以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
光学ドライブ装置1は光ディスク11の再生及び記録を行う。光ディスク11としてはCD、DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、多層膜によって多層化された記録面を有する円盤状の光ディスクを用いる。
図1に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、光検出器5、及び処理部6を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、及び光検出器5は光ピックアップを構成する。
光学系3は、回折格子21、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ23、1/4波長板24、センサレンズ(シリンドリカルレンズ)25を有している。光学系3は、レーザ光源2が発した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11からの戻りビームを光検出器5に導く復路光学系としても機能する。
まず、往路光学系では、回折格子21は、レーザ光源2が発した光ビームを3ビーム(メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2)に分解しP偏光としてビームスプリッタ22に入射させる。ビームスプリッタ22は、入射されたP偏光を反射して、その進路を光ディスク11方向に折り曲げる。コリメータレンズ23は、ビームスプリッタ22から入射される光ビームを平行光とする。1/4波長板24は、コリメータレンズ23を通過した光ビームを円偏光とする。1/4波長板24を通過した光ビームは対物レンズ4に入射する。
対物レンズ4は、光学系3から入射される光ビーム(平行光状態の光ビーム)を光ディスク11上に集光させるとともに、光ディスク11の記録面で反射してきた戻り光ビームを平行光に戻す。この戻り光ビームは記録面で回折されており、図20を用いて説明したように、0次回折光及び±1次回折光に分解されている。
次に、復路光学系では、対物レンズ4を通過し、1/4波長板24を往復することによりS偏光となった光ビームがコリメータレンズ23に入射する。コリメータレンズ23を通過した光ビームは、集光しつつビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、入射してきた光ビームを100%透過してセンサレンズ25に入射させる。センサレンズ25は、ビームスプリッタ22から入射された光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された光ビームは光検出器5に入射する。
図2はセンサレンズ25によって付与される非点収差の説明図である。同図に示すように、センサレンズ25は一方方向(同図MY軸方向=子線方向。)にのみレンズ効果を有している。そのため、コリメータレンズ23(図1)とセンサレンズ25によって構成される光学系の焦点の位置は、MY軸方向と、MY軸方向に垂直な方向であるMX軸方向(母線方向)とで異なっている(図2に示すMY軸焦点とMX軸焦点)。なお、MY軸方向とMX軸方向の光ビームの長さが等しい点を合焦点と称する。
光学ドライブ装置1では、焦点を合わせようとする層(アクセス対象層)で反射した光ビーム(信号光)の合掌点がちょうど光検出器5上に位置するようにするための、対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。逆に言えば、アクセス対象層以外の層で反射した光ビーム(迷光)の合掌点は光検出器5上に位置しないこととなり、迷光が光検出器5上に形成するスポット(迷光スポット)は、信号光が光検出器5上に形成するスポット(信号光スポット)に比べ、MY軸方向とMX軸方向の少なくとも一方に広がった形状を有することとなる。
図1に戻る。光検出器5は、光学系3から出射される戻り光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器5は多数の受光面を備えており、各受光面はそれぞれ多数の受光領域に分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、様々な生成処理でトラッキング誤差信号TEを生成することが可能となっている。その具体的内容については後述する。
処理部6は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器5の出力信号を受け付けて、トラッキング誤差信号TEやその他の信号(フォーカス誤差信号、プルイン信号、RF信号など)を生成する。処理部6の処理の詳細についても後述する。
CPU7はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部6に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部6は、対物レンズ4を制御し、光ディスク11の表面に平行に移動させる(この移動を「レンズシフト」という。)ことによりトラックオン状態を実現する(トラッキングサーボ)。トラックオン状態になると、CPU7は処理部6が生成するRF信号(後述するメインビーム受光面S1内の各受光領域の受光量の合計信号)をデータ信号として取得する。
ここで、背景技術による受光面111(図21)を用いて、レンズシフトと迷光について詳しく説明しておく。なお、この説明では、メインビームMBのみに着目する。
