアゾ樹脂、アジド樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。ここで、光硬化樹脂とは、紫外線硬化樹脂、可視光硬化樹脂、電子ビーム硬化樹脂を含む広い概念を意味するものである。
熱硬化性樹脂として、イオン液体と熱硬化樹脂と反応剤を攪拌混合した後に膜状に成形して加熱処理することにより膜状の固体イオン導電体1が得られる。熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、尿素樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂等を用いることができる。
熱可塑性樹脂として、イオン液体と高温で溶融状態にある熱可塑性樹脂とを攪拌混合した後に膜状に成形して冷却処理することにより膜状の固体イオン導電体1が得られる。熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート等の汎用樹脂の他にポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニリデンフロライド等のフッ素樹脂等のエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等を用いることができる。
固体イオン導電体を用いたプロトン導電層2は、光硬化樹脂、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れかから選択される樹脂にイオン液体を混合して攪拌する混合工程と、前記混合工程で攪拌混合処理されたイオン導電体を基板10上に滴下してキャスティングする工程と、キャスティングされたイオン導電体を硬化させる硬化処理工程により成膜される。
さらに、プロトン導電層2として、有機無機ハイブリッド電解質を採用することも可能である。有機無機ハイブリッド電解質は、ゾルゲル法等により、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ等のセラミック中に、必要に応じて有機物を残存させながら、各種の有機系や無機系の電解質をナノ分散させたものである。有機系の電解質としては、尿素、ポリエチレンオキシドやパーフルオロスルホン酸系ポリマー等の高分子電解質が挙げられる。また、無機系の電解質としては、リン酸や硫酸等の各種の酸やアルカリの塩、イオン導電性のガラスやセラミックス等が挙げられる。
さらに、固体高分子電解質Sに導電性粒子を分散させることにより、出力の安定性を確保することができる。固体高分子電解質Sに分散される導電性粒子として、導電性樹脂やカーボンC素材等を選択することができる。
このようなカーボンC素材として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記す。)、フラーレン、グラファイト、ナノカーボン、カーボンブラック、ナノダイアモンド、ナノポーラスカーボンの何れかを選択することができる。また、カーボンブラックは具体的には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラフトカーボン等が例示できる。何れの場合にも優れた安定性が示される。
カーボンC(CNTやグラファイト等)のサイズ(粒径、または、長さや径)は特に限定されるものではないが、アスペクト比が高い方が好ましく、特に、長さ1μm〜500μm、径5〜200nmが好ましい。
さらに、固体高分子電解質Sに分散されるカーボンCは、一種類のカーボンに制限されるものではなく、異なる種類のCNTやCNTとグラファイト等、異なる種類のカーボンを混ぜ合わせてもよい。
環境保護層8は、ガス検知部7を密着するように、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれかで被覆されており、好ましい態様としては、水素ガス透過性の撥水性の樹脂で被覆されている。本発明において撥水性樹脂とは、水に対するハジキ効果のある樹脂を指し、その程度は水の接触角で評価することができる。本発明の環境保護層8に用いられる撥水性樹脂は、接触角が65°以上であるものが好ましく、100°以上のものが更に好ましい。
このような環境保護層8に用いられる樹脂として、アクリル、エポキシ、シリコーン系の紫外線硬化樹脂や、フッ素、シリコーン系の熱硬化性樹脂や、フッ素系の熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルペンテンやポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂が好適に採用できる。また、環境保護層8は単層である必要はなく、複層で形成されていてもよい。更に、環境保護層8に他の機能を備える為の別の層が形成されていてもよい。
紫外線硬化樹脂や、熱硬化性樹脂を用いる場合には、基板10上に形成されたガス検知部7に材料樹脂を塗布した後に、硬化処理することにより環境保護層8が形成される。熱可塑性樹脂を用いる場合には、基板10上に形成されたガス検知部7に熱溶融した材料樹脂を塗布して硬化させ、或いは基板10上に形成されたガス検知部7にフィルム状の材料樹脂を被覆した後に当該フィルムを熱融着させ、或いは、基板10上に形成されたガス検知部7に、粘着剤や粘着シートを介して該材料樹脂の熱溶融押出成形フィルムを貼付させることにより環境保護層8が形成される。
