JP2011032384A - ゴム組成物および制振材 - Google Patents

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Abstract

【課題】加硫時間が短く、減衰性の高い制振材を実現することができるゴム組成物の提供。
【解決手段】架橋可能なゴム成分(A)100質量部と、シラノール基を有する無機充填剤(B)10〜100質量部と、カルボキシ基を有し、ガラス転移温度が30℃超の脂肪族ポリエステル樹脂(C)0.1〜30質量部と、前記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の前記カルボキシ基と反応しうる官能基を有するシランカップリング剤(D)0.5〜10質量部とを含有するゴム組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物および制振材に関する。
車両や船舶等の機械の振動を防止したり、建築物の床や防音装置に使用したり、橋梁の支承やビルの免震装置に使用したりする部材として、種々のゴム組成物からなる制振材が開発されている。そして、このような部材には、振動エネルギーの減衰性能を有するゴム組成物が使用されている。
例えば、特許文献1には、「アクリルゴム、アクリレート系樹脂および酢酸ビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種の極性基を有するベースポリマー(a)と、・・・とからなる組成物であって、前記ベースポリマー100重量部に対して、・・・が50〜350重量部混練してなる制振付与剤組成物を熱可塑性樹脂マトリックス中に10重量%以上混練してなることを特徴とする制振性熱可塑性樹脂組成物。」が記載され([請求項1])、また、上記熱可塑性樹脂マトリックスとして、ポリカーボネート系樹脂やポリ乳酸系樹脂等が記載されている([請求項2])。
特開2007−238867号公報
しかしながら、本発明者は、上記特許文献1に記載のゴム組成物について検討したところ、熱可塑性樹脂マトリックスとしてポリ乳酸系樹脂を使用すると、減衰性を向上させることができても、加硫に長時間要し、生産性に劣る場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、加硫時間が短く、減衰性の高い制振材を実現することができるゴム組成物の提供を目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴム成分に対して、シラノール基を有する無機充填剤と特定の脂肪族ポリエステル樹脂と特定のシランカップリング剤とを特定量配合したゴム組成物を用いることにより、加硫時間が短く、減衰性の高い制振材が得られることを知見し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)架橋可能なゴム成分(A)100質量部と、シラノール基を有する無機充填剤(B)10〜100質量部と、カルボキシ基を有し、ガラス転移温度が30℃超の脂肪族ポリエステル樹脂(C)0.1〜30質量部と、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の上記カルボキシ基と反応しうる官能基を有するシランカップリング剤(D)0.5〜10質量部とを含有するゴム組成物。
(2)上記カルボキシ基と反応しうる官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基である上記(1)に記載のゴム組成物。
(3)上記ゴム成分(A)が、ジエン系ゴムである上記(1)または(2)に記載のゴム組成物。
(4)上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)が、ポリ乳酸である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物。
(5)制振材用途に用いる上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム組成物。
(6)上記(5)に記載のゴム組成物を架橋して得られる架橋ゴムを具備する制振材。
以下に説明するように、本発明によれば、加硫時間が短く、減衰性の高い制振材を実現することができるゴム組成物を提供することができる。
図1は、本発明の制振材の実施態様の一例を表す高減衰積層体の断面概略図である。 図2は、実施例1および2ならびに比較例1〜3で調製したゴム組成物の加硫時間とトルクとの関係を示すグラフである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のゴム組成物は、架橋可能なゴム成分(A)100質量部と、シラノール基を有する無機充填剤(B)10〜100質量部と、カルボキシ基を有し、ガラス転移温度が30℃超の脂肪族ポリエステル樹脂(C)0.1〜30質量部と、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の上記カルボキシ基と反応しうる官能基を有するシランカップリング剤(D)0.5〜10質量部とを含有するゴム組成物である。
次に、本発明のゴム組成物に含有する架橋可能なゴム成分(A)、シラノール基を有する無機充填剤(B)、脂肪族ポリエステル樹脂(C)およびシランカップリング剤(D)について詳述する。
<架橋可能なゴム成分(A)>
本発明のゴム組成物に含有するゴム成分(A)は、硫黄化合物や過酸化物による架橋が可能なゴム成分であれば特に限定されず、その具体例としては、ジエン系ゴム、二重結合を有する熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
上記ジエン系ゴムとしては、具体的には、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ビニル−シスブタジエンゴム(VCR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
