本発明の水なし平版印刷版原版は、基板上に、感光層または感熱層、および有色顔料を含むシリコーンゴム層を有する水なし平版印刷版原版であって、前記有色顔料のシリコーンゴム層中における体積濃度が5体積%以下であり、かつ有色顔料の平均粒子径が400nm以下であることを特徴とする。ここで、本発明において有色顔料とは、可視光波長域(380〜780nm)における何れかの光を吸収する顔料をいう。
本発明においては、シリコーンゴム層中に有色顔料を含むことが重要である。一般に、顔料は水や脂肪族炭化水素などの有機溶剤に不溶であるため、顔料を含むことにより、水や有機溶剤に可溶な染料を含む場合に比べて、現像工程において用いられる水や有機薬液、印刷工程において用いられるインキ中の溶剤や各種洗浄剤等による色素抽出が格段に抑えられる。
有色顔料は、有色無機顔料、有色有機顔料に分類される。有色無機顔料としては、例えば、べんがら(酸化第二鉄)、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒等の酸化物や、これらの複合酸化物、黄色酸化鉄、ビリジアン等の水酸化物、朱、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物・セレン化物、紺青などのフェロシアン化物、黄鉛、ジンククロメート、モリブデンレッド、ストロンチウムクロメート等のクロム酸塩、含水硅酸塩、群青、ガーネット等の硅酸塩、マンガンバイオレット等の燐酸塩、カーボンブラック等が挙げられる。有色有機顔料としては、例えば、体質顔料(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイトなど)に染料を染め付けた捺染系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料や、アルカリブルー、アニリンブラック等が挙げられる。捺染系顔料の材料となる染料としては、ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料、キノリンイエロー、ピーコックブルー、アルカリブルー等の酸性染料、マラカイトグリーン等の建染染料、アリザリン等の媒染染料が挙げられる。また、アゾ系顔料の具体例としては、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B等の溶性アゾ、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド等の不溶性アゾ、クロモフタルイエロー3G、クロモフタルスカーレットRN等の縮合アゾ、ニッケルアゾイエロー等のアゾ錯塩、パーマネントオレンジHL等のベンズイダゾロンアゾが挙げられる。フタロシアニン顔料の具体例としては、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。縮合多環顔料の具体例としては、アントラキノン系顔料、アントラピリミジンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー等のスレン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット等のキナクリドン系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料、イソインドリノンイエロー等のイソインドリノン系顔料等が挙げられる。また、ニトロ系顔料としてはナフトールイエローS等、ニトロソ系顔料としてはナフトールグリーンB等が挙げられる。
本発明においては、露光、現像後の水なし平版印刷版の検版性が良好であることが重要である。水なし平版印刷版の検版性としては、目視による目視検版性のほか、網点面積率測定装置による機器検版性が良好である必要がある。一般的に、機器検版は目視検版よりもシビアであるため、機器検版が良好な水なし平版印刷版は目視検版もまた良好である場合が多い。
一般的な網点面積率測定装置は、印刷版上に形成された網点部分に、青色光(波長400〜500nm)、緑色光(波長500〜600nm)、赤色光(波長600〜700nm)、または白色光(波長400〜700nm)の何れかの光を照射し、画線部/非画線部間の反射光量差から網点面積率を算出する。画線部/非画線部間の反射光量差が大きい場合は良好な網点面積率測定が可能であるが、画線部/非画線部間の反射光量差が小さい場合や、または無い場合は良好な網点面積率測定ができない。水なし平版印刷版原版のプライマー層や感光(熱)層を構成する有機化合物の多くは青色光を吸収してしまうため、青色光を吸収する黄色や橙色などの有色顔料で着色したシリコーンゴム層を用いた際、画線部/非画線部間の反射光量差が小さくなり、網点面積率の測定が不良となる場合がある。また、青色光を吸収する黄色や橙色などの有色顔料で着色したシリコーンゴム層を用いた際、目視による検版性も困難である場合がある。このような理由から、緑色光、または赤色光を吸収する有色顔料を用いることが、機器検版性や目視検版性の観点から好ましい。上述した有色顔料の中で、緑色光、または赤色光を吸収する有色顔料としては、べんがら(酸化第二鉄)、酸化クロム、コバルトブルー、鉄黒、ビリジアン、朱、カドミウムレッド、紺青、モリブデンレッド、含水硅酸塩、群青、ガーネット、マンガンバイオレット、カーボンブラック、体質顔料にローダミン、メチルバイオレット、ピーコックブルー、アルカリブルー、マラカイトグリーン、アリザリン等の染料を染め付けた捺染系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド、クロモフタルスカーレットRN、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン、アントラキノン系顔料、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、ナフトールグリーンBが挙げられる。
さらに、これら緑色光、または赤色光を吸収する有色顔料の中でも、密度3g/cm3以下の有色顔料を用いることが、シリコーン液、およびシリコーン希釈液中における有色顔料沈降抑制の観点から好ましい。上述した緑色光、または赤色光を吸収する有色顔料の中で、密度が3g/cm3以下の有色顔料としては、コバルトブルー、紺青、含水硅酸塩、群青、カーボンブラック、体質顔料(炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト)にローダミン、メチルバイオレット、ピーコックブルー、アルカリブルー、マラカイトグリーン、アリザリン等の染料を染め付けた捺染系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド、クロモフタルスカーレットRN、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン、アントラキノン系顔料、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、ナフトールグリーンBが挙げられる。
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層のインキ反発性や、版材の感度・画像再現性の低下を抑制する観点から、有色顔料の含有量(体積濃度)は5体積%以下であり、4体積%以下であることが好ましい。また検版性の観点から、有色顔料の含有量はシリコーンゴム層中の0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上であることがより好ましい。
