図1は実施例1の誘導加熱調理器の外観斜視図である。図1において、誘導加熱調理器の本体1の上面にはトッププレート2が水平に配置されている。
トッププレート2は、耐熱性の高い結晶化ガラス製の厚さ約4mmのもので構成され、鍋30を載置する。なお、鍋30は鉄等の磁性体又はアルミ等の非磁性体の何れでも用いることができるものとする。トッププレート2下方で本体1内上部の左右及び中央後部には、環状に形成された加熱コイル3が夫々配置されており、トッププレート2に載置された鍋30等を誘導加熱する。トッププレート2の前面側には、夫々の加熱コイル3に対応した上面操作部7a,7b,7cが設けられていて、加熱コイル3の通電状態の設定や操作を行う。また、各上面操作部7a,7b,7cに対応して上面表示部8a,8b,8cが上面操作部7a,7b,7cの近傍に設けられており、夫々の加熱コイル3の通電状態等を表示する。上面操作部7aは、本体1右側の加熱コイル3の火力等の入力を行い、上面操作部7bは本体1中央後部の加熱コイル3の火力等の入力を行い、上面操作部7cは本体1左側の加熱コイル3の火力等の入力を行う。
本体1の後部右側には上方に向けて開口した吸気口4が設けられており、本体1内に設けられたファン(図示せず)により、吸気口4から吸気した冷却風を本体1内に設けられた制御基板(図示せず)や加熱コイル3等に流して冷却する。本体1の後部左側には、本体1内部を冷却した冷却風を排気する排気口5が設けられている。
本体1の前面左部には、魚やピザ等を焼くグリル加熱手段6が設けられており、グリル加熱手段6は、前面が開口した箱型をしていて、内部の調理庫内にシーズヒータ等の発熱体と内部の温度を検出するサーミスタが設けられ、前面部はハンドル6aが取り付けられたグリルドア6bにより塞がれている。グリルドア6bは、その裏側に受け皿が取り付けられており、調理庫内に前面開口部から出し入れ自在に収納され、受皿の上に載置された焼網の上に魚やピザ等の食材を載せて調理する。
本体1の前面右部には、本体1へ供給する電源の主電源スイッチ9と、グリル加熱手段6の加熱調理条件等を入力する前面操作部10が設けられている。前面操作部10は、下方に設けられた回動軸を中心として操作パネル11の上方が前面側に倒れ、操作キー12が上方側に向かって露出する所謂カンガルーポケット形態のものである。
図2は実施例1の誘導加熱調理器のトッププレート2を除いた上面図、図3は実施例1の誘導加熱調理器の左右の加熱コイル3を主体とした断面図およびブロック図である。
図2に示すように、左右及び中央後部に配設された加熱コイル3は、夫々環状の内側加熱コイル3aと、その外側に環状の隙間3bを設けて配置された環状の外側加熱コイル3cとで構成されている。加熱コイル3に隙間3bを設ける理由は、内側加熱コイル3aと外側加熱コイル3cとで発生する磁束を分散させて鍋30の温度を均一化するためである。なお、各加熱コイル3は隙間3bを設ける構成としたが、特にこれに限定されることはない。例えば内側加熱コイル3aと外側加熱コイル3cを隙間無く巻回した隙間3bの無い加熱コイル3とする構成であってもよい。
図3に示すように加熱コイル3は、コイルベース13上に設置されている。また、ギャップスペーサー14が、コイルベース13の外周縁部に取り付けられた支持部材16によりコイルベース13の外周から中心側に向けて適宜間隔を保持して設けられており、コイルベース13が複数のバネ(図示せず)によりトッププレート2方向に付勢されることにより、加熱コイル3がトッププレート2に対し略並行となり、かつ、トッププレート2に載置される鍋30と加熱コイル3とのギャップが一定に保持されている。
加熱コイル3は、表皮効果を抑制するためリッツ線を採用していて、後述するインバータ手段100により数十kHzの高周波で数百Vの電圧が印加され、鍋30に対して高周波磁界を印加して鍋30に渦電流を発生させ、鍋30を自己発熱させて加熱する。
