JP2011013238A - 防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置 - Google Patents

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Tsutomu Murata
力 村田
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Hideki Moriuchi
英輝 森内
Naoki Serizawa
直樹 芹澤
Takayuki Kawanishi
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Abstract

【課題】 防眩性と高コントラストを達成することができる表面凹凸を発現する構造体を有し、製造安定性に優れる防眩フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 透光性基体上に防眩層が積層されてなる防眩フィルムであって、該防眩層が共連続体構造を有しており、該防眩層が少なくとも第一の相と第二の相を有していることを特徴とする防眩フィルム。前記防眩層を構成する共連続体構造は、水平方向の網目の寸法が10μm〜150μmであることを特徴とする請求項1に記載の防眩フィルム。
【選択図】図1

Description

本発明は共連続体構造を有する防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置に関する。
液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等の表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、これらのディスプレイ表面には、画像の視認性を向上させるために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた防眩フィルムなどの、機能性フィルムが最表面に設けられている。
これら機能性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)やトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)等の透光性基体上に、微細凹凸構造を形成させた防眩層を一層設けたものや、光拡散層上に低屈折率層を積層したものが、一般に製造販売されており、層構成の組み合わせにより所望の機能を提供する機能性フィルムの開発が進められている。
ディスプレイの最表面に防眩フィルムを用いた場合には、明るい部屋での使用の際に、光の拡散により黒表示の画像が白っぽくなり、コントラストが低下する問題があった。このため、防眩性を低減させてでも、高コントラストを達成できる防眩フィルムが求められている(高コントラストAG)。防眩フィルムのコントラストを向上させる方法としては、例えば、表面の凹凸形状を最適化させることが挙げられる。
防眩層表面に凹凸形状を形成させる方法としては、上記の透光性基体上に、微粒子を添加した防眩層形成用塗料を塗布した後、当該防眩層形成材料に紫外線を照射して防眩層を形成させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
また、防眩層に含有する微粒子の粒子径と表面凹凸形状(傾斜角)を最適化することにより、防眩性とコントラストを両立する方法も有る(例えば、特許文献2参照)。
また、複数の樹脂成分を使用することによって微粒子を含有させずに表面凹凸を形成し、当該樹脂成分の層分離特性を利用し紐状構造を形成させることにより防眩性とコントラストを両立する方法も有る(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−196117号公報 特開2008−158536号公報 特開2008−225195号公報
特許文献1のように、微粒子を含有する防眩層を使用する場合、防眩性とギラツキ防止効果を奏する。しかしながら、防眩層に含有する微粒子の界面と、該微粒子の形状に基づいた防眩層の表面凹凸部分において光の散乱が生じることから、高コントラストを達成することが難しい問題があった。
特許文献2のように、微粒子の粒子径および表面凹凸の傾斜角を最適化した場合についても、コントラストが不十分である問題があった。
特許文献3のように、複数の樹脂成分の相分離を利用し、表面に紐状凸部を形成する方法については、製造安定性に問題があった。
そこで、本発明では、防眩性と高コントラストを達成することができる表面凹凸を発現する構造体を有し、製造安定性に優れる防眩フィルムを提供することを目的とする。また、当該防眩フィルムを具備してなる表示装置を提供することを目的とする。
(1)透光性基体上に防眩層が積層されてなる防眩フィルムであって、該防眩層が共連続体構造を有しており、該防眩層が少なくとも第一の相と第二の相を有していることを特徴とする防眩フィルム。
(2)前記防眩層を構成する共連続体構造は、水平方向の網目の寸法が10μm〜150μmであることを特徴とする前記(1)に記載の防眩フィルム。
(3)前記防眩層が樹脂成分および無機成分を含有することを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の防眩フィルム。
(4)前記防眩層が微粒子を含有してなることを特徴とする前記(1)〜前記(3)のいずれか1つに記載の防眩フィルム。
(5)前記微粒子が共連続体構造を構成する第一の相と第二の相の縁部に偏在してなることを特徴とする前記(4)に記載の防眩フィルム。
(6)前記防眩層を構成する無機成分が、層状有機粘土であることを特徴とする前記(3)に記載の防眩フィルム。
(7)前記(1)〜前記(6)に記載の防眩フィルムを具備してなることを特徴とする表示装置。
本発明によれば、防眩フィルムを構成する防眩層表面に共連続体構造を形成することにより表面凹凸を形成することができ、良好な防眩性および高コントラストを発現するとともに製造安定に優れた防眩フィルム、および当該防眩フィルムを用いた表示装置を提供することができる。
