以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
光学ドライブ装置1は光ディスク11の再生及び記録を行う。光ディスク11としてはCD、DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、多層膜によって多層化された記録面を有する円盤状の光ディスクを用いる。
図1に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、光検出器5、及び処理部6を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、及び光検出器5は光ピックアップを構成する。
光学系3は、回折格子21、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ23、1/4波長板24、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)25を有している。光学系3は、レーザ光源2が発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器5に導く復路光学系としても機能する。
まず、往路光学系では、回折格子21は、レーザ光源2が発した光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解しP偏光としてビームスプリッタ22に入射させる。ビームスプリッタ22は、入射されたP偏光を反射して、その進路を光ディスク11方向に折り曲げる。コリメータレンズ23は、ビームスプリッタ22から入射される光ビームを平行光とする。1/4波長板24は、コリメータレンズ23を通過した光ビームを円偏光とする。1/4波長板24を通過した光ビームは対物レンズ4に入射する。
対物レンズ4は、光学系3から入射される光ビーム(平行光状態の光ビーム)を光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11の記録面で反射してきた戻り光ビームを平行光に戻す。この戻り光ビームは記録面のランド・グループで回折されており、図45を用いて説明したように、0次回折光及び±1次回折光に分解されている。この0次回折光及び±1次回折光は、回折格子21により生ずる0次回折光及び±1次回折光とは異なるもので、紛らわしいので、以下では回折格子21により分解された0次回折光,+1次回折光,−1次回折光をそれぞれメインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2と称し、0次回折光及び±1次回折光という場合には記録面のランド・グループでの回折によって生じた回折光を指すことにする。メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2は、それぞれ独立して、図45及び図46で説明したようなプッシュプル領域を有する反射光を生ずる。
次に、復路光学系では、対物レンズ4を通過し、1/4波長板24を往復することによりS偏光となった光ビームがコリメータレンズ23に入射する。コリメータレンズ23を通過した光ビームは、集光しつつビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、入射してきた光ビームを透過してセンサレンズ25(シリンドリカルレンズ)に入射させる。センサレンズ25は、ビームスプリッタ22から入射された光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された光ビームは光検出器5に入射する。
図2はセンサレンズ25によって付与される非点収差の説明図である。同図に示すように、センサレンズ25は一方方向(同図MY軸方向=子線方向。)にのみレンズ効果を有している。そのため、コリメータレンズ23(図1)とセンサレンズ25によって構成される光学系の焦点の位置は、MY軸方向と、MY軸方向に垂直な方向であるMX軸方向(母線方向)とで異なっている(図2に示すMY軸焦点とMX軸焦点)。なお、MY軸方向とMX軸方向の光ビームの長さが等しい点を合焦点と称する。
光学ドライブ装置1では、焦点を合わせようとする層(アクセス対象層)で反射した光ビーム(信号光)の合掌点がちょうど光検出器5上に位置するようにするための、対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。逆に言えば、アクセス対象層以外の層で反射した光ビーム(迷光)の合掌点は光検出器5上に位置しないこととなり、迷光が光検出器5上に形成するスポット(迷光スポット)は、信号光が光検出器5上に形成するスポット(信号光スポット)に比べ、MY軸方向とMX軸方向の少なくとも一方に広がった形状を有することとなる。
図1に戻る。光検出器5は、光学系3から出射される戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器5は多数の受光面を備えており、各受光面はそれぞれ多数の受光領域に分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)、トラッキング誤差信号TEなどの各種信号を種々の生成処理により生成することが可能となっている。その具体的内容については後述する。
処理部6は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器5の出力信号を受け付けて、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)、トラッキング誤差信号TEを生成する。処理部6の処理の詳細についても後述する。
CPU7はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部6に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部6は、対物レンズ4を制御し、光ディスク11の表面に平行に移動させる(この移動を「レンズシフト」という。)ことによりトラックオン状態を実現する(トラッキングサーボ)。トラックオン状態になると、CPU7は処理部6が生成するRF信号をデータ信号として取得する。
ここで、背景技術による光検出器(図45)を用いて、レンズシフトと迷光について詳しく説明しておく。なお、この説明では、メインビームMBのみに着目する。
初めに、図3(a)(b)は、背景技術による光検出器の受光面101に照射されたメインビームMBのスポットを示している。なお、図3及び後述する図5,図6では、スポット内に光強度の等高線を示している。また、光ビームのスポットには光ディスク11の接線方向と半径方向とにそれぞれ対応する方向があり、以下では、メインビームMBのスポットに関して、接線方向に対応する方向(信号光接線方向)をX軸と称し、半径方向に対応する方向(信号光半径方向)をY軸と称する。
受光面101は正方形であり、メインビームMBのスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向(X軸)に平行な直線に対して線対称となるよう形成されている。そしてさらに、この直線により受光領域101A及び101Bに分割されている。受光面101の各対角線は、上述したMX軸方向及びMY軸方向と一致する。
図3(a)はレンズシフトがない場合の信号光スポットの例であり、図3(b)はレンズシフトによって最大限移動した信号光スポットの例である。同図に示すように、メインビームMBのスポットは、レンズシフトに伴ってY軸方向に移動する。受光面101のサイズは、この移動があってもメインビームMBのスポットの全体が受光できるよう決定されている。なお、以下では、レンズシフトによるスポットの移動方向をレンズシフト方向線LDSと称し、レンズシフトによるスポットの移動の基準となる線をレンズシフト基準線LBSと称する。メインビームMBのスポットのレンズシフト方向線LDS,レンズシフト基準線LBSはそれぞれY軸,X軸と平行である。
次に、図4は、光ディスク11の層構成の一例を示す図である。同図に示すように、この例による光ディスク11は、対物レンズ4に遠い側から順に層L0〜L4を有する5層構成であり、層間隔は層L0と層L1の間から順に16μm,10μm,10μm,16μmとなっている。
なお、以下の説明では、アクセス対象層がLx(ここではx=0〜4)である場合に、層Ly(ここではy=0〜4,y≠x)で反射した迷光を迷光x−yと表すこととし、迷光x−yのスポットのレンズシフト方向線及びレンズシフト基準線をそれぞれLDx−y及びLBx−yと表すことにする。
ここでは、アクセス対象層が層L2である場合のみを取り上げて説明する。
図5は、レンズシフトがない場合(対物レンズ4のシフト量=0)において受光面101上に形成されるスポットを、メインビームMB及び迷光ごとに示したものである。図5の各図に示すように、各迷光が形成するスポットは受光面101のサイズよりも大きく、受光面101を大きくはみ出している。
各迷光のうち迷光2−3,迷光2−4のスポットは、MX軸方向への広がりがMY軸方向への広がりに比べて大きくなっている。迷光2−3,迷光2−4はMY軸焦点(図2)よりもセンサレンズ25に近い位置で光検出器上にスポットを形成しているためである。また、迷光2−3のスポットは迷光2−4に比べて小さくなっている。層L3が層L4に比べてアクセス対象層L2に近いためである。
一方、迷光2−1,迷光2−0のスポットは、MY軸方向への広がりがMX軸方向への広がりに比べて大きくなっている。迷光2−1,迷光2−0はMX軸焦点(図2)よりもセンサレンズ25から遠い位置で光検出器上にスポットを形成しているためである。また、迷光2−1のスポットは迷光2−0に比べて小さくなっている。層L1が層L0に比べてアクセス対象層L2に近いためである。
図5には、各スポットのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線も示している。
図5に示すように、各迷光スポットのレンズシフト方向線及びレンズシフト基準線は、センサレンズ25の影響により、メインビームMBのスポットのレンズシフト方向線LDS及びレンズシフト基準線LBSに比べて斜めに傾いている。
具体的には、レンズシフト方向線及びレンズシフト基準線のいずれも、スポット形成位置が図2の合焦点よりセンサレンズ25に近づくとともにMX軸に近づき、MY軸側焦点でMX軸に一致する。そこからさらにセンサレンズ25に近づくと、MX軸を越えてさらに傾いていく(図5(a)(b))。一方、レンズシフト方向線及びレンズシフト基準線のいずれも、スポット形成位置が図2の合焦点よりセンサレンズ25から遠ざかるとともにMY軸に近づき、MX軸側焦点でMY軸に一致する。そこからさらにセンサレンズ25に近づくと、MY軸を越えてさらに傾いていく(図5(d)(e))。
なお、レンズシフト方向線とレンズシフト基準線とはセンサレンズ25の母線又は子線に対して線対称となっている。
図6は、レンズシフトによって一定方向に移動した各スポットを、図5の各図に対応させて描いたものである。同図に示すように、迷光スポットもメインビームMBのスポットと同様、レンズシフトによって移動し、迷光スポットの強度中心(図中の黒点)はレンズシフト方向線上に位置する。
図7(a)は、図5の各図に示したメインビームMBのスポット、迷光スポット、及びそれぞれのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線を一図に描いたものである。同様に、図7(b)は、図6の各図に示したメインビームMBのスポット、迷光スポット、及びそれぞれのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線を一図に描いたものである。図7(a)(b)では等高線は省略している。各スポットは、図7(a)(b)に示すように光検出器5上に重なって照射される。
さて、ここから光検出器5の構成の詳細及び処理部6の処理の詳細について説明する。
まず、図8は、本実施の形態による光検出器5の上面図であり、受光面及び受光領域を示している。なお、同図には信号光のスポットも描いている。同図に示すように、光検出器5はメインビーム受光面S1aと、サブビーム受光面S2a及びS3aと,迷光受光面S1b〜S6bとの計9つの受光面を有する。
メインビーム受光面S1aは、一辺の長さがx(≧スポット直径r=50μm)の正方形であり、メインビームMBのスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P1MBに対して線対称となるよう形成されている。また、メインビームMBのスポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線Q1MBに対しても線対称となるよう形成されている。尚、一般的にはxの値はスポット直径の約2倍である。これは、非点収差法を使用するフォーカス制御を行うに当たり、スポット全体の信号を受光するのに必要な領域がスポット直径の約2倍であるからである。
