しかしながら、図15のような半導体装置は、半導体素子10において、基板1を下側にした場合にリッジダミー領域9の表面をリッジ部8より高くする必要がある。そのため、リッジダミー領域9に形成するのに、リッジダミー領域9における半導体成長層2を積層する工程が別途、必要であったり、又、SiO2膜3の厚みを調整するなどの必要がある。よって、半導体素子を製造するプロセスの工程数が増加、複雑化し、歩留まり低下の原因となっていた。
本発明はこのような問題を鑑み、凹部を備えた掘り込み領域を有する基板に、窒化物半導体成長層を積層することで、凸部となる丘両端にリッジ部よりも厚みのあるダミーリッジ部を容易に形成することができる半導体素子、又、当該半導体素子から構成される半導体装置、及び、それらの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも表面の一部に窒化物半導体層を備える基板に、少なくとも1つの凹部からなる掘り込み領域と掘り込まれていない領域である丘部とを形成して加工基板を作製する第1ステップと、前記加工基板が備える掘り込み領域及び前記丘部表面の双方に少なくとも1種類以上の窒化物半導体薄膜からなる窒化物半導体積層部を積層する第2ステップとを、備えた半導体素子の製造方法において、前記第2ステップにおいて、前記丘部の前記掘り込み領域の近傍となる領域上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚を、前記丘部の前記掘り込み領域の近傍以外の領域である半導体素子作製領域上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚より、厚く積層することで前記丘部の前記掘り込み領域の近傍となる領域上に第1ダミーリッジ部を形成することを特徴とする。
このような方法によると、前記丘部の前記掘り込み領域の近傍となる領域上に積層する前記窒化物半導体薄膜の成長速度が、前記半導体素子作製領域上に積層する前記窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きくなる。よって、双方の領域で積層される層厚が異なることとなり、前記窒化物半導体積層部表面に段差が生じ、前記第1ダミーリッジ部が形成される。尚、前記掘り込み領域を構成する前記凹部は、ストライプ状に形成されても構わないし、桝目状に形成されても構わない。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップにおいて、前記窒化物半導体積層部を形成する際、前記掘り込み領域の前記凹部が完全には埋もれないことを特徴とする。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップにおいて、前記窒化物半導体積層部を構成する前記窒化物半導体薄膜に、Al組成比が0.03以上で且つ合計した膜厚が1μm以上であるAlGaN層が含まれることを特徴とする。
このような方法において、GaNと比較してAlGaNは、成長面で膜の原料となる原子・分子がマイグレーションする性質が小さく、Al組成比が高いほど、その傾向は顕著なものとなる。又、前記半導体素子作製領域に積層される前記窒化物半導体積層部にAl組成比が0.03以上で且つ合計した膜厚が1μm以上である前記AlGaN層が含まれると、前記半導体素子作製領域に積層された前記窒化物半導体積層部表面と200nm以上の段差を有する前記第1ダミーリッジ部が形成される。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップにおいて、前記第1ダミーリッジ部上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚を、前記半導体素子作製領域上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚より、200nm以上厚く形成することを特徴とする。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第1ステップにおいて、前記掘り込み領域を、2つ以上の凹部と、当該凹部に挟まれ前記掘り込み領域の延在する第1方向と垂直な方向の幅が100μm以下の凸部である狭平坦部と、から構成し、前記第2ステップにおいて、前記狭平坦部において、当該狭平坦部上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記狭平坦部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚が、前記半導体素子作製領域上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚より厚く積層することにより、第2ダミーリッジ部を形成することを特徴とする。
このような方法によると、前記狭平坦部の幅を100μm以下とすることで、当該狭平坦部上に積層される前記窒化物半導体薄膜の成長速度が、前記丘部に積層される前記窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きくなり、よって、前記第2ダミーリッジ部が形成される。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第1ステップにおいて、前記掘り込み領域を、3つの凹部と、当該凹部に挟まれ前記掘り込み領域の延在する第1方向と垂直な方向の幅が100μm以下の凸部である2つの狭平坦部と、から構成し、前記第2ステップにおいて、前記狭平坦部において、当該狭平坦部上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記狭平坦部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚が、前記半導体素子作製領域上に積層する前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚より厚く積層することにより、2つの第2ダミーリッジ部を形成することを特徴とする。