JP2011038029A - 樹脂製タンク - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂製タンクにおいて、耐候性を改善し、耐熱性を高める。
【解決手段】タンク本体2の液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位からなる。式(1)、(2)および(3)に含まれる2価の芳香族基Ar1 、Ar2 およびAr3 の合計を100モル%とするとき、2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上含まれている。また、流動開始温度が280℃以上である。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−O−Ar3 −O−
(式中、Ar1 は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。Ar2 、Ar3 は、それぞれ独立に、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。)
【選択図】図1

Description

本発明は、特定の構造を有する液晶ポリエステルからなるタンク本体を有する樹脂製タンクに関するものである。
主に液体の保存、運搬、貯蔵のために使用される容器であるタンクとしては、近年、形状自由度が高く軽量化が可能な樹脂製タンクの要望が高まっている。
この樹脂製タンクには高い水蒸気バリア性(ガスバリア性)が要求されており、高い水蒸気バリア性発現のためには、特に高結晶性の樹脂や、高い分子間相互作用を有する樹脂が有用とされている。そして、ポリビニルアルコール共重合体などとともに、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルは、その特異な分子形態から高い水蒸気バリア性を示す材料として注目され始めている。
ところが、高い水蒸気バリア性を有するポリビニルアルコール共重合体や、液晶ポリエステルアミド樹脂などは、水素結合による高い凝集エネルギーによって水蒸気バリア性を発揮している。そのため、環境中の水分を吸いやすく、吸水することで水蒸気バリア性が低下してしまう。
このような背景から、液晶ポリエステルの耐熱性や環境安定性に着目し、樹脂製タンクの材料として液晶ポリエステルを採用することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−126651号公報
しかしながら、特許文献1に開示された特定構造の液晶ポリエステルは、耐光性が十分ではないため、屋外で長期にわたって使用した場合には樹脂製タンクの強度が低下する恐れがあり、耐候性が必ずしも十分でない。
これに加えて、この液晶ポリエステルは、融点が270℃未満および/または流動開始温度(液晶開始温度)が250℃未満であるため、高度の耐熱性が要求される環境(とりわけ、自動車のエンジンルーム内)には適さないという課題がある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、耐候性に優れるとともに高度の耐熱性を有する樹脂製タンクを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明者が鋭意検討したところ、特定の構造を有する液晶ポリエステルが高い強度保持率および低い水蒸気透過度を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1に記載の発明は、液晶ポリエステルからなるタンク本体を有する樹脂製タンクであって、前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位からなり、これらの式(1)、(2)および(3)に含まれる2価の芳香族基Ar1 、Ar2 およびAr3 の合計を100モル%とするとき、これらの芳香族基の中で2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上含まれ、かつ流動開始温度が280℃以上である樹脂製タンクとしたことを特徴とする。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−O−Ar3 −O−
(式中、Ar1 は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。Ar2 、Ar3 は、それぞれ独立に、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。なお、Ar1 、Ar2 、Ar3 は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を置換基として有していてもよい。)
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルは、流動開始温度より高い温度で測定されるメルトテンションの最大値が0.0098N以上であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、燃料タンクであることを特徴とする。
本発明によれば、タンク本体の液晶ポリエステルの構造を特定したので、強度保持率が高くなると同時に、水蒸気透過度が低くなることから、樹脂製タンクの耐候性を改善することができる。また、タンク本体の液晶ポリエステルについて、その流動開始温度の下限を規定したので、樹脂製タンクの耐熱性を大幅に向上させることができる。したがって、耐候性に優れるとともに高度の耐熱性を有する樹脂製タンクを提供することが可能となる。
本発明の実施の形態1に係る燃料タンクを示す正面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