メインビーム受光面S1aは、8本の直線により24個の受光領域に分割されている。8本の直線とは、上記直線P1MBの他、直線P1MBに平行で、かつ直線P1MBから距離W4ずつ互いに反対方向に離れた2本の直線P2MB,P3MBと、メインビームMBのスポット中心を通り、かつ信号光半径方向に平行な直線Q1MBと、直線Q1MBに平行で、かつ直線Q1MBから距離W1/2ずつ互いに反対方向に離れた2本の直線Q2MB,Q3MBと、直線Q1MBに平行で、かつ直線Q1MBから距離W3/2ずつ互いに反対方向に離れた2本の直線Q4MB,Q5MBである。
サブビーム受光面S2aはメインビーム受光面S1aと同じ大きさの正方形であり、サブビームSB1のスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P1SB1に対して線対称となるよう形成されている。また、サブビームSB1のスポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線Q1SB1に対しても線対称となるよう形成されている。サブビーム受光面S3aも同様に、メインビーム受光面S1aと同じ大きさの正方形であり、サブビームSB2のスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P1SB2に対して線対称となるよう形成されている。また、サブビームSB2のスポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線Q1SB2に対しても線対称となるよう形成されている。サブビーム受光面S3aはメインビーム受光面S1aを挟んでサブビーム受光面S2aの反対側に配置される。
なお、サブビーム受光面S2a,S3aはメインビーム受光面S1aに対して、信号光接線方向にd1だけ互いに反対方向にずれたところに配置されている。これは、本実施の形態ではメインビームMBとサブビームSB1のスポット位置がd1だけ信号光接線方向にずれているためである。このビームのずれの大きさは光学系3の構成の仕方次第で変わるので、距離d1の具体的な値は、光学系3の構成に応じて適宜決定すればよい。
サブビーム受光面S2a,S3aはそれぞれ、メインビーム受光面S1aと同様に配置された6本の直線(直線Q4MB,Q5MBに対応する直線を除く6本。サブビーム受光面S2aについては直線P1SB1〜P3SB1及び直線Q1SB1〜Q3SB1の6本。サブビーム受光面S3aについては直線P1SB2〜P3SB2及び直線Q1SB2〜Q3SB2の6本。)により16個の受光領域に分割されている。ただし、直線Q2SB1,Q3SB1それぞれと直線Q1SB1との距離、直線Q2SB2,Q3SB2それぞれと直線Q2SB2との距離は、W1/2ではなくW2/2である。W2はW1に等しくてもよいし、等しくなくてもよい。また、直線P2SB1,P3SB1それぞれと直線P1SB1との距離、直線P2SB2,P3SB2それぞれと直線P1SB2との距離は、W4ではなくW5である。なお、W5はW4に等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
なお、ここではメインビーム受光面S1a、サブビーム受光面S2a,S3aを正方形としているが、各受光面の形状は正方形に限定されるものではない。
迷光受光面S1bは、メインビーム受光面S1aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S1aの信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1(≧0)だけ離隔して設けられている。また、迷光受光面S2bも、メインビーム受光面S1aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S1aの信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面S1b,S2bはともに、上述した直線Q2MB,Q3MBにより3つの受光領域に分割されている。
迷光受光面S3bは、サブビーム受光面S2aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S2aの信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。また、迷光受光面S4bも、メインビーム受光面S2aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S2aの信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面S3b,S4bはともに、上述した直線Q2SB1,Q3SB1により3つの受光領域に分割されている。
迷光受光面S5bは、サブビーム受光面S3aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S3aの信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。また、迷光受光面S6bも、メインビーム受光面S3aと信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S3aの信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面S5b,S6bはともに、上述した直線Q2SB2,Q3SB2により3つの受光領域に分割されている。
以上のように、光検出器5の各受光面は複数の受光領域に分割されており、光検出器5は、受光領域ごとに、光ビームの強度を受光領域で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力する。
次に、図9は処理部6の機能ブロックの一部を示す図である。同図に示すように、処理部6はトラッキング誤差信号生成部61(トラッキング誤差信号生成手段)、フォーカス誤差信号生成部62(フォーカス誤差信号生成手段)、全加算信号生成部63(全加算信号生成手段)、及び対物レンズ制御部64を備えている。
トラッキング誤差信号生成部61は、光検出器5の出力信号に基づいてトラッキング誤差信号TEを生成する。具体的な生成処理は多岐にわたるので、後ほどまとめて説明する。
フォーカス誤差信号生成部62は、光検出器5の出力信号に基づいてフォーカス誤差信号FEを生成する。この生成処理の詳細についても後述する。
全加算信号生成部63は、光検出器5の出力信号に基づいてプルイン信号PIとRF信号RFを生成する。プルイン信号PIとRF信号RFはともに、メインビーム受光面S1aを構成する全受光領域分の出力信号を加算した信号(全加算信号)であり、内容的には同じ信号である。ただし、後述する第1の実施の形態では、メインビーム受光面S1aを構成する各受光領域のうち、信号光接線方向中央の幅W3の部分の受光量に基づいて全加算信号を生成する。プルイン信号PIとRF信号RFの違いは用途であり、プルイン信号PIは上述した層認識用に用いられ、RF信号RFはCPUデータ信号として用いられる。この生成処理の詳細についても後述する。
対物レンズ制御部64は、全加算信号生成部63が生成するプルイン信号PIを監視し、プルイン信号PIの値が所定値を超えているときに(層認識)、フォーカス誤差信号生成部62が生成するフォーカス誤差信号FEに基づいて対物レンズ4の制御信号を生成し、対物レンズ4の位置制御のためのアクチュエータ(不図示)に出力する(フォーカスサーボ)。また、トラッキング誤差信号生成部61が生成するトラッキング誤差信号TEに基づいて対物レンズ4の制御信号を生成し、対物レンズ4の位置制御のためのアクチュエータ(不図示)に出力する(トラッキングサーボ)。通常、トラッキングサーボは、フォーカスサーボがかかった状態(対物レンズ4を通過した光ビームが記録面上で合焦している状態。オンフォーカス状態という。)で行われる。
以下、各信号生成部による信号の生成について、詳細に説明する。以下の説明では、光検出器5の分割線の使い方により、第1及び第2の実施の形態に分けて説明する。
[第1の実施の形態]
初めに、図10は本発明の第1の実施の形態による光検出器5の分割線の使い方を示す図である。同図に示すように、第1の実施の形態による光検出器5では、メインビーム受光面S1aは直線P1MB,Q2MB,Q3MB,Q4MB,Q5MBにより分割領域1Aa〜1Jaに10分割されている。これらの分割領域1Aa〜1Jaは、メインビーム受光面S1aの図面下側中央に位置する分割領域1Aaから時計周りに、分割領域1Ca,1Ga,1Ia,1Ea,1Ba,1Fa,1Ja,1Ha,1Daの順で配置されている。
サブビーム受光面S2aは、直線P1SB1,Q2SB1,Q3SB1により分割領域2Aa〜2Faに6分割されている。これらの分割領域2Aa〜2Faは、サブビーム受光面S2aの図面下側中央に位置する分割領域2Aaから時計周りに、分割領域2Ca,2Ea,2Ba,2Fa,2Daの順で配置されている。
サブビーム受光面S3aも、サブビーム受光面S2aと同様に、直線P1SB2,Q2SB2,Q3SB2により分割領域3Aa〜3Faに6分割されている。これらの分割領域3Aa〜3Faは、サブビーム受光面S3aの図面下側中央に位置する分割領域3Aaから時計周りに、分割領域3Ca,3Ea,3Ba,3Fa,3Daの順で配置されている。
図10に示すように、本実施の形態では、直線P2MB,P3MB,P2SB1,P3SB1,P2SB2,P3SB2,Q1MB,Q1SB1,Q1SB2は分割線として用いない。なお、「分割線として用いない」とは、現実に分割しないことの他、処理部6において当該直線を挟んで隣接する分割領域の出力信号を合計して用いることにより、実質的に分割していない状態とすることを含む。
迷光受光面S1b〜S6bについては、対応する直線Q2MB,Q3MBなどにより、それぞれ図10に示す3つの受光領域に分割されている。具体的には、迷光受光面S1bは、図面左側から順に受光領域1Bb,1Ab,1Cbに分割されている。迷光受光面S2bは、図面左側から順に受光領域2Bb,2Ab,2Cbに分割されている。迷光受光面S3bは、図面左側から順に受光領域3Bb,3Ab,3Cbに分割されている。迷光受光面S4bは、図面左側から順に受光領域4Bb,4Ab,4Cbに分割されている。迷光受光面S5bは、図面左側から順に受光領域5Bb,5Ab,5Cbに分割されている。迷光受光面S6bは、図面左側から順に受光領域6Bb,6Ab,6Cbに分割されている。
なお、例えば受光領域1Ca,1Daは、それぞれ直線Q2MB,Q3MBから所定距離g2(>0)だけ離隔して設けられている。受光領域1Ea,1Fa,2Ca,2Da,2Ea,2Fa,3Ca,3Da,3Ea,3Fa,1Bb,1Cb,2Bb,2Cb,3Bb,3Cb,4Bb,4Cb,5Bb,5Cb,6Bb,6Cbについても同様である。このように、各分割線と各受光領域との間は、少し離すようにしてもよい。
本実施の形態による各信号生成部では、以上の各分割領域の一部又は全部を用いて各種信号を生成する。以下、まずトラッキング誤差信号生成部61のトラッキング誤差信号生成処理について説明する。その後、フォーカス誤差信号生成部62及び全加算信号生成部63の信号生成処理について説明する。
[トラッキング誤差信号生成処理]
本実施の形態によるトラッキング誤差信号生成部61は、メインビーム受光面S1aのうち信号光接線方向中央の幅W1の部分(受光領域1Aa及び1Ba)の受光量に基づいてメインプッシュプル信号MPPを生成するとともに、各サブビーム受光面S2a,S3aのうち信号光接線方向中央の幅W2の部分(受光領域2Aa,2Ba,3Aa,及び3Ba)の受光量に基づいてサブプッシュプル信号SPPを生成し、さらにメインプッシュプル信号MPP及びサブプッシュプル信号SPPに基づいてトラッキング誤差信号TEを生成する。
具体的には、トラッキング誤差信号生成部61は、次の式(9)〜式(11)を用いて上記各信号を生成する。ただし、各式中のIXは、受光領域Xに対応する出力信号を表している。また、k1は正の定数であり、その具体的な値は、トラッキング誤差信号TEに現れるレンズシフトオフセットの影響が最小となるよう予め調整される。この調整は、実際の測定結果に基づいて行われる。
また、トラッキング誤差信号生成部61は、メインビーム受光面S1aのうち信号光接線方向中央の幅W1の部分の受光量(受光領域1Aa及び1Ba)に基づいてメインサム信号SUMmを生成するとともに、各サブビーム受光面S2a,S3aのうち信号光接線方向中央の幅W2の部分(受光領域2Aa,2Ba,3Aa,及び3Ba)の受光量に基づいてサブサム信号SUMsを生成し、さらにメインプッシュプル信号MPPをメインサム信号SUMmにより正規化してなる正規化メインプッシュプル信号MPPNと、サブプッシュプル信号SPPをサブサム信号SUMsにより正規化してなる正規化サブプッシュプル信号SPPNとに基づいてトラッキング誤差信号TEを生成することとしてもよい。
この場合の具体的な生成式は、次の式(12)〜式(16)のようになる。ただし、k2は正の定数であり、その具体的な値は、定数k1と同様に、トラッキング誤差信号TEに現れるレンズシフトオフセットの影響が最小となるよう予め調整される。迷光の影響がない場合、通常はk2=1である。
