JP2011042339A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低速時の操縦安定性と、高速時の操縦安定性および高速耐久性とを両立させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】カーカス1のタイヤ半径方向外側に、内層側から順次、平行に配列されたスチールコードをゴム引きしてなるベルト層2a,2bと、ベルト層の全幅以上にわたり配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなるキャップ層3と、ベルト層の両端領域に配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなるレイヤー層4とを備える空気入りラジアルタイヤである。キャップ層3およびレイヤー層4の有機繊維コードが、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであり、かつ、ハイブリッドコードの177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が、0.20cN/dtex以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、ベルト補強層の補強コードの改良に係る空気入りタイヤに関する。
一般に、空気入りタイヤは、一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、そのタイヤ半径方向外側には、補強材として、ゴム引きされたスチールコードからなるベルト層が配置される。また、高性能タイヤにおいては、ベルト層のさらにタイヤ半径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなるキャップ層およびレイヤー層を配置することも行われている。
かかるキャップ層およびレイヤー層からなるベルト補強層の補強コードとしては、従来、ナイロンコードや、芳香族ポリアミドとナイロンとからなるハイブリッドコードが一般に使用されている。例えば、特許文献1には、タイヤの軽量化と操縦安定性の保持との両立を図る目的で、ベルト層を全面にわたって覆う第1の補強プライと、少なくともベルト層の両端部を覆う第2の補強プライとを有する補強層を備え、これら第1、第2の補強プライの補強コードとして、芳香族ポリアミド繊維とナイロン繊維とを撚り合わせた複合コードを適用した空気入りタイヤが開示されている。
キャップ層およびレイヤー層の補強コードに係る改良技術としては、例えば、特許文献2に、キャップ層およびレイヤー層の有機繊維コードとして、低弾性繊維と高弾性繊維とを撚り合わせてなる複合コードを用いた空気入りラジアルタイヤが開示されている。また、特許文献3には、タイヤ周方向に略平行にコードを巻回させて形成された補強層のコードとして、レーヨンフィラメント束とナイロンフィラメント束とを撚り合わせてなり、レーヨンフィラメントの総繊度が2600デシテックス以下であり、かつレーヨンフィラメントの構成比率がコードの総繊度の50〜70%を構成する複合コードを用いた空気入りラジアルタイヤが開示されている。さらに、特許文献4には、低速走行時の操縦安定性と高速走行時の操縦安定性とに優れた空気入りラジアルタイヤを実現するために、ベルトの全体及び/又は両端部を覆うように配置されるベルト補強層に、所定の熱収縮応力および弾性率を満足するポリケトン繊維コードを用いる技術が開示されている。
特開平4−169304号公報(特許請求の範囲等) 特開2008−006875号公報(特許請求の範囲等) 特開2005−343301号公報(特許請求の範囲等) 国際公開第06/077978号パンフレット(特許請求の範囲等)
従来、ベルト補強層の補強コードに用いられているナイロンは低剛性繊維であるため、かかるナイロンコードをベルト補強層に用いたタイヤは接地面積が大きくなり、低速時の操縦安定性は良好となる。しかしながら、高速時においては、剛性が低いためにせり出しが大きくなってしまい、高速時の操縦安定性および高速耐久性が低いという問題を有していた。
一方、芳香族ポリアミドとナイロンとのハイブリッドコードは、高剛性の芳香族ポリアミドと低剛性のナイロンとを撚り合わせることで、低歪時には低剛性を示し、高歪時には高剛性を示すものであるが、依然としてナイロン対比では低歪時の剛性が高いため、低速時の操縦安定性はナイロン対比劣るものであった。
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、低速時の操縦安定性と、高速時の操縦安定性および高速耐久性とを両立させた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、キャップ層およびレイヤー層の補強コードとして、所定の高い熱収縮応力を有するハイブリッドコードを用いることで、低歪時には低剛性を示し、高歪時には高剛性を示すとともに、高速時には高い熱収縮応力の発現によりせり出しを抑えて良好な耐久性を発揮しうる空気入りタイヤが得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に、内層側から順次、平行に配列されたスチールコードをゴム引きしてなる少なくとも1層のベルト層と、該ベルト層の全幅以上にわたり配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなる少なくとも1層のキャップ層と、該ベルト層の両端領域に配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなる少なくとも1層のレイヤー層と、を備える空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記キャップ層およびレイヤー層の有機繊維コードが、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであり、かつ、該ハイブリッドコードの177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が、0.20cN/dtex以上であることを特徴とするものである。