初めに、図3(a)(b)は、背景技術による光検出器の受光面111に照射されたメインビームMBのスポットを示している。なお、図3及び後述する図5,図6では、スポット内に光強度の等高線を示している。また、光ビームのスポットには光ディスク11の接線方向と半径方向とにそれぞれ対応する方向があり、以下では、メインビームMBのスポットに関して、接線方向に対応する方向(信号光接線方向)をX軸と称し、半径方向に対応する方向(信号光半径方向)をY軸と称する。
受光面111は正方形であり、メインビームMBのスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向(X軸)に平行な直線に対して線対称となるよう形成されている。そしてさらに、この直線により受光領域111A及び111Bに分割されている。受光面111の各対角線は、上述したMX軸方向及びMY軸方向と一致する。
図3(a)はレンズシフトがない場合の信号光スポットの例であり、図3(b)はレンズシフトによって最大限移動した信号光スポットの例である。同図に示すように、メインビームMBのスポットは、レンズシフトに伴ってY軸方向に移動する。受光面111のサイズは、この移動があってもメインビームMBのスポットの全体が受光できるよう決定されている。なお、以下では、レンズシフトによるスポットの移動方向をレンズシフト方向線LDSと称し、レンズシフトによるスポットの移動の基準となる線をレンズシフト基準線LBSと称する。メインビームMBのスポットのレンズシフト方向線LDS,レンズシフト基準線LBSはそれぞれY軸,X軸と平行である。
次に、図4は、光ディスク11の層構成の一例を示す図である。同図に示すように、この例による光ディスク11は、対物レンズ4に遠い側から順に層L0〜L4を有する5層構成であり、層間隔は層L0と層L1の間から順に16μm,10μm,10μm,16μmとなっている。
なお、以下の説明では、アクセス対象層がLx(ここではx=0〜4)である場合に、層Ly(ここではy=0〜4,y≠x)で反射した迷光を迷光x−yと表すこととし、迷光x−yのスポットのレンズシフト方向線及びレンズシフト基準線をそれぞれLDx−y及びLBx−yと表すことにする。
ここでは、アクセス対象層が層L2である場合のみを取り上げて説明する。
図5は、レンズシフトがない場合(対物レンズ4のシフト量=0)において受光面111上に形成されるスポットを、メインビームMB及び迷光ごとに示したものである。図5の各図に示すように、各迷光が形成するスポットは受光面111のサイズよりも大きく、受光面111を大きくはみ出している。
各迷光のうち迷光2−3,迷光2−4のスポットは、MX軸方向への広がりがMY軸方向への広がりに比べて大きくなっている。迷光2−3,迷光2−4はMY軸焦点(図2)よりもセンサレンズ25に近い位置で光検出器上にスポットを形成しているためである。また、迷光2−3のスポットは迷光2−4に比べて小さくなっている。層L3が層L4に比べてアクセス対象層L2に近いためである。
一方、迷光2−1,迷光2−0のスポットは、MY軸方向への広がりがMX軸方向への広がりに比べて大きくなっている。迷光2−1,迷光2−0はMX軸焦点(図2)よりもセンサレンズ25から遠い位置で光検出器上にスポットを形成しているためである。また、迷光2−1のスポットは迷光2−0に比べて小さくなっている。層L1が層L0に比べてアクセス対象層L2に近いためである。
図5には、各スポットのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線も示している。
図5に示すように、各迷光スポットのレンズシフト方向線及びレンズシフト基準線は、センサレンズ25の影響により、メインビームMBのスポットのレンズシフト方向線LDS及びレンズシフト基準線LBSに比べて斜めに傾いている。
具体的には、レンズシフト方向線及びレンズシフト基準線のいずれも、スポット形成位置が図2の合焦点よりセンサレンズ25に近づくとともにMX軸に近づき、MY軸側焦点でMX軸に一致する。そこからさらにセンサレンズ25に近づくと、MX軸を越えてさらに傾いていく(図5(a)(b))。一方、レンズシフト方向線及びレンズシフト基準線のいずれも、スポット形成位置が図2の合焦点よりセンサレンズ25から遠ざかるとともにMY軸に近づき、MX軸側焦点でMY軸に一致する。そこからさらにセンサレンズ25に近づくと、MY軸を越えてさらに傾いていく(図5(d)(e))。
なお、レンズシフト方向線とレンズシフト基準線とはセンサレンズ25の母線又は子線に対して線対称となっている。
図6は、レンズシフトによって一定方向に移動した各スポットを、図5の各図に対応させて描いたものである。同図に示すように、迷光スポットもメインビームMBのスポットと同様、レンズシフトによって移動し、迷光スポットの強度中心(図中の黒点)はレンズシフト方向線上に位置する。
図7(a)は、図5の各図に示したメインビームMBのスポット、迷光スポット、及びそれぞれのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線を一図に描いたものである。同様に、図7(b)は、図6の各図に示したメインビームMBのスポット、迷光スポット、及びそれぞれのレンズシフト方向線とレンズシフト基準線を一図に描いたものである。図7(a)(b)では等高線は省略している。各スポットは、図7(a)(b)に示すように光検出器5上に重なって照射される。
さて、ここから光検出器5の構成の詳細及び処理部6の処理の詳細について説明する。
まず、図8は、本実施の形態による光検出器5の上面図であり、受光面及び受光領域を示している。なお、同図には信号光のスポットも描いている。同図に示すように、光検出器5はメインビーム受光面S1と、サブビーム受光面S2及びS3と,迷光受光面I〜Nとの計9つの受光面を有する。