図1には、本発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1では、自動車や船舶の燃料タンク1に本発明が適用されている。
本発明の実施の形態1に係る燃料タンク1は、図1に示すように、所定の形状のタンク本体2を有しており、タンク本体2には、給油口3および燃料供給口5がタンク本体2の内外を連通する形で一体に形成されている。
このタンク本体2は、液晶ポリエステル基材から構成されている。この液晶ポリエステル基材を構成する液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位からなり、これらの式(1)、(2)および(3)に含まれる2価の芳香族基Ar1 、Ar2 およびAr3 の合計を100モル%とするとき、これらの芳香族基の中で2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上含まれており、かつ、流動開始温度が280℃以上であり、流動開始温度より高い温度で測定されるメルトテンションの最大値が0.0098N以上のものであり、溶融時に光学異方性を示す。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−O−Ar3 −O−
(式中、Ar1 は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。Ar2 、Ar3 は、それぞれ独立に、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。なお、Ar1 、Ar2 、Ar3 は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を置換基として有していてもよい。)
ここで、液晶ポリエステルとは、450℃以下の温度で、溶融時に光学的異方性を示すポリエステルを意味する。このような液晶ポリエステルは、その製造段階で、2,6−ナフタレンジイル基を含むモノマーと、それ以外の芳香環を有するモノマーとを、得られる液晶ポリエステル中において、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位が40モル%以上になるように、原料モノマーを選択して重合させることで得ることができる。
このように、タンク本体2は、前記の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位からなる液晶ポリエステルにおいて、2価の芳香族基Ar1 、Ar2 およびAr3 の合計を100モル%とするとき、これらの芳香族基の中で2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上となっているので、強度保持率が高くなると同時に、水蒸気透過度が低くなることから、燃料タンク1の耐候性を改善することができる。
また、タンク本体2は、その構成材料である液晶ポリエステルの流動開始温度が280℃以上であるため、燃料タンク1の耐熱性を大幅に向上させることができる。
本発明に用いられる液晶ポリエステルにおいては、Ar1 、Ar2 およびAr3 で示される2価の芳香族基の合計を100モル%とするとき、これらの芳香族基の中で2,6−ナフタレンジイル基が、50モル%以上である液晶ポリエステルが好ましく、2,6−ナフタレンジイル基が65モル%以上の液晶ポリエステルがさらに好ましく、2,6−ナフタレンジイル基が70モル%以上の液晶ポリエステルが特に好ましい。このように、2,6−ナフタレンジイル基をより多く含む液晶ポリエステルは、燃料タンク1の耐候性をさらに向上させることができる。
また、本発明の液晶ポリエステルを構成する構造単位である(1)、(2)および(3)の合計(以下、「全構造単位合計」と呼ぶことがある。)を100モル%とするとき、(1)で示される芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位の合計が30〜80モル%、(2)で示される芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位の合計が10〜35モル%、(3)で示される芳香族ジオールに由来する構造単位の合計が10〜35モル%であることが好ましい。
また、本発明に用いられる液晶ポリエステルは、全芳香族液晶ポリエステルであると好ましい。ここで、全芳香族液晶ポリエステルとは、前記のAr1 、Ar2 およびAr3 で示される2価の芳香族基同士がエステル結合(−C(O)O−)で連結されている樹脂であり、全構造単位合計に対する式(2)で示される構造単位の含有比率と式(3)で示される構造単位の含有比率とは実質的に等しくなる。全芳香族液晶ポリエステルは、耐熱性にも優れるため、タンク本体2の材料として好適に用いることができる。
ここで、全構造単位合計に対する前記芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位、前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位および前記芳香族ジオールに由来する構造単位の含有比率が前記の範囲であると、液晶ポリエステルが高度の液晶性を発現することに加えて、溶融加工性に優れるものとなるため好ましい。
なお、全構造単位合計に対する前記芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位は、40〜70モル%であると、より好ましく、45〜65モル%であると、とりわけ好ましい。一方、全構造単位合計に対する前記芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位および前記芳香族ジオールに由来する構造単位はそれぞれ、15〜30モル%であると、より好ましく、17.5〜27.5モル%であると、とりわけ好ましい。
