JP2011012650A - オイルジェット - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストンの過冷却を防止する動作形態と過加熱を防止する動作形態とを内燃機関の温度に応じた適切なタイミングで切り換えることができるオイルジェットを提供する。
【解決手段】オイルジェット30Aの本体部31の中空部34内には、球形の第1弁体42と弁座43と第1ばね46とを有する油圧応動式の第1バルブ機構と、形状記憶合金からなる第2ばね48と閉止部材49と付勢ばね51とを有する感熱式の第2バルブ機構とが設けられている。形状記憶合金からなる第2ばね48は、冷間時には圧縮されて円筒状となり第2バルブ機構を閉弁状態にする一方、温間時には復元状態となって伸長し第2バルブ機構を閉弁状態にする。第2バルブ機構は、内燃機関のオイル通路内を流れるエンジンオイルが第2ばね48の周囲を流通するように構成されている。これにより、第2バルブ機構のエンジンオイルの温度変化に対する応答性が高められる。
【選択図】図9

Description

本発明は、内燃機関のピストンの背面にオイルを吹き付けて該ピストンを冷却するオイルジェットに関するものである。
一般に、レシプロ式の内燃機関(エンジン)では、ピストンが過加熱状態になると、ノッキング(異常燃焼)が発生しやすくなるとともに、ピストンの熱膨張によりピストンとシリンダ内壁との間のクリアランスが無くなり摩擦抵抗が増大する。また、過加熱と冷却とを繰り返すとピストン冠部に劣化ないしは損傷が生じることがある。このため、内燃機関には、通常、ピストンの背面にエンジンオイルを吹き付けてピストンを冷却するオイルジェット(ピストン冷却装置)が設けられる。そして、オイルジェット内の油路には、エンジンオイルの圧力(供給油圧)に応じて油路を開閉するバルブ機構が設けられる(例えば、特許文献1、2参照)。
以下、図1〜図3を参照しつつ、従来の一般的な内燃機関用のオイルジェットの構造及び機能を説明する。
図1に示すように、普通のレシプロ式の内燃機関1においては、シリンダブロック2の上部にシリンダ3が形成され、シリンダ3内にピストン4が嵌入されている。ピストン4は、コネクチングロッド5及びクランクピン6を備えた連結機構を介してクランクシャフト7に連結されている。また、シリンダブロック2には、オイル通路8(メインギヤラリ)と、該オイル通路8と連通する連通口9とが設けられている。そして、図2に示すような構造を備えたオイルジェット10が、図3に示すような形態で、ボルト締結によりシリンダブロック2に取り付けられている。オイルジェット10には、オイル通路8からエンジンオイルが供給される。
図2に示すように、一般にオイルジェット10は、中空部11を備えた本体部12と、本体部12に結合されたノズル13と、中空部11内に配設されたバルブ機構とを備えている。バルブ機構は、中空部11に形成された弁座部14と、弁座部14を開閉する球形の弁体15と、弁体15を弁座部14に着座させる方向に付勢するばね16と、ばね16の一端を支持するとともに中空部11の一端を閉止するプラグ部材17とを備えている。
かくして、内燃機関1においては、オイル通路8の油圧が所定値以上になると、ばね16が圧縮され、弁体15が開弁する。その結果、オイル通路8内のエンジンオイルが、ノズル13の先端から噴射される。噴射されたエンジンオイルはピストン4の背面に吹き付けられ、これによりピストン4が冷却される。
特開平08−326535号公報 実開昭59−186416号公報
ところで、図2に示す従来のオイルジェット10は、内燃機関1の冷間時、すなわち内燃機関1が冷機状態で運転されているときでも油圧が所定値以上に上昇すれば、エンジンオイルを噴射してピストン4の背面に吹き付ける構造となっている。このため、内燃機関1の冷間時には、ピストン4が過冷却状態となるおそれがある。そして、ピストン4が過冷却状態になると、ピストン4の熱膨張が不十分であることに起因してピストン4とシリンダ3の内壁との間のクリアランスが大きくなり、騒音が発生したり、振動が増加したりするといった問題が生じる。また、ピストン4が過冷却状態になると、燃焼室内の温度が低下し、燃料の燃焼が不完全となったり、排気ガス温度が排気ガス浄化に必要な反応温度に到達しなかったりするといった問題も生じる。
そこで、特許文献1、2に開示されたオイルジェットでは、ピストンの過冷却を防止する手段を設けている。以下、従来のオイルジェットにおけるピストンの過冷却を防止する手段の構成及び機能の概要を説明する。
図4及び図5に示すように、特許文献1に開示されたオイルジェットは、オイルジェット本体18と、ノズル19と、油路を開閉するボールバルブ20と、ボールバルブ20を油路が閉じる方向に支持するスプリング21と、スプリング固定プラグ22と、バルブ動作制御装置23とを備えている。そして、このオイルジェットでは、雰囲気温度が低いときには、バルブ動作制御装置23がボールバルブ20に直接接触してバルブ機構を閉弁状態に固定し、エンジンオイルの噴射を停止してピストンの過冷却を防止する(図4に示す状態)。なお、雰囲気温度が高いときには、バルブ動作制御装置23はそのボール固定部位が半径方向に拡大してボールバルブ20と接触しない状態となり、バルブ機構に何ら作用を及ぼさなくなる(図5に示す状態)。したがって、油圧に応じてピストンに向かってエンジンオイルが噴射される。