このような環境保護層8により、所定の温湿度環境にあるガス検知部7が、その温湿度環境と異なる被検知ガスに晒される場合であっても、ガス検知部7の温湿度環境の急激な変動が抑制され、安定した出力特性が得られる。環境保護層8が防湿膜、或いは温度緩衝膜として機能するためである。
図1(a)には、固体高分子電解質SにカーボンCが分散されたプロトン導電層2が示されているが、図1(b)に示すように、プロトン導電層2としては、カーボンC等の導電性粒子が分散されていない固体高分子電解質Sのみで構成されるものであってもよい。尚、前者は後者と比較して、水素ガスに接触していないときの出力が安定し、精度よく水素ガスを検出できる。
固体高分子電解質Sまたは固体高分子電解質SにカーボンCが分散された固体高分子電解質Sを用いる場合には、固体高分子電解質溶液またはカーボンCが分散された固体高分子電解質溶液を、基板10上にキャスティングすることによりプロトン導電層2を形成することができる。
触媒層3は、水素ガスと接触することにより触媒機能を持つ金属等でなる触媒3aがプロトン導電層2の上面に担持されて構成されている。
触媒3aとして、白金Ptまたは白金合金が好適に用いられるが、その他に、金Au、銀Ag、イリジウムIr、パラジウムPd、ルテニウムRu、オスミウムOs、コバルトCo、ニッケルNi、タングステンW、モリブデンMo、マンガンMn、イットリウムY、バナジウムV、ニオブNb、チタンTi、希土類金属、から選択される少なくとも一種を含む金属を用いることができる。
金属触媒に代えてモリブデンカーバイドMo2C等の炭化物、ジルコニア酸化物やタンタル酸化物等の酸化物を用いることも可能である。
これらの触媒3aは一種類を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、これらの一部または全部を合金形態で使用してもよい。
また、水素ガスと接触することにより触媒活性を有する有機金属または有機物でなる触媒3aを用いることも可能である。このような有機金属触媒として、例えば、N,N’-Bis(salicylidene)ethylene-diamino-metal(=Ni, Fe, Vなど)、N,N’-mono-8-quinoly-σ-phenylenediamino-metal(=Ni, Fe, Vなど)等を用いることができ、有機物としては、例えばピロロピロール赤色顔料、ジピリジル誘導体を用いることができる。
触媒層3は、スパッタリング、真空蒸着、電子照射、CVD、PVD、含浸、スプレーコート、スプレー熱分解、練りこみ、吹き付け、ロールやコテによる塗り付け、スクリーン印刷、混錬法、光電解法、コーティング法、ゾルゲル法、ディップ法等を採用して形成することができる。
特に、スパッタリングで触媒層3を形成することが好ましい。スパッタリングの処理時間は90秒未満が好ましく、さらに60秒以下とすることがより好ましい。また、スパッタリングの際のDC、RF出力値は特に制限されないが、1.2W/cm2以上とすることが好ましい。
第一電極4aは、水素ガスが触媒層3に接触するように、通気性を備えた材料で構成する必要があり、カーボンペーパー、カーボン繊維不織布等を好適に用いることができる。さらには、多数の細孔が形成された銅ニッケル合金薄膜や、良好な導電性を備えた金属ポーラス焼結体で構成することも可能である。
カーボンペーパー、カーボン繊維不織布等を用いる場合、触媒層3を介してプロトン導電層2と密に接続するために、イオン交換樹脂を塗布することが好ましい。イオン交換樹脂として、デュポン社製の各種ナフィオン(デュポン社登録商標:Nafion)やダウケミカル社製のイオン交換樹脂等を用いることができる。
第二電極4bは、特に通気性を必要とせず、銅、銀、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、ステンレス等の金属やカーボン素材を用いることも可能であるが、高湿度下でも腐食しない材料を選択することが望ましい。このような電極層は、塗布、スクリーン印刷、メッキ、スパッタリング、真空蒸着等公知の膜形成法により基板10上に形成することができる。
また、図1(c)に示すように、基板10と第二の電極層4bを兼用して、銅、アルミニウム等の金属製の基板10(4b)で構成することも可能である。
上述した水素ガスセンサ1は、基板10上にスクリーン印刷等により第二の電極層4bを形成する工程と、その上部にプロトン導電層2を形成する工程と、プロトン導電層2の上部に触媒3aを担持させて触媒層3を形成する工程と、触媒層3の上部に第一の電極層4aを形成する工程と、各工程を経た積層体を所定のサイズに切断する工程と、切断後の積層体の表面に環境保護層8を形成する工程により製造される。
プロトン導電層2を形成する工程には、例えば、水‐プロパノール等のアルコール系溶媒に固体高分子電解質を溶かして得られる固体高分子電解質溶液に、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラファイト、ナノカーボン、カーボンブラック、ナノダイアモンド、ナノポーラスカーボンの何れかから選択されるカーボンCを所定量混入する工程と、固体高分子電解質溶液中にカーボンCを分散させる分散処理工程と、分散処理した後に基板10上にキャスティング等により所定形状に成形する成形工程と、成形された基材を加熱乾燥して溶媒を除去する加熱乾燥工程が含まれる。