本発明の水なし平版印刷版原版を構成するシリコーンゴム層中に含まれる有色顔料の平均粒子径は、検版性付与(着色力)の観点、および版材の感度・画像再現性の低下を抑制する観点から、400nm以下であることが必要であり、150nm以下であることが好ましい。サーマルタイプの水なしCTP平版印刷版原版の露光には、波長830nmの半導体レーザーが用いられるが、シリコーンゴム層中の有色顔料の平均粒子径を400nm以下とすることで、版材の感度・画像再現性の低下を抑制することが出来る。さらに、原画フイルムを介して紫外線照射を行う方式の水なし平版印刷版原版の露光には、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどの光源より照射される各波長の光の中でも、波長365nmのi線や、波長405nmのh線が、また、ビジブルタイプの水なしCTP平版印刷版原版の露光には波長405nmのバイオレットレーザーや、波長488nmのArレーザーが用いられるが、シリコーンゴム層中の有色顔料の平均粒子径を150nm以下とすることで、版材の感度・画像再現性の低下を抑制することが出来る。このメカニズムに関しての解明はなされておらず、仮説の域を出ないが、シリコーンゴム層中に含まれる有色顔料は、その平均粒子径の2倍長さの波長の光を最も散乱し、シリコーンゴム層内の光透過を妨げてしまうため、感度・画像再現性が低下するのではないかと考えられる。
シリコーンゴム層中に分散された有色顔料の平均粒子径は、シリコーンゴム層断面を透過型電子顕微鏡で観察することで算出できる。測定、並びに解析の詳細に関しては実施例中に記載する。
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層は付加反応型、縮合反応型いずれであってもよい。
付加反応型のシリコーンゴム層は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)、反応抑制剤および硬化触媒を含む組成物(以下、シリコーン液という)から形成される。
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。
式中、aは2以上の整数を示し、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。R1およびR2は全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。本発明におけるビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC(gelpermeation chromatography)法により測定されたポリスチレン換算値を表す。
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンシロキサンである。オルガノハイドロジェンは直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R3SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R2HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンを2種以上用いてもよい。上式中、Rはアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示される。
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレート等のジメチルハイドロジェンシリル基含有アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリル等のモノマーとを共重合したオリゴマーが挙げられる。
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールが好ましく用いられる。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
硬化触媒は公知のものから選ばれるが、好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを一例として挙げることができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーン液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーン液の安定性の観点から、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、特にビニル基やアリル基を有するものが好ましい。
縮合反応型のシリコーンゴム層は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型など)、および硬化触媒を含む組成物(シリコーン液)から形成される。
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、前記一般式(II)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。
式中、bは2以上の整数を示し、R3およびR4は同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。一般式(II)中のR3およびR4は、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。その取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。本発明における水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC(gelpermeation chromatography)法により測定されたポリスチレン換算値を表す。
縮合反応型のシリコーンゴム層に用いられる架橋剤としては、下記一般式(III)で表される、アセトキシシラン類、アルコキシシラン類、ケトキシミノシラン類、アリロキシシラン類などを挙げることができる。
式中、dは2〜4の整数を示し、R5は同一でも異なってもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Aは同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミノ基、アミノオキシ基、アミド基またはアルケニルオキシ基である。上記式において、加水分解性基の数dは3または4であることが好ましい。
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン等のアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シラン等のケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等のアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシラン等のアルケニルオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。
架橋剤の含有量は、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の強度や印刷版の耐傷性の観点から、シリコーン液中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