また、上記二重結合を有する熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、その水素化(水添)物(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)およびスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。
これらの架橋可能なゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、これらの架橋可能なゴム成分のうち、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の引張強さ、切断時伸び等の物性が良好となり、また、本発明のゴム組成物と硬質板とを交互に積層して得られる本発明の高減衰積層体(以下、「本発明の積層体」ともいう。)において、ゴム組成物と硬質板(例えば、一般構造用鋼板、冷間圧延鋼板等)との接着性が良好となる理由から、ジエン系ゴムであるのが好ましい。
なかでも、ジエン系ゴムとしてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を用いるのが好ましく、SBRを90質量%以上含有するジエン系ゴムであるのが更に好ましい。
<シラノール基を有する無機充填剤(B)>
本発明のゴム組成物に含有するシラノール基を有する無機充填剤(B)は、表面の少なくとも一部にシラノール基(Si−OH)を有する無機充填剤であれば特に限定されない。
シラノール基を有する無機充填剤(B)としては、例えば、シリカ、クレー、タルク等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等を挙げることができる。
また、シリカは、平均凝集粒径が、5〜50μmのものが好ましく、5〜30μmのものがより好ましい。
クレーとしては、具体的には、例えば、T−クレー、カオリンクレー、ろう石クレー、セリサイトクレー、焼成クレー、シラン改質クレー等が挙げられる。
本発明においては、上記シラノール基を有する無機充填剤(B)の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して10〜100質量部であり、10〜80質量部であるのがより好ましく、30〜50質量部であるのが更に好ましい。
<脂肪族ポリエステル樹脂(C)>
本発明のゴム組成物に含有する脂肪族ポリエステル樹脂(C)は、カルボキシ基を有し、ガラス転移温度が30℃超の脂肪族ポリエステル樹脂である。
ガラス転移温度が30℃を超える脂肪族ポリエステル樹脂(C)としては、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体等が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体としては、具体的には、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ3−ヒドロキシカルボン酪酸、ポリ4−ポリヒドロキシ酪酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸等が挙げられる。
これらのうち、加水分解性が高く、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)との架橋(ネットワーク)が形成しやすく、減衰性発現のための加硫時間をより短縮できる理由から、ポリ乳酸であるのがより好ましい。また、ポリ乳酸は、これらのうちでも生産量が多い理由から好ましい。
ここで、ポリ乳酸は、乳酸の単独重合体および/または乳酸の共重合体である。
また、乳酸の共重合体は、乳酸以外のヒドロキシ酸、ラクトンおよび乳酸と共重合可能なジエン系化合物からなる群から選択される1種のモノマーと、乳酸との共重合体である。
また、乳酸以外のヒドロキシ酸としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、クエン酸、リシノール酸、シキミ酸、サリチル酸、クマル酸等が挙げられる。
ラクトンとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン等が例示される。
乳酸と共重合可能なジエン系化合物としては、具体的には、例えば、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
また、これらと乳酸との共重合体は、乳酸が主成分であれば、ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト重合体のいずれでもよいが、ブロック共重合体であるのが好ましい。
本発明においては、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)は、そのガラス転移温度が30℃超であるが、混練性に優れ、また、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の減衰性がより高くなり、弾性率等の温度特性も良好となる理由から、40〜120℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのがより好ましい。
ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により、昇温速度10℃/minで測定した値である。
また、本発明においては、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)は、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の引張強さ、切断時伸び等の物性が良好となる理由から、その数平均分子量が1000〜10000であるのが好ましく、2000〜8000であるのがより好ましい。
