JP2011032849A - 免震装置用ブレーキダンパ - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の戸建住宅免震装置は、想定を超える大地震時に相対変位が免震支承の許容ストロークを越えてしまい、上部建物が飛び出して倒壊に至るおそれがあるため、電力を用いることなく、免震支承の許容ストローク内に確実に抑制出来る免震装置用のブレーキダンパを提供する。
【解決手段】シリンダ11のピストン13が変位するに伴い、供給された油圧により減衰力を発生するスピードバル51と、ピストン13の速度が設定速度以上に早くなるとスピードバルブ51が閉じて、高い減衰力を発生するリリーフバルブ55を備える。
【選択図】図4
【解決手段】シリンダ11のピストン13が変位するに伴い、供給された油圧により減衰力を発生するスピードバル51と、ピストン13の速度が設定速度以上に早くなるとスピードバルブ51が閉じて、高い減衰力を発生するリリーフバルブ55を備える。
【選択図】図4
Description
本発明は、免震支承と併用して免震装置を構成し、大地震に対してもエネルギーを吸収して上部建物の支障が免震装置から飛び出さない免震装置用ブレーキダンパに関する。
免震装置の免震支承は、転がり支承や滑り支承などで構成されており、基礎と上部建物の間に配置され、上部建物を支持するとともに、地震時には、上部建物と基礎との間の水平方向の相対変位を生じることで上部建物への地震の揺れを低減する機能を有する。また、免震支承だけでは、想定を越える大地震時に基礎と上部建物との相対変位が免震支承の許容ストロークを越えてしまい、上部建物が飛び出して倒壊に至るおそれがある。ブレーキダンパは、そのような事態を回避するために設けられており、地震時のエネルギーを吸収し、減衰させることによって、基礎と上部建物との相対変位を抑制する機能を有する。このような特性を有する従来の免震装置として、例えば特許文献1、2に開示されたものが知られている。
特許文献1の免震装置では、オイルダンパの2つのシリンダ室を連通するオイル流路が設けられるとともに、シリンダの両端部に、オイル通路とシリンダを連通する大小2つの絞りがそれぞれ形成されている。オイルダンパがストロークエンドに達した時に、大きい方の絞りのみがピストンまたはピストンロッドで閉じられ、オイル流路の絞り度合が高められることによって、オイルダンパの減衰力がより大きく制御される。しかし、オイルダンパの減衰力は、ストロークエンドの状態の時のみ増大し、ストロークエンドから離れるとすぐに、大きい方の絞りが開放されることで、通常の減衰力に低下する。このため、大地震の継続中、高い減衰力を保持できず、大地震に対して免震機能を十分に発揮することができない。
特許文献2には、常時は、オイルダンパの油圧シリンダの作動状態をロックするとともに、所定の加速度以上の地震が生じた時に、油圧シリンダを作動させることにより減衰性能を発揮させるトリガー装置を備えたオイルダンパが開示されている。しかし、微小地震や風などの外力に対してオイルダンパを停止状態にロックし、微小地震以外の地震の発生時にオイルダンパを作動させるにすぎないため、小・中地震および想定を越える大地震の双方に対して、免震機能を過不足なく効果的に発揮することができない。
免震装置用のオイルダンパに求められる最も重要な機能は、想定される中・小地震に対して、必要な減衰性能を発揮するとともに、想定を越える大地震に対しても、十分な減衰性能および免震機能を発揮することによって、建物の損傷や破損を防止しなければならない。
したがって、本発明は、電力を用いることなく、想定を越える大地震時に基礎と上部建物との相対速度が想定以上に大きくなるとダンパの減衰力を大きく増強するとともに、増強した減衰力を地震の継続中は保持し、それにより、基礎と上部建物との間の相対変位を免震装置の許容ストローク内に確実に抑制することで、上部建物の損傷や破損を防止することができる免震装置用のブレーキダンパを提供することを目的とする。
