JP4396243B2 - 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4396243B2
JP4396243B2 JP2003399470A JP2003399470A JP4396243B2 JP 4396243 B2 JP4396243 B2 JP 4396243B2 JP 2003399470 A JP2003399470 A JP 2003399470A JP 2003399470 A JP2003399470 A JP 2003399470A JP 4396243 B2 JP4396243 B2 JP 4396243B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
delayed fracture
steel sheet
cooling
rolled steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2003399470A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005163055A (ja
Inventor
英尚 川辺
浩平 長谷川
健二 河村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2003399470A priority Critical patent/JP4396243B2/ja
Publication of JP2005163055A publication Critical patent/JP2005163055A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4396243B2 publication Critical patent/JP4396243B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Description

本発明は成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法に関するものである。
従来、超高強度冷延鋼板については、種々の強化策により材料強度の確保は可能であるが、高強度化に伴い加工性は低下する傾向にあった。すなわち、高強度冷延鋼板では、組織的不均一、硬質相と軟質相の局所的混在などに起因し、加工性は、高強度化に伴い大きく低下し、高強度化と延性および曲げ性などの加工特性の両立は困難であるのが実情であった。
このような中で最近では、例えば、特許文献1には、曲げ加工性に優れた鋼板として、表層部にC:0.1wt%以下の軟質層を有し残部が10vol%未満の残留オ−ステナイトと低温変態相あるいはフェライトとの複合組織からなる鋼板が、特許文献2には直径5μm以上の介在物の個数を規定した鋼板が、特許文献3には、特定の鋼成分と製造条件の組み合わせにより伸びフランシ゛性に優れる高張力鋼板が開示されており、加工性の向上に関する知見がようやく見受けられる状況となっている。
しかしながら、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には遅れ破壊特性に関する知見は一切記載されていない。
遅れ破壊特性については、例えば、特許文献4には、組成、板厚、板形状を規定した鋼板が、特許文献5には鋼成分とマルテンサイトの体積率を規定した鋼板が開示されている。しかし、これらには、加工性、成形性に関する知見は一切記載されていない。
また製造方法では、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に誘導加熱装置を配設した連続焼鈍設備、焼戻し処理を誘導加熱により行う製造方法が開示されている。しかし、成形性・加工性上重要である材料特性に関する知見は全くなく、設備列、通板性、形状、ばらつきなどの記述にとどまっているのが実情である。
特開平5-195149号公報 特開2002-363694号公報 特開平11-350038号公報 特開平6-122936号公報 特開平9-111398号公報 特開平2-274823号公報 特開平10-121150号公報 特開2003-27136号公報
以上のように、現状では、良好な加工性と高強度を両立し、かつ耐遅れ破壊特性に優れた超高強度冷延鋼板は得られていない。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼成分、製造条件及び金属組織などの面から鋭意研究した。その結果、鋼成分を適正範囲に制御して、連続焼鈍時の冷却開始温度からの冷却速度及び冷却後の加熱昇温時の昇温速度を制御し、昇温手段を限定することにより、組織が最適化され、優れた加工性を有すると同時に、成形後の遅れ破壊特性に優れた超高強度冷延鋼板が得られることを知見した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
