JP2011013423A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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裕之 安川
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Abstract

【課題】良好な着色を可能とし、透明性及び色再現性に優れたトナーを提供する。
【解決手段】トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、前記着色剤は、炭化水素ワックスにより処理された着色剤であり、前記炭化水素ワックスにより処理された着色剤と前記結着樹脂が分散処理されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、トナー及びトナーの製造方法に関する。
電子写真方式のカラートナーに用いられる着色剤の一つに、有機顔料が挙げられる。一般的に、有機顔料は耐熱性や耐光性に優れているのが利点である。一方で、有機顔料は不純物の残存やレーキ金属の水和によって、色相が変化し画像の色再現性が阻害されやすい。また、分散が不十分で顔料結晶の分散径が過大な場合、入射光を散乱し、色相が変化する場合がある。
後者の問題点を解消する方法として、フラッシング法により顔料を分散させ、凝集2次粒子の無い1次粒子によるサブミクロンオーダーの顔料分散径を達成し、透明性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、顔料粒子を結着樹脂及び外殻樹脂により被覆して帯電性、定着性、画像の均一性を改良する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
有機顔料以外によく用いられる着色剤としては染料がある。染料は一般的に水又は疎水性溶媒に溶解する着色剤と解されるが、このような溶解性の染料を用いると、トナーに結着樹脂として用いられる熱可塑性樹脂等に染料分子が溶解することがある。着色剤が分子レベルでトナー中に分散できることは、トナー画像の透明性、色再現性に有利であるものの、耐光性の面では不利である。
また、熱可塑性樹脂に染料分子が相溶すると、可塑剤と同様の作用が働き、トナーのガラス転移点が低下し、トナーの耐熱保存性が低下するという問題があった。トナー画像の熱定着時においても、染料が昇華しやすく、色再現性に欠ける。ある特定のアントラキノン系の染料を用いることにより、耐光性や昇華性、色再現性を両立させる方法が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、未だ十分なものではなかった。
特開平9−26673号公報 特開平11−160914号公報 特開平8−69128号公報
また、着色剤を結着樹脂とともに分子レベルでトナー中に分散させると、結着樹脂の官能基や種類、密度によっては、所望の色相が得られない場合がある。これは、着色剤と結着樹脂間で電荷移動が生じ、着色剤そのものの分光波形、つまり吸収スペクトルが広がるからである。吸収スペクトルが広がると、着色剤本来の色相による着色ができず、色再現性が低下する。
本発明の課題は、良好な着色を可能とし、透明性及び色再現性に優れたトナーを提供することである。
請求項1に記載の発明によれば、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、
前記着色剤は、炭化水素ワックスにより処理された着色剤であり、
前記炭化水素ワックスにより処理された着色剤と前記結着樹脂が分散処理されたトナーが提供される。
請求項2に記載の発明によれば、
前記着色剤は、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物又は金属錯体化合物の何れかである請求項1に記載のトナーが提供される。
請求項3に記載の発明によれば、
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナーの製造方法において、
着色剤と、溶融した炭化水素ワックスとを混合分散処理する工程と、
前記炭化水素ワックスと混合分散処理された着色剤と、結着樹脂とを分散処理する工程と、
を含むトナーの製造方法が提供される。
本発明によれば、トナーの吸収スペクトルがシャープとなり、着色剤が本来持つ色相による着色が可能となる。これにより、良好な着色が可能な、色再現性に優れたトナーを提供することができる。また、吸収スペクトルがシャープであることにより、透明性に優れたトナーを提供でき、当該トナーを用いたトナー画像は、反射光量、すなわち明度が向上する。異なる色のトナー同士を重ね合わせても二次色の反射光量が増加し、広い色再現性を実現することができる。