左右に配設された加熱コイル3の中心部近傍には、サーミスタで構成された内側温度センサ15aがトッププレート2の下面に密着して設けられており、加熱コイル3の上方に載せられた鍋30の温度をトッププレート2を介して検知する。また、加熱コイル3の隙間3bには、加熱コイル3の中心から等距離で、かつ120度の等間隔でサーミスタで構成された外側温度センサ15b,15c,15dがギャップスペーサー14に緩衝材(図示せず)を介して設けられ、トッププレート2の下面に密着することにより、加熱コイル3の上方に載せられた鍋30の温度を検知する。なお、外側温度センサ15b,15c,15dは、加熱コイル3の隙間3bに設ける構成としたが、特にこれに限定されることはない。例えば外側加熱コイル3cの外周近傍や、または、内側加熱コイル3aと外側加熱コイル3cを隙間無く巻回した隙間3bの無い加熱コイル3とした構成の外周近傍に設ける構成であってもよい。また、外側温度センサ15b,15c,15dは3個に限定されることはなく、1個又は2個であっても、3個以上であってもよい。
左右に配設された加熱コイル3の隙間3bの下方には、鍋30の底面から放射される赤外線をトッププレート2を通して受光し、その受光した赤外線のエネルギから温度を検知する赤外線センサ17が設けられている。赤外線センサ17は、熱型検出素子を使用した方式のセンサであり、その受光面17aは、隙間3b下方であってトッププレート2の下面から約35mm離れた位置に設けられている。また、受光面17aには検知する赤外線の視野角を制限するレンズや導光筒等(図示せず)が設けられ、図3に示すようにトッププレート2の下面の位置で10φから15φの温度検出スポット17bによって検出するような視野角としている。
なお、複数の温度センサ15a,15b,15c,15dや赤外線センサ17を設ける理由は、鍋30の温度を検出するのに鍋30底の変形により温度検出精度が低下するのを防ぐことを目的としており、複数の温度センサ15a,15b,15c,15dや赤外線センサ17の検出する温度の最も高い温度を検出した値を判定用温度として用いる。
左右に配設された加熱コイル3の隙間3bには、赤外線センサ17に近接するようにして反射型フォトインタラプタ18がトッププレート2の下面から離れた位置に設けられている。反射型フォトインタラプタ18は、赤外線発光手段としての赤外線LED18aと、赤外線受光手段としての赤外線フォトトランジスタ18bとを同一プラスチック部材に並べてモールド18cしている。赤外線LED18aの発光面上にはプラスチックによるレンズが構成され、細いビームの赤外光を上方に照射する。赤外線フォトトランジスタ18bの受光面上には可視光阻止のプラスチックによるレンズが構成され、先の照射赤外光の物体(鍋底面)での反射赤外光を狭い視野角で受光し、その受光量に比例した電流を出力する。なお、ここでは反射型フォトインタラプタ18を赤外線センサ17に近接させて設けたが、両者を一体化したパッケージにして設置しても良い。この反射型フォトインタラプタ18の赤外線フォトトランジスタ18bの出力から、反射率計測手段19でトッププレート2上に置かれた鍋30底面の反射率を計測し、制御手段118に入力する。
左右に配設された加熱コイル3の隙間3bには、反射型フォトインタラプタ18に隣接するようにフォトインタラプタで構成された照度センサ21がトッププレート2の下面から離れた位置に設けられている。照度センサ21は入力される可視光のレベルに応じた電圧を出力する。照度センサ21から出力された電圧は照度計測手段22に入力され、照度センサ21の真上のトッププレート上に鍋底が存在するか否かが判断される。
図4を用いて、照度計測手段22の出力に基づいて鍋の有無を判断する方法を説明する。図4において、実線41は照度センサ21の真上に鍋がないときに照度センサ21の出力を受けた照度計測手段22が出力する電圧であり、周囲の照度が上昇するにつれ出力電圧も略比例して上昇する。また、実線42は照度センサ21の真上に鍋があるときに照度センサ21の出力を受けた照度計測手段22が出力する電圧であり、周囲の照度が上昇しても約0.6Vの出力を保つ。本実施例の制御手段118では、閾値43を1.0Vに設定し、閾値を超えるときは照度センサ21の真上に鍋が存在しないと判断し、閾値未満のときは照度センサ21の真上に鍋が存在すると判断することとする。この場合、照度が約80ルクス以下のときには、鍋が存在しないにもかかわらず、鍋が存在すると判断される問題が生じるが、この問題は、後述するように赤外線センサの出力も合わせて鍋の有無を判断することで解消することができる。なお、ここでは鍋の有無を判断するための閾値を1.0Vとしたが、照度センサ21の特性に応じて閾値を適当に設定することができる。
