JP2011033791A - 複屈折パターンを有する物品の製造方法及び複屈折パターン作製材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
【選択図】なし
Description
光学異方性を用いて画像の視認状態や画像そのものの状態に影響を与える技術のひとつとして、コレステリック液晶を識別媒体に用い、その反射光を目視または光学機器により検出するものがある。
コレステリック液晶は、連続的であるが、多層構造として想定した場合、分子長軸方向が互いに平行であり、かつ層面に平行である。各層は少しずつ回転して重なっており、立体的にスパイラル構造をとる。この構造によってコレステリック液晶は、特定の色(波長)を選択的に反射する性質を持つ。すなわち、スパイラル構造の方向因子が360°回転して元に戻るまでの距離であるコレステリックピッチpと、各層内の平均屈折率nとから、λ=n・pとして求められる波長λの円偏光に対して選択的に反射する特徴を有する。
この特徴により、コレステリック液晶は独特の美しい色を呈する。また、コレステリック液晶の選択反射を使って得られた画像は通常状態で知覚される画像が所定の操作(フィルタを重ねる、傾けるなど)で所定の変化を示す。
これらの点から、高分子コレステリック液晶を用いた識別媒体の製造において、効率よく広い面積のパターンを作れる新しい技術が要望されていた。
(1)少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
(2)前記光学異方性層がコレステリック構造に起因する特性反射を示し、特性反射のピーク波長が50nm以上3000nm以下であり、かつ、ピーク反射率が2%以上100%以下であることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)前記特性反射のピーク波長が300nm以上1600nm以下であることを特徴とする(2)に記載の製造方法。
(4)前記光学異方性層のコレステリックピッチが100nm以上2000nm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)前記光学異方性層が特性反射消失温度を20℃より高い温度域に有する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)前記工程[3]が前記特性反射消失温度以上で行われる(5)に記載の製造方法。
(7)前記高分子化合物が未反応の反応性基を有する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の製造方法。
(8)前記棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する(1)〜(7)のいずれか1項に記載の製造方法。
(9)前記棒状液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する(8)に記載の製造方法。
(10)前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性の反応基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選ばれる基である(9)に記載の製造方法。
(11)前記カイラル剤の前記組成物中の対固形分濃度が0.5質量%以上20質量%以下である(1)〜(10)のいずれか1項に記載の製造方法。
(12)前記カイラル剤のうちの少なくとも1種が少なくとも1つの反応性基を有する(1)〜(11)のいずれか1項に記載の製造方法。
(13)前記光学異方性層が重合固定化された後に改質されたものである(1)〜(12)のいずれか1項に記載の製造方法。
(14)前記改質が少なくとも1種の追加添加剤を含む溶液の接触または浸透の形で行われる(13)に記載の製造方法。
(15)前記追加添加剤の少なくとも1種が光重合開始剤であることを特徴とする(14)に記載の製造方法。
(16)前記改質が前記光学異方性層の上に別の機能性層を積層する工程に付随して行われる(13)〜(15)のいずれか1項に記載の製造方法。
(17)前記工程[1]が、記工程[1]が、重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより行われる(1)〜(16)のいずれか1項に記載の製造方法。
(18)前記転写材料が仮支持体の上に少なくとも[A]光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものである(17)に記載の製造方法。
(19)(1)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、偽造防止手段として用いられる物品。
(20)(1)〜(18)のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光学素子。
(21)重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料。
なお、本発明における「特性反射消失温度」とは、特性反射のピーク反射率が20℃におけるピーク反射率の30%以下となる温度をいう。
また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の複屈折パターン作製材料は、コレステリック液晶相を形成させ重合固定化した高分子化合物を含んでなる光学異方性層を有し、効率よく製造できるうえ、パターン露光によってパターニングが行える。また、重合固定化を熱処理等によって行うため、耐熱性が高い。
図1は複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製するための材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを有する物品を作成することができる材料である。図1(a)に示す複屈折パターン作製材料は支持体(基板)11上に光学異方性層12を有する例である。図1(b)に示す複屈折パターン作製材料は配向層13を有する例である。配向層13は、光学異方性層12として棒状液晶性化合物とカイラル剤を含む組成物(塗布液)を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、熱または放射線照射によって重合固定化したものを用いる場合に、液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
図2は転写材料として用いられる本発明の複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料を転写材料として用いることによって、所望の支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、複数の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、または複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
