JP2011033783A - 押出成形体及びケーブル - Google Patents

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Nobuyuki Kangen
伸幸 諌元
Fumiyo Anno
芙美代 案納
Takafumi Imayama
貴文 今山
Keiichiro Sugimoto
圭一郎 杉本
Shinichi Niwa
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Abstract

【課題】管路に既設の電線やケーブルが多数存在しても、特別な治工具を用いることなく管路に通す布設作業が行え、作業能率を向上させられると共に通線本数も増やせるケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブル1の押出成形体である外被14を、強さと表面の動摩擦係数が適切な範囲に設定されたものとすることから、外被14の機械的特性が向上して強度を得やすくなり、強度を維持しつつケーブル断面形状を細小化でき、管路への布設に際して通線本数を増やして管路の利用効率を高められると共に、表面が他の物体と接触した場合の摩擦が極めて小さくなり、管路への布設の際に既設の電線やケーブルがあっても、管路内面や他の電線、ケーブルとの接触に伴う摩擦抵抗が小さくケーブルをスムーズに進行させられ、潤滑剤を使用せずに済むなど、管路への布設作業を能率よく実施できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、合成樹脂材を用いて押出形成される電線・ケーブル・線状体、シート状体等の押出成形体、及びこの押出成形体を外被に用いたケーブルに関する。
高速・広帯域の情報通信サービスを担う光ファイバケーブル網を、宅内やオフィスなど各通信加入者ごとに接続しようとするFTTH(Fiber To The Home)において、屋外から各加入者宅内又はビル等の建物内に光ファイバケーブルを引込む際には、屋内外にそれぞれ通じた既設のダクトやパイプ等の管路を経由させて引込むのが一般的となっている。このようなFTTHの場合を含めて、光ファイバケーブルを管路内に通す際の作業性向上を図るため、近年、管路引込み用の光ファイバケーブルとして、表面の摩擦抵抗を抑えるなどして管路への挿通性向上を図ったものが提案されている。こうした従来の光ファイバケーブルの一例として、特開2001−35265号公報や特開2007−183477号公報に開示されるものがある。
特開2001−35265号公報 特開2007−183477号公報
従来の光ファイバケーブルは前記各特許文献に示される構成となっており、ケーブルの低摩擦化が図られていたものの、光ファイバケーブルを引込もうとする既設の管路に、既に多くの電線、ケーブルが存在している場合には、ケーブル表面を低摩擦化していたとしても、管路内に新規にケーブルを引込むのは容易とはいえず、こうした管路内に光ファイバケーブルを引込む場合には、管路内にあらかじめ通したリード線を用いて光ファイバケーブルを管路の出口側から引張ることで管路内に引込む他なく、また摩擦抵抗を抑えるために光ファイバケーブル表面に潤滑剤を塗ってから管路に挿通するなどの作業も必要となることがあり、ケーブルの布設作業は難しく手間のかかるものになるという課題を有していた。
さらに、今後は通信需要の増大により管路内に光ファイバケーブルを多条布設するケースが増え、既設の光ファイバケーブルに対し後から光ファイバケーブルを追加布設することも多くなると考えられるが、従来の光ファイバケーブルにおいては、管路に多数のケーブルを通して布設する点についての検討がなされておらず、これらを用いても作業の手間を解消するには程遠く、管路に後からケーブルを追加で布設する場合に対応して光ファイバケーブルの管路への入線性を向上させることが強く求められている。
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、管路に既設の電線やケーブルが多数存在しても、特別な治工具を用いることなく管路に通す布設作業が行え、作業能率を向上させられると共に通線本数も増やせるケーブル及びこれに用いる押出成形体を提供することを目的とする。
本発明に係る押出成形体は、合成樹脂混合物を押出成形して形成される押出成形体において、JIS K 7215に基づくタイプDデュロメータ硬さ(HDD)が50ないし80、又は、引張強度が10ないし40MPaであり、表面のJIS K 7125に基づく動摩擦係数が0.05ないし0.25であるものである。
