JP2011038121A - 高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.08〜0.20%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.08%以下、S:0.005%以下、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.005%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼を、熱延および冷延後、所定の条件の焼鈍処理を順次施すことにより、面積率で5〜15%のフェライト相と残部が焼戻しマルテンサイト相からなる複合組織を有し、前記フェライト相の粒径が10μm以下であり、かつ全フェライト粒のうち60%以上のフェライト粒が他のフェライト粒と接していないことを特徴とする高張力冷延鋼板を作製する。
【選択図】なし
Description
(1)引張強さ900MPa以上を有する高張力冷延鋼板であって、質量%で、C:0.08〜0.20%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.08%以下、S:0.005%以下、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.005%を少なくとも含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で5〜15%のフェライト相と残部が焼戻しマルテンサイト相とからなる複合組織を有し、前記フェライト相の粒径が10μm以下であり、かつ全フェライト粒のうち60%以上のフェライト粒が他のフェライト粒と接していないことを特徴とする高張力冷延鋼板。
(3)前記組成に加えてさらに、質量%で、Bを0.005%以下含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の高張力冷延鋼板。
(4)前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REMのうちの1種または2種以上を合計で0.1% 以下含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の高張力冷延鋼板。
(7)前記組成に加えてさらに、質量%で、Bを0.0002〜0.005%含有することを特徴とする(5)または(6)に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
(8)前記組成に加えてさらに、質量% で、Ca、REMのうちの1種または2種以上を合計で0.1%以下含有することを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
C:0.08〜0.20%
C は焼入れ性を向上させ、マルテンサイトを生成させるために有用である。本発明では、硬質相として最初にマルテンサイトを85〜95%(面積率)生成させる必要があるため、最低でも0.08%必要である。一方、C が過剰になると、鋳造段階で中心偏析による欠陥が生じ易くなるうえ、溶接性も悪くなる。従って上限を0.20%とした。
Siはフェライト相の固溶強化元素として有用な元素である。フェライト相の強度が高くなると、硬質相との強度差が小さくなるため、応力集中が緩和され、伸びフランジ性を向上させる。従って、好ましくは1.0% 以上必要である。しかしながら、めっき鋼板としてめっきを施す場合、Si添加はめっき性を著しく劣化させるため、Siは少ないほうが良い。0.01%程度だとめっき性に大きく影響しないため、めっき性を考慮する必要がある場合の下限値は0.01%とする。一方、1.5%を超えて添加すると、Siの効果が飽和するだけでなく、加工性が劣化するため、上限を1.5%とした。
Mnは、Siと同様に固溶強化元素として有用であるだけでなく、Cと同様に焼入れ性を向上させるためにも有用である。900MPa以上の高強度鋼板で所望の特性を得るためには、最低0.1%のMnが必要である。但し、2.5% を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。従って上限値を2.5%とした。
Pは熱延時の加工性を劣化させるため、低いほうが望ましい。0.08%以下だと影響が小さいため、0.08%を上限とした。より好ましくは0.03%以下が望ましい。
SはMn硫化物を形成し、Mn硫化物が破壊起点となり伸びフランジ性を劣化させる。従って、Sは低い方が望ましい。後述するように、CaやREMを添加するとMn硫化物の生成が抑制されるため、CaやREMを適量添加した場合は、Sは最大0.005%まで添加しても伸びフランジ性に顕著な影響は出ない。従って、Sの上限を0.005%とした。望ましくは0.002%以下、さらに望ましくは0.001%以下とする。
Alは、脱酸のために0.01%以上を添加するが、添加量が増加するとアルミナ等の介在物が増加し、伸びフランジ性が劣化するため0.08%を上限とする。
Tiは、脱酸の目的と、Ti炭化物析出によるフェライト相の強化の目的で、0.01%以上を添加する。添加量が増加すると、その効果が飽和するだけでなく、粗大なTiN等の介在物が増加し、伸びフランジ性が劣化するため0.05%を上限とする。
N は、加工性劣化や溶接時のブローホール発生にも寄与するため少ない方が良い。0.005%を越えると加工性が劣化してくるので、0.005%を上限とする。また、極低下は経済的に不利なため下限を、0.0001%とする。
