JP5777503B2 - 水素ガスセンサ - Google Patents
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燃料電池のエネルギー源となる水素分子は、常温で安定であるが、反応性が高く、様々な物質と化学反応を起こしやすい。例えば、水素と酸素とを体積比2:1で混合し、火をつけると、激しく爆発することが知られている。そのため、水素を利用する場所においては、簡便な方法で、水素の濃度を精度良く検出することが可能な水素ガスセンサの必要性は極めて高くなっている。
また、特許文献2に開示された水素ガスセンサは、検出ガスがプロトン導電体膜を透過した後に作用電極表面でプロトンを生じ、対向電極で再度ガスに還元されたのちにプロトン導電体膜を透過して、外部に排出されなければならず、感度や応答性に問題があった。
さらに、作用電極と対向電極間に電圧を印加しなければならず、電圧の制御のために参照電極も必要であり、検出の回路が複雑になる問題もあった。
本発明は、上記課題を解決するものであり、標準ガスや電圧の印加を必要とせず、簡易な構造で水素ガスの検知及び水素ガス濃度の測定をすることが可能な水素ガスセンサを提供することを目的とする。
以下、本発明を詳述する。
本発明の水素ガスセンサ10は、第1電極11と第2電極12と固体電解質膜13とを有し,固体電解質膜13を介して、第1電極11及び第2電極12が積層された構成となっている。また、第1電極11の膜厚aは1〜25nmであり、第2電極12の膜厚bは、第1電極11の膜厚aよりも厚くなっている(b>a)。なお、第2電極12の膜厚bと第1電極11の膜厚aとの差(b−a)は、10〜200nmであることが好ましい。
H2→2H++2e− (1)
解離によって生成したプロトンは第1電極11及び第2電極12内を拡散し、固体電解質膜13に到達する。同時に第1電極11及び第2電極12表面近傍において大気中に存在する酸素により、下記(2)式のようにプロトンが消滅する反応も生じる。
2H++1/2O2+2e−→H2O (2)
よって、本発明の水素ガスセンサ10では、第1電極11及び第2電極12を電気的に接続することで、上記(1)式及び(2)式の反応が第1電極11及び第2電極12内で生ずるため、大気中に含まれる水素分子が電極表面に到達した後、電極表面から内部に拡散するに従って、水素分子あるいはプロトン濃度が減少していく。
この現象により、本発明では、厚さの異なる第1電極11及び第2電極12を固体電解質膜13上に設けることで、固体電解質膜13内にプロトン濃度勾配が形成され、第1電極11側のプロトン濃度が高くなり、第2電極12側へ固体電解質膜13内でプロトンが移動することになる。このような反応が連続的に生じることで、外部回路に水素濃度に応じた電流が流れるため、電流を計測することで水素濃度を測定することができる。
なお、第2電極12側へ移動したプロトンは上記反応(2)式により、外部回路を通じた電子により還元される。
上記金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等の白金族金属が挙げられる。
また、第1電極として白金族金属からなるものを用い、第2電極として白金族金属を担持した炭素からなるものを用いることが好ましい。これにより、触媒作用を有する金属が少量であっても、第2電極が大気中の酸素と水素に接する面積が増大するため、上記反応(2)がより促進され固体電解質膜内のプロトン濃度を低くすることができる。
上記膜厚の差が10nm未満であると、プロトン濃度差が小さくなり水素濃度に応じた電流が小さくなるため感度が低くなることがあり、200nmを超えると、応答速度の低下や固体電解質膜のカール等が発生することがある。
より好ましくは30〜80nmである。
好ましくは5〜10nmである。
上記第2電極の膜厚が30nm未満であると、固体電解質膜へ到達するプロトンが多くなるため水素濃度に応じた電流値が小さくなるため感度が低くなることがあり、200nmを超えると、応答速度の低下や固体電解質膜のカール等が発生することがある。
より好ましくは40〜100nmである。