以下、本発明のトナー及びトナーの製造方法について説明する。
《トナー》
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、前記着色剤は、炭化水素ワックスにより処理されたものである。当該炭化水素ワックスにより処理された着色剤は、前記結着樹脂中に分散される。
〈結着樹脂〉
結着樹脂としては、トナーを粉砕法、溶解懸濁法により製造するのであれば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂等のビニル系樹脂の他、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂等のような公知の各種樹脂を1種又は2種以上用いることができる。
また、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法によりトナーを製造するのであれば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸、フマル酸等のカルボン酸モノマー等から適宜選ばれる1種又は2種以上のモノマーを重合させ、得た樹脂を結着樹脂として用いることができる。
〈着色剤〉
着色剤は、有機顔料又は有機染料である。本発明は、トナーに用いられる結着樹脂と着色剤との間に生じる電荷の偏り、具体的には分子間水素結合、配位結合等が、着色剤本来の色味に悪影響を及ぼすことを防ぐため、着色剤と結着樹脂間に無極性の炭化水素ワックスを介在させることを目的としている。従って、好ましく用いられる着色剤は、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物又は金属錯体化合物である。これら着色剤は、孤立電子対とフリープロトンとの結合性(水素結合)、若しくはトナー中に残存する凝集剤由来の金属イオンと配位結合性があり、炭化水素ワックスにより処理することが好ましい。
アゾ化合物は、−N=N−で表される2価の置換基を持つ化合物である。アゾ化合物としては、例えばモノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、アゾ基を多数有する縮合アゾ化合物が挙げられる。
モノアゾ化合物は、アゾレーキ顔料を含む。具体的には、C.I.ピグメントレッド48:1〜48:5、同52:1、同52:2、同57:1、同58:2、同58:4、同63:1、同63:2、同52:1、同64、同64:1、同146、同184、同188、同238、同200が挙げられる。このうち、特に好ましいのは、C.I.ピグメントレッド48:2、同48:3、同48:5、同57:1、同146、同238である。他には、C.I.ピグメントイエロー49、同74、同97、同111が挙げられる。
ジスアゾ化合物は、アゾ基を2つ有する化合物である。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14、同17、同113、同121、同124、同126、同174、同176、同188、C.I.ピグメントオレンジ15、同16、同44、同34、C.I.ピグメントレッド37、同38、同41、同111が挙げられる。このうち、特に好ましいものは、C.I.ピグメントオレンジ15、同16、C.I.ピグメントレッド41である。
縮合アゾ化合物としては、C.I.ピグメントイエロー93、同94、同128、同166、C.I.ピグメントレッド144、同214、同220、同221、同242が挙げられる。
イソインドリノン化合物は、2つのイソインドリノン基が芳香族ジアミンによって結合された化合物である。具体的には、C.I.ピグメントイエロー109、同110、同117、C.I.ピグメントオレンジ61が挙げられる。
イソインドリン化合物は、ベンゼンの六員環と窒素を含む五員環が環の一辺を共有して結合した化合物に、メチンが結合した構造を有する。例えば、C.I.ピグメントイエロー139、同185、ピグメントオレンジ66、同69が挙げられる。
金属錯体化合物としては、例えばC.I.ピグメントイエロー117、同129、同153、ピグメントオレンジ68、ピグメントレッド257が挙げられる。
また、金属錯体化合物としては、下記式1で表される金属錯体化合物1、下記式2で表される金属錯体化合物2が特に好ましく用いられる。金属錯体化合物1、2における配位結合が結着樹脂の極性基から影響を受けやすく、不安定であるため、炭化水素ワックスにより処理することが特に有効だからである。
Figure 2011013423
着色剤は、炭化水素ワックスにより処理されたものがトナーに用いられる。ここで、処理とは、炭化水素ワックス分子を着色剤分子に吸着させる、或いは着色剤粒子を当該炭化水素ワックスにより実質的に被覆する処理をいう。処理方法としては、例えば炭化水素ワックスと着色剤とを直接溶融混練した後、水中で乳化分散するか、若しくは水中に予め炭化水素ワックスを投入して乳化分散した中へ、着色剤を添加し、混合分散することが挙げられる。ここで、水中には予め界面活性剤を添加しておいてもよい。