式(1)で示される構造単位を形成するモノマーとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸または4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸が挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。ここで、本発明の2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を形成するモノマーとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸であり、さらに2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸のナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。さらに、後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
式(2)で示される構造単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはビフェニル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。ここで、本発明の2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、さらに2,6−ナフタレンジカルボン酸のナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。さらに、後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
式(3)で示される構造単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシンまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルが挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。ここで、本発明の2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフトールであり、さらに2,6−ナフトールのナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。さらに、後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
前述したように、式(1)、(2)または(3)で示される構造単位はいずれも、芳香環(ベンゼン環またはナフタレン環)に前記の置換基(ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基)を有していてもよい。これらの置換基を例示すると、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などで代表されるアルキル基であり、これらは直鎖でも分岐していもよく、脂環基でもよい。さらに、アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などで代表される炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
前記の式(1)、(2)または(3)で示される構造単位を形成するモノマーは、ポリエステルを製造する過程で重合を容易にするため、エステル形成性誘導体を用いることが好ましい。このエステル形成性誘導体とは、エステル生成反応を促進するような基を有するモノマーを示し、具体的に例示すると、モノマー分子内のカルボン酸基を酸ハロゲン化物、酸無水物に転換したエステル形成性誘導体や、モノマー分子内のヒドロキシル基(水酸基)を低級カルボン酸エステル基にしたエステル形成性誘導体などの高反応性誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる液晶ポリエステルの好ましいモノマーの組み合わせとしては、特開2005−272810号公報に記載された液晶ポリエステルが、耐熱性とメルトテンション向上という観点から好ましい。具体的には、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸の繰り返し構造単位(I)が40〜74.8モル%、ハイドロキノンの繰り返し構造単位(II)が12.5〜30モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸の繰り返し構造単位(III)が12.5〜30モル%およびテレフタル酸の繰り返し構造単位(IV)が0.2〜15モル%であり、かつ(III)および(IV)で表される繰り返し構造単位のモル比が(III)/{(III)+(IV)}≧0.5の関係を満たすものである。
より好ましくは、前記の(I)〜(IV)の繰り返し構造単位の合計に対して、(I)の繰り返し構造単位が40〜64.5モル%、(II)の繰り返し構造単位が17.5〜30モル%、(III)の繰り返し構造単位が17.5〜30モル%および(IV)の繰り返し構造単位が0.5〜12モル%であり、かつ(III)および(IV)で表される繰り返し構造単位のモル比が(III)/{(III)+(IV)}≧0.6を満足するものが挙げられる。
さらに好ましくは、前記の式(I)〜(IV)の繰り返し構造単位の合計に対して、(I)の繰り返し構造単位が50〜58モル%、(II)の繰り返し構造単位が20〜25モル%、(III)の繰り返し構造単位が20〜25モル%および(IV)の繰り返し構造単位が2〜10モル%であり、かつ(III)および(IV)で表される繰り返し構造単位のモル比が(III)/{(III)+(IV)}≧0.6を満足するものが挙げられる。