アルコール系の溶媒に代えて、水‐ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性を示す有機溶媒を用いることも可能である。何れの場合でも、溶媒と、溶媒に混入されるカーボン素材の組合せによりカーボンCの分散性は異なる。
加熱乾燥工程では、カーボンCの分散状態を維持しながら加熱乾燥させるために、溶媒の組成、固体高分子電解質とカーボンの重量比等に基づいて加熱時間及び加熱温度を調整することが重要である。
電解質膜中にカーボンCが分散された状態が確保できれば、固体高分子電解質とカーボンの配合比は特に制限されるものではないが、100:1〜10:10が好ましい。
尚、導電性粒子を分散させない場合には、水‐プロパノール等のアルコール系溶媒に固体高分子電解質を溶かして得られる固体高分子電解質溶液を基板10上にキャスティング等により所定形状に成形する成形工程と、成形された基材を加熱乾燥して溶媒を除去する加熱乾燥工程を経て成膜される。
環境保護層8は、材料樹脂としてシリコーン系の紫外線硬化樹脂を用いる場合には、ガス検知部7に材料樹脂を塗布、または材料樹脂の溶液にガス検知部7を浸漬した後に、所定強度の紫外線を所定時間照射することにより製膜される。材料樹脂としてフッ素系の熱硬化性樹脂を用いる場合には、ガス検知部7に材料樹脂を塗布、または材料樹脂の溶液にガス検知部7を浸漬した後に、所定温度で所定時間加熱処理することにより製膜される。
環境保護層8の膜厚が薄い場合には、ガス検知部7の環境変動を十分に抑制できず、環境保護層8の膜厚が厚い場合には、環境保護層8を透過してガス検知部に到達する水素ガス量が少なくなるため感度が低下し、信号応答が遅くなる。環境保護層8の膜厚が10μmから1000μmの範囲であれば、ガス検知部7の環境変動を適正に抑制しながらも十分な感度を確保できるようになり、特に膜厚が50μmから500μmの次範囲が好ましい。
このような膜厚の調整は、例えば、塗布または浸漬処理するための材料樹脂を溶媒で所定濃度に希釈することにより実現できる。
第二の態様として、図2(a)に示すように、基板10上に形成されたプロトン導電層2と、プロトン導電層2の上面に離隔するように積層された触媒層3及び第二の電極層4bと、触媒層3に積層された第一の電極層4aを備えたガス検知部7と、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8をその上部に積層形成することにより、基板横型の水素ガスセンサ1を構成することができる。
この場合、第一の電極層4aは通気性を備える必要があるが、第二の電極層4bは通気性を備える必要はない。
図2(b)に示すように、基板10に水素ガスセンサ1の出力を取り出す配線パターン5a,5bを形成して、各電極層4a,4bと配線パターン5a,5bがそれぞれ接続されるように、各電極層4a,4bを構成することも可能である。
第三の態様として、図3(a)に示すように、基板10上に離隔するように形成された第一の電極層4a及び第二の電極層4bと、第一の電極層4aに積層された触媒層3と、第二の電極層4b及び触媒層3を覆うように積層されたプロトン導電層2を備えたガス検知部7と、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8をその上部に積層形成することにより、対電極基板型の水素ガスセンサ1を構成することができる。
この場合、第一の電極層4aは通気性を有する材料である必要はなく、第二の電極層4bと同じ材料で構成することも可能である。尚、水素ガスはプロトン導電層2を通過して触媒層3に接触する。
第一の電極層4aと第二の電極層4bの何れかを基板10と兼用することも可能である。この場合、図3(b)に示すように、他方の電極層4bは絶縁層4cを介して基板10上に積層する必要がある。
第二及び第三の態様の水素ガスセンサについても、電極層4a,4b、プロトン導電層2、触媒層3、環境保護層8の組成や材料、製造プロセスはほぼ同様である。
また、電極層4aの表裏何れかの面にカーボンペーパーやカーボン不織布等でなるガス拡散層を設けると、水素ガスが均等に触媒層3と接触できるようになり、感度が向上する。さらに、電極層4aと触媒層3との間、または電極層4bとプロトン導電層との間にカーボンペーパーやカーボン不織布等でなるガス拡散層を介在させることにより、電極層4a,4bの耐食性が向上する。
本発明による水素ガスセンサ1は、触媒層3を電極層4aと兼用することも可能である。例えば、電極層4aを触媒である白金等の触媒金属を用いて構成することができる。この場合、他方の電極層4bは白金とは仕事関数が異なる種類の電極を用いることが好ましい。
第一の態様及び第二の態様の水素ガスセンサ1では、環境保護層8を介して触媒層3側の電極4aに水素ガスが流入すると、触媒の作用により水素が水素イオンと電子に分解され、電子が留まる電極4aが電極4bに対して負電位になる。また、第三の態様の水素ガスセンサ1では、プロトン導電層2を介して触媒層3に水素ガスが流入すると、触媒の作用により水素が水素イオンと電子に分解され、電子が留まる電極4aが電極4bに対して負電位になる。つまり、触媒層3が形成された側の電極4aが負極となる。このとき水素ガス濃度と相関関係を有する電圧値を外部回路で検出することにより水素ガス濃度を検出することができる。