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップで形成された前記半導体素子作製領域に半導体素子を作製する第3ステップと、前記加工基板を前記第1方向と垂直な方向で劈開し複数の前記半導体素子が搭載されたバーを形成する第4ステップと、作製されたバーを前記第1方向と平行な方向で分割することで前記バー上の前記半導体素子を個々のチップにチップ分割する第5ステップとを、備えるとともに、前記第5ステップにおいて、前記掘り込み領域に積層された前記窒化物半導体積層部表面又は前記掘り込み領域の直下部分となる前記加工基板の裏面側をスクライビングして、前記第1方向と平行なスクライブラインを形成した後、前記チップ分割を実施することを特徴とする。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップで形成された前記半導体素子作製領域に半導体素子を作製する第3ステップと、前記加工基板を前記第1方向と垂直な方向で劈開し複数の前記半導体素子が搭載されたバーを形成する第4ステップと、作製されたバーを前記第1方向と平行な方向で分割することで前記バー上の前記半導体素子を個々のチップにチップ分割する第5ステップとを、備えるとともに、前記第5ステップにおいて、前記第2ダミーリッジ部上の中心部又は前記第2ダミーリッジ部の直下部分となる前記加工基板の裏面側をスクライビングして、前記第1方向と平行なスクライブラインを形成した後、前記チップ分割を実施することを特徴とする。
又、このような半導体素子の製造方法において、前記第2ステップで形成された前記半導体素子作製領域に半導体素子を作製する第3ステップと、前記加工基板を前記第1方向と垂直な方向で劈開し複数の前記半導体素子が搭載されたバーを形成する第4ステップと、作製されたバーを前記第1方向と平行な方向で分割することで前記バー上の前記半導体素子を個々のチップにチップ分割する第5ステップとを、備えるとともに、前記第5ステップにおいて、前記掘り込み領域における2つの前記狭平坦部に挟まれた前記凹部に積層された前記窒化物半導体積層部又は当該凹部の直下部分となる前記加工基板の裏面側をスクライビングして、前記第1方向と平行なスクライブラインを形成した後、前記チップ分割することを特徴とする。
更に、本発明の半導体素子は、上述したいずれかに記載の前記半導体素子の製造方法によって製造されることを特徴とする。
又、本発明の半導体装置は、上述した本発明の前記半導体素子と、当該半導体素子が搭載されるマウント部材と、を備え、前記半導体素子が前記窒化物半導体積層部側を下にして、前記マウント部材の表面に当接するように前記マウント部材に搭載されることを特徴とする。
又、このような方法において、前記半導体素子はハンダを介してステムに直接マウントしても構わないし、ステム上にサブマウントを載置して構成される前記マウント部材にハンダを介してマウントしても構わない。
又、本発明の半導体素子の製造方法において、少なくとも表面の一部に窒化物半導体層を備える基板に、少なくとも1つの凹部からなる掘り込み領域と掘り込まれていない領域である丘部を形成して加工基板を作製する第1ステップと、前記加工基板が備える掘り込み領域と前記丘部表面双方に、少なくとも1種類以上の窒化物半導体薄膜からなる窒化物半導体積層部を積層する第2ステップとを、備えた半導体素子の製造方法において、前記第1ステップにおいて、前記掘り込み領域を桝目状に形成するとともに、平行で且つ隣接する前記掘り込み領域の間隔を異なるものとすることで、面積が異なる掘り込まれていない領域を複数形成し、前記第2ステップにおいて、面積が異なる前記掘り込まれていない領域上において、当該掘り込まれていない領域上に積層される前記窒化物半導体積層部の前記丘部表面から前記窒化物半導体積層部表面までの膜厚が、前記丘部表面の面積によって異なることを特徴とする。
更に、本発明の半導体素子は、上述の前記半導体素子の製造方法によって製造されることを特徴とする。
本発明によると、基板に凹部を備えた掘り込み領域を形成することで、その後、基板上に複数の窒化物半導体薄膜から成る窒化物半導体成長層を積層する際、丘部において、掘り込み領域近傍での窒化物半導体薄膜の成長速度が掘り込み領域近傍以外の領域での窒化物半導体薄膜の成長速度より大きくなる。よって、当該掘り込み領域近傍における層厚を厚くでき、層厚の厚いダミーリッジ部が容易に形成できる。更に、層厚の差を200nm以上とすることにより、歩留まり良く半導体素子が作製される。
又、このようにしてダミーリッジ部が形成された半導体素子を、ジャンクションダウン方式でマウント部材にマウントする際に、作製されたダミーリッジ部によりリッジ部が圧力を受けることを防止することができる。よって、リッジ部を損傷することなくマウント部材に固定することができ、歩留まり良く半導体装置を製造できる。
又、掘り込み領域を備えた加工基板を用いることにより、窒化物半導体成長層に内包される歪みを解放することができる。更に、掘り込み領域が窒化物半導体成長層によって完全には埋まりきっていない状態とすることで、歪みの開放が促進される。以上より、掘り込み領域を備えた加工基板上に、MOCVD法などを用いて窒化物半導体成長層を積層させたところ、窒化物半導体成長層内のクラックの発生を抑えることができる。又、掘り込み領域が窒化物半導体成長層によって完全には埋もれきっておらず、溝が形成されている。当該溝がチップ分割の際にガイドとなり、歩留まり良くチップ分割できる。
又、本発明によると、掘り込み領域を、2つ以上の凹部と、当該凹部に挟まれ掘り込み領域の延在する方向と垂直な方向の幅が100μm以下の凸部である狭平坦部から構成することによって、ウエーハに窒化物半導体積層部を積層させた場合、狭平坦部における窒化物半導体薄膜の成長速度を、掘り込まれていない領域における窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きくすることができる。よって、狭平坦部上に層厚の厚いダミーリッジ部を容易に形成することができる。又、掘り込み領域の両脇双方に凹部が形成されており、当該凹部は窒化物半導体積層部によって完全には埋め込まれておらず、溝が形成されている。当該溝がチップ分割の際にガイドとなり、歩留まり良くチップ分割が実施できる。