防眩層の構造を表した模式図であって、(a)海島構造の平面図、(b)共連続体構造の平面図、(c)海島構造の断面側面図、(d)共連続体構造の断面側面図である。 実施例1で作製した防眩層表面の共連続体構造を示すレーザー顕微鏡写真である。 実施例1で作製した防眩層表面の共連続体構造をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。 実施例1で作製した防眩層表面における共連続体構造を無機成分(Si)にてEDSによるマッピングを行った写真である。 比較例1で作製した防眩層表面の海島構造を示すレーザー顕微鏡写真である。 比較例1で作製した防眩層表面の海島構造をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。
以下、本発明を説明する。本発明を構成する防眩層は共連続体構造を有する。図1は防眩層の構造を模式的に表した図である。(a)および(b)が防眩層の表面構造を示した平面図、(c)および(d)が防眩フィルムの側断面構造を示した側断面図である。(a)及び(c)が従来の海島構造の防眩層であり、(b)および(d)が本発明における共連続体構造を有する防眩層である。
本発明を構成する防眩層は第一の相と第二の相とを少なくとも有するものであればよいので、防眩層が第三の相や第四の相を有するものであってもよく、防眩層を構成する相の数は限定されるものではない。
本発明を構成する防眩層は、図1(b)および(d)に示すように樹脂成分を相対的に多く含有する第一の相1と、当該樹脂成分を相対的に少なく含有する第二の相2とを少なくとも有するものである。この第二の相2が、防眩層16の表面凹凸の凸部分を共連続体構造10、11にて形成する。
「共連続体構造」とは、従来の防眩層と比較して、表面凹凸の凸部分の傾斜(後述する平均傾斜角)が小さくなだらかな構造をいう。従来、図1(c)に示すように、従来の防眩層15は透光性基体20上に、微粒子30、31の形状を利用して表面凹凸を形成させていた。すなわち、微粒子30、31上に存在する樹脂40は当該微粒子の形状に基づいて盛り上がり、微粒子30、31が存在しない部分においては樹脂40が盛り上がらないため、凸部分と凹部分が交互に形成されることから、防眩層15の表面凹凸は傾斜が大きいものであった。
これに対して、本発明の防眩層16は第二の相2が凸部分を形成するため、微粒子を含有させなくても防眩層16に表面凹凸を形成させることができる。したがって、図1(c)に示す従来の防眩層15に比べて、図1(d)に示すように防眩層16に傾斜が生じにくくなるものである。すなわち、本発明を構成する共連続体構造10、11は、従来の防眩層に比べ、凸部分が連続して形成されるものである。
本発明を構成する防眩層は、主な構造として共連続体構造を有するものであればよく、例えば部分的に共連続体構造が途切れた箇所があっても、一部に海島構造が存在していてもよい。なお、第二の相2を構成する成分が後述する無機成分である場合、防眩層の形成過程において無機成分同士が次第に凝集していくため、無機成分の凝集体が共連続体構造を形成する。
本発明において、共連続体構造における網目の寸法(図1(d)における共連続体構造10、11の長さ)は、塗膜(防眩層)の厚さ方向において0.1〜20μmの範囲内が好ましく、1〜10μmの範囲内がさらに好ましい。また、共連続体構造の網目の寸法は、塗膜(防眩層)の水平方向において5〜200μmの範囲内が好ましく10〜150μmの範囲内がさらに好ましい。
共連続体構造は、例えばレーザー顕微鏡、SEM(走査電子顕微鏡)、EDS(エネルギー分散型X線分光器)、光学顕微鏡により確認することができる。具体的には、例えば、図2は後述する実施例1の塗膜(防眩層)表面のレーザー顕微鏡写真であるが、この写真から、網目構造が形成されていることが分かるため、防眩層表面が共連続体構造を有すると判断することができる。
本発明で形成される共連続体構造に金蒸着を行った後、電子顕微鏡により観察すると、共連続体構造を形成している部分が表面凹凸の凸部分を形成していることが分かる。
また、本発明で形成される共連続体構造にカーボン蒸着を行った後、電子顕微鏡により観察することにより、カーボン蒸着面における元素の分布状況を大まかに確認することができる。これは、カーボン蒸着面に複数の元素が存在するが、例えば、原子番号の大きいものは白色、原子番号の小さいものを黒色に表示するなど色分けして、元素の分布を色の濃淡で示すことができることによる。
さらにまた、本発明で形成される共連続体構造に対して、EDSによるマッピングを行うことにより、塗膜(防眩層)表面や塗膜(防眩層)の断面に存在する元素を確認することができる。このEDSによるマッピングは、特定の元素(例えば、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子等)が多く分布しているところを色表示することができるものである。
上記の電子顕微鏡観察およびEDSによるマッピングを用いることにより、共連続体構造の凹凸構造や特定元素の分布を確認することができる。これによって、例えば、表面凹凸の凸部分において、ある特定元素が多く分布していること等を確認することができる。
共連続体構造において、第一の相は樹脂成分を相対的に多く含有し、第二の相は当該樹脂成分を相対的に少なく含有する。すなわち、本発明を構成する防眩層は共連続体構造を形成するため、防眩層を構成する各成分は、防眩層において均一に存在するのではなく、ムラのある状態で存在する。
図3、4を用いてもう少し具体的に説明する。図3および図4は後述する実施例1で作成した防眩層の表面状態を同一視野にて撮影した図であり、当該防眩層は樹脂成分と無機成分から構成されている。
図3は防眩層表面にカーボン蒸着したSEM写真である。反射電子検出器において表示される画像は、防眩層表面に含有している成分に起因する反射電子を画像として表している。
反射電子は、原子番号に依存するものであり、例えば原子番号が大きいものが白色、原子量が小さいものを黒色に表示するなど色分けして表示することができる。図3に示すように、防眩層中の各元素は表面水平方向に均一に存在するのではなく、原子番号が大きい元素の含有量が相対的に多い部分と含有量が相対的に少ない部分とからなっている。
