JP2011016691A - シリコン精製装置およびシリコン精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のシリコン精製装置に使用されている保温蓋によって発生する、坩堝の上下方向の温度差を効果的に抑制したシリコン精製装置および該精製装置を用いたシリコンの精製方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のシリコン精製装置の第1の態様は、減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、保温蓋を坩堝上面に設置した状態において、保温蓋の坩堝側となる主面のカーボンコンポジット材は、第1の断熱材の上面を覆うように設置されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明はシリコン精製装置およびシリコン精製方法に関する。
環境問題から石油などの代替として自然エネルギーの利用が注目されている。中でもシリコン半導体の光電変換原理を用いる太陽電池は、太陽エネルギーの電気への変換が容易に行なえる特徴を有する。しかし、太陽電池の普及拡大にはコスト低減、とりわけ、半導体シリコンのコストダウンが必要である。
半導体集積回路などに用いる高純度シリコンは、珪石を炭素還元して得られる純度98%〜99%程度の金属シリコンを原料とするものであって、化学的な方法でトリクロルシラン(SiHCl3)を合成し、これを蒸留法で純化した後、還元することにより、いわゆる11N(イレブン−ナイン)程度の高純度シリコンを得ている(シーメンス法)。しかし、この高純度シリコンは、複雑な製造プラントおよび還元に要するエネルギー使用量が多くなるため、必然的に高価な素材となる。
一方、太陽電池の製造に用いられるシリコンに要求される純度は約6N程度である。したがって、このような半導体集積回路用などの高純度シリコンの規格外品は、太陽電池用としては過剰な高品質となる。
そのため、太陽電池の低コスト化に向けて、金属シリコンからの直接的な冶金的精製が試みられている。
金属シリコンから除去すべき不純物のうち、リンのようにシリコンよりも蒸気圧の高い不純物は、溶融状態で真空中に保持すること(以下、真空精製法と記載する場合がある)によって除去可能であることが知られている。
一例を挙げると特許文献1には「真空ポンプを具備した減圧容器内に、シリコンを収容する黒鉛製のるつぼと、該るつぼを加熱する加熱装置を該るつぼの側面と底面を覆う位置に設置してなるシリコン精製装置」が開示されている。さらに特許文献1には、シリコン溶湯の上下温度差を減らすことを目的として、坩堝の上面に保温用の部材を配することも開示されており、その材質が基本的に黒鉛フェルト等の断熱材であること、および下側および側面を緻密な黒鉛製部材で覆った構造とすることが好ましいことが記載されている(図5参照)。
特開2006−232658号公報
本発明者らは図5に示すような坩堝10、保温部材50および加熱装置30からなるシリコン精製用の実験装置を使用して真空精製法によるシリコン精製(脱リン)工程の検討を行なう中で、このような従来型の保温部材構造および配置においては、溶融シリコンからの放熱を効果的に抑制することができず、坩堝の上下方向に温度差が生じるという問題を見出した。
従来のシリコン精製装置において坩堝の上下方向の温度差が起こる理由について詳細に説明する。上述のように図5は従来の保温部材50を配した坩堝10を有するシリコン精製装置400の一例を示す概略断面図である。図5において、坩堝10に溶融シリコン20が保持されており、これを加熱装置30によって加熱している状態を示している。なお、坩堝10の側面外周は側面断熱材40により覆われている。
さらに坩堝10の上面には、保温部材50が配されている。保温部材50はカーボンフェルト551の一部をカーボンコンポジット材552で覆った構造を持つ、平板状の部材である。
なお、保温部材50を貫通する開口部60は、真空精製法において溶融シリコン不純物(主にリン)を含むシリコン蒸気を坩堝外部へ排出するために設けられる開口である。
本発明者らの検討によれば、図5に示すようなシリコン精製装置400において、以下の2つの問題点が存在することが分かった。
・問題点1:溶融シリコン不純物を含むシリコン蒸気が保温部材50と坩堝10との境界部(図5において符号Aで示す)をつたって側面の断熱材40に接し、ここで凝集することで側面の断熱材40の上端部分(保温部材50との境界付近)の断熱性を低下させるので、坩堝の上下方向において温度差が起こる。特に側面の断熱材40がカーボンフェルト製である場合、該断熱材がシリコン蒸気と反応するので断熱性低下が顕著になる。