着色剤の発色と炭化水素ワックスによる処理の効果を十分得るために、着色剤と炭化水素ワックスとの混合比は、質量比で60:40〜95:5が好ましく、70:30〜80:20がさらに好ましい。
炭化水素ワックスによる処理を経ずに、着色剤が結着樹脂とともにトナー中に分散されると、着色剤と結着樹脂の官能基との間で電荷移動が生じ、分子間水素結合やイオン結合、或いは電荷移動錯体を形成することが想定される。
炭化水素ワックス分子は、電荷の偏りが結着樹脂に比較して小さい。結着樹脂と分散させる前に、炭化水素ワックスにより着色剤を処理することによって、炭化水素ワックス分子が着色剤と結着樹脂間に介在し、着色剤と結着樹脂分子の官能基との間で生じる電荷移動が阻止されると推察される。着色剤分子は本来の電子軌道を維持することができ、その結果、可視光領域の吸収帯がブロード化する現象を抑止し、色の透明性を得ることができる。透明性に優れることにより、トナー画像の明度の低下を防ぐことができる。
従来のトナーにも、炭化水素ワックスを含有するものはあったが、従来は炭化水素ワックスを離型剤として添加し、結着樹脂と相分離させたので、着色剤は結着樹脂に分散含有され、炭化水素ワックス分子が結着樹脂と着色剤間に介在することはなかった。しかしながら、本発明においては、着色剤を炭化水素ワックスにより処理した後に、結着樹脂と分散させるので、着色剤と結着樹脂間に炭化水素ワックスを介在させることが可能である。
また、着色剤として染料が使用される場合、炭化水素ワックスの非極性のポリオレフィンによって染料が遮蔽されるため、結着樹脂への染料の相溶すなわち分子レベルでの拡散が起こりにくいと考えられる。そのため、一般的に染料を使用したトナーにおいて問題視されるような、熱定着時の染料の昇華を抑制することができる。
〈炭化水素ワックス〉
着色剤の処理に用いられる炭化水素ワックスには、ポリプロピレン、ポリエチレン、パラフィンワックス等がある。また、本発明において、炭化水素ワックスには、α−オレフィンを重合させることによって得られるポリα−オレフィンも含まれる。
着色剤の耐昇華性の観点から、分子量が900〜6000、1500〜4000、融点が90℃以上145℃以下の炭化水素ワックスが好ましく用いられる。
炭化水素ワックスは、アルケンをモノマーとして合成されるポリマー又は当該ポリマーと同等の構造を有する炭化水素化合物である。モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンが挙げられる。
パラフィンワックスには、マイクロクリスタリンワックス、合成系ワックスであるフィッシャートロプシュワックスが含まれる。
〈その他〉
本発明に係るトナーは、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤、外添剤等を用いても良い。
荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。
外添剤としては、公知の疎水性シリカ、疎水性金属酸化物の他に、酸化セリウム粒子或いは炭素数20〜50の高級アルコール粒子を添加することが耐フィルミング性の観点から特に好ましい。酸化セリウム粒子を添加する場合、耐フィルミング性を高める観点から個数平均粒径が150〜800nmのものを用いることが好ましく、250〜700nmがさらに好ましい。また、酸化セリウム粒子の添加量は、トナーに対して0.5〜3.5質量%とすることが好ましく、この範囲とすることにより、良好なクリーニング性が維持されて安定した耐フィルミング性を得ることができる。また、添加量が過剰なケースでは加熱定着時に溶融したトナー粒子の接着力が抑制されて定着強度が低下するが、上記範囲とすることによりこのような定着強度低下の問題も生じない。
また、炭素数20〜50の高級アルコール粒子を添加する場合、異なる炭素数のアルコール粒子が多少混在していてもよいが、アルコール粒子の炭素数分布のピークが20〜45の範囲内にあることが好ましい。また、前記高級アルコール粒子は直鎖成分が75〜98%の範囲内にあることが好ましい。また、前記高級アルコール粒子の個数基準のメディアン径は、耐フィルミング性の観点から、200nm以上800nm以下が好ましい。
《トナーの製造方法》
本発明に係るトナーの製造方法は、着色剤と、溶融した炭化水素ワックスとを混合分散処理する工程と、前記炭化水素ワックスと混合分散処理された着色剤と、結着樹脂とを分散処理する工程と、を含む。