図4は、防眩層表面におけるEDSによる無機成分(Si)のマッピング結果を示したものであり、含有しているSi成分の量を色の濃淡で示している。図4に示すように、Si成分についても、含有量が相対的に多い部分と含有量が相対的に少ない部分とからなっている。なお、図4においては具体的に例示するためにシリカ(Si)のマッピング結果を示しているが、他の無機成分元素や樹脂(有機物)成分のマッピング結果を示すことも可能である。図4に示すマッピング結果において、検出条件にもよるがシリカ等の無機成分が0.2質量%の濃度であれば検出することができる。すなわち、第一の相および第二の相の二つの相からなる防眩層において、第一の相は99.8質量%以上の樹脂成分と0.2質量%未満の樹脂成分と異なる成分(例えば、無機成分)とから構成され、第二の相は99.8質量%未満の樹脂成分と0.2質量%以上の樹脂成分と異なる成分(例えば、無機成分)とから構成されるものである。
樹脂成分の含有量が相対的に多い部分(図3の色が濃い部分)では、樹脂成分以外の成分の含有量が相対的に少なくっている(第一の相)。
一方、樹脂成分の含有量が相対的に少ない部分(図3の色の薄い部分)では、樹脂成分以外の成分の含有量が相対的に多くなっている(第二の相)。
すなわち、本発明に係る防眩層は、第一の相と第二の相が入り組んで存在するものであって、一方の成分が少なくなると他の成分が多くなるといった相補的な関係を有するものである。
なお、図3、4においては、防眩層の表面水平方向における各成分の含有量を示したものであるが、防眩層の垂直方向(厚さ方向)における各成分の含有量を示した場合においても、同様に相補的な関係を示す結果が得られる。
また、図3、4においては樹脂成分と無機成分を使用した防眩層を使用しているが、複数種の樹脂を使用した場合においても共連続体構造を確認することができる。すなわち、樹脂成分と当該樹脂成分と異なる他の樹脂成分とからなる防眩層を使用した場合においても、異なる元素比率の元素成分についてマッピングを行うことにより、第一の相と第二の相を区別することができる。
<共連続体構造を形成する方法>
本発明の共連続体構造は、無機成分の凝集に伴う対流を利用して製造できる。詳しくは、樹脂成分と無機成分と溶媒とを含む溶液を透光性基体上に塗布し、溶媒の揮発に伴って対流を発生させる乾燥工程、及び乾燥した塗膜を硬化する硬化工程を経て製造できる。より具体的には、通常、前記溶液を透光性基体にコーティングし、塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
凝集と対流との併用における詳しいメカニズムは解明できていないが、次のように推定できる。
(1)対流と凝集とを併用することにより、まず、塗布後の塗布層に対流ドメインが発生する。
(2)次に、それぞれの対流ドメイン内で凝集が発生し、凝集の構造は時間とともに巨大化していくが、対流のドメイン壁で凝集の成長は止まる。
(3)その結果として、対流ドメインのサイズ、配列に応じた間隔に制御され、凝集構造に伴う共連続体構造が形成される。
表面凹凸は、表面凸部を形成している部分が共連続体構造を形成する。本発明における共連続体構造に伴う表面凹凸は、従来の微粒子を用いて作成した表面凹凸と比較し傾斜角が小さくなり、表面における光拡散が小さくなり高コントラスト性能を発現するのに有利となる。
以下、本発明を構成する層毎に、好ましく使用することができる材料を説明する。
<透光性基体>
本最良形態に係る透光性基体としては、透光性である限り特に限定されず、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、PET、TAC、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、PDP、LCDに用いる場合は、PETフィルム、TACフィルムおよび含ノルボルネン樹脂フィルムから選ばれる1種を使用することがより好ましい。
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透光性基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
透光性基体表面に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理などのトリートメント処理、界面活性剤、シランカップリング剤などのプライマーコーティング、Si蒸着などの薄膜ドライコーティングなどを施すことで、透光性基体と防眩層との密着性を向上させ、当該防眩層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。また、透光性基体と防眩層との間に他の層を設ける場合も、上記同様の方法で、各層界面の密着性を向上させ、当該防眩層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。
<防眩層>
防眩層は樹脂成分および無機成分を含有し、当該樹脂成分を硬化させて形成されるものである。防眩層には無機微粒子や有機微粒子を任意成分として含有させてもよい。
(樹脂成分)
防眩層を構成する樹脂成分としては、硬化後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂成分としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、電離放射線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも、電子線や紫外線照射による硬化処理にて、簡易な加工操作にて効率よく硬化することができる電離放射線硬化型樹脂が好適である。
電離放射線硬化型樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
これら電離放射線硬化型樹脂の中で、官能基数が3個以上の多官能モノマーは、硬化速度が上がることや硬化物の硬度が向上させることができる。また、多官能ウレタンアクリレートを使用することにより、硬化物の硬度や柔軟性などを付与することができる。