メインビーム受光面S1は、一辺の長さがx(≧スポット直径r≒50μm)の正方形であり、メインビームMBのスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P1に対して線対称となるよう形成されている。
さらに、メインビーム受光面S1は、直線P1から所定距離(=w1/2)互いに反対側に離隔して設けられた受光領域S1A及びS1Bを含んでいる。受光領域S1Aは、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域A1とD1とに等分割されている。同様に、受光領域S1Bは、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域B1とC1とに等分割されている。
また、受光領域A1と直線P1の間には受光領域A2が、受光領域B1と直線P1の間には受光領域B2が、受光領域C1と直線P1の間には受光領域C2が、受光領域D1と直線P1の間には受光領域D2が、それぞれ設けられている。
サブビーム受光面S2はメインビーム受光面S1と同じ大きさの正方形であり、サブビームSB1の反射光のスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P2に対して線対称となるよう形成されている。
サブビーム受光面S2は、メインビーム受光面S1と同様、直線P2から所定距離(=w2/2)互いに反対側に離隔して設けられた受光領域S2A及びS2Bを含んでいる。受光領域S2Aは、直線P1,P2をそれぞれ境界として受光領域S1Aと同一側の領域に対応している。また、受光領域S1Aと同様に、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域E1とH1とに等分割されている。受光領域S2Bは、直線P1,P2をそれぞれ境界として受光領域S1Bと同一側の領域に対応している。また、受光領域S1Bと同様に、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域F1とG1とに等分割されている。
また、受光領域E1と直線P2の間には受光領域E2が、受光領域F1と直線P2の間には受光領域F2が、受光領域G1と直線P2の間には受光領域G2が、受光領域H1と直線P2の間には受光領域H2が、それぞれ設けられている。
なお、サブビーム受光面S2はメインビーム受光面S1に対して、信号光接線方向にd1だけずれたところに配置されている。これは、本実施の形態ではメインビームMBとサブビームSB1のスポット位置がd1だけ信号光接線方向にずれているためであるが、このビームのずれの大小は光学系3の構成の仕方次第で変わる。
サブビーム受光面S3もメインビーム受光面S1と同じ大きさの正方形であり、サブビームSB2の反射光のスポット中心に対して点対称となり、かつ該スポット中心を通り、信号光接線方向に平行な直線P3に対して線対称となるよう形成されている。
サブビーム受光面S3も、メインビーム受光面S1と同様、直線P3から所定距離(=w3/2)互いに反対側に離隔して設けられた受光領域S3A及びS3Bを含んでいる。受光領域S3Aは、直線P1,P3をそれぞれ境界として受光領域S1Aと同一側の領域に対応している。また、受光領域S1Aと同様に、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域E3とH3とに等分割されている。受光領域S3Bは、直線P1,P3をそれぞれ境界として受光領域S1Bと同一側の領域に対応している。また、受光領域S1Bと同様に、信号光接線方向中央に設けられた分割線により、受光領域F3とG3とに等分割されている。
また、受光領域E3と直線P3の間には受光領域E4が、受光領域F3と直線P3の間には受光領域F4が、受光領域G3と直線P3の間には受光領域G4が、受光領域H3と直線P3の間には受光領域H4が、それぞれ設けられている。
サブビーム受光面S3も、サブビーム受光面S2と同様に、メインビーム受光面S1に対して、信号光接線方向にd1だけずれたところに配置されている。ただし、ずれの方向は、サブビーム受光面S2と逆になっている。
なお、ここではメインビーム受光面S1、サブビーム受光面S2,S3を正方形としているが、各受光面の形状は正方形に限定されるものではない。
迷光受光面Iは、サブビーム受光面S2と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S2の信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1(≧0)だけ離隔して設けられている。迷光受光面Iは、全体で1つの受光領域を構成している。
迷光受光面Jは、サブビーム受光面S2と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S2の信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面Jも、全体で1つの受光領域を構成している。
迷光受光面Kは、メインビーム受光面S1と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S1の信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面Kも、全体で1つの受光領域を構成している。
迷光受光面Lは、メインビーム受光面S1と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、メインビーム受光面S1の信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面Lも、全体で1つの受光領域を構成している。