式(16)を用いてトラッキング誤差信号TEを生成することで、式(11)を用いる場合に比べてトラッキング誤差信号TEの振幅を大きくすることが可能になる。正規化メインプッシュプル信号MPPN及び正規化サブプッシュプル信号SPPNは、その生成に用いた受光領域の幅W1,W2が小さいほど、振幅が大きくなるという性質を有している。すなわち、受光領域の幅W1,W2を小さくすれば、トラッキング誤差信号TEのオフセット量(後述)を低減することが可能になる。また、トラッキング誤差信号TEを増幅器で増幅するに当たり、増幅器でゲインを大きくする必要がなくなり、増幅器で発生するノイズが増幅されなくなるので、結果として、トラッキング誤差信号TEのオフセット量を低減することも可能となる。以下、前者について説明する。
図11は、正規化メインプッシュプル信号MPPNをシミュレーションにより幅W1ごとに取得し、対ディスク位置(μm)でプロットした図である。また、図12は、比較例としてのメインプッシュプル信号MPPについて、図11と同じ条件でプロットしてみた図である。図11及び図12には、幅W1=10μm,20μmの場合と、比較例としてW1≧50μm(=スポット直径)の場合とを示している。このシミュレーションでは、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11をトラックピッチが0.32um、溝深さが0.02umの1層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。また、メインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmは、メインビームMBの強度を受光領域1Aa及び1Baでそれぞれ面積分することにより求めた。なお、迷光の影響(迷光の受光量及び信号光と迷光の干渉により生ずるオフセット)については考慮していない。
図11から、幅W1が小さいほど、正規化メインプッシュプル信号MPPNの振幅が大きくなることが理解される。これに対し、図12に示されるように、メインプッシュプル信号MPPの振幅は、幅W1が小さいほど小さくなる。
図13は、幅W1をさらにいろいろな値に振ってメインプッシュプル信号MPPと正規化メインプッシュプル信号MPPNの振幅をそれぞれプロットした図である。シミュレーション条件は図10と同様である。ただし、正規化していないメインプッシュプル信号MPPは記録境界やその他の反射率変動などで振幅が変動することを考慮して、メインプッシュプル信号MPPの振幅を35%にして表示している。同図からも、幅W1を小さくすることで正規化メインプッシュプル信号MPPNは大きくなり、メインプッシュプル信号MPPは小さくなるということが理解される。
加えて、図13によれば、幅W1が10μm未満(スポット直径50μmの20%)になると、正規化メインプッシュプル信号MPPNの振幅はほぼ飽和し、安定する。したがって、安定したトラッキングサーボを実現するために、幅W1はスポット直径の20%未満とすることが好ましいが、実際には製造上の問題で幅W1をスポット直径の20%未満にできない場合があり、この場合には製造限界の値とすることが好ましい。
一般に、信号Sのオフセット量SOFFSETは、振幅SAMPLITUDEとオフセット変位量SDISPLACEMENTとを用いて次の式(17)で表される。なお、オフセット変位量SDISPLACEMENTは、信号Sからオフセットがない信号S0を減算することで得られる。すなわち、SDISPLACEMENT=S−S0である。オフセット変位量SDISPLACEMENTの単位は振幅と同じであり、オフセット量SOFFSETの単位は%となる。
幅W1を小さくすると、正規化メインプッシュプル信号MPPNの振幅が大きくなることは上述した通りである。したがって、式(17)より、幅W1を小さくすると、正規化メインプッシュプル信号MPPNのオフセット量が低減されることになる。正規化サブプッシュプル信号SPPNのオフセット量についても同様であり、幅W2を小さくすることにより低減される。したがって、トラッキング誤差信号TEのオフセット量は、幅W1,W2を小さくすることで、低減される。
なお、光ディスク11が多層化光ディスクである場合には、幅W1が小さいほど、正規化メインプッシュプル信号MPPNのオフセット変位量も小さくなる。すなわち、光ディスク11が多層化光ディスクである場合、各受光領域には、信号光の他に迷光が受光される。正規化メインプッシュプル信号MPPNにはこの迷光分の変位が生ずることになるが、幅W1が小さいほど、信号光の受光量に対する迷光の受光量の割合が小さくなる。これは、迷光の受光量は受光領域S1aの全域にわたってほぼ一様と考えてよいが、信号光の受光量は受光領域S1aの中心に近いほど多くなるためである。したがって、幅W1が小さいほど、正規化メインプッシュプル信号MPPNのオフセット変位量が小さくなり、その結果、式(17)で表される正規化メインプッシュプル信号MPPNのオフセット量は、さらに低減される。
次に、迷光の影響を考慮する場合について説明する。迷光の影響は後述する各種の方法でも低減できるが、ここでは、受光領域の幅W1及びW2を調整することにより迷光の影響を低減する方法について説明する。
図14は、幅W2を100μm(=スポット直径の2倍)に固定し、幅W1を10μmから100μmまで振った場合に、メインプッシュプル信号MPP及びトラッキング誤差信号TEに現れるオフセット(迷光によって生ずるオフセット)のオフセット量(%)をそれぞれシミュレーションした結果を示す図である。一方、図15は、幅W1を100μm(=スポット直径の2倍)に固定し、幅W2を10μmから100μmまで振った場合に、サブプッシュプル信号SPP及びトラッキング誤差信号TEに現れるオフセットのオフセット量(%)をそれぞれシミュレーションした結果を示す図である。
なお、図14及び図15のシミュレーションでは、メインビームMB、サブビームSB1,SB2、及びメインビームの迷光が光検出器5に照射されていると仮定し、各受光領域Xに対応する出力信号IXをシミュレートした。トラッキング誤差信号TEは、式(16)によって生成した。また、レンズシフトの大きさを0mm〜0.3mmまで0.05mm刻みで変化させてシミュレーションを行い、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットの量(%)をプロットした。このシミュレーションで用いる定数k2の値は、次のようにして決定した。すなわち、まず定数k2の値を仮決めし、その状態でレンズシフトの大きさを0mm〜0.3mmの範囲で0.05mm刻みで変化させ、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットの量(%)をシミュレートし、そのプラスの最大値と、マイナスの最大値の絶対値とを取得した。これを定数k2の値を変化させながら繰り返し、取得される2つの値(プラスの最大値及びマイナスの最大値の絶対値)の差が最も小さくなる定数k2の値を用いてシミュレーションを行った。また、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11を層間距離が10μmの2層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。
メインビーム受光面S1a内の各受光領域1Aa,1Baに対応する出力信号の信号光成分I1Aa_SIGNAL,I1Ba_SIGNALについては、メインビームMBの強度を対応する受光領域1Aa,1Baで面積分することにより求めた。一方、サブビーム受光面S2a内の各受光領域2Aa,2Ba,3Aa,3Baに対応する各出力信号の信号光成分I2Aa_SIGNAL,I2Ba_SIGNAL,I3Aa_SIGNAL,I3Ba_SIGNALの強度については、上記出力信号I1Aa_SIGNAL,I1Ba_SIGNALの1/10であるとした。すなわち、これらは次の式(18)及び式(19)により算出した。なお、式(18)及び式(19)は、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とでは、プッシュプル領域E1とプッシュプル領域E2の位置関係が逆になっていることを反映したものである(図45参照。)。
メインビーム受光面S1a内の各受光領域1Aa,1Baに対応する出力信号の迷光成分I1Aa_STRAY,I1Ba_STRAYについては、メインビームMBの迷光の強度を対応する受光領域1Aa,1Baで面積分することにより求め、サブビーム受光面S2a内の各受光領域2Aa,2Ba,3Aa,3Baに対応する各出力信号の迷光成分I2Aa_STRAY,I2Ba_STRAY,I3Aa_STRAY,I3Ba_STRAYについても同様に求めた。
受光領域Xの出力信号IXに現れるメインビームMBとメインビームMBの迷光との干渉成分ΔIXは、次の式(20)により求めた。ただし、φXは干渉光間の位相差である。
以上のようにして各出力信号を算出した結果得られるメインプッシュプル信号MPP、メインサム信号SUMm、サブプッシュプル信号SPP、サブサム信号SUMsは、次の式(21)〜式(24)のようになる。
メインプッシュプル信号MPP及びサブプッシュプル信号SPPの振幅及びオフセット変位量は、式(21)及び式(23)を用いて得た。また、トラッキング誤差信号TEの振幅及びオフセット変位量は、式(21)〜式(24)に示した各信号を用いて式(16)によりトラッキング誤差信号TEを生成することにより得た。
さて、図14及び図15から理解されるように、幅W1,W2のいずれか一方が50μm未満、すなわちスポットの直径未満であれば、トラッキング誤差信号TEについてオフセット量(%)の低減効果が得られる。つまり、幅W1,W2のいずれか一方がスポットの直径の100%未満であれば、トラッキング誤差信号TEに現れる迷光の影響を低減することが可能になる。したがって、幅W1,W2の少なくともいずれか一方はスポットの直径の100%未満とすることが好ましい。さらに、幅W1,W2の両方をスポットの直径の100%未満とすることは、より好ましい。
また、図14と図15を比較すると理解されるように、幅W2を変化させた方がオフセット量(%)の低減効果が高い。これは、メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2との干渉が、メインビームMBの迷光とメインビームMBとの干渉に比べ、オフセット量(%)に大きく影響していることを示しているものと考えられる。したがって、幅W2と幅W1とを異なる値とする場合、特に幅W2をより小さくすることが好ましい。
また、式(23)の干渉成分は、サブビームSB1,SB2の強度とメインビームMBの迷光強度の積の平方根が入った形となっているため、ビーム強度比をkとすると、結局、式(11)において、サブビームSB1,SB2の信号成分とメインビームMBの迷光成分の干渉成分は、メインビームMBの信号成分とメインビームMBの迷光成分との干渉成分にkの平方根を乗算した形で書ける。よって、ビーム強度比kが大きい場合は、干渉の影響はサブビーム受光領域の方がメインビーム受光領域に対して、kの平方根倍されて大きくなり、支配的であることが分かる。これまでの説明では、幅W1や幅W2を小さくすることによって、トラッキング誤差信号TEのプッシュプル振幅を大きくでき、その結果オフセット量(%)低減ができるため、幅W1,W2の両方を小さくすることがより効果的であった。ところで、レンズシフト時に発生するトラッキング誤差信号TEのオフセット変位量を考える場合、メインビームMBの迷光は、レンズシフト発生時に2つのサブビーム用受光領域間で対称性をなくすので、サブビームSB1,SB2の信号光との干渉成分も対称性を失うことにより、オフセット発生の要因となると考えられる。つまり、メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2の信号光との干渉によるものが支配的であるという観点から考えると、特にビーム強度比kが大きい場合は、干渉の影響はサブビーム受光領域の方がメインビーム受光領域に対して、kの平方根倍されて大きくなり、支配的であるので、幅W2のみを小さくすることによっても十分にオフセット量(%)低減が行える。
なお、図14及び図15に示したオフセット量(%)は、迷光成分により生ずるオフセットと干渉成分により生ずるオフセット(干渉オフセット)の両方を含んでいる。しかしながら、前者は後者に比べて非常に小さく、無視できる程度である。以下、再度シミュレーション結果を参照しながら説明する。
図16は、式(16)によって生成されるトラッキング誤差信号TEに現れるオフセットの量(%)をシミュレーションした結果を示す図である。このシミュレーションでは、式(16)右辺の正規化メインプッシュプル信号MPPNには迷光の影響が現れないと仮定した。つまり、式(21)及び式(24)において迷光成分と干渉成分をゼロとした。一方、式(16)右辺の正規化サブプッシュプル信号SPPNについては、メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2との干渉があると仮定した場合と、干渉がないと仮定した場合(式(23)及び式(24)において干渉成分をゼロとした場合)の2通りのシミュレーションを行った。