このように本発明においては、押出成形体としての強さと表面の動摩擦係数を適切な範囲に設定することにより、機械的特性が向上して強度を得やすくなり、例えば、ケーブル外被として使用すると、強度を維持しつつケーブル断面形状を細小化でき、管路への布設に際して通線本数を増やして管路の利用効率を高められると共に、表面が他の物体と接触した場合の摩擦が極めて小さくなり、ケーブル外被としては、管路へのケーブル布設の際に既設の電線やケーブルがあっても、管路内面や他の電線、ケーブルとの接触に伴う摩擦抵抗が小さくケーブルを管路内でスムーズに進行させられ、潤滑剤を使用せずに済むなど、管路への布設作業を能率よく実施できる。
また、本発明に係る押出成形体は必要に応じて、熱可塑性樹脂100重量部に対し、滑剤としてシリコーン系滑剤及び/又は脂肪酸系滑剤を滑剤全体で0.4ないし4wt%の割合で含む混合物材料からなるものである。
このように本発明においては、滑剤を所定割合で含む樹脂混合物材料から押出成形体を形成することにより、摩擦状態に係る性状を容易に適切な状態に設定でき、他の物体と接触する際における成形体表面の摩擦力を確実に小さくして、ケーブル外被に使用すると管路に対する布設作業の際の摩擦抵抗を低減して作業をより速やかに行える。
また、本発明に係る押出成形体は必要に応じて、熱可塑性樹脂100重量部に対し、粒子径1ないし20μmのフィラーを5ないし100重量部の割合で含む混合物材料からなるものである。
このように本発明においては、所定の大きさのフィラーを適度な割合で含む樹脂混合物材料から押出成形体を形成することにより、押出成形の際に樹脂の表面側へフィラーが誘因されて成形体表面に配列されることとなり、表面に存在するフィラーで摩擦に影響を与える成形体表面の性状を適切な状態に制御しやすく、表面の摩擦力を確実に小さくすると共に表面の硬度を高くでき、ケーブル外被に使用すると、低摩擦性と耐摩耗性を向上でき、管路への布設作業を無理なく速やかに行える。
また、本発明に係る押出成形体は必要に応じて、表面粗さ(Ra)を1ないし5μmとされるものである。
このように本発明においては、成型体表面における表面粗さを適度な値に設定して成形体を得ることにより、摩擦状態に係る表面性状を適切な状態とすることができ、他の物体と接触する際における成形体表面の摩擦力を確実に小さくして、ケーブル外被に使用すると、管路への布設作業の際における摩擦抵抗を低減して作業を能率よく行える。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、前記押出成形体で外被が形成され、少なくとも心線を前記外被で被覆されてなるものである。
このように本発明においては、ケーブルの押出成形体である外被を、強さと表面の動摩擦係数が適切な範囲に設定されたものとすることにより、外被の機械的特性が向上して強度を得やすくなり、強度を維持しつつケーブル断面形状を細小化でき、管路への布設に際して通線本数を増やして管路の利用効率を高められると共に、表面が他の物体と接触した場合の摩擦が極めて小さくなり、管路への布設の際に既設の電線やケーブルがあっても、管路内面や他の電線、ケーブルとの接触に伴う摩擦抵抗が小さくケーブルをスムーズに進行させられ、潤滑剤を使用せずに済むなど、管路への布設作業を能率よく実施できる。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、全体の曲げ剛性が3.2〜3.7×10-2N・m2であるものである。
このように本発明においては、心線や外被を含むケーブル全体の曲げ剛性を適切な範囲に設定していることにより、管路への布設に際して管路内を適切に進行させることができ、管路に対し押込みで布設作業を行っても確実にケーブル先端側まで押込み力を伝達して問題なく作業が行え、引張りで管路に引込む場合のようにワイヤ等をあらかじめ管路に通しておく手間が省け、布設作業の能率が大きく向上することとなる。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、前記外被が、表面にケーブル長手方向へ連続又は断続する微細凸条及び/又は凹溝を多数形成されてなるものである。
このように本発明においては、外被表面にケーブル長手方向へ連続又は断続する微細凸条及び/又は凹溝を多数形成し、他の物体と外被表面との接触面積を小さくすることにより、他の物体と接触する際の外被表面の摩擦力を確実に小さくして、管路への布設作業の際における摩擦抵抗を低減して、管路への布設作業をより速やかに行える。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、前記外被が、含有するフィラーを表面に鱗片状に配列させて形成されるものである。