図3は複屈折パターン作製材料を用いた製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品のいくつかの例の概略断面図である。本発明の方法により得られる複屈折パターンを有する物品は少なくとも一層のパターン化光学異方性層112を有する。本明細書において「パターン化光学異方性層」とは「複屈折性が異なる領域を2つ以上有する光学異方性層」を意味する。なお、「複屈折性が異なる」場合として「一方が複屈折性を有し、他方が複屈折性を有していない(光学的に等方な領域である)」場合を含む。複屈折性が同一である領域は連続的形状であっても非連続的形状であってもよい。また各領域の複屈折性が異なる結果として、各領域の示す特性反射のピーク反射率および/もしくはピーク波長が異なることが好ましい。
本発明の複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、コレステリック構造に由来する複屈折性を有し、その結果としてコレステリックピッチpと、各層内の平均屈折率nとから、λ=n・pとして求められる波長λの円偏光に対して選択的な反射(特性反射)を示す層である。
このように適宜に露光や加熱の処理を組み合わせることにより、本発明の複屈折パターン作製材料における光学異方性層に効率良く光学異方性のパターンを描くことが可能である。
本発明の複屈折パターン作製材料の光学異方性層における高分子化合物とは、多数の原子が結合してできる巨大分子のことを指し、例えば分子量が3000以上である化合物をいう。具体的にはアクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、あるいはこれらの共重合体などがあげられる。またこれらの高分子中には様々なモノマーが共重合されていても良い。こうしたモノマーの例としては、カルボン酸末端アクリルモノマー、液晶性アクリルモノマーなどがあげられる。(未反応の)反応性基としてはビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、オキセタニル基などがあげられる。この高分子化合物の光学異方性層における含有量は、好ましくは5〜99質量%、さらに好ましくは10〜95質量%である。
他の機能性層の塗布を行うため、本発明における光学異方性層は耐溶媒性を有することが好ましい。本明細書において、「耐溶媒性を有する」とは対象の溶媒に2分間浸漬した後の特性反射のピーク反射率が浸漬前のピーク反射率の30%から170%の範囲内に、より好ましくは50%から150%の範囲内に、最も好ましくは80%から120%の範囲内にあることを意味する。対象の溶媒としては水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチルの中から、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドンの中から、最も好ましくはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、またはこれらの混合溶媒等があげられる。
また、光学異方性層のコレステリックピッチが100〜2000nmであることが好ましく、150〜1200nmであることがより好ましい。このようなコレステリックピッチを有することにより300〜1600nm付近にピーク波長を有する光学異方性層とすることができる。
さらに光学異方性層が特性反射消失温度を有し、該特性反射消失温度が20℃以上であることが好ましく、40〜245℃がより好ましく、80〜240℃であることがさらに好ましい。このような温度域に特性反射消失温度を有することで、パターニングの工程の効率を大きく損なうことなく、耐久性あるパターンを製造することができる。
また、後述するように、本発明における光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることがさらに好ましい。
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、コレステリック液晶相を形成させたのちに重合固定化するため、低分子の棒状液晶性化合物を用いる。温度変化や湿度変化を小さくできることから本発明においては1液晶分子中の反応性基が2以上ある化合物を用いる。棒状液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよい。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。本明細書においてEtはエチル基、Prはプロピル基を表す。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記
一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5)n−W2−
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
るものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号
公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
棒状液晶性化合物と光学活性化合物(カイラル剤)とを混合することによりコレステリック液晶性組成物が得られる。光学活性化合物としては公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)を用いることができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。カイラル剤は、重合性基(反応性基)を有していてもよい。カイラル剤が重合性基を有する場合は、棒状液晶性化合物の重合反応により、棒状液晶性繰り返し単位と光学活性構造とを有するポリマーを形成することができる。カイラル剤の重合性基は、棒状液晶性化合物の重合性基(反応性基)と同様の基であることが好ましい。
カイラル剤の使用量は、液晶性化合物を含む組成物(塗布液)中の対固形分濃度で0.5〜20質量%が好ましく、1.5〜16.0質量%がより好ましい。
配向させた棒状液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、加熱または放射線照射により、棒状液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施する。ここでいう放射線とは電波、光(赤外光、可視光、紫外光)、エックス線、ガンマ線などの電磁波と電子線(ベータ線)、陽子線、中性子線、アルファ線、イオン線などの粒子線の総称である。固定化に当たってはいずれの手段を用いても良いが、加熱、電波照射、光照射もしくは電子線照射を用いるのが好ましく、光照射もしくは電子線照射を用いるのがより好ましく、紫外線照射を用いるのが特に好ましい。なお、特に加熱を用いた重合反応は「熱重合反応」、光照射を用いた重合反応は「光重合反応」と呼ばれる。本明細書でもこの呼称を用いる。
