JP2008133256A - しわ又はたるみの予防又は改善剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パラオ共和国のウルクタープル島の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ又はたるみの予防又は改善剤。
【選択図】図1
Description
老化による肌の皺やたるみは、主に、紫外線により真皮中のコラーゲンやエラスチンが変性したり、破壊されることにより生じる。従来、皺やたるみの解消術として、皮膚にコラーゲンを注入する方法が採用されているが、注入されたコラーゲンは皮膚から速やかに消失してしまう。また、本人の幹細胞から得た線維芽細胞を皮膚に移植する治療も試みられているが、移植された線維芽細胞は定着し難い。
項1. 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤。
項2. 溶媒が熱溶媒である項1に記載の剤。
項3. 溶媒が、水、エタノール、又は水とエタノールとの混液である項1又は2に記載の剤。
項4. 真皮中のコラーゲン量を増やすことによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項5. 線維芽細胞の増殖促進によりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項6. 真皮中のコラーゲンゲルの収縮を促進することによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する項1〜3のいずれかに記載の剤。
項7. 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を、その乾燥重量に換算して、全体に対して0.001〜20重量%含む項1〜6のいずれかに記載の剤。
また、本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、線維芽細胞に1回接触させるだけでこの細胞の増殖を促進し、コラーゲン生成を促進し、コラーゲンゲルを収縮させることができるため、1日に1〜2回の使用が前提となる化粧品用途に好適に使用できる。
本発明において、「海泥」はパラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイ(Milky Way)にある白色の海泥(White Clay)を指す。「ミルキーウェイ」はパラオ共和国の湾の正式な地名であり、湾内にあるひょうたん型の島で区切られた領域の内側がミルキーウェイに該当する。ミルキーウェイの湾内の海中に堆積している鉱物類は単一色の白い泥だけである。その他に海中に存在しているものがあるとすれば植物の破片のようなものだけであり、白泥と紛らわしい鉱物類は一切存在しない。また、海岸線は岩盤で形成されており、海岸線と堆積した白泥との間には白泥と紛らわしい鉱物類は一切存在しない。さらに、白泥の堆積領域はひょうたん型の島で区切られた外側にも広がっているので、ミルキーウェイの海中を掬えば白色の海泥だけが採取される状態である。
この海泥を採取し、必要により水で洗浄して夾雑物を除き、必要により加熱滅菌したものを使用することができる。なお、この海泥は、サンゴ等が化石化して堆積されたものと考えられている。
この海泥の採取については、パラオ共和国から採取許可を得ているパシフィックサンライズ社から分譲が可能である。また、直接、パラオ共和国に採取許可を申請し採取することも出来る。
本発明で使用される海泥の抽出物は、海泥を、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒により抽出したものである。以下、この抽出物を「海泥溶媒抽出物」と略称することがある。抽出に用いる溶媒は、水、又は水とエタノールとの混液が好ましく、水がより好ましい。また、溶媒は熱溶媒であることが好ましい。また溶媒の沸点を超えない範囲で、できるだけ高い温度が好ましい。抽出溶媒として水を用いる場合の水の温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃程度がさらにより好ましい。また、抽出は1時間以上とすればよく、好ましくは1時間程度とすればよい。抽出の際の溶媒の使用量は、海泥1重量部に対し2〜10重量部程度が好ましく、3〜5重量部程度がより好ましい。
このようにして得られる海泥溶媒抽出液は、そのまま又は濃縮して使用することができる。また、ろ過により不溶物を除去したものをそのまま又は濃縮して使用してもよい。さらに、ろ液を自然乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、スプレードライ法等により乾燥した乾燥品を使用してもよい。液体化粧品にする場合に濁りがないことが好ましいため、海泥溶媒抽出液のろ液又はその乾燥品が好ましく、ろ液の乾燥品がより好ましい。
本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、海泥溶媒抽出物を配合した化粧品(薬事法が定める薬用化粧品も含む)、又は皮膚外用剤の形態にすることができる。
化粧品の形態は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、パックのような顔用の基礎化粧品;メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム、ファンデーション(乳液状、クリーム状、又は軟膏型)のようなメイク下地化粧品;アイカラー、チークカラー、リップカラーのようなメイクアップ化粧品;ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローションのような身体用化粧品などの形態にすることができる。このような肌に塗る形態の他、入浴剤、ボディソープ、石鹸等の形態とすることもできる。本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、特に顔用の基礎化粧品の形態とすることが好ましい。