具体的な製法には、結着樹脂、着色剤組成物を加熱溶融させ、混練、冷却、粉砕、分級してトナーを製造する粉砕法、結着樹脂、着色剤組成物を水中にて乳化分散してトナーを製造する乳化分散法、結着樹脂を構成するモノマー、油溶性の重合開始剤、着色剤組成物を水中で乳化分散後、加熱して重合させる懸濁重合法、結着樹脂を構成するモノマー、着色剤組成物を水中で乳化分散後、水溶性の重合開始剤を添加し、加熱して重合させる乳化重合法、乳化重合法と同様の方法により製造した結着樹脂、着色剤組成物を水中で分散後、凝集剤を添加し、加熱して結着樹脂、着色剤組成物の各粒子を凝集させ、トナー粒子を形成する乳化重合凝集法等があるが、何れを採用してもよい。
乳化重合凝集法によるトナーの製造方法の具体例を以下に示す。
(1)着色剤処理工程
着色剤を炭化水素ワックスにより処理し、水系媒体中に分散させる。処理方法としては、例えば溶融した炭化水素ワックスと着色剤とを界面活性剤を添加した水中で直接乳化分散するか、若しくは界面活性剤を添加した水中に溶融した炭化水素ワックスを予め投入して乳化分散した中へ、着色剤を添加し、混合分散することが挙げられる。
次に、界面活性剤を投入してホモミキサーで攪拌しながら、3〜5倍量の熱湯と界面活性剤との混合液をホモミキサー中に投入し、温度80〜97℃でさらに攪拌を継続する。その後、冷却し、必要に応じて固液分離する。界面活性剤は、高級アルコールやアルキルフェノール、脂肪酸エステルエチレングリコール付加物等の市販のノニオン性界面活性剤からHLB9〜12のものを選択するか、アニオン性界面活性剤を選択して使用すればよい。アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩を用いることができる。
(2)重合工程
結着樹脂を構成するモノマー、必要に応じて添加する帯電制御剤、オフセット防止剤等を水中で乳化分散させる。その後、水溶性の重合開始剤を添加し加熱して、帯電制御剤等を含有する結着樹脂粒子を形成する。
(3)凝集工程
得られた結着樹脂粒子と、炭化水素ワックスにより処理した着色剤粒子とを水系媒体中に分散させ、塩析、凝集、融着させてトナー粒子を形成する。
(4)濾過洗浄工程
トナー粒子の分散系を濾別し、洗浄処理して界面活性剤等を除去する。
(5)乾燥工程
洗浄処理によって得られたトナーを乾燥処理する。
(6)外添処理工程
乾燥処理されたトナーに外添剤を添加する。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.着色剤分散液の調製
下記表1に示す炭化水素ワックス1〜6を用いて、下記表2に示す着色剤1〜12を、下記表3及び表4に示す組合せで処理し、炭化水素ワックスにより処理された着色剤粒子を分散させた着色剤分散液1−1〜12−4、比較用着色剤分散液1〜12をそれぞれ調製した。
表1は、炭化水素ワックス1〜6として用いた製品名、製造元、当該製品に用いられている炭化水素ワックス及びその融点の一覧を示す。
Figure 2011013423
表2は、着色剤1〜12として用いた着色剤化合物とその分類を示す。表2に示す金属錯体化合物1は式1により示される金属錯体化合物であり、金属錯体化合物2は式2により示される金属錯体化合物である。
Figure 2011013423
表3は、着色剤分散液1−1〜12−4の調製に用いた着色剤1〜12と、着色剤1〜12の処理に用いた炭化水素ワックス1〜6との組合せを示す。表4は、比較用着色剤分散液1〜12の調製に用いた着色剤1〜12を示す。
Figure 2011013423
Figure 2011013423
(1)着色剤分散液1−1の調製
下記界面活性剤を混合し、HLBが約11.7の乳化剤を5質量部調製した。
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(HLB:14、商品名:ノイゲンET140E、第1工業製薬社製):3.75質量部
ソルビタンモノステアレート(HLB:4.7、商品名:ソルゲン50、第1工業製薬社製):1.25質量部
表1に示す炭化水素ワックス1を50質量部用意し、温度110℃に加熱して液状に溶融させた。当該炭化水素ワックス液体に、調製した乳化剤の一部を投入し、ホモミキサーで攪拌した。攪拌を続けながら、温度80°の熱湯45質量部と残りの乳化剤との混合液を添加し、温度80℃下でさらに攪拌して炭化水素ワックス濃度50%の乳化物を得た。
次に、表2に示す着色剤1を15質量部と、イオン交換水75質量部及び上記炭化水素ワックス1の乳化物10質量部とを混合し、ホモミキサーにより攪拌して混合分散させて、着色剤分散液1−1を得た。着色剤分散液1−1中の着色剤粒子の体積基準のメディアン径は210nmであった。
(2)着色剤分散液1−2〜12−4の調製
着色剤分散液1−1の調製において、炭化水素ワックス1と着色剤1の組合せを、表3に示す炭化水素ワックス1〜6と着色剤1〜12の組合せに変更した他は、着色剤分散液1−1の調製と同様の手法により、着色剤分散液1−2〜1−6、2−1〜2−6、3−1、3−2、3−4、4−1、4−2、4−4、5−1、5−2、5−4、6−1、6−2、6−4、7−1、7−2、7−4、8−1、8−2、8−4、9−1、9−2、9−4、10−1、10−2、10−4、11−1、11−2、11−4、12−1、12−2、12−4をそれぞれ調製した。
