JP2011253092A - 光学積層体、偏光板および表示装置 - Google Patents

光学積層体、偏光板および表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 防眩性、明室下での黒味が優れるとともにギラツキ防止の機能をバランスよく備える光学積層体、偏光板および表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 透光性基体上に光学機能層が積層されてなる光学積層体であって、該光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、該凹凸形状を有する光学機能層面の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度以下の傾斜角度分布の割合が68%以上であり、3.0度以上の傾斜角度成分の割合が1%未満であることを特徴とする光学積層体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学積層体、偏光板および表示装置に関する。
本発明の光学積層体は、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(OLED)等のディスプレイ表面に設けたり、ディスプレイの一構成部材として使用したり、OLEDを構成する有機EL層で発生した光を有機EL外に取り出す効率を向上させるためにその観察面側に好ましく使用することができる。特に防眩性、明室下での黒みや暗室コントラストいった視認性を重視される、例えばテレビ用途のディスプレイ等に好適に使用できる光学積層体に関する。
液晶表示装置(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)等の表示装置は、表示装置表面に蛍光燈などの室内照明、窓からの太陽光の入射、操作者の影などの写り込みにより、画像の視認性が妨げられる。そのため、これらのディスプレイ表面には、画像の視認性を向上させるために、表面反射光を拡散し、外光の正反射を抑え、外部環境の写り込みを防ぐことができる(防眩性を有する)微細凹凸構造を形成させた光学積層体などの、機能性フィルムが最表面に設けられている。
これら機能性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)やトリアセチルセルロース(以下、「TAC」という。)等の透光性基体上に、微細凹凸構造を形成させた光学機能層を設けたものや、光拡散層上に低屈折率層を積層したものが、一般に製造販売されており、層構成の組み合わせにより所望の機能を提供する機能性フィルムの開発が進められている。
ディスプレイの最表面に光学積層体を用いた場合には、特に屋外での使用の際に、光の反射により表示画像が見えにくくなる問題があり、従来の防眩性が高い光学積層体は最表面の緻密性が低いため、LCDモジュールのギラツキを緩和できず、表示画像がちらついて見える問題があった。このため、携帯電話、PDA、電子ブックなどのモバイル用途のLCDモジュールには、明室下の黒味と防眩性のバランスが良く、パネル輝度の低下をおさえた高暗室コントラストを達成できる光学積層体が求められており、該光学積層体には高いギラツキ防止性能も求められている(モバイル向け高機能AG)。光学積層体のコントラストを向上させる方法としては、例えば、表面の凹凸形状を最適化させることが挙げられる。
光学機能層表面に凹凸形状を形成させる方法としては、上記の透光性基体上に、微粒子を添加した光学機能層形成用塗料を塗布した後、当該光学機能層形成材料に紫外線を照射して光学機能層を形成させるのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
また、光学機能層に含有する微粒子の粒子径と表面凹凸形状(傾斜角)を最適化することにより、防眩性とコントラストを両立する方法も有る(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−196117号公報 特開2008−158536号公報
特許文献1のように、微粒子を含有する光学機能層を使用する場合、防眩性とギラツキ防止効果を奏する。しかしながら、光学機能層に含有する微粒子の界面と、該微粒子の形状に基づいた光学機能層の表面凹凸部分において光の散乱が生じることから、高コントラストを達成することが難しい問題があった。
特許文献2のように、微粒子の粒子径および表面凹凸の傾斜角を最適化した場合についても、コントラストが不十分である問題があった。
そこで、本発明では、防眩性、明室下での黒味が優れるとともにギラツキ防止の機能をバランスよく備える光学積層体、偏光板および表示装置を提供することを目的とする。
また、上記の防眩性、明室下での黒味、ギラツキ防止の機能に加え、さらに高い暗室コントラストを達成することができる光学積層体を提供することを従属的な課題とする。
加えて、透光性基体上に光学機能層を1層積層した構成でもこれら機能を達成することで、経済的に優れた光学積層体を提供することを従属的な課題とする。
本発明では、光学機能層の表面凹凸に占める傾斜角度分布の中で、防眩性を効果的に発現でき、ギラツキ防止性能を悪化させない傾斜角度成分の領域を見出し、光学機能層に含まれる透光性有機微粒子を偏在させることによって、該傾斜角度成分を多く含む光学機能層を形成することが可能となった。これにより、従来製品と同等の防眩性を維持しながら、明室下の黒味とギラツキ防止性能に優れた光学積層体を提供できるようになった。
本発明は下記の技術的構成により上記課題を解決できたものである。
(1)透光性基体上に光学機能層が積層されてなる光学積層体であって、該光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、該凹凸形状を有する光学機能層面の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度以下の傾斜角度分布の割合が68%以上であり、3.0度以上の傾斜角度成分の割合が1%未満であることを特徴とする光学積層体。
(2)前記光学機能層が、放射線硬化型樹脂組成物を主成分とする1層以上の光学機能層からなる前記(1)に記載の光学積層体。
(3)前記光学機能層が、ランダム凝集構造を有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の光学積層体。
(4)前記光学機能層が、少なくとも放射線硬化型樹脂組成物と、透光性微粒子を含有していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学積層体。
(5)前記透光性微粒子の平均粒径が0.3〜7.0μmであることを特徴とする前記(4)に記載の光学積層体。
(6)前記光学機能層の膜厚が前記透光性微粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする前記(4)に記載の光学積層体。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学積層体を構成する透光性基体上に、偏光基体が積層されてなることを特徴とする偏光板。
(8)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学積層体を具備してなることを特徴とする表示装置。
本発明によれば、防眩性、明室下での黒味が優れるとともにギラツキ防止の機能をバランスよく備える光学積層体、偏光板および表示装置を提供することができる。
また、上記の防眩性、明室下での黒味、ギラツキ防止の機能に加え、さらに高い暗室コントラストを達成することができる光学積層体を提供することができる。
加えて、透光性基体上に光学機能層を1層積層した構成でもこれら機能を達成することで、経済的に優れた光学積層体を提供することができる。
本発明の光学積層体、偏光板および表示装置は、大型テレビ用途に好ましく使用することができる。
光学機能層の構造を表した模式図であって、(a)海島構造の平面図、(b)ランダム凝集構造の平面図、(c)海島構造の断面側面図、(d)ランダム凝集構造の断面側面図である。 ランダム凝集構造を有する光学機能層表面の構造をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。 ランダム凝集構造を有する光学積層体の断面をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。 ランダム凝集構造を有する光学機能層表面の構造を無機成分(Si)にてEDSによるマッピングを行った写真である。 比較例3における光学機能層表面の構造をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。 比較例3における光学機能層表面の構造を無機成分(Si)にてEDSによるマッピングを行った写真である。 比較例5における光学機能層表面の海島構造をカーボン蒸着した後に撮影したSEM写真である。