また、図6に示すように、特許文献2に開示されたオイルジェットは、オイルジェットボデー24と、パイプ25と、油路を開閉するチェックボール26と、チェックボール26を油路が閉じる方向に支持するスプリング27と、チェックボールシート28と、形状記憶合金からなるスペーサ29とを備えている。そして、このオイルジェットでは、雰囲気温度が低いときには、スペーサ29の軸方向の長さが伸長し、これによりスプリング27の付勢力が大きくなり、チェックボールシート28が開弁しなくなる。このため、エンジンオイルの噴射が停止され、ピストンの過冷却が防止される。
しかしながら、特許文献1に開示されたオイルジェットでは、感温部であるバルブ動作制御装置23が、ボールバルブ20に対して内燃機関のオイル通路と反対側に配置されているので、ボールバルブ20が開弁しない状態ではバルブ動作制御装置23が収容されている空間部内にエンジンオイルは流入しない。同様に、特許文献2に開示されたオイルジェットでも、感温部であるスペーサ29が、チェックボール26に対して内燃機関のオイル通路と反対側に配置されているので、チェックボール26が開弁しない状態ではスペーサ29が収容されている空間部内にエンジンオイルは流入しない。
このため、特許文献1、2に開示された従来のオイルジェットでは、冷機状態で内燃機関が始動された後、感温部であるバルブ動作制御装置23又はスペーサ29の雰囲気温度は、主としてエンジンオイル又はシリンダブロックからの熱伝導によって上昇することになる。したがって、内燃機関のオイル通路内のエンジンオイルの温度が上昇しても、バルブ動作制御装置23又はスペーサ29の温度はすぐには上昇せず、エンジンオイルの温度上昇に対するバルブ動作制御装置23又はスペーサ29の応答性ないしは感度が悪くなる(温度変動要因が多い)。このため、ピストンの過冷却を防止する動作形態(オイルを噴射しない状態)と、過加熱を防止する動作形態(オイルを噴射する状態)とを内燃機関の温度に応じた適切なタイミングで切り換えることが困難であるといった問題がある。
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、内燃機関の冷間時にはピストンの過冷却を防止することができ、温間時にはピストンを有効に冷却することができ、かつ、ピストンの過冷却を防止する運転形態と過加熱を防止する運転形態とを、内燃機関の温度に応じた適切なタイミングで切り換えることができるオイルジェットを提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明に係る内燃機関用のオイルジェットは、本体部と、ノズルと、第1バルブ機構と、第2バルブ機構とを備えている。本体部には、内燃機関のオイル通路に開口し該オイル通路からオイルが流入する略円柱形の中空部(油路)と、中空部からオイルを流出させるオイル流出穴とが形成されている。ノズルは、本体部に結合され、オイル流出穴と連通している。第1バルブ機構は、それぞれ中空部内に収容された、球形の第1弁体と、第1弁体によって開閉される弁座と、第1弁体を弁座が閉じる方向に付勢する第1ばねとを有している。第2バルブ機構は、中空部内におけるオイルの流れ方向にみて、第1バルブ機構より上流側(オイル通路側)に配置されている。この第2バルブ機構は、オイル通路内のオイルの温度が低いときにはオイル通路と弁座との連通を遮断する一方、オイルの温度が高いときにはオイル通路と弁座とを連通させる。ここで、第2バルブ機構は、オイル通路内を流れるオイルの少なくとも一部が該第2バルブ機構の感温部を通過して(ないしは横切って)流れるように形成されている。
本発明に係るオイルジェットにおいて、第2バルブ機構は、形状記憶合金でコイル状に形成されその一方の輪状コイル端が第1弁体と反対側で弁座に当接し中空部の中心軸の伸びる方向に伸縮する上記感温部をなす第2ばねと、該第2ばねに上記一方の輪状コイル端と反対側の輪状コイル端を閉止するように取り付けられた閉止部材と、第2ばね及び閉止部材を覆うようにして中空部のオイル通路への開口部に取り付けられる一方オイル通路に開口する穴部が形成された蓋部材とを有しているのが好ましい。この場合、第2ばねは、形状記憶合金の形状回復温度以上の温度(又は形状回復温度範囲より高い温度)では付勢力が増加して伸長しコイル周部に隙間(ピッチ)が存在する螺旋状となる一方、形状回復温度未満の温度(又は形状回復温度範囲より低い温度)では付勢力が低下し、該第2ばねを圧縮する方向の外力により圧縮されてコイル周部に隙間が存在しない円筒状となり閉止部材と協働してオイル通路と弁座との連通を遮断するようになっているのが好ましい。なお、この場合、第2ばねは、オイルジェットの第2弁体として機能する。
ここで、第2バルブ機構は、蓋部材と閉止部材との間に配置され、閉止部材を、第2ばねを圧縮方向に付勢し、形状回復温度未満の温度(又は形状回復温度範囲より低い温度)で第2ばねを圧縮する付勢ばねを備えているのがより好ましい。
本発明に係るオイルジェットにおいては、形状回復温度未満の温度(又は形状回復温度範囲より低い温度)で、コイル周部を円筒状にしてオイル通路と弁座との連通を遮断するのではなく、閉止部材でオイル通路と弁座との連通を遮断するようにしてもよい。この場合、第2ばねは、形状記憶合金の形状回復温度以上の温度(又は形状回復温度範囲より高い温度)では付勢力が増加して伸長し閉止部材を弁座から離反させる一方、形状回復温度未満の温度(又は形状回復温度範囲より低い温度)では付勢力が低下し該第2ばねを圧縮する方向の外力(例えば、エンジンオイルの油圧差により生じる力)により圧縮されて閉止部材に弁座を閉止させるようになっているのが好ましい。