図5は上面操作部7aと上面表示部8aを説明する図である。なお、上面操作部7cと上面表示部8cの内容は、上面操作部7aと上面表示部8aの内容と同じものであるため説明は省略する。
上面表示部8aは、表示部81aと表示部81bに分けられ、表示部81aは、火力設定手段72で入力される火力やメニュー設定手段71で入力される調理メニュー等が表示される。表示部81bは、メニュー設定手段71で設定された“揚げもの”や“ステーキ”メニュー等において、鍋30を予熱して鍋30の温度が適温に達した時に使用者に食材の投入タイミングを知らせることができるように「予熱中」と、「適温」の表示を行うことができる。
火力設定手段72で設定できる火力は、“とろ火”キー72a,“弱火”キー72b,“中火”キー72c,“強火”キー72dの四段階に分かれ、必要な火力を一回の操作で入力できるように火力に応じて個別にキーが設けられている。矢印調整手段73は、火力設定手段72で入力できない火力、例えば“中火”キー72cにより中火に設定した後、さらに中火を上下に微調整する場合に使用する。
メニュー設定手段71は、自動調理の“炊飯”や、“揚げもの”,“湯沸し”,“炒めもの”,“ステーキ”等を設定するためのもので、メニュー設定手段71を押すことで表示部81aにメニューが表示され、メニュー設定手段71を押すたびにメニューが切り替わり表示される。これによって使用するメニューを選択する。74は調理の開始や停止するための切・スタートキーである。
図6はインバータ手段100のブロック図である。左右の加熱コイル3による鍋30の加熱制御について図3,図6のブロック図を用いて説明する。なお、グリル加熱部6の制御、および本体1中央後部の加熱コイル3の制御については本発明とは直接関係ないので説明を省略する。
図3に示すように、制御手段118には、上面操作部7aのメニュー設定手段71や火力設定手段72の出力、内側温度センサ15a,外側温度センサ15b,15c,15d、赤外線センサ17、反射率計測手段19、照度計測手段22の出力が入力される。
また、制御手段118は、上面操作部7aの設定内容と、各温度センサ15a,15b,15c,15dの検出温度および赤外線センサ17の検出温度、反射率計測手段19で計測した反射率、照度計測手段22で計測した照度に応じてインバータ手段100を制御し、加熱コイル3に流れる高周波電流を制御して鍋30を加熱制御する。
インバータ手段100の構成は、図6に示すように、交流電源117を整流手段102で直流電圧に変換し、スイッチング素子103,105の直列体で構成するスイッチング部に接続する。スイッチング素子103,105にはそれぞれ逆並列にダイオード104,106を接続し、スイッチング素子103,105の接続点と直流電圧の基準点間に加熱コイル3と共振コンデンサ107で構成する共振回路部を接続する。また、スイッチング素子103,105にはそれぞれスナバコンデンサ108,109を接続する。スイッチング素子103,105をそれぞれ排他的に高周波でオンオフすることによって、加熱コイル3と共振コンデンサ107で構成する共振回路部に高周波共振電流を供給し、加熱コイル3近傍に配置した負荷を加熱する。インバータ制御部110は、制御手段118から負荷に印加する目標となる電力レベル指示を入力し、インバータ手段100の出力電力が目標値になるようスイッチング部103,105を制御する。
入力電流変換手段112は交流電源117から入力する電流を検出する検出手段111の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。入力電圧検出手段113は交流電源117の電圧を検出し適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。インバータ電流検出手段115は共振回路部に流れる電流を検出する検出手段114の出力信号を適切なレベルに変換してインバータ制御部110に出力する。インバータ制御部110はこれらの信号を入力し、負荷に投入される電力であるインバータ電力の計算,負荷の状態,加熱の適否等を判断し、スイッチング素子103,105を排他的にオンオフ制御するための信号を出力し、レベル変換部116によってスイッチング素子103,105に対して適切な駆動レベルに変換し、スイッチング素子103,105を駆動する。また、インバータ制御部110はこれらの状態を制御手段118に出力する。