又、本発明によると、掘り込み領域を、3つの凹部と、当該凹部に挟まれ掘り込み領域の延在する方向と垂直な方向の幅が100μm以下の凸部である2つの狭平坦部から構成することによって、ウエーハに窒化物半導体積層部を積層させた場合、2つの狭平坦部における窒化物半導体薄膜の成長速度を、掘り込まれていない領域における窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きくすることができる。よって、狭平坦部上に層厚の厚い2つのダミーリッジ部を容易に形成することができる。又、このような方法では、ダミーリッジ部の幅が狭く、ダミーリッジ部表面にチップ分割のためのスクライブラインを形成できない場合においても、3つの凹部のうち、中央の凹部の開口幅をスクライブラインが形成可能な程度に大きくすることで、この中央の凹部上に積層された窒化物半導体積層部表面にスクライブラインを形成できる。又、上述したのと同様に、掘り込み領域の両脇双方に凹部が形成されており、当該凹部は窒化物半導体積層部によって完全には埋め込まれておらず、溝が形成されている。当該溝がチップ分割の際にガイドとなり、歩留まり良くチップ分割が実施できる。
又、本発明によると、加工基板に面積の異なる複数の掘り込まれていない領域を形成することで、各領域の面積によって、その領域上に成長させる窒化物半導体薄膜の成長速度が変わる。結果、掘り込まれていない領域の面積に応じて、加工基板表面から成長膜の表面までの厚みの異なるウエーハを作製することができる。又、このようなウエーハ(基板)を作製することにより、半導体レーザ素子やフォトダイオードなどの異なる半導体素子を、同一基板上に形成することができ、複合型の半導体デバイスを作製できる。
以下において、本発明による種々の実施の形態を説明するにあたり、幾つかの用語の意味を予め明らかにしておく。まず、本明細書に記載の「掘り込み領域」とは、例えば、図2に示されているように加工基板11表面でストライプ状に加工された凹部である溝を意味し、「丘」とはストライプ状に加工された凸部となる領域で且つ掘り込み領域を除いた領域を意味する。また、図2に示された溝と丘は1方向に沿って加工されストライプ配列を形成しているが、溝又は丘が互いに交差し合った桝目配列であっても構わない。尚、1つの掘り込み領域は単独の凹部から構成されても構わないし、連続する複数の凹部と当該凹部に挟まれた平坦部から構成されても構わない。
本明細書に記載の「窒化物半導体基板」とは、AlxGayInzN(0≦x≦1;0≦y≦1;0≦z≦1;x+y+z=1)からなる基板を意味する。ただし、窒化物半導体基板の窒素元素のうちで、その約10%以下がAs、P、またはSbの元素で置換されてもよい(但し、基板の六方晶系が維持されている。)。また、窒化物半導体基板中に、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mg、またはBeがドーピングされても構わない。n型窒化物半導体としては、これらのドーピング材料のうちでも、Si、O、およびClが特に好ましい。窒化物半導体基板の主面方位としては、C面{0001}、A面{11−20}、R面{1−102}、M面{1−100}、または{1−101}面が好ましく用いられ得る。又、これらの結晶面方位から2°以内のオフ角度を有する基板主面であれば、その表面モホロジーが良好であり得る。
本明細書に記載の「異種基板」とは、窒化物半導体以外の基板を意味する。具体的な異種基板としては、サファイア基板、SiC基板、Si基板、またはGaAs基板などが用いられる。
本明細書に記載の「加工基板」とは、窒化物半導体基板、もしくは、窒化物半導体基板表面又は異種基板表面に積層された窒化物半導体薄膜表面上に、掘り込み領域が形成された基板を意味する。この掘り込み領域は、一定の周期を有して構成されるものとしても構わないし、種々に異なる幅を有して構成されるものとしても構わない。又、掘り込み領域における溝の深さに関しても、すべての溝が一定の深さを有していても構わないし、種々に異なる深さを有していても構わない。
本明細書に記載の「窒化物半導体レーザ素子」とは、加工基板に窒化物半導体成長層が積層された後に、各種プロセスを行ってリッジ部及び電極層が形成されるとともに、個々のチップにチップ分割されたものとする。
本明細書に記載の「窒化物半導体レーザ装置」とは、窒化物半導体レーザ素子がステムやサブマウントなどのマウント部材上に、ジャンクションダウン方式でマウントされたものとする。
本明細書に記載の「マウント部材」とは、窒化物半導体レーザ素子をマウントするステム、またはステム上にマウントされるサブマウントのこととする。即ち、本明細書において、「マウント部材上に窒化物半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式でマウントする」と記載した場合、窒化物半導体レーザ素子をステム上にジャンクションダウン方式で直接マウントすること、又は、ステム上にマウントされたサブマウント上に窒化物半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式でマウントすること、を意味する。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。尚、本実施形態では、半導体素子の一例として窒化物半導体レーザ素子について説明する。図1は本実施形態における窒化物半導体レーザ素子の概略断面図である。図2(a)は、図4に示す窒化物半導体成長層12を積層する前の加工基板11の概略断面図であり、図2(b)は図2(a)の上面図である。又、各図面において面方位も併せて示す。更に、図3は、図2に示す加工基板11に窒化物半導体成長層12を積層させたウエーハの概略断面図である。