ここで、第2バルブ機構は、蓋部材と閉止部材との間に配置され、閉止部材を、第2ばねを圧縮する方向に付勢し、形状回復温度未満の温度(又は形状回復温度範囲より低い温度)では第2ばねを圧縮する付勢ばねを有しているのがより好ましい。ここで、第2ばねの温度が形状回復温度以上のとき(又は形状回復温度範囲より高いとき)は、第2ばねが、その付勢力が増加し、付勢ばねの付勢力に抗して閉止部材を弁座から離反させて上記弁座を開放する一方、第2ばねの温度が形状回復温度未満のとき(又は形状回復温度範囲より低いとき)は、付勢ばねが、第2ばねの付勢力に抗して閉止部材を弁座に当接させて該弁座を閉止するようになっているのがとくに好ましい。この場合、閉止部材は、オイルジェットの第2弁体として機能する。
本発明に係るオイルジェットにおいては、中空部は、該中空部の中心軸の伸びる方向にみて、オイル通路への開口部と反対側の端部に開口する第2の開口部を有し、第2の開口部を閉止するとともに、第1ばねの端部を支持するプラグ部材が設けられているのが好ましい。
本発明に係るオイルジェットでは、内燃機関の冷間時、すなわちオイル通路内のオイルの温度が低いときには、第2バルブ機構がオイル通路と弁座との連通を遮断するので、オイルジェットからピストンへのオイルの噴射が停止され、内燃機関の過冷却が防止される。他方、内燃機関の温間時、すなわちオイル通路内のオイルの温度が高いときには、第2バルブ機構がオイル通路と弁座とを連通させるので、第1バルブ機構によりオイル通路内のオイルの圧力に応じてオイルジェットからピストンへオイルが噴射される。このため、ピストンを有効に冷却することができる。
さらに、内燃機関の運転時には、オイル通路内のオイルの少なくとも一部が第2バルブ機構の感温部を通過して流れるので、第1バルブ機構ないしは第1弁体の開閉にかかわらず、内燃機関始動後におけるエンジンオイルの温度上昇に対する第2バルブ機構の応答性ないしは感度が非常に良好となる。このため、ピストンの過冷却を防止する動作形態と過加熱を防止する動作形態とを内燃機関の温度に応じた適切なタイミングで迅速に切り換えることができる。
内燃機関のシリンダブロック及びピストンの一部断面立面図である。 従来のオイルジェットの側面断面図である。 従来のオイルジェットを備えた内燃機関のシリンダブロック及びピストンの一部断面立面図である。 特許文献1に開示されたオイルジェットの側面断面図である。 特許文献1に開示されたオイルジェットの側面断面図である。 特許文献2に開示されたオイルジェットの側面断面図である。 本発明の実施形態1に係るオイルジェットの斜視図である。 本体部を除去した状態における図7に示すオイルジェットの斜視図である。 図7に示すオイルジェットを分解して示す斜視図である。 図7に示すオイルジェットを分解して示す一部断面斜視図である。 本発明の実施形態1に係るオイルジェットの側面断面図であり、冷間時における状態を示している。 本発明の実施形態1に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が低いときの状態を示している。 本発明の実施形態1に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が高いときの状態を示している。 本発明の実施形態2に係るオイルジェットの側面断面図であり、冷機状態で内燃機関を始動させた直後の状態を示している。 本発明の実施形態2に係るオイルジェットの側面断面図であり、冷機状態で内燃機関を始動させた後若干の時間が経過したときの状態を示している。 本発明の実施形態2に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が低いときの状態を示している。 本発明の実施形態2に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が高いときの状態を示している。 本発明の実施形態3に係るオイルジェットの側面断面図であり、冷間時における状態を示している。 本発明の実施形態3に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が低いときの状態を示している。 本発明の実施形態3に係るオイルジェットの側面断面図であり、温間時において油圧が高いときの状態を示している。
以下、図7〜図20を参照しつつ、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。なお、本発明の実施形態に係るオイルジェットが装着される内燃機関(エンジン)は、図1に示す従来の内燃機関とほぼ同一であるので、内燃機関のオイルジェット以外の部分については、適宜、図1を参照する。
(実施形態1)
図7〜図10に示すように、本発明の実施形態1に係るオイルジェット30Aには、その基部をなす本体部31(ボディ)が設けられ、この本体部31に管状のノズル32がロウ付け等により接合されている。本体部31には、該オイルジェット30Aを内燃機関1に取り付けるために連通口9に挿入される略円柱形の突出部33が形成されている。また、本体部31には、エンジンオイルの通路となる略円柱形の中空部34と、オイルジェット30Aをシリンダブロック2にボルト締結するための円柱形のボルト穴35とが形成されている。中空部34は、突出部33内をその中心軸方向に貫通するように形成されている。なお、以下では便宜上、オイルジェット30Aにおける位置関係に関して、略円柱形の中空部34の中心軸の伸びる方向にみて、突出部33が位置する側を「上」といい、これと反対側を「下」という。
中空部34は、その一部として、突出部33(本体部31)の上端面に開口する円柱形の第1開口部36と、本体部31の下端面に開口する円柱形の第2開口部37とを有している。ここで、第1開口部36は中空部34の主部(中間部)より若干小径であり、第2開口部37は中空部34の主部よりやや大径である。中空部34の主部と第1開口部36との境界にはテーパ状の遷移部38が形成されている。第2開口部37にはプラグ部材39が嵌入され、このプラグ部材39は例えばかしめ加工等により本体部31に固定されている。中空部34の主部の下端部はプラグ部材39によって閉止されている。