次に、以上で説明した実施例1の誘導加熱調理器における実際の加熱制御について説明する。ここでは、使用者が“強火”キー72dを操作した後に、切・スタートキー74を操作して調理を開始する状況を説明する。
図7に示すように、調理をスタート(S71)すると、最初にフェーズ1(S72)の制御が行われる。フェーズ1では、強火相当の火力である2000Wの火力で加熱が開始される。本実施例では、2000Wでの加熱を3秒間経過した後、フェーズ2(S73)に移行する。フェーズ2に移行した後は、フェーズ3(S74),フェーズ4(S75),フェーズ5(S76)のいずれかの処理が行われる。図から明らかなように、フェーズ2〜フェーズ5は相互に移行できる。以下では、各々のフェーズにおける処理と、フェーズ移行の条件を説明する。
まず、フェーズ2の説明を行う。フェーズ2では、赤外線センサ17の出力と、照度計測手段22の出力が観測される。以下では、赤外線センサ17の出力電圧が0.5V以上をHigh、0.5V未満をLowと規定し、照度計測手段22の出力電圧が1.0V以上をHigh、0.5V未満をLowと規定する。赤外線センサ17の出力電圧Highは、赤外線センサ17へ入力される赤外線量が多いこと、すなわち、鍋底が十分に温度上昇していることを意味し、また、照度計測手段22の出力電圧Lowは、照度センサ21へ入力される可視光量が少ないこと、すなわち、照度センサ21の真上のトッププレート2が鍋底によって覆われていることを意味する。赤外線センサ17の出力電圧High、かつ、照度計測手段22の出力電圧Lowという正常な加熱が行われているときは、他のフェーズへの移行をすることなく、使用者が設定した火力での加熱を使用者が異なる操作を設定するまで続行する。一方、赤外線センサ17の出力電圧Lowである場合、または、照度計測手段22の出力電圧Highである場合には、鍋底が十分に温度上昇していない、または、鍋が置かれていない、若しくは、鍋がずれている等の理由により、照度センサ21の真上のトッププレート2が鍋底に覆われていない、等の不具合が考えられる。しかしながら、赤外線センサ17の出力電圧Lowや照度計測手段22の出力電圧Highは、鍋30をあおっているときにも発生しうるので、これらに相当する出力信号を検出したときに直ちに不具合を示すと考えるのは適当ではない。従って、本実施例では、赤外線センサ17の出力電圧Low、照度計測手段22の出力電圧Highの何れか(または両方)が所定時間(例えば20秒)以上継続したときに、他のフェーズに移行することとする。いずれの条件のときに、どのフェーズに移行するかを表1に纏める。
次に、フェーズ3の説明を行う。フェーズ3でも、フェーズ2と同様に、赤外線センサ17の出力と、照度計測手段22の出力が観測される。フェーズ3に移行する前には、赤外線センサ17の出力電圧High、かつ、照度計測手段22の出力電圧Highの状態が所定時間(例えば20秒)以上継続しているが、この状態がさらに所定時間(例えば20秒)継続したときに異常が発生したと判断することとする。赤外線センサ17の出力電圧High、かつ、照度計測手段22の出力電圧Highは、赤外線センサ17で鍋底の温度を観測できるのにもかかわらず、照度センサ21の真上のトッププレート2が鍋底に覆われていない状態であるので、鍋30がずれて載置されているものと判断できる。このような配置のまま強火での加熱を続行したのでは過加熱の虞もあるため、使用者に対し「鍋を中心に置いてください。」などの音声報知を行う。更に、火力を例えば1000Wに下げるなどの制御を行っても良い。火力を下げるときには「火力を下げました。」などの報知を行っても良い。使用者が鍋30の位置を直した場合などには、観測される赤外線センサ17の出力電圧、照度計測手段22の出力電圧の組み合わせが変化するので、フェーズ3において、赤外線センサ17の出力電圧High、かつ、照度計測手段22の出力電圧High以外の状態が所定時間(例えば20秒)継続したときには、表2に従って他のフェーズに移行する。なお、フェーズ3では、火力を下げるときの火力を1000Wとして説明したが、1600W以下の火力であれば任意の火力を設定しても良い。