(3)比較用着色剤分散液1の調製
上記乳化剤5質量部と温度80℃の熱湯45質量部とを混合して、温度80℃下でホモミキサーにより攪拌した。ここへ、表2に示す着色剤1を15質量部添加し、ホモミキサーにより攪拌し、混合分散させて、比較用着色剤分散液1を調製した。
(4)比較用着色剤分散液2〜12の調製
比較用着色剤分散液1の調製において、用いた着色剤1を表4に示す着色剤2〜12にそれぞれ変更した他は、比較用着色剤分散液1と同様の手法により、比較用着色剤分散液2〜12を調製した。
2.樹脂分散液の調製
下記表5に示すモノマーを用いて樹脂分散液A1〜A3を調製した。表5は、樹脂分散液A1〜A3に用いられた重合性の各モノマーとその質量比、モノマーの重合体の分子量を示す。
Figure 2011013423
(1)樹脂分散液A1の調製
攪拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えたセパラブルフラスコに、アニオン系活性剤溶液(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム(SDS)7.08質量部をイオン交換水2760質量部に溶解させた溶液)を投入した。これを窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しつつ、内温を80℃に昇温させた。
次に、下記組成物を混合し、80℃に加温して溶解させ、モノマー溶液を作製した。
ペンタエリスリトールテトラベヘネート(離型剤):72.0質量部
スチレン :115.1質量部
n−ブチルアクリレート :42.0質量部
メタクリル酸 :10.9質量部
加熱したアニオン系活性剤溶液と、作製したモノマー溶液とを、循環経路を有する機械式分散機により混合分散させ、均一な分散粒子径を有する乳化粒子を形成した。
乳化粒子の分散液に、重合開始剤溶液(過硫酸カリウム0.84質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液)を添加し、80℃にて3時間加熱、攪拌し、樹脂粒子を形成した。次に、重合開始剤(過硫酸カリウム)8.0質量部と、水溶性連鎖移動剤として2−クロロエタノール10.0質量部とをイオン交換水240質量部に溶解させた溶液を調製した。
調製した溶液を樹脂粒子の分散液に添加して15分後、80℃下で下記モノマーの混合物を120分かけて滴下した。滴下終了後、60分間加熱、攪拌した後、40℃まで冷却し、樹脂分散液A1を得た。
スチレン :383.6質量部
n−ブチルアクリレート:140.0質量部
メタクリル酸 :36.4質量部
(2)樹脂分散液A2の調製
樹脂分散液A1の調製において、スチレン、n−ブチルアクリレート、メタクリル酸の各モノマーの添加量を表5に示すように変更した他は、樹脂分散液A1と同様の手法により、樹脂分散液A2を作製した。樹脂分散液A2の調製においては樹脂分散液A1の場合に比較して、スチレンの添加量を10質量%減らし、最初の添加量を103.5質量部、後の添加量を345.2質量部とした。また、n−ブチルアクリレートの添加量を10質量%増やし、最初の添加量を46.2質量部、後の添加量を154.0質量部とした。メタクリル酸の添加量を10質量%減らし、最初の添加量を9.8質量部、後の添加量を32.8質量部とした。
(3)樹脂分散液A3の調製
樹脂分散液A1の調製において、スチレン、n−ブチルアクリレート、メタクリル酸の各モノマーの添加量を表5に示すように変更した他は、樹脂分散液A1と同様の手法により、樹脂分散液A3を作製した。樹脂分散液A3の調製においては樹脂分散液A1の場合に比較して、スチレンの添加量を10質量%増やし、最初の添加量を126.6質量部、後の添加量を422.0質量部とした。また、n−ブチルアクリレートの添加量を10質量%減らし、最初の添加量を37.8質量部、後の添加量を126.0質量部とした。メタクリル酸の添加量を10質量%増やし、最初の添加量を12.0質量部、後の添加量を40.0質量部とした。
3.トナーの作製
下記表6に示す樹脂分散液A1〜A3と着色剤分散液1−1〜12−4の組合せにより、実施例に係るトナー1−1〜12−4を作製した。
表6は、トナー1−1〜12−4の作製に用いた樹脂分散液A1〜A3と着色剤分散液1−1〜12−4の組合せと、各トナー1−1〜12−4の色相を示す。
Figure 2011013423
また、下記表7に示す樹脂分散液A1〜A3と比較用着色剤分散液1〜12の組合せにより、比較例に係る比較用トナー1〜12を作製した。
表7は、比較用トナー1〜12の作製に用いた樹脂分散液A1〜A3と比較用着色剤1〜12の組合せと、各比較用トナー1〜12の色相を示す。