この目的を達成するため、本発明は、免震支承との併用により免震装置を構成し、通常の地震では通常の減衰性能を発揮し、大地震に基礎と上部建物との相対速度が想定以上に大きくなるとダンパの減衰力を大きく増強し地震の揺れのエネルギーを吸収し、減衰させる免震装置用のブレーキダンパであって、基礎および上部建物の一方に連結されたシリンダと当該シリンダ内に摺動自在に設けられ当該シリンダ内を左右2つの油室に仕切るピストン、と前記ピストンと一体に設けられ前記基礎および前記上部建物の他方に連結されたピストンロッドとを有する当該シリンダ、および前記ピストン速度に相応して減衰力を発生するスピードバルブを備えることを特徴とする。
この免震装置用の、ブレーキダンパは、地震時に基礎と上部建物との間に相対変位が生じると、シリンダのピストンおよびピストンロッドが変位し、シリンダ内の作動流体がスピードバルブに供給される。この作動流体の時間当たりの変化即ち流量はシリンダとピストンとの相対速度に比例し、基礎と上部建物との間の相対速度に依存する。この作動流体は全開状態のフローバルブのスプールエッジを通過して油圧回路の低圧側へ流れ、スプールエッジ前後に圧力差が生じる。圧力差はスプールエッジを通過する流量即ちピストン速度に依存しているのでピストン速度が早い程、増大する。本発明はこのピストン速度即ち、地震時の基礎と上部建物の相対速度をスピードバルブにより検知し、圧力差を利用することにある。
この圧力差は、別回路のチェックバルブとニードルバルブを通過してフローバルブのスプールの片側端面にパイロット圧力として掛ってスプールの押し力となり、反対側端面に配置されたスプリングの反力と対抗する。ピストン速度がある設定速度値を越えない場合には、スプリングの初期設定反力が勝り、スプールは全開を保ち、開口面積による減衰特性を発揮する。ピストン速度が早くなり設定速度を越えるとパイロット圧力がスプール押し力に勝り、スプールは閉じ始め、スプールは全閉してリリーフバルブが開き始め、リリーフバルブ特性による減衰力が保持される。一旦全閉したスプールはパイロット圧力が抜ける間は閉状態を保つ。閉保持時間中は、ピストン速度が設定速度値以下になった時でも、減衰力特性はリリーフバルブ特性を保つ。全閉保持時間は、ニードルバルブの開度調整によるパイロット圧力の戻り流れの調整により行い、地震継続中はリリーフバルブ特性による高い減衰力を保ち続け、基礎と上部建物の相対変位を押さえることで免震支承の許容ストローク内に抑えることが可能となる。地震後はフローバルブのスプールの片側端面に加わっているパイロット圧力がニードルバルブから少しずつ抜けることで、フローバルブは初期の状態に戻り、ブレーキダンパも当初の特性となることで、余震の時に免震装置として備えることが可能となる。
本発明によるブレーキダンパは、免震装置の基礎と上部建物の相対速度をダンパのピストン速度として検知し、創出する圧力を使うことにより、外部制御などを一切使わずにみずからの減衰力特性を可変制御するため、想定を越える大地震時に発生する停電や検出器などによるトラブルを受けずに信頼性の高い免震装置用のブレーキダンパを提供し、基礎と上部建物との相対変位を免震支承の許容ストローク内に収めることができる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用したブレーキダンパ10と免震支承3で構成される兔震装置を、戸建住宅建物の基礎1に設けた例を示している。この例では、免震支承3は、計10個、基礎1の全体にマトリックス状に配置されている。ブレーキダンパ10は、左右2個ずつ計4個配置されている。
図2は、上部建物2の土台6の下側には、鉄骨架台9が一体に設けられている。免震支承3は、滑りタイプのものであり、鉄骨架台9の下面に取り付けられた滑り下面3aと、基礎1上に設けられ、滑り下面3aが滑る滑り面4を備えている。
一方、ブレーキダンパ10は、鉄骨架台9の下面に固定されたブラケット7と、基礎1の上面に固定されたブラケット8の間に設けられている。