次に、フェーズ4の説明を行う。フェーズ4でも、フェーズ2,3と同様に、赤外線センサ17の出力と、照度計測手段22の出力が観測される。フェーズ4に移行する前には、赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧Lowの状態が所定時間(例えば20秒)以上継続しているが、この状態がさらに所定時間(例えば20秒)継続したときに異常が発生したと判断することとする。赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧Lowは、照度センサ21の真上のトッププレート21が鍋底に覆われている状態であるにもかかわらず、赤外線センサ17で鍋底の温度を観測できない状態であるので、鍋30がずれて載置されているものと判断できる。このような配置のまま強火での加熱を続行したのでは鍋底の温度を正しく観測することができず過加熱の虞もあるため、使用者に対し「鍋を中心に置いてください。」などの音声報知を行う。更に、火力を例えば1000Wに下げるなどの制御を行っても良い。火力を下げるときには「火力を下げました。」などの報知を行っても良い。使用者が鍋30の位置を直した場合などには、観測される赤外線センサ17の出力電圧、照度計測手段22の出力電圧の組み合わせが変化するので、フェーズ4において、赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧Low以外の状態が所定時間(例えば20秒)継続したときには、表3に従って他のフェーズに移行する。なお、フェーズ4では、火力を下げるときの火力を1000Wとして説明したが、1600W以下の火力であれば任意の火力を設定しても良い。
以上で説明したように、フェーズ4では、照度センサ21の出力に加え、赤外線センサ17の出力電圧も用いて鍋30が正常に載置されているか判別できるので、周囲の環境が暗い場合であっても、赤外線センサ17の出力電圧に基づき適切に異常検出を行うことができる。
次に、フェーズ5の説明を行う。フェーズ5でも、フェーズ2〜4と同様に、赤外線センサ17の出力と、照度計測手段22の出力が観測される。フェーズ5に移行する前には、赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧Highの状態が所定時間(例えば20秒)以上継続しているが、この状態がさらに所定時間(例えば20秒)継続したときに異常が発生したと判断することとする。赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧Highは、加熱コイル3の中心部に設けられた赤外線センサ17で鍋底の温度を観測できない状態であり、かつ、照度センサ21の真上のトッププレート21が鍋底に覆われていない状態であるので、赤外線センサ17,照度センサ21の何れの真上にも鍋底が存在しないほど大きくずれて鍋30が載置されているか、鍋30が載置されていないかのいずれかであると考えられる。このまま加熱コイル3の通電を続行しても鍋30を加熱することはできないため、本実施例の誘導加熱調理器では、使用者に対し「鍋を中心に置いてください。」などの音声報知を行う。使用者が鍋30を適切な位置に載置した場合などには、観測される赤外線センサ17の出力電圧,照度計測手段22の出力電圧の組み合わせが変化するので、フェーズ5において、赤外線センサ17の出力電圧Low、かつ、照度計測手段22の出力電圧High以外の状態が所定時間(例えば20秒)継続したときには、表4に従って他のフェーズに移行する。
以上で説明したように、本実施例の誘導加熱調理器では、異常が検出されたときには、使用者に対し鍋30を適切に載置するよう報知し、赤外線センサ17の出力電圧,照度センサ21の出力電圧の双方が正常となる加熱制御が行われるように促す。または、異常が検出されたときには、火力を下げることによって、鍋30の過加熱を防止する。このように制御することで、使用者が火力を設定する、いわゆる、手動操作において、適切な加熱制御を行うことができる。