Figure 2011013423
(1)トナー1−1の作製
温度センサ、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を備えた5リットル容量の四つ口フラスコに、樹脂分散液A1を1250質量部、イオン交換水を2000質量部、着色剤分散液1−1を500質量部投入し、攪拌した。フラスコ内を30℃に調整した後、5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを10.0に調整した。次いで、塩化マグネシウム6水和物52.6質量部をイオン交換水72質量部に溶解させた水溶液を調製し、当該水溶液を攪拌下、30℃にて10分間かけてフラスコに添加した。
3分間放置した後、昇温を開始し、液温度90℃まで6分かけて昇温した。昇温速度は10℃/分である。その状態でコールターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて、凝集により形成された凝集粒子の粒径(体積基準のメディアン径)を測定した。粒径が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム115質量部をイオン交換水700質量部に溶解させた水溶液を添加し、凝集による粒子の成長を停止させた。継続して、液温度90±2℃にて6時間加熱、攪拌し、凝集粒子の融着を進行させた。
その後、6℃/分の速度で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調製して、攪拌を停止した。
次いで、フラスコ内の溶液を固液分離し、イオン交換水による洗浄を4回繰り返した。このとき、イオン交換水の全量を15リットルにした。洗浄後、40℃の温風により乾燥し、トナー1−1を得た。トナー1−1はマゼンタトナーとして用いられる。
(2)トナー1−2〜12−4の作製
トナー1−1の作製において、用いた樹脂分散液A1と着色剤分散液1−1の組合せを、表6に示す組合せにそれぞれ変更した他は、トナー1−1の作製と同様の手法により、トナー1−2〜1−6、2−1〜2−6、3−1、3−2、3−4、4−1、4−2、4−4、5−1、5−2、5−4、6−1、6−2、6−4、7−1、7−2、7−4、8−1、8−2、8−4、9−1、9−2、9−4、10−1、10−2、10−4、11−1、11−2、11−4、12−1、12−2、12−4をそれぞれ調製した。
(3)比較用トナー1〜12の作製
トナー1−1の作製において、用いた樹脂分散液A1と着色剤分散液1−1の組合せを、表7に示す組合せにそれぞれ変更した他は、トナー1−1の作製と同様の手法により、比較用トナー1〜12をそれぞれ作製した。
(4)トナーの外添処理
作製したトナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12のそれぞれに、下記外添剤を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機社製)により混合した。
疎水性シリカ(数平均一次粒子径12nm、疎水化度68) :1質量%
疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径20nm、疎水化度63):1質量%
その後、目開き45μmの篩いを用いて、粗大粒子を除去し、外添処理されたトナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12を得た。
(5)現像剤の調製
トナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12のそれぞれに、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径が60μmのフェライトキャリアを混合し、各トナーの現像剤を調製した。各現像剤におけるトナーの濃度が6質量%となるように混合した。
4.評価実験
(1)実写テスト
各トナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12の現像剤を、市販の複合機Sitios7165(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に搭載し、常温常湿(温度25℃、相対湿度55%)の環境下で実写テストを行った。複合機Sitios7165には電子写真方式が採用され、熱定着を行う下記定着装置が搭載されている。