mass%で、C:0.1〜0.2 %、Si:0.01〜1.8 %、Mn:1〜2.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、Al:0.005〜0.05%、N:0.0001〜0.005%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼スラブを鋳造後、直ちにまたは一旦冷却して、加熱、熱間圧延、酸洗後、冷間圧延を行い得られた鋼板を、700〜900℃の温度で加熱焼鈍し、10℃/秒以上の冷却速度で冷却し、(0.3×熱処理温度)℃以上までを、10℃/秒以上の昇温速度で、誘導加熱にて加熱昇温し、150℃〜500℃の温度で熱処理することを特徴とする成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法。
さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Ca:0.0001〜0.005%、B:0.0001〜0.005%のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
なお、上記手段において、「残部実質的にFe」とは、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味する。また、本明細書において、鋼の成分を示す%すべてmass%である。
また、本発明において、超高強度冷延鋼板とは、引張強度TS980MPa以上、望ましくは引張強度TS1180MPa以上の冷延鋼板である。
本発明によれば、成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板を得ることができる。本発明は特に引張強度TSが980MPa以上の超高強度冷延鋼板に対して有効であり、ロール成形またはフ゜レス成形される自動車部品などに好適である。
本発明は、下記に示す鋼成分に制御し、さらには焼鈍条件、特に連続焼鈍時の冷却開始温度からの冷却速度を10℃/秒以上、冷却後の加熱昇温時の昇温速度を(0.3×熱処理温度)℃以上までを10℃/秒以上と制御し、昇温手段を誘導加熱と限定したことを特徴とし、これらは本発明において最も重要な要件である。このように成分及び焼鈍条件を制御することにより、組織が最適化(オ−ステナイト単相域から急冷して得られる低温変態相のみから構成される組織を焼き戻した組織、またはフェライト相と焼き戻された低温変態相から構成される2相組織鋼となる)され、優れた加工性を有すると同時に、成形後の遅れ破壊特性に優れた超高強度冷延鋼板を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における鋼の化学成分の限定理由は以下の通りである。
C:0.1〜0.2%
Cは低温変態相を利用して鋼を強化するために必要不可欠である。一般に、低温変態相の強度はC量に比例する傾向にあり、TS980MPa 以上の引張強度を得るにはCは0.1%以上必要である。さらにCが多いほど引張強度確保は容易ではあるが、Cを0.2% 超えて含有すると、溶接性が著しく劣化する。また延性など加工性も低下する傾向にある。以上より、Cは0.1%以上0.2%以下とする。
Si:0.01〜1.8%
Siは延性を改善するとともに強度向上に寄与する元素であり、その効果は0.01%未満では発揮されない。一方、1.8%を越えて含有してもその効果は飽和する。また過度に含有することにより抵抗溶接時の電気抵抗の増加を伴い溶接性を阻害し、また、化成処理、塗装後耐食性を劣化させる傾向がある。以上より、Siは0.01%以上1.8%以下とする。
Mn:1〜2.5%
Mnは、Ar3変態点を低下させる作用を通じ、結晶粒の微細化に寄与し、強度-延性ハ゛ランスや強度-穴拡げ率λハ゛ランスを高める作用を有する。またSによる熱間脆性に起因する表面割れを抑制する重要な元素でもある。このように、Mnはオ−ステナイト安定化元素であり、強度(TS)確保の点から加熱焼鈍時に存在するオ−ステナイトから冷却過程において安定的に低温変態相を得るには、Mnは1%以上必要である。一方、2.5%を越えて含有すると、Mnの偏析などに起因し組織は不均一化し、材質均一性は低下し、加工性や成形後の耐遅れ破壊特性が劣化する傾向にある。以上より、Mnは1%以上2.5%以下とする。
P:0.001〜0.05%
Pは、鋼中に固溶して鋼板の強化に寄与する元素である。一方で、粒界への偏析により粒界の結合力を低下させ加工性を劣化させ、また鋼板表面への濃化により化成処理性、耐食性などを低下させる元素でもある。Pが0.05%を超えると、上記影響は顕著に現れる。しかし、Pの過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、Pは0.001%以上0.05%以下とする。
S:0.0001〜0.005%
Sは加工性に悪影響を及ぼす元素である。Sが増加すると介在物MnSとして存在し、特に材料の局部延性を低下させ、加工性を低下させる。また硫化物の存在により溶接性も悪くなる。このような悪影響はSを0.005%以下とすることにより避けることができる。かつ、Sを0.005%以下とすることによりフ゜レス加工性を顕著に改善することが可能となる。しかし、Sの過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、Sは0.0001%以上0.005%以下とする。
Al:0.005〜0.05%