化粧品基剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、増粘剤、油剤、粉体(色素、樹脂、顔料)、香料、保湿剤、生理活性成分、紫外線吸収剤、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤、中和剤・pH調整剤、昆虫忌避剤、及び酵素等の1種又は2種以上を使用することができる。
両性界面活性剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような両性界面活性剤として、アルキルベタイン、ホスホベタイン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、これらのリゾ体、及びホスファチジン酸又はその塩等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
溶媒は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような溶媒として、例えばポリオキシエチレンセチルエーテル、精製水、及び低級アルコール等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような紫外線吸収剤として、オキシベンゾン、サリチル酸フェニル、シノキサート、及び2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このようなキレート剤として、エデト酸又はその塩類、クエン酸又はその塩等が挙げられる。塩は非毒性塩であり、特に薬学的に許容される塩であり、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
中和剤・pH調整剤は、化粧品に通常使用されるものを制限なく使用できる。このような中和剤・pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられる。
昆虫忌避剤としては、ジエチルトルアミド等が挙げられる。
酵素としては、塩化リゾチーム等が挙げられる。
また、入浴剤とする場合の剤型は特に限定されず、系散剤、顆粒剤、錠剤、軟カプセル剤、液剤などの公知の剤型とすることができる。
また、ボディソープ、石鹸等とする場合の形態は特に限定されず、固体、液体、ジェル状などの公知の形態とすることができる。
本発明のしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤は、どのような年齢の人でも使用できるが、特に、しわやたるみを有する例えば40歳以上の中高年齢の人が好適に使用できる。また、健常人の他、皮膚(特に真皮)に損傷を受けた人も好適に使用できる。
以下、本発明の実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ヒト線維芽細胞に対する作用の検討
<海泥溶媒抽出物の調製>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥を採取したもの(パシフィックサンライズ社)を、1時間静置して上澄みをデカンテーションにより除去した。次いで、沈殿物を水で洗浄し1時間静置して上澄みをデカンテーションにより除去する操作を2回行った。これにより、採取した泥に混入していた植物の葉などの夾雑物が除去された。このようにして得られた白泥1kgに、精製水3Lを加え、100℃で1時間加熱した後、2号ろ紙を用いてろ過した。ろ液を、減圧濃縮後、凍結乾燥して、海泥溶媒抽出物とした。海泥に対する溶媒抽出物の収率は1.5%であった。
上記操作で得られた海泥溶媒抽出物を、濃度3.2mg/mL(乾燥重量)になるようにD−MEM培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mLペニシリン、及び100μg/mLストプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物濃度3.2mg/mL、1.6mg/mL、及び0.8mg/mLの3段階の溶液を調製した。
ヒト新生児線維(繊維)芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)をD−MEM培地で37℃で48時間培養したものをトリプシン処理してD−MEM培地に5×105個/mLになるように懸濁した懸濁液を、96穴プレートに100μLづつ播種した。各ウェルに海泥溶媒抽出物溶液を100μL添加し、37℃で44時間培養した。各ウェルの細胞懸濁液中の海泥溶媒抽出物最終濃度は1.6mg/mL、0.8mg/mL、及び0.4mg/mLの3段階である。対照ウェルには、海泥溶媒抽出物溶液に代えてD−MEM培地を100μL添加し、同様にして培養した。各抽出物濃度及び対照をそれぞれ3セット設けた。
各ウェルにMTT試薬(リン酸緩衝液-食塩水に最終濃度5mg/mLとなるように3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミドを溶解させたもの)を20μL加え、さらに4時間培養した。上澄み液を吸引除去した後、青色に着色した細胞が残ったウェルに0.04N HCl含有2−プロパノール200μLを添加して細胞を溶解し、溶解物の波長570nmにおける吸光度を測定した。
MTT試薬は、細胞内に取り込まれ還元されて青色発色物質に変換される試薬であることから、MTT試薬と反応させた後の細胞の溶解液の570nmにおける吸光度は生細胞数に比例する。対照細胞の上記吸光度に対する、海泥溶媒抽出物と接触させた細胞の上記吸光度の相対値は、生細胞数の相対値を示す。各濃度の海泥溶媒抽出物と接触させた場合の線維芽細胞の生細胞数の相対値、及び570nmにおける吸光度を以下の表1に示す。