迷光受光面Mは、サブビーム受光面S3と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S3の信号光半径方向の一方側側方(図面上側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面Mも、全体で1つの受光領域を構成している。
迷光受光面Nは、サブビーム受光面S3と信号光接線方向の幅及び位置が同一である長方形であり、サブビーム受光面S3の信号光半径方向の他方側側方(図面下側)に、所定距離g1だけ離隔して設けられている。迷光受光面Nも、全体で1つの受光領域を構成している。
光検出器5は、受光領域ごとに、光ビームの強度を受光領域で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力する。以下では、受光領域X(Xは受光領域の符号)に対応する出力信号をIXと記載する。
以上、光検出器5の構成について詳細に説明した。次に、図9は処理部6の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、処理部6は正規化信号生成部61(正規化信号生成手段)、トラッキング誤差信号生成部62(トラッキング誤差信号生成手段)、及び対物レンズ制御部63を備えている。
正規化信号生成部61は、受光領域S1A,S2A,S3Aの各受光量の合計と、受光領域S1B,S2B,S3Bの各受光量の合計とを用いてサム信号を生成する。また、これらの各受光領域の各受光量を用いて差信号を生成する。必要に応じて、迷光受光面I〜Nの各受光量も用いる。一方、正規化信号生成部61は、これらの信号の生成にあたり、メインビーム受光面S1、サブビーム受光面S2,S3の中央部分(受光領域A2,B2,C2,D2,E2,E4,F2,F4,G2,G4,H2,H4)は用いない。そして、正規化信号生成部61は、生成した差信号を、生成したサム信号を用いて正規化することにより、正規化信号を生成し、トラッキング誤差信号生成部62に出力する。以下、4つの具体例を挙げて説明する。
第1の例では、正規化信号生成部61は、受光領域S1A,S2A,S3Aの各受光量を合計してなるサム信号SUM1(第1のサム信号)と、受光領域S1Aの受光量から受光領域S2A及びS3Aの各受光量の合計を減算してなる差信号PP1(第1の差信号)とを生成する。なお、サム信号SUM1を求める際には、受光領域S2A,S3Aの各受光量の合計に所与の定数k1を乗ずる。同様に、差信号PP1を求める際にも、受光領域S2A,S3Aの各受光量の合計に定数k1を乗ずる。具体的には、式(3)及び式(4)の演算を行う。なお、定数k1は、レンズシフトによって差信号PP1に生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。
そして、正規化信号生成部61は、差信号PP1をサム信号SUM1で正規化することにより正規化信号PP1N(第1の正規化信号)を生成する。具体的には、式(5)の除算を行う。
また、正規化信号生成部61は、受光領域S1B,S2B,S3Bの各受光量を合計してなるサム信号SUM2(第2のサム信号)と、受光領域S1Bの受光量から受光領域S2B及びS3Bの各受光量の合計を減算してなる差信号PP2(第2の差信号)とを生成する。なお、サム信号SUM2を求める際には、受光領域S2B,S3Bの各受光量の合計に所与の定数k2を乗ずる。同様に、差信号PP2を求める際にも、受光領域S2B,S3Bの各受光量の合計に定数k2を乗ずる。具体的には、式(6)及び式(7)の演算を行う。なお、定数k2は、レンズシフトによって差信号PP1に生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。通常は、k1=k2である。
そして、正規化信号生成部61は、差信号PP2をサム信号SUM2で正規化することにより正規化信号PP2N(第2の正規化信号)を生成する。具体的には、式(8)の除算を行う。
第2の例では、正規化信号生成部61は、迷光受光面I〜Nも用いて、上記差信号PP1,PP2、サム信号SUM1,SUM2にそれぞれ対応する差信号PP1A,PP2A、サム信号SUM1A,SUM2Aを生成する。なお、各信号の末尾の「A」は「補正」を意味している。すなわち、この第2の例では、第1の例で生成した各信号を迷光受光面I〜Nの受光量を用いて補正する形になっている。具体的には、正規化信号生成部61は式(9)〜式(12)の演算を行う。なお、定数k3〜k8は、レンズシフトによって差信号PP1A,PP2Aに生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。
そして、正規化信号生成部61は、差信号PP1A,PP2Aをそれぞれサム信号SUM1A,SUM2Aで正規化することにより正規化信号PP1NA,PP2NAを生成する。具体的には、式(13)及び式(14)の除算を行う。
第3の例では、正規化信号生成部61は、受光領域S1A,S2A,S3A,S1B,S2B,S3Bの受光量を合計してなるサム信号SUM3(第3のサム信号)と、受光領域S1A,S2B,S3Bの各受光量の合計から受光領域S1B,S2A,S3Aの各受光量の合計を減算してなる差信号PP3(第3の差信号)とを生成する。なお、サム信号SUM3を求める際には、受光領域S2A,S3A,S2B,S3Bの各受光量には所与の定数k9を乗ずる。同様に、差信号PP3を求める際にも、受光領域S2A,S3A,S2B,S3Bには定数k9を乗ずる。具体的には、式(15)及び式(16)の演算を行う。なお、定数k9は、レンズシフトによって差信号PP3に生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。
そして、正規化信号生成部61は、差信号PP3をサム信号SUM3で正規化することにより正規化信号PP3N(第3の正規化信号)を生成する。具体的には、式(17)の除算を行う。