Alは、脱酸および炭化物形成元素の歩留りを向上させるために有効な元素であり、この効果を発揮するためには、0.005%以上の添加が必要である。また、鋼板清浄度を向上させるために必須の元素でもあり、この点からもAlは0.005%以上必要である。Alが0.005%未満の場合、Si系介在物の除去が不完全となり、遅れ破壊の起点が多数存在することになり、遅れ破壊しやすくなる。一方、Alを0.05%を超えて添加した場合、効果が飽和するのみでなく、加工性が劣化し、表面欠陥の発生傾向の増大などの問題を生じる。以上より、Alは0.005%以上0.05%以下とする。
N:0.0001〜0.005%
Nの含有量が多い場合、窒化物を多数形成し、遅れ破壊の起点となり遅れ破壊しやすくなる。そのためにNは0.005%以下に制限する必要がある。ただしNの過度の低減は製造コストの増加を伴う。以上より、Nは0.0001%以上0.005%以下とする。
また本発明鋼では上記成分範囲に加えて、本発明の作用効果をなくさない限りにおいて、下記の元素を含有することができる。
Ti、Nbは炭窒化物を形成するため多量に含有するのは好ましくないが、結晶粒を微細化し組織の均一化に寄与することにより、遅れ破壊を抑制する。よって、Ti、Nbは0.001%以上0.1%以下の範囲で含有することができる。Cu、Ni、Cr、Moは強度に寄与する元素であり、0.01%以上0.5%以下の範囲であれば含有することができる。CaはMnSの形状制御、Bは結晶粒界への優先偏析による粒界強化などを通じて遅れ破壊を抑制する効果を発現するため、少量であれば含有しても構わないが、多量に含有してもその効果は飽和する傾向にある。よって、Ca、Bは0.0001〜0.005%の範囲で含有することが好ましい。
次に製造方法について説明する。
以上の化学成分範囲に調整された溶鋼から、連続鋳造または造塊でスラブを溶製する。次いで、得られたスラブを冷却後再加熱するか、あるいはそのまま熱間圧延を行う。熱間圧延における最終圧延温度は、穴拡げ率、限界曲げ半径を向上させるため850℃以上が望ましい。850℃より低い最終圧延温度では、最終圧延の段階で二相組織となるためフェライト粒の著しい粗大化が起こり、不均一な組織となり、冷延、焼鈍を行っても加工性の良い鋼板が得られない場合がある。
次いで、得られた熱延板を冷却し巻取る。巻取り温度は冷間圧延時の圧延負荷を低減し冷間圧延性を向上させるため450℃以上が望ましい。
次いで、酸洗し、冷間圧延し、所望の板厚とする。このときの冷間圧延率は、フェライトの再結晶を促進させ、延性を向上させるため30%以上が望ましい。
次に、上記により得られた鋼板に対して加熱焼鈍、焼戻処理を行う。
本発明の製造方法では、加熱焼鈍後、10℃/s以上の冷却速度で急冷することで結晶粒を均一化し、次いで(0.3×熱処理温度)℃以上までを、10℃/秒以上の昇温速度で、誘導加熱にて加熱昇温し、熱処理を施すことで金属組織を極めて均一なものとする。これらは本発明において最も重要な要件である。以下、これについて詳細に説明する。
まず、700〜900℃の温度で加熱焼鈍する。焼鈍温度が700℃より低いと冷間圧延後の組織の影響を完全に除去することが困難となり層状組織、いわゆるバンド状の不均一な組織となり、伸び及び曲げ性が劣化し、成形後に遅れ破壊が発生しやすくなる。さらに軟質相であるフェライト相の分率が増加し、高強度を確保することが困難となる。一方、焼鈍温度が900℃より高い場合、オ−ステナイト粒径の急激な粗大化に起因し、フェライト変態が遅延する。そのため最終的に得られる組織中の硬質な低温変態相の分率が増加してElが低下し、加工性が劣化する。したがって、焼鈍温度は700℃以上900℃以下とする。
次いで、10℃/秒以上の冷却速度で冷却する。冷却速度が10℃/秒より遅いと連続冷却中に過度にフェライトが生成しTSが低下し、強度を確保することが困難となる。また高温での鋼板滞留時間が長時間化することにより鋼板表面へのSi、Mnなどの元素が濃化し表面性状が劣化し、加工性は低下、遅れ破壊は発生しやすくなる。一方、オ−ステナイトから硬質な低温変態相を生成させるには冷却速度は速いことが望まれるが、1000℃/秒以上では得られる組織に顕著な差はなく特性上も変化はない。したがって、冷却速度は10℃/秒以上とする。好ましくは、得られる結晶粒が均一であることに加えてより一層微細化させ穴拡げ率を向上させるために、50℃/秒以上1000℃/秒未満とする。また、冷却停止温度は70℃以下とする。70℃超えでは、十分な量の低温変態相が得られず、TS980MPa以上を達成できない。
なお、本発明において、冷却速度は、(冷却開始温度―70℃)/(冷却開始温度から70℃までの冷却に要する時間)と定義する。また、冷却開始温度は600℃以上が好ましい。また、焼鈍温度から冷却開始温度までの間は放冷、ガス冷却を用いることができる。
冷却方法は特に限定しない。水冷が好ましいが、ガスジェット冷却、ミスト冷却、ロール冷却などを用いてもよいし、また複数の冷却方法を組み合わせてもよい。水冷を行うにあたっては、加熱した鋼帯を水中に浸漬または水を吹き付けて鋼帯を急速に冷却する方法が好ましい。水中に浸漬する場合は冷却速度を上昇させるため、水槽内で水を噴流させることが望ましい。水は温水であってもよく、また塩など水溶性物質を含んでいてもよい。また微細分散した油を含むエマルジョンであってもよい。