また、図16のシミュレーションでは、幅W1と幅W2とは等しいとした。さらに、レンズシフトの量を0mm〜0.3mmまで0.05mm刻みで変化させ、それぞれのレンズシフト量について、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットの大きさを幅W1ごとに式(17)により求めた。このシミュレーションで用いる定数k2の値は、図14及び図15の場合と同様にして決定した。そして、図16では、プラス方向にオフセットした場合のオフセット量(%)と、マイナス方向にオフセットした場合のオフセット量(%)とをそれぞれプロットした。その他、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11を層間距離が10μmの2層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。
図16では、メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2との干渉の有無によるトラッキング誤差信号TEのオフセット量(%)の違いを確認することが可能になっており、図16の結果から、迷光成分により生ずるオフセットは幅W1によってもほとんど変わらず、幅W1に応じて大きく変化するのは干渉成分により生ずるオフセットであることが理解される。また、図14及び図15に示したオフセット量(%)の変化も、スポット光直径以下でオフセット量(%)が急激に減少してきているため、ほぼ干渉成分により生ずるオフセットの変化を表していると言える。言い換えると、迷光により生じるオフセットは、信号光との干渉によるオフセットが支配的であることが理解される。
幅W1,W2を小さくすると、式(23)の干渉成分において、サブビームSB1,SB2の信号光成分I1Ba_SIGNAL,I1Aa_SIGNALが小さくなる以上に、迷光成分I2Aa_STRAY,I2Ba_STRAY,I3Aa_STRAY,I3Ba_STRAYが小さくなる。これが、幅W1,W2を小さくすることで干渉により生じるオフセットが減少する原因となっている。単純のため、例えば迷光受光面を用いてサム信号の迷光成分を補正して、サム信号に迷光成分がない場合を考えると、幅W1,W2を小さくすることによりサム信号が小さくなる要因はメインビームMBの強度が小さくなることだけとなる。仮に、式(23)の迷光成分I2Aa_STRAY,I2Ba_STRAY,I3Aa_STRAY,I3Ba_STRAYもメインビームMBと同じ比で小さくなるとすると、干渉成分は信号光成分と迷光成分の掛け算の平方根となっているため、小さくなる比は式(23)とサム信号で等しくなり、干渉の影響は幅W1,W2を小さくしても変化しない。しかし、上記のように迷光成分がより小さくなるため、干渉の影響で生じるオフセット変位量は、幅W1,W2を小さくすると減少し、オフセット量(%)は減少する。これは、迷光の強度I2Aa_STRAY,I2Ba_STRAY,I3Aa_STRAY,I3Ba_STRAYは局所的には強度分布は一定とみなせ、幅W1,W2を小さくすると、ほぼその比で小さくなるのに対して、メインビームMBの強度I1Ba,I1Aaはガウス分布であり、光ビームのスポットの中央部分は強度が大きくなっていることにより、幅W1,W2を小さくした比では小さくならないためである。
ところで、組み付けオフセット(光ピックアップに光検出器を組み付ける際の位置ずれによるオフセット)も考慮すると、少なくとも幅W1については、より小さくすることが好ましい。具体的には70%以下とすることが好ましい。以下、詳しく説明する。
図17及び図18は、光検出器の位置が正しい位置から信号光接線方向に5μmずれていると仮定した他は、それぞれ図14及び図15と同一の条件でトラッキング誤差信号TEのオフセット量(%)をシミュレーションした結果を示す図である。図17に示すように、幅W1がスポットの直径の概ね70%から100%である場合、オフセット量(%)は幅W1がスポットの直径以上である場合に比べてむしろ増加している。このことから、組み付けオフセットが生じ得ることを考慮すると、幅W1を70%以下にすることがより好ましいということが言える。
これに対し、幅W2については、図18に示すように、幅W1のような問題は生じない。ただし、メインビーム受光面S1aとサブビーム受光面S2a,S3aとの形状を同一に保つ観点からは、幅W2も幅W1と同様に70%以下とすることが好ましい。
以下、本実施の形態によるトラッキング誤差信号TEのその他の生成方法について説明する。
1つ目の例は、受光面ごとにプッシュプル信号の正規化を行う例である。この例では、トラッキング誤差信号生成部61は、受光領域2Aa及び2Baの各受光量に基づいてサブプッシュプル信号SPP2とサブサム信号SUMs2を生成し、サブプッシュプル信号SPP2をサブサム信号SUMs2を用いて正規化することにより正規化サブプッシュプル信号SPPN2を生成する。さらに、受光領域3Aa及び3Baの各受光量に基づいてサブプッシュプル信号SPP3とサブサム信号SUMs3を生成し、サブプッシュプル信号SPP3をサブサム信号SUMs3を用いて正規化することにより正規化サブプッシュプル信号SPPN3を生成する。そして、正規化サブプッシュプル信号SPPN2と正規化サブプッシュプル信号SPPN3とに基づいてトラッキング誤差信号TEを生成する。
具体的には、トラッキング誤差信号生成部61は、次の式(27)〜式(31)の演算を行ってトラッキング誤差信号TEを生成する。式(31)中のk3は正の定数であり、レンズシフト時のオフセットが打ち消されるように決定される。通常、k3は1/2となる。k3が1/2となるのは、サブプッシュプル信号SPP2とサブプッシュプル信号SPP3を各個別に正規化しているためであり、通常1となる式(16)のk2とは異なる。
以上のようにしてトラッキング誤差信号TEを生成しても、上記同様に、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットを低減することが可能である。
また、式(16)や式(31)に代え、次の式(32)によりトラッキング誤差信号TEを生成することとしてもよい。こうしても、上記同様に、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットを低減することが可能である。式(32)中のk4A,k4Bは正の定数であり、レンズシフト時のオフセットが打ち消されるように決定される。迷光の影響がない場合のk4Bの最適値はビーム強度比であるが、多層化された光ディスクにおいては、迷光の影響により、ビーム強度比はk4Bの最適値ではなくなる。また、k4Aは、メイン系の信号(メインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMm)とサブ系の信号(サブプッシュプル信号SPPとサブサム信号SUMs)とが互いに独立に変動し得ること(メインビームMBとサブビームSB1,SB2とが照射される記録面上の位置は若干異なるため、いずれか一方の照射域のみにゴミがあったり、いずれか一方の照射域のみが未記録記録境界と重なる場合があり得る。このような場合、メイン系の信号とサブ系の信号とが互いに連関しない変動を呈する可能性がある。)を考えると、通常はk4Bと同様にビーム強度比とするのが好ましい。
式(32)を用いた場合にも、式(16)や式(31)を用いた場合と同様、幅W1,W2のいずれか一方が50μm未満、すなわちスポットの直径未満であれば、トラッキング誤差信号TEについてオフセット量(%)の低減効果が得られる。
図19は、式(32)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEと、式(16)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEとのそれぞれについて、幅W1を100μm(=スポット直径の2倍)に固定し、幅W2を10μmから100μmまで振った場合に、トラッキング誤差信号TEに現れるオフセットの量(%)をシミュレーションした結果を示す図である。式(16)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEに関しては、図15の再掲である。同図に示すように、式(16)と式(32)のいずれにより算出したトラッキング誤差信号TEであっても、オフセット量(%)はほとんど変わらない。これにより、式(32)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEについても、式(16)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEと同様に、オフセット量(%)の低減効果が得られることが示される。
なお、式(32)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEでオフセット量(%)の低減効果が得られるということは、式(11)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEでも同様の効果が得られることを示している。正規化した場合、トラッキング誤差信号TEの振幅TEAMPLITUDE及び変位量TEDISPLACEMEはそれぞれ次の式(33)及び式(34)で表され、したがって、式(32)で算出されるトラッキング誤差信号TEの振幅TEOFFSETは式(35)のように表すことができ、結局、式(11)を用いて算出されるトラッキング誤差信号TEの振幅TEOFFSETに等しくなる。したがって、式(11)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEでも、オフセット量(%)の低減効果が得られることになる。
ただし、式(11)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEではプッシュプル振幅が小さくなるため、後段の増幅回路で大きく増幅する必要がある。したがって、回路部のノイズやオフセットも考慮すると、大幅にオフセット量(%)が増大する可能性があるため、式(16)や式(32)を用いて正規化することが好ましい。
また、本実施の形態では、SUMm/SUMsの値にはレンズシフト時にもほとんど変化が生じない。したがって、SUMm/SUMs=l(lは定数)と置くことができ、これを用いると、式(16)のトラッキング誤差信号TEは次の式(36)のように変形できる。
式(36)は、本実施の形態では式(32)と同一である。したがって、式(32)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEについても、式(16)を用いて算出したトラッキング誤差信号TEと同様に、オフセット量(%)の低減効果が得られることが理解される。
2つ目の例は、受光領域1Aa,1Ba,2Aa,2Ba,3Aa,3Ba,1Ab,2Ab,3Ab,4Ab,5Ab,6Abを用いる例である。この例は、迷光によって生ずるメインサム信号SUMm及びサブサム信号SUMsのオフセット変位量を、迷光のみを受光する受光領域の受光量によってキャンセルしようとするものである。
トラッキング誤差信号生成部61は、受光領域1Ab,2Ab,3Ab,4Ab,5Ab,6Abの各受光量に基づいて、式(12)及び式(14)により求められる各サム信号を補正する。具体的には、次の式(37)及び式(38)により補正処理を行う。ただし、SUMmAは補正後のメインサム信号、SUMsAは補正後のサブサム信号である。また、定数k5〜k7は、各サム信号のオフセット変位量(迷光成分)が最も小さくなるように予め決められる。
このようにして補正した各サム信号では、補正前に比べ、迷光成分が小さくなっている。したがって、補正後の各サム信号を用いて式(13)及び式(15)の生成を行うことにより、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットの量(%)を低減することが可能になる。
なお、ここではメインサム信号とサブサム信号の両方を補正する例を説明したが、どちらか一方の補正だけであってもトラッキング誤差信号TEのオフセット量(%)低減効果はある程度得られる。したがって、どちらか一方だけを補正することとしてもよい。
迷光はアクセス対象層以外の層からの反射光であるため、アクセス対象層からの信号光とは独立して変動する。サム信号にこのような迷光成分が含まれると、正規化の効果が十分に得られず、オフセット量(%)増加の要因となる。したがって、特にサム信号の迷光成分について、式(38)により補正することが好ましい。
また、式(14)ではなく式(26)と式(29)によりサブサム信号を生成する場合には、トラッキング誤差信号生成部61は、サブサム信号SUMs2を受光領域3Ab及び4Abの各受光量に基づいて補正し、サブサム信号SUMs3を受光領域5Ab及び6Abの各受光量に基づいて補正することとすればよい。具体的には、式(39)及び式(40)により補正処理を行う。このようにすれば、式(26)と式(29)によりサブサム信号を生成する場合であっても、上記同様の効果が得られる。