また、液晶ポリエステルの製造方法としては、公知の方法を採用することができるが、特に好ましくは、前記のエステル形成性誘導体として、モノマー分子内のヒドロキシル基を低級カルボン酸を用いてエステル基に転換した誘導体を用いて製造することが好ましく、ヒドロキシル基をアシル基に転換することが特に好ましい。アシル化は、通常、ヒドロキシル基を有するモノマーを無水酢酸と反応させることで達成できる。こうしたアシル化によるエステル形成性誘導体は、脱酢酸重縮合により重合することができ、容易にポリエステルを製造することができる。
前記の液晶ポリエステル製造方法としては、公知の方法(例えば、特開2002−146003号公報に記載された方法など)を適用することができる。すなわち、前記の式(1)、(2)および(3)で示されるに対応するモノマーを、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位に対応するモノマーが、全モノマーの合計に対して、40モル%以上になるように選択し、必要に応じてエステル形成性誘導体に転換した後、溶融重縮合せしめ、比較的低分子量の芳香族液晶ポリエステル(以下、「プレポリマー」と略記する。)を得、次いで、このプレポリマーを粉末とし、加熱することにより、固相重合させる方法が挙げられる。このような固相重合を用いると、重合がより進行しやすく、高分子量化を図ることができる。
溶融重縮合により得られたプレポリマーを粉末とするには、例えばプレポリマーを冷却固化した後に粉砕すればよい。粉末の粒子径は、平均で0.05mm以上3mm程度以下が好ましく、特に0.05mm以上1.5mm程度以下が、芳香族液晶ポリエステルの高重合度化が促進されることからより好ましく、0.1mm以上1.0mm程度以下であれば、粉末の粒子間のシンタリングを生じることなく液晶ポリエステルの高重合度化が促進されるため、さらに好ましい。
固相重合における加熱は、通常昇温しながら行われ、例えば室温からプレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度まで昇温させる。このときの昇温時間は、特に限定されるものではないが、反応時間の短縮という観点から、1時間以内で行うことが好ましい。
液晶ポリエステルの製造においては、固相重合における加熱は、プレポリマーの流動開始温度より20℃以上低い温度から280℃以上の温度まで昇温することが好ましい。昇温は、0.3℃/分以下の昇温速度で行うことが好ましい。この昇温速度は、好ましくは0.1〜0.15℃/分である。この昇温速度が0.3℃/分以下であれば、粉末の粒子間のシンタリングが生じにくいため、高重合度の液晶ポリエステルの製造が容易となる点で好ましい。
ここで、液晶ポリエステルの重合度を高めるため、固相重合における加熱は、得られる液晶性樹脂の芳香族ジオールまたは芳香族ジカルボン酸成分のモノマー種によって異なるが、280℃以上の温度で、好ましくは280℃〜400℃の範囲で、30分以上反応させることが好ましい。とりわけ、液晶性樹脂の熱安定性の点から、反応温度280〜350℃で30分〜30時間反応させることが好ましく、反応温度285〜340℃で30分〜20時間反応させることがさらに好ましい。
本発明に係る液晶ポリエステルの流動開始温度とは、上記製造方法で得られた液晶ポリエステル(パウダーまたはペレット)について、押出機を使用し、溶融混錬により得られたペレットについて測定した値であることを意味する。このペレットの流動開始温度が280℃以上であることが、耐熱性の向上、特には高密度実装技術としてはんだリフロー処理に耐えうる耐熱性という観点からは必須であり、特に290℃以上380℃以下であれば、耐熱性が高く、かつ成形時のポリマーの分解劣化が抑えられる点で好ましく、295℃以上350℃以下であれば、さらに好ましい。
ここで、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取り付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kgf/cm2 )の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度である(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
本発明に用いられる液晶ポリエステルは、上記製造方法で得られた液晶ポリエステル(パウダーまたはペレット)を溶融混錬して得られたペレットの流動開始温度より高い温度で測定されるメルトテンションの最大値が0.0098N以上(好ましくは0.015N以上、さらに好ましくは0.020N以上)を示すことを特徴とする。さらに、流動開始温度より25℃高い温度で測定されるメルトテンションの最大値が0.0098N以上である液晶ポリエステルは、液晶ポリエステル基材を安定して製造することができる。
このメルトテンションとは、溶融粘度測定試験機(流れ特性試験機)に上記製造方法で得られた液晶ポリエステル(パウダーまたはペレット)を溶融混錬により得られたペレットを充填し、シリンダーバレル径1mm、ピストンの押出し速度は5.0mm/分、速度可変巻取機で自動昇速しながら試料を糸状に引き取り、破断したときの張力(単位:N)を意味する。
本発明においては、靱性改良の点から、液晶ポリエステルにゴムを配合することができ、ここでいうゴムとしてはオレフィン系共重合体などが挙げられる。
特に、他の熱可塑性樹脂と積層した場合に層間接着性、フィルム、シートとしての柔軟性などを得る意味において、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およおよびその塩、カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を配合することが可能である。
エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体の配合量は、フィルムまたはシートの成形性などの点から、液晶ポリエステル100質量部に対し、0.1〜50質量部の範囲が選択され、好ましくは1〜35質量部、より好ましくは2〜30質量部の範囲が選択される。
また、エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを用いること、特に上記エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体と併用して用いることは、優れた平滑性を有するフィルムまたはシートを得る上で、またより優れた機械的強度、成形性を得る上で有効である。
エポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーを用いる場合、その好適な配合量は、水素バリア性、面衝撃強度、成形性の点から、液晶ポリエステル100質量部に対し、0.1〜30質量部の範囲が選択され、1〜25質量部がより好適であり、2〜20質量部がさらに好適である。
また、官能基を含有する熱可塑性樹脂と併用して用いる場合には、特に水素バリア性の観点から、官能基を含有するオレフィン系共重合体とエポキシ基、酸無水物基、カルボキシル基およびその塩、カルボン酸エステル基を含有しないエラストマーの合計が液晶ポリエステル100質量部に対し、50質量部以下が好ましく、35質量部以下、さらに30質量部以下がより好ましい。
また、本発明に用いられる液晶ポリエステルには、その特性を損なわない程度であれば、他の熱可塑性樹脂を添加することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられ、水蒸気バリア性を損ないにくいポリビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル共重合体などが好ましく用いられる。
液晶ポリエステルへのこれらの熱可塑性樹脂を配合する場合の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜35質量部、さらに好ましくは2〜30質量部である。
なお、本発明に用いられる液晶ポリエステルでは、これまでの熱可塑性樹脂と異なり、ポリオレフィンに対しても親和性を有しているために、ポリオレフィンを添加しても、特性の低下が少ない。
本発明においては、液晶ポリエステルの機械強度その他の特性を付与するために補強剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。
この充填剤としては、例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維および導電性が必要な場合にはPAN系の炭素繊維が好ましく使用される。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
上記の充填剤の添加量は、液晶ポリエステル樹脂100質量部に対し、通常、0.05〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜80質量部、さらに好ましくは10〜50質量部である。
本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体など)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系など)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤など)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化PPO、臭素化PC、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)を添加することができる。
液晶ポリエステルに上記の添加剤を配合する方法については特に制限はないが、液晶ポリエステルとの相互作用を適度に向上させるために好ましい方法として、ニーディングディスク等を挿入した二軸押出機を用いて樹脂組成物に適度なせん断力(剪断力)をかけ、溶融混練を行うことが好ましい。
溶融加工温度については、液晶ポリエステルの融点以上または融点が観測されない場合には、流動開始温度+30℃以上において混練することが、水素ガスバリア性を低下させない点で好ましい。
また、充填材およびその他の添加剤を添加する際には、一括混練法、逐次添加法、高濃度組成物(マスター)を添加する方法などが挙げられ、いずれの方法でも構わない。
本発明における液晶ポリエステルの成形方法に関しても制限はなく、公知の方法を利用することができる。例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形(プレス成形、インジェクションプレス成形)などにより加工することができる。本発明の特性発揮の観点から、ブロー成形あるいは押出成形などが好ましい。また、例えば、Tダイ法あるいはインフレーション法により、フィルム状またはシート状とすることができる。
また、燃料タンク1は、耐衝撃強度にも優れるために、水蒸気バリア層として用いれば、この耐衝撃シェルの厚みを薄くすることが可能で、燃料タンク1全体を軽量化することができる点で好ましい。
この内、製造性の観点から、射出成形、射出ブローまたは連続ブロー成形により一段階でタンクライナー部を成形する方法などが好ましく、本発明の液晶ポリエステル樹脂はこの両者に適しているが、射出ブローまたは連続ブロー成形がより好ましい。燃料タンク1のライナーを射出ブローまたは連続ブロー成形で製造する際には、液晶ポリエステル樹脂の単層であっても構成することが可能だが、他の熱可塑性樹脂との多層ブローが好ましい。