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)であり、測定にはテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルムを溶媒として用いるのが好ましい。
更に、本発明においては、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、1〜20質量部であるのがより好ましく、3〜15質量部であるのが更に好ましく、3〜10質量部であるのが特に好ましい。
本発明においては、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)として、例えば、ポリ乳酸(LACEA H−440、ガラス転移温度:58℃、数平均分子量:78000、重量平均分子量:150000、三井化学社製)、ポリ乳酸(ラクティ#1012、ガラス転移温度:58℃、数平均分子量:180000、島津社製)等の市販品を用いることができる。
<シランカップリング剤(D)>
本発明のゴム組成物に含有するシランカップリング剤(D)は、上記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の上記カルボキシ基と反応しうる官能基(例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基等)を有するシランカップリング剤である。
上記シランカップリング剤(D)としては、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランなどのエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤;γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基を有するシランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、上記シランカップリング剤(D)の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して0.5〜10質量部であり、1〜8質量部であるのがより好ましく、2〜6質量部であるのが更に好ましい。
本発明においては、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)、脂肪族ポリエステル樹脂(C)およびシランカップリング剤(D)を上述した含有量の範囲内で含有することにより、加硫時間が短く、かつ、加硫後の減衰性の高いゴム組成物を提供することができる。
これは、詳細なメカニズムは不明であるが、通常はシラノール基を有する無機充填剤(B)と脂肪族ポリエステル樹脂(C)のエステル結合との相互作用のみによって架橋(ネットワーク)が形成されるが、シランカップリング剤(D)を存在させることにより、無機充填剤(B)および脂肪族ポリエステル樹脂(C)とシランカップリング剤(D)とが迅速に反応し、シランカップリング剤(D)を介したネットワークが形成されるためであると考えられる。
また、本発明においては、得られる本発明のゴム組成物の加工性が良好となり、また、加硫後の減衰性がより高くなる理由から、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)と脂肪族ポリエステル樹脂(C)との質量比(無機充填剤/脂肪族ポリエステル樹脂)が、1/1〜10/1であるのが好ましく、8/1〜4/1であるのがより好ましい。
更に、本発明においては、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(C)を上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して10質量部程度以上含有させる場合、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の切断時伸びや引裂強さの低下を抑制できる理由から、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)および脂肪族ポリエステル樹脂(C)は、これらを予め混合して得られるマスターバッチとして含有するのが好ましい。
ここで、上記マスターバッチの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)と脂肪族ポリエステル樹脂(C)とを混合した後にペレタイザーでペレット化する方法等が挙げられる。
また、同様の理由から、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)および脂肪族ポリエステル樹脂(C)は、これらを予め溶媒(例えば、トルエン、アセトン、クロロホルム等)中で混合した後に、溶媒を除去し、乾燥して得られる脂肪族ポリエステル表面処理無機充填剤として含有するのが好ましい。
<石油樹脂>
本発明のゴム組成物は、加硫後の引張強さや切断時伸び等の物性を良好とし、また、加硫後の減衰性をより高くする観点から、石油樹脂を含有するのが好ましい。
石油樹脂としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体等を使用することができる。
C5系の脂肪族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC5留分中に含まれる、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンのようなオレフィン系炭化水素;2−メチル−1,3−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエンのようなジオレフィン系炭化水素;等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C5系の脂肪族不飽和炭化水素の重合体とは、一種のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の単独重合体と、二種以上のC5系の脂肪族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