次いで、(0.3×熱処理温度)℃以上までを、10℃/秒以上の昇温速度で、誘導加熱にて加熱昇温する。昇温速度が10℃/秒より遅いと、焼鈍-冷却後に生成する低温変態相が焼き戻される過程において、炭化物が粗大化し、かつ炭化物の分布は局在化する。そのため成形時に均一な変形が阻害され、局所的に歪の高いところ、あるいはボイドなどが発生し、遅れ破壊の起点が多数存在することになり、耐遅れ破壊特性が低下する。さらに好ましい昇温速度は、得られる組織がよりいっそう均一化し、遅れ破壊特性を向上させるために、20 ℃/秒以上である。
誘導加熱により昇温する温度が0.3×熱処理温度に満たないと、誘導加熱終了後、従来どおりの昇温加熱と同様、鋼板内において温度勾配を持つ熱処理となるため、誘導加熱の効果が十分に発現できない。より誘導加熱の効果を発揮するには、誘導加熱により昇温する温度は0.5×熱処理温度以上が好ましい。
誘導加熱では鋼板板厚方向、幅方向での熱履歴の差がなく鋼板全体を均一に温度勾配なく加熱可能である。誘導加熱以外の加熱では、鋼板表層と中心とで温度勾配を生じ、不均一な組織となってしまう。誘導加熱以外の加熱で均一な組織が得られない理由は、表層から最初に加熱され、中心側は表層の余熱のようなもので除々にゆっくりと加熱され、板厚方向および板幅方向に温度勾配を生じながら熱処理されるためである。したがって成形後の耐遅れ破壊特性に優れた鋼板を得るには、極めて均一な組織が得られる誘導加熱による熱処理を行うこととする。この時に必要とされる出力は効率にも依存するが、誘導加熱設備としては、設備全体として1500kw以上が望ましい。設備は1基または複数基の並列でもかまわない。
ここで、図1は耐遅れ破壊特性に対する焼鈍後冷却速度と冷却後の昇温速度との関係を示す図である。図1においては、0.142%C-1.15%Si-2.11%Mn-0.015%P-0.0007%S-0.040%Al-0.0035%Nのスラブを、スラブ加熱温度:1250℃、仕上げ圧延温度:910℃、巻取り温度:580℃、冷延圧下率:50%の条件で、加熱、熱間圧延、酸洗後、冷間圧延し、次いで、焼鈍温度:860℃、冷却開始温度:700℃、冷却速度:2〜900℃/秒、誘導加熱または輻射管加熱による昇温速度:1〜100℃/秒、熱処理温度:360℃、保温時間:900秒の条件で焼鈍を行い鋼板を得た。図1より、焼鈍後の冷却速度が10℃/秒以上で、かつ、誘導加熱を用い昇温速度10℃/秒以上において割れ発生がなく、耐遅れ破壊特性に優れていることがわかる。また、図1より、好ましくは、焼鈍後の冷却速度は50℃/秒以上、冷却後の昇温速度は20℃/秒以上である。
次いで、150℃〜500℃の温度で熱処理する。熱処理温度が150℃より低い場合、急速冷却して生成する低温変態相の軟質化が不十分となり、加工性が悪い。さらに低温熱処理の場合、焼鈍後の急速冷却時に結晶格子がひずむことに起因する内部歪が存在したままであり、遅れ破壊の起点が多数存在することになり、遅れ破壊が発生しやすくなる。500℃より高い場合、低温変態相がフェライトと炭化物に分解し、急激にTSは低下し、高強度を確保するのが困難となる。したがって、熱処理温度は150℃以上500℃以下とする。加工性と優れた耐遅れ破壊特性を両立するには、熱処理温度は300℃超500℃以下が好ましい。また熱処理を行うに際し保温時間については特に規定するものではないが、60〜1500秒程度保温することが可能である。また、保温熱処理終了後は炉冷却、カ゛ス冷却、水冷などの冷却を行うことができる。
以上より、本発明の成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板を得ることができる。本発明で得られる超高強度冷延鋼板の金属組織は、オ−ステナイト単相域から急冷して得られる低温変態相のみから構成される組織を焼き戻した組織、またはフェライト相と焼き戻された低温変態相から構成される2相組織鋼である。なお、低温変態相とはオ−ステナイトから急冷して得られるマルテンサイト、ベイナイト、残留オ−ステナイトなどである。
また、本発明では、誘導加熱により熱処理すなわち焼き戻し処理を行っているので、得られる超高強度冷延鋼板は、フェライト相および焼き戻された低温変態相のそれぞれの相について、隣接または離れて存在する同じ相の結晶粒毎のナノ硬さ分布が少ないという金属組織的特徴を有する。すなわち隣接または離れて存在するフェライト相の最大ナノ硬さと最小ナノ硬さの差が20GPa以内、隣接または離れて存在する焼き戻された低温変態相の最大ナノ硬さと最小ナノ硬さの差が20GPa以内である。これは、誘導加熱の昇温加熱過程においては急速加熱され温度勾配が少ないため、結晶粒界近傍、結晶粒内での濃度ムラが少なく、鋼板全体が均一に熱処理されたためと考えられる。
これに対し従来の加熱熱処理法では、均一に熱処理することが不可能である。一般に薄鋼板の使用環境は、ボルトなど鋼材とは異なり、自動車部品などへの加工工程が必須である。したがって不均一な組織を有する従来鋼では、自動車部品などへの成形時に歪が導入されて結晶粒の界面などにおいて極微小クラックなどが発生し、水素が吸着蓄積するサイトを多数内在することとなる。そのため成形後の耐遅れ破壊特性が悪い。
表1に示すスラブを用い、スラブ加熱温度:1250℃、仕上げ圧延温度:880℃、巻取り温度:580℃、冷延圧下率:50%の条件で、加熱、熱間圧延、酸洗後、冷間圧延を行い、次いで、表2に示す各条件で焼鈍を行い鋼板を製造した。なお、この時の冷却停止温度は70℃以下とした。得られた鋼板について、下記項目の材料試験を行い材料特性を調査した。その結果を併せて表2に示す。
Figure 0004396243
