JP2011032219A - コラーゲンゲル収縮剤 - Google Patents

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【課題】コラーゲンゲル収縮剤を提供する。
【解決手段】コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤であって、リンゴ抽出物及びコラーゲン又はゼラチンを含むコラーゲンゲル収縮剤。
【選択図】 図3

Description

本発明は、コラーゲンゲル収縮剤に関する。
近年、真皮組織モデルとして、コラーゲンゲルが、薬剤評価に利用されている。前記コラーゲンゲルは、コラーゲン液に線維芽細胞を懸濁し、前記線維芽細胞の培養条件下でゲル化させたものである。前記線維芽細胞は、前記コラーゲンゲル内で三次元的に培養され、その形状は、単層培養と異なり、生体内と類似の二極化した紡錘状となる。また、前記コラーゲンは、ゲル化によりコラーゲン繊維が再配列し、真皮組織に似た構造となる。前記コラーゲンゲルは、in vivo試験との相関性が高く、また、再現性が高いことから、細胞毒性試験、in vitro眼刺激性試験に用いられ、近年は、皮膚の弾力性、たるみ、ハリ、しわ改善評価モデル(例えば、特許文献1)や、創傷治癒促進(例えば、特許文献2)または創収縮の評価モデル(例えば、特許文献3)としても、用いられている。
特開2003−176208号公報 特開2001−064196号公報 特開2004−35526号公報
本発明の目的は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させる、コラーゲンゲル収縮剤を提供する。創傷治癒促進や収縮の評価モデルなどに利用可能である。
リンゴ抽出物に着目して、試験した結果コラーゲン収縮能があることを知見し、さらにコラーゲンとの併用によってコラーゲン収縮を増強できることを見出して、本発明に至った。
1.コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤であって、リンゴ抽出物及びコラーゲン又はゼラチンを含むことを特徴とするコラーゲンゲル収縮剤。
2.リンゴ抽出物がリンゴ由来のポリフェノールであり、コラーゲンが豚及び又は魚類由来であることを特徴とする1.記載のコラーゲンゲル収縮剤。
本発明のコラーゲンゲル収縮剤は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させることができる。リンゴポリフェノールとコラーゲンを併用することにより、低濃度領域でコラーゲンゲルを収縮する機能が顕著に向上することが認められた。
リンゴポリフェノール添加による評価サンプルのコラーゲンゲル収縮率の結果を示すグラフ リンゴポリフェノールとコラーゲン(豚由来)併用による評価サンプルのコラーゲンゲル収縮率の結果を示すグラフ リンゴポリフェノールとコラーゲン(魚由来)併用による評価サンプルのコラーゲンゲル収縮率の結果を示すグラフ リンゴポリフェノールとゼラチン併用による評価サンプルのコラーゲンゲル収縮率の結果を示すグラフ
本発明者は、先にリンゴ抽出物に、コラーゲンゲル収縮作用があることを知見し、リンゴ抽出物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮剤に関する特許出願(特願2009−83818号)を行った。本発明者は、さらに、リンゴ抽出物のコラーゲンゲル収縮作用について探求を続けた結果、コラーゲンあるいはゼラチンを併用することにより、飛躍的にコラーゲンゲル収縮作用が増強されることを見出した。本発明のコラーゲンゲル収縮剤は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させる、コラーゲンゲル収縮剤である。
本発明のコラーゲンゲル収縮剤は、コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させる。コラーゲンゲルの収縮とは、例えば、ゲルの大きさが小さくなることをいう。コラーゲンゲルの大きさの指標としては、特に制限されないが、例えば、コラーゲンゲルの直径、表面積、体積などが挙げられる。
<コラーゲンゲル>
本発明において、コラーゲンゲルは、収縮可能な形状であれば良く、ゲル状以外に、例えば、固形状であっても良い。