第4の例では、正規化信号生成部61は、迷光受光面I〜Nも用いて、上記差信号PP3、サム信号SUM3にそれぞれ対応する差信号PP3A、サム信号SUM3Aを生成する。なお、各信号の末尾の「A」は「補正」を意味している。すなわち、この第4の例では、第3の例で生成した各信号を迷光受光面I〜Nの受光量を用いて補正する形になっている。具体的には、正規化信号生成部61は式(18)〜式(19)の演算を行う。なお、定数k10〜k15は、レンズシフトによって差信号PP3Aに生ずるオフセットが打ち消されるように決定される。
そして、正規化信号生成部61は、差信号PP3Aをサム信号SUM3Aで正規化することにより正規化信号PP3NAを生成する。具体的には、式(20)の除算を行う。
トラッキング誤差信号生成部62は、正規化信号生成部61が生成する正規化信号を用いてトラッキング誤差信号TEを生成する。具体的には、正規化信号生成部61が正規化信号PP1Nと正規化信号PP2Nを生成する場合には、次の式(21)のように減算処理を行ってトラッキング誤差信号TE1を生成する。通常は、定数k=1である。また、正規化信号PP1NAと正規化信号PP2NAを生成する場合には、次の式(22)のように減算処理を行ってトラッキング誤差信号TE1Aを生成する。一方、正規化信号生成部61が正規化信号PP3N,PP3NAを生成する場合には、これらをそのままトラッキング誤差信号TE2,TE2Aとして用いる。数式で表すと式(23)及び式(24)のようになる。
対物レンズ制御部63は、トラッキング誤差信号生成部62が生成するトラッキング誤差信号TEに基づいて対物レンズ4の制御信号を生成し、対物レンズ4の位置制御のためのアクチュエータ(不図示)に出力する(トラッキングサーボ)。
以上説明したようにしてトラッキング誤差信号TEを生成することで、受光面の中央付近を用いずにトラッキング誤差信号を生成しているにも関わらず、プッシュプル振幅を大きくし、かつレンズシフト時のプッシュプル振幅の変動を抑えて、トラッキング誤差信号に生ずるオフセットを低レベルに抑えることが可能になる。以下、詳しく説明する。
例えばサム信号SUM2は、受光領域S1B,S2B,S3Bの各受光量の合計を示す信号であるが、これらの受光領域はそれぞれ、対応する分割線P1,P2,P3のいずれも図8下側に位置している。したがって、レンズシフトによって例えば図22に示したようなスポットの移動が発生する場合、離隔距離w1,w2,w3が互いに等しければ、受光領域S1Bと受光領域S2B,S3Bとで、含まれるプッシュプル領域の面積、形状は同じになり、さらに、受光領域S1BとS2B、S3Bとではプッシュプル信号の位相は逆位相になっているため、サム信号SUM2は、定数k2を適切に決定することで、トラックジャンプ時に変動することなく一定の値となる。レンズシフトなどのオフセットがない場合のディスク上のオントラック位置において、受光領域S1Bでの信号強度と、受光領域S2B,S3Bの和をk2倍した信号強度とが同じになる場合にトラックジャンプ時の変動がなくなり、一定になるため、通常定数k2はこのように決定される。言い換えれば、定数k2はメインとサブの強度比になっている。離隔距離w1,w2,w3が互いに等しくない場合は、プッシュプル領域がメインビーム受光面S1の中央部分(受光領域A2,B2,C2,D2)内に入ってくると、サム信号SUM2がトラックジャンプ時に変動するようになり、プッシュプル振幅が変動して好ましくないが、サム信号SUM2の変動が少なければ、離隔距離w1,w2,w3を必ずしも等しくする必要はない。
他のサム信号についても同様であり、各サム信号で、レンズシフト時に、トラックジャンプ時の変動をなくすことができる。
したがって、レンズシフト時に、トラックジャンプ時のサム信号の変動により生ずるプッシュプル振幅の変動によりトラッキング誤差信号に生じるオフセットの変動が防止されるため、トラッキング誤差信号に生ずるオフセットを低レベルに抑えることが可能になっているのである。
光学ドライブ装置1によって得られる以上のような効果を、シミュレーション結果を参照しながら説明する。なお、以下のシミュレーションでは、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11をトラックピッチが0.32um、溝深さが0.02umの1層光ディスクとし、メインビーム受光面S1aの一辺の長さxを100μmとした。また、対物レンズのNA=0.85、波長λ=405nmとした。
まず初めに比較例として、「受光面の全体を用いて」式(2)により生成するトラッキング誤差信号を図10に示す。図10を見ると、レンズシフト時のプッシュプル振幅の変動は小さいが、振幅の大きさは本実施の形態(後述する図12及び図13)に比べて小さくなっている。つまり、本発明と比べるとオフセットが大きいということができる。
次に、もうひとつの比較例として、「受光面の中央付近を用いずに」式(2)により生成する通常のトラッキング誤差信号を図11に示す。図11を見ると、プッシュプル振幅は4倍近くに大きくなるが、レンズシフトの大きさに応じて大きく変動していることが理解される。
一般に、信号Sのオフセット量SOFFSETは、振幅SAMPLITUDEと変位量SDISPLACEMENTとを用いて次の式(25)で表される。したがって、トラッキング誤差信号の振幅が大きく変動することで、トラッキング誤差信号のオフセット量も大きく変動することになる。
さて、図12は、光学ドライブ装置1により生成されたトラッキング誤差信号のシミュレーション結果を示す図である。同図は、式(21)により生成されたトラッキング誤差信号TE1を示している。なお、定数k16=1とした。