3つ目の例は、2つ目の例と同様、受光領域1Aa,1Ba,2Aa,2Ba,3Aa,3Ba,1Ab,2Ab,3Ab,4Ab,5Ab,6Abを用いる例である。そして、迷光によって生ずるメインサム信号SUMm及びサブサム信号SUMsのオフセットの変位量に加え、同じくメインプッシュプル信号MPP及びサブプッシュプル信号SPPに生ずるオフセットの変位量もキャンセルできるようにする。
各サム信号については、2つ目の例と同様に補正する。ここではさらに、受光領域1Ab,2Ab,3Ab,4Ab,5Ab,6Abの各受光量に基づいて、式(9)及び式(10)により求められる各プッシュプル信号も補正する。具体的には、式(41)及び式(42)により補正処理を行う。ただし、MPPAは補正後のメインプッシュプル信号、SPPAは補正後のサブプッシュプル信号である。また、定数k8〜k10は、各プッシュプル信号のオフセット変位量が最も小さくなるよう、実験により最適化する。
このようにして補正した各プッシュプル信号では、補正前に比べ、迷光によって生ずるオフセットの変位量が小さくなっている。したがって、補正後の各プッシュプル信号及び各サム信号を用いて式(13)及び式(15)の生成を行うことにより、トラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットの量(%)をさらに低減することが可能になる。
なお、ここでは各プッシュプル信号及び各サム信号のすべてを補正する例を説明したが、必ずしもすべてを補正する必要があるわけではなく、どの信号を補正するかは、実験の結果を見て適宜決定すべき問題である。したがって、実験の結果によっては、サブプッシュプル信号SPPとサブサム信号SUMsのみを補正する場合などがあり得る。
また、式(10)ではなく式(25)と式(28)によりサブプッシュプル信号を生成する場合には、トラッキング誤差信号生成部61は、サブプッシュプル信号SPP2を受光領域3Ab及び4Abの各受光量に基づいて補正し、サブプッシュプル信号SPP3を受光領域5Ab及び6Abの各受光量に基づいて補正することとすればよい。具体的には、式(43)及び式(44)により補正処理を行う。このようにすれば、式(25)と式(28)によりサブプッシュプル信号を生成する場合であっても、上記同様の効果が得られる。
4つ目の例は、図10に示したすべての受光領域を用いる例である。この例は、光ピックアップに光検出器を組み付ける際の位置ずれによりスポットが信号光接線方向に横ずれした場合に備え、横ずれの影響(組み付けオフセット)を補正しようとするものである。
典型的な例では、トラッキング誤差信号生成部61は、受光領域1Ca〜1Jaの各受光量に基づいて、式(13)により求められる正規化メインプッシュプル信号MPPNを補正する。具体的には、式(45)により補正処理を行う。ただし、MPPNAは補正後の正規化メインプッシュプル信号MPPNである。また、定数k11は、横ずれによって正規化メインプッシュプル信号に生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。
式(45)の第2項カッコ内は組み付けオフセットの量を反映しているので、式(13)により求められる正規化メインプッシュプル信号MPPNに生ずる組み付けオフセットを好適に除去できることになる。
ここで、図20は、式(45)を用いて補正処理を行った場合のシミュレーション結果を示す図である。同図には、式(45)による補正前と補正後のトラッキング誤差信号TEに生ずる組み付けオフセットの量を、横ずれの量ごとに示している。このシミュレーションではW1=20μmとし、迷光及びレンズシフトは考慮していない。また、トラック中心の位置での正規化メインプッシュプル信号をシミュレーションし、ゼロからの変位をオフセットとした。図20の結果から、補正処理によりオフセット量(%)が低減していることが理解される。
また、図21は、式(16)において、横ずれ量5μmであって、光ビームの焦点がトラック中心にある場合の組み付けオフセットの量を、幅W1(=幅W2)ごとに示したものである。同図の結果から、幅W1≦25μmの範囲では、幅W1が小さいほどオフセット量(%)が小さくなっていることが理解される。又、この場合、幅W1≦10μmの範囲では、幅W1=50μm(ビーム径)の場合と比較して同等以下のオフセット量(%)となるので、幅がビーム径の20%未満において、組み付けオフセットの問題は起きにくくなる。
さらに、トラッキング誤差信号生成部61は、正規化メインプッシュプル信号MPPNに生ずる組み付けオフセットを除去するために、受光領域1Ca〜1Jaの各受光量に加え、さらに受光領域1Bb,1Cb,2Bb,2Cbの各受光量にも基づいて正規化メインプッシュプル信号MPPNを補正することとしてもよい。具体的には、次の式(46)により正規化メインプッシュプル信号MPPNを補正することとしてもよい。なお、定数k12〜k14は、正規化メインプッシュプル信号MPPNに生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。また、それぞれの受光領域に対して、個別に補正を行ってもよい。
他にも、本例による補正処理には様々なパターンが考えられる。1つ目のパターンでは、トラッキング誤差信号生成部61は、正規化サブプッシュプル信号SPPNに生ずる組み付けオフセットを除去するために、受光領域2Ca,2Da,3Ca,3Da,2Ea,2Fa,3Ea,及び3Faの各受光量に基づいて正規化サブプッシュプル信号SPPNを補正する。具体的には、式(47)により正規化サブプッシュプル信号SPPNを補正する。ただし、SPPNAは補正後の正規化メインプッシュプル信号SPPNである。なお、定数k15は、正規化サブプッシュプル信号SPPNに生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。
2つ目のパターンでは、トラッキング誤差信号生成部61は、正規化サブプッシュプル信号SPPNに生ずる組み付けオフセットを除去するために、受光領域2Ca,2Da,3Ca,3Da,2Ea,2Fa,3Ea,及び3Faの各受光量に加え、さらに受光領域3Bb,3Cb,4Bb,4Cb,5Bb,5Cb,6Bb,及び6Cbの各受光量にも基づいて正規化サブプッシュプル信号SPPNを補正する。具体的には、式(48)により正規化サブプッシュプル信号SPPNを補正する。なお、定数k16〜k18は、正規化サブプッシュプル信号SPPNに生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。また、それぞれの受光領域に対して、個別に補正を行っても良い。
3つ目のパターンは、式(25)〜式(30)の演算を行って正規化サブプッシュプル信号SPPN2及びSPPN3を生成する場合に適用されるものである。トラッキング誤差信号生成部61は、正規化サブプッシュプル信号SPPN2に生ずる組み付けオフセットを除去するために、受光領域2Ca,2Da,2Ea,及び2Faの各受光量に基づいて正規化サブプッシュプル信号SPPN2を補正する。具体的には、式(49)により正規化サブプッシュプル信号SPPN2を補正する。ただし、SPPN2Aは補正後の正規化メインプッシュプル信号SPPN2である。なお、定数k19は、正規化サブプッシュプル信号SPPN2に生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。
また、トラッキング誤差信号生成部61は、正規化サブプッシュプル信号SPPN3に生ずる組み付けオフセットを除去するために、受光領域3Ca,3Da,3Ea,及び3Faの各受光量に基づいて正規化サブプッシュプル信号SPPN3を補正する。具体的には、式(50)により正規化サブプッシュプル信号SPPN3を補正する。ただし、SPPN3Aは補正後の正規化メインプッシュプル信号SPPN3である。なお、定数k20は、正規化サブプッシュプル信号SPPN3に生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。
なお、上記のようにして正規化サブプッシュプル信号SPPN2又はSPPN3を補正するにあたり、トラッキング誤差信号生成部61は、さらに受光領域3Bb,3Cb,4Bb,4Cb,5Bb,5Cb,6Bb,及び6Cbの各受光量にも基づいて正規化サブプッシュプル信号SPPN2又はSPPN3を補正することとしてもよい。一例としては、式(51)や式(52)により正規化サブプッシュプル信号SPPN2又はSPPN3を補正することとしてもよい。なお、定数k21〜k26はそれぞれ、正規化サブプッシュプル信号SPPN2及びSPPN3に生ずる組み付けオフセットが最も小さくなるよう、実験により最適化する。また、それぞれの受光領域に対して、個別に補正を行っても良い。
5つ目の例は、メインビーム受光面S1a内の各受光領域を用いる例である。この生成処理は、受光領域1Aaと受光領域1Ca及び1Daとの間等に所定距離g2(≧0)の間隙を設けたことを利用するものである。
トラッキング誤差信号生成部61は、受光領域1Aa及び1Baの各受光量に基づいてプッシュプル信号XPP及びサム信号SUMxを生成し、プッシュプル信号XPPをサム信号SUMxを用いて正規化することにより正規化プッシュプル信号XPPNを生成する。また、トラッキング誤差信号生成部61は、受光領域1Ca〜1Jaの各受光量に基づいてプッシュプル信号YPP及びサム信号SUMyを生成し、プッシュプル信号YPPをサム信号SUMyを用いて正規化することにより正規化プッシュプル信号YPPNを生成する。そして、これらの各信号を用いてトラッキング誤差信号TEを生成する。
具体的には、トラッキング誤差信号生成部61は、次の式(53)〜式(59)の演算を行ってトラッキング誤差信号TEを生成する。
ここで、図22は、レンズシフトによって生ずるオフセットの量を、W1=10μm,W1=20μm,W1≧50μmの場合の各正規化プッシュプル信号XPPNと、W1+2g2=10μm,20μmの場合の各正規化プッシュプル信号YPPNとについて、対レンズシフト量(mm)で示した図である。同図に示すように、正規化プッシュプル信号YPPNでは、正規化プッシュプル信号XPPNに比べるとレンズシフトによって生ずるオフセットの量が大きくなっている。
また、図23は、図22と同様の各正規化プッシュプル信号XPPN及び各正規化プッシュプル信号YPPNを、対ディスク位置(μm)でプロットした図である。同図に示すように、正規化プッシュプル信号XPPNでは、正規化プッシュプル信号YPPNに比べると振幅が大きくなっている。
図22及び図23から理解されるように、正規化プッシュプル信号XPPNと正規化プッシュプル信号YPPNとでは、レンズシフトによって生ずるオフセットの量の大小関係と、振幅の大小関係とが逆になっている。したがって、定数k27を小さくして、式(59)のようにトラッキング誤差信号TEを生成することで、正規化プッシュプル信号MPPをトラッキング誤差信号TEとして用いる場合に比べ、正規化プッシュプル信号YPPNで発生するオフセットの量を小さくすることができる。
なお、式(59)に代えて次の式(60)によりトラッキング誤差信号TEを生成するようにしてもよい。このようにしても、上記同様の効果が得られる。
以上、トラッキング誤差信号生成部61によるトラッキング誤差信号TEのその他の算出方法について説明した。
[フォーカス誤差信号生成処理]
次に、本実施の形態によるフォーカス誤差信号生成部62のフォーカス誤差信号生成処理について説明する。
フォーカス誤差信号生成部62は、メインビーム受光面S1aを構成する各受光領域のみを用いてフォーカス誤差信号FEを生成する。具体的には、次の式(61)の演算を行ってフォーカス誤差信号FEを生成する。
ここで、図24は、光検出器5の上面図から、メインビーム受光面S1a部分のみを抜き出した図である。同図に示す例では、図8に示した直線Q1MBも分割線として用い、受光領域1Aaを受光領域1AaL,1AaRに、受光領域1Baを受光領域1BaL,1BaRにそれぞれ分割している。このようにした場合、フォーカス誤差信号生成部62は、式(61)に代えて次の式(62)の演算を行ってフォーカス誤差信号FEを生成することが好適である。ただし、図25に示すように、式(61)を用いたとしても特段問題が発生するわけではない。また、スポットが左右にずれたとしても、式(62)で算出されるフォーカス誤差信号FEへの影響はほとんどない。図25は、光学倍率15倍、メインビーム受光面S1aの大きさが100μm四方であるとして、式(61)と式(62)をシミュレーションした結果を示す図である。なお、このシミュレーションではW1=10μm、g2=0μmとした。
また、フォーカス誤差信号FEについても、トラッキング誤差信号と同様に正規化してもよい。
以上、フォーカス誤差信号生成部62の信号生成処理について説明した。
[全加算信号生成処理]
次に、全加算信号生成部63の全加算信号生成処理について説明する。以下では、プルイン信号PIに着目して説明する。
全加算信号生成部63は、メインビーム受光面S1aを構成する各受光領域のうち、信号光接線方向中央の幅W3の部分(受光領域1Aa〜1Fa)の受光量に基づいてプルイン信号PIを生成する。具体的には、次の式(63)の演算を行ってプルイン信号PIを生成する。