コラーゲンゲルに含まれるコラーゲンの種類は、特に制限されず、例えば、I型、II型、III型、IV型、V型コラーゲンなどが挙げられ、好ましくは、I型コラーゲンである。また、コラーゲンは、例えば、コラーゲンを加工処理したものであっても良い。加工処理としては、特に制限されないが、例えば、熱処理、酵素処理などが挙げられる。熱処理したコラーゲンとしては、例えば、ゼラチンなどが挙げられ、酵素処理したコラーゲンとしては、例えば、アテロコラーゲン、コラーゲンペプチドなどが挙げられる。コラーゲンゲル中の前記コラーゲン濃度は、特に制限されず、例えば、形状などに応じて、適宜設定可能である。
コラーゲンゲルにおいて、線維芽細胞の由来組織は、特に制限されず、例えば、皮膚、肺、心臓などが挙げられ、好ましくは、皮膚である。線維芽細胞の由来種は、特に制限されず、例えば、ヒト、ブタ、ウシ、ウサギ、ラット、マウスなどがあげられ、好ましくは、ヒトである。コラーゲンゲル中の線維芽細胞の細胞密度は、特に制限されず、適宜設定可能である。
コラーゲンゲルは、例えば、コラーゲンおよび線維芽細胞以外のその他成分を含んでも良い。その他成分としては、特に制限されず、例えば、培養液、血清などが挙げられる。
<リンゴ抽出物>
リンゴ抽出物が、リンゴ果実の抽出物であるのが好ましい。特に、リンゴ幼果抽出物に含まれるポリフェノールを主成分とすることが好ましい。
リンゴ抽出物には、ポリフェノール、有機酸、アミノ酸などを含むことが知られている。
リンゴ抽出物は、血管機能改善作用を高めることが可能なBNP調節剤として抽出物を有効成分として含有してなるBNP調節剤、血行促進剤(特開2007−008837号公報、特開2006−265220号公報)や飲料(特開2004−305087号公報)、化粧料配合剤(特開2001−187724号公報)、消臭剤成分(特開平11−319051号公報)、香料成分(特開平08−023939号公報)などに用いられることが知られている。
しかしながら、リンゴ抽出物およびリンゴ由来のポリフェノールについて、コラーゲンゲル収縮効果は、未だ報告されていない。
リンゴ抽出物において、リンゴ(Malus pumila)の品種は、例えば、ふじ、国光、王林、紅玉、ジョナゴールド、デリシャス、さんさ、千秋などが挙げられ、特に制限されない。リンゴの抽出部位は、特に制限されず、例えば、果実、葉、幹、花などが挙げられ、好ましくは、果実である。前記果実は、例えば、未熟果(幼果)でも良く、完熟果でも良く、特に制限されないが、好ましくは、未熟果である。抽出に用いる前記果実の部位は、特に制限されず、例えば、全果、果肉、果皮、種などが挙げられる。リンゴ抽出物は、これらの部位を、単独で、または2種以上組み合わせて抽出しても良い。
リンゴ抽出物を抽出する方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。抽出方法の具体例としては、例えば、以下のようであっても良い。まず、リンゴの全果を、水洗後、グラインダーなどにより粉砕する。この粉砕物を、ペクチナーゼ処理に供し、遠心分離後、抽出溶媒により分配ろ過して、リンゴ抽出物を調製しても良い。前記ペクチナーゼ処理としては、特に制限されないが、例えば、20〜60℃の温度条件化で、ペクチナーゼを10〜50ppm添加して行っても良い。抽出溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒が挙げられる。
リンゴ抽出物は、例えば、市販のリンゴ抽出物を用いても良く、リンゴ果実から抽出して調製しても良く、特に制限されない。
コラーゲンゲル収縮剤中に含まれるリンゴ抽出物含量は、特に制限されないが、例えば、0.001〜99重量%、好ましくは、0.001〜5重量%である。コラーゲンやゼラチンとの併用によって、コラーゲンゲル収縮能が飛躍的に向上するので、0.01以下で十分である。コラーゲンゲル収縮剤は、リンゴ由来のポリフェノールを含むリンゴ抽出物が好ましい。
ポリフェノールの分画方法は、特に制限されず、従来公知の方法を採用できる。ポリフェノールは、例えば、リンゴ抽出物をカラムに通液後、カラムの吸着物を溶出し、この溶出画分を減圧留去濃縮して分画しても良い。また、さらに、この濃縮液に粉末助剤を添加し、凍結乾燥または噴霧乾燥して、ポリフェノール粉末を調製しても良い。
ポリフェノールは、例えば、市販のリンゴ由来のポリフェノール含有物を用いても良く、リンゴ果実から抽出および分画して調製しても良く、特に制限されない。本発明のコラーゲンゲル収縮剤中に含まれる前記ポリフェノール含量は、特に制限されないが、例えば、0.01〜99重量%、好ましくは、0.1〜50重量%である。