電離放射線硬化型樹脂として、電離放射線硬化型フッ化アクリレートを使用することができる。電離放射線硬化型フッ化アクリレートは、他のフッ化アクリレートと比較して電離放射線硬化型であることにより、分子間での架橋が起きるため耐薬品性に優れ、ケン化処理後にも十分な防汚性を発現するといった効果が奏される。電離放射線硬化型フッ化アクリレートとしては、例えば、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ウナデカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロ(メタ)アクリレート、トリイソフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、下記化合物(i)〜(xxxi)などを用いることができる。尚、下記化合物はいずれもアクリレートの場合を示したものであり、式中のアクリロイル基はいずれもメタクリロイル基に変更可能である。
これらは、単独若しくは複数種類混合して使用することも可能である。フッ化アクリレートの内、ウレタン結合を持つフッ化アルキル基含有ウレタンアクリレートが、硬化物の耐磨耗性と伸び及び柔軟性の点より好ましい。また、フッ化アクリレートの中でも、多官能フッ化アクリレートが好適である。尚、ここでの多官能フッ化アクリレートとは2個以上(好適には3個以上、より好適には4個以上)の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを意味する。
電離放射線硬化型樹脂は、そのままで電子線照射により硬化可能であるが、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。なお、用いられる放射線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線のいずれであってもよい。また、これらの放射線は、偏光であっても無偏光であってもよい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独または適宜組み合わせて使用することができる。
また、電離放射線硬化型樹脂にレベリング剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。レベリング剤は、塗膜表面の張力均一化を図り塗膜形成前に欠陥を直す働きがあり、上記電離放射線硬化型樹脂より界面張力、表面張力共に低い物質が用いられる。
電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の配合量は、防眩層を構成する樹脂組成物中の固形成分の全質量に対して、50質量%以上含有され、60質量%以上が好適である。上限値は特に限定されないが、例えば、99.6質量%である。50質量%未満では、十分な硬度が得られないなどの問題がある。
なお、電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の固形分には、後述する無機成分以外の全固形分が含まれてなるものであって、電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の固形分のみならず、その他の任意成分の固形分も含む。
(無機成分)
本発明で用いられる無機成分としては、防眩層中に含有され、製膜時に凝集し共連続体構造を形成するものであればよい。無機成分としては、シリカゾル、ジルコニアゾルなどの金属酸化物ゾル、アエロジル、膨潤性粘土、層状有機粘土などがある。これらの無機成分の中でも、安定的に共連続体構造を形成できる点より、層状有機粘土が好ましい。層状有機粘土が安定的に共連続体構造を形成できる理由としては、層状有機粘土が樹脂成分(有機物成分)と相溶性が高く、凝集性をも有しているため、第一の相と第二の相が入り組んだ構造を形成しやすく、製膜時に共連続体構造を形成しやすくなることが挙げられる。
本発明において、層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。層状有機粘土は、特定の溶媒に対して分散性が低く、防眩層形成用塗料として層状有機粘土および特定の性質を具備した溶媒を使用すると、当該溶媒の選択により、防眩層に微粒子を含有させることなく、共連続体構造を形成し表面凹凸を有する防眩層を形成する。
膨潤性粘土
膨潤性粘土は、陽イオン交換能を有し、該膨潤性粘土の層間に水を取り込んで膨潤するものであればよく、天然物であっても合成物(置換体、誘導体を含む)であってもよい。また、天然物と合成物との混合物であってもよい。
膨潤性粘土としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を挙げることができる。これらの膨潤性粘土は、1種を使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
有機オニウムイオン
有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。
オニウムイオンとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩や、ベンジル基やポリオキシエチレン基を有するアンモニウム塩を用いたり、ホスホニウム塩やピリジニウム塩やイミダゾリウム塩からなるイオンを用いることができる。塩としては、例えば、Cl、Br、NO 、OH、CHCOO等の陰イオンとの塩を挙げることができる。塩としては、第4級アンモニウム塩を使用することが好ましい。
有機オニウムイオンの官能基は制限されないが、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシプロピレン基またはフェニル基のいずれかを含む材料を使用すると、防眩性を発揮させやすくなるため好ましい。
アルキル基の好ましい範囲は、炭素数1〜30であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
ポリオキシプロピレン基〔(CHCH(CH)O)H又は(CHCHCHO)H〕のnの好ましい範囲は1〜50であり、さらに好ましくは5〜50であり、その付加モル数が多いほど、有機溶媒に対する分散性は良くなるが、過剰になり過ぎると、生成物が粘着性を帯びるようになるので、溶媒に対する分散性に重点をおけばnの数は、20〜50がより好ましい。また、nの数が5〜20である場合には、生成物が非粘着性で粉砕性がすぐれている。また、分散性とハンドリングの点から、第4級アンモニウム全体のnの総数は5〜50が好ましい。