触媒層3から第二の電極層4bに移動するプロトンの導電経路となるプロトン導電層2の経路の幅を広く間隔を短くすることにより水素ガス検出能を向上させることができる。そのため、図4に示すように、第二の態様及び第三の態様の水素ガスセンサ1では、第一の電極層4a及び触媒層3と、第二の電極層4bの端縁がそれぞれ櫛歯状に形成され、一方の櫛歯の間隙に他方の櫛歯が位置するように積層されることが好ましい。
さらに、上述した基板型の水素ガスセンサ以外に、図5に示すように、プロトン導電性を備えた固体高分子電解質で構成されるプロトン導電層2の少なくとも一側面に、水素ガスと接触することにより触媒機能を発揮する金属等の触媒を担持させた触媒層3を形成し、プロトン導電層2と触媒層3を挟むように電極4(4a,4b)を接合したガス検知部7を備え、ガス検知部7を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層8をガス検知部7の周囲に形成することにより、自立膜型の水素ガスセンサ1を構成することができる。
このような自立膜型の水素ガスセンサは、プロトン導電層2の原料となる高分子電解質溶液を型枠に流し込んでキャスト製膜する製膜工程と、溶媒を乾燥させた後に型枠から膜を剥離する剥離工程と、剥離した膜の表面に触媒を担持させる触媒担持工程と、触媒が担持された膜を適切なサイズに切断する切断工程と、切断された膜の両面に電極を接合する電極取付工程と、さらにその周囲に環境保護層8を形成する製膜工程により製造することができる。
尚、基材となる固体高分子電解質にカーボン等の導電性粒子を分散することにより、出力の安定性を確保することができる点は、基板型の水素ガスセンサと同様である。
以上説明した水素ガスセンサは、大気中のみならず、酸素が存在しない環境下であっても、選択的に水素ガスを適切に検出することができる。
以下、実施例を説明する。
〔実験例1〕
<白金対電極基板の形成>
上面に電極となる白金をスパッタリング成膜したポリイミドフィルム(東レデュポン製 厚み30μm)を1mm幅に短冊状にカットし、カットした短冊状のポリイミドフィルム2本を、厚み188μmの白PET(東レ ルミラーU2)フィルム基板の上に、0.5mm間隔に粘着材で貼り付け固定した。
〔実験例1〕
<白金対電極基板の形成>
上面に電極となる白金をスパッタリング成膜したポリイミドフィルム(東レデュポン製 厚み30μm)を1mm幅に短冊状にカットし、カットした短冊状のポリイミドフィルム2本を、厚み188μmの白PET(東レ ルミラーU2)フィルム基板の上に、0.5mm間隔に粘着材で貼り付け固定した。
<触媒層の形成>
片方の白金電極自体を触媒層と兼用し、他方の白金電極の上に、カーボンペースト(アサヒ化学研究所製 FTU-30)を専用溶剤で希釈して塗布し、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥してカーボン電極を形成した。
片方の白金電極自体を触媒層と兼用し、他方の白金電極の上に、カーボンペースト(アサヒ化学研究所製 FTU-30)を専用溶剤で希釈して塗布し、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥してカーボン電極を形成した。
<電解質膜の形成>
固体高分子電解質としてスルホン化スチレンエチレン共重合体の膜を形成した。スルホン化スチレンエチレン共重合体溶液(Aldrich製 Poly(styrene-ran-ethylene)、sulfonated、5wt% solution in 1-propanol)を対電極基板の中央部に1μL滴下し、膜が2つの電極を覆うように塗布し、熱風循環オーブンで80℃1時間乾燥して成膜した。
固体高分子電解質としてスルホン化スチレンエチレン共重合体の膜を形成した。スルホン化スチレンエチレン共重合体溶液(Aldrich製 Poly(styrene-ran-ethylene)、sulfonated、5wt% solution in 1-propanol)を対電極基板の中央部に1μL滴下し、膜が2つの電極を覆うように塗布し、熱風循環オーブンで80℃1時間乾燥して成膜した。
<環境保護層の形成>
このような手順で製作したガス検知部に、フッ素系の熱硬化性樹脂(信越化学社製SIFEL2662、接触角118°)を、電解質膜を覆うように塗布して、熱風循環オーブンで100℃、2時間乾燥して環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約100μmである。その結果、図6に示す対電極基板型の水素ガスセンサが得られた。尚、環境保護層の撥水性は、KRUSS社製自動接触角計 DSA20Eで測定した。
このような手順で製作したガス検知部に、フッ素系の熱硬化性樹脂(信越化学社製SIFEL2662、接触角118°)を、電解質膜を覆うように塗布して、熱風循環オーブンで100℃、2時間乾燥して環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約100μmである。その結果、図6に示す対電極基板型の水素ガスセンサが得られた。尚、環境保護層の撥水性は、KRUSS社製自動接触角計 DSA20Eで測定した。
<水素ガス応答性の評価>
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、所定の複数の温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で測定した。