硬化触媒としては、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸などの有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸等の酸類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ、アミン、およびチタンテトラプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどの金属アルコキシド、鉄アセチルアセトナート、チタンアセチルアセトナートジプロポキシドなどの金属ジケテネート、金属の有機酸塩などを挙げることができる。これらの中で、金属の有機酸塩が好ましく、特に錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンから選ばれる金属の有機酸塩が好ましい。このような化合物の具体例の一部としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性、接着性の観点から、シリコーン液中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーン液の安定性の観点から、シリコーン液中15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、さらには公知のシランカップリング剤を含有してもよい。
有色顔料含有シリコーン液または有色顔料含有シリコーン希釈液中、およびシリコーンゴム層中における有色顔料の分散性を向上させるために、シリコーンゴム層に顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤を含有することにより、溶剤による希釈時や、有色顔料含有シリコーン(希釈)液の経時により発生する有色顔料の凝集を抑制することができ、良好な塗膜を得ることができる。また、希釈した低粘度の有色顔料含有シリコーン希釈液中に分散不良有色顔料等のような巨大粒子がある場合には、フィルター等で除去することができる。
本発明に用いられる顔料分散剤としては、顔料表面をよく濡らし、且つオルガノポリシロキサンや、有色顔料含有シリコーン液の希釈に用いられる溶剤等の低極性化合物との親和性が良好なものが好ましい。そのような顔料分散剤であれば公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は界面活性剤や表面改質剤等の名称で用いられることもある。顔料分散剤としては、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、アミン系顔料分散剤、酸系顔料分散剤、ノニオン界面活性剤等を挙げることができる。中でも、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、またはアミン系顔料分散剤が好ましい。
以下に、金属と有機化合物からなる有機錯化合物として好ましく用いられるものを例示する。金属としては、Cu(I)、Ag(I)、Hg(I)、Hg(II)、Li、Na、K、Be(II)、B(III)、Zn(II)、Cd(II)、Al(III)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、Ag(II)、Au(III)、Pd(II)、Pt(II)、Ca(II)、Sr(II)、Ba(II)、Ti(IV)、V(III)、V(IV)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(III)、Pd(IV)、Pt(IV)、Sc(III)、Y(III)、Si(IV)、Sn(II)、Sn(IV)、Pb(IV)、Ru(III)、Rh(III)、Os(III)、Ir(III)、Rb、Cs、Mg、Ni(IV)、Ra、Zr(IV)、Hf(IV)、Mo(IV)、W(IV)、Ge、In、ランタニド、アクチニド等が挙げられる。これらの中でもAl、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Zr、Hfが好ましく、Al、Tiがより好ましい。
有機化合物としては、O(酸素原子)、N(窒素原子)、S(硫黄原子)などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素原子をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR’(エステル、R’:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO2(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SO3H(スルホン酸)、−PO3H2(亜リン酸)など、窒素原子をドナー原子とするものとしては、−NH2(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO2(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、およびケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)など、硫黄原子をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SHあるいは−C(=S)−OHおよび−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナト)などが挙げられる。中でも、カルボン酸やリン酸、スルホン酸などの酸化合物や、金属との間でキレート環を形成できるジケトンやケトエステル、ジエステル化合物を用いることが金属との配位力の点から好ましい。以下に有機化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されない。
上記式中、R6は飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、R6の炭素数は8以上であることが好ましい。R7は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。eは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、e個のR7に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R8およびR9は飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、R8とR9の炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R10は炭素数1以上の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。R11は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。fは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R10に含まれる炭素数とf個のR11に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R12およびR13は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。複数のR12、R13はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。gおよびhは繰り返し数を表し、それぞれ1以上の整数である。分散性の観点から、g個のR12に含まれる炭素数とh個のR13に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。Gは水素、アルキル基またはアリール基を表す。DおよびEは下記のいずれかで表される2価の基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式中、Jは水素、アルキル基またはアリール基を表す。