さらに、本体部31には、その中心軸が横方向、すなわち上下方向と垂直な方向に伸び、一端が中空部34と連通し他端が本体部31の周面に開口する略円柱形のオイル流出穴40が形成されている。そして、ノズル32は、オイル流出穴40の一部分(大径の部分)に差し込まれ、本体部31に接合されている。なお、ノズル32内には該ノズル32をその長手方向に貫通する油路41が形成され、この油路41はオイル流出穴40の一部分(小径の部分)を介して中空部34と連通している。
中空部34内には、オイル通路8内のオイルの圧力ないしはオイルジェット30Aに供給されるオイルの圧力(以下「供給油圧」という。)に応じて動作する油圧応動式の第1バルブ機構と、中空部34内におけるオイルの流れ方向にみて第1バルブ機構より上流側(オイル通路側)に配置され、オイル通路8内のオイルの温度に応じて動作する感熱式の第2バルブ機構とを備えている。なお、第1バルブ機構の動作と第2バルブ機構の動作は互いに独立している。
第1バルブ機構は、球形の第1弁体42(ボールバルブ)と、小径円筒部43aとテーパ部43bと大径円筒部43cとを有する漏斗形の弁座43(シート部)と、略リング状のリテーナ44と、一部が欠損した輪状の止め輪45と、上下方向に伸縮するコイル状の第1ばね46(コイルスプリング)とで構成されている。ここで、第1弁体42は、中空部34内で上下に移動して弁座43を開閉するが、第1弁体42の下方の移動はリテーナ44によって所定の範囲に制限される。なお、リテーナ44は止め輪45によって支持されている。第1ばね46の下端部はプラグ部材39によって支持され、第1ばね46の上端部は第1弁体42を支持している。このため、第1弁体42は第1ばね46によって常時上向きに付勢されている。なお、第1ばね46は、プラグ部材39の突起部39aによって横方向に位置決めされ、中空部34と同心状に配置されている。
かくして、第1バルブ機構では、第2バルブ機構が開弁されている場合において、供給油圧が所定の設定圧(以下「開弁圧」という。)未満であれば、第1弁体42は第1ばね46の付勢力により、弁座43(テーパ部43b)に着座させられ、弁座43(中空部34)が閉じられる。他方、供給油圧が開弁圧以上であれば、第1弁体42は供給油圧により第1ばね46の付勢力に抗して下方に移動させられ、弁座43(中空部34)が開かれる。
第2バルブ機構は、形状記憶合金でコイル状に形成され上下方向に伸縮する第2ばね48(SMAスプリング)と、フランジ付き容器状(洗面器状ないしはシルクハット状)の閉止部材49と、上端が閉止され下端が開放された略円筒形ないしはボトルキャップ状の蓋部材50(キャップ)と、付勢ばね51(バイアススプリング)とで構成されている。第2ばね48の下側の輪状コイル端は、弁座43の小径円筒部43aの外周面ないしテーパ部43bの外周面に当接し、したがって第2ばね48は弁座43によって支持されている。
閉止部材49は、第2ばね48の上側の輪状コイル端を閉止するように、第2ばね48の上部に取り付けられている(円筒部がコイル内円筒状空間部に嵌入されている)。蓋部材50は、その開放された下端側の部分(ほぼ半分)が本体部31の第1開口部36に嵌入され、閉止された上端側の部分(ほぼ半分)がオイル通路8内に突出している。そして、蓋部材50のオイル通路8内に突出している部分の周壁には、オイル通路8に開口し、蓋部材50内にオイルを流通させるための複数(例えば4つ)の穴部50aが形成されている。また、付勢ばね51は、蓋部材52の閉止された上端部と閉止部材49の底部との間に配置され、閉止部材49を常時下方に付勢している。なお、蓋部材50は、第2ばね48、閉止部材49及び付勢ばね51を覆っている。
第2ばね48は、例えばNi−Ti系合金等の形状記憶合金で形成されたつるまきばね(コイルスプリング)であり、形状回復温度(変態温度)ないしは形状回復温度範囲より高温の状態(以下「高温状態」という。)にあるときには、その結晶構造がオーステナイト相となり、比較的大きい横弾性係数ないしは剪断弾性係数を備えた状態(以下「復元状態」という。)となる。他方、第2ばね48が形状回復温度ないしは形状回復温度範囲より低温の状態(以下「低温状態」という。)にあるときには、その結晶構造がマルテンサイト相となり、第2ばね48はその横弾性係数が低下し、復元状態に比べて非常に圧縮変形しやすい状態(以下「易変形状態」という。)となる。なお、第2ばね48は、易変形状態で圧縮されて変形したときには、再び高温状態とならない限りこの変形が維持されるように形成されているのが好ましい。
付勢ばね51の付勢力は、高温状態では復元状態となってその付勢力が大きくなっている第2ばね48が伸長して閉止部材49を蓋部材50内の上側の部位(図12参照)に位置させることができる一方、低温状態では易変形状態となって付勢力が小さくなっている第2ばね48を最大限に圧縮して閉止部材49を蓋部材50内の下側の部位(図11参照)に位置させることができるように、好ましく設定されている。
かくして、高温状態において第2ばね48が伸長しているときには、該第2ばね48はコイル周部に隙間(ピッチ)が存在する螺旋状ないしはつるまき状となる。このとき、オイル通路8と弁座43とが上記隙間を介して連通し、第2バルブ機構は開弁状態となる。他方、低温状態において付勢ばね51によって第2ばね48が最大限に圧縮されているときには、該第2ばね48はコイル周部に隙間が存在しない円筒状となり、閉止部材49と協働してオイル通路8と弁座43との連通を遮断し、第2バルブ機構は閉弁状態となる。つまり、第2ばね48は第2バルブ機構の弁体(第2弁体)として機能する。