該第4級アンモニウム塩の具体的例としては、テトラアルキルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウムブロミド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムクロリド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムブロミド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムクロリド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムブロミド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムクロリド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムブロミド等を挙げることができる。
一般式(I)の第4級アンモニウムイオンにおいて、Rで好ましいものはメチル基又はベンジル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましいものは炭素数1〜4のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基、(CHCH(CH)O)H基又は(CHCHCHO)H基である。nは5〜50であるものが好ましい。
層状有機粘土の配合量は、樹脂組成物中の固形成分の全質量に対して、0.1〜10質量%が含有され、0.2〜5質量%が特に好適である。層状有機粘土の配合量が0.1質量%では十分な数の表面凹凸が形成されなくなり防眩性が不十分になる問題がある。層状有機粘土の配合量が10質量%超では、表面凹凸数が多くなり、視認性が損なわれる問題がある。
溶剤としては、防眩性を得るための表面凹凸を形成させる溶媒としては、第1の溶媒および第2の溶媒を含有することが好ましい。
上記の本発明の樹脂組成物に、第1の溶媒および第2の溶媒を加えることによって、本発明の防眩層形成用塗料とすることができる。本発明の防眩層形成用塗料は上記の第1の溶媒と第2の溶媒を含有してなるため、従来防眩層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、防眩層の表面凹凸形状を作成することができるものである。
第1の溶媒とは、層状有機粘土に実質的に濁りを生じさせずに、透明性を有した状態で分散させることができるものをいう。実質的に濁りを生じないとは、全く濁りが生じないものに加え、濁りが生じていないと同視しうるものも含むものである。第1の溶媒として具体的には、層状有機粘土100質量部に対して、1000質量部の第1の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値が10%以下のものをいう。第1の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値は8%以下であることが好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。なお、混合液のヘイズ値の下限値は特に限定されないが、例えば、0.1%である。
第1の溶媒としては、例えば、いわゆる極性の小さい溶媒(非極性溶媒)を使用することができる。これは、層状有機粘土は有機化処理しているため、上記溶媒によって分散しやすくなるためである。層状有機粘土の種類によって使用できる第1の溶媒は異なるが、例えば、層状有機粘土として合成スメクタイトを使用した場合、第1の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤を使用することができる。これらの第1の溶媒は一種で使用しても複数を混合して使用してもよい。
第2の溶媒とは、層状有機粘土に濁りを生じさせた状態で分散させることができるものをいう。第2の溶媒として具体的には、層状有機粘土100質量部に対して、1000質量部の第2の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値が30%以上のものをいう。第2の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。なお、混合液のヘイズ値の上限値は特に限定されないが、例えば、99%である。
第2の溶媒としては、例えば、いわゆる極性溶媒を使用することができる。これは、層状有機粘土は有機化処理しているため、上記溶媒によって分散しにくくなるためである。層状有機粘土の種類によって使用できる第2の溶媒は異なるが、例えば、層状有機粘土として合成スメクタイトを使用した場合、第2の溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等を使用することができる。これらの第2の溶媒は一種で使用しても複数を混合して使用してもよい。
ここで、第1の溶媒および第2の溶媒を混合して使用すると、防眩性を得るための表面凹凸を形成させやすくなるため好ましい。第1の溶媒と第2の溶媒の混合比としては質量比で、10:90〜90:10の範囲であれば、防眩性を得るための表面凹凸を形成させやすくなるため好ましい。第1の溶媒と第2の溶媒の混合比としては質量比で、15:85〜85:15の範囲であることが好ましく、20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。第1の溶媒が10質量部未満では未溶解物による外観欠点が発生する問題がある。第1の溶媒が90質量部超では十分な防眩性を得るための表面凹凸が得られない問題がある。
また、樹脂組成物と、溶媒(第1の溶媒と第2の溶媒を合わせたもの)の配合量は質量比で、70:30〜30:70の範囲であればよい。
樹脂組成物が30質量部未満では、乾燥ムラなどが生じ外観が悪くなるとともに、表面凹凸数が多くなり視認性が損なわれる問題がある。
樹脂組成物が70質量部超では、固形分の溶解性が損なわれやすくなるため、製膜できなくなる問題がある。
(微粒子)
樹脂組成物には透光性の微粒子を添加することができる。当該樹脂組成物に溶剤を加えた防眩層形成用塗料を、透光性基体上に塗布した後、当該防眩層形成用塗料を硬化させて防眩層を形成させることができる。樹脂組成物に透光性の微粒子を添加することにより、当該防眩層の表面凹凸の形状や数を調整しやすくなる。