顔料分散剤として用いられる最も単純な有機錯化合物は、上記有機化合物と金属アルコキシドを室温下または加熱下で撹拌し、配位子を交換することにより得ることができる。1つの金属に対し上記有機化合物を1分子以上配位させることが好ましい。
市販されている金属と有機化合物からなる有機錯化合物の一例を以下に挙げる。アルミニウム系:“オクトープ”(登録商標)Al、“オリープ”(登録商標)AOO、AOS(以上、ホープ製薬(株)製)、“プレンアクト”(登録商標)AL−M(味の素ファインテクノ(株)製)等。チタニウム系:“プレンアクト”(登録商標)KR−TTS、KR46B、KR55、KR41B、KR38S、KR138S、KR238S、KR338X、KR9SA(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、“KEN−REACT”(登録商標)TTS−B、5、6、7、10、11、12、15、26S、37BS、43、58CS、62S、36B、46B、101、106、110S、112S、126S、137BS、158DS、201、206、212、226、237、262S(以上、KENRICH社製)等。
上記有機錯化合物は、特に付加反応型シリコーンゴム層に好適に使用できる。中でも、分子中に1級または2級のアミン、リン、硫黄を含まない有機錯化合物は白金触媒の触媒毒として作用しないため、白金触媒を用いて硬化を促進する付加反応型のシリコーンに用いる際に極めて好適である。
一方、アミン系顔料分散剤としては、その分子中に1個のアミノ基を有するモノアミンタイプ、分子中に複数個のアミノ基を有するポリアミンタイプがあり、何れも好適に使用できる。具体的には、“ソルスパース”(登録商標)9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、28000(以上、アビシア社製)や、下記一般式に記載のアミン化合物等を挙げることができる。
上記式中、R14は飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、R14の炭素数は8以上であることが好ましい。R15は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。iは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、i個のR15に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R16およびR17は飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。分散性の観点から、R16とR17の炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R18は炭素数1以上の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。R19は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。jは繰り返し数を表し、1以上の整数である。分散性の観点から、R18に含まれる炭素数とj個のR19に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。R20およびR21は炭素数3以上の飽和または不飽和の2価の炭化水素基を表し、直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよい。複数のR20、R21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。kおよびmは繰り返し数を表し、それぞれ1以上の整数である。分散性の観点から、k個のR20に含まれる炭素数とm個のR21に含まれる炭素数の合計が8以上であることが好ましい。LおよびMは下記のいずれかで表される2価の基を表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
顔料分散剤は、顔料の表面積に対して、2〜30mg/m2含有することが好ましい。言い換えると、例えば、比表面積50m2/gの顔料を10g含有する場合、顔料分散剤の含有量は、1〜15gが好ましい。
有色顔料の分散やシリコーン液、および有色顔料含有シリコーン液の希釈に用いる溶剤としては、低極性の溶剤が好ましく、中でも溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の溶剤を用いることが、溶解性、塗工性などの観点から好ましいく、15.5(MPa)1/2以下であることがより好ましい。溶剤は1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。2種以上の溶剤を用いる場合には、いずれの溶剤も溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であることが好ましい。
溶解度パラメーターは、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2により定義される量δをいう。溶解度パラメーターの単位には(MPa)1/2を用いる。溶解度パラメーターの単位としては(cal・cm−3)1/2も通常よく用いられており、両者の単位間には、δ(MPa)1/2=2.0455×δ(cal・cm−3)1/2の関係式がある。具体的には、溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2は8.3(cal・cm−3)1/2となる。溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2以下の溶剤としては、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類が挙げられる。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソオクタン、“アイソパー”(登録商標)C、“アイソパー”(登録商標)E、“アイソパー”(登録商標)G、“アイソパー”(登録商標)H、“アイソパー”(登録商標)K、“アイソパー”(登録商標)L、“アイソパー”(登録商標)M(エクソン化学(株)製)等の脂肪族飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等の脂肪族不飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トリフルオロトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル等のエーテル類が挙げられるがこれらに限定されるものではない。経済性および安全性の点から脂肪族及び脂環族炭化水素が好ましい。これら脂肪族及び脂環族炭化水素の炭素数は4〜20が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。
本発明の水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層の膜厚は0.5〜20g/m2が好ましい。膜厚を0.5g/m2以上とすることで印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20g/m2以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。