Cr、Mo、Nbは、焼入れ性を確保しマルテンサイト相の形成を助長させるもので、複合組織の形成に必要である。必要に応じ選択して1種または2種含有できる。しかし、単独または合計で2.0%を超えて過剰に含有すると、熱間変形抵抗を増加させるとともに、化成処理性およびより広義な表面処理特性を劣化させ、さらには、溶接部を硬化させ溶接部成形性を低下させる。このため、Cr、Mo、Nbのうちの1種または2種を合計で2.0%以下に限定することが好ましい。なお、上記した効果を得るためには、それぞれCr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、Nb:0.01%以上含有することが好ましい。
Bは少量で焼入れ性を確保でき、他の合金元素量を削減できるため、コスト面で利用価値が大きい。0.0002%でも効果が見られるため、下限を0.0002%とした。添加量が0.005%を越えると、その効果は飽和するうえ、鉄炭硼化物などの析出を招き、加工性に悪影響が発生するため、上限を0.005%とする。
Ca、REMを添加すると、Mn硫化物の生成が抑制され、伸びフランジ性を改善できる。特に、S量が多い場合に有効である。ただし、多量に添加すると、Ca酸化物等の介在物を生成し、破壊起点となるため、伸びフランジ性に悪影響を及ぼす。そのため、上限を合計で0.1%とした。
前述の組成の鋼スラブを、加熱温度1000℃以上に加熱したのち、粗圧延してシートバーとする。この時の加熱温度が1000℃未満だと、熱延終了時の温度が800℃未満となり、熱延終了時の組織に圧延方向に伸びた未再結晶粒が含まれ、機械特性、特に穴広げ特性に異方性が生じ、結果的に特性が劣化する。従って、熱延時の加熱温度は1000℃以上である必要がある。また、上記理由により、仕上圧延出側温度は800℃以上とする必要がある。さらには、巻取温度が750℃超だと熱延コイルが室温まで冷却されるのに要する時間が長くなりすぎるため、経済的に不利である。従って、熱延板の巻き取り温度は750℃以下とする。
通常の冷延工程と同様であり、用途に応じて必要な圧下率の冷延を行なう。
鋼の組織をオーステナイト単相とするため、冷延工程で得られた冷延板を(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+50℃)の温度範囲の焼鈍温度に加熱し10〜120s間保持する。焼鈍温度は、Ac3変態点未満だとオーステナイト単相組織とならないため、下限温度はAc3変態点とする。焼鈍温度が高すぎると、オーステナイト結晶粒が粗大となり、冷却後のマルテンサイト組織が粗大になり、伸びフランジ性が悪化する。そのため、焼鈍温度の上限は(Ac3変態点+50℃)とした。該焼鈍温度での保持時間が10s未満だと、オーステナイト変態が完了しない可能性がある。逆に120s超保持することは、オーステナイト変態は完了し、オーステナイト結晶粒が粗大化するだけなので、経済的に無駄である。従って120s以下とした。
(1) フェライト生成工程:
一定分率のフェライト相を生成させるため、前記焼鈍温度での保持が終了後、該焼鈍温度から(Ac3 変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の温度範囲の所定温度(以下、フェライト生成処理温度と記載する。)まで冷却し、その温度で10〜1000s保持する。フェライト生成処理温度が低いか、あるいはその温度での保持時間が長いとフェライト分率は高くなる傾向にある。(Ac3 変態点−150℃)よりも低いと、保持時間を短くしてもフェライト分率が15%を越えるため、フェライト生成処理温度は(Ac3 変態点−150℃)以上である必要がある。望ましくは(Ac3 変態点−100℃)以上が良い。なぜならば、フェライト生成処理温度が(Ac3 変態点−100℃)よりも低いと、保持時間を非常に短くする必要があり、さらには前記焼鈍温度から該保持温度までの冷却速度を大きくする必要があり、制御が難しい場合があるためである。一方、フェライト生成処理温度が(Ac3変態点−50℃)より高いと、非常に長時間保持しないとフェライト分率が5%に満たないため、(Ac3変態点−50℃)以下である必要がある。望ましくは(Ac3変態点−60℃)以下である。保持時間は、フェライト生成処理温度によって設定する必要があるが、10s未満だとフェライト分率が5%に満たない可能性が高いうえ、保持時間を正確に制御することが難しい。逆に1000s超保持しても、フェライト分率はほとんど変化しなくなるうえ、プロセス時間が長くなり経済的に不利である。従って、保持時間は10〜1000sが望ましい。
フェライト生成処理温度で所定時間保持することによりフェライトを生成後、マルテンサイト変態点以下の所定温度(以下、マルテンサイト生成処理温度)まで急冷し、残部をマルテンサイトとする。残部を完全にマルテンサイトとするため、マルテンサイト生成処理温度は300℃以下が望ましい。300℃超であると、一部がベイナイトや残留オーステナイトとなる可能性があり、鋼材の強度が不足する可能性がある。前記フェライト生成処理温度からマルテンサイト生成処理温度までの冷却速度は、平均で50℃/s以上である。50℃/s未満だと、冷却中に多量のベイナイトが生成する可能性が高く、所定の組織を得ることができない。ただし冷却速度が200℃/sを超えると、急激な熱収縮による鋼板の形状変化が顕著になるため、200℃/s以下が望ましい。