重合反応に際しては、重合反応を促進するために開始剤を用いても良い。重合開始剤としては特に限定されないが例えば熱重合開始剤や光重合開始剤などがあげられる。前者は熱重合反応において、後者は光重合反応において用いられる。
光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などがあげられるが、ラジカル重合もしくはカチオン重合が好ましい。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示することができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
前述したように、棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する棒状液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、棒状液晶性化合物の分子が垂直方向に配向しようとするのを防ぐことができる。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上のためのコロナ処理や、柔軟性向上のための可塑剤添加、保存性向上のための熱重合禁止剤添加、反応性向上のためのカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する追加添加剤を含む溶液に接触または浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する追加添加剤を含む溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の機能性層を積層する際にその層の塗布液に追加添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬(拡散)させる方法もあげられる。本発明においては、この際に接触または浸漬させる追加添加剤、特には光重合開始剤の種類や量により、後に述べる複屈折パターン作製材料へのパターン露光時の各領域への露光量と最終的に得られる各領域の特性反射のピーク波長やピーク反射率等との関係を調整し、所望する材料特性に近づけることが可能である。
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製するための材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを得ることができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、後粘着層、光吸収層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
複屈折パターン作製材料は力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料に用いられる支持体には特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。
光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に位置する棒状液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。コレステリック液晶相において配向層の存在は必須ではないが、配向層の存在で面内の配向方向が揃えられることにより配向方向の異なる微小領域(ドメイン)の形成が抑えられ、結果としてヘイズの少ない光学異方性層が得られる。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
配向層を機能させるためには、支持体上に配向層を形成し、その表面をラビング処理する方法が一般的である。しかし、塗布液と支持体の組み合わせによっては、支持体を直接ラビングして利用することも可能である。このような支持体としては、後述の配向層に好ましく用いられる有機化合物、特にポリマーを主成分とする支持体が上げられる。このような支持体としては、PETフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
液晶の配向層としては、ラビングや電離線配向を行った膜だけでなく、小さな凹凸をつけた膜を用いることもできる。
凹部形成領域には、様々な構造を採用することができる。例えば、凹部形成領域には、複数の溝を幅方向に等間隔で平行に並べた構造を採用することができる。
或いは、凹部形成層は、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
複屈折パターン作製材料は、反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。
複屈折パターン作製材料は、後述のパターン露光及びベーク後に作製される複屈折パターンを有する物品をさらに他の物品に貼付するための後粘着層を有していてもよい。後粘着層の材料は特に限定されないが、複屈折パターン作製のためのベークの工程を経てた後でも粘着性を有する材料であることが好ましい。
[光吸収層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層による特性反射光がより容易に識別できるように、光学異方性層よりも非視認側(支持体側)に光吸収層を有していてもよい。光吸収層としては特に限定されないが、例えばカーボンブラックを分散したアクリルポリマー層などが挙げられる。
本発明の複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。この場合、2層以上の光学異方性層のうち少なくとも1層はコレステリック構造を有したものである必要があるが、他の層はコレステリック構造を有したものでも、有さないものでも良い。コレステリック構造を有する光学異方性層を2層以上有する場合、光学異方性層はコレステリックピッチや特性反射のピーク波長、ピーク反射率、あるいは特性反射消失温度において、互いに同じであっても異なっていてもよい。
本発明において複屈折パターン作製材料の作製は、上記の少なくとも2つの反応性基を有する棒状液晶化合物とカイラル剤とを含む組成物(塗布液)を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化された高分子化合物を含んでなる、光学異方性層を少なくとも1層形成することで行われる。この光学異方性層は、前記組成物を支持体上に直接、あるいは他の層を積層した上に塗布して形成することができる。塗布方法は、後述する転写材料における各層の塗布で採用しうる方法と同様である。乾燥に適した条件は使用する棒状液晶化合物、塗布液溶媒等によっても異なるが、膜面温度40〜140℃とし、5〜180秒行うのが好ましい。