なお、実施例1の照度センサ21は、加熱コイル3の下方に配置されていることから、ある鍋を加熱中に、その鍋以外の物で照度センサ21の真上のトッププレート2を覆うことがあるとは考えがたい。従って、照度センサを加熱コイルの外側に設けた場合と異なり、鍋以外の物を照度センサの真上のトッププレートに載置したことによる誤制御を防止しやすい。
次に、メニューに応じた温度になるように自動的に火力を制御する実施例2の誘導加熱調理器について、揚げ物調理を例に説明する。なお、実施例2の誘導加熱調理器の構成は、実施例1の誘導加熱調理器の構成と同等であるので、詳細な説明は省略することとし、実施例1と相違する部分を中心に説明することとする。
メニュー設定手段71で“揚げもの”を選択すると、次に油温を設定する必要があり、その場合矢印調整手段73を操作して150℃〜200℃の6段階の温度を設定することができる。例えばメニュー設定手段71で揚げものを設定し、次に矢印調節手段73で油温を180℃に設定したとき、表示部81aは、図5に示すように「180」の数字と「揚げもの」の文字が表示される。
以上のように構成された誘導加熱調理器において、使用者が本体1右側の加熱コイル3を使って揚げもの調理する場合を図8のフローチャートを用いて説明する。最初に油を入れた鍋30を本体1右側の加熱コイル3の中央に置き、主電源スイッチ9をオンして電源を入れ(S801)、表示部81aを見ながら上面操作部7aのメニュー設定手段71を操作して「揚げもの」を選択し(S802)、矢印調整キー73を操作して油温を設定する(S803)。揚げもの調理に適した油温は約150〜200℃であるが、ここでは、油温を200℃に設定し、表示部81aには「200」が表示されるものとする。なお、一般的に油温は鍋底温度よりも20℃程度低いので、赤外線センサ17の出力に基づいて検出される鍋底の温度が約220℃のときに鍋内の油温が約200℃となる。また、サーミスタで構成された温度センサ15が観測する鍋底温度は、実際にはトッププレート2の下面の温度であるので、油温よりも低い温度となる。このため、温度センサ15の出力に基づいて検出される鍋底の温度が約194℃のときに鍋内の湯温が約200℃となる。
次に、切・スタートキー74を操作して揚げもの調理を開始する(S804)。なお、本実施例は揚げもの調理時の温度制御に関するものであるので、S802で揚げもの調理を選択しなかった場合の説明は本実施例では省略する。
揚げもの調理を開始すると、照度センサ21の出力から、照度計測手段22により照度を計測する(S805)。実施例1で説明したように、制御手段118には、鍋の有無を判別するための閾値(例えば1.0V)が予め記憶されているので、照度計測手段22の出力電圧と記憶された閾値を比較し(S806)、照度計測手段22の出力電圧が閾値未満であれば鍋がずれていないと判定する(S807)。このとき温度センサ15用の設定温度をT1(例えば194℃)、赤外線センサ21用の設定温度をT3(例えば220℃)に設定し(S808)、以後の温度制御を行う。ここで、設定温度T1の例として194℃、設定温度T3の例として220℃を挙げた理由は、各々のセンサで観測される温度が各々の設定温度になったときに、鍋内の油温が使用者の設定した約200℃となるからである。
一方、S806において、照度計測手段22の出力電圧が閾値以上であれば鍋がずれていると判定する(S809)。このとき温度センサ15用の設定温度をT2に設定し(S808)、以後の温度制御を行う。なお、設定温度T2は設定温度T1よりも低い温度(例えば164℃)とする。照度センサ21の真上に鍋が無いと判別されたときには、照度センサ21に近接する赤外線センサ17の出力の信頼性は低いと考えられるので、赤外線センサ17の出力に基づく制御は行わないこととする。
次に、図9を用いて設定温度T1〜T3を用いた揚げもの調理時の温度制御を詳細に説明する。図9(a),(b)において、破線901,904は設定温度T1のときに温度センサ15に基づいて観測する鍋底温度であり、一点鎖線902は設定温度T3のときに赤外線センサ17に基づいて観測される鍋底温度であり、実線903,905は鍋内の油温である。また、図9(c)において、破線906は設定温度T2のときに温度センサ15が観測する鍋底温度であり、実線907は鍋内の油温である。