ついで、400〜450℃の温度範囲で60〜200s間焼き戻し焼鈍を施す。この焼き戻し焼鈍により、マルテンサイト相の強度を低下させ、フェライト相とマルテンサイト相の強度差を小さくすることにより、フェライト相とマルテンサイト相の界面近傍での応力集中を抑制し、良好な伸びフランジ性を得ることができる。焼き戻し焼鈍温度が400℃未満だと、マルテンサイトの強度を十分低くすることができず、高い伸びフランジ性を得ることができない。逆に、焼き戻し焼鈍温度が450℃超だと、マルテンサイトが軟化しすぎて、鋼材全体の強度が900MPaに届かなくなる。従って、焼き戻し焼鈍温度は400〜450℃とする。同様に、焼鈍時間が60s未満だと、マルテンサイトの強度を十分低くすることができず、200s超だと、マルテンサイトが軟化しすぎる。従って、焼き戻し焼鈍時間は60〜200sとする。
これらの鋼板に、表2に示す条件で焼鈍処理を施した。焼鈍処理はすべてAr雰囲気の下で実施した。これらの鋼板からJIS5号引張り試験片を採取して、機械的性質を測定した。さらに、鉄鋼連盟規格に準拠して穴拡げ試験を行い、穴拡げ率を求めた。さらに、これらの鋼板の組織を観察するため、電界研磨法により薄片試料を作製し、透過電子顕微鏡により観察した。電界研磨には5%過塩素酸+95%エタノール液を用いた。観察は加速電圧200kVの電界放出型透過電子顕微鏡を用いた。
Claims (8)
- 少なくとも引張強さ900MPaを有する高張力冷延鋼板であって、
質量%で、C:0.08〜0.20%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.08%以下、S:0.005%以下、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.005%を少なくとも含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、
面積率で5〜15%のフェライト相と残部が焼戻しマルテンサイト相とからなる複合組織を有し、
前記フェライト相の粒径が10μm以下であり、かつ全フェライト粒のうち60%以上のフェライト粒が他のフェライト粒と接していないことを特徴とする高張力冷延鋼板。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr、Mo、Nbのうちの1種または2種以上を合計で2.0% 以下含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力冷延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Bを0.005%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高張力冷延鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ca、REMのうちの1種または2種以上を合計で0.1%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高張力冷延鋼板。
- 少なくとも引張強さ900MPaを有する高張力冷延鋼板の製造方法であって、
質量% でC:0.08〜0.20%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.1〜2.5%、P:0.08%以下、S:0.005%以下、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.05%、N:0.001〜0.005%を少なくとも含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成の鋼スラブを、少なくとも1000℃の加熱温度に加熱したのち、粗圧延してシートバーとし、該シートバーに少なくとも800℃の仕上圧延出側温度とする仕上圧延を施し、巻取温度:750℃ 以下で巻き取り熱延板とする熱間圧延工程と、
前記熱延板に酸洗および冷間圧延を行い冷延板とする冷間圧延工程と、
前記冷延板に、(Ac3変態点)〜(Ac3変態点+50℃)の温度範囲の焼鈍温度に加熱し10〜120s間保持する焼鈍処理を施した後、該焼鈍温度から(Ac3変態点−150℃)〜(Ac3変態点−50℃)の温度範囲の所定温度までの平均冷却速度が少なくとも20℃/sとなる冷却を施し、該所定温度で10〜1000s間保持し、その後300℃以下まで、少なくとも前記所定温度から300℃ までの平均冷却速度が少なくとも50℃/sとなる冷却を施し、次いで、400〜450℃の温度範囲で60〜200s間の焼戻しを施す焼鈍工程と、
からなることを特徴とする高張力冷延鋼板の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量% で、Cr、Mo、Nbのうちの1種または2種以上を合計で2.0%以下含有することを特徴とする請求項5に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Bを0.0002〜0.005%含有することを特徴とする請求項5または6に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量% で、Ca、REMのうちの1種または2種以上を合計で0.1% 以下含有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の高張力冷延鋼板の製造方法。
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