図3〜図4は、本発明の実施形態によるブレーキダンパ10を示している。ブレーキダンパ10は、水平なシリンダ11とシリンダ11内に自在に設けられたピストン13とピストン13から片側に一体に延びるピストンロッド12を有している。シリンダ11の内部はピストン13によって左右の油室A、Bに仕切られ、ピストン13にはチェックバルブ21が組み込まれている。シリンダ11の外側には更に円筒パイプ14が設けられて内部の流体のタンク室Cを形成し片側端部は軸受け23、ピン25、および固定金具24を介して、ブラケット8に回動自在に連結されている。ピストンロッド12の先端にも同様な、軸受け23、ピン25、および固定金具24を介して、ブラケット7に回動自在に連結されている。
シリンダ11の油室Aは、スピードバルブ51とリリーフバルブ55に接続し、油室Bは油圧回路低圧側タンク室Cとチェックバルブ22を介して接続している。さらに、スピードバルブ51はフローバルブ52、チェックバルブ53、ニードルバルブ54からから成る。フローバルブ52のスプール52aの片側端面には、並列に接続されたチェックバルブ53、ニードルバルブ54からのパイロット圧力が導かれてスプール52aの押し力となり、スプール52aの反対側端面に設置されたスプリング52bのスプリング反力と対抗する。
以上の構成によれば、地震時に基礎1と上部建物2の間に相対変位が発生すると、ブラケット7に連結されたピストンロッド12およびピストン13がブラケット8に連結された円筒パイプ14の内部に設けられたシリンダ11に対して変位する。ピストン13が右側(圧縮)に変位した場合、右側の油室Bの流体は、チェックバルブ22が閉じるため、ピストンロッド12の押し込まれた体積分はピストン13に設けられたチェックバルブ21を通って油室Aに流れ、スピードバルブ51とリリーフバルブ55に流れる。初期状態では、リリーフバルブ55は全閉で、スピードバルブ51は全開であるため、流体はフローバルブ52のスプール52aのエッジを通って油圧回路の低圧側のタンク室Cに戻る。
基礎1と上部建物2の間の相対速度が早くなり、ダンパ内の流体の流速が増加するに伴い、スプール52aのエッジ前後の圧力差も増大し、パイロット圧力が増大する。パイロット圧力が増大するに伴い、スプール52aの押し力が増大し、ピストン13の速度が速度設定値V1を越えると、スプール52aの押し力はスプリング52bの初期設定反力に勝り、スプール52aは閉じ方向に移動し始める。さらに、流量が増加し、ピストン13の速度が速度設定値V2に達するとスプール52aは全閉し、更に、流量が増加すると、リリーフバルブ55のポペット55aが開き始める。スプール52aが、一旦全閉すると、スプール52aの片側端面のパイロット圧力は封じ込められて、その圧力を保ち、圧力保持時間は、ニードルバルブ54の開度調整により自在に調整できるため、地震継続中は全閉保持時間を確保できる。従って、スプール52aが一旦全閉すると、地震継続中は、ピストン13の速度が設定値V2以下になった場合でも、リリーフバルブ55の特性から得られる大きな減衰力F2以上を保持することができる。
次に、ピストン13が左側(伸び)に変位した場合、左側の油室Aの流体はピストン13のチェックバルブ21が閉じてスピードバルブ51に流れ、右側の油室Bはチェックバルブ22を介して油圧回路低圧側タンク室Cの流体を吸込む。左側の油室Aから流れる流体は、前出説明の通りである。
この例の場合は、シリンダ11の油室Aの面積と油室Bの面積を1:2にしておくことにより、ロッド12の圧縮、伸びのいずれでも、同じ減衰力を得られることは公知である。
図5は、上述したブレーキダンパのF−V特性であり、ブレーキダンパの減衰特性を示す。横軸にピストン速度V、縦軸に減衰力Fを示している。図5によると、ピストン13の速度が速度設定値V1を越えない範囲では、減衰力は減衰力設定値F1として減衰力を非常に小さくもでき、また、スプリング52bの設定を変えることで大きくも出来る。速度設定値V1を越えるとスプール52aが閉じ方向に移動して減衰力が増加し、減衰力はF1からF2と増大する。ピストン速度が一旦速度設定値V2を越えると、スプール52aが閉じてリリーフバルブ55のリリーフ特性に従い減衰力値はF2以上となり大きな減衰力を保持し免震装置に対してブレーキ特性を発揮する。なお、ブレーキ特性の保持時間は、スプール52aの片側端面に封じ込められたパイロット圧をニードルバルブ54の開度調整により抜くことで、徐々にスプール52aを開の状態に調整でき、増大したブレーキ特性の保持時間も調整することが出来る。