このように本発明においては、外被表面にフィラーを鱗片状に配列して、表面をフィラーで被覆した状態を得ることにより、鱗片状に配置されたフィラーで適度な表面粗さを実現することとなり、外被表面の摩擦力を確実に小さくできると共に、外被表面の硬度を高められ、ケーブルの耐摩耗性についても向上させられ、管路への布設作業で外被の摩耗も生じず、作業後もケーブルの品質を維持できる。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、前記外被が、略円断面形状として形成されると共に、外被外周面を螺旋状に取巻く配置でケーブル長手方向へ連続又は断続する切裂き用溝を設けられるものである。
このように本発明においては、外被の断面形状を略円形状とすると共に、螺旋状の外被切裂き用溝を表面に設けて、外被表面と他物体が並行してそのまま接触しようとする際に周期的にあらわれる切裂き用溝が連続した接触面の形成を妨げることにより、外被表面と他物体とが密着しにくくなることとなり、他の物体と外被表面との摩擦を抑えて、管路への布設作業の際における摩擦抵抗を低減でき、略円形の断面形状で管路内空間での占有スペースを小さく抑えられることと相俟って、管路への布設作業をより速やかに行える。
また、本発明に係るケーブルは必要に応じて、前記心線と共に外被に被覆されて心線と平行をなして配設される一本の補強線を備え、前記外被が、前記補強線の位置を外被中心からずらして配置すると共に、心線位置を外被中心から補強線寄りに偏心させて配置する被覆形態とされるものである。
このように本発明においては、心線に対し一本の補強線が並行して配設され、共に外被に覆われてケーブルをなす場合に、補強線の位置を外被中心からずらすことに加え、心線位置を外被中心から補強線寄りに偏心させ、補強線のない部位の心線に対する外被厚みを確保することにより、ケーブルの断面形状における補強線と心線及び外被の配置バランスのとれた状態を確保でき、補強線の影響でケーブル全体が歪むこともなく、外被と補強線で心線を安定して保持する仕組みが簡略な構造で実現し、ケーブルとしてのコストダウンが図れる。
本発明の第1の実施形態に係るケーブルの横断面図及び要部拡大縦断面図である。 本発明の第1の実施形態に係るケーブルの他例の斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係るケーブルの横断面図及び斜視図である。 本発明の実施例における通線性評価試験を行った管路の概略構成説明図である。
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るケーブルを前記図1に基づいて説明する。本実施形態においては、ケーブルとして管路引込用光ファイバケーブルの例について説明する。
前記各図において本実施形態に係るケーブル1は、一本の光ファイバ心線11と、この光ファイバ心線11の両側に配設される鋼製の二本の補強線12と、これら光ファイバ心線11と補強線12とを被覆する外被14とを備え、光ファイバ心線11の中心位置と補強線12中心とを結ぶ線と略平行や略直角をなす辺を有する略矩形断面形状として形成される構成である。
前記外被14は、合成樹脂混合物を押出成形して形成されるものであり、詳細には、熱可塑性樹脂をベース樹脂とし、これに滑剤やフィラー、難燃剤、酸化防止剤、顔料等を添加して樹脂混合物を生成し、この樹脂混合物を光ファイバ心線11、及び補強線12の周囲に押出被覆成形することで得られるものである。
この外被14の表面には、ケーブル長手方向に溝状に連続する略V字状断面形状の二つのノッチ13が、光ファイバ心線11の中心位置と補強線12中心とを結ぶ線を中心として対称となる配置で設けられる。このノッチ13は、外被14から光ファイバ心線11を引き出す場合における切開作業の起点となる他、ケーブル1における適度な屈曲性を付与したり、ノッチ13の分だけ外被14側面を狭くして他物体との接触面積を極力抑え、摩擦抵抗を小さくする働きも有している。
外被14をなす熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、特に高密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを所定割合で混合したもの等が好ましい。このオレフィン系樹脂100重量部に対して、フィラーが5ないし100重量部、滑剤が0.5ないし8重量部の各割合で混練されることとなる。最終的に押出成形で得られた外被14の比重は、使用可能な材料の範囲で従来の外被に対し軽量化を図る点から、0.9ないし1.5となるのが好ましい。