以下、本発明を説明する。
本発明の光学積層体は、透光性基体上に光学機能層が積層されてなり、光学機能層の少なくとも一方の面に、所定の傾斜角が分布するように凹凸形状が形成されていることを特徴とする。当該凹凸形状は、光学機能層の片面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。当該凹凸形状は透光性基体と反対側に形成されること(以下、単に「表面」あるいは「表面側」という場合がある)が好ましい。
本形態にかかる光学積層体は、光学機能層の少なくとも一方の面に、所定の傾斜角が分布した凹凸形状が形成されていることを基本構成とする。
本発明を構成する光学機能層はランダム凝集構造を有することが好ましい。ランダム凝集構造を有することによって、光学機能層の少なくとも一方の面に、所定の傾斜角が分布した凹凸形状が形成しやすくなる。図1は光学機能層の構造を模式的に表した図である。(a)および(b)が光学機能層の表面構造を示した平面図、(c)および(d)が光学積層体の側断面構造を示した側断面図である。(a)及び(c)が従来の海島構造の光学機能層であり、(b)および(d)がランダム凝集構造を有する光学機能層である。
ランダム凝集構造を有する光学機能層は第一の相と第二の相とを少なくとも有するものであればよいので、光学機能層が第三の相や第四の相を有するものであってもよく、光学機能層を構成する相の数は限定されるものではない。例えば、光学機能層がラメラ構造を有するものであってもよい。具体的には、図1(d)における光学機能層16の凹凸上に、別の相(例えば、第三の相)が形成されているものが挙げられる。
ランダム凝集構造を有する光学機能層は、図1(b)および(d)に示すように樹脂成分を相対的に多く含有する第一の相1と、当該樹脂成分を相対的に少なく含有する(無機成分を相対的に多く含有する)第二の相2とを少なくとも有するものである。この第二の相2はそれぞれ様々な大きさ及び形状にて存在する。光学機能層を構成する第一の相と第二の相は、三次元的に入り組んで存在する。
また、ランダム凝集構造を有する光学機能層16には微粒子3が存在する。この微粒子3の周囲には光学機能層16を構成する第一の相1がほとんど存在せず、第二の相2が存在する。すなわち、第二の相2は光学機能層16を構成する微粒子3の周囲に偏在してなる。微粒子3の周囲に第二の相2が偏在することは、レーザー顕微鏡、SEM(走査電子顕微鏡)、EDS(エネルギー分散型X線分光器)等を使用することによって確認することができる。
本発明において、「微粒子の周囲に第二の相が偏在する」かは、光学積層体の光学機能層面から見たSEM結果を基に判断する。まず、当該SEM結果から任意の10点の微粒子を選択する。次に、それぞれの微粒子の中心から、当該微粒子長径の10倍の大きさの同心円内に存在する第一の相および第二の相のうち、第二の相の占める割合を求める。続いて、任意の10点の同心円内における第二の相の占める割合の平均値を算出する。当該平均値が比較対照と比べて相対的に高くなれば、「微粒子の周囲に第二の相が偏在する」に該当し、当該平均値が比較対照と比べて相対的に低くなれば、「微粒子の周囲に第二の相が偏在する」に該当しないこととなる。
比較対照は上記SEM結果から求める。比較対照は、第一の相に存在する10点のある点を中心に、上記それぞれの微粒子長径の10倍の大きさの同心円に対応するようにする。ただし、10点のある点は、全て当該同心円内に微粒子を含まない箇所に設けることとする。このようにして、10点のある点の同心円内における第二の相の占める割合の平均値を算出する。
本発明では、光学機能層において第一の相と第二の相が三次元的に互いに入り組んで存在し、微粒子の周囲に当該第二の相が偏在してなる特異な構造体をランダム凝集構造という。
従来、図1(c)に示すように、光学機能層15は透光性基体20上に、微粒子30、31の形状を利用して表面凹凸を形成させていた。すなわち、微粒子30、31上に存在する樹脂40は当該微粒子の形状に基づいて盛り上がり、微粒子30、31が存在しない部分においては樹脂40が盛り上がらないため、凸部分と凹部分が交互に形成されることから、光学機能層15の表面凹凸は傾斜が大きいものであった。なお、図1(a)、(c)において、微粒子が複数個集まって存在して表面凹凸を形成する場合も、その表面凹凸は傾斜が大きいものであった。
これに対して、ランダム凝集構造を有する光学機能層16は微粒子3の周囲に第二の相2が偏在するため、図1(a)および(c)に示す従来の光学機能層に比べ、細かい凹凸を減らすことができ、高い防眩性と明室下での黒味を向上させることができる。これは、ランダム凝集構造を有する光学機能層が、第一の相上で比較的平らな面を形成することから、当該第一の相で明室下での黒さを向上させるとともに高い暗室コントラストを達成し、第二の相に取り込まれた微粒子により凸部分を形成するため、当該第二の相に取り込まれた微粒子により防眩作用が奏されることによる。すなわち、光学機能層の少なくとも一方の面に、所定の傾斜角が分布した凹凸形状が形成しやすくなる。
なお、微粒子の周囲に第二の相が偏在せずに、第一の相および第二の相に微粒子が存在する場合、凹凸が光学機能層の様々な箇所に形成される(凹凸数が多くなる)ことから、光学機能層が白っぽくなり好ましくない。また、微粒子を含有しない光学機能層では、表面凹凸の数や高さ等の制御が難しいことから、製造が困難となるため好ましくない。
本発明を構成する光学機能層は、主な構造としてランダム凝集構造を有するものであれば好ましいが、例えば一部に他の構造(例えば、海島構造)が存在していてもよい。
ランダム凝集構造に金蒸着を行った後、電子顕微鏡により観察すると、光学機能層中に含まれる微粒子が表面凹凸の凸部分を形成していることが分かる。
また、ランダム凝集構造にカーボン蒸着を行った後、電子顕微鏡により観察することにより、カーボン蒸着面における元素の分布状況を大まかに確認することができる。これは、カーボン蒸着面に複数の元素が存在するが、例えば、原子番号の大きいものは白色、原子番号の小さいものを黒色に表示するなど色分けして、元素の分布を色の濃淡で示すことができることによる。
さらにまた、ランダム凝集構造を有する光学機能層に対して、EDSによるマッピングを行うことにより、塗膜(光学機能層)表面や塗膜(光学機能層)の断面に存在する元素を確認することができる。このEDSによるマッピングは、特定の元素(例えば、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子等)が多く分布しているところを色表示することができるものである。
上記の電子顕微鏡観察およびEDSによるマッピングを用いることにより、ランダム凝集構造の凹凸構造や特定元素の分布を確認することができる。これによって、例えば、表面凹凸の凸部分において、ある特定元素が多く分布していること等を確認することができる。
図2、図4を用いて具体的に説明する。図2および図4は、ランダム凝集構造を有する光学機能層の表面状態を同一視野にて撮影した図であり、当該光学機能層は樹脂成分と無機成分から構成されている。
図2は光学機能層表面にカーボン蒸着したSEM写真である。反射電子検出器において表示される画像は、光学機能層表面に含有している成分に起因する反射電子を画像として表している。
反射電子は、原子番号に依存するものであり、例えば原子番号が大きいものが白色、原子量が小さいものを黒色に表示するなど色分けして表示することができる。図2に示すように、光学機能層中の各元素は表面水平方向に均一に存在するのではなく、原子番号が大きい元素の含有量が相対的に多い部分と含有量が相対的に少ない部分とからなっている。
図4は、光学機能層表面におけるEDSによる無機成分(Si)のマッピング結果を示したものであり、含有しているSi成分の量を色の濃淡で示している。図4に示すように、Si成分についても、含有量が相対的に多い部分と含有量が相対的に少ない部分とからなっている。なお、図4においては具体的に例示するためにシリカ(Si)のマッピング結果を示しているが、他の無機成分元素や樹脂(有機物)成分のマッピング結果を示すことも可能である。図4に示すマッピング結果において、検出条件にもよるがシリカ等の無機成分が0.2質量%の濃度であれば検出することができる。すなわち、第一の相および第二の相の二つの相からなる光学機能層において、第一の相は90質量%以上の樹脂成分と無機成分とから構成され、第二の相は99.8質量%未満の樹脂成分と0.2質量%以上の無機成分とから構成されるものである。第一の相に含まれる樹脂成分は95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。第二の相に含まれる無機成分は1%以上であることが好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。第二の相に含まれる樹脂成分は99%未満であることが好ましく、95%未満であることがさらに好ましく、90%未満であることが特に好ましい。光学機能層に含まれる無機成分の量は第一の相に比べて第二の相に多く含まれる。