熱ロール式の定着装置であり、加熱ローラと加圧ローラを備える。加熱ローラは、中央にヒータを内蔵するアルミ合金からなる円筒状の芯金(内径40mm、肉厚1.0mm、全幅310mm)の表面が、厚み120μmのチューブにより被覆されている。チューブは、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)からなる。加圧ローラは、鉄からなる円筒状の芯金(内径40mm、肉厚2.0mm)の表面が、スポンジ状のシリコーンゴム(アスカーC硬度48、厚み2mm)により被覆されてなる。当該加熱ローラと加圧ローラとが150Nの加重により当接されて、5.8mm幅のニップが形成される。この定着装置のクリーニング機構として、ポジフェニルシリコーン(20℃の粘度10Pa・s)が含浸されたウェッブ方式の供給方式を使用した。定着温度は加熱ローラの表面温度で制御し、設定温度は175℃とした。シリコーンの塗布量は0.1mg/A4とした。
実写テストの現像条件は下記の通りである。
感光体表面電位:−700V
DCバイアス:−500V
感光体と現像スリーブ間距離Dsd:600μm
現像剤層規制:磁性H-Cut方式
現像剤層厚:700μm
現像スリーブ径:40mm
(2)明度の評価
各トナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12をそれぞれ用いて、上記実写テストにより転写紙上に単色のトナー画像を形成し、当該トナー画像の明度を評価した。転写紙は、明度93、秤量128gのPODグロスコート(王子製紙社製)を使用した。転写紙上でのトナー付着量は8g/m2である。
転写紙上に形成され、定着処理されたトナー画像の反射スペクトルを、分光光度計Gretag Macbeth Spectrolino(Gretag Macbeth社製)により測定し、その測定値をトナー画像の明度とした。当該測定にはD65光源、φ4mmの反射測定アパーチャを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔、視野角(observer)を2°に設定し、基準合わせに専用白タイルを用いた。
明度の評価基準は、以下の通りである。
(i)マゼンタトナーの場合、下記評価基準でランクC以上を合格とする。
明度が47以上: ランクA
明度が42以上47未満:ランクB
明度が37以上42未満:ランクC
明度が32以上37未満:ランクD
明度が32未満 :ランクE
(ii)オレンジトナーの場合、下記評価基準でランクC以上を合格とする。
明度が55以上: ランクA
明度が50以上55未満:ランクB
明度が45以上50未満:ランクC
明度が40以上45未満:ランクD
明度が40未満 :ランクE
(iii)イエロートナーの場合、下記評価基準でランクC以上を合格とする。
明度が85以上: ランクA
明度が80以上85未満:ランクB
明度が75以上80未満:ランクC
明度が70以上75未満:ランクD
明度が70未満 :ランクE
5.評価結果
各トナー1−1〜12−4、比較用トナー1〜12によるトナー画像の明度と評価ランクは、表6、表7に示される。表6及び表7に示すように、実施例に係るトナー1−1〜12−4は全て合格基準を満たし、マゼンタ、オレンジ、イエローの各色相で充分な明度が得られた。この結果は、トナー1−1〜12−4の透明性が優れていることを示している。これに対し、比較例に係る比較用トナー1〜12は全て合格基準を満たすことはできなかった。

Claims (3)

  1. 少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、
    前記着色剤は、炭化水素ワックスにより処理された着色剤であり、
    前記炭化水素ワックスにより処理された着色剤と前記結着樹脂が分散処理されたトナー。
  2. 前記着色剤は、アゾ化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物又は金属錯体化合物の何れかである請求項1に記載のトナー。
  3. 少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナーの製造方法において、
    着色剤と、溶融した炭化水素ワックスとを混合分散処理する工程と、
    前記炭化水素ワックスと混合分散処理された着色剤と、結着樹脂とを分散処理する工程と、
    を含むトナーの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011237494A (ja) * 2010-05-07 2011-11-24 Toyo Ink Sc Holdings Co Ltd カラートナー用顔料組成物、それを含有してなるカラートナー用着色樹脂組成物及びカラートナー
JP2015206995A (ja) * 2014-04-19 2015-11-19 ゼロックス コーポレイションXerox Corporation 着色剤ワックス分散物を含むトナー

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