あるいは、あらかじめ転写材料中に作成しておいた光学異方性層を転写して形成することもできる。以下に、光学異方性層を転写させるための転写材料について説明する。なお、そのような転写材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という。
転写材料は、仮支持体上に、少なくとも[A]光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものであることが好ましい。転写材料における光学異方性層の形成は、上記と同様の組成物(塗布液)の塗布乾燥後、加熱または放射線照射による重合固定化で行える。
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、いずれも商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、液晶表示装置用基板等に用いられる場合に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
(1)ポリマー
ポリマー(以下、単に「バインダ」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーからなるアルカリ可溶性樹脂が好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報および特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等を挙げることができる。また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、またこの他にも、水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。これらの極性基を有するバインダポリマーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよい。全固形分に対するポリマーの含有量は20〜70質量%が一般的であり、25〜65質量%が好ましく、25〜45質量%がより好ましい。
前記感光性樹脂層に使用されるモノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。そのようなモノマーおよびオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
更に特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報および特開昭51−37193号公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報および特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
これらのモノマー又はオリゴマーは、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよく、着色樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
前記感光性樹脂層に使用される光重合開始剤又は光重合開始剤系としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書および同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール2量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾールおよびトリアリールイミダゾール2量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとしてあげることができる。
着色樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
特に好ましい界面活性剤として、下記一般式(a)および、一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有するものが挙げられる。
特に好ましい界面活性剤の質量平均分子量Mwは、1000〜40000が好ましく、更には5000〜20000がより好ましい。界面活性剤は前記一般式(a)および一般式(b)で表されるモノマーを含み、且つ一般式(a)/一般式(b)の質量比が20/80〜60/40の共重合体を含有することを特徴とする。特に好ましい界面活性剤100質量部は、モノマー(a)が20〜60質量部、モノマー(b)が80〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましく、更には、モノマー(a)が25〜60質量部、モノマー(b)が60〜40質量部、およびその他の任意モノマーがその残りの質量部からなることが好ましい。
特に好ましい界面活性剤は、モノマー(a)、モノマー(b)等の共重合体であるが、そのモノマー配列は特に制限はなくランダムでも規則的、例えば、ブロックでもグラフトでもよい。更に、特に好ましい界面活性剤は、分子構造および/又はモノマー組成の異なるものを2以上混合して用いることができる。
前記界面活性剤の含有量としては、感光性樹脂層の層全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、特に0.1〜7質量%が好ましい。界面活性剤は、特定構造の界面活性剤とエチレンオキサイド基、およびポリプロピレンオキサイド基とを所定量含有するもので、感光性樹脂層に特定範囲で含有することにより該感光性樹脂層を備えた液晶表示装置の表示ムラが改善される。全固形分に対して0.01質量%未満であると、表示ムラが改善されず、10質量%を超えると、表示ムラ改善の効果があまり現れない。上記の特に好ましい界面活性剤を前記感光性樹脂層中に含有させカラーフィルタを作製すると、表示ムラが改良される点で好ましい。
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い表面保護層を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば転写接着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
転写材料を支持体(基板)等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、被転写材料上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は(多層)複屈折パターン作製材料が挙げられる。
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
上記のようにして複屈折パターン作製材料を作製(工程[1])した後、少なくとも、以下の工程[2]、[3]をこの順に行うことにより、複屈折パターンを有する物品を製造することができる。