樹脂成分の含有量が相対的に多い部分(図2の色が濃い部分)では、樹脂成分以外の成分の含有量が相対的に少なくっている(第一の相)。
一方、樹脂成分の含有量が相対的に少ない部分(図2の色の薄い部分)では、樹脂成分以外の成分の含有量が相対的に多くなっている(第二の相)。
すなわち、ランダム凝集構造を有する光学機能層は、第一の相と第二の相が入り組んで存在するものであって、一方の成分が少なくなると他の成分が多くなるといった相補的な関係を有するものである。
なお、図2、図4においては、光学機能層の表面水平方向における各成分の含有量を示したものであるが、光学機能層の垂直方向(厚さ方向)における各成分の含有量を示した場合においても、同様に相補的な関係を示す結果が得られる(図3)。
<ランダム凝集構造を形成する方法>
ランダム凝集構造は、微粒子の周囲に無機成分の凝集体が溶剤揮発時の対流に伴ってランダムに偏在する現象を利用して製造できる。詳しくは、樹脂成分と無機成分と微粒子と溶媒(第1の溶媒と第2の溶媒)とを含む溶液を透光性基体上に塗布し、溶媒(第1の溶媒と第2の溶媒)の揮発に伴って対流を発生させる乾燥工程、及び乾燥した塗膜を硬化して光学機能層を形成する硬化工程を経て製造できる。より具体的には、通常、前記溶液を透光性基体にコーティングし、塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。
凝集と対流との併用における詳しいメカニズムは解明できていないが、次のように推定できる。
(1)溶剤揮発時の対流に伴う凝集により、まず、塗布後の塗布層に対流ドメインが発生する。
(2)次に、それぞれの対流ドメイン内で無機材料の凝集が発生し、凝集体は時間とともに巨大化していくが、対流のドメイン壁で凝集の成長は止まる。凝集の発生と時間に伴い、微粒子を核にして無機成分が凝集してくる。
(3)その結果として、凝集体の大きさが適度に保持され、これらが光学機能層内に点在することでランダム凝集構造が形成される。
ランダム凝集構造に伴う表面凹凸によれば、従来の海島構造による表面凹凸では困難であった防眩性、明室コントラストおよび暗室コントラストの両立を達成することができる。
以下、本発明を構成する層毎に、好ましく使用することができる材料を説明する。
<透光性基体>
本形態に係る透光性基体としては、透光性である限り特に限定されず、石英ガラスやソーダガラス等のガラスも使用可能であるが、PET、TAC、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フィルムを好適に使用することができる。なお、PDP、LCDに用いる場合は、PETフィルム、TACフィルムおよび含ノルボルネン樹脂フィルムから選ばれる1種を使用することがより好ましい。
これら透光性基体の透明性は高いものほど良好であるが、全光線透過率(JIS K7105)としては80%以上、より好ましくは90%以上が良い。また、透光性基体の厚さとしては、軽量化の観点からは薄い方が好ましいが、その生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmの範囲のもの、好ましくは25〜250μmを使用することが好適である。
透光性基体表面に、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理などのトリートメント処理、界面活性剤、シランカップリング剤などのプライマーコーティング、Si蒸着などの薄膜ドライコーティングなどを施すことで、透光性基体と光学機能層との密着性を向上させ、当該光学機能層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。また、透光性基体と光学機能層との間に他の層を設ける場合も、上記同様の方法で、各層界面の密着性を向上させ、当該光学機能層の物理的強度、耐薬品性を向上させることができる。
<光学機能層>
光学機能層は樹脂成分および無機成分を含有し、当該樹脂成分を硬化させて形成されるものである。光学機能層は微粒子(無機微粒子や有機微粒子)を含有する。
(樹脂成分)
光学機能層を構成する樹脂成分としては、硬化後の皮膜として十分な強度を持ち、透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂成分としては熱硬化型樹脂、熱可塑型樹脂、電離放射線硬化型樹脂、二液混合型樹脂などがあげられるが、これらのなかでも、電子線や紫外線照射による硬化処理にて、簡易な加工操作にて効率よく硬化することができる電離放射線硬化型樹脂が好適である。
電離放射線硬化型樹脂としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーを単独で、または適宜混合した組成物が用いられる。モノマーの例としては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を挙げることができる。ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができる。これらは単独、もしくは複数混合して使用することができる。
これら電離放射線硬化型樹脂の中で、官能基数が3個以上の多官能モノマーは、硬化速度が上がることや硬化物の硬度が向上させることができる。また、多官能ウレタンアクリレートを使用することにより、硬化物の硬度や柔軟性などを付与することができる。
電離放射線硬化型樹脂として、電離放射線硬化型フッ化アクリレートを使用することができる。電離放射線硬化型フッ化アクリレートは、他のフッ化アクリレートと比較して電離放射線硬化型であることにより、分子間での架橋が起きるため耐薬品性に優れ、ケン化処理後にも十分な防汚性を発現するといった効果が奏される。電離放射線硬化型フッ化アクリレートとしては、例えば、2−(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルメタクリレート、3−(パーフルオロ−8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(パーフルオロ−9−メチルデシル)エチルアクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ウナデカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロ(メタ)アクリレート、トリイソフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、下記化合物(i)〜(xxx)などを用いることができる。尚、下記化合物はいずれもアクリレートの場合を示したものであり、式中のアクリロイル基はいずれもメタクリロイル基に変更可能である。
これらは、単独若しくは複数種類混合して使用することも可能である。フッ化アクリレートの内、ウレタン結合を持つフッ化アルキル基含有ウレタンアクリレートが、硬化物の耐磨耗性と伸び及び柔軟性の点より好ましい。また、フッ化アクリレートの中でも、多官能フッ化アクリレートが好適である。尚、ここでの多官能フッ化アクリレートとは2個以上(好適には3個以上、より好適には4個以上)の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを意味する。
電離放射線硬化型樹脂は、そのままで電子線照射により硬化可能であるが、紫外線照射による硬化を行う場合は、光重合開始剤の添加が必要である。なお、用いられる放射線としては、紫外線、可視光線、赤外線、電子線のいずれであってもよい。また、これらの放射線は、偏光であっても無偏光であってもよい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独または適宜組み合わせて使用することができる。
また、電離放射線硬化型樹脂にレベリング剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることができる。レベリング剤は、塗膜表面の張力均一化を図り塗膜形成前に欠陥を直す働きがある。
レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤が挙げられる。上記レベリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記のレベリング剤の中でも、光学機能層に凹凸構造を形成するという観点から、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤が好ましく、特にシリコーン系レベリング剤が好ましい。
前記シリコーン系レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、パーフルオロ変性シリコーン、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等があげられる。
かかるシリコーン系レベリング剤としては、日本ユニカー(株)製の「SILWETシリーズ」、「SUPERSILWETシリーズ」、「ABNSILWETシリーズ」、信越化学社製の「KFシリーズ」、「X−22シリーズ」、ビックケミー・ジャパン(株)製の「BYK−300シリーズ」、共栄社化学(株)製の「グラノールシリーズ」、東レダウコーニング(株)製の「SHシリーズ」、「STシリーズ」、「FZシリーズ」、チッソ(株)製の「FMシリーズ」、GE東芝シリコーン(株)製の「TSFシリーズ」(以上商品名)等が市販されている。
フッ素系レベリング剤としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。かかるフルオロアルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖あるいは分岐構造、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環)であっても良く、エーテル結合を有していても良い。上記のフッ素系レベリング剤は、ポリマーであっても、オリゴマーであってもよい。
また、フッ素系レベリング剤としては、疎水基がパーフルオロカーボンチェインをもつレベリング剤が挙げられる。具体的には、フルオロアルキルカルボン酸、N−パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(フルオロアルキルオキシ)−1−アルキルスルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、N−(3−パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)等が挙げられる。
かかるフッ素系レベリング剤としては、例えば、共栄社化学(株)製の「ポリフロー600」、ダイキン化学工業(株)製の「R−2020、M−2020、R−3833、M−3833」、大日本インキ(株)製の「メガファックF−171、F−172D、F−179A、F−470、F−475、R−08、ディフェンサMCF−300」(以上商品名)などが挙げられる。
フッ素系レベリング剤としては、上記化1〜化5に示した各材料も使用することができる。
アクリル系レベリング剤としては、東亜合成化学(株)製の「ARUFON−UP1000シリーズ」、「UH2000シリーズ」、「UC3000シリーズ」、共栄社化学(株)製の「ポリフロー77」(以上商品名)等が市販されている。
光学機能層へのレベリング剤の含有量が少なすぎると、塗膜のレベリング効果が得られにくくなる。レベリング剤の含有量が多すぎると、無機成分の凝集体ができにくくなる。
上記の観点から、光学機能層におけるレベリング剤の含有量は、光学機能層の全成分(有機溶剤を除く)100質量%に対して、0.05〜3質量%の範囲が好ましく、0.1〜2質量%の範囲がより好ましく、特に0.2〜1質量%の範囲が好ましい。
電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の配合量は、光学機能層を構成する樹脂組成物中の固形成分の全質量に対して、50質量%以上含有され、60質量%以上が好適である。上限値は特に限定されないが、例えば、99.8質量%である。50質量%未満では、十分な硬度が得られないなどの問題がある。
なお、電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の固形分には、後述する無機成分と微粒子以外の全固形分が含まれてなるものであって、電離放射線硬化型樹脂等の樹脂成分の固形分のみならず、その他の任意成分の固形分も含む。
(無機成分)
本発明で用いられる無機成分としては、光学機能層中に含有され、製膜時に凝集し第二の相およびランダム凝集構造を形成するものであればよい。無機成分としては、無機ナノ微粒子を使用することができる。無機ナノ微粒子としては、シリカ、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物や金属等や、シリカゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、アルミナゾルなどの金属酸化物ゾル、アエロジル、膨潤性粘土、層状有機粘土などがある。上記の無機ナノ微粒子は一種類を使用してもよいし、複数種を使用してもよい。
なお、微粒子と無機成分(無機ナノ微粒子)は別個のものであり、粒径によって区別することができる。
これらの無機ナノ微粒子の中でも、安定的にランダム凝集構造を形成できる点より、層状有機粘土が好ましい。層状有機粘土が安定的にランダム凝集構造を形成できる理由としては、層状有機粘土が樹脂成分(有機物成分)と相溶性が高く、凝集性をも有しているため、第一の相と第二の相が入り組んだ構造を形成しやすく、製膜時にランダム凝集構造を形成しやすくなることが挙げられる。本発明において、層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。層状有機粘土は、特定の溶媒に対して分散性が低く、光学機能層形成用塗料として層状有機粘土および特定の性質を具備した溶媒を使用すると、当該溶媒の選択により、ランダム凝集構造を形成し表面凹凸を有する光学機能層を形成する。
膨潤性粘土
膨潤性粘土は、陽イオン交換能を有し、該膨潤性粘土の層間に水を取り込んで膨潤するものであればよく、天然物であっても合成物(置換体、誘導体を含む)であってもよい。また、天然物と合成物との混合物であってもよい。
膨潤性粘土としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を挙げることができる。これらの膨潤性粘土は、1種を使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
有機オニウムイオン
有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。
オニウムイオンとしては、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩や、ベンジル基やポリオキシエチレン基を有するアンモニウム塩を用いたり、ホスホニウム塩やピリジニウム塩やイミダゾリウム塩からなるイオンを用いることができる。塩としては、例えば、Cl、Br、NO 、OH、CHCOO等の陰イオンとの塩を挙げることができる。塩としては、第4級アンモニウム塩を使用することが好ましい。
有機オニウムイオンの官能基は制限されないが、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシプロピレン基またはフェニル基のいずれかを含む材料を使用すると、防眩性を発揮させやすくなるため好ましい。
アルキル基の好ましい範囲は、炭素数1〜30であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
ポリオキシプロピレン基〔(CHCH(CH)O)H又は(CHCHCHO)H〕のnの好ましい範囲は1〜50であり、さらに好ましくは5〜50であり、その付加モル数が多いほど、有機溶媒に対する分散性は良くなるが、過剰になり過ぎると、生成物が粘着性を帯びるようになるので、溶媒に対する分散性に重点をおけばnの数は、20〜50がより好ましい。また、nの数が5〜20である場合には、生成物が非粘着性で粉砕性がすぐれている。また、分散性とハンドリングの点から、第4級アンモニウム全体のnの総数は5〜50が好ましい。
該第4級アンモニウム塩の具体的例としては、テトラアルキルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウムブロミド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムクロリド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムブロミド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムクロリド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムブロミド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムクロリド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムブロミド等を挙げることができる。
