JP4333352B2 - 延性および伸びフランジ性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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C:0.05〜0.4mass%
Cは、鋼の強化に寄与するだけでなく、残留オーステナイトを得る上でも有用な元素である。しかし、C含有量が0.05mass%未満ではその添加効果に乏しく、一方、0.4mass%を超えると溶接性の劣化を招くため、C量は0.05〜0.4mass%の範囲に限定する。好ましくは0.10〜0.25mass%である。
Siは、固溶強化作用を有するとともに、炭化物の生成を抑えて残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する元素である。しかし、3.0mass%を超えて含有しても、その効果が飽和するだけでなく、スケール性状を悪くし、表面品質の低下を招く。よって、Siは3.0mass%以下に限定する。なお、本発明の製造方法を溶融亜鉛めっき鋼板の製造に適用する場合には、めっき性の観点から、添加量を1mass%以下とするのが好ましい。
Mnは、固溶強化により鋼を強化するとともに、鋼の焼入れ性を向上し、さらに残留オーステナイトや低温変態相の生成を促進する作用を有する。このような効果は、Mn含有量が0.5mass%以上で認められる。一方、3.0mass%を超えて含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなると共に、コストの上昇を招く。よって、Mnの含有量は0.5〜3.0mass%の範囲に限定する。好ましくは1.0〜2.0mass%である。
Pは、加工性を劣化することなく固溶強化できる元素であり、高強度鋼板を得るのに有用な元素である。しかし、0.050mass%超の含有は、スポット溶接性を低下させるため、0.050mass%以下に制限する。好ましくは0.020mass%以下である。
Sは、Mnと結合することによりMnSを形成し、鋼板の伸びフランジ性を低下させる不純物元素である。そのため、Sの含有量は0.005mass%以下に制限する。好ましい範囲は0.003mass%以下である。
Alは、Siと同様に、炭化物の生成を抑え、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有する。しかし3.0mass%を超えて含有すると、その効果が飽和するだけでなく、鋼中の介在物の量が増加し、延性を低下させる。よってAlの添加量は3.0mass%以下に制限する。
SiとAlの合計の含有量は、0.5mass%未満では、上述したSiやAlの効果が認められないので、0.5mass%以上とする。一方、SiとAlを合計で3.0mass%以上添加しても、その効果は飽和するため、上限を3.0mass%とする。
Mo:1.0mass%以下、Cr:2.0mass%以下、B:0.003mass%以下の中から選ばれた1種または2種以上
Mo,Cr,Bは、鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、Mo,Cr,Bの過度の添加は、延性の低下を招くため、添加する場合はそれぞれ、Mo:1.0mass%、Cr:2.0mass%、B:0.003mass%を上限とする。なお、焼入性の改善効果を得るためには、Moの場合は0.02mass%以上、Crの場合は0.02mass%以上、Bの倍は0.0003mass%以上含有させることが好ましい。
Ti,Nb,Vはいずれも、強度の向上に寄与するので、必要に応じて添加することができる。また、TiやNbは、中炭素鋼の熱間圧延時に発生し易いエッジ部の粒界割れを防止する上で有効な元素でもある。しかしながら、過度の添加は延性の低下を招くので、それぞれ、Ti:0.25mass%、Nb:0.1mass%、V:0.3mass%を上限とする。なお、強度の向上を図るためには、Tiの場合は0.005mass%以上、Nbの場合は0.003mass%以上、Vの場合は0.02mass%以上含有させることが好ましい。
Ca,REMは、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有し、加工性とくに伸びフランジ性の向上に寄与する。しかし、CaとREMの含有量の合計が0.01mass%を超えると、その効果は飽和する。よって、Ca,REMのうちの1種または2種を合計で、0.01mass%以下含有させることができる。なお、加工性の改善効果を発現させるためには、CaとREMを合計で0.001mass%以上含有させることが好ましい。より好ましい範囲は、0.001〜0.005mass%である。
1回目の連続焼鈍においては、焼鈍後の冷却によりマルテンサイト相を生成させることが必要であり、そのためには、焼鈍温度はオーステナイトが出現する750℃以上、保持時間は10秒以上とする必要がある。焼鈍温度が750℃未満あるいは保持時間が10秒未満では、フェライト相からオーステナイト相への変態が不十分となり、冷却後、十分な量のマルテンサイト相を得ることができない。一方、高温、長時間の焼鈍は、製造コストの上昇を招くため、焼鈍温度は900℃以下、保持時間は300秒以下とすることが好ましい。また、焼鈍後の冷却速度が10℃/sec未満であったり、冷却終了温度が350℃を超えていたりすると、十分なマルテンサイト相が生成しなくなるため、冷却速度は10℃/sec以上、冷却終了温度は350℃以下とする。