<コラーゲン/ゼラチン>
リンゴ抽出物を併用するコラーゲンは、平均分子量数千のコラーゲン由来のペプチドから数十万のコラーゲンを用いることができる。ゼラチンはコラーゲンを変性させたもので、具体的には、三本鎖ヘリックス構造を保持したコラーゲンが熱などによって、この構造が壊れランダムコイルとなった蛋白質のことを指す。豚などの動物由来、魚由来いずれも使用可能である。
添加量は、0.01%以上が好ましい。本試験系の試験ではコラーゲンゲルの収縮は80%程度が上限と想定されるので、コラーゲンゲルの収縮が70%程度以上は、添加濃度を増やしても増加効果は小さい。したがって、マイナスとなることは無いと言う意味では、上限は無いが、実質的には1.0%程度が上限となる。
〔試験例1〕
<リンゴ抽出物に関するコラーゲンゲル収縮作用試験>
この試験では、コラーゲンゲル収縮剤として、リンゴ抽出物(商品名:アップルフェノンSH;アサヒフードアンドヘルスケア社製)を用い、以下のように、コラーゲンゲル収縮作用を測定した。
[材料]
(1)アテロコラーゲン(商品名:AteloCell、アテロコラーゲン(牛真皮由来)5mg/ml
(2)DMEM(粉末)(商品名:ダルベッコ変法イーグル培地2、日水)
(3)DMEM(液体)(商品名;Gibco)
[評価検体]
(1)リンゴ抽出物(リンゴポリフェノール)
商品名:アップルフェノンSH(アサヒフードアンド ヘルスケア(株)製)
規格;全ポリフェノール量98%以上(UV法)
[試験方法]
予め継代培養した皮膚線維芽細胞(新生児由来)を細胞懸濁液(6×105cells/ml 溶媒10%FBS含有DMEM)として調整した。氷冷中でアテロコラーゲン(5mg/ml)4ml、3倍濃度DMEM(D-Glc1.2M含有およびアップルフェノンSH0.03%含有)2ml、FBS(牛血清)0.67ml、10%FBS含有DMEM 3.34ml及び細胞懸濁液2mlを混合し、平底12ウェルプレートに1mlずつ添加した。37℃5%CO2インキューベーターで培養し、5時間後にアテロコラーゲンが再線維化することでゲル化することを認めた。
添加から6時間後に滅菌したスパチュラの柄を用いてゲルをウェルプレートから剥がした後、10%FBS含有DMEM溶液1ml(0.5%、0.2%、0.1%HACP-01含有)を添加して、再び37℃5%CO2インキューベーターで7日間培養した。
培養液は1日おきに評価薬剤を任意の濃度に溶解させた10%FBS含有DMEM溶液1mlを培地交換した。培養終了後、培養液を完全に除去しPBSで洗浄後、10%中性ホルマリン溶液(Wako)で24時間浸潤しゲルを固定した。
その後、1%(w/v)Triton−X溶液に置換して、ゲル直径の計測を行った。
リンゴ抽出物(リンゴポリフェノール)は、ゲル形成後に添加した場合と、ゲル内包時に添加した場合の試験を行った。添加量は表1に記載したとおりである。
表1に記載の添加濃度A1、A2、A3、A4の添加濃度はゲル形成後に添加する10%FBS含有DMEM溶液1ml中にリンゴ抽出物を添加させた数値を示している。
また、表1に記載の添加濃度B1、B2、B3はゲル内包時にリンゴ抽出物を添加したゲル容量1ml中の添加濃度を示している。すなわちゲル1mlを組成する各試料の容量は、(1)アテロコラーゲン333.3μl、(2)1.2M D−グルコース含有3倍濃度DMEM166.7μl、(3)FBS(牛血清)55.8μl、(4)10%FBS含有DMEM277.5μl、(5)細胞懸濁液166.7μlから構成されており、評価検体のリンゴ抽出物は、(2)3倍濃度DMEMの溶媒に対して、0.3%の濃度で調整したリンゴ抽出物含有1.2M D−グルコース含有3倍濃度DMEM溶液はゲル添加濃度として0.3%×(166.7μl/ゲル容量1ml)=0.05%のB1に示した添加濃度となる。同様に、B2およびB3の添加濃度はそれぞれ0.1%および0.03%のリンゴ抽出物含有1.2M D−グルコース含有3倍濃度DMEM溶液をそれぞれ調整してゲル内包時に添加したことで、それぞれB2→0.0167%、B3→0.005%の添加濃度としてコラーゲンゲル収縮率を求めた。
[ゲル直径の計測およびゲル面積の算出]
ゲルの形状はウェルプレートと同様に真円状になることを利用してゲル面積を算出した。
上記処理方法によって調整したゲルを2方向について直径を計測し、2直線の平均値を算出した。そのゲル直径の平均値からゲル半径が算出され、ゲル面積は次の式で算出することができる。