一般式(I)の第4級アンモニウムイオンにおいて、Rで好ましいものはメチル基又はベンジル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましいものは炭素数1〜4のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基である。Rで好ましいものは炭素数1〜25のアルキル基、(CHCH(CH)O)H基又は(CHCHCHO)H基である。nは5〜50であるものが好ましい。
また、無機ナノ微粒子としてアルミナゾルを使用すると、光学機能層の表面硬度が向上し耐擦傷性も向上するため好ましい。
無機ナノ微粒子は変性されているものであってもよい。無機ナノ微粒子の変性にはシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が用いられる。シランカップリング剤は、樹脂成分を構成する放射線硬化型樹脂の重合性二重結合と共重合可能な官能基を有していてもよい。
無機ナノ微粒子の平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、最も好ましくは20nm以下である。無機ナノ微粒子は凝集性を有するものであれば、平均粒径の下限は限定されないが、例えば1nmである。無機ナノ微粒子の平均粒径が100nmを超える場合には、光学積層体のヘイズ値が高くなる傾向を示し、白化等の現象が見られやすくなるとともに、コントラストが低下する。
無機成分の配合量は、樹脂組成物中の固形成分の全質量に対して、0.1〜10質量%が含有され、0.2〜5質量%が特に好適である。無機成分の配合量が0.1質量%未満では十分な数の表面凹凸が形成されなくなり防眩性が不十分になる問題がある。無機成分の配合量が10質量%超では、表面凹凸数が多くなり、視認性が損なわれる問題がある。
(溶媒)
防眩性を得るための表面凹凸を形成させる溶媒としては、第1の溶媒(「第1の溶剤」という場合がある)および第2の溶媒(「第2の溶剤」という場合がある)を含有することが好ましい。
上記の本発明の樹脂組成物に、第1の溶媒および第2の溶媒を加えることによって、本発明の光学機能層形成用塗料とすることができる。本発明の光学機能層形成用塗料は上記の第1の溶媒と第2の溶媒を含有してなるため、従来光学機能層の表面凹凸形状を作成するために必須と考えられていた微粒子を添加せずとも、光学機能層の表面凹凸形状を作成することができるものである。
第1の溶媒とは、無機成分に実質的に濁りを生じさせずに、透明性を有した状態で分散させることができるものをいう。実質的に濁りを生じないとは、全く濁りが生じないものに加え、濁りが生じていないと同視しうるものも含むものである。第1の溶媒として具体的には、無機成分100質量部に対して、1000質量部の第1の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値が10%以下のものをいう。第1の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値は8%以下であることが好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。なお、混合液のヘイズ値の下限値は特に限定されないが、例えば、0.1%である。第1の溶媒としては、例えば、いわゆる極性の小さい溶媒(非極性溶媒)を使用することができる。
第2の溶媒とは、無機成分に濁りを生じさせた状態で分散させることができるものをいう。第2の溶媒として具体的には、無機成分100質量部に対して、1000質量部の第2の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値が30%以上のものをいう。第2の溶媒を添加して混合した混合液のヘイズ値は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。なお、混合液のヘイズ値の上限値は特に限定されないが、例えば、99%である。
第2の溶媒としては、例えば、いわゆる極性溶媒を使用することができる。
なお、第1の溶媒および第2の溶媒を決定する際に求めるヘイズ値は、JIS K7105に準じて測定した。
無機成分の種類によって使用できる第1の溶媒および第2の溶媒は異なる。第1の溶媒および第2の溶媒として使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、水等を使用することができる。これらの溶媒は一種で第1の溶媒または第2の溶媒としてもよいし、複数を混合して第1の溶媒または第2の溶媒としてもよい。
ここで、第1の溶媒および第2の溶媒を混合して使用すると、防眩性を得るための表面凹凸を形成させやすくなるため好ましい。第1の溶媒と第2の溶媒の混合比としては質量比で、10:90〜90:10の範囲であれば、防眩性を得るための表面凹凸を形成させやすくなるため好ましい。第1の溶媒と第2の溶媒の混合比としては質量比で、15:85〜85:15の範囲であることが好ましく、20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。第1の溶媒が10質量部未満では未分散物による外観欠点が発生する問題がある。第1の溶媒が90質量部超では十分な防眩性を得るための表面凹凸が得られない問題がある。
また、樹脂組成物と、溶媒(第1の溶媒と第2の溶媒を合わせたもの)の配合量は質量比で、70:30〜30:70の範囲であればよい。
樹脂組成物が30質量部未満では、乾燥ムラなどが生じ外観が悪くなるとともに、表面凹凸数が多くなり視認性が損なわれる問題がある。
樹脂組成物が70質量部超では、固形分の溶解性(分散性)が損なわれやすくなるため、製膜できなくなる問題がある。
(微粒子)
上記樹脂組成物は透光性の微粒子を含有する。当該樹脂組成物に溶剤を加えた光学機能層形成用塗料を、透光性基体上に塗布した後、当該光学機能層形成用塗料を硬化させて光学機能層を形成させることができる。樹脂組成物に透光性の微粒子を添加することにより、当該光学機能層の表面凹凸の形状や数を調整しやすくなる。
透光性の微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等よりなる有機系の透光性の樹脂微粒子、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の無機系の透光性の微粒子を使用することができる。透光性の微粒子の屈折率は、1.40〜1.75が好ましく、屈折率が1.40未満または1.75より大きい場合は、透光性基体あるいは樹脂マトリックスとの屈折率差が大きくなり過ぎ、全光線透過率が低下する。また、透光性の微粒子と樹脂との屈折率の差は、0.2以下が好ましい。透光性の微粒子の平均粒径は、0.3〜7.0μmの範囲のものが好ましく、1.0〜7.0μmがより好ましく、2.0〜6.0μmがさらに好ましい。
粒径が0.3μmより小さい場合は防眩性が低下するため、また7.0μmより大きい場合は、ギラツキを発生すると共に、表面凹凸の程度が大きくなり過ぎて表面が白っぽくなってしまうため好ましくない。また、上記樹脂中に含まれる透光性の微粒子の割合は特に限定されないが、樹脂組成物100質量部に対し、0.1〜20質量部とするのが防眩機能、ギラツキ等の特性を満足する上で好ましく、光学機能層表面の微細な凹凸形状とヘイズ値をコントロールし易い。ここで、「屈折率」は、JIS K−7142に従った測定値を指す。また、「平均粒径」は、電子顕微鏡で実測した100個の粒子の直径の平均値を指す。
微粒子の配合量は、光学機能層を構成する樹脂組成物中の固形成分の全質量に対して、0.1質量%以上含有され、1.0質量%以上が好適である。上限値は特に限定されないが、例えば、5.0質量%である。0.1質量%未満では、十分な防眩性が得られないなどの問題がある。
帯電防止剤(導電剤)
本発明の光学機能層は、帯電防止剤(導電剤)を含んでいてもよい。導電剤の添加により、光学積層体の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、或いは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