本発明に用いられる感光(熱)層としては、これまでに感光(熱)層残存型水なし平版印刷版用感光(熱)層として提案された何れのタイプの感光(熱)層も使用可能である。以下、具体例を挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。
(感熱層−1)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平11−221977号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
(感熱層−2)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開2005−300586号公報に記載の気泡を含んだ感熱層等を挙げることができる。生版の状態で架橋剤による架橋構造が形成されており、近赤外レーザーの照射により発生する熱で、感熱層とシリコーンゴム層間の接着力が低下するタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー照射部の感熱層は現像後も残存する。
(感熱層−3)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば特開平9−131981号公報に記載の感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で破壊されるタイプの感熱層である。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が破壊された感熱層と一緒に除去され画線部となる。一般的にこのような感熱層は検版性の観点から感熱層を深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし感熱層を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると感熱層の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。感熱層の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明の有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には感熱層の大部分が残存しても検版が可能となる。
(感熱層−4)ネガ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平7−314934号公報や特開平9−086065号公報に記載の金属、またはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物の薄膜等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で金属薄膜が破壊される。そして、現像によってこの部分を除去することによって、表面のシリコーンゴム層が同時に剥離され、画線部となる。感熱層−3同様、一般的にこのような金属薄膜も検版性の観点から深さ方向に完全にレーザー破壊して用いられる。しかし金属薄膜を完全に破壊するためには高エネルギーのレーザー照射が必要であり、これにより、微細画像の再現性不良、アブレーションカスによる光学系汚染、レーザー寿命の低下等、様々な悪影響がある。レーザーエネルギーを低くすると金属薄膜の大部分を残存しながら上部シリコーンゴム層を除去できる領域が現れる。金属薄膜の大部分が残存するため検版は困難であるが、検版性以外の悪影響は大きく抑制される。本発明の有色顔料含有シリコーンゴム層を設けた場合には金属薄膜の大部分が残存しても検版が可能となる。
(感熱層−5)ポジ型水なしCTP平版印刷版原版用感熱層
例えば、特開平11−157236号公報や、特開平11−240271号公報に記載の熱硬化型感熱層等を挙げることができる。近赤外レーザーの照射により発生する熱で熱活性化架橋剤による架橋構造が形成されるタイプの感熱層である。その後の現像処理によって、レーザー光を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部分のシリコーンゴム層が除去される。レーザー未照射部の感熱層は現像後も残存する。
(感光層−1)ネガ型水なし平版印刷版原版用感光層
例えば特開平11−352672号公報に記載の感光層等を挙げることができる。紫外線の照射により感光層表面の前処理液に対する溶解性が大きくなることで、現像処理によって、紫外線を照射した部分のシリコーンゴム層が除去され、未照射部分のシリコーンゴム層が残存する。露光部の感光層は現像後も残存する。
(感光層−2)ポジ型水なし平版印刷版原版用感光層
例えば特開平6−118629号公報に記載の感光層等を挙げることができる。紫外線の照射により発生したラジカルでエチレン性不飽和二重結合含有化合物の重合が起こり、現像処理によって、紫外線を照射した部分のシリコーンゴム層が残存し、未照射部分のシリコーンゴム層が除去される。未露光部の感光層は現像後も残存する。
本発明に用いられる基板としては、従来印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、フイルム等を使用することができる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフイルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフイルムなどが挙げられる。プラスチックフイルムは透明、不透明何れのものでも使用できる。中でも不透明のフイルムを用いることは検版性の点から好ましい。
これら基板のうち、アルミニウム板は寸法的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用のフレキシブルな基板としては、ポリエチレンテレフタレートフイルムが特に好ましい。
基板と感光層間の接着性向上、光ハレーション防止、検版性向上、断熱性向上、耐刷性向上等を目的に、前述の基板の上にプライマー層を有してもよい。本発明に用いられるプライマー層としては、例えば特開2004−199016号公報等に記載されたプライマー層を挙げることができる。
上述したように構成された水なし平版印刷版原版は、シリコーンゴム層保護の目的で保護フイルムや合紙を有してもよい。保護フイルム、および合紙は、そのどちらか一方を単独で有してもよいし、両方を併用してもよい。
保護フイルムとしては、露光光源波長の光を良好に透過する厚み100μm以下のフイルムが好ましい。代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。また、曝光による原版の感光を防止する目的で、特開平2−063050号公報に記載されたような種々の光吸収剤や光退色性物質、光発色性物質を保護フイルム上に有してもよい。原画フイルムを用いて露光する場合は、原画フイルムとの密着性向上の観点から、特開昭55−55343号公報や特開平2−063051号公報に記載されたような凹凸加工された保護フイルムを用いることが好ましい。