上述したように本発明の防眩層は透光性の微粒子を添加せずとも、当該防眩層表面に凹凸形状を有するものである。防眩層形成用塗料に微粒子を添加して防眩層を形成した場合、共連続体構造と共連続体構造の縁部(防眩層の凹部)に微粒子が偏在する。
共連続体の縁部に微粒子が偏在する理由としては、次のように考える。
微粒子は、塗布後の塗布層内で無機材料成分が対流ドメイン内で凝集構造を形成するのと同時に、この凝集構造の縁部に偏在し始める。乾燥工程により、塗液の流動性が無くなった時点で微粒子は固定化され、最終的に共連続体構造と共連続体構造の縁部に偏在することとなる。
微粒子の添加により、共連続体構造により形成される表面凹凸の形状を調整できる優位点がある。防眩層表面の形状を調整することによって、防眩層表面の耐擦傷性および表面硬度を向上させることができる。
透光性の微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機系の透光性の樹脂微粒子、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の無機系の透光性の微粒子を使用することができる。透光性の微粒子の屈折率は、1.40〜1.75が好ましく、屈折率が1.40未満または1.75より大きい場合は、透光性基体あるいは樹脂マトリックスとの屈折率差が大きくなり過ぎ、全光線透過率が低下する。また、透光性の微粒子と樹脂との屈折率の差は、0.2以下が好ましい。透光性の微粒子の平均粒径は、0.3〜10μmの範囲のものが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また10μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。また、上記樹脂中に含まれる透光性の微粒子の割合は特に限定されないが、樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜20質量部とするのが防眩機能、ギラツキ等の特性を満足する上で好ましく、防眩層表面の微細な凹凸形状とヘイズ値をコントロールし易い。ここで、「屈折率」は、JIS K−7142に従った測定値を指す。また、「平均粒径」は、電子顕微鏡で実測した100個の粒子の直径の平均値を指す。
帯電防止剤(導電剤)
本発明の防眩層は、帯電防止剤(導電剤)を含んでいてもよい。導電剤の添加により、光学積層体の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、或いは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
また、導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO、CeO、Sb、SnO、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫、In、Al、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO)等を挙げることができる。微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒径が0.1nm〜0.1μmのものである。
また、帯電防止剤(導電剤)の別の具体例としては、導電性ポリマーが挙げられる。その材料としては特に限定されず、例えば、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、ポリアズレン、芳香族共役系のポリフェニレン、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、これらの導電性ポリマーの誘導体、及び、これらの共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、光学積層体の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。また、導電性向上や、帯電防止性能向上を目的として、有機スルホン酸や塩化鉄等の陰イオンを、ドーパント(電子供与剤)として添加することもできる。ドーパント添加効果も踏まえ、特にポリチオフェンは透明性、帯電防止性が高く、好ましい。上記ポリチオフェンとしては、オリゴチオフェンも好適に使用することができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンのアルキル基置換体等を挙げることができる。
<防眩フィルム>
上記の構成成分を含む防眩層形成用塗料を、透光性基体上に塗布した後、熱、あるいは電離放射線(例えば電子線または紫外線照射)を照射して該防眩層形成用塗料を硬化させることにより防眩層を形成させ、本発明の防眩フィルムを得ることができる。
防眩層は透光性基体の片面に形成されていても両面に形成されていてもよい。
また、防眩層と透光性基体の間、防眩層の反対面に他の層を有していてもよいし、防眩層上に他の層を有していてもよい。ここで他の層としては、例えば、偏光層、光拡散層、低反射層、防汚層、帯電防止層、紫外線・近赤外線(NIR)吸収層、ネオンカット層、電磁波シールド層などを挙げることができる。
防眩層の厚さは1.0〜12.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0〜11.0μmの範囲であり、さらに好ましくは3.0〜10.0μmの範囲である。防眩層が1.0μmより薄い場合は、紫外線硬化型時に酸素阻害による硬化不良を起こし、防眩層の耐磨耗性が劣化しやすくなる。防眩層が12.0μmより厚い場合は、防眩層の硬化収縮によるカールの発生や、マイクロクラックの発生、透光性基体との密着性の低下、さらには光透過性の低下が生じてしまう。そして、膜厚の増加に伴う必要塗料量の増加によるコストアップの原因ともなる。
本発明の防眩フィルムは、画像鮮明性が5.0〜80.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく、20.0〜75.0がより好ましい。画像鮮明性が5.0未満ではコントラストが悪化し、80.0を超えると防眩性が悪化するため、ディスプレイ表面に用いる防眩フィルムに適さなくなる。