プルイン信号PIは対物レンズ制御部64において層認識のために用いられる信号であるが、幅W3を適切に設定することにより、多層化光ディスクにおける迷光の影響、さらには各記録層間の反射率のバラツキによらず、光ビームの焦点位置が記録層間を移動する際のプルイン信号PIの谷間(極小部)を確保できるようになる。以下、詳しく説明する。
初めに、図26は、式(62)により生成したフォーカス誤差信号FE、及び式(63)により生成したプルイン信号PIのシミュレーション結果を、対焦点距離(μm)でプロットしたものである。プルイン信号PIについては、幅W3=10μm,20μm,50μm,80μm,100μmの5通りの場合を示している。ただし、プルイン信号PIの振幅については、比較のため、同程度の振幅になるよう適宜補正している。その他、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11を層間距離が10μmの2層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとしてシミュレーションを行った。
図26において、フォーカス誤差信号FEがプラス側からマイナス側にゼロクロスする焦点距離(2箇所)が、記録面に焦点が合う焦点距離である。プルイン信号PIは、この2箇所の焦点距離付近にピークを有しているが、幅W3が小さいほど、2箇所の焦点距離の間での信号の落ち込みが大きくなっている。したがって、対物レンズ制御部64がフォーカスサーボを行う際、幅W3が小さいほどプルイン信号PIによる層認識が容易になり、したがいフォーカスサーボを行うことができるようになる。また、同じ信号をRF信号として使用することにより、データ信号を検出することも可能である。
層認識の容易さは、次の式(64)に示す層間分離指標BAによって表される。ただし、Δ1及びΔ2は、図26にも例示しているように、プルイン信号PIの複数のピークのうち最も振幅が小さいピークの振幅をΔ1、複数の谷間(図26では谷間は1つしか描かれていないが、3層以上の多層化光ディスクを用いる場合、プルイン信号PIには複数の谷間が現れる。)のうち最も落ち込みが小さい谷間の振幅差をΔ2としたものである。層認識は、層間分離指標BAが0より大きければ可能であり、層間分離指標BAが大きいほど容易になる。
図27は、各記録層間の同じ半径位置(光ディスクの中心からの距離が同じ地点)での反射率のバラツキが0%(バラツキなし)である場合と、65%(規格で許される最大値)である場合とについて、幅W3を横軸として層間分離指標BAをプロットした図である。シミュレーション条件は図26と同一である。
図27に示すように、反射率のバラツキが0%である場合には、層間分離指標BAは幅W3の値によらず0より大きい値となる。したがって、層認識は可能である。これに対し、反射率のバラツキが65%である場合には、幅W3が概ね80μm以上である場合には層間分離指標BAが0より小さく、層認識が不可能となっている。一方、幅W3が概ね80μm以上である場合には層間分離指標BAが0より大きくなり、層認識が可能となっている。この結果より、幅W3は少なくとも80μm以下(光ビームのスポットの直径の160%以下)でなければならないと言える。
また、図27から理解されるように、幅W3が概ね50μm以下となると、反射率のバラツキが0%,65%いずれの場合についても、層間分離指標BAの値が安定してくる。幅W3の値やスポットの直径にもバラツキが生ずることがあるが、幅W3を概ね50μm以下(光ビームのスポットの直径の100%以下)としておけば、幅W3やスポットの直径のバラツキによらず、安定して層認識を行うことが可能になる。つまり、スポットの直径がバラつくと幅W3がバラついていなかったとしても、同一スポット径に対し、幅W3がバラツイているとも言えるので、幅W3を概ね50μm以下とすることがより好ましい。
以上、全加算信号生成部63の信号生成処理について説明した。
以上説明してきたように、本実施の形態の光学ドライブ装置1を用いることにより、各信号に生ずる変化が、光ビームの焦点合わせに与える影響を低減できる。具体的には、干渉オフセットや組み付けオフセットがトラッキングサーボに与える影響を低減できる。また、多層化光ディスクの各記録層間の反射率のバラツキによらず、プルイン信号PIによる層認識が可能になる。
[第2の実施の形態]
図28は、本発明の第2の実施の形態による光検出器5の分割線の使い方を示す図である。同図に示すように、第2の実施の形態による光検出器5では、メインビーム受光面S1aは直線P1MB,P2MB,P3MB,Q1MBにより分割領域A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2に8分割されている。これらの分割領域は、メインビーム受光面S1aの図面左上側に位置する分割領域A1から時計周りに、分割領域D1,D2,C2,C1,B1,B2,A2の順で配置されている。以下、分割領域A1,D1をまとめて受光領域S1Aと称し、分割領域B1,C1をまとめて受光領域S1Bと称する。
サブビーム受光面S2aも同様に、直線P1SB1,P2SB1,P3SB1,Q1SB1により分割領域E1,E2,F1,F2,G1,G2,H1,H2に8分割されている。これらの分割領域は、サブビーム受光面S2aの図面左上側に位置する分割領域E1から時計周りに、分割領域H1,H2,G2,G1,F1,F2,E2の順で配置されている。以下、分割領域E1,H1をまとめて受光領域S2Aと称し、分割領域F1,G1をまとめて受光領域S2Bと称する。
サブビーム受光面S3aも同様に、直線P1SB2,P2SB2,P3SB2,Q1SB2により分割領域E3,E4,F3,F4,G3,G4,H3,H4に8分割されている。これらの分割領域は、サブビーム受光面S3aの図面左上側に位置する分割領域E3から時計周りに、分割領域H3,H4,G4,G3,F3,F4,E4の順で配置されている。以下、分割領域E3,H3をまとめて受光領域S3Aと称し、分割領域F3,G3をまとめて受光領域S3Bと称する。
図28に示すように、本実施の形態では、直線Q2MB,Q3MB,Q4MB,Q5MB,Q2SB1,Q3SB1,Q2SB2,Q3SB2は分割線として用いない。なお、「分割線として用いない」とは、現実に分割しないことの他、処理部6において当該直線を挟んで隣接する分割領域の出力信号を合計して用いることにより、実質的に分割していない状態とすることを含む。
迷光受光面S1b〜S6bについては、分割せずに用いる。すなわち、迷光受光面S1b〜S6bはそれぞれ、単一の受光領域I〜Nにより構成されている。
本実施の形態による各信号生成部では、以上の各受光領域の一部又は全部を用いて各種信号を生成する。フォーカス誤差信号生成部62及び全加算信号生成部63の信号生成処理については第1の実施の形態と同様であるので説明を省略し、以下ではトラッキング誤差信号生成部61のトラッキング誤差信号生成処理について説明する。
本実施の形態によるトラッキング誤差信号生成部61は、メインビーム受光面S1aのうち直線P1MBから両側にそれぞれ幅W4の部分を除いた部分(受光領域S1A,S1B)の受光量に基づいてメインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmを生成する。また、サブビーム受光面S2a,S3aのうち直線P1SB1,P1SB2から両側にそれぞれ幅W5の部分を除いた部分の受光量に基づいてサブプッシュプル信号SPP及びサブサム信号SUMsを生成する。さらに、メインプッシュプル信号MPPからサブプッシュプル信号SPPを所定の第1の増幅率k30で増幅してなる信号を減算してなる差動プッシュプル信号PPを、メインサム信号SUMmにサブサム信号SUMsを所定の第2の増幅率k31で増幅してなる信号を加算してなる正規化用サム信号SUMで除算することにより、トラッキング誤差信号TEを生成する。
具体的には、トラッキング誤差信号生成部61は、次の式(65)〜式(71)を用いて上記各信号を生成する。なお、定数k30は、レンズシフトによって差信号PP若しくは正規化されたトラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。定数k31については、後に詳細に説明する。
なお、トラッキング誤差信号生成部61は、迷光受光面I〜Nを用いて、上記プッシュプル信号PP、サム信号SUMを補正してもよい。具体的には、トラッキング誤差信号生成部61は、式(65)〜式(69)の演算に代え、式(72)〜式(75)の演算を行うこととしてもよい。なお、定数k32〜k37は、レンズシフトによって差信号PP若しくは正規化されたトラッキング誤差信号TEに生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。
以上のようにして生成した正規化用サム信号SUMには、対物レンズ4がシフトしているとき、上述した「サム信号変動」が現れる。この「サム信号変動」は、上述したようにトラッキング誤差信号TEの「プッシュプル波形の非対称性」の原因となるため、できるだけ小さくすることが好ましい。「サム信号変動」の大きさは定数k31の値により制御することができるので、以下では、「サム信号変動」の大きさをできるだけ小さくするために好ましい定数k31の値について説明する。
図29は、式(68)〜式(70)により求められる正規化用サム信号SUMをシミュレーションにより定数k31の値ごとに取得し、対ディスク位置(μm)でプロットした図である。また、図30は、式(65)〜式(71)により求められるトラッキング誤差信号TEをシミュレーションにより定数k31の値ごとに取得し、対ディスク位置(μm)でプロットした図である。また、図31は、図30に示したトラッキング誤差信号TEの中点レベル((最大値+最小値)/2)を定数k31の値ごとにプロットした図である。図29〜図31のシミュレーションでは、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11をトラックピッチが0.32um、溝深さが0.02umの1層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。また、レンズシフトは0.3mmとし、W4=W5=22.5μmとした。さらに、メインビームMBとサブビームSB1,SB2それぞれとの光強度比は10:1とした。
図29に示されるように、定数k31が5である場合には正規化用サム信号SUMに「サム信号変動」は現れない。これを反映し、図31に示されるように、定数k31が5である場合のトラッキング誤差信号TEの中点レベルは0となっている。つまり、トラッキング誤差信号TEに「プッシュプル波形の非対称性」が現れていない。一方、図29によれば、定数k31が5から離れるにしたがい、正規化用サム信号SUMには「サム信号変動」が大きく現れるようになっている。これを反映し、図31に示されるように、トラッキング誤差信号TEに現れる「プッシュプル波形の非対称性」も大きくなっている。したがって、このシミュレーションの例では、定数k31は5とすることが最も好ましいことになる。
このシミュレーションにおける「5」という数字はビーム強度比に等しい値である。結局、少なくとも迷光の影響がない場合、定数k31の値についてはビーム強度比に等しい値とすることが最も好ましいといえる。
ただし、実際には迷光の影響があるため、ビーム強度比が定数k31の最適値とはならない。定数k31の値を厳密にビーム強度比に等しい値とすることは通常困難である。定数k31の値の決定は正規化用サム信号SUMを実際に測定する方法(詳しくは後述する。)により行われるのが好ましいが、実質的にビーム強度比に等しい程度で構わない。例えば20%以内の誤差は許容される。また、式(6)に示した背景技術(k31=1に相当する。)との対比の観点からは、少なくとも定数k31の値を1より大きい値とすれば、図31に示されるように、「プッシュプル波形の非対称性」を小さくする効果が得られる。
以下、定数k30,k31の具体的な決定手順(増幅率決定方法)について説明する。以下の手順では、初めに定数k31(第2の増幅率)を決定した後、決定した定数k31を適用したトラッキング誤差信号TEを用いて、定数k30(第1の増幅率)を決定する。
なお、ここで説明する手順は、光ディスク11の再生や記録を行う際に前処理として行うことが好適である。或いは、光ディスク11の種類ごとに工場で予め行い、光ディスク11の種類ごとの定数k30,k31の値を、光学ドライブ装置1内の図示しないメモリに書き込んでおき、光ディスク11の再生や記録を行う際、その種類に対応付けて記憶される定数k30,k31の値をメモリから読み出し、トラッキング誤差信号TEを生成する際に用いるようにしてもよい。これらの処理を採用するのは、ディスク11の層数や層間距離によって、定数k30,k31の最適値が異なるからである。
さて、図32は、定数k30,k31を決定するためのCPU7の処理手順を示すフロー図である。同図に示すように、CPU7は、まず初めにフォーカスサーボを起動し、オンフォーカスの状態とする(ステップS1)。次に、対物レンズ4を例えば0.3μmシフトさせ、レンズシフト状態を作り出す(ステップS2)。そして、光ディスク11を回転させながら式(70)により正規化用サム信号SUMを取得し(ステップS3)、この正規化用サム信号SUMにサム信号変動が生じないように、定数k31の値を決定する(ステップS4)。