・問題点2:カーボンコンポジットはカーボンフェルトに比べて熱伝導率が高いので、坩堝10の上端面とカーボンコンポジット材552が接した従来構造では、坩堝10から保温部材50への熱移動により坩堝10の上下方向の温度差が起こる。図5中に、加熱装置30が誘導加熱装置である場合の磁場の発生範囲Bの概念図を示す。このように、加熱装置30が誘導加熱装置である場合、高周波コイルから発生する磁場はコイル両端部で弱く、また、坩堝10の下端部は溶融シリコン20からの熱伝導により低温になり難いため、坩堝10の上下方向の温度差は顕著になる。
このように坩堝の上下方向に温度差が生じるとシリコン精製工程中の破損が起こりやすくなり、坩堝の寿命(連続使用期間)が短くなるおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、坩堝の上下方向の温度差を抑制できるシリコン精製装置およびシリコン精製方法を提供することを目的とする。
本発明のシリコン精製装置は、減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、保温蓋を坩堝上面に設置した状態において、保温蓋の坩堝側となる主面のカーボンコンポジット材は、第1の断熱材の上面を覆うように設置されることを特徴とするシリコン精製装置である。
また、本発明のシリコン精製装置は、減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、坩堝の上面と保温蓋とが直接接触しないように、坩堝の上面に第2の断熱材が設置されることを特徴とするシリコン精製装置である。
また、本発明のシリコン精製装置は、別の態様において、減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、保温蓋を坩堝上面に設置した状態において、保温蓋の坩堝側となる主面のカーボンコンポジット材は、第1の断熱材の上面を覆うように設置され、かつ、坩堝の上面に、開口部の周縁上面と保温蓋とが直接接触しないように第2の断熱材が設置されていることを特徴とする。
また、本発明のシリコン精製装置は、さらに別の態様において、減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、保温蓋を坩堝上面に設置した状態において、保温蓋の坩堝側となる主面のカーボンコンポジット材は、第1の断熱材の上面を覆うように設置され、かつ、坩堝の上面に、開口部の周縁上面と保温蓋とが直接接触しないように第2の断熱材が設置されているシリコン精製装置である。
また、本発明のシリコン精製装置は、上記いずれかの態様のシリコン精製装置において、すなわち、溶融シリコン側に備えられるカーボンコンポジット材が、上記第1の断熱材の上面を覆うように設置される態様、および/または坩堝の上面と保温蓋とが直接接触しないように、坩堝の上面に第2の断熱材が設置される態様において、保温蓋として、坩堝上面に設置した状態で坩堝の開口部の内壁よりも内側となる位置に突出部を有しする保温蓋を用い、この突出部の溶融シリコン側にはカーボンコンポジット材が備えられており、保温蓋を坩堝上面に設置した状態において、突出部の最下部が坩堝の開口部の上縁よりも溶融シリコン側に位置するように配置される。
さらに、本発明のシリコン精製方法は、上記のいずれかのシリコン精製装置を用いたシリコン精製方法であって、坩堝、保温蓋および加熱装置を収納した減圧容器の内部を減圧することにより、坩堝内に保持した溶融シリコンを精製する工程を含む、シリコン精製方法である。
本発明によれば、坩堝の上下方向の温度差を低減できるので、シリコン精製装置における坩堝の寿命(連続使用可能時間)を向上させることができる。
実施の形態1のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図である。 実施の形態2のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図である。 (a)は実施の形態3のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図であり、(b)は実施の形態3のシリコン精製装置の他の一例を示す概略断面図である。 実施例における保温蓋の概略平面図である。 従来のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図である。
本発明は上記知見に基づくものであり、以下にその実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態1のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図である。本実施の形態1のシリコン精製装置100には、減圧容器(図示せず)内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝1と、坩堝1上方に設置可能な保温蓋5と、溶融シリコンを加熱する加熱装置3とを具備する。
上記坩堝1は、溶融シリコンを保持することができる耐熱性を備えていればよく、たとえばカーボン製の坩堝を用いることができる。本発明において坩堝1には、図1に示されるように、その側面外周部を覆う第1の断熱材4が設けられる。第1の断熱材4は、断熱性を有する材料であれば特に限定なく用いることができる。