また、帯電防止剤としては導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO、CeO、Sb、SnO、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫、In、Al、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO)等を挙げることができる。導電性微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒径が0.1nm〜0.1μmのものである。
また、帯電防止剤(導電剤)の別の具体例としては、導電性ポリマーが挙げられる。その材料としては特に限定されず、例えば、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、ポリアズレン、芳香族共役系のポリフェニレン、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、これらの導電性ポリマーの誘導体、及び、これらの共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。なかでも、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、光学積層体の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。また、導電性向上や、帯電防止性能向上を目的として、有機スルホン酸や塩化鉄等の陰イオンを、ドーパント(電子供与剤)として添加することもできる。ドーパント添加効果も踏まえ、特にポリチオフェンは透明性、帯電防止性が高く、好ましい。上記ポリチオフェンとしては、オリゴチオフェンも好適に使用することができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンのアルキル基置換体等を挙げることができる。
<光学積層体>
上記の構成成分を含む光学機能層形成用塗料を、透光性基体上に塗布した後、熱、あるいは電離放射線(例えば電子線または紫外線照射)を照射して該光学機能層形成用塗料を硬化させることにより光学機能層を形成させ、本発明の光学積層体を得ることができる。
光学機能層は透光性基体の片面に形成されていても両面に形成されていてもよい。
また、光学機能層と透光性基体の間、光学機能層の反対面に他の層を有していてもよいし、光学機能層上に他の層を有していてもよい。ここで他の層としては、例えば、偏光層、光拡散層、低反射層、防汚層、帯電防止層、紫外線・近赤外線(NIR)吸収層、ネオンカット層、電磁波シールド層などを挙げることができる。
光学機能層の厚さは1.0〜12.0μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2.0〜11.0μmの範囲であり、さらに好ましくは3.0〜10.0μmの範囲である。光学機能層が1.0μmより薄い場合は、紫外線硬化型時に酸素阻害による硬化不良を起こし、光学機能層の耐磨耗性が劣化しやすくなる。光学機能層が12.0μmより厚い場合は、光学機能層の硬化収縮によるカールの発生や、マイクロクラックの発生、透光性基体との密着性の低下、さらには光透過性の低下が生じてしまう。そして、膜厚の増加に伴う必要塗料量の増加によるコストアップの原因ともなる。
本発明の光学積層体は、画像鮮明性が5.0〜85.0の範囲(JIS K7105に従い0.5mm光学くしを用いて測定した値)が好ましく、20.0〜75.0がより好ましい。画像鮮明性が5.0未満ではコントラストが悪化し、85.0を超えると防眩性が悪化するため、ディスプレイ表面に用いる光学積層体に適さなくなる。
次に、本発明の光学積層体を構成する光学機能層の凹凸形状について詳述する。
当該光学機能層の凹凸形状は、ASME/1995(ASME:American Society of Mechanical Engineers、アメリカ機械学会規格)に従って求められる。凹凸形状を有する光学機能層面において、凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度の傾斜角度分布の割合が68%以上であり、3.0度以上の傾斜角度成分の割合が1%未満の範囲内にあることで、防眩性、明室下の黒味と高いギラツキ防止性能を備え、さらに暗室コントラストに優れた光学積層体を得ることができる。
本発明においては、光学機能層の少なくとも一方が所定の傾斜角度分布を有するようにして、凹凸形状が形成されていることが必要である。光学機能層の凹凸面上に他の層(例えば、高屈折率層や低反射層等)を設けることが可能であるが、他の層を塗工により積層する場合、光学機能層の凹凸面の凹部に他の層が存在しやすくなり、凸部には他の層が存在しにくくなる。したがって、他の層上にも凹凸形状が形成されるものの、光学機能層の凹凸形状に比べてなだらかな傾斜角度分布となる(低い傾斜角度を有するものが多くなる)。
また、本発明の光学積層体は、光学機能層の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度の傾斜角度分布の割合が68%以上であり、該傾斜角度分布の割合が70%以上であることがより好ましく、該傾斜角度分布の割合が72%以上であることさらに好ましく、該傾斜角度分布の割合が75%以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されないが、例えば95%である。
光学機能層の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度の傾斜角度分布の割合が所定の範囲にあることで、高い防眩性を備え、適度な明室下の黒味を付与しながら、ギラツキ防止性能の低下を防止することができる。該傾斜角度分布の割合が68%未満であると、防眩性、明室下の黒味、ギラツキ防止性能のバランスが良い光学機能層を得ることができなくなる。
また、本発明の光学積層体は、光学機能層の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める3.0度以上の傾斜角度分布の割合が1%未満であり、0.5%未満であることがより好ましく、0.1%未満であることがさらに好ましく、含有しないこと、すなわち0%であってもよい。光学機能層の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める3.0度以上の傾斜角度分布の割合が所定の範囲にあることでギラツキ防止性能の低下を防止できる。3.0度以上の傾斜角度分布の割合が1%を超えると、光学積層体の表面緻密性が低下するため、ギラツキ防止性能が損なわれ、さらに表面散乱性が増すため、明室下の黒味が損なわれる。
本発明において規定する凹凸形状の傾斜角の分布は、まず、ASME/1995に従って、光学機能層の凹凸形状を測定する。次に、凹凸形状を測定した測定全長において、測定長さ(X)0.5μm毎の凹凸の高さ(Y)を算出し、局所傾斜(ΔZ)を以下の式から算出する。
ここで、ΔZは、ある任意の測定位置dXにおける局所傾斜をいう。続いて、傾斜角(θ)を以下の式から算出する。
上式により傾斜角(θ)を測定全長にわたって求めた後、傾斜角(θ)を0.1°刻みとした度数分布を作成し、本発明で規定する所定の傾斜角を有するものの割合(%)を求めた。
光学機能層の凹凸形状の平均長さ(RSm)が30〜300μmの範囲にあり、より好ましくは50〜250μm、更に好ましくは100〜250μmである。30μm未満だと表面散乱が大きくなることで光学積層体の黒味が悪化するデメリットがある。300μm超だと防眩性が悪化するデメリットがある。
光学機能層の凹凸形状の最大高さ(Rz)0.300〜1.200μmの範囲にあり、より好ましくは0.400〜1.000μm、更に好ましくは0.500〜0.900μmである。0.300μm未満だと防眩性が悪化するデメリットがある。1.200μm超だと光学積層体の黒味が悪化するデメリットがある。
<偏光基体>
本発明においては、光学機能層とは反対面の透光性基体上に、偏光基体を積層してもよい。ここで、当該偏光基体は、特定の偏光のみを透過し他の光を吸収する光吸収型の偏光基体や、特定の偏光のみを透過し他の光を反射する光反射型の偏光基体を使用することが出来る。光吸収型の偏光基体としては、ポリビニルアルコール、ポリビニレン等を延伸させて得られるフィルムが使用可能であり、例えば、2色性素子として沃素または染料を吸着させたポリビニルアルコールを一軸延伸して得られたポリビニルアルコール(PVA)フィルムが挙げられる。光反射型の偏光基体としては、例えば、延伸した際に延伸方向の屈折率が異なる2種類のポリエステル樹脂(PEN及びPEN共重合体)を、押出成形技術により数百層交互に積層し延伸した構成の3M社製「DBEF」や、コレステリック液晶ポリマー層と1/4波長板とを積層してなり、コレステリック液晶ポリマー層側から入射した光を互いに逆向きの2つの円偏光に分離し、一方を透過、他方を反射させ、コレステリック液晶ポリマー層を透過した円偏光を1/4波長板により直線偏光に変換させる構成の日東電工社製「ニポックス」やメルク社製「トランスマックス」等が挙げられる。