連続焼鈍後、焼戻し処理を施すことにより、生成したマルテンサイト相のラス間に微細な炭化物を析出させる。この微細な炭化物の析出処理は、その後行われる再焼鈍により、微細なオーステナイト相を生成させるために必要な工程である。しかし、焼戻し温度が250℃未満または焼戻し時間が120秒未満では、十分な炭化物の析出が起こらず、また、焼戻し温度が550℃超えまたは焼戻し時間が600秒超えでは、炭化物が粗大化し、次工程で行われる再焼鈍時に炭化物が溶け残るとともに、微細に分散したオーステナイト相を得ることができなくなる。よって、焼戻し処理は上記の範囲とする。
焼戻し処理後に行う2回目の連続焼鈍(再焼鈍)は、焼戻し処理後、室温まで冷却してから、あるいは、焼戻し温度からそのまま再加熱し、720℃以上850℃以下の温度で10〜120秒間保持する条件で行う。この焼鈍を施すことにより、前工程の焼戻し処理で生成した微細炭化物が再固溶し、微細に分散したオーステナイト相が得られる。加熱温度が720℃未満あるいは保持時間が10秒未満では、再オーステナイト化が不十分となり、一方、加熱温度が850℃より高いか、あるいは、保持時間が300秒を超えると、オーステナイトが粗大となり、本発明の効果が得られない。
鋼板のミクロ組織は、圧延方向断面を光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡にて観察し、鋼板のフェライト分率(vol%)の測定および低温変態相の種類の判別を行った。また、残留オーステナイト相の体積率は、鋼板を板厚方向の中心面まで研磨し、この板厚中心面の回折X線強度測定により求めた。この測定では、入射X線としてMo-Kα線を使用し、フェライト相の{110}、{200}、{211}各面の回折X線強度に対する残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}各面の回折X線強度の比を求め、これらの平均値を残留オーステナイト相の体積率とした。
<機械的特性>
(1) 引張試験:延性を評価するために、鋼板から圧延直角方向に採取したJIS 5号試験片を用いて、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、耐力(YS)、引張強さ(TS)、破断伸び(El)を測定し、降伏比(YR)、引張強さと伸びとの積(TS×El)を求めた。
(2) 穴拡げ試験:穴拡げ試験を行い、伸びフランジ性を評価した。穴拡げ試験は、鋼板に直径10mmの円形の初期穴を打抜き、この穴に60°円錐ポンチを押し当てて穴拡げ加工を行い、穴縁の亀裂が板厚を貫通した時の穴径dbを求め、次式によって穴拡げ率λを求めた。また、この値から、引張り強さと穴拡げ率との積(TS×λ)を求めた。
λ(%)={(db−di)/di}×100
ここで、di:初期穴径(mm)、db:亀裂が板厚を貫通したときの穴径(mm)
Claims (4)
- C:0.05〜0.4mass%、
Si:3.0mass%以下、
Mn:0.5〜3.0mass%、
P:0.050mass%以下、
S:0.005mass%以下、
Al:3.0mass%以下、
SiとAlの合計:0.5〜3.0mass%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼片を熱間圧延し、冷間圧延し、その後、750℃以上に加熱し10秒以上保持してから10℃/sec以上の速度で350℃以下まで冷却する連続焼鈍し、250〜550℃の温度で120〜600秒保持する焼戻し処理し、さらにその後、720℃以上850℃以下の温度に加熱し10〜300秒保持してから5℃/sec以上の速度で350〜550℃の温度域まで冷却し、引き続きその温度域に20〜600秒保持してから室温まで冷却する再焼鈍を施すことを特徴とする延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。 - 上記成分組成に加えてさらに、Mo:1.0mass%以下、Cr:2.0mass%以下、B:0.003mass%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
- 上記成分組成に加えてさらに、Ti:0.25mass%以下、Nb:0.1mass%以下、V:0.3mass%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
- 上記成分組成に加えてさらに、Ca,REMのうち1種または2種を合計で0.01mass%以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
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