本発明の防眩フィルムは、防眩層の表面に微細な凹凸形状を有する。ここで、当該微細な凹凸形状は、好適には、ASME95に従い求められる平均傾斜から計算される平均傾斜角度が0.2〜1.4の範囲にあり、より好ましくは0.25〜1.2、更に好ましくは0.25〜1.0である。平均傾斜角度が0.2未満では防眩性が悪化し、平均傾斜角度が1.4を超えるとコントラストが悪化するため、ディスプレイ表面に用いる防眩フィルムに適さなくなる。
また、本発明の防眩フィルムは、防眩層の微細な凹凸形状として、表面粗さRaが0.05〜0.2μmであることが好ましく、0.05〜0.15μmであることがさらに好ましく、0.05〜0.10μmであることが特に好ましい。表面粗さRaが0.05μm未満であると、防眩フィルムの防眩性が不十分になる。表面粗さRaが0.2μm超であると、防眩フィルムのコントラストが悪化する。
<防眩フィルムの製造方法>
透光性基体上に防眩層形成用塗料を塗布する手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(製造例1 合成スメクタイトの製造)
10L のビーカーに水4L を入れ、3号水ガラス(SiO2 28%、Na2 O9%、モル比3.22)860g を溶解し、95%硫酸162g を撹拌しながら一度に加えてケイ酸塩溶液を得る。次に水1L にMgCl2 ・6H2 O一級試薬(純度98%)560g を溶解し、これを前記ケイ酸溶液に加えて均質混合溶液を調製した。これを2N −NaOH溶液3.6L 中に撹拌しながら5分間で滴下した。得られた反応沈澱物を、直ちに日本ガイシ(株)製のクロスフロー方式による濾過システム〔クロスフロー濾過器(セラミック膜フィルター:孔径2μm、チューブラータイプ、濾過面積400cm2)、加圧:2kg/cm2、濾布:テトロン1310〕で濾過及び充分に水洗した後、水200mlとLi(OH)・H2 O 14.5gとよりなる溶液を加えてスラリー状とした。これをオートクレーブに移し、41kg/cm2、250℃で3時間、水熱反応させた。冷却後反応物を取出し、80℃で乾燥し、粉砕して下記式の合成スメクタイトを得た。この合成スメクタイトを分析したところ、次の組成のものが得られた。Na0.4 Mg2.6 Li0.4 Si410(OH)
また、メチレンブルー吸着法で測定した陽イオン交換容量が110ミリ当量/100g であった。
(製造例2 合成スメクタイト系層状有機粘土Aの製造)
製造例1で合成した合成スメクタイト20g を水道水1000mlに分散させて懸濁液とした。該合成スメクタイトの陽イオン交換容量の1.00倍相当量の次式(II)の第四級アンモニウム塩(98%含有品)を溶解した水溶液500mlを、前記合成スメクタイト懸濁液に添加し、撹拌しながら室温で2時間反応させた。生成物を固液分離、洗浄して副生塩類を除去した後、乾燥して合成スメクタイト系層状有機粘土Aを得た。
(製造例3)フッ化アクリレート B液の合成
500mlの反応フラスコ中、イソホロンジイソシアナート22.2g(0.1モル)のMIBK(メチルイソブチルケトン)100ml溶液に、エアーバブリングを行いながらペンタエリスリトールトリアクリレート59.6g(0.20モル)のMIBK50ml溶液を25℃で滴下した。滴下終了後、ジブチル錫ジラウレート0.3gを加え更に70℃で4時間加熱攪拌を行った。反応終了後、反応溶液を5%塩酸100mlで洗浄した。有機層を分取した後、40℃以下で溶媒を減圧留去することで無色透明粘調液体のウレタンアクリレート80.5gを得た。200ml反応フラスコに、調製したウレタンアクリレート40.8g(0.05モル)、パーフルオロヘプチルエチルメルカプタン64.2g(0.15モル)、MIBK60gを投入し均一とした。この混合溶液に25℃でトリエチルアミン1.0gを徐々に加えた。加え終わった後、さらに50℃で3時間撹拌した。反応終了後、50℃以下の条件でエバポレーターを用いて、トリエチルアミンを減圧留去し、さらに真空ポンプで乾燥することで、構造式1で示されるフッ素化アルキル基含有ウレタンアクリレートを含有し、アクリロイル基とパーフルオロヘプチルエチルメルカプタンとの付加反応の位置が前記構造式1とは異なる化合物を更に含む混合物からなる生成物B液を得た。
前記、層状有機粘土Aを含む表1記載の所定の混合物をディスパーにて30分間攪拌することによって得られた防眩層形成用の塗料を、膜厚80μm、全光線透過率92%からなる透明基体のTAC(富士フィルム社製;TD80UL)の片面上にロールコーティング方式にて塗布(ラインスピード;20m/分)し、30〜50℃で20秒間予備乾燥を経た後、100℃で1分間乾燥し、窒素雰囲気(窒素ガス置換)中で紫外線照射(ランプ;集光型高圧水銀灯、ランプ出力;120W/cm、灯数:4灯、照射距離;20cm)を行うことで塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ5.5μmの防眩層を有する実施例1の防眩フィルムを得た。ここで、得られた防眩フィルムのレーザー顕微鏡写真を図2に、SEM結果を図3に、EDS結果を図4に示した。これらの結果より、得られた防眩フィルムを構成する防眩層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、共連続体構造を形成していることが確認された。
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ6.5μmの防眩層を有する実施例2の防眩フィルムを得た。レーザー顕微鏡、SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する防眩層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、共連続体構造を形成していることが確認された。
前記フッ化アクリレートB液を含有し、防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.5μmの防眩層を有する実施例3の防眩フィルムを得た。レーザー顕微鏡、SEM,EDS結果より、得られた防眩フィルムを構成する防眩層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、共連続体構造を形成していることが確認された。
[比較例1]