このような窒化物半導体レーザ素子において、まず、加工基板11の作製方法について図面を参照して説明する。加工基板11の材料として、本実施形態ではn型GaN基板を用いる。図2の加工基板11を作製するのに、まず、n型GaN基板の上面に、SiO2又はSiNxなどを蒸着する。尚、本実施形態ではSiO2を蒸着してSiO2膜をn型GaN基板表面に形成するものとするが、これに限定されるものではなく、他の誘電体膜などをn型GaN基板表面に形成するものとしても構わない。又、蒸着方法は、電子ビーム蒸着法、スパッタ蒸着法などを用いる。又、SiO2膜などの形成は蒸着法に限定されるものではなく、プラズマCVD法などでも構わない。次に、このSiO2膜上に、レジスト材を塗布し通常のリソグラフィ技術を用いて、ストライプ状の開口部をもつレジストパターンを[1−100]方向に形成する。次にICP(Inductively Coupled Plasma)などによるRIE(Reactive Ion Etching)技術を用い、SiO2膜をn型GaN基板に到達するまでエッチングする。引き続き、n型GaN基板上に残ったレジストを除去し、エッチングされずに残ったSiO2膜をハードマスクとして用い、n型GaN基板をエッチングすることで、凹部である掘り込み領域16を形成する。その後、HF(フッ酸)などのエッチャントを用いて、SiO2膜を除去し、図2に示すような、[1−100]方向に延在する掘り込み領域16が形成された加工基板11が作製される。尚、本実施形態では、n型GaN基板をエッチングして掘り込み領域16を形成するのに、RIE技術を用いているが、この方法に限定されるものではなく、ウエットエッチング技術などを用いても構わない。
又、加工基板11は、上述のようにn型GaN基板表面に直接、掘り込み領域16を掘り込むことで形成するものとしたが、n型GaN基板の表面に、GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaNなどの窒化物半導体薄膜を成長させた後に掘り込み領域16を掘り込むことで形成するものとしても構わない。又、この加工基板11が、異種基板表面に窒化物半導体薄膜を成長させた後に掘り込み領域16を掘り込むことで形成されるものとしても構わない。
上述のようにして形成された掘り込み領域16は、加工基板11の上面に[1−100]方向と平行に形成され、掘り込み領域16の開口部の幅を5μm、深さを5μm、隣接する掘り込み領域16との[11−20]方向と平行な方向の間隔である周期を400μmとする。
上述の処理をして得られた加工基板11上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相成長法)法などの周知の技術を適宜用い、図4で示すような窒化物半導体成長層12をエピタキシャル成長させることで、図1で示された窒化物半導体レーザ素子を作製する。尚、窒化物半導体成長層12の成長方法については、周知の技術を適宜適用するものとして、その詳細な説明は省略する。
この窒化物半導体成長層12は、加工基板11表面に、図4に示すように、層厚2.0μmのn型GaN層40と、層厚1.5μmのn型Al0.062Ga0.938N第1クラッド層41と、層厚0.2μmのn型Al0.1Ga0.9N第2クラッド層42と、層厚0.1μmのn型Al0.062Ga0.938N第3クラッド層43と、層厚0.1μmのn型GaNガイド層44と、層厚4nmのInGaN井戸層が3層及び層厚8nmのGaN障壁層が4層から成る多重量子井戸活性層45と、層厚20nmのp型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層46と、層厚0.08μmのp型GaNガイド層47と、層厚0.5μmのp型Al0.062Ga0.938Nクラッド層48と、層厚0.1μmのp型GaNコンタクト層49と、が順に積層され構成される。尚、多重量子井戸活性層45は、障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層の順序で形成される。
このような構成の窒化物半導体成長層12を上述の加工基板11上にエピタキシャル成長させることで、図1に示された窒化物半導体レーザ素子を作製する。
図1の窒化物半導体レーザ素子は、上述のようにして作製された掘り込み領域16を備えた加工基板11上に、図4で示した複数の窒化物半導体薄膜から成る積層構造を備えた窒化物半導体成長層12が形成されている。又、ドライエッチング技術などを用い、窒化物半導体成長層の表面にはレーザ光導波路であるリッジストライプ14と、リッジストライプ14を挟むように設置され電流狭窄を目的としたSiO2膜15とが形成される。そして、このリッジストライプ14及びSiO2膜15それぞれの表面には、p側電極17が形成され、又、加工基板11の裏面にはn側電極18が形成される。又、p側電極17表面の凸部をストライプ20とする。又、掘り込み領域16近傍の丘の両端部では窒化物半導体成長層12が、窒化物半導体レーザ素子が形成されている平坦な部分よりも厚く成長したダミーリッジ部13が形成されている。このように窒化物半導体成長層12が形成されているとき、掘り込み領域16は、その溝の内部に形成される窒化物半導体成長層12によって完全には埋もれていない。
上述のリッジストライプ14は、通常のフォトリソグラフィ技術を用い、[1−100]方向(共振器方向)に延在するレジスト幅2μmのストライプ形状のレジストパターンを形成し、ICP(Inductively Coupled Plasma)などのプラズマ源を用いたRIE(Reactive Ion Etching)技術を用いエッチングを実施することにより、リッジストライプ14が形成される。このとき、窒化物半導体成長層12の表面から、p型GaNガイド層47又は多重量子井戸活性層45の直上まで、エッチングを実施する。
又、p側電極17は、窒化物半導体成長層12に近い側から、Pd/Mo/Auなどの材料が順に積層されて形成されるものとするが、これらの材料に限定されるものではなく、Pd/Pt/Au、又はNi/Auなどが、それぞれ順に積層されて形成されるものとしても構わない。又、n側電極18においても、加工基板11の裏面に近い側から、Ti/Al/Pt/Auなどの材料が順に積層されて形成されるものとするが、これらの材料に限定されるものではない。
次に、図1に示されるダミーリッジ部13について、図面を参照し説明する。図2に示される加工基板11の上に、図4のような積層構造の窒化物半導体成長層12を積層させた場合、ウエーハの断面図は図3のように、掘り込み領域16近傍となる丘の両端部では、ダミーリッジ部13が形成される。このダミーリッジ部13を形成する窒化物半導体成長層12の厚みは、丘の他の領域で積層される窒化物半導体成長層12より厚くなる。尚、この丘におけるダミーリッジ部13を除いた領域を以下では、「レーザ素子作製領域19」と呼ぶ。
このダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とにおける窒化物半導体成長層12の厚みの違いは、掘り込み領域16の近傍のダミーリッジ部13における窒化物半導体薄膜の成長速度が、レーザ素子作製領域19における窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きいためである。このように、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とで窒化物半導体薄膜の成長速度が大きく異なるのは、一旦、窒化物半導体薄膜の成長面に吸着した窒化物半導体薄膜の原料となる原子・分子が、窒化物半導体薄膜を形成することなく成長面から再び蒸発する確率を示す再蒸発確率が異なるためである。
即ち、掘り込み領域16の間の丘の表面に付着した原料となる原子・分子は、成長表面をマイグレーションなどをして、エネルギー的に安定な領域まで移動した後、そこで表面の原子・分子と結合し窒化物半導体薄膜となる。しかしながら、一定時間内にエネルギー的に安定となる領域に移動できない場合は、成長表面より、再蒸発してしまう。又、加工基板11のように基板表面に掘り込み領域16を形成するとき、掘り込み領域16の間の丘においてエネルギー的に最も安定な部分は、掘り込み領域16近傍となる端部であることが分かっている。よって、この掘り込み領域16近傍となる端部での再蒸発確率は低い。その結果、掘り込み領域16近傍となる丘の両端部における窒化物半導体薄膜の成長速度は、丘のその他の部分となるレーザ素子作製領域19より大きくなり、結果、ダミーリッジ部13が形成される。
このように窒化物半導体成長層12が形成される際、本実施形態では、図4に示す窒化物半導体成長層12を積層した直後のレーザ素子作製領域19における層厚を、略4.64μmとする。又、ダミーリッジ部13における層厚とレーザ素子作製領域19における層厚の差Zを略0.9μmとする。(即ち、ダミーリッジ部13において、加工基板11上に積層した窒化物半導体成長層12の層厚を、略5.54μmとする。)又、このダミーリッジ部13の[11−20]方向(図1参照)と平行な方向における幅Xを、30μmとする。
又、最蒸発確率の差などが原因となりダミーリッジ部13の層厚がレーザ素子作製領域19の層厚より厚くなるのは、図5のグラフより、AlGaN層の層厚が異なるためであると考えられる。又、図5のグラフより、Al組成比が低くなるとダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19との層厚の差Zが小さくなる傾向にあり、Al組成比がゼロ、即ち、GaN膜では層厚の差Zはゼロとなることが分かる。これは、AlGaNと比較してGaNは、成長表面でマイグレーションしやすく、成長面内で原料となる原子・分子が均一に分散する。その結果、成長面内で成長膜の層厚が均一となるためであると考えられる。
尚、図5は、窒化物半導体成長層12に含まれるAlGaN層のAl組成比と、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19との層厚の差Z(図3参照)との関係を示すグラフである。図5のAl組成比に関して、例えば、Al組成比0.1の膜とは、Al0.1Ga0.9Nを指す。又、図5の結果は、図2に示された加工基板11に、所定のAl組成の層厚0.52μmのp型AlGaN層及び層厚1.8μmのn型AlGaN層を成長させたものである。即ち、レーザ素子作製領域19上に成長させたAlGaN層の合計層厚は2.32μmであり、図4におけるp型AlGaN層とn型AlGaN層の設計層厚を合計した値と等しいものとする。
このように、掘り込み領域16を備えた加工基板11に窒化物半導体薄膜を成長させることで、成長面内で層厚を変化させることができる。即ち、掘り込み領域16近傍のダミーリッジ部13で成長する図4のような積層構造の窒化物半導体成長層12の層厚を、レーザ素子作製領域19で成長する窒化物半導体成長層12の層厚より厚くできる。よって、ダミーリッジ部13を形成するための工程を別に設ける必要がなく、他の領域と同時にウエーハ上に窒化物半導体成長層12を積層するだけで、層厚の厚いダミーリッジ13が形成され、製造工程を従来の技術よりも簡略化することができる。
又、掘り込み領域16を備えた加工基板11上に、MOCVD法などを用いて窒化物半導体成長層12を積層させたところ、窒化物半導体成長層12内にクラックの発生は見られなかった。通常、窒化物半導体成長層12が格子定数や熱膨張係数などの異なる複数の種類の膜から構成されているため、格子不整合などが生じ、窒化物半導体成長層12内部に歪みを内包する。このことにより、クラックが発生していた。しかしながら、本実施形態では、掘り込み領域16を備えた加工基板11を用いることにより、窒化物半導体成長層12に内包される歪みが解放され、クラックの発生が抑えられたと考えられる。このとき、掘り込み領域16が窒化物半導体成長層12によって完全には埋まりきっておらず、このことにより、歪みの開放が促進されたと考えられる。
尚、本実施形態のように、掘り込み領域16が窒化物半導体成長層12で完全には埋もれていない状態とは、図6(b)に示すウエーハの概略断面図のように掘り込み領域16に凹部となる溝が存在する状態を意味する。それに対して、掘り込み領域16が窒化物半導体成長層12に完全に埋もれて溝の存在しない図6(a)のような状態では、上述した方法で窒化物半導体成長層12を積層する際、レーザ素子作製領域19よりもダミーリッジ部13の窒化物半導体成長層12の層厚を厚くすることができない。よって、窒化物半導体成長層12の表面が平坦であるかどうかに関わらず、図6(a)のような状態は、本実施形態には含めないものとする。
上述したような本実施形態による方法を用いると、掘り込み領域16を備えた加工基板11表面にクラックの無い窒化物半導体成長層12が積層され、更に、レーザ素子作製領域19とダミーリッジ部13が形成されたウエーハを得ることができる。このウエーハにおいて表面が平坦となるレーザ素子作製領域19に、リッジストライプ14、SiO2膜15、p側電極17が形成されて、図1に示されるような窒化物半導体レーザ素子が作製される。