前記フィラー15としては、タルク等を入れるが、その粒子径は1ないし20μmが好ましい。粒子径が1μm未満では成形体表面に鱗片状に配列できず摩擦抵抗の低減が困難であり、また粒子径が20μmより大では押出し成形される外被14の形状を悪化させると共に引張強度を低下させることとなる。
前記滑剤としては、熱可塑性樹脂100重量部に対し、シリコーン系滑剤及び/又は脂肪酸系滑剤を滑剤全体で0.4ないし4wt%(又は0.5ないし8重量部)の割合で含むこととなる。
これらの合成樹脂混合物を押出成形して得られた押出成形体としての外被14については、JIS K 7215に基づくタイプDデュロメータ硬さ(HDD)が50ないし80、又は、引張強度が10ないし40MPaとなるようにする。これについては、ケーブルとしての必要最小限の強度を確保するために、硬さを50以上、引張強度を10MPa以上とする一方、ケーブルの適切な屈曲性を獲得すると共に光ファイバ心線11の引出しの際に外被14の切開作業を容易且つ確実に行えるようにするため、硬さを80以下、引張強度を40MPa以下とすることによる。また、後述する実施例で示すように、外被14の表面粗さ(Ra)は1ないし5μmであり、表面のJIS K 7125に基づく動摩擦係数は0.05ないし0.25となる。
そして、この外被14を含むケーブル全体の曲げ剛性は、ケーブル布設作業における作業能率の点から、3.2〜3.7×10-2N・m2とするのが望ましい。
次に、本実施形態に係るケーブルの表面状態について説明する。ケーブルの製造にあたっては、まず前記配合比で外被14となる熱可塑性樹脂混合物を混練生成し、この熱可塑性樹脂混合物を押出機において10m/分〜500m/分の押出し速度で押出し、光ファイバ心線11や補強線12の周囲に押出被覆してケーブル50を形成する。なお、押出の際に同時に外被14表面に生じさせるノッチ13を、略V字状の単純な断面形状としていることで、ノッチの生成に無理が無く、押出成形によるケーブル製造が容易に行える。
高密度ポリエチレンをベース樹脂とする熱可塑性樹脂混合物中に混練されたタルク等のフィラー15は、1μm〜20μmの粒子径のものを選定されているので、熱可塑性樹脂混合物の押出成形される過程で表面側にフィラー15が誘引され、このフィラー15が成形された外被1表面において鱗片状に配列されることとなる(図1(B)参照)。こうしてフィラー15が鱗片状に配列されることで、外被14の表面硬度を高くすると共に適切な表面粗さとなり、滑性(低摩擦性)及び耐摩耗性を向上させたケーブルとすることができる。
続いて、本実施形態に係るケーブルの管路への布設作業について説明する。ケーブル布設対象の管路に対し、管路の入口からケーブル1を治具や工具なしにそのまま押入れていき、押込んで管路出口までケーブル1を進めていく。管路内に既設のケーブルがあっても、外被14表面が高い滑性及び耐摩耗性を備え、管路内でのケーブル等他物体との接触面積を小さくして摩擦抵抗を小さくでき、且つ適度な剛性を有するケーブル1はそのまま押込めば、管路内面と既設ケーブルとの間隙をスムーズに通っていき、押込み力を過度に加えなくてもケーブルを無理なく確実に管路に布設できることとなる。こうしてケーブル1を布設する過程で、工具を一切使用せずに済ませることとなり、作業を迅速且つ容易に進められると共に、光ファイバ心線11に対して損傷などの悪影響を与えることはほとんどない。
このように、本実施形態に係るケーブルは、滑剤やフィラーを適切な割合で含み、押出成形体としての強さと表面の動摩擦係数を適切な範囲に設定した外被14を備え、また、心線11や補強線12も含むケーブル全体の曲げ剛性を適切な範囲に設定していることから、外被14の機械的特性が向上して強度を得やすくなり、強度を維持しつつケーブル断面形状を細小化でき、管路への布設に際して通線本数を増やして管路の利用効率を高められると共に、表面が他の物体と接触した場合の摩擦力が極めて小さくなり、管路への布設の際に既設の電線やケーブルがあっても、管路内面や他の電線、ケーブルとの接触に伴う摩擦抵抗が小さくケーブルをスムーズに進行させられ、且つ管路に対し押込みで布設作業を行っても確実にケーブル先端側まで押込み力を伝達して問題なく作業が行え、ワイヤ等をあらかじめ管路に通したり潤滑剤をケーブル表面に塗布する手間が一切不要となり、管路へのケーブル布設作業を能率よく実施できる。