合紙としては、秤量30〜120g/m2のものが好ましく、より好ましくは30〜90g/m2である。秤量30g/m2以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m2以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、水なし平版印刷版原版と紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m2(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m2(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m2(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m2(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m2(王子製紙(株))、クルパック73g/m2(王子製紙(株))などがあげられるがこれらに限定されるものではない。
次に、本発明の水なし平版印刷版原版の製造方法を記載する。塗布面を脱脂した基板上に、必要によりプライマー液またはそれを溶剤で希釈したプライマー希釈液を塗布し、プライマー層を設ける。乾燥や硬化のために加熱処理を行ってもよい。その後プライマー層と同様の方法で、感光(熱)層、シリコーンゴム層を順次設けることで水なし平版印刷版原版を得ることができる。各液の塗布方法としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーターなどによる塗布方法が用いられる。また感熱層として金属薄膜を設ける場合は、蒸着法やスパッタリング法等の一般的な方法が用いられる。各層の加熱には、熱風乾燥機や赤外線乾燥機等の一般的な加熱装置が用いられる。
有色顔料含有シリコーンゴム層は、(i)有色顔料含有シリコーン液(無溶剤)、または(ii)有色顔料含有シリコーン希釈液(溶剤含有)を感光(熱)層上に塗布することにより得られる。必要により、乾燥や硬化のための加熱処理を行ってもよい。以下、各液の具体的な作製方法を記載する。
(i)有色顔料含有シリコーン液(無溶剤)
有色顔料含有シリコーン液は、例えば、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと有色顔料、必要により顔料分散剤、微粒子を三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ディスパーサー、ホモジナイザー、アトライター、超音波分散機等の分散機で均一に分散混合することにより得られる有色顔料分散シリコーンペースト中に、架橋剤、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤、反応触媒等)を添加し、撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去することで得られる。脱泡は自然脱泡でも減圧脱泡でもよいが、減圧脱泡がより好ましい。
(ii)有色顔料含有シリコーン希釈液(溶剤含有)
有色顔料含有シリコーン希釈液は、有色顔料の分散性の観点から、顔料分散剤を含むことが好ましい。有色顔料含有シリコーン希釈液の作製方法を、例を挙げて説明する。まず、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと有色顔料、顔料分散剤、必要により微粒子を前述した分散機で均一に分散混合することにより得られる有色顔料分散シリコーンペーストを撹拌しながら溶剤で希釈する。これを紙やプラスチック、またはガラス等の一般的なフィルターを用いて濾過し、希釈液中の不純物(分散が不十分な有色顔料の巨大粒子等)を取り除くことが好ましい。濾過後の希釈液は、乾燥空気や乾燥窒素等によるバブリングにより系中の水分を除去することが好ましい。十分に水分の除去を行った希釈液に架橋剤、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤、反応触媒等)を添加し撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去する。脱泡は自然脱泡でも減圧脱法でもよい。
また、有色顔料含有シリコーン希釈液の他の作製方法としては、有色顔料分散液とシリコーン液、またはシリコーン希釈液を予め別々に作製しておき、後に両液を混合する方法が挙げられる。有色顔料分散液は、少なくとも顔料分散剤および溶剤を含有する溶液中に、有色顔料、必要により微粒子を添加し、上述の分散機で均一に分散混合することにより得られる。一方、シリコーン液は、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤、反応触媒等)を混合することにより得られる。また、得られたシリコーン液を溶剤で希釈することで、シリコーン希釈液を得ることができる。この作製方法の利点としては、有色顔料分散シリコーンペーストに比べ、有色顔料分散液は非常に低粘度であるため、経時により凝集した有色顔料の再分散が容易であることが挙げられる。また、予め希釈溶剤中に有色顔料が分散されていることから、有色顔料分散シリコーンペーストを溶剤で希釈する方法に比べ、溶剤希釈時に発生する有色顔料の凝集も起こりにくい。更に、分散機を用いた分散工程において、有色顔料分散液はシリコーン材料を含まないため、シリコーン材料による分散機への汚染もない。
有色顔料含有シリコーン液、または有色顔料含有シリコーン希釈液を塗布する際、感光(熱)層表面に付着した水分を可能な限り除去することが接着性の観点から好ましい。具体的には、乾燥ガスを充填、または、連続供給することで水分を除去した空間で有色顔料含有シリコーン液、または有色顔料含有シリコーン希釈液の塗布を行う方法が挙げられる。
有色顔料含有シリコーン液、または有色顔料含有シリコーン希釈液は、塗布後、直ちに加熱されることが硬化性や対感光(熱)層接着性の観点から好ましい。
得られた水なし平版印刷版原版上に保護フイルム、または合紙の何れか一方、もしくはその両方を設けて保管することが、版面保護の観点から好ましい。
このようにして得られた水なし平版印刷版原版は、保護フイルム上、または保護フイルム剥離後、画像フイルムを介して露光するか、デジタルデータによりレーザー走査露光することにより画像様に露光される。露光光源としては、例えば、カーボンアーク灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、紫外光レーザー、可視光レーザー、(近)赤外光レーザーなどが挙げられる。
露光後の原版は、現像液の存在下もしくは非存在下での摩擦処理により現像がなされる。摩擦処理は、不織布、脱脂綿、布、スポンジ、ブラシ等で版面を擦ることによって、あるいは、現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジ等で版面を拭き取ることによって行うことができる。また、現像液で版面を前処理した後に水道水等をシャワーしながら回転ブラシで擦ることや、高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射することによっても行うことができる。
現像に先立ち、前処理液中に一定時間版を浸漬する前処理を行ってもよい。前処理液としては、例えば、水や水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。界面活性剤としては、安全性、廃棄する際のコスト等の点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10重量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄コスト等の経済性の点でも好ましい。さらに、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましく、アミン化合物を共存させることがより好ましい。