このように、レーザ素子作製領域19にリッジストライプ14、SiO2膜15、p側電極17が形成されると、引き続き、加工基板11の裏面側から、研磨もしくはエッチングすることによって、加工基板11の一部を除去し、ウエーハの厚みを100μm程度までに薄くする。その後、加工基板11の裏面側にn側電極18を形成する。このとき、n側電極18は、個々の窒化物半導体レーザ素子に対して、分割して形成されても構わないし、図1のようにn側電極18の層が連続して形成されても構わない。
このようにして得られたウエーハを、リッジストライプ14が延在する共振器方向([1−100]方向:図1参照))に対して垂直な方向に劈開を実施し、2つの共振器端面を形成する。このとき、共振器長は600μmとする。このウエーハを劈開して共振器端面を形成する工程によって、バー形状にする。分割、形成されたバーには窒化物半導体レーザ素子が、多数、横に連なって形成されている。この工程で行われる劈開は、ウエーハの裏面にダイヤモンドペンなどによって罫書き線(スクライブライン)が生成された後、ウエーハに適宜力が加えられることで、実施される。又、ウエーハの一部、例えば、ウエーハのエッジ部分にのみダイヤモンドペンによって罫書きが成された後、これを起点に劈開するものとしても構わない。又、エッチングによって共振器端面を形成するものとしても構わない。
このように2つの共振器端面を形成した後、当該共振器端面に、SiO2及びTiO2からなる誘電体膜を電子ビーム蒸着法などを用いて交互に蒸着し、誘電体多層反射膜を形成する。又、誘電体材料としては、SiO2/TiO2に限定されるものではなく、例えば、SiO2/Al2O3などを用いても構わない。次に、窒化物半導体レーザ素子が、図1のように、多数、横に連なって形成されているバーを、リッジストライプ14と平行な方向である[1−100]方向に沿って分割することで、個々の窒化物半導体レーザ素子(チップ)を得る。この際、掘り込み領域16に積層された窒化物半導体成長層12の表面又は掘り込み領域16の直下部分となる加工基板11の裏面側にスクライブラインをいれ、チップ分割することで、図7に示される窒化物半導体レーザ素子71となる。
このようにして得られた窒化物半導体レーザ素子71を、図7のようにp側電極17側を下にして、ハンダ72を介してサブマウント73の表面上にマウントして固定する。このようにして、ステム74上にサブマウント73が載置されて構成されるマウント部材に、ジャンクションダウンマウント方式で窒化物半導体レーザ素子71が搭載された窒化物半導体レーザ装置が作製される。この際、ダミーリッジ部13の先端部がリッジストライプ14及びストライプ20よりも突き出た位置にある。このため、サブマウント73表面にマウントするときに、リッジストライプ14及びストライプ20が圧力を受けることないので、リッジストライプ14が破損することを防止することができる。よって、窒化物半導体レーザ素子71をマウント部材に歩留まり良くマウントできる。尚、本実施形態では、窒化物半導体レーザ素子71を、ハンダ72を介してサブマウント73にマウントして固定するものとしたが、これに限定されるものではなく、ハンダ72を介してステム74に直接マウントするものとしても構わない。
又、図8に、ジャンクションダウン方式でマウントしたときの歩留まりと、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とに積層した窒化物半導体成長層12の層厚の差Z(図3参照)との関係を示す。このときZの値が0.2μmより小さいと、リッジストライプ14及びストライプ20に圧力が掛かり、リッジストライプ14が損傷することがあるため、大きく歩留まりを落とす結果となった。即ち、図8のように、Zの値が0.2μmより小さくなると歩留まりは急激に低下していることが分かる。よって、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とに積層した窒化物半導体成長層12の層厚の差Zは0.2μm以上であることが好ましい。
又、図5に示されているように、Al組成が0.03以上の場合、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とに積層した窒化物半導体薄膜の層厚の差Zの値は0.2μm以上となる。よって、加工基板11上に積層される窒化物半導体成長層12に含まれるAlGaN層のAl組成は0.03以上必要である。又、Al組成が0.03以上のAlGaN層としたときは、p層とn層含めたAlGaN層の合計した層厚が1μm以上であれば、ダミーリッジ部13とレーザ素子作製領域19とに積層した窒化物半導体成長層の層厚の差Zは0.2μm以上となることが分かった。よって、Al組成比が0.03以上となり、p層とn層の合計した層厚が1μm以上となるAlGaN層が必要である。
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。尚、本実施形態では、半導体素子の一例として窒化物半導体レーザ素子について説明する。図9に本実施形態における窒化物半導体レーザ素子の作製されたウエーハの一部の概略断面図である。図10(a)は図4に示される窒化物半導体成長層12が積層される前の加工基板101の概略断面図であり、図10(b)は図10(a)の上面図である。これら図面において、面方位も併せて表示する。又、図9の窒化物半導体レーザ素子における窒化物半導体成長層12は、例えば、図4のような構成の各窒化物半導体薄膜が形成されることで作製される。
まず、図9の窒化物半導体レーザ素子における加工基板101について説明する。この加工基板101は、図10に示すように、掘り込み領域16が一つの凹部で構成されている第1の実施形態の加工基板11とは異なり、[1−100]方向に延在する2つの凹部102と当該2つの凹部102に挟まれた狭平坦部103とによって構成される掘り込み領域104は、表面の平坦な部分である狭平坦部103の幅Mが100μm以下である。この掘り込み領域104の形成は、通常のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いた第1の実施形態と同様のプロセスを経て形成されるので、その詳細な説明は省略する。