まず、図9(a)を用いて、鍋30が中心に置かれている場合を説明する。このとき、設定温度T1を194℃、設定温度T3を220℃に設定し、揚げもの調理を開始する。調理開始時の鍋底温度901,902は常温(約20℃)であり、鍋内の油の温度903も常温(約20℃)である。揚げもの調理を開始すると鍋底温度901,902が上昇すると共に、油の温度903も上昇する。そして、鍋底温度901または902が設定温度T1(194℃),設定温度T3(220℃)に達したときに、油の温度903は使用者が設定した200℃に達する。この油の温度200℃は使用者が設定した揚げもの調理に適した温度であり、かつ、油の発火の可能性のない安全な温度である。従って、鍋30が中心に置かれている場合には安全に揚げもの調理を行うことができる。
なお、このときの加熱コイル3の入力電力も図9(a)に示す。ここに示すように、揚げもの調理開始時に最大火力1500W、所定時間経過後に1000W、観測温度の安定後に間歇的な500Wの入力電力を加熱コイル3に与えて所望の油温を維持することとしたが、上述した温度制御を実現できるのであればこのような入力電圧波形に限られない。
次に、図9(b)および(c)を用いて、鍋が照度センサ21の真上にない場合、つまり、鍋が赤外線センサ17の真上にない場合を説明する。上述したように、この場合、赤外線センサ17の出力に基づく制御は行わないので、赤外線センサ17に基づいて観測される鍋底温度についての説明は省略する。
まず、図9(b)を用いて、設定温度T1(194℃)を用いて温度制御を行ったのでは鍋30内の油を過加熱してしまう理由について説明する。上述したように、鍋が照度センサ21上に無いときには、照度センサ21に近接する赤外線センサ17の出力の信頼性が低いと考えられるため、赤外線センサ17の出力に基づく制御は行うことができず、温度センサ15の出力に基づく温度制御を行うことになる。サーミスタで構成される温度センサ15は、鍋底からトッププレート2の下面に伝熱した熱を測定するものであるが、鍋底の温度がトッププレート2の下面に伝わるには所定の時間を要する。すなわち、トッププレート2の下面で観測される温度が設定温度にT1に達したときには、油温は目標温度である200℃を大きく超えてしまうというオーバーシュートの問題がある。このオーバーシュートはときには油の発火温度である360℃に達する場合もある。また、温度センサ15の出力に基づいて検出される温度が設定温度にT1に達した後、火力を小さくしても、油温が目標温度200℃を上回る約230℃で安定してしまうという過加熱の問題がある。油温が約230℃になってしまったことは使用者は容易に知ることができないため、油温が200℃であるという前提で調理を行うと調理が失敗する虞もある。
そこで、鍋が照度センサ21の真上にない場合は、設定温度T1(194℃)よりも低い設定温度T2(例えば164℃)を用いるものとする。
図9(c)に示すように、設定温度T2を用いた場合であっても、温度センサ15の出力に基づいて制御をすると、オーバーシュートの問題が発生する。しかし、油温907は図9(b)よりも早く設定温度T2に達するので、図9(b)よりも早く火力を下げることができる。これによってオーバーシュートの問題の影響を小さくすることができる。また、設定温度T1よりも低い設定温度T2(例えば164℃)を用いると、温度センサ15に基づいて検出される鍋底温度906が164℃近傍で安定するときに油温907も約200℃で安定するので、使用者が設定した油温と実際の油温に差があることによる調理の失敗を回避することが可能となる。なお、この油の温度200℃は使用者が設定した揚げもの調理に適した温度であり、かつ、油の発火の可能性のない安全な温度である。
なお、ここでは、設定温度T2を設定温度T1よりも30℃低い温度に設定したが、この温度差を10〜40℃の範囲で任意に設定しても良い。
以上で説明したように、実施例2の誘導加熱調理器によれば、加熱コイルの下方に設けた照度センサを用いることで、調理容器の有無やずれを判別し、判別結果に応じた適切な設定温度を用いて、揚げ物調理などの自動調理を行うことができる。