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、所定の複数の温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを20L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。この測定を、40〜60℃、湿度30〜60%RHの間で温湿度条件を変えて行なった。測定結果を図7に示す。
図7(a)に示すように、複数の温湿度環境条件下で、水素ガスセンサの出力電圧は、ベース電圧(水素ガスに感応する前の電圧をいう。)に変化が見られるものの、水素ガスに対する信号電圧は充分に大きく取れており、この温湿度範囲では、出力電圧が乱れず、安定して水素ガスの検出が可能である。例えば、図7(a)に示す各温湿度環境条件下での出力特性を時間軸方向にずらせて表示した図7(b)に示すように、一点鎖線で示す電圧範囲、つまり、環境により変動するベース電圧の最大値と、環境により変動する水素ガスに対する信号電圧の最小値の間に閾値を設定することにより、何れの環境条件で乾燥した水素ガスに晒されても、安定して水素ガスを検知することができる。水素ガスに対する信号電圧の最小値が検出対象である水素ガスの濃度により変動する場合には、水素ガスの検出最小濃度に対応する信号電圧の最小値を選択すればよい。尚、水素ガスセンサに、窒素ガスや一酸化炭素ガス等の他の種類のガスを当てても、出力電圧が変化せず、水素ガス選択性があることも確認されている。
〔実験例2〕
次に、実験例1と同様にして製作したガス検知部に、エポキシアクリレート紫外線硬化樹脂(日本ユピカ製ネオポール8318、接触角71°)を、電解質膜を覆うように塗布して、紫外線を照射して硬化させ、環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約300μmである。水素ガスセンサの構成は、図6と同様である。
次に、実験例1と同様にして製作したガス検知部に、エポキシアクリレート紫外線硬化樹脂(日本ユピカ製ネオポール8318、接触角71°)を、電解質膜を覆うように塗布して、紫外線を照射して硬化させ、環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約300μmである。水素ガスセンサの構成は、図6と同様である。
<水素ガス応答性の評価>
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、所定の複数の温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を当て、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で測定した。
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、所定の複数の温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を当て、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを20L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。この測定を、40〜60℃、湿度30〜60%RHの間で温湿度条件を変えて行なった。測定結果を図8に示す。
図8(a)に示すように、実験例1と同様に、複数の温湿度環境条件下で、水素ガスセンサの出力電圧は、ベース電圧に変化が見られるものの、水素ガスに対する信号電圧は充分に大きく取れており、この温湿度範囲では、出力電圧が乱れず、安定して水素ガスの検出が可能である。例えば、図8(a)に示す各温湿度環境条件下での出力特性を時間軸方向にずらせて表示した図8(b)に示すように、一点鎖線で示す電圧範囲に閾値を設定することにより、何れの環境条件で乾燥した水素ガスに晒されても、安定して水素ガスを検知することができる。
〔比較例1〕
実験例1及び実験例2と同様にして製作したガス検知部に、環境保護層を形成することなく、上述と同様に水素ガス応答性の評価を行なった。測定結果を図9に示す。
実験例1及び実験例2と同様にして製作したガス検知部に、環境保護層を形成することなく、上述と同様に水素ガス応答性の評価を行なった。測定結果を図9に示す。
図9(a)に示すように、複数の温湿度環境条件下で、水素ガスセンサの出力電圧は、ベース電圧及び水素ガスに対する信号電圧ともに大きく変動していることが判る。特に、60℃、60%RHでは、信号電圧がその振幅、信号幅ともに極めて小さくなっている。急激に環境温度及び湿度が低下することの影響である。
図9(a)に示す各温湿度環境条件下での出力特性を時間軸方向にずらせて表示した図9(b)に示すように、環境条件が急激に変動すると、一定の閾値電圧では適正に水素ガスを検知できなくなる。
〔実験例3〕
次に、自立膜型の水素ガスセンサを製作した。
<電解質膜の構成>
固体高分子電解質としてカーボン含有スルホン化スチレンエチレン共重合体の膜を形成した。
次に、自立膜型の水素ガスセンサを製作した。
<電解質膜の構成>
固体高分子電解質としてカーボン含有スルホン化スチレンエチレン共重合体の膜を形成した。