図9の窒化物半導体レーザ素子は、作製された掘り込み領域104を備えた加工基板101に、図4で示した複数の窒化物半導体薄膜が積層された窒化物半導体成長層12が形成されている。又、窒化物半導体成長層12の表面には、隣接する掘り込み領域104に挟まれたレーザ素子作製領域90に、レーザ光導波路であるリッジストライプ94と、リッジストライプ94を挟むように設置されて電流狭窄を目的としたSiO2膜95と、が形成される。そして、このリッジストライプ94及びSiO2膜95それぞれの表面には、p側電極97が形成され、又、加工基板101の裏面にはn側電極98が形成される。又、リッジストライプ94直上のp側電極97表面の凸部をストライプ96とする。このような窒化物半導体レーザ素子の作製方法などは、第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明第1の実施形態を参照するものとし、省略する。
又、掘り込み領域104に挟まれたレーザ素子作製領域90上よりも狭平坦部103の表面には窒化物半導体成長層12が厚く積層し、ダミーリッジ部93が形成されている。このダミーリッジ部93が形成されることで、第1の実施形態と同様、マウント工程でマウントを実施する際、作製されたリッジストライプ94が破損することを防止する。このように、2つの凹部102に挟まれた狭平坦部103において、[11−20]方向と平行な方向の幅Mを100μm以下とすると、第1の実施形態と異なり、ダミーリッジ部93上を構成する窒化物半導体薄膜と、レーザ素子作製領域90上に成長する窒化物半導体薄膜との厚みの差Zを、Alの組成比が小さい場合においても、大きくすることができる。即ち、本実施形態では、AlGaN膜だけではなく、GaN膜(Al組成比が0)においても、ダミーリッジ部93上に成長する窒化物半導体薄膜の成長速度が、レーザ素子作製領域90上に成長する窒化物半導体薄膜の成長速度より大きくなる。
このように窒化物半導体レーザ素子の作製されたウエーハを、リッジストライプ94が延在する共振器方向([1−100]方向))に対して垂直な方向に劈開を実施し、ウエーハをバー形状にして2つの共振器端面を形成する。この共振器端面の形成方法や形成した共振器端面への保護膜の蒸着方法などについては、第1の実施形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。そして、引き続き、複数の窒化物半導体レーザ素子が連なって作製されている図9のようなバーを、個々の窒化物半導体レーザ素子にチップ分割を実施する。
このチップ分割を実施する際、本実施形態においては、ダミーリッジ部93表面の中心部にダイヤモンドペンなどを用いてスクライビング(罫書き)などを実施し、ダミーリッジ部93の中心部を通る分割ライン99に沿って、チップ分割する。又、スクライビングを実施する箇所はダミーリッジ部93表面に限定されるものではなく、加工基板101の裏面側でも構わない。又、ダミーリッジ部93の両脇に2つの凹部102が形成されている。この凹部102の底面部から窒化物半導体成長層12が積層して部分的に埋め込まれるが、凹部102は窒化物半導体成長層12で完全に埋め込まれているわけではない。そのため、凹部102に溝が形成されており、その溝がチップ分割する際のガイドとなる。このため、チップ分割の際、意図しない方向にウエーハが割れた場合でも、ダミーリッジ部93の両脇にある凹部102により、分割される部分がその外側に外れることがなく、歩留まり良くチップ分割できる。
又、ダミーリッジ部93の幅Mが狭く、ダミーリッジ部93表面にスクライビングを実施することが困難である場合などにおいては、本実施形態の別の構成例として、図11に示すように、加工基板101の代わりに、加工基板111により構成されるものとしても構わない。この加工基板111は、掘り込み領域114が開口幅の狭い2つの凹部112と、スクライビングを実施可能な程度に広い開口幅の凹部116と、これら凹部112、116に挟まれた2つの狭平坦部113とを、備える。この場合、チップ分割する際、狭平坦部113の表面に窒化物半導体成長層12が成長して形成された2つのダミーリッジ部115に挟まれた凹部116の底面部に成長した窒化物半導体成長層12の表面にスクライビングを実施する。このようにすることで、当該凹部116の中心部を通る分割ライン119に沿って、チップ分割される。又、スクライビングを実施する箇所は凹部116の底面部に成長した窒化物半導体成長層12表面に限定されるものではなく、加工基板111の裏面側で凹部116直下位置でも構わない。
上述のようにしてチップ分割を実施するとき、凹部112、116は完全に窒化物半導体成長層12によって埋め込まれているのではなく、凹部112、116の底面部から窒化物半導体成長層12が積層して部分的に埋め込まれて溝が形成されているので、凹部112、116による溝がチップ分割する際のガイドとなる。このため、チップ分割の際、意図しない方向に割れが進行したとしても、掘り込み領域114の両脇にある凹部112及び凹部116に形成された溝がガイドとなり、分割された部分がその外側に外れることがなく、歩留まり良くチップ分割できる。
又、図12に、ダミーリッジ部93、115の幅M(図9、図11参照)と、狭平坦部103、113上に積層した窒化物半導体薄膜の層厚とレーザ素子作製領域90上に積層した窒化物半導体薄膜の層厚の差Z(図9参照)との、関係を示す。図12のグラフから、ダミーリッジ部93、115の幅Mが120μmでは、窒化物半導体薄膜の層厚の差Zは略0.1μmであるが、幅Mの値が100μm以下になると、窒化物半導体薄膜の層厚の差Zの値は略0.5μm以上となり、大きくなることが分かる。即ち、幅Mの値が100μmより小さくなるにつれて、狭平坦部103、113における窒化物半導体薄膜の成長速度は、レーザ素子作製領域90における窒化物半導体薄膜の成長速度よりも大きくなり、窒化物半導体薄膜の層厚の差Zの値も大きくなっていく。この場合においても、GaNよりもAlGaNの方が、上述した2つの領域における成長速度の差が大きかった。尚、図12のグラフによる結果は、層厚1μmのGaN上に、層厚1μmのAl0.03Ga0.97Nを成長させたときに得られた結果である。
このように窒化物半導体薄膜の層厚の差Zが、幅Mの値が100μm以下のときに大きくなるのは、以下のことが原因と考えられる。まず、上述したように、AlGaNの再蒸発確率が平坦な領域の端部で小さく中央部で大きくなるという傾向がある。又、狭平坦部103、113では、その幅Mが100μm以下と小さく、再蒸発確率の大きい平坦な領域が狭くなるとともに、端部の影響がより強くなる。そのため、狭平坦部103、113全体での再蒸発確率が低下し、成長速度が大きくなったもの、と考えられる。