Figure 0004396243
(1)圧延方向と90°の方向を長手方向(引張方向)とするJISZ2201の5号試験片を用い、JISZ2241準拠した引張試験を行い評価した。
(2)曲げ特性:圧延方向を長手方向とする40mm幅×200mm長さの試験片を用い、JISZ2248に準拠した曲げ試験を行い評価した。N=3で試験し、N=3の全数とも曲げ先端部で割れの発生しない曲げ半径を限界曲げ半径とした。
(3)穴拡げ率:日本鉄鋼連盟規格JFST1001に基づき実施した。初期直径d0=10mmの穴を打抜き、60°の円錐ポンチを上昇させ穴を拡げた際に、亀裂が板厚貫通したところでポンチ上昇を止め、亀裂貫通後の打抜き穴径dを測定し、穴拡げ率(%)=((d- d0)/ d0)×100として算出した。N=3で試験し、単純平均値で求めた。
(4)遅れ破壊時間:JISZ2248に準拠した方法で、先端R=10mmで180°U曲げサンプルを作製し、スプリングバック分をボルトなどで締め込み、U曲げサンプルの間隔が20mmとなるように固定し、0.1規定の塩酸中に浸漬し、割れ発生までの時間を測定した。割れ判定は目視である。最長で240時間浸漬し割れ発生なしの場合を割れ発生なしとした。N=3で試験し、N=3のうち最短の割れ発生時間を遅れ破壊時間とした。
(5)ナノ硬さ測定:Tribo Scope社製のナノ硬さ試験機を用い、電解研磨した表面に負荷荷重0.05〜0.20gfで対稜角115°のダイヤモンド三角錐の圧子の変位量40〜80nmで硬さ測定を行い、ナノ硬さHn=最大荷重Fmax/圧痕断面積Aにて算出した。各構成相別にN=10で測定し、ナノ硬さの差=最大ナノ硬さ-最小ナノ硬さとして求めた。
表2より、本発明例では、いずれの材料特性も良好である。特に、遅れ破壊時間の材料試験では割れが発生せず、ナノ硬さ測定ではナノ硬さの差が20GPa以内と小さく、成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板が得られていることがわかる。
一方、成分、焼鈍条件のいずれかが本発明範囲外である比較例では、ナノ硬さの差が20Gpa超えもしくは割れが発生し遅れ破壊時間が長く、成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板が得られていない。
成形後の耐遅れ破壊特性及び高い加工性が要求される自動車用部品以外、例えばインパクトビーム、ドアガードバーおよびバンパーリンフォースの強度部材としても好適である。
耐遅れ破壊特性に対する焼鈍後冷却速度と冷却後の昇温速度との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. mass%で、C:0.1〜0.2 %、Si:0.01〜1.8%、Mn:1〜2.5%、P:0.001〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、Al:0.005〜0.05%、N:0.0001〜0.005%を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼スラブを鋳造後、直ちにまたは一旦冷却して、加熱、熱間圧延、酸洗後、冷間圧延を行い得られた鋼板を、700〜900℃の温度で加熱焼鈍し、10℃/秒以上の冷却速度で冷却し、(0.3×熱処理温度)℃以上までを、10℃/秒以上の昇温速度で、誘導加熱にて加熱昇温し、150℃〜500℃の温度で熱処理することを特徴とする成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法。
  2. さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法。
  3. さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜0.5%、Mo:0.01〜0.5%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法。
  4. さらに、前記鋼スラブは、mass%で、Ca:0.0001〜0.005%、B:0.0001〜0.005%のいずれか1種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法。
JP2003399470A 2003-11-28 2003-11-28 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法 Expired - Lifetime JP4396243B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003399470A JP4396243B2 (ja) 2003-11-28 2003-11-28 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003399470A JP4396243B2 (ja) 2003-11-28 2003-11-28 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005163055A JP2005163055A (ja) 2005-06-23
JP4396243B2 true JP4396243B2 (ja) 2010-01-13