以下、図11〜図13を参照しつつ、図7〜図10に示す実施形態1に係るオイルジェット30Aの動作ないしは機能を具体的に説明する。
図11に示すように、内燃機関1の冷間時、すなわち第2ばね48が低温状態であるときには、第2ばね48はその横弾性係数が低下して易変形状態にある。このため、付勢ばね51の付勢力により、第2ばね48は最大限に圧縮され、上下方向に密着してコイル周部に隙間が存在しない円筒状となる。そして、この円筒状の第2ばね48の上端部は閉止部材49によって閉止され、下端部は弁座43の小径円筒部43aないしテーパ部43bの外周面に当接ないしは密着している。
このため、第2ばね48及び閉止部材49によって、オイル通路8と弁座43との連通が遮断され、オイル通路8から中空部34にエンジンオイルが流入することができない状態となる。この状態においては、供給油圧が開弁圧以上となっても、オイル通路8から中空部34へはエンジンオイルは流入することができない。このため、オイルジェット30Aのノズル32からピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射は行われず、内燃機関1の冷間時におけるピストン4の過冷却が防止される。
図12に示すように、内燃機関1の温間時すなわち第2ばね48が高温状態にあるときには、第2ばね48はその横弾性係数が増加して復元状態となる。このため、第2ばね48は、付勢ばね51の付勢力に抗して伸長し、閉止部材49を蓋部材50内の上部の部位に押し上げる。その結果、第2ばね48はコイル周部に隙間が存在する螺旋状ないしはつるまき状となり、オイル通路8と弁座43とが上記隙間を介して連通し、第2バルブ機構は開弁状態となる。
このように第2バルブ機構が開弁されていても、供給油圧が開弁圧未満であれば、第1ばね46の付勢力により第1弁体42が弁座43(テーパ部43b)に押し付けられ、弁座部43に着座させられる。この場合、図12にその状態が示されているように、中空部34は閉止されているので、オイル通路8からノズル32へはエンジンオイルが供給されず、ピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射は行われない。
図13に示すように、内燃機関1の温間時すなわち第2バルブ機構が開弁状態にあるときにおいて、供給油圧が開弁圧以上であれば、この供給油圧により、第1ばね46の付勢力に抗して、第1弁体42が下向きに適度に移動させられ、弁座43(テーパ部43b)から離反させられ、第1バルブ機構は開弁状態となる。なお、第1弁体42の下向きの移動は、リテーナ44によって制限される。このとき、第1バルブ機構と第2バルブ機構とがともに開弁状態であるので、オイル通路8からノズル32へエンジンオイルが供給され、ピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射が行われる。これにより、ピストン4の過加熱が防止される。
このオイルジェット30Aでは、前記のとおり、蓋部材50の上側のほぼ半分の部分がオイル通路8内に突出し、この部分にエンジンオイルを流通させるための複数の穴部50aが形成されている。このため、内燃機関1の運転時には、オイル通路8内のエンジンオイルが、該エンジンオイルの流れ方向にみて上流側の穴部50aから蓋部材50内に流入し、下流側の穴部50aからオイル通路8に流出する。つまり、オイル通路8内を流れるエンジンオイルの一部は蓋部材50内の空間部を流通する。
そして、蓋部材50内の空間部には、形状記憶合金で形成された感熱部である第2ばね48が配置されているので、内燃機関1の運転時には、蓋部材50内の空間部を流通するエンジンオイルの一部は第2ばね48の周囲を流れる。つまり、第2ばね48は、オイル通路8内のエンジンオイルの流れと直接接触しているのとほぼ同様の状態となる。このため、第2ばね48の温度は、オイル通路8内のエンジンオイルの温度の変化にほぼ応答遅れなく追従する。したがって、第1バルブ機構の開閉状態にかかわらず、内燃機関1の始動後におけるエンジンオイルの温度上昇に対する第2バルブ機構の応答性ないしは感度が非常に良好となる。このため、ピストン4の過冷却を防止する動作形態と、過加熱を防止する動作形態とをエンジンオイルの温度ないしは内燃機関1の温度に応じた適切なタイミングで迅速に切り換えることができる。
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係るオイルジェットを説明する。ただし、実施形態2に係るオイルジェット30Bの構成は、付勢ばね51を設けない点等を除けば、図7〜図10に示す実施形態1に係るオイルジェット30Aの構成とほぼ同一である。そこで、以下では主として実施形態1に係るオイルジェット30Aとの相違を説明する。
実施形態2に係るオイルジェット30Bでは、閉止部材49を介して第2ばね48を常時下向きに付勢する付勢ばね51は設けられていない。このため、内燃機関1の冷間時すなわち第2ばね48が低温状態であるときには、蓋部材50内の空間部における第2ばね48の外側と内側との間の油圧差、すなわち蓋部材50内の空間部におけるエンジンオイルの流れ方向にみて第2ばね48の上流側と下流側の間の油圧差ないしは油圧降下でもって閉止部材49に下向きの力を加え、閉止部材49を下向きに移動させて第2ばね48をコイル周面に隙間が存在しない円筒状に圧縮するようにしている。なお、第2ばね48の低温状態における付勢力は、第2ばね48の外側と内側との間の油圧差に対応する力より小さくなるように好ましく設定される。その他の点については、実施形態1に係るオイルジェット30Aと同様である。