本発明においては、前記ハイブリッドコードの、25℃における1%歪時の引張弾性率が60cN/dtex以下であり、かつ、25℃における3%歪時の引張弾性率が30cN/dtex以上であることが好ましい。また、また、前記ハイブリッドコードを構成する2種の有機繊維は、レーヨン、リヨセル、ポリエステル、ナイロンおよびポリケトンからなる群から好適に選択することができ、より好適には、レーヨンまたはリヨセルと、ナイロンとの組み合わせからなるものとする。
本発明によれば、上記構成としたことにより、低速時の操縦安定性と、高速時の操縦安定性および高速耐久性とを両立させた空気入りタイヤを実現することが可能となった。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向断面図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の空気入りタイヤの一例の幅方向断面図を示す。図示するように、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部11間にトロイド状に延在するカーカス1を骨格とし、そのクラウン部のタイヤ半径方向外側に、内層側から順次、2層のベルト層2a,2bと、キャップ層3と、レイヤー層4と、を備えている。
ベルト層2a,2bは、平行に配列されたスチールコードをゴム引きしてなり、図示する例では2層であるが、少なくとも1層にて設けることが必要である。また、キャップ層3およびレイヤー層4は、いずれもタイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなり、図示するように、このうちキャップ層3はベルト層2a,2bの全幅以上にわたり少なくとも1層にて配置され、レイヤー層4はベルト層2a,2bの両端領域に少なくとも1層にて配置される。
本発明においては、かかるキャップ層3およびレイヤー層4の有機繊維コードとして、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであって、177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が、0.20cN/dtex以上であるものを用いる。すなわち、剛性の高い有機繊維コードと熱収縮率の高い有機繊維コードとを組み合わせて、所定の高い熱収縮応力を有するハイブリッドコードとすることで、低歪時の弾性率については従来のナイロン同等レベルの低剛性を示し、かつ、高歪時にはナイロン以上の高剛性を示すとともに、高速時(高温時)には高い熱収縮応力が発現して、せり出しを抑えることが可能なコードを実現したものであり、かかるハイブリッドコードをキャップ層およびレイヤー層の補強コードとして用いることで、低速時の操縦安定性についてはナイロン同等であって、高速時の操縦安定性および耐久性については、芳香族ポリアミドとナイロンとのハイブリッドコード同等以上の性能を有する空気入りタイヤを得ることが可能となった。
かかるハイブリッドコードの177℃における熱収縮応力が0.20cN/dtex未満であると、高速耐久性が不十分となる。この熱収縮応力は高いほど良く、例えば、0.25〜0.40cN/dtexの範囲内である。ここで、ハイブリッドコードの177℃における熱収縮応力は、一般的なディップ処理を施した加硫前のハイブリッドコードの25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する応力として得られる。
また、かかるハイブリッドコードとしては、25℃における1%歪時の引張弾性率が60cN/dtex以下、特には35〜50cN/dtexであることが好ましく、25℃における3%歪時の引張弾性率が30cN/dtex以上、特には45〜70cN/dtexであることが好ましい。低歪時においては接地面積を確保するために低剛性であることが好ましく、したがって、1%歪時の引張弾性率は60cN/dtex以下が好適である。これは、例えば、芳香族ポリアミドとナイロンとのハイブリッドコードの同引張弾性率の値以下に相当する。一方、高歪時においてはせり出しを抑制する効果を得るために、好適には3%歪時の引張弾性率を30cN/dtex以上とする。これは、例えば、ナイロンの同引張弾性率の値以上に相当する。
かかるハイブリッドコードに用いる2種の有機繊維としては、特に制限されるものではないが、剛性の高い有機繊維として、レーヨン、リヨセルなどを挙げることができ、熱収縮率の高い有機繊維として、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等、ナイロン、ポリケトン(PK)などを挙げることができる。より好適には、レーヨンまたはリヨセルと、ナイロンとの組み合わせを用いることができる。なお、本発明において、これら有機繊維を用いたハイブリッドコードの熱収縮応力および引張弾性率を調整する方法としては、ディップ処理時におけるテンションを制御する方法が挙げられ、例えば、高いテンションを掛けながらディップ処理を行うことで、コードの熱収縮応力の値を大きくすることができる。すなわち、各有機繊維において固有の物性値範囲はあるものの、上記ディップ処理条件を制御することにより、その範囲内で物性値を調整して、所望の物性を有するハイブリッドコードを得ることができるものである。