防眩層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ3.5μmの防眩層を有する比較例1の防眩フィルムを得た。ここで、得られた積層体のレーザー顕微鏡写真結果を図5に、SEM結果を図6に示した。得られた防眩フィルムを構成する防眩層が、共連続体構造を形成せず完全に相分離している海島構造を形成していることが確認された。
上記実施例および比較例において使用した材料を表1にまとめた。
なお、前記レーザー顕微鏡写真、SEM及びEDSについては次の条件で撮影した。
レーザー顕微鏡写真
実施例、比較例で得られた積層体の塗布層表面の状態を、レーザー顕微鏡により観察した。観察は、塗布層表面に金蒸着したのち行った。以下に、レーザー顕微鏡による観察の条件を示す。
分析装置・・・・・・LEXT OLS3000(オリンパス社製)
前処理装置・・・・・Au(金)コーティング:10nm SC−701AT改(サンユー電子社製)
測定条件・・・・・・画像検出器:共焦点
解析項目・・・・・・画像解析:段差
SEM
実施例、比較例で得られた積層体の塗布層表面の状態、および含有元素の情報を、SEMにより観察した。観察は、塗布層表面に金またはカーボン蒸着したのち行った。以下に、SEM観察の条件を示す。
分析装置・・・・・・JSM−6460LV(日本電子社製)
前処理装置・・・・・C(カーボン)コーティング:45nm SC−701C(サンユー電子社製)
・・・・・・・・・・Au(金)コーティング:10nm SC−701AT改(サンユー電子社製)
SEM条件・・・・・加速電圧 :20KV
照射電流 :0.15nA
真空度 :高真空
画像検出器:反射電子検出器
試料傾斜 :0度
EDS
実施例、比較例で得られた積層体の含有元素の情報を、EDSにより観察した。観察は、塗布層表面にカーボン蒸着したのち行った。以下に、EDS観察の条件を示す。
分析装置・・・・・・JSM−6460LV(日本電子社製)
前処理装置・・・・・C(カーボン)コーティング:45nm SC−701C(サンユー電子社製)
EDS条件・・・・・加速電圧 :20KV
照射電流 :0.15nA
真空度 :高真空
画像検出器:反射電子検出器
MAP解像度:128×96ピクセル
画像解像度 :1024×768ピクセル
<評価方法>
次に実施例および比較例の防眩フィルムについて、下記の項目について評価を行った。
(全光線透過率)
JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
(ヘイズ値)
ヘイズ値は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
(表面粗さ)
表面粗さRaは、JIS B0601−1994に従い、上記表面粗さ測定器を用いて測定した。
(平均傾斜角度)
平均傾斜角度は、ASME95に従い、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE1700α、小坂研究所社製)を用いて平均傾斜を求め、次式に従って平均傾斜角度を算出した。
平均傾斜角度=tan−1(平均傾斜)
(画像鮮明性)
JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM−1DP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定した。
(防眩性)
防眩性は、画像鮮明性の値が0〜80のとき○、81〜100のとき×とした。
(明室コントラスト)
明室コントラストは、実施例及び比較例の防眩フィルム形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、液晶ディスプレイ画面の正面上方60°の方向から蛍光灯(商品名:HH4125GL、ナショナル社製)にて液晶ディスプレイ表面の照度が200ルクスとなるようにした後、液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出した時の値が、800以下のとき×、801以上のとき○とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
(暗室コントラスト)
暗室コントラストは、実施例及び比較例の防眩フィルム形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、暗室条件下で液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出した時の値が、900〜1100のとき×、1101〜1300のとき△、1301〜1500のとき○とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
得られた結果を表2に示した。
以上のように、本発明によれば、良好な防眩性および高コントラストを達成することができるとともに、製造安定性に優れた防眩フィルムおよびそれを用いた表示装置を提供することができる。
1 第一の相
2 第二の相
10、11 共連続体構造
15、16 防眩層
20 透光性基体
30、31 微粒子
40 樹脂

Claims (7)

  1. 透光性基体上に防眩層が積層されてなる防眩フィルムであって、該防眩層が共連続体構造を有しており、該防眩層が少なくとも第一の相と第二の相を有していることを特徴とする防眩フィルム。
  2. 前記防眩層を構成する共連続体構造は、水平方向の網目の寸法が10μm〜150μmであることを特徴とする請求項1に記載の防眩フィルム。
  3. 前記防眩層が樹脂成分および無機成分を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防眩フィルム。
  4. 前記防眩層が微粒子を含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防眩フィルム。
  5. 前記微粒子が第一の相と第二の相の縁部に偏在してなることを特徴とする請求項4に記載の防眩フィルム。
  6. 前記防眩層を構成する無機成分が、層状有機粘土であることを特徴とする請求項3に記載の防眩フィルム。
  7. 請求項1〜6に記載の防眩フィルムを具備してなることを特徴とする表示装置。
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