他の熱可塑性樹脂として選択されるのは、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマなどが例示でき、耐衝撃性、環境耐性の点からポリオレフィン樹脂が好ましく、中でもポリエチレンが好ましい。これらは種々の添加剤を配合した組成物であってもよい。
本発明に用いられる液晶ポリエステルと他の熱可塑性樹脂との積層においては、接着層を間に設けてもよい。接着層としては、変性ポリオレフィン樹脂が好ましく用いられ、その中でも特に加工性の観点から、酢酸ビニルけん化物共重合体、グリシジルメタクリレート基を有するオレフィン系共重合体、マレイン酸を有するオレフィン系共重合体、オキサゾリニル基を有するオレフィン系共重合体、イソシアナート基を有するオレフィン系共重合体などが好ましく用いられ、特にオキサゾリニル基を有するオレフィン系共重合体が好ましい。このような好ましい例としては、液晶ポリエステルとの相溶性の点から、スチレンと2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとの共重合体が好ましい。
本発明に用いられる液晶ポリエステルからなる成形品の厚みは0.005〜5mmが好ましく、より好ましくは0.01〜2mm、さらに好ましくは0.02〜2mmである。
また、本発明に用いられる液晶ポリエステルから構成される燃料タンク1を最終的に構成する前の成形品、フィルムおよびシート状のものは、一般的に用いられる方法によって2次加工することができる。この2次加工とは、切削・研磨などの物理加工、加温・加熱による老成処理などの加熱処理、イオンやプラズマによる表面処理などであり、特に加温・加熱下での延伸処理や水蒸気バリア性を発揮する方向の厚みを減じるプレス、ローラー圧延、多軸引張延伸などの応力付加による圧延処理が好ましく用いられる。加温・加熱温度は、通常、液晶ポリエステルのガラス転移温度以上かつ液晶ポリエステルの流動開始温度−10℃以下が好ましい。
フィルムは、それ自体を例えば射出成形によって他の熱可塑性樹脂や液晶ポリエステルから構成したタンク本体2の内部に張り付けることができるが、一度フィルム最内層に張り合わせてから溶融してライナーとすることもできる。
また、燃料タンク1は、耐衝撃強度や耐圧性の観点から、ライナーに構造用材料からなるシェルを組み合わせることが好ましい。ここで、シェルとは、上記したライナーの外部に構成され、ライナーとシェルの一つの組み合わせからなる構成でも、ライナーとシェルの組み合わせをさらに複数重ね合わせた構成でもよい。この場合、タンク本体2の内部に近いシェルをインナーシェル、最外層にあるシェルをアウターシェルと呼び、インナーシェルは最内層から順に層番号を付けて便宜的に最内層をインナーシェル第1層と呼ぶ。インナーシェルやアウターシェルには樹脂に構造用繊維を配合した複合材料からなるものが用いられ、構造用繊維としては、黒鉛繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ホウ素繊維、液晶性樹脂繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などが用いられ、樹脂としては、熱硬化樹脂または熱可塑性樹脂が用いられ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂はポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが好ましく用いられる。
燃料タンク1の製造法としては、吹付け塗装などの塗装によりシェル内装または樹脂製もしくは金属製のライナーへ塗装する方法、フィルムを構成した後、シェル内装または樹脂製もしくは金属製のライナーに張り付ける方法、シートをプレス金型で加熱圧縮加工してタンク状に加工する方法、射出成形によってタンクライナーの半球または一部を構成し溶着する方法、射出ブローまたは連続ブロー成形によってタンクライナー部を成形する方法、または、射出ブローもしくは連続ブローによって燃料タンク1の蓋部を除く部分のライナーを成形し、蓋部と接合する方法、溶融中子を用いてタンクライナー部を射出成形や押出成形で成形した後、中子を取り除きタンクライナーとする方法などが挙げられる。
シェルの構成方法としては、ハンドレイアップ、テープレイイング、ブレイディング、フィラメントワインディングなどが用いられ、フィラメントワインディングが好ましい。
フィラメントワインディングとは、繊維を巻織型に配列させ、巻き付けた後オートクレーブなどで熱を付与することで、繊維を溶融パッキングさせてタンク本体2を形成する方法である。
燃料タンク1の部品となる口金部(図示せず)などとの接合は、溶着、接着、機械的なネジ止めなどの方法が用いられるが、好ましくは、ガス漏れを防止する観点から、タンク本体2と同じ液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステルと他の熱可塑性樹脂の積層材料からなる部品をそれぞれの層で溶着し、必要に応じてシーラント材で補強することが好ましい。シーラント剤としては、本発明に用いる液晶ポリエステルに接着性ポリマーを配合したものが好ましく用いられ、これには、燃料タンク1のリサイクル材を代用することが可能である。すなわち、ここでいう接着性ポリマーとは接着層を構成するポリマーと同じものから選ばれる。
[発明のその他の実施の形態]
なお、上述した実施の形態1では、本発明を燃料タンク1に適用した場合について説明したが、燃料タンク1以外の樹脂製タンク(例えば、ラジエータタンク、建設機械(油圧ショベル、ホイルローダ等)の作動油タンク、化学薬品などの貯蔵用タンク、地上または地下に設置して使用する貯水槽など)に本発明を同様に適用することも可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