スルホン化スチレンエチレン共重合体溶液(Aldrich製 Poly(styrene-ran-ethylene)、sulfonated、5wt% solution in 1-propanol)にカーボン(三菱化学製#4000B)を固形分比1.5wt%になるように混合し、超音波ホモジナイザーで10分攪拌し、スターラーで30分攪拌して、キャスト溶液を作製した。
この溶液を正方形状の金型枠に流し込んで、80℃の熱風循環オーブンで2時間乾燥して、カーボン含有スルホン化スチレンエチレン共重合体の電解質膜を形成した。
この溶液を正方形状の金型枠に流し込んで、80℃の熱風循環オーブンで2時間乾燥して、カーボン含有スルホン化スチレンエチレン共重合体の電解質膜を形成した。
<触媒層の形成>
得られた電解質膜の片面に白金をターゲットとしたRFスパッタリングにより白金触媒層を形成した。スパッタリング条件は、アルゴンガス流量20sccm、投入電力300W、成膜時間30秒である。
得られた電解質膜の片面に白金をターゲットとしたRFスパッタリングにより白金触媒層を形成した。スパッタリング条件は、アルゴンガス流量20sccm、投入電力300W、成膜時間30秒である。
<センサの組立>
図10(a)に示すように、得られた電解質膜をφ13mmの形状に切り出し、φ12mmのカーボンペーパーで両面を挟み、さらにこれを、外周がφ26mmで、中央部にφ6mmの孔が形成されたステンレス製のドーナツ状の電極板で両面を挟んでネジ止めして、水素ガスセンサを製作した。
図10(a)に示すように、得られた電解質膜をφ13mmの形状に切り出し、φ12mmのカーボンペーパーで両面を挟み、さらにこれを、外周がφ26mmで、中央部にφ6mmの孔が形成されたステンレス製のドーナツ状の電極板で両面を挟んでネジ止めして、水素ガスセンサを製作した。
<環境保護層の形成>
エポキシアクリレート紫外線硬化樹脂(日本ユピカ製ネオポール8318、接触角71°)を、電解質膜を覆うように塗布して、紫外線を照射して硬化させ、環境保護層を形成した。環境保護層の膜厚は、約500μmである。その結果、図10(b)に示す自立膜型の水素ガスセンサが得られた。
エポキシアクリレート紫外線硬化樹脂(日本ユピカ製ネオポール8318、接触角71°)を、電解質膜を覆うように塗布して、紫外線を照射して硬化させ、環境保護層を形成した。環境保護層の膜厚は、約500μmである。その結果、図10(b)に示す自立膜型の水素ガスセンサが得られた。
<水素ガス応答の温湿度依存性の評価>
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、ステンレス製の電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
得られた水素ガスセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、ステンレス製の電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを1L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。測定結果を図11に示す。
次に、得られた水素ガスセンサを常温常湿環境下(25℃、30%RH)に設置して、水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝し、ステンレス製の電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定し、さらに、水素ガスセンサに40℃、80%RHに加湿した空気ベースの水素ガスを曝し、ステンレス製の電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
何れも、センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを1L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。測定結果を図12に示す。
〔比較例2〕
実験例3と同様にして製作したガス検知部に、環境保護層を形成することなく、上述と同様に水素ガス応答性の評価を行なった。測定結果を図11及び図12に示す。
実験例3と同様にして製作したガス検知部に、環境保護層を形成することなく、上述と同様に水素ガス応答性の評価を行なった。測定結果を図11及び図12に示す。
図11に示すように、水素ガスセンサが高温高湿環境下にあるときに、乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気すると、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例2)では、信号電圧が小さく、歪んだ電圧波形になり、ベース電圧も次第に低く変化し、水素ガス濃度を検知できない状態に到るが、環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例3)では、ベース電圧、信号電圧ともに適正に出力され、水素ガスを適正に検知できることが確認された。
図12に示すように、水素ガスセンサが常温常湿環境下にあるときに、乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気すると、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例2)も環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例3)も、ともに水素ガスを適正に検知できることが確認された。乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気しても、水素ガスセンサの環境が大きく変動しないためである。