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。
この方法は、複屈折パターン作製材料の一部あるいは全部の領域にパターン露光を行って該当領域を硬化させて耐熱性を高め、その後に加熱(ベーク)を行うことで各領域の露光量の有無もしくは大小に応じて複屈折性を低下させ(露光量が少なかった領域ほど低下巾が大きい)、複屈折性の差を生じさせて複屈折パターンを有する物品を作製するものである。
本明細書において、パターン露光とは、複屈折パターン作製材料の一部の領域のみが露光されるように行う露光を意味する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。
前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜500mJ/cm2程度である。
本発明の製造方法において、複屈折パターン作製材料の2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光(パターン露光)を行ってもよい。2つ以上の領域に互いに露光条件の異なる露光を行うことにより、最終的に得られるパターンにおいてそれぞれの領域の複屈折性に細かい差異をつけることが可能となる。このときの「2つ以上の領域」は互いに重なる部位を有していても有していなくてもよいが、互いに重なる部位を有していないことが好ましい。パターン露光は複数回の露光によって行われてもよく、もしくは、例えば領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスク等を用いて1回の露光によって行われていてもよく、又は両者が組み合わされていてもよい。
露光条件の異なる露光領域を生じる手段として、露光マスクを用いた露光は有用である。例えば1つの領域のみを露光するような露光マスクを用いて露光を行った後に、温度、雰囲気、露光照度、露光時間、露光波長を変えて別のマスクを用いた露光や全面露光を行うことで、先に露光された領域と後に露光された領域の露光条件は容易に変更することができる。また、露光照度、あるいは露光波長を変えるためのマスクとして領域によって異なる透過スペクトルを示す2つ以上の領域を有するマスクは特に有用である。この場合、ただ一度の露光を行うだけで複数の領域に対して異なる露光照度、あるいは露光波長での露光を行うことができる。異なる露光照度の元で同一時間の露光を行うことで異なる露光量を与えることができることは言うまでもない。
またレーザーなどを用いた走査露光を用いる場合には、露光領域によって光源強度を変える、走査速度を変えるなどの手法で領域ごとに露光条件を変えることが可能である。
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。
また、本発明においてベークは、未露光部分の光学異方性層の特性反射消失温度以上の温度で行うことが好ましい。これにより未露光部分の特性反射のピーク反射率が著しく低下し、露光部との間で容易に識別できる。
光学異方性層に有機色素を用いた場合、有機色素の色が残ることがあり、必要に応じ、これを後処理で漂白することができる。例えば、あらかじめホウ素化合物を過剰に添加しておき、全面露光によってホウ素化合物からラジカルを発生させ、これによって色素を分解させて漂白することができる。この方法は加温しながら行うと、より効果的である。また、漂白に用いる波長とパターン露光波長に用いる波長が近い場合はこの処理はベーク後に行うことが好ましい。
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的のために仕上げ熱処理を行ってもよい。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
複屈折パターン作製材料に、上述のようにパターン露光及びベークを行って複屈折性パターンを作製した後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層し、複屈折パターンを有する物品としてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば表面の傷つきを防止するハードコート層や、複屈折パターンの視認を容易にする光吸収層などがあげられる。
複屈折パターンを有する物品が示す反射は独特のもので、電子コピーや印刷で作製したパターンで模倣する事は困難である。一方で、このようなコレステリックパターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊である。従って、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は極めて模造されにくい性質を有しており、例えば偽造防止手段として利用することができる。より具体的には、例えば、特定のマーク(社名や商標など)状の複屈折パターンを有するラベルや転写箔として利用可能である。
また一方で、特性反射のもたらす視覚上あるいは光学上の効果を利用して情報媒体として用いる事も可能である。より具体的には、番号列、文字列、一次元あるいは二次元のバーコード(QRコード)、記号、画像などをパターンとして書き込み、情報を織り込む事が可能である。またその際、用途に応じて適した特性反射の波長を選ぶ事も可能である。例えば認識性を重視し目視でも容易に識別できるパターンとしたいならば可視光領域の特性反射光を有する複屈折パターンが適しているし、逆に隠匿性のパターンとしたいならば紫外光領域や赤外光領域の特性反射を有するパターンを用いる事で目視では不可視のパターンとすることができる。不可視のパターンは下地のデザインに外観に影響を与えないで情報を与える(例えば、グラビア写真上に不可視のパターンで通し番号を打つ)という方面での利用も考えられる。
さらに一方で、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は、可視光領域の特性反射が有する美しい色としての特徴を利用して装飾用途に用いても良い。この場合、見る角度を変える事で特性反射の波長が変化し色が変わる事も魅力となる。
また、複屈折パターンを有する物品が有している光学異方性層が示す特性反射は右円偏光か左円偏光のいずれかになる(どちらになるかは材料や製造方法に応じて異なる)。円偏光は対応する円偏光フィルタ(右円偏光なら右円偏光フィルタ、左円偏光なら左円偏光フィルタ)はそのまま通過するが逆巻きの円偏光フィルタ(右円偏光なら左円偏光フィルタ、左円偏光なら右円偏光フィルタ)は通過できずに吸収される。この性質を利用し、複屈折パターンを有する物品に対して逆巻きの円偏光フィルタをかざした際にその特性反射が観察されなくなることを確認することで、正しく作られたパターンかどうかを判定することが可能である。(特性反射に由来しない通常の反射光の場合には、円偏光フィルタをかざすとその強度が半減するのみで、観察されなくなることは無い)