図12から明らかなように、トラッキング誤差信号TE1では、図11の比較例に比べて、レンズシフトの大きさに応じたプッシュプル振幅の変動が相当程度抑制されている。また、振幅の大きさ自体も、図10の比較例に比べて大きくなっている。したがって、トラッキング誤差信号TE1にレンズシフトによって生ずるオフセットの量は、図10、図11の比較例に比べて低減されていると言える。
図13も、光学ドライブ装置1により生成されたトラッキング誤差信号のシミュレーション結果を示す図である。同図は、式(23)により生成されたトラッキング誤差信号TE2を示している。
図13から明らかなように、トラッキング誤差信号TE2でも、図11の比較例に比べて、レンズシフトの大きさに応じた振幅の変動が相当程度抑制されている。振幅の大きさ自体も、トラッキング誤差信号TE1同様に、図10の比較例に比べて大きくなっている。したがって、トラッキング誤差信号TE2にレンズシフトによって生ずるオフセットの量は、図10、図11の比較例に比べて低減されていると言える。
次に、受光領域S1Aと受光領域S1Bの離隔距離の最適値について説明する。離隔距離w1,w2,w3は、上述したように必ずしも同一である必要はないが、メインビームMBとサブビームSB1,SB2とのビーム径はほぼ同一であることが多く、そのような場合は離隔距離w1,w2,w3が互いに同一であることが好ましいので、以下の説明では、w1,w2,w3の値をいずれもwとする。
図14は、トラッキング誤差信号TE1の振幅と離隔距離wとの関係を、レンズシフトの大きさごとに示した図である。また、図15は、トラッキング誤差信号TE2の振幅と離隔距離wとの関係を、レンズシフトの大きさごとに示した図である。なお、これらの図における横軸には、離隔距離wの対スポット直径比を採用している。また、スポットの直径は53.5μmとしている。
図14に示すように、トラッキング誤差信号TE1では、離隔距離wがスポット直径の70%から80%の範囲にある場合に、振幅が極大となる。また、振幅の変動は、離隔距離wがスポット直径の50%であるときに極小になる。したがって、スポット直径の約50%から80%の範囲にすればよい。
一方、図15に示すように、トラッキング誤差信号TE2では、レンズシフトがある場合、離隔距離wがスポット直径の100%に近いほど振幅が大きくなり、スポット直径の約80%を超えるとトラッキング誤差信号TE1より振幅変動が小さくなってくる。したがって、スポット直径の約80%から100%の範囲にすればよい。ただし、光学系のばらつきにより、スポット光の大きさもばらつくため、ばらついた場合でもスポット光の直径を超えない幅にしておく必要がある。
すなわち、図14及び図15に示すように、トラッキング誤差信号TE1,TE2の振幅は、離隔距離wがスポット直径の80%近傍の値を取る場合に極大となる。したがって、離隔距離wの値をスポット直径の80%近傍とすることで、トラッキング誤差信号TE1,TE2のオフセットを極小にすることが可能になる。なお、80%近傍とは80%±10%を指すとすることが好適である。加えて、図14及び図15に示すように、離隔距離wがスポット直径の80%近傍であれば離隔距離wの変化に対する振幅の変化も小さくなるので、光学系のバラツキによってトラッキング誤差信号TE1,TE2の振幅が小さくなってしまうことも防止できる。
また、図14に示すように、トラッキング誤差信号TE1の振幅のレンズシフト発生時の変動幅(振幅変動幅)は、離隔距離wがスポット直径の50%近傍の値を取る場合に極小となる。したがって、離隔距離wの値をスポット直径の50%近傍とすることで、トラッキング誤差信号TE1の振幅のレンズシフト発生時の変動を極小に抑えることが可能になる。そして、振幅変動がない分、安定的にトラッキング制御を行えるようになる。なお、50%近傍とは50%±10%を指すとすることが好適である。
トラッキング誤差信号TE1はメインとサブでプッシュプルの明暗の領域を明と暗で同じ面積、領域で演算をして正規化したものである。即ち、レンズシフト時にシフトする方向の領域ではサム信号に0次光成分が増えてきて、プッシュプル領域が占める割合が小さくなるため、プッシュプル振幅は小さくなってくるが、逆の領域では0次光成分が減ってきて、プッシュプル領域が占める割合が大きくなるため、プッシュプル振幅は大きくなり、振幅変動も小さくなってくる。即ち、トラッキング誤差信号TE1を構成している正規化プッシュプル信号PP1N,PP2Nのどちらかは、レンズシフトの方向により振幅変動が小さい状態になっている。一方、トラッキング誤差信号TE2では、分母のサム信号には常に0次光が含まれてくるため、正規化プッシュプル信号PP3Nのメインとサブ両方が常に振幅変動することになり、トラッキング誤差信号TE2の振幅変動はトラッキング誤差信号TE1に比べて大きくなる。よって、トラッキング誤差信号TE1の場合は、中央幅を最適な値に選ぶことにより、正規化プッシュプル信号PP1Nと正規化プッシュプル信号PP2Nとでプッシュプル振幅の増減が打ち消しあって、振幅変動がないようにできる。即ち、オフセット変動が小さくなる。上記のように、中央幅をスポット直径の約50%にした時がそうである。
また、中央部の幅を大きくすると、プッシュプル振幅は大きくなってくる。これは、0次光の領域が減ってきて、プッシュプル領域の占める割合が大きくなってくるためである。
式(25)で表されるように、トラッキング誤差信号TEのオフセット量TEOFFSETは変位量TEDISPLACEMENTをトラッキング誤差信号TEの振幅TEAMPLITUDEで割った値で定義されているが、中央付近を用いない場合に、変位量TEDISPLACEMENTは大きくなることはないため、振幅TEAMPLITUDEが大きくなることによって、オフセット量TEOFFSETは小さくなる。オフセット量TEOFFSETは主に、レンズシフト時の信号光と迷光の干渉によるオフセットが支配的になっているが、この干渉によるオフセット量TEOFFSETは中央付近を用いない場合に、小さくなることが確認されている。