<合成例1>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、ハイドロキノン272.52g(2.475モル、0.225モル過剰仕込み)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、無水酢酸1226.87g(12.0モル)および触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを添加し、室温で15分間にわたって攪拌した後、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度(145℃)を保持したまま1時間にわたって攪拌した。
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度(310℃)で3時間保温して液晶ポリエステルを得た。こうして得られた液晶ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmの粉末状の液晶ポリエステル(プレポリマー)を得た。これを合成例1とする。
この合成例1の液晶ポリエステルにおいて、実質的な共重合モル分率は、前記の式(1)で示される構造単位:前記の式(2)で示される構造単位:前記の式(3)で示される構造単位で表して、55.0モル%:22.5モル%:22.5モル%である。また、この合成例1の液晶ポリエステルにおいて、これらの構造単位に含まれる芳香族基の合計に対する2,6−ナフタレンジイル基の共重合モル分率は72.5モル%である。
<合成例2>
合成例1と同様にして得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、同温度(250℃)から293℃まで5時間かけて昇温し、次いで、同温度(293℃)で5時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、粉末状の液晶ポリエステルを得た。これを合成例2とする。
この合成例2の液晶ポリエステルにおいて、実質的な共重合モル分率は、前記の式(1)で示される構造単位:前記の式(2)で示される構造単位:前記の式(3)で示される構造単位で表して、55.0モル%:22.5モル%:22.5モル%である。また、この合成例2の液晶ポリエステルにおいて、これらの構造単位に含まれる芳香族基の合計に対する2,6−ナフタレンジイル基の共重合モル分率は72.5モル%である。
<合成例3>
合成例1と同様にして得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、同温度(250℃)から310℃まで10時間かけて昇温し、次いで、同温度(310℃)で5時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、粉末状の液晶ポリエステルを得た。これを合成例3とする。
この合成例3の液晶ポリエステルにおいて、実質的な共重合モル分率は、前記の式(1)で示される構造単位:前記の式(2)で示される構造単位:前記の式(3)で示される構造単位で表して、55.0モル%:22.5モル%:22.5モル%である。また、この合成例3の液晶ポリエステルにおいて、これらの構造単位に含まれる芳香族基の合計に対する2,6−ナフタレンジイル基の共重合モル分率は72.5モル%である。
<合成例4>
合成例1と同様の反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸を911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを409g(2.2モル)、イソフタル酸を91g(0.55モル)、テレフタル酸を274g(1.65モル)、無水酢酸を1235g(12.1モル)用いて攪拌した。次いで、1−メチルイミダゾールを0.17g添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して1時間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを1.7g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。こうして得られた液晶ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmの液晶ポリエステルの粉末(プレポリマー)を得た。
こうして得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温した後、同温度(250℃)から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで、同温度(285℃)で3時間保温して固相重合させた。その後、固相重合した後の粉末を冷却し、粉末状の液晶ポリエステルを得た。これを合成例4とする。
<流動開始温度の測定>
合成例1〜4についてそれぞれ、粉末状の液晶ポリエステルの流動開始温度を測定した。すなわち、フローテスター((株)島津製作所製の「CFT−500型」)を用いて、試料約2gを内径1mm、長さ10mmのダイスを取り付けた毛細管型レオメーターに充填する。9.8MPa(100kgf/cm2 )の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度を流動開始温度とした。これらの結果をまとめて表1に示す。
また、合成例1〜4についてそれぞれ、粉末状の液晶ポリエステルを造粒してペレット状にし、このペレット状の液晶ポリエステルの流動開始温度を測定した。すなわち、合成例1〜4の液晶ポリエステル粉末各500gを用いて、二軸押出機((株)池貝製の「PCM−30」)によって各液晶ポリエステルの粉末の流動開始温度〜流動開始温度+10℃高い温度で造粒し、ペレットを得た。こうして得られた合成例1〜4に相当するペレットについて、その流動開始温度を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。
<メルトテンションの測定>