この坩堝1の上方には保温蓋5が配置される。該保温蓋5は、カーボンフェルト製の板状部材502の少なくとも両主面にカーボンコンポジット材501aおよびカーボンコンポジット材501bを備える。図1においては、板状部材502の一方の主面にカーボンコンポジット材501aが備えられ、他方の主面にカーボンコンポジット材501bが備えられることにより板状部材502が挟持され、また板状部材502の側面にカーボンコンポジット材501cが設けられて、これらのカーボンコンポジット材と板状部材とが構造物(保温蓋)をなす。
上記保温蓋5には、両主面間を貫通する開口部6が形成されており、この開口部6を通して、シリコン蒸気が坩堝外へ散逸する。
本実施の形態1において、保温蓋5を坩堝1の上方に設置した状態において、板状部材502の下面側(溶融シリコン2に面する側)となるカーボンコンポジット材501aが、坩堝の上面と側面の第1の断熱材4の上面とを覆うように設置される。
上記のような構成により、上述の問題点1として例示した、シリコン蒸気が保温蓋5と坩堝1との隙間を伝って側面断熱材4に接し、その接した箇所で凝集するという現象の進行を抑制できる。すなわち、本実施の形態1においては、カーボンコンポジット材501aが坩堝側面の第1の断熱材4の上面までを覆うように設置されているので、カーボンコンポジット材501aと側面の第1の断熱材4の坩堝側接触部分(図1中に符号Dで示す付近)で最初にシリコンが凝固し、この凝固したシリコンが障害となって、また、第1の断熱材4がカーボンフェルト製であれば、シリコンとカーボンの反応も起こることによって、以後のシリコン蒸気の拡散を妨げるので、それ以上の凝固や反応が進みにくいためと考えられる。これに対して図5に例示する従来構造の場合、保温部材50と坩堝10との隙間を通ったシリコン蒸気は一旦開放空間に出るので、側面断熱材40のいろいろな場所から凝固や反応が進むと考えられる。
なお、本発明において「主面」とは図1に示すように、保温蓋5を坩堝1の上面に設置した状態で、溶融シリコン2に正対する面(下面C2)および、その対向面(上面C1)である。また、下面C2だけではなく上面C1にもカーボンコンポジット材を配置する理由としては、保温蓋5の貫通した開口部6から坩堝1外に出たシリコン蒸気による保温蓋5上面C1への影響が無視できないことが挙げられる。たとえば、このような影響としては、カーボンフェルト製の板状部材がカーボンコンポジット材で被覆されていないと、板状部材がシリコン蒸気と反応して、断熱性が低下する場合がある。また、上面C1にもカーボンコンポジット材を配置することによって、保温蓋5の形状維持や取り扱いが容易になることが挙げられる。このような意味からは、下面C2を被覆するカーボンコンポジット材よりも上面C1を被覆するカーボンコンポジット材の厚さを厚くすることが好ましい。下面C2のカーボンコンポジット材は熱伝導率を減らすために薄い方が好ましいのに対し、上面C1のカーボンコンポジット材は形状維持や取り扱いが容易となるように、ある程度の厚み(一般に1mm以上5mm以下、好ましくは2mm以上3mm以下程度)が必要であるからである。
<実施の形態2>
図2に本実施の形態2のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図を示す。保温蓋の配置以外の構成は、図1に示すシリコン精製装置100と同様であるため、重複する部分の説明は省略する。
本実施の形態2のシリコン精製装置200は、坩堝1の上面と保温蓋5とが直接接触しないように、坩堝1の上面に第2の断熱材7が設置されるシリコン精製装置である。保温蓋5の坩堝側となる主面の前記カーボンコンポジット材501aは、第1の断熱材4の上面を間接的に覆うように設置されている。
坩堝1の上面部分に第2の断熱材7を設置することにより、上述の問題点2に例示した現象、すなわち坩堝から保温部材である保温蓋5への熱移動により坩堝の上下方向の温度差が起こることを抑制できる。
また、上面の第2の断熱材7は第1の断熱材4とシリコン蒸気とが接することに対する防壁となるので、上記問題点2と同時に上述の問題点1も解決できる。
ただし、第2の断熱材7としてカーボンフェルトを使用した場合、上述の側面の第1の断熱材4と同様に、時間経過と共にシリコン蒸気と反応して断熱性が低下する。しかしながら、発明者らの検討の範囲においては、側面の第1の断熱材4の断熱性低下が起きると、状況によっては坩堝自体の破損に至る場合があったのに対して、上面の第2の断熱材7の断熱性低下は(好ましくないことであるとはいえ)坩堝の破損原因になることはなかった。
上記第2の断熱材7は、カーボンフェルト以外に、たとえば所望の形状に成形した断熱材を用いることができる。また、上記第2の断熱材7の形状は特に限定されないが、坩堝1の上面を覆うことができる幅を有することが好ましく、その厚みは、坩堝1上面と保温蓋5までの距離に相当し、たとえば、5mm以上10mm以下とすることが好ましい。このような厚みとすることによって、シリコン蒸気による耐熱性への影響を抑制し、また、第2の断熱材7上に保温蓋5を安定的に配置することがきる。