以下、図14〜図17を参照しつつ、実施形態2に係るオイルジェット30Bの動作ないしは機能を具体的に説明する。
なお、内燃機関1が運転を停止した直後は、第2ばね48は高温状態すなわち復元状態であるので、第2バルブ機構は開弁状態にある。この後、内燃機関1の温度が低下して、第2ばね48が低温状態となっても、第2弁体48には重力及び閉止部材49のわずかな重量を除けば下向きの力はかからないので、第2弁体48は伸長した状態を維持する。すなわち、内燃機関1が停止しているときには、たとえ冷機状態であっても、第2バルブ機構は開弁状態にある。以下では、この状態から内燃機関1を始動させる場合におけるオイルジェット30Bの動作を説明する。
図14に示すように、冷機状態で第2バルブ機構が開弁状態にあるときに内燃機関1を始動させた場合、始動直後にほぼ瞬間的にエンジンオイルが、第2ばね48の周面の隙間を通過する。その結果、オイル通路8内の低温で粘度が高いエンジンオイルの圧力(供給油圧)が第1弁体42に作用し、第1バルブ機構は開弁状態となる。このため、オイル通路8内のエンジンオイルは中空部34を流通してノズル32の油路41に流れる。
このように、低温で粘度が高いエンジンオイルが第2ばね48の周面の隙間を通過すると、エンジンオイルの圧力降下等に起因して第2ばね48の内側の油圧は第2ばね48の外側の油圧よりもかなり低くなる。ここで、閉止部材49の上面には第2ばね48の外側の高い油圧が作用する一方、閉止部材49の下面には第2ばね48の内側の低い油圧が作用する。その結果、この油圧差により、閉止部材49には下向きの力が作用する。このとき、第2ばね48は低温状態すなわち易変形状態にあるので、第2ばね48の上向きの付勢力は非常に小さい。このため、閉止部材49は、下向きに移動して第2ばね48をその付勢力に抗して圧縮する。
かくして、図15に示すように、第2ばね48は最大限に圧縮され、上下方向に密着してコイル周部に隙間が存在しない円筒状となる。そして、この円筒状の第2ばね48の上端部は閉止部材49によって閉止され、下端部は弁座43の小径円筒部43aの外周面ないしテーパ部43bの外周面に当接ないしは密着しているので、第2バルブ機構は閉弁状態となる。なお、冷間時における第2ばね48は復元力が低いため温間時よりも縮みやすく、この縮み変形は復元しない。この状態においては、供給油圧が開弁圧以上となっても、オイル通路8から弁座43にエンジンオイルが流入することができない。このため、オイルジェット30Bのノズル32からピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射は行われず、内燃機関1の冷間時におけるピストン4の過冷却が防止される。
図16に示すように、内燃機関1の始動後、ある程度の時間が経過して内燃機関1が暖機状態となったとき、すなわち温間時には、オイル通路8内のエンジンオイルの温度が上昇し、これに迅速に追従して第2ばね48の温度が上昇する。そして、第2ばね48が高温状態となると、その横弾性係数が増加して復元状態となる。このため、第2ばね48はその大きい付勢力により、上向きに伸長して閉止部材49を上向きに移動させる。その結果、第2ばね48はコイル周部に隙間が存在する螺旋状ないしはつるまき状となり、オイル通路8と弁座43とが上記隙間を介して連通し、第2バルブ機構は開弁状態となる。なお、図16は、供給油圧が開弁圧未満である状態を示している。したがって、第2バルブ機構は開弁状態にあるが、第1バルブ機構が閉弁状態にあるのでオイル通路8からノズル32へエンジンオイルは供給されず、ピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射は行われない。
ここで、図17に示すように、供給油圧が開弁圧以上となったときには、この供給油圧により、第1ばね46の付勢力に抗して、第1弁体42が下向きに適度に移動させられて弁座43のテーパ部43bから離反させられる。このため、オイル通路8からノズル32へエンジンオイルが供給され、ピストン4の背面へエンジンオイルが噴射される。この状態では、エンジンオイルは温度が高く粘度が低い状態にあるので、蓋部材50内において第2ばね48の外側と内側との間にはさほど大きい油圧差は生じない。したがって、閉止部材49が油圧差によって下向きに移動することはない。かくして、内燃機関1の温間時におけるピストン4の過加熱が防止される。
実施形態2に係るオイルジェット30Bでも、内燃機関1の運転時には、蓋部材50内の空間部を流通するエンジンオイルは第2ばね48の周囲を流れ、第2ばね48の温度はオイル通路8内のエンジンオイルの温度の変化にほぼ応答遅れなく追従する。このため、実施形態1に係るオイルジェット30Aと同様に、ピストン4の過冷却を防止する動作形態と、過加熱を防止する動作形態とを、エンジンオイルの温度に応じた適切なタイミングで迅速に切り換えることができる。なお、実施形態2に係るオイルジェット30Bでは、付勢ばねを設けないので、実施形態1に係るオイルジェット30Aに比べて、構造を簡素化することができ、製造コストを低減することができる。
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係るオイルジェットを説明する。ただし、実施形態3に係るオイルジェット30Cの構成は、内燃機関1の冷間時に、第2ばね48を圧縮してコイル周部に隙間が存在しない円筒状とすることにより第2バルブ機構を閉弁させるのではなく、閉止部材49で弁座43を直接閉止することにより第2バルブ機構を閉弁させる点等を除けば、図7〜図10に示す実施形態1に係るオイルジェット30Aの構成とほぼ同一である。そこで、以下では主として実施形態1に係るオイルジェット30Aとの相違を説明する。