C9系の芳香族不飽和炭化水素としては、具体的には、例えば、ナフサの熱分解により得られるC9留分中に含まれる、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンのようなビニル置換芳香族炭化水素等が挙げられる。
これらは、適当な触媒の存在下で、重合または共重合されることが可能である。ここで、C9系の芳香族不飽和炭化水素の重合体とは、一種のC9系の芳香族不飽和炭化水素の単独重合体と、二種以上のC9系の芳香族不飽和炭化水素の共重合体のいずれをもいう。
また、C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、該共重合体の軟化点が高くなる点で、C9系の芳香族不飽和炭化水素ユニットが60モル%以上であるものが好ましく、90モル%以上であるものがより好ましい。
C5系の脂肪族不飽和炭化水素とC9系の芳香族不飽和炭化水素との共重合体は、適当な触媒の存在下で、共重合可能である。
上記石油樹脂は、上述した架橋可能なゴム成分(特に、ジエン系ゴム)の物性に対し、その分子量および二重結合の反応性が影響を与えるので、軟化点(JIS K2207)が100℃以上のものが好ましく、120℃以上のものがより好ましい。
本発明においては、所望により石油樹脂を含有する場合の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して、5〜50質量部であるのが好ましく、10〜45質量部であるのがより好ましい。
<無機充填剤>
本発明のゴム組成物は、加硫後の減衰性をより高くする観点から、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)以外の無機充填剤を含有するのが好ましい。
このような無機充填剤としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、石英とカオリナイトとの凝集体、けいそう土等が挙げられる。
本発明においては、これらの無機充填剤のうち、減衰性、および、長期せん断変形に対する安定性を特に高く保つことができるという理由から、石英とカオリナイトとの凝集体であるのが好ましい。
本発明においては、所望により無機充填剤を含有する場合の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して、5〜55質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましく、15〜40質量部であるのが更に好ましい。
また、本発明においては、シラノール基を有する無機充填剤(B)とシラノール基を有する無機充填剤以外の無機充填剤との合計量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して、20〜75質量部であるのが好ましく、30〜65質量部がより好ましい。合計量がこのような範囲である場合、加硫後の減衰性がより高くなり、長期の繰り返しせん断変形に対する減衰性がより安定なものとなる。
そして、シラノール基を有する無機充填剤(B)とシラノール基を有する無機充填剤(B)以外の無機充填剤との質量比は、1/1〜1/2.5であるのが好ましく、1/1〜1/2.0であるのがより好ましい。質量比がこの範囲の場合、良好な加工性が得られる。
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物は、加硫後の引張強さや切断時伸び等の物性を良好とし、加硫後の減衰性をより高くする観点から、カーボンブラックを含有するのが好ましい。
本発明においては、CTAB吸着比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックを用いるのが好ましく、110〜370m2/gのカーボンブラックを用いるのがより好ましい。
CTAB吸着比表面積が100m2/g以上の範囲であると、得られる本発明の積層体の減衰性をより高く維持することができる。
ここで、CTAB吸着比表面積は、カーボンブラックがゴム分子との吸着に利用できる表面積を、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)の吸着により測定した値である。
このようなカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAFを挙げることができる。なお、CATB吸着比表面積は、ASTM D3765−80に記載の方法により測定することができる。
また、本発明においては、所望によりカーボンブラックを含有する場合の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して、40〜75質量部であるのが好ましく、50〜75質量部であるのがより好ましい。
<金属化合物>
本発明のゴム組成物は、上述した脂肪酸ポリエステル樹脂(C)の分解を促進し、脂肪酸ポリエステル樹脂(C)とシラノール基を有する無機充填剤(B)とが相互作用する部位を増加させる観点から、金属化合物を含有するのが好ましい。
上記金属化合としては、例えば、上述した脂肪酸ポリエステル樹脂(C)のエステル交換触媒が挙げられ、具体的には、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、銅化合物等が挙げられる。
これらのうち、亜鉛化合物であるのが好ましく、具体的には、酸化亜鉛、有機リン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛であるのがより好ましい。なかでも、酸化亜鉛であるのが更に好ましい。
本発明においては、所望により金属化合物を含有する場合の含有量は、上述した架橋可能なゴム成分(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。