<実施の形態3>
図3(a)および図3(b)に本実施の形態3のシリコン精製装置の一例を示す概略断面図を示す。保温蓋の配置以外の構成は、図2に示すシリコン精製装置200と同様であるため、重複する部分の説明は省略する。
本実施の形態3のシリコン精製装置300における保温蓋5は、坩堝1上面に設置した状態において坩堝1の開口部6の内壁よりも内側となる位置に突出部8を有し、突出部8の少なくとも溶融シリコン側にはカーボンコンポジット材801を備え、坩堝1上面に設置した状態において突出部8の最下部(図3(a)および図3(b)のカーボンコンポジット材801の溶融シリコン2側)が坩堝1の開口部6上縁よりも溶融シリコン2側に位置するように配置されることを特徴とするシリコン精製装置である。
なお、図3(a)において、突出部8は、保温蓋5とカーボンコンポジット材801とをつなぐために設けられる耐熱材料性の固定具802を含み、このような固定具802としては、たとえばカーボンコンポジット製のボルトおよびナットなどが例示される。
このような突出部8を設けることにより、上述の問題点1および問題点2が解決され、第1の断熱材の耐熱特性を維持し、坩堝上下方向の耐熱性のばらつきを抑制することができ、かつ、突出部8が坩堝上面の第2の断熱材7に対するシリコン蒸気の接触を遮る働きをするので、第2の断熱材7におけるシリコン蒸気の凝固などが抑制でき、このことにより第2の断熱材7の断熱性低下を防止できる。
なお、突出部8の構造は、図3(b)に例示するように、保温蓋5を構成するカーボンフェルトからなる板状部材502とは異なる第3の断熱材803を、保温蓋5を構成するカーボンコンポジット材501aと突出部8の溶融シリコン2側に設けられたカーボンコンポジット材801にて挟持して、その側面をカーボンコンポジット材804とカーボンコンポジット材501dとにより固定して構造体とする構成であっても良い。
(シリコン精製方法)
本発明は、上記いずれかの実施の形態のシリコン精製装置を用いたシリコン精製方法に関する。
上記シリコン精製装置には上述のように減圧容器が備えられており、本発明のシリコン精製方法には、この減圧容器の内部を減圧することによって、坩堝内に保持した溶融シリコンから不純物を除去して原料シリコンを精製する工程を含む。
具体的な工程としては、真空精錬、すなわち溶融した原料から真空雰囲気下で不純物を除去する方法を例示することができる。以下、原料がシリコンである場合について述べる。
一般に、金属級シリコンなどの原料シリコンに含まれる不純物のうち、シリコンよりも蒸気圧の高いP、Al、Caなどが真空精製法により除去される。具体的には原料シリコンを上記シリコン精製装置内に設けられた坩堝に投入して、加熱装置を用いた加熱により溶融させる。その後たとえば、減圧容器内の真空度を100Pa以下とし、1412℃〜1800℃程度の温度で所定時間保持することによって、不純物を溶融シリコンに対して比較的多く含む蒸気(以下、不純物含有蒸気)の蒸発を行なう。
本発明のシリコン精製装置は、坩堝の上下方向の耐熱性が改善されたものであるため、このようなシリコンの精製方法において、熱的に安定したものであり、経時劣化が抑制されたものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
真空ポンプによって内部を減圧可能とした減圧容器中に坩堝と、坩堝加熱用の誘導加熱装置を設置した装置を用い、シリコン精製(リン除去)を行った。装置構成は図3(a)に準じ、試験条件は以下の通りとした。
使用した坩堝は東洋炭素(株)製の高純度黒鉛坩堝で、外径820mm、収納部深さ750mmの円筒形である。坩堝の側面を第1の断熱材4として、厚さ100mmの成形断熱材で覆った。
保温蓋5は、厚さ50mm、直径920mmのカーボンフェルト材からなる板状部材502を厚さ1〜2mmのカーボンコンポジット材501aとカーボンコンポジット材501bで挟持し、その側面にさらにカーボンコンポジット材501cを備えた円板であり、これを坩堝1上に載置して使用した。保温蓋5における開口部形状を図4に示す。図4にしめすように、開口部6は、坩堝の中心部分を含むように設け、開口面積は全面積のおよそ40%とした。
突出部8のカーボンコンポジット材801は、外径820mm、厚さ2mmの円板であり、保温蓋5から黒鉛製ボルトとナットの固定具802により、坩堝1上面から約20mm下方に入り込むように設置した。
また、上面保温のために第2の断熱材7として外径820mm、内径680mm、厚さ10〜20mmのリング状カーボンフェルト材を準備し、坩堝1と保温蓋5の間に配置した。
溶融対象としては、市販の金属シリコンを用い、投入量は400kgとした。
溶融シリコン2の温度を1650℃、減圧条件を1.0Paとした。減圧容器内において坩堝1の上端部と高さ方向の中央部との温度差を測ると、約480℃であった。