偏光基体と光学積層体を直接あるいは接着層等を介して積層することにより、偏光板として使用することができる。
<表示装置>
本発明の光学積層体は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)、表面電界ディスプレイ(SED)のような表示装置に適用することができる。特に好ましくは液晶表示装置(LCD)に用いられる。本発明の光学積層体は透光性基体を有しているので、透光性基体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
本発明の光学積層体を偏光板の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
<光学積層体の製造方法>
透光性基体上に光学機能層形成用塗料を塗布する手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
[実施例1]
表1記載の所定の混合物をディスパーにて30分間攪拌することによって得られた光学機能層形成用の塗料を、膜厚60μm、全光線透過率92%からなる透明基体のTAC(富士フィルム社製;TD60UL)の片面上にロールコーティング方式にて塗布(ラインスピード;20m/分)し、30〜50℃で20秒間予備乾燥を経た後、100℃で1分間乾燥し、窒素雰囲気(窒素ガス置換)中で紫外線照射(ランプ;集光型高圧水銀灯、ランプ出力;120W/cm、灯数:4灯、照射距離;20cm)を行うことで塗工膜を硬化させた。このようにして、厚さ5.0μmの光学機能層を有する実施例1の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[実施例2]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.5μmの光学機能層を有する実施例2の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[実施例3]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.1μmの光学機能層を有する実施例3の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[実施例4]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.2μmの光学機能層を有する実施例4の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[実施例5]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.9μmの光学機能層を有する実施例5の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[実施例6]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.8μmの光学機能層を有する実施例5の光学積層体を得た。SEM,EDS結果より、得られた積層体を構成する光学機能層が少なくとも第一の相および第二の相を有し、ランダム凝集構造を形成していることが確認された。
[比較例1]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.3μmの光学機能層を有する比較例1の光学積層体を得た。ここで、得られた積層体のSEM,EDS結果より、得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず透光性有機微粒子の凝集から成る海島構造を形成していることが確認された。
[比較例2]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.8μmの光学機能層を有する比較例2の光学積層体を得た。ここで、得られた積層体のSEM,EDS結果より、得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず、第一の相と第二の相が膜面全体に分散した海島構造を形成していることが確認された。
[比較例3]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ6.6μmの光学機能層を有する比較例3の光学積層体を得た。ここで、得られた光学積層体の光学機能層面から見たSEM結果を図5に、光学積層体の光学機能層面から見たEDS結果を図6に示した。得られた光学積層体を構成する光学機能層が、第一の相と第二の相に相分離しているが、光学機能層に微粒子を含有していないためランダム凝集構造を形成していないことが確認された。
[比較例4]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.8μmの光学機能層を有する比較例4の光学積層体を得た。ここで、得られた光学積層体のSEM,EDS結果より、得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず、透光性有機微粒子の凝集から成る海島構造を形成していることが確認された。
[比較例5]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.8μmの光学機能層を有する比較例4の光学積層体を得た。ここで、得られた光学積層体の光学積層体の光学機能層面からSEM結果を図7に示した。得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず、透光性有機微粒子の凝集から成る海島構造を形成していることが確認された。
[比較例6]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ4.0μmの光学機能層を有する比較例4の光学積層体を得た。ここで、得られた光学積層体のSEM,EDS結果より、得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず、不定形シリカの凝集から成る海島構造を形成していることが確認された。
[比較例7]
光学機能層形成用塗料を表1記載の所定の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5.5μmの光学機能層を有する比較例4の光学積層体を得た。ここで、得られた光学積層体のSEM,EDS結果より、得られた光学積層体を構成する光学機能層が、ランダム凝集構造を形成せず、透光性有機微粒子の凝集から成る海島構造を形成していることが確認された。
上記実施例において使用した材料を表1に、比較例において使用した材料を表2にまとめた。
SEM及びEDSについては次の条件で撮影した。
SEM
実施例、比較例で得られた積層体の塗布層表面の状態、および含有元素の情報を、SEMにより観察した。観察は、塗布層表面に金またはカーボン蒸着したのち行った。以下に、SEM観察の条件を示す。
分析装置・・・・・・JSM−6460LV(日本電子社製)
前処理装置・・・・・C(カーボン)コーティング:45nm SC−701C(サンユー電子社製)
・・・・・・・・・・Au(金)コーティング:10nm SC−701AT改(サンユー電子社製)
SEM条件・・・・・加速電圧 :20KVまたは15KV
照射電流 :0.15nA
真空度 :高真空
画像検出器:反射電子検出器
試料傾斜 :0度
EDS
実施例、比較例で得られた積層体の含有元素の情報を、EDSにより観察した。観察は、塗布層表面にカーボン蒸着したのち行った。以下に、EDS観察の条件を示す。
分析装置・・・・・・JSM−6460LV(日本電子社製)
前処理装置・・・・・C(カーボン)コーティング:45nm SC−701C(サンユー電子社製)
EDS条件・・・・・加速電圧 :20KV
照射電流 :0.15nA
真空度 :高真空
画像検出器:反射電子検出器
MAP解像度:128×96ピクセル
画像解像度 :1024×768ピクセル
(評価方法)
次に実施例および比較例の光学積層体について、下記の項目について評価を行った。
(膜厚)
膜厚は、上記SEMを用いて、液体窒素中で凍結破断した光学積層体の断面部を観察して求めた。
(ヘイズ値)
ヘイズ値(全Hz)は、JIS K7105に従い、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色社製)を用いて測定した。