また、上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品は光学素子への利用も可能である。例えば上記の製造方法により得られる複屈折パターンを有する物品を構造的な光学素子として用いた場合、特定の偏光にのみ効果を与える特殊な光学素子の作製が可能である。一例として、本発明の屈折率のパターンによって作製された回折格子は特定の偏光を強く回折する偏光分離素子として機能し、プロジェクターや光通信分野への応用が可能である。
また、以下の実施例において、コレステリック構造を用いた複屈折パターンを「コレステリックパターン」という。
(力学特性制御層用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、力学特性制御層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────―
力学特性制御層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、質量平均分子量=10万、
Tg≒70℃) 5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、
質量平均分子量=1万、Tg≒100℃) 13.74
エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
(BPE−500、商品名、新中村化学(株)製) 9.20
フッ素系界面活性剤
(メガファックF−780−F、商品名、大日本インキ化学工業(株)社製)
0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────―
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────―
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────―
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
カイラル剤(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)は、反応性基としてアクリル基を有する光学活性化合物である。
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光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 30.87
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.63
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。
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転写接着層用塗布液組成(質量%)
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ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(質量平均分子量3.8万) 8.05
アクリレート系多官能モノマー
(KAYARAD DPHA、商品名、日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
フッ素系界面活性剤
(メガファックF−176PF、商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────―
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートロールフィルム仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ16.0μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度80℃で2分間乾燥してコレステリック液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ1.5μmの光学異方性層を形成して光学異方性層塗布サンプルTRC−1を作製した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において270mW/cm2、照射量はUV−A領域において180mJ/cm2であった。TRC−1の光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
最後に、光学異方性層塗布サンプルTRC−1の上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、コレステリックパターン作製用転写材料TR−1を作製した。なお、AD−1の塗布により光学異方性層の改質が行われた。
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記コレステリックパターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(商品名:LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。ラミネート後、仮支持体を剥離してコレステリックパターン作製材料CPM―1を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―1は緑色の特性反射を示し、そのピーク波長は525nm、ピーク反射率は10%であった。また、CPM―1は昇温時に特性反射が著しく弱くなる(20℃におけるピーク反射率の30%以下のピーク反射率となる)温度を有し、その温度(特性反射消失温度)はおよそ140℃であった。
コレステリックパターン作製材料CPM−1に対して、ミカサ社製、商品名:M−3Lマスクアライナーとフォトマスクを用いて露光量30mJ/cm2でパターン露光を行った。
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、ノニオン界面活性剤含有、ポリプロピレン系消泡剤含有、商品名:T−PD2、富士フイルム(株)製)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し力学特性制御層と配向層を除去した
その後230℃のクリーンオーブンで15分のベークを行い、コレステリックパターンCP−1を作製した。
コレステリックパターンCP−1においては前述の露光時に露光された部分のみが緑色の特性反射を示し、そのピーク波長は520nm、ピーク反射率は13%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本発明の手法により、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