本発明の空気入りタイヤにおいては、上記キャップ層およびレイヤー層の補強コードに係る条件を満足することのみが重要であり、それ以外のタイヤ構造の詳細や各部材の材質などについては特に制限されず、従来公知のもののうちから適宜選択して構成することができる。
例えば、図示するように、本発明のタイヤの一対のビード部11には夫々ビードコア5が埋設され、カーカス1はこのビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止されている。また、ベルト層2a,2bのクラウン部外周にはトレッド部12が、カーカス1のサイド部にはサイドウォール部13が、夫々配置されている。さらに、トレッド部12の表面には適宜トレッドパターンが形成されており、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。さらにまた、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示す構造を有する空気入りタイヤを、タイヤサイズ235/55R17にて、キャップ層およびレイヤー層の補強コードに下記表中に示す条件を適用して作製した。下記表中に示す補強コードの熱収縮応力および弾性率の値は、ディップ処理時のテンションを制御することにより調整した。得られた各供試タイヤにつき、低速時の操縦安定性、高速時の操縦安定性および高速耐久性を、下記に従い評価した。その結果を、下記表中に併せて示す。
<低速時および高速時の操縦安定性>
各供試タイヤにJIS規格の正規内圧、荷重を負荷して、外径3000mmのドラム上に押し付け、それぞれ所定の速度で30分間予備走行させた後、無負荷状態で再度内圧を正規値に調整し、再度所定の荷重および速度で走行させた。このときタイヤの転動方向とドラムの円周方向との間に最大14度の角度(スリップアングル)を正負連続してつけて、正負各角度に対応するコーナリングフォース(CF)を測定し、次式、
CP={CF(1°)+CF(2°)/2+CF(3°)/3+CF(4°)/4}/4
によりコーナーリングパワー(Cp値)を求めた。結果は、比較例1のCp値を100として指数にて示した。この指数が大きい程、操縦安定性が良好である。なお、速度はそれぞれ、低速時が40km/h、高速時が100km/hとした。
<高速耐久試験>
各供試タイヤをリムサイズ7.5のリムに装着し、空気圧を300kPaにして、JATMA規格のテスト法に準じたスピードステップ法にて、タイヤ故障が発生するまでの速度を測定し、比較例1の故障発生速度を100として指数表示した。数値が大なるほど、高速耐久性に優れることを示す。
Figure 2011042339
上記表中の結果からわかるように、キャップ層およびレイヤー層の補強コードに、本発明に係る条件を満足するハイブリッドコードを適用した各実施例のタイヤにおいては、従来の補強コードを用いた比較例1のタイヤ、および、本発明の条件を満足しないハイブリッドコードを用いた比較例2のタイヤに比し、低速時の操縦安定性と、高速時の操縦安定性および高速耐久性とがいずれも良好に得られていることが明らかである。
1 カーカス
2a,2b ベルト層
3 キャップ層
4 レイヤー層
5 ビードコア
11 ビード部
12 トレッド部
13 サイドウォール部

Claims (4)

  1. 一対のビード部間にトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に、内層側から順次、平行に配列されたスチールコードをゴム引きしてなる少なくとも1層のベルト層と、該ベルト層の全幅以上にわたり配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなる少なくとも1層のキャップ層と、該ベルト層の両端領域に配置され、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列された有機繊維コードをゴム引きしてなる少なくとも1層のレイヤー層と、を備える空気入りラジアルタイヤにおいて、
    前記キャップ層およびレイヤー層の有機繊維コードが、2種の有機繊維からなるフィラメントを撚り合わせてなるハイブリッドコードであり、かつ、該ハイブリッドコードの177℃における熱収縮応力(cN/dtex)が、0.20cN/dtex以上であることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記ハイブリッドコードの、25℃における1%歪時の引張弾性率が60cN/dtex以下であり、かつ、25℃における3%歪時の引張弾性率が30cN/dtex以上である請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記ハイブリッドコードを構成する2種の有機繊維が、レーヨン、リヨセル、ポリエステル、ナイロンおよびポリケトンからなる群から選択される請求項1または2記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記ハイブリッドコードを構成する2種の有機繊維が、レーヨンまたはリヨセルと、ナイロンとの組み合わせからなる請求項3記載の空気入りラジアルタイヤ。
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