この温度および減圧条件でシリコン精製(初期リン濃度20重量ppmの金属シリコンを、最終リン濃度0.1重量ppmまで精製)を行ない、精製終了した溶融シリコン2を坩堝1から排出し、新たな金属シリコンを加えるという工程を繰り返したところ、連続25日間使用において坩堝1の全体に問題が見られなかった。
(比較例1)
保温蓋として図5に示す形状の保温蓋を用いた以外、実施例と同様の装置を用い、実施例1と同様の条件によりシリコン精製を行ったところ、坩堝の上端部と高さ方向の中央部との温度差が約570℃であり、連続14日間使用時点において、坩堝の過熱が発生したため、実験を中断した。坩堝の上下方向の温度差による坩堝の劣化(細かなクラック生成など)が原因であると考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のシリコン精製装置およびシリコン精製方法は、坩堝を用いたシリコン精製に適用可能である。特に、本発明の精製装置は金属シリコンから真空精製法により太陽電池用シリコンを製造するシリコンの精製に適用可能である。
1 坩堝、2 溶融シリコン、3 加熱装置、4 第1の断熱材、5 保温蓋、501a,501b,501c カーボンコンポジット材、502 板状部材、6 開口部、7 第2の断熱材、8 突出部、801a,801b,801c カーボンコンポジット材、802 固定具。

Claims (6)

  1. 減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、前記坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、
    前記坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、
    前記保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、
    前記保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、
    前記保温蓋を前記坩堝上面に設置した状態において、前記保温蓋の坩堝側となる主面の前記カーボンコンポジット材は、前記第1の断熱材の上面を覆うように設置されるシリコン精製装置。
  2. 減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、前記坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、
    前記坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、
    前記保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、
    前記保温蓋は両主面間を貫通する開口部が形成されており、
    前記坩堝の上面と前記保温蓋とが直接接触しないように、前記坩堝の上面に第2の断熱材が設置されるシリコン精製装置。
  3. 前記保温蓋を前記坩堝上面に設置した状態において、前記保温蓋の坩堝側となる主面の前記カーボンコンポジット材は、前記第1の断熱材の上面を覆うように設置されている請求項2に記載のシリコン精製装置。
  4. 減圧容器内に、溶融シリコンを保持可能な坩堝と、前記坩堝上方に設置可能な保温蓋と、溶融シリコンを加熱する加熱装置とを具備するシリコン精製装置であって、
    前記坩堝の側面外周部に第1の断熱材を有し、
    前記保温蓋は、カーボンフェルト製の板状部材であって、少なくとも両主面にカーボンコンポジット材を備え、
    前記保温蓋は、前記坩堝上面に設置した状態において前記坩堝の開口部の内壁よりも内側となる位置に突出部を有し、
    前記突出部の少なくとも溶融シリコン側にはカーボンコンポジット材を備え、
    前記坩堝上面に設置した状態において前記突出部の最下部が前記坩堝開口部の上縁よりも溶融シリコン側に位置するように配置されるシリコン精製装置。
  5. 前記保温蓋は、前記坩堝上面に設置した状態において前記坩堝の開口部の内壁よりも内側となる位置に突出部を有し、
    前記突出部の少なくとも溶融シリコン側にはカーボンコンポジット材を備え、
    前記坩堝上面に設置した状態において前記突出部の最下部が前記坩堝開口部よりも溶融シリコン側に位置するように配置される、請求項1から3のいずれかに記載のシリコン精製装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のシリコン精製装置を用いたシリコン精製方法であって、
    前記減圧容器の内部を減圧することにより、前記坩堝内に保持した溶融シリコンを精製する工程を含む、シリコン精製方法。
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