上記固体電解質膜の膜厚が5μm未満であると、機械的強度が低く破れやすくなったり、ピンホールによる第1電極と第2電極の短絡の発生が生じたりすることがある。200μmを超えると、応答速度の低下が生じることがある。
より好ましくは10〜100μmである。
本発明の水素ガスセンサ20は、第1電極21と第2電極22と固体電解質膜23とを有し,第1電極21及び第2電極22に導線24が接続された構成となっている。更に、第1電極21と第2電極22との間に電流電圧変換回路を設置することで電流計測しながら第1電極と第2電極を常に同電位に保つことができる。
また、第1電極21は、外側に形成された厚膜部分25を介して導線24と接続されている。例えば、第1電極21に直接導線を接続した場合、水素ガスが接触する面積を大きくすることができるが、電流を一部から取り出すために電極の抵抗が高い場合には効率よく電流を取り出せなくなる。一方で、このような厚膜部分25を形成することで、水素ガス反応面積が小さくなるが、低抵抗化することで効率を上げることができる。
上記厚膜部分のパターン形状(上面視)としては、例えば、格子状、放射状、葉脈状等が挙げられる。
水素ガスセンサ30は、第1電極31と第2電極32と固体電解質膜33とからなる積層体を、端部に接合穴を有し、第1電極31と第2電極32を露出させるための開口を有するSUS電極板36で挟み込んだ構成となっている。また、SUS電極板36は、第1電極31及び第2電極32と電気的に接続されることで、出力取り出し用の電極としての機能も有しており、導線34を接続することで、水素ガスセンサとしての機能を発揮することができる。このような構成とすることで、水素ガス測定に重要な第1電極31、第2電極32、固体電解質膜33を保護しつつ、正確な水素ガス測定を行うことが可能となる。
なお、水素ガスセンサ40の応用として、水素ガスセンサ40をプリント基板上に設置するような構成としてもよい。
水素ガスセンサ50は、第1電極51と第2電極52と固体電解質膜53とからなる積層体を、一対のSUS電極カバー56で挟み込んだ構成となっている。また、SUS電極カバー56は、ガス透過性導電体57を介して第1電極51及び第2電極52と電気的に接続されることで、電極としての機能も有している。更に、一対のSUS電極カバー56は、絶縁スペーサ58を介して電気的に絶縁されている。このように電極をかしめて固定する構成にすることでセンサが強固になり、またネジ止めのゆるみや配線の断線等が起こらないため、水素ガスセンサ自体を容易に持ち運び可能となり、検知部交換型の水素ガスセンサ装置にも使用することができる。
上記カーボンペーパーは、炭素繊維と炭素とからなる多孔質体であり、燃料電池のガス拡散層等にも使われていることから、ガス透過性と導電性に優れている。発泡金属は、電池の電極材料やフィルタ等に使用されており、気孔率90%以上のものは、特にガス透過性もよく、また、金属であるので抵抗も低い。
上記コイン電池型水素ガスセンサに使用される電極としては、CR2032やCR2016等の規格サイズにプレス成型された電極を使用できが、水素センサ用に使用する場合はガス透過用に通気孔を設ける。上記絶縁スペーサとしては、ポリプロピレン製等の電池ケースの形状と合うように成形したものを使用する。
固体電解質として、厚さ50μmのパーフルオロスルホン酸高分子膜(デュポン社製)を用いた。このパーフルオロスルホン酸高分子膜の片面に、スパッタリング法(Arガス0.4Pa中投入電力0.5KW)により、第1電極として膜厚10nmの白金膜を積層した。また、第1電極を積層した面の他方側に、スパッタリング法により、第2電極として膜厚70nmの白金膜を積層した。その後、直径13mmの円形状に打ち抜いた。
得られた積層体を挟み込むようにカーボンペーパー(東レ社製、直径11mmの円形状、厚さ約0.2mm)を配置し、更に、その両側から直径20mmのステンレス板で挟み込んだ後、ステンレス板同士を樹脂性のネジで締結し、全体を固定することにより、図4に示すようなセンサを得た。
図6及び図7から、出力電流と水素濃度とが直線(一次関数)の関係にあり、電流値から水素濃度を測定可能であることが分かる。