図33は、ステップS4において定数k31の値を決定する方法の具体的な例を示す図である。この例では、正規化用サム信号SUMのトラックジャンプに伴う変動のトップホールド値とボトムホールド値の差が所定の閾値以下となるように定数k31の値を決定する。
図33の正規化用サム信号SUMには、図29に示したものと同一のものを使用している。横軸は時刻であり、定数k31の値を1(初期値)から5まである周期間隔で順に変化させてプロットしている。図33に示すように、定数k31の値を切り替える時には一時的にドループレートを上げ、トップホールド信号とボトムホールド信号が正規化用サム信号SUMに追従できるようにしてもよい。
図33に示すように、定数k31の値が1(初期値)から5まで変化するに従い、トップホールド信号とボトムホールド信号の振幅差(トップホールド信号−ボトムホールド信号)は次第に小さくなっている。そして、例えば振幅差の閾値を0.05とすれば、図示した時刻Xの時点で振幅差が閾値以下となる。したがって、時刻Xの時点での定数k31の値5が、正規化用サム信号SUMにサム信号変動が生じない定数k31の値として決定される。又は、時刻Xの時点での定数k31の値5が、正規化用サム信号SUMのサム信号変動が小さくなる定数k31の値として決定される。なお、振幅差と閾値の比較は、コンパレータにこれらを入力し、その結果コンパレータから出力される信号の論理値を判定することにより行えばよい。
図32に戻る。ステップS4で定数k31の値を決定した後は、オンフォーカス状態及びレンズシフト状態を維持し、かつ光ディスク11を引き続き回転させながら、式(71)によりトラッキング誤差信号TEを取得する(ステップS5)。このとき、定数k31としてはステップS4で決定した値を用いる。そして、トラッキング誤差信号TEの変動中間値がゼロとなるように(レンズシフトによって生ずるオフセットが打ち消されるように)、定数k30の値を決定する(ステップS6)。
以上のようにして定数k30,k31の値を決定することで、サム信号変動が実質的に生じない正規化用サム信号SUMに基づいて生成されるトラッキング誤差信号TEを用いて定数k30を決定することができるようになる。したがって、トラッキング誤差信号TEにサム信号オフセットが生じてしまうことを実質的に防止できる。言い換えれば、サム信号オフセットがトラッキングサーボに与える影響を低減できる。
定数k30,k31の決定方法の変形例について説明する。図34は、本変形例によるCPU7の処理手順を示すフロー図である。同図に示すように、本変形例による処理でも、CPU7は、まず初めにフォーカスサーボを起動し、オンフォーカスの状態とする(ステップS11)。
次に、CPU7は、ステップS12〜S19の処理により定数k31の値を決定する。具体的には、CPU7は、まず初めに、定数k31の値を変更しながら、ステップS13〜S17の処理を行う(ステップS12,S18)。ここで選択される定数k31の具体的な値については、複数個の値が予め決められている。
ステップS13〜S17の処理では、CPU7はまず、対物レンズのシフト量を変更しながら、ステップS14,S15の処理を行う(ステップS13,S16)。ここで選択されるシフト量の具体的な値についても、複数個の値が予め決められている。
ステップS14の処理では、CPU7は、光ディスク11を回転させながら式(70)により正規化用サム信号SUMを取得する。そして、ステップS15の処理において、CPU7は、ステップS14で取得した正規化用サム信号SUMに現れるサム信号変動の大きさを取得する。
予定したすべてのシフト量についてステップS14,S15の処理が完了したら、CPU7は次に、ステップS15において取得された複数のサム信号変動の中から最大値を選択し、定数k31の値と対応付けて記憶させる(ステップS17)。
そして、予定したすべての定数k31の値についてステップS13〜S17の処理が終了したら、CPU7は、それぞれの定数k31の値について記憶した最大値の中から最も小さい値を選ぶ。そして、選んだ値と対応付けて記憶されている定数k31の値を、最終的な定数k31の値として採用する(ステップS19)。ここまでの処理により、定数k31の値が決定される。以降の処理においては、定数k31の値としては、ステップS19で採用した値を用いる。
次に、CPU7は、ステップS20〜S27の処理により定数k30の値を決定する。具体的には、CPU7は、まず初めに、定数k30の値を変更しながら、ステップS21〜S25の処理を行う(ステップS20,S26)。ここで選択される定数k30の具体的な値についても、複数個の値が予め決められている。
ステップS21〜S25の処理では、CPU7はまず、対物レンズのシフト量を変更しながら、ステップS22,S23の処理を行う(ステップS21,S24)。ここで選択されるシフト量の具体的な値についても、複数個の値が予め決められている。この複数個の値は、ステップS13,S16で選択される複数個の値と同一で構わない。
ステップS22の処理では、CPU7は、光ディスク11を回転させながら式(71)によりトラッキング誤差信号TEを取得する。そして、ステップS23の処理において、CPU7は、ステップS22で取得したトラッキング誤差信号TEの変動中間値を取得する。
予定したすべてのシフト量についてステップS22,S23の処理が完了したら、CPU7は次に、ステップS23において取得された複数の変動中間値の絶対値の中から最大値を選択し、定数k30の値と対応付けて記憶させる(ステップS25)。
そして、予定したすべての定数k30の値についてステップS21〜S25の処理が終了したら、CPU7は、それぞれの定数k30の値について記憶した最大値の中から最も小さい値を選ぶ。そして、選んだ値と対応付けて記憶されている定数k30の値を、最終的な定数k30の値として採用する(ステップS27)。ここまでの処理により、定数k30の値が決定される。
サム信号オフセット及びレンズシフトオフセットが対物レンズのシフト量によって変化することは避けられないが、以上のようにして定数k30,k31の値を決定することで、そうであるとしても、トラッキング誤差信号TEに生ずるサム信号オフセット及びレンズシフトオフセットが、少なくとも極端に大きな値となってしまうことを防止できる。なお、対物レンズのシフト量は、例えば、−0.3mmから0.3mmの範囲である。
以下、メインビーム受光面S1aのうち直線P1MBから両側にそれぞれ幅W4の部分と、サブビーム受光面S2a,S3aのうち直線P1SB1,P1SB2から両側にそれぞれ幅W5の部分とを用いず、かつ式(71)を用いてトラッキング誤差信号TEを生成することによる効果と、幅W4,W5の最適値について説明する。
まず初めに効果について、シミュレーション結果を参照しながら説明する。以下のシミュレーションでは、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11をトラックピッチが0.32um、溝深さが0.02umの1層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。また、対物レンズのNA=0.85、波長λ=405nmとした。
まず初めに比較例として、W4=W5=0、k
38=1として次の式(76)により生成するトラッキング誤差信号を図35に示す。なお、式(76)中のメインプッシュプル信号MPPなどには式(65),式(66),式(68),式(69)により生成されるものを用いた。
さらに、もうひとつの比較例として、W4=W5≠0、k38=1として式(76)により生成するトラッキング誤差信号を図36に示す。図36と図35を比較すると、図36ではプッシュプル振幅が4倍近くに大きくなるが、レンズシフトの大きさに応じて大きく変動していることが理解される。
さて、図37は、W4=W5≠0、k30=k31=5として式(71)により生成されたトラッキング誤差信号TEを示している。なお、上述したように、定数k30と定数k31の値は、図32や図34に示した手順によって個別にその最適値を決めていくことが好ましく、そのため必ずしも同一の値とはならないが、ここではk30=k31としている。実際には、定数k30と定数k31は近い値となるため、システムの簡略化などの目的でどちらか一方の値を他方の値と同じ値にすることは、実務上の選択肢としてはあり得ることである。
図37から明らかなように、式(71)により生成されたトラッキング誤差信号TEでは、図36の比較例に比べて、レンズシフトの大きさに応じた振幅の変動が相当程度抑制されている。また、プッシュプル振幅の大きさ自体は、図35の比較例に比べて大きくなっている。したがって、トラッキング誤差信号TEにレンズシフトによって生ずるオフセットの量は、図35、図36の比較例に比べて低減されていると言える。
次に、幅W4,W5の最適値の最適値について説明する。幅W4,W5は必ずしも同一である必要はないが、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とのビーム径はほぼ同一であることが多く、そのような場合は幅W4,W5が互いに同一であることが好ましいので、以下の説明では、幅W4,W5の値が等しいことを前提として説明する。
図38は、式(71)により生成されるトラッキング誤差信号TEの振幅と幅W4との関係を、レンズシフトの大きさごとに示した図である。同図における横軸には、幅W4を2倍した値の対スポット直径比を採用している。また、スポットの直径は53.5μmとしている。
図38に示すように、レンズシフトがある場合、幅W4がスポット直径の100%に近いほどトラッキング誤差信号TEの振幅が大きくなる。また、スポット直径の約80%を超えると、幅W4の変化に対する振幅の変化が小さくなる。したがって、幅W4は、スポット直径の約80%から100%の範囲にすることが好ましい。
ただし、光学系3のばらつきにより、スポット光の大きさもばらつくため、ばらついた場合でもスポット光の直径を超えない幅にしておく必要がある。すなわち、図38に示すように、レンズシフトがない場合のトラッキング誤差信号TEの振幅は、幅W4がスポット直径の80%近傍の値を取る場合に極大となる。したがって、幅W4の値をスポット直径の80%近傍(80%±10%)とすることで、トラッキング誤差信号TEのオフセットを極小にすることが可能になる。加えて、上記したように、幅W4の値がスポット直径の80%近傍であれば幅W4の変化に対する振幅の変化が小さくなるので、光学系3のバラツキによってトラッキング誤差信号TEの振幅が小さくなってしまうことも防止できる。
なお、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とのビーム径が同一であっても、幅W4,W5を必ず互いに同一しなければならないわけではない。例えば、受光面の分割領域ごとに必要になる電流電圧変換アンプを削減する観点からは、幅W4=0、幅W5≠0としてもよい。以下、この点について、詳しく説明する。
フォーカス誤差信号FEは、振幅を確保する観点から、図28のメインビーム受光面S1aの全面を用いて次の式(77)により生成することが好ましい。そこで、式(77)によりフォーカス誤差信号FEを生成し、かつ幅W4≠0とすると、図28に示したメインビーム受光面S1aの分割領域A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2をすべて生かす必要があることになり、少なくとも8つの電流電圧変換アンプが必要になる。一方、サブビーム受光面S2aはフォーカス誤差信号FEの生成に関わらないことから、幅W5≠0としても、図28に示したサブビーム受光面S2aのうち生かす必要のある領域は分割領域E1,F2,G1,H2のみとなり、電流電圧変換アンプは4つで足りる。サブビーム受光面S3aについても同様である。したがって、電流電圧変換アンプの総数を削減する観点からは、幅W4=0、幅W5≠0とすることが合理的であるということになる。
ただし、幅W4=0、幅W5≠0とする場合、メインビームMBとサブビームSB1,SB2のプッシュプル領域の受光面からのはみ出し具合が、特にレンズシフトがある程度以上大きい場合に顕著に異なることになる。したがって、サム信号変動をできるだけ小さくするためには、図34に示した処理を用いて定数k30,k31の値を決定するようにすることが好ましい。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態では、受光面を分割することにより、例えばメインビーム受光面S1aの信号光接線方向中央の幅W1の部分などのみを使用したトラッキング誤差信号の生成などを実現したが、分割ではなく受光面上に適宜隙間を設けた遮光膜を形成することで、上記のような信号生成を実現することも可能である。
また、次の変形例に示すように、S偏光をP偏光に変換、もしくはP偏光をS偏光に変換する機能をもつ偏光変換素子をさらに用いることとしてもよい。こうすれば、トラッキング誤差信号から、サブビームSB1,SB2とメインビームMBの迷光との干渉成分を除去することが可能になる。以下、詳しく説明する。