実施形態3に係るオイルジェット30Cでは、高温状態において第2ばね48が伸長しているときには、実施形態1に係るオイルジェット30Aと同様に、第2ばね48はコイル周部に隙間が存在する螺旋状ないしはつるまき状となる。このとき、オイル通路8と弁座43とが上記隙間を介して連通し、第2バルブ機構は開弁状態となる。
他方、低温状態において付勢ばね51によって第2ばね48が圧縮されているときには、閉止部材49の下面ないしは底面が弁座43の小径円筒部43aの上端部に当接ないしは密着して、小径円筒部43aの穴部を直接閉止する。これにより、オイル通路8と弁座43との連通が遮断され、第2バルブ機構は閉弁状態となる。なお、実施形態3に係るオイルジェット30Cでは、第2ばね48は、低温状態でも、上下方向に密着してコイル周部に隙間が存在しない円筒状となる必要はない。その他の点については、実施形態1に係るオイルジェット30Aと同様である。
以下、図18〜図20を参照しつつ、実施形態3に係るオイルジェット30Cの動作ないしは機能を具体的に説明する。
図18に示すように、内燃機関1の冷間時、すなわち第2ばね48が低温状態であるときには、第2ばね48はその横弾性係数が低下して易変形状態にある。このため、付勢ばね51の付勢力により、第2ばね48は容易に圧縮され、閉止部材49は下向きに移動して、その下面ないしは底面が弁座43の小径円筒部43aの上端部に当接ないしは密着して、小径円筒部43aの穴部を直接閉止する。この状態においても、依然閉止部材49は付勢ばね51によって下向きに付勢されているので、閉止部材49の下面は小径円筒部43aの上端部に密着する。これにより、オイル通路8と弁座43との連通が遮断され、第2バルブ機構は閉弁状態となる。この場合、オイルジェット30Cのノズル32からピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射は行われず、内燃機関1の冷間時におけるピストン4の過冷却が防止される。
図19に示すように、内燃機関1の温間時すなわち第2ばね48が高温状態にあるときには、第2ばね48はその横弾性係数が増加して復元状態となる。このため、第2ばね48は、付勢ばね51の付勢力に抗して伸長し、閉止部材49を蓋部材50内の上部の部位に押し上げる。その結果、第2ばね48はコイル周部に隙間が存在する螺旋状ないしはつるまき状となり、オイル通路8と弁座43とが上記隙間を介して連通し、第2バルブ機構は開弁状態となる。このように第2バルブ機構が開弁されていても、供給油圧が開弁圧未満であれば、第1ばね46の付勢力により第1弁体42が弁座43(テーパ部43b)に押し付けられ、弁座部43に着座させられる。このため、オイルジェット30Cからエンジンオイルは噴射されない。
図20に示すように、内燃機関1の温間時すなわち第2バルブ機構が開弁状態にあるときにおいて、供給油圧が開弁圧以上であれば、この供給油圧により、第1ばね46の付勢力に抗して、第1弁体42が下向きに適度に移動させられ、弁座43(テーパ部43b)から離反させられ、第1バルブ機構は開弁状態となる。このとき、第1バルブ機構と第2バルブ機構とがともに開弁状態であるので、オイル通路8からノズル32へエンジンオイルが供給され、ピストン4の背面へのエンジンオイルの噴射が行われ、ピストン4の過加熱が防止される。
実施形態3に係るオイルジェット30Cでも、内燃機関1の運転時には、蓋部材50内の空間部を流通するエンジンオイルは第2ばね48の周囲を流れ、第2ばね48の温度はオイル通路8内のエンジンオイルの温度の変化にほぼ応答遅れなく追従するので、実施形態1に係るオイルジェット30Aと同様に、ピストン4の過冷却を防止する動作形態と、過加熱を防止する動作形態とをエンジンオイルの温度に応じた適切なタイミングで迅速に切り換えることができる。
(実施形態4)
図示していないが、実施形態4に係るオイルジェットは、基本的には、図18〜図20に示す実施形態3に係るオイルジェット30Cと同様であるが、閉止部材49を介して第2ばね48を常時下向きに付勢する付勢ばね51は設けられていない。このため、内燃機関1の冷間時すなわち第2ばね48が低温状態であるときには、実施形態2に係るオイルジェット30Bと同様に、蓋部材50内の空間部における第2ばね48の外側と内側との間の油圧差、すなわち蓋部材50内の空間部におけるエンジンオイルの流れ方向にみて第2ばね48の上流側と下流側の間の油圧差でもって閉止部材49に下向きの力を加え、閉止部材49を下向きに移動させる。そして、閉止部材49の下面ないしは底面を弁座43の小径円筒部43aの上端部に当接ないしは密着させ、小径円筒部43aの穴部を直接閉止することにより、第2バルブ機構を閉弁させる。
その他の点については、実施形態3に係るオイルジェット3Cないしは実施形態2に係るオイルジェット30Bと同様である。つまり、実施形態4に係るオイルジェットは、実施形態3に係るオイルジェット30Cに実施形態2に係るオイルジェット30Bの特徴を組み入れたものであるといえる。
実施形態4に係るオイルジェットにおいても、実施形態3に係るオイルジェット30Cないしは実施形態2に係るオイルジェット30Bと同様に、内燃機関1の冷間時にはピストン4の過冷却を防止することができ、温間時にはピストン4を有効に冷却することができ、かつ、ピストン4の過冷却を防止する動作形態と過加熱を防止する動作形態とをエンジンオイルの温度に応じた適切なタイミングで切り換えることができる。