<その他の添加剤>
本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、難燃剤、耐候剤、耐熱剤等が挙げられる。
加硫剤としては、具体的には、例えば、硫黄;TMTDなどの有機含硫黄化合物;ジクミルペルオキシドなどの有機過酸化物;等が挙げられる。
加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)などのスルフェンアミド類;メルカプトベンゾチアゾールなどのチアゾール類;テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム類;ステアリン酸;等が挙げられる。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、TMDQなどのケトン・アミン縮合物;DNPDなどのアミン類;スチレン化フェノールなどのモノフェノール類;等が挙げられる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、フタル酸誘導体(例えば、DBP、DOP等)、セバシン酸誘導体(例えば、DBS等)のモノエステル類等が挙げられる。
軟化剤としては、具体的には、例えば、パラフィン系オイル(プロセスオイル)等が挙げられる。
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を配合した未加硫ゴム組成物を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練等により調製できる。
また、上述したように、上述した脂肪族ポリエステル樹脂(C)を上述した架橋可能なゴム成分100質量部に対して10質量部程度以上含有させる場合は、上述した各成分のうち、上述したシラノール基を有する無機充填剤(B)と脂肪族ポリエステル樹脂(C)とを予め混合することで、マスターバッチや脂肪族ポリエステル表面処理無機充填剤を調製するのが好ましい。
本発明のゴム組成物は、硫黄化合物や過酸化物を用いた従来公知の加硫条件により短時間で加硫することができる。
具体的には、JIS K6300−2:2001に規定されたレオメータのトルクから得られる加硫曲線から求められる加硫時間t(max)を30分以下とすることができる。
ここで、加硫曲線とは、JIS K6300−2:2001「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠し、レオメータとしてロータレス加硫試験機を使用し、所定の試験温度において、得られるトルクを縦軸とし、加硫時間を横軸にして得られるものである。
また、t(max)は、この加硫曲線において、加硫開始からトルクが最大値Mに達するまで要した加硫時間をいう。なお、加硫時間の経過によりトルクが上がり続けて明確な最大値Mを示さないときは、JIS K6300−2:2001に準拠して、加硫曲線が上昇し続け加硫曲線の傾きが安定した領域での特定時間における値を最大値とする。
また、試験片(直径30mm、厚さ12.5mmの円盤)の作製は、JIS K6299−2:2001「ゴム−試験用試料の作製方法」に準拠して行った。
本発明の制振材は、本発明のゴム組成物を架橋して得られる架橋ゴムを具備するものであれば特に限定されず、また、振動エネルギーの吸収材として用いられればその具体的な用途、適用条件等も特に限定されない。
以下に、本発明の制振材の好適な実施態様の一例として、本発明のゴム組成物と硬質板とを交互に積層して得られる高減衰積層体(以下、「本発明の高減衰積層体」ともいう。)について詳述する。
図1に、本発明の制振材の実施態様の一例を表す高減衰積層体の断面概略図を示す。図1において、符号1は高減衰積層体(免震積層体)を表し、符号2は硬質板を表し、符号3は本発明のゴム組成物を表す。
図1に一例として示すように、本発明の高減衰積層体1は、本発明のゴム組成物3と、硬質板2(例えば、一般構造用鋼板、冷間圧延鋼板等)とが交互に積層されて構成される。
また、この高減衰積層体1は、本発明のゴム組成物3と硬質板2との間に接着層を設けて構成してもよく、また、接着層を設けずに直接加硫して構成してもよい。
図1においては、本発明の高減衰積層体1は、本発明のゴム組成物3と、硬質板2とを交互に積層させた状態が図示されているが、ゴム組成物3は2層以上を積層させた構造としてもよい。
また、図1においては、本発明のゴム組成物3について6層、硬質板2について7層の合計13層の例を示してあるが、本発明の高減衰積層体1の本発明のゴム組成物3と硬質板2との積層数はこれに限定されず、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
更に、本発明の高減衰構造体1の大きさ、全体の厚さ、本発明のゴム組成物3の層の厚さ、硬質板の厚さ等についても、用いられる用途、要求される特性等に応じて、任意に設定できる。
本発明の高減衰積層体を製造するには、本発明のゴム組成物をシート状に成形した後に加硫して、シート状のゴム組成物を得た後、接着剤を含む層を設けて硬質板と交互に積層させてもよいし、また、あらかじめ未加硫の本発明の高減衰積層体用ゴム組成物をシート状に成形し、硬質板と交互に積層した後、加熱して加硫・接着を同時に行ってもよい。
本発明の高減衰積層体は、振動エネルギーの吸収装置として用いられればその用途、適用条件等は、特に限定されない。中でも、上述の優れた特性を有するため、建築用の振動エネルギーの吸収装置として用いられるのが好ましく、例えば、各種の免震、除振、防振等の振動エネルギーの吸収装置(より具体的には、例えば、道路橋の支承や、橋梁、ビルの基礎免震、戸建免震用途)に好適に用いられる。
このような高減衰積層体等の本発明の制振材は、上述した本発明のゴム組成物を用いているため、製造時間(特に、加硫時間)が短く、減衰性が高いという効果を有する。