以下、トラッキング誤差信号TEのオフセット量TEOFFSETのシミュレーション結果について説明する。
図16は、式(2),(22),(23)によって生成されるトラッキング誤差信号TE,TE1A,TE2の各オフセット量TEOFFSET,TE1AOFFSET,TE2OFFSETをシミュレーションした結果を示す図である。ただし、このシミュレーションは、メイン信号(メインビーム受光面S1に対応する出力信号。出力信号IAなど。)には迷光の影響がなく、サブ信号(メインビーム受光面S2,S3に対応する出力信号。出力信号IE1など。)にはメインビームMBの迷光の影響(メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2との干渉の影響を含む。)があると仮定し、離隔距離wごとに各オフセット量をシミュレーションした。これにより、図16では、メインビームMBの迷光とサブビームSB1,SB2とが干渉する場合の、離隔距離wによる各オフセット量の変化を確認することが可能になっている。なお、図16の横軸には離隔距離w、縦軸には百分率を用いている。
このシミュレーションでは、レンズシフトの量を0mm〜0.3mmまで0.05mm刻みで変化させ、それぞれのレンズシフト量について、オフセット量TEOFFSET,TE1AOFFSET,TE2OFFSETを求めた。そして、図16では、プラス方向にオフセットした場合のオフセット量の最大値と、マイナス方向にオフセットした場合のオフセット量の最大値とをそれぞれプロットした。その他、光学系3の光学倍率を15倍とし、光ディスク11を層間距離が10μmの2層光ディスクとし、メインビーム受光面S1の一辺の長さxを100μmとした。
各信号は次のようにして求めた。すなわち、まずメインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmは、メインビームMBの強度を受光領域A1,B1,C1,D1でそれぞれ面積分することにより求めた。なお、メインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmを求める際には、迷光成分及び干渉成分は考慮していない。すなわち、このメインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmは、迷光の影響がない理想的な信号である。
次に、メインプッシュプル信号MPP及びメインサム信号SUMmの振幅を1/10にした信号とメインビームMBの迷光との干渉シミュレーションを行い、この信号をサブ信号として用いて、式(2),(22),(23)によりオフセット量TEOFFSET,TE1AOFFSET,TE2OFFSETをシミュレーションした。
なお、図17には、上記シミュレーションの途中に得られるトラッキング誤差信号TE,TE1A,TE2の各振幅TEAMPLITUDE,TE1AAMPLITUDE,TE2AMPLITUDEを示している。ただし、図17には、レンズシフトの量を0mm〜0.3mmまで変化させた時の最小の振幅値のみを示している。
図16に示されるように、オフセット量TE1AOFFSET,TE2OFFSETは、オフセット量TEOFFSETに比べて、すべての離隔距離wについて小さくなっている。なお、図示していないが、式(21),(24)によって生成されるトラッキング誤差信号TE1,TE2Aの各オフセット量TE1OFFSET,TE2AOFFSETも、オフセット量TEOFFSETに比べて、すべての離隔距離wについて小さくなる。
なお、オフセット量TEOFFSETも、図16に示されるように離隔距離wが大きくなるにしたがって小さくなっているが、これは、図11に示したように、レンズシフト量によってはある程度の大きさの振幅が得られるからである。
図16及び図17に示したシミュレーション結果から、離隔距離wを大きくすることによるオフセット量の低減が説明できる。つまり、図16と図17を比較すると、離隔距離wが大きくなることによってオフセット量が小さくなる割合は、振幅が大きくなる割合に比べて大きいということが理解される。このことから、振幅が大きくなることによって得られるオフセット量低減効果を上回るオフセット量低減効果が、離隔距離wを大きくすることによって得られることが理解される。
なお、上記シミュレーションでは、正規化を行って得られたトラッキング誤差信号についてのみ説明したが、正規化を行わずに得られるトラッキング誤差信号(式(1)によって得られるトラッキング誤差信号TE)についても同様に、離隔距離wを大きくすることによってオフセット量は低減する。しかしながら、正規化を行わずに得られるトラッキング誤差信号では、反射率の変動などの影響を受けて振幅が小さくなるため、実際には適用しにくい。すなわち、振幅が小さくなると、増幅の際に増幅回路や伝達経路などで新たに発生するノイズ成分の影響が大きくなり、この影響によってオフセット量が増大してしまう場合がある。したがって、確実に離隔距離wを大きくすることによるオフセット量低減効果を得るためには、正規化を行って得られたトラッキング誤差信号を用いることが好ましい。
トラッキング誤差信号TE1,TE2のようにサム信号を、レンズシフト時にトラックジャンプ時も一定となるように正規化して演算を行えば、プッシュプル振幅を大きくするために、中央幅を大きくした場合でも、プッシュプル振幅の変動を抑えて大きく保てるため、オフセットを低減できる。
次に、迷光受光領域I〜Nを用いてトラッキング誤差信号を生成することによる特有の効果について説明する。