1 内燃機関(エンジン)、2 シリンダブロック、3 シリンダ、4 ピストン、5 コネクチングロッド、6 クランクピン、7 クランクシャフト、8 オイル通路(メインギャラリ)、9 連通口、10 オイルジェット、11 中空部、12 本体部、13 ノズル、14 弁座部(バルブシート)、15 弁体(ボールバルブ)、16 ばね、17 プラグ部材、18 オイルジェット本体、19 ノズル、20 ボールバルブ、21 スプリング、22 スプリング固定プラグ、23 バルブ動作制御装置、24 オイルジェットボデー、25 パイプ、26 チェックボール、27 スプリング、28 チェックボールシート、29 スペーサ、30A オイルジェット、30B オイルジェット、30C オイルジェット、31 本体部、32 ノズル、33 突出部、34 中空部、35 ボルト穴、36 第1開口部、37 第2開口部、38 遷移部、39 プラグ部材、39a 突起部、40 オイル流出穴、41 油路、42 第1弁体、43 弁座、43a 小径円筒部、43b テーパ部、43c 大径円筒部、44 リテーナ、45 止め輪、46 第1ばね、48 第2ばね、49 閉止部材、50 蓋部材、50a穴部、51 付勢ばね。

Claims (6)

  1. 内燃機関のオイル通路に開口し該オイル通路からオイルが流入する略円柱形の中空部と、上記中空部からオイルを流出させるオイル流出穴とが形成された本体部と、
    上記本体部に結合され上記オイル流出穴と連通するノズルと、
    それぞれ上記中空部内に収容された、球形の第1弁体と、上記第1弁体によって開閉される弁座と、上記第1弁体を上記弁座が閉じる方向に付勢する第1ばねとを有する第1バルブ機構と、
    上記中空部内におけるオイルの流れ方向にみて上記第1バルブ機構より上流側に配置され、上記オイル通路内のオイルの温度が低いときには上記オイル通路と上記弁座との連通を遮断する一方、該オイルの温度が高いときには上記オイル通路と上記弁座とを連通させる第2バルブ機構とを備えていて、
    上記第2バルブ機構は、上記オイル通路内を流れるオイルの少なくとも一部が該第2バルブ機構の感温部を通過して流れるように形成されていることを特徴とする内燃機関用のオイルジェット。
  2. 上記第2バルブ機構は、
    形状記憶合金でコイル状に形成され、その一方の輪状コイル端が上記第1弁体と反対側で上記弁座に当接し、上記中空部の中心軸の伸びる方向に伸縮する、上記感温部をなす第2ばねと、
    上記第2ばねに、上記一方の輪状コイル端と反対側の輪状コイル端を閉止するように取り付けられた閉止部材と、
    上記第2ばね及び上記閉止部材を覆うようにして、上記中空部の上記オイル通路への開口部に取り付けられる一方、上記オイル通路に開口する穴部が形成された蓋部材とを有していて、
    上記第2ばねは、形状記憶合金の形状回復温度以上の温度では付勢力が増加して伸長しコイル周部に隙間が存在する螺旋状となる一方、上記形状回復温度未満の温度では付勢力が低下し、該第2ばねを圧縮する方向の外力により圧縮されてコイル周部に隙間が存在しない円筒状となり上記閉止部材と協働して上記オイル通路と上記弁座との連通を遮断することを特徴とする、請求項1に記載のオイルジェット。
  3. 上記第2バルブ機構は、上記蓋部材と上記閉止部材との間に配置され、上記閉止部材を、上記第2ばねを圧縮する方向に付勢し、上記形状回復温度未満の温度で上記第2ばねを圧縮する付勢ばねを備えていることを特徴とする請求項2に記載のオイルジェット。
  4. 上記第2バルブ機構は、
    形状記憶合金でコイル状に形成され、その一方の輪状コイル端が上記第1弁体と反対側で上記弁座に当接し、上記中空部の中心軸の伸びる方向に伸縮する、上記感温部をなす第2ばねと、
    上記第2ばねに、上記一方の輪状コイル端と反対側の輪状コイル端を閉止するように取り付けられた閉止部材と、
    上記第2ばね及び上記閉止部材を覆うようにして、上記中空部の上記オイル通路への開口部に取り付けられる一方、上記オイル通路に開口する穴部が形成された蓋部材とを有していて、
    上記第2ばねは、形状記憶合金の形状回復温度以上の温度では付勢力が増加して伸長し上記閉止部材を上記弁座から離反させる一方、上記形状回復温度未満の温度では付勢力が低下し、該第2ばねを圧縮する方向の外力により圧縮されて上記閉止部材に上記弁座を閉止させることを特徴とする、請求項1に記載のオイルジェット。
  5. 上記第2バルブ機構は、上記蓋部材と上記閉止部材との間に配置され、上記閉止部材を、上記第2ばねを圧縮する方向に付勢し、上記形状回復温度未満の温度では上記第2ばねを圧縮する付勢ばねを有していて、
    上記第2ばねの温度が形状回復温度以上のときは、上記第2ばねが、その付勢力が増加し、上記付勢ばねの付勢力に抗して上記閉止部材を上記弁座から離反させて上記弁座を開放し、
    上記第2ばねの温度が形状回復温度未満のときは、上記付勢ばねが、上記第2ばねの付勢力に抗して上記閉止部材を上記弁座に当接させて該弁座を閉止することを特徴とする、請求項4に記載のオイルジェット。
  6. 上記中空部は、該中空部の中心軸の伸びる方向にみて、上記オイル通路への開口部と反対側の端部に開口する第2の開口部を有し、
    上記第2の開口部を閉止するとともに、上記第1ばねの端部を支持するプラグ部材が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載のオイルジェット。
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