しかし、環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例3)は、環境保護層を通過する水素ガスが制限されるため、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例2)よりも信号電圧が低下し、立上り応答が遅くなっている。
しかし、環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例3)は、環境保護層を通過する水素ガスが制限されるため、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例2)よりも信号電圧が低下し、立上り応答が遅くなっている。
また、水素ガスセンサが常温常湿環境下にあるときに、高温高湿の空気ベースの水素ガスを曝気すると、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例2)では、適正な信号電圧が計測されず、ベース電圧も激しく変化し、適正に水素ガスを検知することができなくなるが、環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例3)では、ベース電圧は次第に上昇するが、信号電圧は適正に出力され、水素ガスを適正に検知できることが確認された。
〔実験例4〕
次に、実験例1と同様にして製作した対電極基板型の水素ガスセンサのガス検知部に、シリコーン熱硬化樹脂(信越シリコーン製KE402、接触角128°)を、電解質膜を覆うように塗布して、常温で一晩乾燥して硬化させ、環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約300μmである。水素ガスセンサの構成は、図6と同様である。
次に、実験例1と同様にして製作した対電極基板型の水素ガスセンサのガス検知部に、シリコーン熱硬化樹脂(信越シリコーン製KE402、接触角128°)を、電解質膜を覆うように塗布して、常温で一晩乾燥して硬化させ、環境保護層を成膜した。環境保護層の膜厚は、約300μmである。水素ガスセンサの構成は、図6と同様である。
<水素ガス応答性の評価>
得られた水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
得られた水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを1L/min流量で30秒間曝気し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。測定結果を図13に示す。
図13に示すように、水素ガスセンサが高温高湿環境下にあるときに、乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気すると、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例1)では、水素応答の信号が得られるものの、不安定で歪んだ信号電圧波形になり、ベース電圧の変動も大きく、水素ガス濃度の検知が困難な状態に到るが、環境保護層が形成された水素ガスセンサ(実験例4)では、信号電圧はやや低くなるものの、ベース電圧、信号電圧ともに安定かつ適正に出力され、水素ガスを適正に検知できることが確認された。
〔実験例5〕
次に、実験例1と同様にして製作した対電極基板型の水素ガスセンサのガス検知部に、粘着層となるシリコーン樹脂粘着両面テープ(寺岡製作所製#7470)を電解質膜を覆うように貼付し、その上に厚み50μmの熱可塑性樹脂のPFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、接触角111°)フィルムを環境保護層として貼付した水素ガスセンサを製作した。また同様に、厚み50μmの熱可塑性樹脂のFEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン、接触角110°)フィルムを環境保護層として貼付した水素ガスセンサを製作した。この水素ガスセンサの構成を図14に示す。
次に、実験例1と同様にして製作した対電極基板型の水素ガスセンサのガス検知部に、粘着層となるシリコーン樹脂粘着両面テープ(寺岡製作所製#7470)を電解質膜を覆うように貼付し、その上に厚み50μmの熱可塑性樹脂のPFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、接触角111°)フィルムを環境保護層として貼付した水素ガスセンサを製作した。また同様に、厚み50μmの熱可塑性樹脂のFEP(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン、接触角110°)フィルムを環境保護層として貼付した水素ガスセンサを製作した。この水素ガスセンサの構成を図14に示す。
<水素ガス応答性の評価>
得られた2種の水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