1 基礎
2 上部建物
3 免震支承
10 プレーキダンパ
11 シリンダ
12 ピストンロッド
13 ピストン
14 円筒パイプ
51 スピードバルブ
52 フローバルブ
52a フローバルブのスプール
52b フローバルブのスプリング
53 チェックバルブ
54 ニードルバルブ
55 リリーフバルブ
A 油室
B 油室
C タンク室
2 上部建物
3 免震支承
10 プレーキダンパ
11 シリンダ
12 ピストンロッド
13 ピストン
14 円筒パイプ
51 スピードバルブ
52 フローバルブ
52a フローバルブのスプール
52b フローバルブのスプリング
53 チェックバルブ
54 ニードルバルブ
55 リリーフバルブ
A 油室
B 油室
C タンク室
Claims (3)
- 免震支承との併用により免震装置を構成し、地震時の基礎と上部建物の相対変位を抑制するために、地震の揺れのエネルギーを吸収し、減衰させる免震装置用のブレーキダンパであって、前記基礎および前記上部建物の一方に連結されたシリンダと当該シリンダ内に摺動自在に設けられ、当該シリンダ内を左右2つの油室に仕切るピストン、と前記ピストンと一体に設けられ前記基礎および前記上部建物の他方に連結されたピストンロッドとを有する当該シリンダ、および前記ピストンの速度に相応して減衰力を発生するスピードバルブとリリーフバルブを備えることを特徴とする免震装置用のブレーキダンパ。
- 当該スピードバルブは、フローバルブ、チェックバルブ、ニードルバルブから成り、スピードバルブは前記ピストンの速度に相応してパイロット圧力を創出し、パイロット圧力は前記チェックバルブとニードルバルブを並列に設けた通路を通り、前記フローバルブの初期全開状態スプールの片側端面に導かれ、スプールの反対側端面に配置されたスプリングと対抗してスプールを作動する、請求項1に記載の免震装置用のブレーキダンパ。
- 当該スピードバルブは、前記ニードルバルブの開度によるパイロット圧力の戻り流れの調整によりパイロット圧力保持時間を調整する、請求項1、2に記載の免震装置用のブレーキダンパ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009193639A JP2011032849A (ja) | 2009-08-03 | 2009-08-03 | 免震装置用ブレーキダンパ |
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JP2009193639A JP2011032849A (ja) | 2009-08-03 | 2009-08-03 | 免震装置用ブレーキダンパ |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013217437A (ja) * | 2012-04-09 | 2013-10-24 | Kayaba System Machinery Kk | 液圧ダンパ |
JP2017096433A (ja) * | 2015-11-26 | 2017-06-01 | 株式会社大林組 | ダンパー |
JP2017166623A (ja) * | 2016-03-17 | 2017-09-21 | 鹿島建設株式会社 | 油圧装置、油圧ダンパ、制震構造及び免震構造 |
WO2019044808A1 (ja) * | 2017-08-31 | 2019-03-07 | Kyb株式会社 | シリンダ装置および鉄道車両用制振装置 |
-
2009
- 2009-08-03 JP JP2009193639A patent/JP2011032849A/ja active Pending
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