なお、前記実施形態に係るケーブルにおいて、光ファイバ心線11が一本のみ中心部に配置される構成としているが、これに限らず、光ファイバ心線が複数本並べて配置されたりなど、光ファイバ心線の数やその並べ方は外被で適切に被覆してケーブルを形成可能な範囲で適宜設定することができる。また、光ファイバ心線についても、単心の光ファイバ心線を一又は複数本配置する構成に限らず、複数本の光ファイバが共通被覆で一体となった束状やテープ状の心線を一又は複数組配置する構成とすることもできる。
また、前記実施形態に係るケーブルにおいて、外被14表面の形状は特に設定していないが、図2に示すように、外被の表面をケーブル長手方向に微細な凸条や凹溝が連続する形状とすることもでき、管路内面や他のケーブル外面との接触面積を小さくして摩擦抵抗をさらに減らし、ケーブルを管路に押込む力を下げることができるなど、布設における作業性の向上が図れる。
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図3に基づいて説明する。本実施形態においても管路引込用光ファイバケーブルの例について説明する。図3は本実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図及び斜視図である。
前記図3において本実施形態に係るケーブル2は、前記第1の実施形態同様、光ファイバ心線21と、補強線22と、外被24とを備える一方、異なる点として、補強線22が一本のみとされ、外被24が略円断面形状として形成されると共に、外被24の外周面を螺旋状に取巻く配置でケーブル長手方向へ連続又は断続する前記切裂き用溝としてのノッチ23を設けられ、またこの外被24が、補強線22の位置を外被中心からずらして配置し、且つ光ファイバ心線11位置を外被中心から補強線22寄りに偏心させて配置する被覆形態とされる構成を有するものである。補強線22の数と光ファイバ心線21との位置関係、及び外被24の形状以外の点については、前記第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
前記外被24は、断面形状を長円や楕円形状も含む略円形状とされると共に、螺旋状のノッチ23をその外周面に設けられてなり、外被24表面と他物体が並行してそのまま接触しようとする際に周期的にあらわれるノッチ23が連続した接触面の形成を妨げることから、外被24表面と他物体とが密着しにくくなることとなり、他の物体と外被24表面との摩擦を抑えて、管路への布設作業の際における摩擦抵抗を低減でき、管路への布設作業をより速やかに行える。
また外被24は、光ファイバ心線21と補強線22の被覆状態で、補強線22の位置を外被24の略円断面の中心から大きくずれた位置とすると共に、光ファイバ心線21の位置についても、略円断面の中心から補強線22位置寄りにずれた、すなわち偏心させた位置として固定一体化している。光ファイバ心線21位置を中心に考えると、心線に対し補強線22の存在する側での外被24の厚みL1が、補強線22の存在しない側での外被24の厚みL2よりも小さくなっており、ケーブルの張力を受ける高強度の補強線22がない方の外被厚みを十分に確保することで、ケーブル2の略円断面形状における光ファイバ心線21に対する補強線22と外被24の強度のバランスのとれた状態を確保でき、補強線22を一本としてもケーブルの歪みを招かず、外被24と補強線22で光ファイバ心線21を安定して保持する仕組みが補強線22を一本とした簡略な構造で実現し、ケーブルとしてのコストダウンが図れる。なお、ケーブル全体の曲げ剛性としては、補強線が一本となっても、前記第1の実施形態と同様、3.2〜3.7×10-2N・m2とするのが好ましい。
本実施形態に係るケーブルの管路への布設においては、前記第1の実施形態と同様、通線対象の管路に対し、管路の入口からケーブル2を治具や工具なしにそのまま押入れて管路出口までケーブル2を進めていくこととなる。ケーブル2として略円形の断面形状を有していることで、管路内空間での占有スペースを小さく抑えられ、管路内面と既設ケーブルとの間隙をスムーズに通して、ケーブル2を無理なく確実に管路に布設でき、こうした管路への布設作業を経ても、光ファイバ心線21に損傷などの悪影響が生じることはない。
本発明のケーブルの管路への布設に係る諸性能を確認するための評価試験を実施し、比較例としての従来構成ケーブル等の試験結果と比較評価した。
まず、光ファイバケーブルの外被材料について、フィラーの大きさ及び配合量の違いに基づく引張強度、硬度、動摩擦係数等の性質の差異を比較し、外被の機械的特性に与えるフィラー配合の影響を評価した。ただし、フィラー配合の影響を適切に判断するために、滑性付与剤は配合していない。