図8に示すように、水素1%を含む空気(空気中水素1%)を供給した場合は、定常電流が確認されているのに対して、水素1%を含む窒素(窒素中水素濃度1%)を供給した場合は、定常電流が流れず、供給切り替え時の濃度変化によって僅かに電流が流れるだけあった。これは、水素1%を含む窒素に酸素がないことで、第2電極に到達したプロトンを消費する上記(2)式が定常的に進行しないためであると考えられた。
第1電極の膜厚を表1に示すように変更し、第2電極の膜厚を55nmとした以外は実施例1と同様にしてセンサを得た。
第1電極の膜厚を8nmとし第2電極の膜厚を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてセンサを得た。
ケッチンブラックカーボンに60重量%白金が担持された固体高分子形燃料電池用触媒(田中貴金属工業製、品番 TEC10E60TPM)2.5gに、水8mL加えて、ボールミルで1分間撹拌した。そこに、パーフルオロスルホン酸高分子膜(デュポン社製)1.2g、イソプロピルアルコール8mL、ノーマルプロピルアルコール8mLを加え、ボールミルで50分間撹拌した。その後、5℃の冷蔵庫で3日間放置して、触媒溶液を調製した。
得られた触媒溶液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上にバーコーターで塗布し、60℃のオーブンで15分乾燥することで電極層を形成した。得られた電極層の厚みは12μmであった。
次に、固体電解質としての厚さ50μmのパーフルオロスルホン酸高分子膜(デュポン社製)の片面に、スパッタリング法により、第1電極として膜厚10nmの白金膜を積層したものを用意し、第1電極を形成していない面と電極層(PTFEシートを積層していない側)とを重ね合わせ、電極層を120℃でホットプレスすることで転写して第2電極を積層した。その後、PTFEシートは剥離した。
得られた積層体を用い、実施例1と同様にして図4に示すようなセンサを得た。
第2電極として膜厚70nmの白金膜に代えて、膜厚100nmの金膜をスパッタリング法(Arガス0.4Pa中投入電力0.5KW)により積層した以外は実施例1と同様にしてセンサを得た。
第2電極の膜厚を表1に示すように変更した以外は比較例1と同様にしてセンサを得た。
第1電極の膜厚を表1に示すように変更し、第2電極の膜厚を55nmとした以外は実施例1と同様にしてセンサを得た。
実施例及び比較例で得られたセンサについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
得られたセンサについて、水素濃度1%の空気中における出力電流値を測定した。
なお、比較例1〜4で得られたセンサでは、定常電流が流れず、空気の供給切り替え時の濃度変化した時にわずかに電流が流れるだけであったため、「測定不可」とした。
これは、金電極では触媒作用低いため、第2電極に到達したプロトンを消費する反応が定常的に進行しないためであると考えられた。
Claims (5)
- 固体電解質膜を介して、第1電極及び第2電極が積層された水素ガスセンサであって、
前記第1電極及び第2電極は、水素をプロトンに解離できる触媒作用を有する金属を含有し、
前記第1電極の膜厚が1〜25nmであり、前記第2電極の膜厚は第1電極の膜厚よりも厚いことを特徴とする水素ガスセンサ。 - 第2電極の膜厚と前記第1電極の膜厚との差が10〜200nmであることを請求項1記載の特徴とする水素ガスセンサ。
- 水素をプロトンに解離できる触媒作用を有する金属は、白金族金属であることを特徴とする請求項1又は2記載の水素ガスセンサ。
- 第1電極が白金族金属からなり、第2電極が白金族金属を担持した炭素からなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の水素ガスセンサ。
- 請求項1、2、3又は4記載の水素ガスセンサを用いてなることを特徴とするコイン電池型水素ガスセンサ。
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