ゲル面積=(ゲル半径 cm)×(ゲル半径 cm)×円周率

薬剤未処理のコラーゲンゲルのゲル面積に対する薬剤処理時のコラーゲンゲルのゲル面積の面積比からコラーゲンゲル収縮率(%)を算出した。

コラーゲンゲル収縮率(%)=100×{(薬剤未処理のゲル面積)−(薬剤処理時のゲル面積)}/(薬剤未処理のゲル面積)

一つのデータについてn=3ウェルで評価し、平均±標準偏差(mean±S.D.)でグラフ表記した。
[試験結果]
表1及び図1に、リンゴ抽出物単独添加の試験例についてのコラーゲンゲル収縮率(%)の結果を示す。
リンゴ抽出物をゲル形成後に添加した場合もゲル内包時に添加した時もいずれの場合もコラーゲンゲル収縮能が濃度依存的に認められた。そして、0.005%(w/v)添加時のゲル収縮能はそれぞれ15.2±6.9%、16.3±6.5%で非常に近い値を示した。
Figure 2011032219
[リンゴ抽出物、コラーゲン(豚由来)併用例]
リンゴ抽出物(リンゴポリフェノール)とコラーゲン併用試験を前記試験方法と同様に行った。リンゴポリフェノールをゲル内包時に添加あるいはゲル形成後にコラーゲンを添加した。その結果を表2、図2に示す。
リンゴポリフェノールとしてアップルフェノンSHを用い、コラーゲンとして分子量約5000の豚コラーゲンペプチドSCP5200(新田ゼラチン)を用いた。
Figure 2011032219
実施例1〜3は、リンゴ抽出物(リンゴポリフェノール)0.005%とコラーゲン(豚由来コラーゲン)を0.1〜0.5%まで段階を振って添加した例である。試験例1はリンゴ抽出物0.005%単独、試験例2はコラーゲン(豚由来コラーゲン)を0.1%併用した例である。参考1は試験例1と試験例2の結果を単純に合計した値を示している。
この結果、実施例3と試験例1、試験例2を比較すると格段にコラーゲンゲルが収縮していることが分かる。さらに、想定される相加効果である参考1に比べても顕著な効果を発揮することが分かる。実施例1〜2の結果も顕著な効果を示している。しかし、コラーゲンの添加量を増加しても、顕著な向上は認められない。これは、コラーゲンゲルの収縮率に限界があると推定されるので、添加量を増やす必要は無いことを示している。
この知見に基づき、他の種類のコラーゲンについても試験を行った。
[リンゴ抽出物、コラーゲン(魚由来)/ゼラチン併用例]
さらに、リンゴポリフェノールとコラーゲン(魚由来)又はゼラチンとの併用試験を行った。
実施例4に平均分子量3000程度の魚類由来のコラーゲンペプチドである「マリンマトリックスM」(焼津水産化学工業株式会社製)、実施例5に平均分子量 数万から数十万のゼラチン(和光純薬製)を用いた例を示す。試験例3、4はそれぞれの単独、参考2、3は、それぞれの単独添加とリンゴ抽出物単独である試験例1の結果を加えた数字を示している。
この結果、いずれも単独使用よりも格段にコラーゲンゲルを収縮させる作用を果たすことが確認された。また、単純に想定される相加数字である参考と比較しても顕著な効果を示し、これは、予想し得ない効果である。
結果を表3、4及び図3、4に示す。
Figure 2011032219
Figure 2011032219

Claims (2)

  1. コラーゲンおよび線維芽細胞を含むコラーゲンゲルを収縮させるコラーゲンゲル収縮剤であって、リンゴ抽出物及びコラーゲン又はゼラチンを含むことを特徴とするコラーゲンゲル収縮剤。
  2. リンゴ抽出物がリンゴ由来のポリフェノールであり、コラーゲンが豚及び又は魚類由来であることを特徴とする請求項1記載のコラーゲンゲル収縮剤。
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