評価試験としては、前記第1の実施形態と同じベース樹脂に、大きさの異なる三種類のフィラー(粒径10μm、0.5μm、30μm)を配合量を変えて配合した各材料と、比較例としての従来の光ファイバケーブルの外被材料(日本ユニカー株式会社製NUC−9739を使用)について、引張強度、硬度、及び低摩擦性試験を行うと共に、表面粗さを測定した。
このうち、硬度については、JIS K 7215に準拠した硬度計でタイプDデュロメータ硬さ(HDD)を求めた。
また、低摩擦性試験は、JIS K 7125に準拠したもので、試験片として外被と同じ材質のシート(70mm×150mm)2枚を用い、これらシートを重ねた状態で上に200gの錘を載せ、この錘の加圧状態で上側のシートを500mm/minの速度で引張り、摩擦力を測定して動摩擦係数を得た。これら引張強度、硬度、及び低摩擦性試験の結果及び表面粗さの測定値を、各配合例及び比較例の主要配合内容と共に、表1に示す。
Figure 2011033783
表1より、0.5μmのフィラーを配合した場合、フィラーを配合しない場合と比べて動摩擦係数の改善効果が見られず、また、30μmのフィラーを配合した場合、フィラーを配合しない場合と比べて引張強度の低下が著しいことがわかる。一方、10μmのフィラーを配合した場合、フィラーを配合しない場合と比べて動摩擦係数の改善効果が見られ、また配合量90重量部までは引張強度10MPaを上回って十分な強度が得られていることがわかる。この10μmのフィラーを110重量部配合した場合に、引張強度が9MPaであることから、このフィラーの配合量が100重量部までは引張強度10MPa以上となることが見込まれる。これにより、0.5μmより大きく30μmより小さい範囲、すなわち、おおよそ1〜20μmの範囲のフィラー、特に10μmのフィラーを、5ないし100重量部配合すれば適切な引張強度を確保しつつ、動摩擦係数を改善して摩擦抵抗を抑えられることとなり、さらに滑性付与剤を配合すれば、より一層の動摩擦係数の低減が期待できる。また、このフィラーを5ないし100重量部配合して引張強度と動摩擦係数が適度な値となる場合、表面粗さの値は約1〜5μmの範囲に、硬度の値は50ないし80の範囲にそれぞれあり、各値が低過ぎても高過ぎても悪影響を及すことがわかる。
次に、光ファイバケーブルの外被材料について、滑性付与剤の種類及び配合量の違いに基づく引張強度、硬度、動摩擦係数等の性質の差異を比較し、外被の機械的特性に与える滑性付与剤配合の影響を評価した。
評価試験としては、実施例としての前記第1の実施形態に係る光ファイバケーブルC、Dと、前記第1の実施形態と同じベース樹脂で配合を少しずつ変えた外被とした三種類の光ファイバケーブルA、B、及びEの各外被材料、及び、同じベース樹脂で滑性付与剤を配合しないもの(材料O)について、前記同様、引張強度、硬度、及び低摩擦性試験を行った。これら引張強度、硬度、及び低摩擦性試験の結果を、各実施例及び比較例の主要配合内容と共に、表2に示す。なお、いずれの配合例においても、フィラーは10μmのものを40重量部配合している。
Figure 2011033783
表2より、滑性付与剤を配合したものはいずれも十分に低い動摩擦係数の値が得られており、滑性付与剤の配合がフィラーの配合と相俟って動摩擦係数を低減することがわかる。ただし、滑性付与剤の総配合量が4.5wt%である材料Eの場合、引張強度も8MPaと低下して十分な強度が得られていないことから、滑性付与剤の総配合量には上限値があり、滑性付与剤の総配合量が3.8wt%である材料Dの場合に引張強度が13MPaであることから、引張強度が10MPa以上となる滑性付与剤の配合上限値は約4wt%と考えられる。また、滑性付与剤の配合下限値は、滑性付与剤を配合していない例と0.5wt%配合した例の動摩擦係数の各値と、摩擦抵抗が小さいといえる動摩擦係数の上限値(0.25)との関係から、約0.4wt%であると考えられる。
続いて、前記実施例の光ファイバケーブルC、Dと、比較例となる従来の光ファイバケーブル及び前記光ファイバケーブルA、Bについて、曲げ剛性を求めて比較評価を行った。
曲げ剛性は、JIS C 6851に準拠して、光ファイバケーブルを平行な固定板と可動板との間にU字状に曲げて配置し、二枚の板にそれぞれ接するケーブルの中心間の距離が60mmとなった状態での可動板に加わるケーブルからの反力を測定し、算出した。