Family

ID=34724012

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003399470A Expired - Lifetime JP4396243B2 (ja) 2003-11-28 2003-11-28 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4396243B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5223360B2 (ja) * 2007-03-22 2013-06-26 Jfeスチール株式会社 成形性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5423072B2 (ja) * 2009-03-16 2014-02-19 Jfeスチール株式会社 曲げ加工性および耐遅れ破壊特性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法
EP2551366B1 (en) * 2010-03-24 2017-05-17 JFE Steel Corporation High-strength electrical-resistance-welded steel pipe and manufacturing method therefor
JP5668337B2 (ja) 2010-06-30 2015-02-12 Jfeスチール株式会社 延性及び耐遅れ破壊特性に優れる超高強度冷延鋼板およびその製造方法
DE102011056846B4 (de) * 2011-12-22 2014-05-28 Thyssenkrupp Rasselstein Gmbh Verfahren zur Herstellung eines Aufreißdeckels sowie Verwendung eines mit einer Schutzschicht versehenen Stahlblechs zur Herstellung eines Aufreißdeckels

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005163055A (ja) 2005-06-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5040197B2 (ja) 加工性に優れ、かつ熱処理後の強度靭性に優れた熱延薄鋼板およびその製造方法
US9028626B2 (en) Method for manufacturing high strength galvanized steel sheet with excellent formability
JP5365216B2 (ja) 高強度鋼板とその製造方法
US9157132B2 (en) High-strength galvanized steel sheet having excellent formability and method for manufacturing the same
JP5971434B2 (ja) 伸びフランジ性、伸びフランジ性の面内安定性および曲げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板ならびにその製造方法
US20120175028A1 (en) High strength steel sheet and method for manufacturing the same
JP5924332B2 (ja) 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5504643B2 (ja) 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP2017048412A (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、およびそれらの製造方法
US20200010915A1 (en) Hot press-formed member having excellent crack propagation resistance and ductility, and method for producing same
JP4288216B2 (ja) 耐水素脆化特性に優れたホットプレス用鋼板、自動車用部材及びその製造方法
JP5126844B2 (ja) 熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法
JP5315954B2 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP5239562B2 (ja) 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
WO2014196645A1 (ja) 熱処理鋼材及びその製造方法
JP6237963B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP4457681B2 (ja) 高加工性超高強度冷延鋼板およびその製造方法
JP4003401B2 (ja) 降伏強さと破断伸びの変動が小さく高成形性と低降伏比とを有する鋼板およびその製造方法
JP4265153B2 (ja) 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP4265152B2 (ja) 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法
JP4306497B2 (ja) 加工性および塗装後耐食性に優れる高強度冷延鋼板およびその製造方法
EP3868909A1 (en) Thin steel sheet and method for manufacturing same
JP6434348B2 (ja) 加工性に優れた高強度鋼板
JP2023100953A (ja) 熱間成形後の衝撃特性に優れた熱間成形用めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法
JP4396243B2 (ja) 成形後の耐遅れ破壊特性に優れた高加工性超高強度冷延鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20060921

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060929

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080918

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081225

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090929

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091012

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121030

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4396243

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121030

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131030

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term