前処理液、現像液としては、特開昭63−179361号公報、特開平4−163557号公報、特開平4−343360号公報、特開平9−34132号公報、特許第3716429号公報に記載されたような水なし平版印刷版原版の前処理液、現像液に関して開示されたものを用いることができる。前処理液の具体例としては、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、PH−7N、CP−1、NP−1、DP−1(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。
上記現像処理は自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部、現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置等を使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(東レ(株)製)、TWL−860CF、TWL−1160CF((株)東洋商社製)、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができ、これらを単独または併用して使用することができる。
現像処理された印刷版を積み重ねて保管する場合には、印刷版保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。各シリコーンゴム層構成成分の秤量はボックス内の水分を追いだしたグローブボックス内で行い、各構成成分を乾燥窒素ガスで充填された容器内で分散、混合することでシリコーン液、またはシリコーン希釈液を調製した。
有色顔料含有シリコーン希釈液の調製に用いる有色顔料分散液は以下の方法で作製した。
<有色顔料分散液作製方法>
ジルコニアビーズ:“YTZ”(登録商標)ボール(φ0.6mm、(株)ニッカトー製)2000gを充填した密閉可能なガラス製規格瓶中に、“アイソパー”(登録商標)G(エッソ化学(株)製):420g、“プレンアクト”(登録商標)KR−TTS:40g、N650紺青(大日精化(株)製):100gを投入し、密閉後、小型ボールミル回転架台(アズワン(株)製)にセットし、500rpmの回転速度で所定時間分散することで有色顔料分散液を得た。最長分散時間を480時間とし、6時間毎にサンプリングを行った。
各実施例中の有色顔料の平均粒子径測定、及び画像再現性は以下の方法で評価した。
<有色顔料の平均粒子径測定>
水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層断面を、透過型電子顕微鏡H−7100FA(日立製作所(株)製)を用い、1万倍の倍率で観察した。観察に用いる試料の切片厚さは1μmとし、場所を変えて10視野測定した。有色顔料の平均粒子径dは等価円相当径から求められ、次式で定義される。
式中Nは有色顔料の個数を表す。本実施例では1視野あたり10個、10視野で合計100個の有色顔料をランダムに選択し、平均粒子径dを算出した。
<画像再現性評価>
露光、現像により得られた水なし平版印刷版上の1〜99%の網点(175lpi)を、ルーペ(×50)により観察し、以下の基準により評価した。
◎:1〜99%の網点が再現
○:(ネガ型水なしCTP平版)2〜99%の網点が再現、(ポジ型水なし平版)1〜98%の網点が再現
△:(ネガ型水なしCTP平版)3〜99%の網点が再現、(ポジ型水なし平版)1〜97%の網点が再現
×:(ネガ型水なしCTP平版)5〜99%の網点が再現、(ポジ型水なし平版)1〜95%の網点が再現。
<検版性>
露光、現像により得られた水なし平版印刷版上の5%、20%、35%、50%、65%、80%、95%の各網点(175lpi)の網点面積率を、網点面積率測定装置:“ccDot”type4(センターファックス社製)により測定した。より具体的には、測定色としてシアンを選択し、露光、現像により得られた水なし平版印刷版上の50%網点の網点面積率を3回測定し、次いで、5%、20%、35%、50%、65%、80%、95%の順で各網点の網点面積率をそれぞれ3回ずつ測定し、その平均値を網点面積率とした(平均値の小数点以下第1位を四捨五入)。尚、本発明の水なし平版印刷版原版は最上層のシリコーンゴム層が着色されているため、露光、現像後の水なし平版印刷版はネガ様像となる(非画線部:濃色、画線部:淡色)。このことから、ネガ(装置での表示:−(マイナス))モードで網点面積率測定を行った。
◎:正確に読み取り可能(最大測定誤差:±1%以下)
○:ほぼ正確に読み取り可能(最大測定誤差:±2%〜3%)
×:ノイズが多く正確に読み取れない(最大測定誤差:±4%以上)
(実施例1〜5、比較例1〜2)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記のプライマー層組成物液−1を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、膜厚10g/m2のプライマー層を設けた。
<プライマー層組成物液−1>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20重量%):375重量部
(c)アルミキレート:“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10重量%):1重量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50重量%):60重量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730重量部
(g)メチルエチルケトン:250重量部。
次いで、下記の感熱層組成物液−1を前記プライマー層上に塗布し、120℃で90秒間加熱し、膜厚1.5g/m2の感熱層を設けた。
<感熱層組成物液−1>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)チタンキレート:“ナーセム”チタン(日本化学産業(株)製、固形分濃度:73重量%):11重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”PR50731(住友デュレズ(株)製):75重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)IB465(三洋化成工業(株)製)の溶剤置換品(置換溶剤:テトラヒドロフラン、固形分:15重量%):47重量部
(e)メチルエチルケトン:422重量部
(f)エタノール:85重量部
(g)イソパラフィン:“アイソパー”(登録商標)H(エッソ化学(株)製):17重量部。
次いで、塗布直前に調製した下記の有色顔料含有シリコーン希釈液−1を前記感熱層上に塗布し、130℃で90秒間加熱し、膜厚2.0g/m2のシリコーンゴム層を設けた。加熱直後のシリコーンゴム層は完全に硬化していた。加熱直後のシリコーンゴム層上に、厚み6μmのポリプロピレンフイルム:“トレファン”(東レ(株)製)をラミネートし、ネガ型水なしCTP平版印刷版原版を得た。
<有色顔料含有シリコーン希釈液−1>
下記(a)、(b)をこの順に混合することで有色顔料分散希釈液−1を得た。
(a)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):342.44重量部
(b)上述の方法により作製した有色顔料分散液:10.08重量部。
次いで、別容器中で下記(c)〜(h)を混合することで有色顔料含有シリコーン希釈液−1を得た。
(c)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):550重量部