なお、前記実施例の光ファイバケーブルCと、比較例の光ファイバケーブルBについては、補強線の径を従来の光ファイバケーブルと同じにしたもの(C’、B’)についてもそれぞれ曲げ剛性を求めた。
さらに、曲げ剛性を求めた前記7種類の光ファイバケーブルについて、管路への通線性評価試験を行った。この通線性評価試験は、図4に示す配置の、内径22mm、曲り箇所の曲げ半径約132mmの管路内に既設ケーブルとして外径8mm、φ0.5×30対のメタルケーブル(外被PVC、PE)をあらかじめ挿通した状態で、この管路の一端から試験対象となる光ファイバケーブルを押込むようにして布設作業を実行する。この管路へのケーブル布設は実際の作業に対応させて人手で行い、管路に通線可能であった本数を確認した。この試験結果及び前記曲げ剛性の値を合せて表3に示す。なお、従来の光ファイバケーブル以外のケーブルは、幅約2mm、厚さ約1.6mm、心線径0.25mmのものを使用した。
Figure 2011033783
表3から、実施例の光ファイバケーブルはいずれも比較例である各ケーブルに対して通線本数が30本以上と多くなっており、従来の管路出口側からの引張りによる布設で通線可能な本数(20本)に比べても良好な結果となっている。この通線本数については、低摩擦性試験で得られた動摩擦係数と同様の傾向を示しており、動摩擦係数が小さいほど管路への入線の抵抗が小さくなって通線本数を多くできることがわかる。なお、実施例と同じ外被を有して補強線の径のみ変えたものについても、通線本数は実施例と同じ結果が得られているが、この例では、実施例と比較して1.7倍の作業時間がかかっており、光ファイバケーブルBと補強線の径を変えたものとの通線本数の差にも見られるように、ケーブルの曲げ剛性が適切な範囲にないと作業能率向上にはつながらないことがわかる。
1、2 光ファイバケーブル
11、21 光ファイバ心線
12、22 補強線
13、23 ノッチ
14、24 外被
50 管路

Claims (10)

  1. 合成樹脂混合物を押出成形して形成される押出成形体において、
    JIS K 7215に基づくタイプDデュロメータ硬さ(HDD)が50ないし80、又は、引張強度が10ないし40MPaであり、
    表面のJIS K 7125に基づく動摩擦係数が0.05ないし0.25であることを
    特徴とする押出成形体。
  2. 前記請求項1に記載の押出成形体において、
    熱可塑性樹脂100重量部に対し、滑剤としてシリコーン系滑剤及び/又は脂肪酸系滑剤を滑剤全体で0.4ないし4wt%の割合で含む混合物材料からなることを
    特徴とする押出成形体。
  3. 前記請求項1又は2に記載の押出成形体において、
    熱可塑性樹脂100重量部に対し、粒子径1ないし20μmのフィラーを5ないし100重量部の割合で含む混合物材料からなることを
    特徴とする押出成形体。
  4. 前記請求項1ないし3のいずれかに記載の押出成形体において、
    表面粗さ(Ra)を1ないし5μmとされることを
    特徴とする押出成形体。
  5. 前記請求項1ないし4のいずれかに記載の押出成形体で外被が形成され、少なくとも心線を前記外被で被覆されてなることを
    特徴とするケーブル。
  6. 前記請求項5に記載のケーブルにおいて、
    全体の曲げ剛性が3.2〜3.7×10-2N・m2であることを
    特徴とするケーブル。
  7. 前記請求項5又は6に記載のケーブルにおいて、
    前記外被が、表面にケーブル長手方向へ連続又は断続する微細凸条及び/又は凹溝を多数形成されてなることを
    特徴とするケーブル。
  8. 前記請求項5又は6に記載のケーブルにおいて、
    前記外被が、含有するフィラーを表面に鱗片状に配列させて形成されることを
    特徴とするケーブル。
  9. 前記請求項5ないし8のいずれかに記載のケーブルにおいて、
    前記外被が、略円断面形状として形成されると共に、外被外周面を螺旋状に取巻く配置でケーブル長手方向へ連続又は断続する切裂き用溝を設けられることを
    特徴とするケーブル。
  10. 前記請求項5ないし9のいずれかに記載のケーブルにおいて、
    前記心線と共に外被に被覆されて心線と平行をなして配設される一本の補強線を備え、
    前記外被が、前記補強線の位置を外被中心からずらして配置すると共に、心線位置を外被中心から補強線寄りに偏心させて配置する被覆形態とされることを
    特徴とするケーブル。
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