得られた2種の水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの電極板を介して白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを1L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。測定結果を図15(a),(b)に示す。
図15(a),(b)に示すように、水素ガスセンサが高温高湿環境下にあるときに、乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気すると、環境保護層が形成されていない水素ガスセンサ(比較例1)では、水素応答の信号が得られるものの、信号電圧が不安定で歪んだ波形になり、ベース電圧の変動も大きく、水素ガス濃度の検知が困難な状態に到るが、環境保護層が形成された2種の水素ガスセンサ(実験例5)では、何れも、信号電圧はやや低くなるものの安定かつ適正に出力され、ベース電圧の変動もそれほど大きく現れず、水素ガスを適正に検知できることが確認された。
〔実験例6〕
次に、実験例1と同様にして製作したガス検知部に、シリコーン樹脂粘着両面テープ(寺岡製作所製#7470 )を、電解質膜を覆うように貼付し、その上に厚み120μmの熱可塑樹脂のPET(ポリエチレンテレフタレート、接触角71°)フィルムを貼付して、環境保護層を形成した。この水素ガスセンサの構成は、図14と同様である。
次に、実験例1と同様にして製作したガス検知部に、シリコーン樹脂粘着両面テープ(寺岡製作所製#7470 )を、電解質膜を覆うように貼付し、その上に厚み120μmの熱可塑樹脂のPET(ポリエチレンテレフタレート、接触角71°)フィルムを貼付して、環境保護層を形成した。この水素ガスセンサの構成は、図14と同様である。
<水素ガス応答性の評価>
得られた水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
得られた水素ガスセンサと比較例1のセンサを高温高湿槽に設置して、60℃、80%RHの温湿度条件で安定させた後に、槽内で水素ガスセンサに乾燥した空気ベースの水素ガス(25℃、14%RH)を曝気して、水素ガスセンサの白金電極とカーボン電極の電位差を、デジタルマルチメータ(岩通製VOAC7411)で電圧測定した。
センサ表面に4000ppm濃度(空気ベース)の水素ガスを1L/min流量で30秒間曝し、30秒間停止する操作を交互に繰り返して、水素ガスの接触による電圧変化を測定した。センサの出力電圧は、水素ガスと接触すると上昇し、水素ガスが停止すると低下する。測定結果を図16に示す。
図16に示すように、水素ガスセンサが高温高湿環境下にあるときに、乾燥した空気ベースの水素ガスを曝気すると、本実験例の環境保護層が形成された水素ガスセンサでは、比較的信号電圧が小さく、ベース電圧はやや変動が大きいものの、安定した水素応答による信号電圧が得られており、水素ガスの検知は可能である。
本発明による水素ガスセンサは、水素ガスをエネルギー源とする燃料電池システムに極めて有用で、定置型燃料電池や自動車用燃料電池のシステム内部において、燃料となる高温高湿に加熱加湿された水素ガスの水素濃度を、燃料タンク部から燃料電池スタック内部を通して排気ガス部分までの各所で検出して燃料電池システムの動作を制御し管理するために好適に用いることができる。
また、それらのシステムが使用される家庭用燃料電池、燃料電池自動車、分散型燃料電池発電機、及び燃料ガスを供給する水素ステーション等において、燃料である水素ガスの漏れ検出にも好適に用いることができる。
その他、水素ガスを用いる半導体製造プラントや、水素ガスによる還元処理や水素ガス発生のある化学プラントでの水素ガス濃度管理やガス漏れ検出にも好適に用いることができる。
1:水素ガスセンサ
2:プロトン導電層
3:触媒層
3a:触媒
4,4a,4b:電極
6:計測器(電圧検出回路)
7:ガス検知部
8:環境保護層
10:基板
C:カーボン
S:固体高分子電解質
2:プロトン導電層
3:触媒層
3a:触媒
4,4a,4b:電極
6:計測器(電圧検出回路)
7:ガス検知部
8:環境保護層
10:基板
C:カーボン
S:固体高分子電解質
Claims (5)
- プロトン導電層と、プロトン導電層と触媒層を介して接合される第一の電極層と、プロトン導電層と接合される第二の電極層を備えたガス検知部と、ガス検知部を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層を備えている水素ガスセンサ。
- プロトン導電層と、プロトン導電層と触媒層を介して接合される第一の電極層と、プロトン導電層と接合される第二の電極層を備えたガス検知部が、基板上に積層形成され、ガス検知部を密着被覆する水素ガス透過性の環境保護層がその上部に積層形成されている水素ガスセンサ。
- 環境保護層が熱硬化性樹脂または紫外線硬化樹脂または熱可塑性樹脂で形成されている請求項1または2記載の水素ガスセンサ。
- 環境保護層が撥水性樹脂で形成されている請求項1から3の何れかに記載の水素ガスセンサ。
- 撥水性樹脂がシリコーン系樹脂またはフッ素系樹脂である請求項4記載の水素ガスセンサ。
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2009
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