表1から、海泥溶媒抽出物は、ヒト線維芽細胞の増殖を用量依存的に促進したことが分かる。また、570nmにおける吸光度は、海泥溶媒抽出物濃度1.6mg/mlの場合に対照に比べて有意に高かった(p<0.01)。
(1)において、ヒト新生児線維芽細胞NB1RGBに代えて、ヒト線維(繊維)肉腫細胞HT1080を用いた他は、(1)と同様の操作を行った。線維肉腫細胞は線維芽細胞が癌化した細胞であり、皮膚癌細胞として一般的なものである。細胞ヒト線維肉腫細胞HT1080は、財団法人HSRRBから購入した。
<結果>
各濃度の海泥溶媒抽出物と接触させた場合のヒト線維肉腫細胞の生細胞数の相対値、及び570nmにおける吸光度を以下の表2に示す。
<海泥溶媒抽出物の調整>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、(1)と同様の操作により海泥溶媒抽出物を抽出した。最終濃度が6.4mg/mLになるようにD−MEM培地(10%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。その後、D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物最終濃度6.4mg/mL、3.2mg/mL、1.6mg/mL、及び0.8mg/mLの4段階の溶液を調製して使用した。
ヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)を用いて検討した。
即ち、NB1RGB細胞をD−MEM培地(10%ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に4×105個/mLになるように懸濁し、48穴プレートに200μLずつ播種した。各濃度に調製した海泥溶媒抽出物を200μL添加し、48時間培養後、培養上清液200μLをペプシン処理した後、ビオチン標識ヒトI型コラーゲン抗体を用いた競合EIA法(ヒトI型コラーゲンELISA定量キット;コスモバイオ(株))によって定量した。
結果を以下の表3に示す。
<海泥溶媒抽出物の調整>
パラオ共和国のウルクタープル島のミルキーウェイの白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、(1)と同様の操作により海泥溶媒抽出物を抽出した。最終濃度が4.0mg/mLになるようにD−MEM培地(0%(v/v)ウシ胎児血清、100units/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン含有)(シグマアルドリッチ(株))に懸濁後、孔径20μmのメンブランフィルターで濾過して不溶物を除去した。その後、D−MEM培地で希釈することにより、海泥溶媒抽出物最終濃度0.8mg/mL、0.4mg/mL、0.2mg/mL、及び0.1mg/mLの4段階の溶液を調製して使用した。
0.3%コラーゲン溶液(フナコシ株式会社、IAC−03);5倍量D−MEM培地(シグマアルドリッチ(株));50mM 水酸化ナトリウム、260mM 炭酸水素ナトリウム、200mMHEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)溶液の7:3:1混液を氷冷しながら混合しコラーゲンゲルを作成した。
このコラーゲンゲル溶液にヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB、TOYOBO)を1×105個/mLとなるように懸濁し、24穴プレートに400μLずつ播種した。37℃、5%CO2の条件下で30分間培養後、上記のようにして調製した海泥溶媒抽出物を400μL添加し、コラーゲンゲルをプレートから剥離した。15日間、21日間、及び35日間培養後、コラーゲンゲルの直径を測定し以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率=[(B+C)/2A]×100
A:24穴プレートの穴の直径
B:コラーゲンゲルの一方向の直径
C:Bの方向に正交する方向のコラーゲンゲルの直径
結果を以下の表4に示す。また35日後のコラーゲンゲルの写真を図1に示す。
さらに、ミルキーウェイの上記(1)とは異なる場所から採取した白泥(パシフィックサンライズ社)を用いて、同様の操作を行い、24時間、48時間後のコラーゲンゲルの直径を測定し、収縮率を算出した。各ウェル中の海泥溶媒抽出物の最終濃度は4.0mg/mL、2.0mg/mL、0.8mg/mL、0.4mg/mL及び0.2mg/mLである。
結果を以下の表5に示す。
Claims (7)
- 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を有効成分として含むことを特徴とするしわ及び/またはたるみの予防又は改善剤。
- 溶媒が熱溶媒である請求項1に記載の剤。
- 溶媒が、水、エタノール、又は水とエタノールとの混液である請求項1又は2に記載の剤。
- 真皮中のコラーゲン量を増やすことによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
- 線維芽細胞の増殖促進によりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
- 真皮中のコラーゲンゲルの収縮を促進することによりしわ及び/またはたるみを予防又は改善する請求項1〜3のいずれかに記載の剤。
- 海泥の、水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒による抽出物を、その乾燥重量に換算して、全体に対して0.001〜20重量%含む請求項1〜6のいずれかに記載の剤。
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