液晶ポリエステル基材を安定して工業的に作製するためには、ある程度のメルトテンションが必要となるので、合成例1〜4についてそれぞれ、ペレット状の液晶ポリエステルのメルトテンションを測定した。このとき、各ペレットについては、ペレットの流動開始温度より高い温度でメルトテンション測定を実施し、メルトテンションの最大値を求めた。また、試料が糸状に引き取れず、メルトテンション測定が実施できない温度についても調べた。
すなわち、溶融粘度測定試験機((株)東洋精機製作所製のキャピログラフ1B型)を用いて、試料約10gを仕込み、シリンダーバレル径1mm、ピストンの押出し速度は5.0mm/分、速度可変巻取機で自動昇速しながら試料を糸状に引き取り、試料が破断したときの張力をメルトテンション(単位:N)とした。これらの結果をまとめて表1に示す。
なお、合成例1の液晶ポリエステルについては、メルトテンション測定は、測定温度が300℃以下であると、試料が糸状に引き取れず、一方、測定温度が310℃以上では、樹脂が糸状にならず流動するため、メルトテンション測定が不可能であった。測定温度300〜310℃の間においてもメルトテンション測定を試みたが、試料が糸状に引き取れる場合があるが、メルトテンションが低すぎて糸が破断してしまうため、メルトテンションを算出することができなかった。
Figure 2011038029
<実施例1>
合成例3で得た液晶ポリエステルを用いて、厚み25μmの液晶ポリエステル基材を作製した。すなわち、この液晶ポリエステルの粉末を一軸押出機(スクリュー径50mm)内で溶融し、その一軸押出機の先端のTダイ(リップ長さ300mm、リップクリアランス1mm、ダイ温度350℃)よりフィルム状に押し出して冷却し、厚さ25μmの液晶ポリエステル基材(実施例1)を作製した。
<比較例1>
合成例4で得た液晶ポリエステルを用いて、実施例1と同様の手順により、厚み25μmの液晶ポリエステル基材(比較例1)を作製した。
<耐候性試験>
これらの実施例1および比較例1について、液晶ポリエステル基材の耐候性を評価するため、耐候性の指標として強度保持率を求めた。すなわち、促進耐候性試験機(スガ試験機(株)製の強エネルギーキセノンウェザーメーターSC700−WN)を用いて、以下の条件でキセノン照射を行った。
波長:275nm以上の連続光(フィルターにより短波長側をカット)
強度:160W/m2 (ランプ出力)
温度:65℃(照射面と同位置のフラットパネル温度計により測定)
時間:60時間
そして、キセノン照射後の液晶ポリエステル基材の強度をキセノン照射前の液晶ポリエステル基材の強度で除して強度保持率を算出した。
その結果、強度保持率は、比較例1では7%であったのに対して、実施例1では75%(つまり、比較例1の約11倍)であった。この結果から、比較例1と比べて実施例1は、液晶ポリエステル基材の耐候性が桁違いに優れていることが判明した。
<水蒸気透過試験>
これらの実施例1および比較例1について、液晶ポリエステル基材の水蒸気バリア性を評価するため、水蒸気バリア性の指標として水蒸気透過度を求めた。すなわち、JIS K7126(A法;差圧法)に準拠して、ガス透過率・透湿度測定装置(GTRテック(株)製の「GTR−10X」)により、温度40℃、相対湿度90%の条件で液晶ポリエステル基材の水蒸気透過度を測定した。
その結果、水蒸気透過度は、比較例1では0.343g/m2 ・24hであったのに対して、実施例1では0.011g/m2 ・24h(つまり、比較例1の約1/31倍)であった。この結果から、比較例1と比べて実施例1は、液晶ポリエステル基材の水蒸気バリア性が極めて高いことが判明した。
本発明は、自動車用途(燃料タンク、ラジエータタンク、ウォッシャ液タンク等)、自動二輪車用途(燃料タンク等)、船舶用途(燃料タンク、オイルタンク等)、建設機械用途(燃料タンク、作動油タンク等)のほか、化学薬品などの液体の貯蔵用タンク、地上または地下に設置して使用する貯水槽その他の用途に幅広く適用することができる。
1……燃料タンク(樹脂製タンク)
2……タンク本体
3……給油口
5……燃料供給口

Claims (3)

  1. 液晶ポリエステルからなるタンク本体を有する樹脂製タンクであって、
    前記液晶ポリエステルは、以下の式(1)、(2)および(3)で示される構造単位からなり、これらの式(1)、(2)および(3)に含まれる2価の芳香族基Ar1 、Ar2 およびAr3 の合計を100モル%とするとき、これらの芳香族基の中で2,6−ナフタレンジイル基が40モル%以上含まれ、かつ流動開始温度が280℃以上であることを特徴とする樹脂製タンク。
    (1)−O−Ar1 −CO−
    (2)−CO−Ar2 −CO−
    (3)−O−Ar3 −O−
    (式中、Ar1 は、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。Ar2 、Ar3 は、それぞれ独立に、2,6−ナフタレンジイル基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基および4,4’−ビフェニレン基からなる群から選ばれる1種以上の基を表す。なお、Ar1 、Ar2 、Ar3 は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基を置換基として有していてもよい。)
  2. 前記液晶ポリエステルは、流動開始温度より高い温度で測定されるメルトテンションの最大値が0.0098N以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製タンク。
  3. 燃料タンクであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製タンク。
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