図39は、図1に示した光学ドライブ装置1においてさらに、ビームスプリッタ22とセンサレンズ25の間に偏光変換素子30を挿入した例を示している。なお、偏光変換素子30の挿入位置は、偏光ビームスプリッタ22を通過した後の位置、つまり光ビームの復路のうち往路と重複しない部分であれば、特に限定されない。例えば、センサレンズ25と光検出器5の間であってもよいし、センサレンズ25や偏光ビームスプリッタ22と一体に作製ないし配置してもよい。偏光変換素子30として、具体的には1/2波長板を用いることが好適である。以下では、偏光変換素子30は1/2波長板であるとして説明する。
図40は、センサレンズ25方向を偏光ビームスプリッタ22側から見た場合の平面図である。同図には、メインビームMBがセンサレンズ25上に形成するスポットも描いている。同図に示すように、偏光変換素子30の長さは、信号光半径方向(Y方向)にはスポットよりも長くセンサレンズ25と同程度の長さになっているが、信号光接線方向(X方向)にはスポットよりも短くなっている。このように、偏光変換素子30を信号光半径方向に長くすることによって、対物レンズのシフト時でも、常に信号光の中心に偏光変換素子が位置するため、レンズシフトの影響を受けなくすることができる。当然、レンズシフト時にもスポットが偏光変換素子からはみ出ないように長くしている必要がある。また、偏光変換素子30の配置は、信号光半径方向、信号光接線方向ともに、ビームスプリッタ22側から見た場合の中央位置がスポットの中央と同位置となるようにセットされる。なお、図40では信号光のみしか図示していないが、実際には迷光のスポットもセンサレンズ25上に形成される。また、サブビームSB1,SB2のスポットについても、メインビームMBとほぼ同じ位置か若しくは主に信号光接線方向にそれぞれ逆方向に若干ずれた位置に形成される。対物レンズ4の位置では、メインビームMBとサブビームSB1,SB2のスポットは重なっているが、対物レンズ4から離れるに従い、それぞれの位置のずれが大きくなってくる。
図41は、メインビームMBが光検出器5のメインビーム受光面S1a(図8)上に形成するスポットの例を示す図である。偏光変換素子30を設置すると、メインビームMBが光検出器5の受光面S1a上に形成するスポットには、偏光変換素子30の手前でスポット光がS偏光であるとすると、図41に示すようなP偏光領域MBPとS偏光領域MBSとが現れる。P偏光領域MBPは信号光接線方向の中央部に現れ、S偏光領域MBSは信号光接線方向の端部に現れる。偏光変換素子30の手前でスポット光がP偏光であるとした場合には、P偏光領域MBPが現れる位置とS偏光領域MBSが現れる位置とが入れ替わることになる。
なお、P偏光領域MBPが現れる位置とS偏光領域MBSが現れる位置とは、偏光変換素子30の配置によっても入れ替えることが可能である。すなわち、図40で、偏光変換素子30を配置している以外の位置に偏光変換素子30を配置し、偏光変換素子30を配置している位置には偏光変換素子30を配置しないようにすれば、P偏光領域MBPが現れる位置とS偏光領域MBSが現れる位置とが入れ替わることになる。
このようなP偏光領域及びS偏光領域は、メインビームMBのスポットだけでなく、その迷光やサブビームSB1,SB2のスポットにも現れる。ただし、センサレンズ25上ではサブビームSB1,SB2とメインビームMBとが若干ずれた位置にスポットを形成するため、実際には、光検出器5の受光面上でのサブビームSB1,SB2のP偏光領域は、このずれ量に応じて、中心からそれぞれ逆方向にずれることになる。
図42は、本変形例による光検出器5の分割線の使い方を示す図である。同図に示すように、本変形例による光検出器5では、メインビーム受光面S1aは直線P1MB,Q1MB,Q2MB,Q3MBにより8分割されている。また、サブビーム受光面S2a及びS3aも同様に、直線P1SB1,Q1SB1,Q2SB1,Q3SB1及びP1SB1,Q1SB1,Q2SB1,Q3SB1によりそれぞれ8分割されている。本変形例では、トラッキング誤差信号の算出には、上述した式(11)、式(16)、式(31)、式(32)の中のいずれか1つを用いる。つまり、メインビーム受光面S1aに関しては直線Q2MB,Q3MBにより挟まれた部分(以下、中央部分という。)のみを用い、サブビーム受光面SB1及びSB2についても同様に中央部分のみを用いて、トラッキング誤差信号の算出を行う。
図42には、メインビームMBのスポット、サブビームSB1,SB2の各スポット、及びメインビームMBの迷光MBSTのスポットも示している。また、メインビームMB、サブビームSB1,SB2、迷光MBSTのそれぞれについて、P偏光領域MBP,SB1P,SB2P,MBSTPと、S偏光領域MBS,SB1S,SB2S,MBSTSも示している。同図に示すように、P偏光領域MBP,SB1P,SB2Pは、対応する受光面の中央部分にちょうど収まる大きさを有している。また、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPは、ほぼ信号光接線方向(X方向)に平行となるとともに、サブビーム受光面S2a,S3aにかからない程度の大きさを有している。これらは、図40に示した偏光変換素子30の信号光接線方向の長さを適宜調節することにより実現される。
実際には、レンズシフト時に、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPがサブビームSB1,SB2にかからないように、調節すればよい。ディスクの層間距離によって、受光面上での迷光MBSTのP偏光領域MBSTPのY方向の幅は変わってき、層間距離が大きくなるに従い、この幅は大きくなる。よって、光ディスク11が多層ディスクである場合、例えば、層間距離が一番小さい層からの迷光が、レンズシフト時に、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPがサブビームSB1,SB2にかからないように、なるべく偏光変換素子30の信号光接線方向の長さを大きくするようにしてもよい。合焦している層の隣接層までの層間距離の最大値をもとに、同様に決めてもよいし、隣接層でない層までの層間距離を考慮して決めてもよい。
ここで、S偏光とP偏光の間では、干渉が起こらない。したがって、各P偏光領域が図42に示したように配置される場合、サブビームSB1,SB2のうちトラッキング誤差信号の生成に用いる部分(=P偏光領域SB1P,SB2P)と、迷光MBSTとの間では干渉が起こらなくなる。このことは、トラッキング誤差信号から干渉成分を除去できるということを意味している。信号光と迷光の干渉の影響は、第1の実施の形態で説明したように、受光面の中央部分のみを用いてトラッキング誤差信号の算出を行うことによって低減できるが、図40のように、信号光接線方向に短くなるように設計された偏光変換素子30を用いることにより、トラッキング誤差信号から、サブビームSB1,SB2とメインビームMBの迷光との干渉成分をさらに除去することが実現されている。
なお、偏光変換素子30の信号光接線方向の長さは、受光面に形成される信号光スポットのP偏光領域の信号光接線方向の長さ(以下、「P偏光領域長さ」という。)が、スポット光直径の60%程度となるように設定してもよい。これは、P偏光領域長さがスポット光直径の30%程度となるように偏光変換素子30の信号光接線方向の長さを設定した場合に、サブビームSB1,SB2の各スポットから迷光MBSTのP偏光領域MBSTPまでの距離の合計が、P偏光領域MBSTPの信号光接線方向の長さにちょうど等しくなることから導き出される結論である。具体的な例を挙げて説明すると、例えば、光学倍率が15倍、対物レンズ4からセンサレンズ25までの距離が2cmで、光ディスク11の層間距離が10μmである場合、P偏光領域長さがスポット光直径の30%になるように偏光変換素子30の信号光接線方向の長さを調節すると、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPのY方向の幅は約130μmとなる。そしてさらに、受光面でのメインビームMBとサブビームSB1,SB2の中心間のY方向の距離が155μmでスポット光直径が約50μmであるとすると、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPから、サブビームSB1,SB2それぞれまでの距離は65μmあることになる。これはつまり、サブビームSB1,SB2のスポットとP偏光領域MBSTPとが重ならないようにするための余裕が65μm×2=130μmあるということを意味している。この値は、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPのY方向の幅130μmにちょうど等しくなっている。したがって、サブビームSB1,SB2のスポットとP偏光領域MBSTPとが重ならないようにするための偏光変換素子30の信号光接線方向の長さの最大値は、P偏光領域長さがスポット光直径の30%の2倍、すなわちスポット光直径の60%となるように設定したときの値となる。
なお、上記効果は、受光面S1a,S2a,S3aの全体を用いてトラッキング誤差信号を算出する場合であっても、ある程度得ることができる。つまり、少なくともP偏光領域SB1P,SB2Pは迷光MBSTと干渉せず、また、S偏光領域MBSも迷光MBSTと干渉しないので、トラッキング誤差信号に含まれる干渉成分を低減することが可能になる。なお、サブビームSB1,SB2の信号光とメインビームMBの迷光の干渉の影響が支配的であるという観点からは、メインビーム受光面S1aは全体を用いて、サブビーム受光面S2a,S3aは中央部分のみを用いることとしてもよい。また、受光面全体を用いる場合には、直線Q2MB,Q3MB、直線Q2SB1,Q3SB1、直線Q2SB1,Q3SB1による分割を行わないことが、分割領域削減の観点から好ましい。
また、図42では、P偏光領域MBP,SB1P,SB2Pが、対応する受光面の中央部分にちょうど収まる大きさを有している例を挙げたが、必ずしもP偏光領域MBP,SB1P,SB2Pの幅と対応する中央部分の幅とが完全同一でなければならないわけではない。P偏光領域MBP,SB1P,SB2Pの幅を調節するとP偏光領域MBSTPの幅も同時に調節されてしまうので、例えば迷光MBSTのP偏光領域MBSTPが、レンズシフト時にもサブビームSB1,SB2にかからないように偏光変換素子30の信号光接線方向の長さを設定するようにすると、P偏光領域MBP,SB1P,SB2Pの幅が対応する中央部分の幅より狭くなってしまう場合が発生しうるが、そうであったとしても、少なくとも干渉成分を低減する効果は得ることができる。また、上述のように、センサレンズ25上で、メインビームMBとサブビームSB1,SB2の位置が若干ずれているため、その分P偏光領域SB1P,SB2Pがサブビーム受光面S2a,S3aの中央部分からずれてしまうが、中央部分にP偏光領域SB1P,SB2Pがかかっていれば、少なくとも干渉成分を低減する効果は得ることができる。
なお、図42では直線Q1MBによってもメインビーム受光面S1aを分割している。こうすることで、フォーカス誤差信号算出のための演算を受光面S1a全体を用いて行うことができるようになり、フォーカス誤差信号の振幅を大きくすることが可能になる。また、DPD信号の算出を行う際にも同様の効果を得ることが可能になる。
さらに、図42では、サブビーム受光面S2a,S3aについてもそれぞれ直線Q1SB1,Q1SB1によって分割しているが、こうすることで、差動非点収差法を用いてフォーカス誤差信号を算出する際の演算を受光面S1a,S2a,S3aそれぞれの全体を用いて行うことができるようになり、フォーカス誤差信号の振幅を大きくすることが可能になる。また、スポットの位置調節を行う際にも、同様に受光面全体を用いることができるので、大きな値の調整用信号を得ることができる。
図43及び図44はさらなる変形例を示す図であり、それぞれ図40及び図42に対応している。本変形例では、図43に示すように、信号光接線方向(X方向)に並ぶ3つの偏光変換素子30a,30b,30cを用いる。偏光変換素子30aの位置は上述した偏光変換素子30と同じであり、偏光変換素子30b,30cは、偏光変換素子30aから互いに反対方向に同距離ずれた位置に配置される。このようにすることで、図44に示すように、サブビームSB1,SB2の内部におけるP偏光領域の面積を増加させられる一方、P偏光領域MBSTPがレンズシフト時にもサブビームSB1,SB2にかからないようにすることが可能になる。したがって、受光面S1a,S2a,S3aの全体を用いてトラッキング誤差信号を算出する場合にトラッキング誤差信号に含まれる干渉成分を、さらに低減することが可能になる。
また、その他の変形例として、図40で、偏光変換素子30の信号光半径方向の中央部分がなく、2つに分離されている状態としてもよい。これは、迷光MBSTのP偏光領域MBSTPが受光面上でサブビームSB1,SB2にかからない程度に、センサレンズ上で、それぞれサブビームSB1,SB2の中心に少しでも近づくように、偏光変換素子30を配置した場合である。