(表面粗さ)
光学機能層の凹凸形状の最大高さRzおよび平均長さRSmは、JIS B0601−2001に従い、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE1700α、小坂研究所社製)を用いて測定した。
光学機能層の凹凸形状の傾斜角の分布は、以下の手順に従い算出した。
まず、ASME/1995に従い、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE1700α、小坂研究所社製)を用いて、光学機能層上(透光性基体を具備していない面)に形成された凹凸形状を測定した。なお、当該測定は、実施例および比較例における各光学積層体を上記サーフコーダSE1700αの所定の位置にセットした後、「ASME95」を選択し、さらにパラメータとして「Δa」を選択することにより測定することができる。
測定条件は以下の通りである。
・測定長さ :4.0mm
・フィルター :GAUSS
・λc(粗さカットオフ値) :0.8
・λf(うねりカットオフ値) :10λc
・縦倍率 :20,000倍
・横倍率 :500倍
次に、凹凸形状を測定した測定全長において、測定長さ(X)0.5μm毎の凹凸の高さ(Y)を算出し、局所傾斜(ΔZi)を以下の式から算出した。
ここで、ΔZiは、ある任意の測定位置dXiにおける局所傾斜をいう。
続いて、傾斜角(θ)を以下の式から算出した。
上式により傾斜角(θ)を測定全長にわたって求めた後、傾斜角(θ)を0.1°刻みとした度数分布を作成し、本発明で規定する所定の傾斜角を有するものの割合を求めた。
(画像鮮明性)
JIS K7105に従い、写像性測定器(商品名:ICM−1DP、スガ試験機社製)を用い、測定器を透過モードに設定し、光学くし幅0.5mmにて測定した。
(防眩性)
防眩性は、定量評価と定性評価の2種類の方法にて数値判定した。両評価の判定値の和が5点以上のとき◎、4点のとき○、3点以下のとき×とした。
(防眩性の定量評価)
画像鮮明性の値が5以上〜40未満のとき3点、40以上〜80未満のとき2点、80以上のとき1点とした。
(防眩性の定性評価)
実施例及び比較例の光学積層体において、光学機能層形成面の反対面に、無色透明な粘着剤を介して黒色アクリル板(三菱レイヨン製アクリライトL502)に貼り合せ、400ルクスの環境照度の中、2本の蛍光灯がむき出しの状態で平行に配置された蛍光灯を光源として、45〜60度の角度で光を映りこませて、その反射像を正反射方向から目視により観察し、蛍光灯の映り込みの度合いを判定した。2本の蛍光灯の反射像が1本に見えるほど像がぼやけるとき3点、2本の蛍光灯を認識できるが蛍光灯の輪郭がぼやけるとき2点、2本の蛍光灯の輪郭がぼやけずにはっきりと見えるとき1点とした。
(黒味)
明室下の黒味は、定量評価と定性評価の2種類の方法にて数値判定した。両評価の判定値の和が6点のとき◎、5点のとき○、4点以下のとき×とした。
(黒味の定量評価)
実施例及び比較例の光学積層体において、光学機能層形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、液晶ディスプレイ画面の正面上方60°の方向から蛍光灯(商品名:HH4125GL、ナショナル社製)にて液晶ディスプレイ表面の照度が200ルクスとなるようにした後、液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出し、プレイン偏光板のコントラストを100%として、以下の式にて減少率を算出した。減少率が5%未満のとき3点、5%以上〜10%未満のとき2点、10%以上のときに1点とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
減少率=コントラスト(光学積層体)/コントラスト(プレイン偏光板)
本発明において、プレイン偏光板とは、2色性素子として沃素または染料を吸着させたポリビニルアルコールを一軸延伸して得られたポリビニルアルコール(PVA)フィルムの両面にTACフィルムが貼り合わされてなる積層体をいう。
(黒味の定性評価)
実施例及び比較例の光学積層体形成面において、光学機能層の反対面に、無色透明な粘着剤を介して黒色アクリル板(三菱レイヨン製アクリライトL502)に貼り合せ、400ルクスの環境照度の中、2本の蛍光灯がむき出しの状態で平行に配置された蛍光灯を光源として、45〜60度の角度で光を映りこませて、光源の反射像以外の部分の黒味を正反射方向から目視により観察し、実施例1に示すフィルムと比べて、黒味が優れているとき3点、黒味が同程度のとき2点、黒味が劣るときに1点とした。
(暗室コントラスト)
暗室コントラストは、実施例及び比較例の光学積層体において、光学機能層形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して液晶ディスプレイ(商品名:LC−37GX1W、シャープ社製)の画面表面に貼り合せ、暗室条件下で液晶ディスプレイを白表示及び黒表示としたときの輝度を色彩輝度計(商品名:BM−5A、トプコン社製)にて測定し、得られた黒表示時の輝度(cd/m)と白表示時の輝度(cd/m)を以下の式にて算出し、プレイン偏光板のコントラストを100%として、以下の式にて減少率を算出した。減少率が3%未満のとき◎、3%以上〜7%未満のとき○、7%以上のときに×とした。
コントラスト=白表示の輝度/黒表示の輝度
減少率=コントラスト(光学積層体)/コントラスト(プレイン偏光板)
(ギラツキ)
ギラツキは、各実施例及び各比較例の光学積層体において、光学機能層形成面と反対面に、無色透明な粘着層を介して解像度が100ppiの液晶ディスプレイ(商品名:LL−T1620−B、シャープ社製)と解像度が150ppiの液晶ディスプレイ(商品名:nw8240−PM780、日本ヒューレットパッカード社製)と、解像度が200ppiの液晶ディスプレイ(商品名:PC−CV50FW、シャープ社製)の画面表面にそれぞれ貼り合わせ、暗室にて液晶ディスプレイを緑表示とした後、各液晶TVの法線方向から解像度200ppiのCCDカメラ(CV−200C、キーエンス社製)にて撮影した画像において、輝度バラツキが確認されない時の解像度の値が、100ppiのとき×、150ppiのとき○、200ppiのとき◎とした。
ギラツキは該評価結果が150ppi以上で合格であり、200ppi以上であることが好ましく、より好ましくは250ppi以上である。
得られた結果を表3に示した。
以上のように、本発明によれば、良好な防眩性、明室下での黒味、ギラツキ防止性能および高い暗室コントラストに優れた光学積層体および当該光学積層体を提供することができる。また、当該光学積層体を具備してなる偏光板および表示装置も提供することができる。
1 第一の相
2 第二の相
3 微粒子
15、16 光学機能層
20 透光性基体
30、31 微粒子
40 樹脂

Claims (8)

  1. 透光性基体上に光学機能層が積層されてなる光学積層体であって、該光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、該凹凸形状を有する光学機能層面の凹凸形状を測定した測定全長の傾斜角度分布に占める0.3度以上1.6度以下の傾斜角度分布の割合が68%以上であり、3.0度以上の傾斜角度成分の割合が1%未満であることを特徴とする光学積層体。
  2. 前記光学機能層が、放射線硬化型樹脂組成物を主成分とする1層以上の光学機能層からなる請求項1に記載の光学積層体。
  3. 前記光学機能層が、ランダム凝集構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学積層体。
  4. 前記光学機能層が、少なくとも放射線硬化型樹脂組成物と、透光性微粒子を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層体。
  5. 前記透光性微粒子の平均粒径が0.3〜7.0μmであることを特徴とする請求項4に記載の光学積層体。
  6. 前記光学機能層の膜厚が前記透光性微粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の光学積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の光学積層体を構成する透光性基体上に、偏光基体が積層されてなることを特徴とする偏光板。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の光学積層体を具備してなることを特徴とする表示装置。
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