(d)“DMS”V52(ゲレスト社製):81.28重量部
(e)“HMS”991(ゲレスト社製):3重量部
(f)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3重量部
(g)“サイラエース”(登録商標)S510(チッソ(株)製):4重量部
(h)“SRX”212(東レダウコーニングシリコーン(株)製):7重量部。
予め作製しておいた有色顔料分散希釈液−1を攪拌しながら、別容器で作製したシリコーン希釈液を混合することにより、有色顔料含有シリコーン希釈液−1を得た。なお、各実験で用いた有色顔料分散液の分散時間は表1に記載の通りである。
ポリプロピレンフイルム剥離後のネガ型水なしCTP平版印刷版原版を製版機:GX−3600(東レ(株)製)に装着し、半導体レーザー(波長830nm)を用いて1〜99%の網点(175lpi)を照射エネルギー200mJ/cm2で露光した。続いて、自動現像機:TWL−860CF((株)東洋商社製、洗浄液:水道水、水温:35℃)により、版搬送速度80cm/分で、上記露光済み版の現像を行い、水なし平版印刷版を得た。得られた水なし平版印刷版の画像再現性、および検版性を前述の方法で評価したところ、シリコーンゴム層中の有色顔料平均粒子径が400nm以下の時には画像再現性、検版性共に良好であった。一方、有色顔料平均粒子径が400nmより大きい時には画像再現性、検版性共に低下した。評価結果をまとめて表1に記す。
(実施例6〜9)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ支持体(三菱アルミ(株)製)上に下記のプライマー層組成物液−2を塗布し、200℃で1分間乾燥し、膜厚3g/m2のプライマー層を設けた。
<プライマー層組成物液−2>
(a)エポキシ樹脂“エピコート”1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):78.5重量部
(b)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50重量%):20重量部
(c)ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート1モルとメチルエチルケトオキシム2モルの反応物:4.5重量部
(d)界面活性剤“フロラード”FC470(住友スリーエム(株)製):0.01重量部
(e)レベリング剤“ディスパロン”LC951(楠本化成(株)製):0.05重量部
(f)ジブチル錫ジアセテート:0.1重量部
(g)レゾール樹脂“スミライトレジン”PR−54573(住友デュレス(株)製):3重量部
(h)テトラヒドロフラン:400重量部
(i)N,N−ジメチルホルムアミド:165重量部。
次いで、下記の感光層組成物液−2を前記プライマー層上に塗布し、120℃で1分間加熱し、膜厚4g/m2の感光層を設けた。
<感光層組成物液−2>
(a)“サンプレン”LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製):335重量部
(b)m−キシリレンジアミン1モルとグリシジルメタクリレート4モルの反応物:10重量部
(c)ポリオキシプロピレンジアミン1モルとグリシジルメタクリレート4モルの反応物:10重量部
(d)“ライトエステル”1・10DC(共栄社化学(株)製):8重量部
(e)ポリオキシプロピレンジアミン/グリシジルメタクリレート/3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=1/3/1モルの反応物:2重量部
(f)トリ(ブトキシカルボニルメチル)トリチオホスファイト:2重量部
(g)“Plastanox”1729(American Cyanamid Co.):1重量部
(h)4,4’−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン:2重量部
(i)10−n−ブチル−2−クロロアクリドン:4重量部
(j)2,4−ジエチルチオキサントン:7重量部
(k)“アイゼンビクトリアピュアブルー”−BOHコンク(保土谷化学工業(株)製):0.3重量部
(l)“フロラード”FC470(住友スリーエム(株)製):0.03重量部
(m)2−エチルアントラキノン:0.02重量部
(n)エチルセロソルブ:150重量部
(o)メチルエチルケトン:400重量部
(p)テトラヒドロフラン:200重量部。
次いで、塗布直前に調製した下記のシリコーンゴム層組成物液−2を前記感光層上に塗布し、120℃で1分間加熱し、膜厚2.0g/m2のシリコーンゴム層を設けた。加熱直後のシリコーンゴム層上に、厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフイルム:“ルミラー”(東レ(株)製)をラミネートし、ポジ型水なし平版印刷版原版を得た。
<有色顔料含有シリコーン希釈液−2>
下記(a)、(b)をこの順に混合することで有色顔料分散希釈液を得た。
(a)“アイソパー”(登録商標)E:342.44重量部
(b)上述の方法により作製した有色顔料分散液:10.08重量部。
次いで、別容器中で下記(c)〜(f)を混合することでシリコーン希釈液を得た。
(c)“アイソパー”(登録商標)E:550重量部
(d)“DMS”−S42(GELEST社製):87.48重量部
(e)エチルトリアセトキシシラン:10重量部
(f)ジブチル錫ジアセテート:0.01重量部。
予め作製しておいた有色顔料分散希釈液を攪拌しながら、別容器で作製したシリコーン希釈液を混合することにより、有色顔料含有シリコーン希釈液−2を得た。なお、各実験で用いた有色顔料分散液の分散時間は表2に記載の通りである。
得られたポジ型水なし平版印刷版原版を下記条件で露光し、カバーフイルム剥離後、下記条件で現像することで水なし平版印刷版を得た。得られた水なし平版印刷版の画像再現性、および検版性を前述の方法で評価したところ、シリコーンゴム層中の有色顔料平均粒子径が147nm以下の時には画像再現性、検版性共に良好であった。一方、有色顔料平均粒子径が182nmの時には画像再現性が低下した。評価結果をまとめて表2に記す。
(露光条件)
露光機 :“アイドルフィン”ID−2000(オーク製作所製)
光量計 :“ライトメジャー”UV365(オーク製作所製)
露光条件:ポジフイルム真空密着(30秒)
11mW/cm2(365nm光)×60秒間露光
露光時版面温度:25℃
フイルム:ポジフイルム−網点1%〜99%(175lpi)
(現像条件)
現像機 :“TWL”−860KII(東レ(株)製)
現像液 :前処理液 35℃“PP−F”(東レ(株)製)
現像液 水道水
後処理液 “PA−F”(東レ(株)製)
現像速度:100cm/分
(実施例10〜11、比較例3〜4)
実施例1の“DMS”−V52添加量、有色顔料分散液(480時間分散品)添加量を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の手段でネガ型水なしCTP平版印刷版原版の作製、評価を行った。
実施例9:“DMS”−V52=77.84重量部、有色顔料分散液=30.24重量部
実施例10:“DMS”−V52=74.40重量部、有色顔料分散液=50.40重量部
比較例4:“DMS”−V52=70.96重量部、有色顔料分散液=70.56重量部
比較例5:“DMS”−V52=67.52重量部、有色顔料分散液=90.72重量部
シリコーンゴム層中の有色顔料体積濃度が5体積%以下の時には画像再現性、検版性共に良好であった。一方、有色顔料体積濃度が7体積%以上の時には画像再現性が低下した。評価結果をまとめて表3に記す。