このように、その幅の値Mが100μm以下の掘り込まれていない狭平坦領域103、113を形成し、ウエーハ上に窒化物半導体薄膜を成長させることで、レーザ素子作製領域90に対して所望な段差をもつダミーリッジ部93、115を形成することができる。又、狭平坦領域103、113の共振器方向([1−100]方向)の長さを100μmより大きいとしても、その幅M([11−20]方向)が100μm以下であれば同様の効果が得ることができる。又、この狭平坦領域103、113の共振器方向の長さが、100μm以下であれば、上述の段差を得る効果は、更に顕著となる。
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図13は、本実施形態における加工基板131の一部の上面図である。本実施形態では、図に示された領域の加工基板131上では、第1又は第2の実施形態における掘り込み領域16、104、114のいずれかと同様の構成である掘り込み領域132a〜132iが形成される。そして、掘り込み領域132a〜132e、それぞれが平行となるとともに、掘り込み領域132f〜132i、それぞれが平行となるように形成され、又、掘り込み領域132a〜132eと掘り込み領域132f〜132iとが垂直となるように形成される。
このように掘り込み領域132a〜132iが形成されるとき、掘り込み領域132a、132bの間隔をbとし、又、掘り込み領域132b、132cの間隔及び掘り込み領域132c、132dの間隔それぞれをcとし、掘り込み領域132d、132eの間隔をeとし、掘り込み領域132f、132gの間隔をfとし、掘り込み領域132g、132h及び掘り込み領域132h、132iの間隔それぞれをdとする。尚、本実施形態においては、この間隔b、c、d、e、fを、それぞれ、30μm、60μm、80μm、120μm、200μm、とする。この掘り込み領域132a〜132iは、幅aが20μmとなるとともに、深さが5μmとなるように形成される。このとき、掘り込み領域132a〜132iによって、丘133a〜133lが形成される。丘133a、133bの面積は、それぞれ、b×c=A1となり、丘133c、133d、133e、133fの面積は、それぞれ、c×d=A2となり、丘133gの面積は、b×f=A3となり、丘133h、133iの面積は、それぞれ、d×e=A4となり、丘133j、133kの面積は、それぞれ、c×f=A5となり、丘133lの面積は、e×f=A6となる。尚、本実施形態では、A1は2400μm2、A2は4800μm2、A3は6000μm2、A4は9600μm2、A5は12000μm2、A6は24000μm2、となる。即ち、形成された丘133a〜133lを面積の小さい順に整理すると、133a=133b<133c=133d=133e=133f<133g<133h=133i<133j=133k<133l、となる。
このように、加工基板131に桝目状に掘り込み領域132a〜132iを形成することで、面積が異なる丘133a〜133l、が形成される。これら丘133a〜133lの面積が小さくなるほど、その丘における窒化物半導体薄膜の成長速度が大きくなり、その結果、窒化物半導体薄膜の成長表面の高さが高くなる。即ち、掘り込み領域132a〜132iを、間隔の異なる桝目状に形成して、それぞれの丘の面積を適切に設定することで、所望の厚みの窒化物半導体薄膜を得ることができる。
このような掘り込み領域132a〜132iを備え、丘133a〜133lが形成された加工基板131に、GaN、又はAlGaNを成長させると、丘の各領域の成長表面の高さは異なることとなる。例えば、図13において、丘133aは、縦横双方の幅が100μm以下(80μmと30μm)で、その面積A1は2400μm2と他の丘と比較して最も成長面積が小さく、窒化物半導体薄膜の成長層厚も最も厚くなる。よって、成長した膜の成長表面の高さも高くなる。他の領域に関しても、面積A1、A2、A3、A4、A5、A6の順で、面積が大きくなるにつれて、成長表面の高さは低くなる。又、丘133lは、縦横双方の幅が100μmより大きく(200μmと120μm)、その面積A6は24000μm2となる。この場合、掘り込み領域132a〜132iを加工基板131に形成しない場合と、窒化物半導体薄膜の成長層厚が略等しくなる。
よって、各丘133a〜133l、における窒化物半導体薄膜の成長表面の高さを、それぞれ、133aT〜133lT、とし、成長表面の高い順に記載すると、133aT=133bT>133cT=133dT=133eT=133fT>133gT>133hT=133iT>133jT=133kT>133lT、となる。このように、面積の異なる丘を、窒化物半導体薄膜の成長前に、加工基板131に作製しておく。その後、窒化物半導体薄膜を成長させることにより、各丘の成長面積(丘の面積)により、成長した後の窒化物半導体薄膜表面の高さを変えることができる。
このようにして得られた窒化物半導体薄膜の高さの違いを利用して、窒化物半導体レーザとPD(フォトダイオード)などを同じ加工基板の中に作製して、複合型半導体素子を作製することが可能である。その一例を図14に示す。この図14において、上述の方法で得られた加工基板141と、その加工基板141上に作製されたPD142と、窒化物半導体レーザ素子143である。加工基板141の表面において、窒化物半導体レーザ素子143が作製されている領域の面積の方がPD142が作製されている領域の面積より小さいため、窒化物半導体レーザ素子143の方がPD142よりも、その成長表面は高くなる。よって、窒化物半導体レーザ素子143の出射光をさえぎることなく、レーザ光をPD142でモニターできる。又、電子デバイスを組み込むことも可能であり、複合型の半導体デバイスの作製が可能となる。
尚、本実施形態では、加工基板上141上に作製されるレーザを窒化物半導体レーザとしているが、他のIII−V族化合物半導体レーザなどでも構わない。又、第1の実施形態及び第2の実施形態においても、窒化物半導体レーザ素子について説明しているが、窒化物半導体レーザ素子以外の半導体素子においても適用可能である。