まず、トラッキング誤差信号TE1については、上記のように、レンズシフト時のスポット光のシフトに加えて、光強度分布もシフトするため、シフトする方向の強度は大きくなる。即ち、サム信号SUM1、SUM2はレンズシフト時に片方は大きくなり、片方は小さくなる。ここでのサム信号SUM1,SUM2の変動は、レンズシフト時の変動であり、トラックジャンプ時の変動ではない。差信号PP1,PP2では、レンズシフト時の信号光のオフセットはそれぞれメインとサブで打ち消しあっているが、迷光のオフセットは、サブをk倍して差信号を作っているため、差信号PP1と差信号PP2とで同じくらい発生する。迷光のシフト方向は、ほぼ信号光の接線方向であるため、差信号PP1,PP2で発生するオフセットはレンズシフト時でもあまり変動しないが、上記のように、サム信号SUM1,SUM2が逆方向に変動するため、迷光のオフセットはトラッキング誤差信号TE1の演算で大きくなる。当然、サム信号SUM1,SUM2がレンズシフト時に変動しなければ、差信号PP1と差信号PP2とで迷光のオフセットは打ち消しあって発生しない。よって、レンズシフト時にサム信号SUM1,SUM2が変動しても影響がないように、差信号PP1,PP2で発生するオフセットは迷光受光領域I〜Nを用いてキャンセルすることが望ましい。
次に、トラッキング誤差信号TE2に関しては、PP3の演算により、迷光のオフセットはそれぞれ、メインどうしの減算、サブどうしの減算でほぼ打ち消されるため、TE1のように迷光受光領域I〜Nを使用する補正は必ずしも必要ではなく、サム信号のみを補正することとしてもよい。また、迷光上の未記録・記録境界は信号光半径方向とほぼ平行に現れるため、迷光補正パターンを信号光半径方向に同じ幅及び位置で配置することにより、迷光の未記録・記録境界で発生するオフセットの影響を受けにくくすることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、光学系の構成によっては、図18のような光検出器を用いることも可能である。この光検出器は受光面用のスペースが十分にとれない場合に用いるものであり、図8の迷光受光面K,Lに代えて信号光半径方向の幅がより長い迷光受光面O,Pを有し、迷光受光面I,J,M,Nを有しない構成を有している。
図18の光検出器を用いる場合、式(9)〜式(12)はそれぞれ次の式(26)〜式(29)のように書き換えられる。
式(26)の導出過程について説明する。式(28)についても同様である。
まず、受光領域A1及びD1で受光される迷光の強度をα、受光領域E1,E3,H1,H3で受光される迷光の強度のk1倍をβとすると、式(3)で表されるサム信号SUM1内の迷光成分SUM1STRAY及び式(4)で表される差信号PP1内の迷光成分PP1STRAYは、それぞれ次の式(30)及び式(31)で表される。
まず、差信号PP1内の迷光成分PP1STRAYを、迷光受光面O,Pの受光量を用いてキャンセルしようとする場合、次の式(32)を満たすように定数k18を決定することになる。定数k18の決定方法については後述する。
ここで、式(31)と式(32)を用いると、式(30)の右辺を次の式(33)のように書き換えることができる。
さらに、αは次の式(34)のように書くことができ、定数k19は光学系3の設計仕様から一意に決定される。尚、定数k21も同様に決定される。
上記式(30)、式(33)、及び式(34)を用いると、式(3)のサム信号SUM1から迷光成分SUM1STRAYをキャンセルするための式(26)が次の式(35)のように導出される。
以下、定数k18の決定方法について詳しく説明する。まず、レンズシフトがない場合に信号光受光面での受光量に含まれる迷光成分XPPは、次の式(36)のように求められる。式(36)の右辺では、信号光成分はキャンセルされる。
そして、次の式(37)により、定数k18を決定する。式(37)は、要するに、上記迷光成分XPPの半分を、迷光受光面O,Pの受光量を用いてキャンセルすることになっている。迷光成分XPPの半分は、レンズシフトがない場合に差信号PP1,PP2にそれぞれ含まれる迷光成分に等しくなっている。尚、定数k20は定数k18と同じにしてよい。
以上のようにして定数k18を決定できるが、定数k1の値自体、必ずしも厳密に求められるわけではない。したがって、定数k18は誤差を含んだ値になる場合がある。定数k18の誤差によらずオフセット変動の少ないトラッキング誤差信号を得るためには、離隔距離wが小さい方が好ましい。以下、シミュレーション結果を示して説明する。
図19は、レンズシフト量ごとに、定数k18の誤差が±10%である場合のトラッキング誤差信号のオフセット変動(%)を示した図である。同図に示すように、レンズシフトが0.2mm、0.3mmのいずれの場合であっても、離隔距離wが小さいほどオフセットが小さくなっている。したがって、定数k18の誤差によらずオフセット変動の少ないトラッキング誤差信号を得るためには、離隔距離wが小さい方が好ましいと言えることになる。逆に言えば、離隔距離wを大きくしたい場合、トラッキング誤差信号のオフセット変動が大きくなってしまう。そこで、そのような場合には、定数k18の誤差によらずオフセット変動の少ないトラッキング誤差信号を得るために、式(37)の算出を一度だけ行って定数k18を決めてしまうのではなく、学習処理により最適値を求めるようにすることが好ましい。
また、層間距離の短い光ディスク11を用いる場合、例えば図8の光検出器5において、受光領域S2Aには迷光スポットがかかっているにもかかわらず、迷光受光面Iに迷光スポットがかからないことがあり得る。そのような場合、回折格子21の回折角を調節してメインビームMBとサブビームSB1,SB2の受光面上での間隔を広げ、受光領域S2Aにも迷光スポットがかからないようにしてもよいし、光学系3の光学倍率を上げ、迷光受光面Iにも迷光スポットがかかるようにしてもよい。