(光学異方性層用塗布液LC−2の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−2として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 30.67
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.83
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液としてLC−2を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−2を作製し、さらにTR−2を用いた以外はCPM―1と同様にしてコレステリックパターン作製材料CPM―2を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―2は青色の特性反射を示し、そのピーク波長は470nm、ピーク反射率は10%であった。特性反射消失温度はおよそ140℃であった。
コレステリックパターン作製材料としてCPM−2を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−2を作製した。コレステリックパターンCP−2においては前述の露光時に露光された部分のみが青色の特性反射を示し、そのピーク波長は460nm、ピーク反射率は14%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
(光学異方性層用塗布液LC−3の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−3として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 31.13
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.37
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液としてLC−3を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−3を作製し、さらにTR−3を用いた以外はCPM―1と同様にして、コレステリックパターン作製材料CPM―3を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―3は赤色の特性反射を示し、そのピーク波長は680nm、ピーク反射率は8%であった。特性反射消失温度はおよそ145℃であった。
コレステリックパターン作製材料としてCPM−3を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−3を作製した。コレステリックパターンCP−3においては前述の露光時に露光された部分のみが赤色の特性反射を示し、そのピーク波長は625nm、ピーク反射率は8%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。
(光学異方性層用塗布液LC−4の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−4として用いた。
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―
棒状液晶(LC−1−1) 31.33
カイラル剤
(Paliocolor LC756、商品名、BASFジャパン社製)
1.17
水平配向剤(LC−1−2) 0.10
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P、商品名、サンアプロ株式会社製) 0.67
重合制御剤
(IRGANOX1076、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―
光学異方性層用塗布液としてLC−4を用いた以外はコレステリックパターン作製用転写材料TR−1と同様にしてコレステリックパターン作製用転写材料TR−4を作製し、さらにTR−4を用いた以外はCPM―1と同様にして、コレステリックパターン作製材料CPM―4を作製した。コレステリックパターン作製材料CPM―4は赤色から赤外領域にかけて特性反射を示し、そのピーク波長は770nm、ピーク反射率は5%であった。特性反射消失温度はおよそ145℃であった。
コレステリックパターン作製材料としてCPM−4を用いた以外はCP−1と同様にして、コレステリックパターンCP−4を作製した。コレステリックパターンCP−4においては前述の露光時に露光された部分のみが赤色から赤外領域にかけて特性反射を示し、そのピーク波長は760nm、ピーク反射率は7%であった。一方で、未露光であった部分は特性反射を示さなくなっていた。従って、本実施例においても、露光時に任意のパターンの露光を行うことで所望のパターンを有するコレステリックパターンを得ることが可能である。赤外領域に特性反射を有するコレステリックパターンは通常は目視できないことから、隠匿情報の印刷や、背景に影響を与えたくない場合の印刷に適している。
(多層コレステリックパターンCP―5の作製)
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM−603、信越化学)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
前記コレステリックパターン作製用転写材料TR−2の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(商品名:LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクI(図4(a))を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。次いで、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った。
ベーク後の基板に対し、先程と同様の手法でコレステリックパターン作製用転写材料TR−1をラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクII(図4(b))を用いて露光量50mJ/cm2で二度目のパターン露光を行った。さらに、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った。
ベーク後の基板に対し、先程と同様の手法でコレステリックパターン作製用転写材料TR−3をラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製、商品名:M−3LマスクアライナーとフォトマスクIII(図4(c))を用いて露光量50mJ/cm2で三度目のパターン露光を行った。さらに、230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行い、本発明の多層コレステリックパターンCP―5を作製した。CP−5の概観を図5に示す。図5において、領域A〜Gはそれぞれ相異なる色の特性反射を示した。各々の領域の特性反射の色を、用いたコレステリックパターン作製用転写材料への露光の有無と関連付けて表1に示す。