ここで、減衰性は、動的粘弾性(tanδ)の大きさで判断することができる。具体的には、後述する実施例に示すように、ゴム組成物を148℃、30分間加硫した後、短冊状(長さ20mm×幅5mm×厚み2mm)に切り抜いた試験片を用い、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いて測定することができる。
本発明においては、上記試験片に、20℃の測定温度下で、初期歪みとして10%伸張させた後、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて測定したtanδが、0.35以上となる。
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
まず、下記第1表に示す組成(単位は質量部)になるように、各化合物を配合してB型バンバリーミキサーにて5分間混練し、未加硫ゴム組成物を調製した。
調製した未加硫ゴム組成物について、以下に示す方法により加硫時間t(max)を測定し、減衰性を評価した。その結果を下記第1表に示す。
(加硫時間t(max))
JIS K6299−2:2001「ゴム−試験用試料の作製方法」に準拠し、調製した未加硫ゴム組成物から試験片(直径30mm、厚さ12.5mmの円盤)を作製した。
作製した各試験片について、JIS K6300−2:2001「振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準拠し、レオメータとしてロータレス加硫試験機を使用し、148℃の温度条件で加硫曲線(縦軸:トルク、横軸:加硫時間)を測定した。実施例1および2ならびに比較例1〜3については、ゴム組成物の加硫時間とトルクとの関係のグラフを図2に示す。
測定した加硫曲線から、加硫開始からトルクが最大値Mに達するまで要した加硫時間t(max)[分]を算出した。なお、加硫時間の経過によりトルクが上がり続けて明確な最大値Mを示さないときは、JIS K6300−2:2001に準拠して、加硫曲線が上昇し続け加硫曲線の傾きが安定した領域での特定時間における値を最大値とした。
(減衰性)
まず、得られた各ゴム組成物を、148℃下、上記で算出した加硫時間t(max)加硫し、加硫ゴム組成物を調製した。
次いで、減衰性の評価として、調製した各加硫ゴム組成物から短冊状(長さ20mm×幅5mm×厚み2mm)に切り抜いた試験片を用い、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用いて損失係数tanδを測定した。測定は、20℃の測定温度下で、10%伸張させ、振幅±2%の振動を振動数10Hzで与えて行った。
Figure 2011032384
第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・ゴム成分A1:SBR(Nipol1502、日本ゼオン社製)
・無機充填剤B1:シリカ(Z165GR、Rhodia Silica Korea社製)
・無機充填剤B2:クレー(SUPREX CLAY、ケンタッキーテネシークレイカンパニー社製)
・脂肪族ポリエステル樹脂C1:ポリ乳酸(LACEA H−440、ガラス転移温度:58℃、数平均分子量:78000、重量平均分子量:150000、三井化学社製)
・シランカップリング剤D1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)
・シランカップリング剤D2:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903、信越化学工業社製)
・シランカップリング剤1:ビス−3−トリエトキシシリルプロピル−テトラスルフィド(Si69、デグサ社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3号(正同化学工業社製)
・硫黄:金華印微粉硫黄(鶴見化学社製)
・加硫促進剤1:ノクセラーCZ−G(大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:サンセラーD−G(三新化学工業社製)
第1表から明らかなように、比較例1で調製したゴム組成物に対してポリ乳酸を配合して調製したゴム組成物(比較例2)や更にテトラスルフィドシランを配合して配合して調製したゴム組成物(比較例3)は、比較例1に比べて減衰性は向上するものの、加硫時間が長くなることが分かった。
これに対し、実施例1〜4で調製したゴム組成物は、いずれも減衰性が向上し、かつ、比較例1と同等以下の加硫時間を達成できることが分かった。
1 高減衰積層体(免震積層体)
2 硬質板
3 本発明のゴム組成物

Claims (6)

  1. 架橋可能なゴム成分(A)100質量部と、シラノール基を有する無機充填剤(B)10〜100質量部と、カルボキシ基を有し、ガラス転移温度が30℃超の脂肪族ポリエステル樹脂(C)0.1〜30質量部と、前記脂肪族ポリエステル樹脂(C)の前記カルボキシ基と反応しうる官能基を有するシランカップリング剤(D)0.5〜10質量部とを含有するゴム組成物。
  2. 前記カルボキシ基と反応しうる官能基が、エポキシ基、アミノ基およびイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも一種の官能基である請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分(A)が、ジエン系ゴムである請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. 前記脂肪族ポリエステル樹脂(C)が、ポリ乳酸である請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 制振材用途に用いる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 請求項5に記載のゴム組成物を架橋して得られる架橋ゴムを具備する制振材。
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