────────────――――――――――─――――──――――──
用いた転写材料と露光の有無
領域 ――――――――――――――――――――――― 特性反射の色
TR−2(青) TR−1(緑) TR−3(赤)
─────────────────────―――――――――――――─
領域A 有り 無し 無し 青
領域B 無し 有り 無し 緑
領域C 無し 無し 有り 赤
領域D 有り 有り 無し 青緑
領域E 有り 無し 有り 赤紫
領域F 無し 有り 有り 黄色
領域G 有り 有り 有り 白
領域N 無し 無し 無し 反射示さず
──────────────────────――――─――――――――
12 光学異方性層
12F 第一光学異方性層
12S 第二光学異方性層
13 配向層(支持体上)
14 転写用接着層
14A 第一転写接着層
14B 第二転写接着層
14C 第三転写接着層
15 感光性樹脂層
16 後粘着層
17 剥離層
18 表面保護層
21 仮支持体
22 配向層(仮支持体上)
22F 仮支持体上第一配向層
22S 仮支持体上第一配向層
23 力学特性制御層
112 パターン化光学異方性層
112−A パターン化光学異方性層(第一露光部)
112−B パターン化光学異方性層(第二露光部)
112−N パターン化光学異方性層(未露光部)
112F―A パターン化第一光学異方性層(第一層第一露光部)
112F―B パターン化第一光学異方性層(第一層第二露光部)
112F―N パターン化第一光学異方性層(第一層未露光部)
112S―A パターン化第二光学異方性層(第二層第一露光部)
112S―B パターン化第二光学異方性層(第二層第二露光部)
112S―N パターン化第二光学異方性層(第二層未露光部)
112T―A パターン化第三光学異方性層(第三層露光部)
112T―N パターン化第三光学異方性層(第三層未露光部)
Claims (21)
- 少なくとも次の[1]〜[3]の工程をこの順に含む、複屈折パターンを有する物品の製造方法:
[1]少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を製造する工程であって、少なくとも2つの反応性基を有する少なくとも1種の棒状
液晶性化合物と少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って、重合固定化した高分子化合物を含んでなる前記光学異方性層を形成する、複屈折パターン作製材料を作製する工程;
[2]前記複屈折パターン作製材料にパターン露光を行う工程;
[3]前記工程[2]の後に得られる積層体を50℃以上400℃以下でベークする工程。 - 前記光学異方性層がコレステリック構造に起因する特性反射を示し、特性反射のピーク波長が50nm以上3000nm以下であり、かつ、ピーク反射率が2%以上100%以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記特性反射のピーク波長が300nm以上1600nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
- 前記光学異方性層のコレステリックピッチが100nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記光学異方性層が特性反射消失温度を20℃より高い温度域に有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記工程[3]が前記特性反射消失温度以上で行われる請求項5に記載の製造方法。
- 前記高分子化合物が未反応の反応性基を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記棒状液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記棒状液晶性化合物が少なくともラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基とを有する請求項8に記載の製造方法。
- 前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性の反応基がビニルエーテル基、オキセタン基およびエポキシ基から選ばれる基である請求項9に記載の製造方法。
- 前記カイラル剤の前記組成物中の対固形分濃度が0.5質量%以上20質量%以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記カイラル剤のうちの少なくとも1種が少なくとも1つの反応性基を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記光学異方性層が重合固定化された後に改質されたものである請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記改質が少なくとも1種の追加添加剤を含む溶液の接触または浸透の形で行われる請求項13に記載の製造方法。
- 前記追加添加剤の少なくとも1種が光重合開始剤であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
- 前記改質が前記光学異方性層の上に別の機能性層を積層する工程に付随して行われる請求項13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記工程[1]が、重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を含む転写材料を、被転写材料上に転写することにより行われる請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記転写材料が仮支持体の上に少なくとも[A]前記光学異方性層と[B]転写接着層を、この順で積層したものである請求項17に記載の製造方法。
- 請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、偽造防止手段として用いられる物品。
- 請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、光学素子。
- 重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有する少なくとも1種の棒状液晶性化合物と、少なくとも1種のカイラル剤とを含む組成物を塗布乾燥してコレステリック液晶相を形成した後、加熱または放射線照射を行って重合固定化した高分子化合物を含んでなる少なくとも1層の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料。
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