JP2011012215A - セラミックス複合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成でありながら、発光強度に優れ、かつ特定の物性の制御が比較的容易な発光体であるセラミックス複合体を提供する。
【解決手段】Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、Al2O3とAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、蛍光体相とマトリックス相を構成する元素以外の1または複数の不純物を有するセラミックス複合体であって、蛍光体相は、セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めること、Ceの含有量がYAG中のYに対して原子比で0.005以上0.08以下であること、およびセラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることを特徴とするセラミックス複合体。
【選択図】図1
【解決手段】Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、Al2O3とAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、蛍光体相とマトリックス相を構成する元素以外の1または複数の不純物を有するセラミックス複合体であって、蛍光体相は、セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めること、Ceの含有量がYAG中のYに対して原子比で0.005以上0.08以下であること、およびセラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることを特徴とするセラミックス複合体。
【選択図】図1
Description
本発明は、高輝度白色LED等に使用される光変換用のセラミックス複合体に関する。
白色LEDは、白熱電球などに比べて発光効率が良く、長寿命かつ装置の小型化や消費電力の削減が可能であり、近年特に開発が進められている。白色光を発生させる方法にはRGB LEDを使用したマルチチップ方式やRGB蛍光体を紫外線LEDで励起する方式等いくつかあるが、2つ以上の波長の光、例えば青色LEDと黄色を発生する蛍光体層を組み合わせて白色光を得る方法が現在の主流となっている。
蛍光体層に求められる特性として前述の青色と黄色を組み合わせる場合では、白色光を得るための青色光の透過量と黄色蛍光量のバランス制御、黄色蛍光波長の制御、高い変換効率と耐熱、耐候性、放熱性等がある。青色透過/黄色蛍光のバランスは、主に蛍光体層中に含まれる発光元素の量で制御され、具体的には蛍光体層の厚さ、蛍光体層中の蛍光体相含有量、蛍光体中の発光元素の含有量で制御される。黄色蛍光波長は発光元素や固溶元素の種類や量で制御される。
また、従来の蛍光体層は蛍光体粉末を有機バインダーによって固定したものが使用されているが、有機バインダーを用いることで耐久性や耐熱性、発光強度の特性が十分でなかった。そこで、無機材料のみで蛍光体層を作製する方法が研究されている。
例えば特許文献1には、励起光から赤色蛍光を効率よく発し、得られた赤色蛍光と励起光とをむらなく効率的に混色することができ、有機材料のような劣化等のない、高輝度で、耐熱性、耐久性に優れた光変換部材として、単一金属酸化物および複合金属酸化物から選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物相が連続的かつ三次元的に相互に絡み合って形成されている凝固体からなり、この凝固体中の酸化物相のうち少なくとも1つはクロムで付活されたAl2O3相である光変換用セラミック複合体が記載されている。また、発光素子と少なくともセリウムで付活されたガーネット型構造を有する蛍光体粉末を含有するコーティング層と光変換用セラミック複合体からなる発光装置が記載されている。
また特許文献2には、蛍光体粒子の複合構造体がマトリックスに埋め込まれ、多結晶セラミック構造の蛍光体、及び発光ダイオード(LED)を有する多結晶セラミック構造の蛍光体を具備する発光素子として、マトリックスが多結晶セラミックアルミナ材料を有するセラミック複合構造体を用いること、このセラミック複合構造体は、蛍光体粒子及び第2セラミック粒子の割合と、セラミック複合構造体の粒子の粒径と、セラミック複合構造体の粒子の屈折率の差と、多結晶蛍光体含有セラミック複合構造体の気孔率とのうちの少なくとも1つを変えることで光拡散特性を調整する方法を可能にできること、が記載されている。
特許文献1には、少なくとも2つ以上の酸化物相が連続的にかつ三次元的に相互に絡み合って形成されている凝固体からなり、この凝固体中の酸化物相のうち少なくとも1つはクロム(Cr)で付活されたAl2O3相であること、凝固体をコーティングする層がセリウム含有のY3Al5O12結晶相であること、凝固体の厚さが1000μmであること、赤色を発光するため凝固体にCrを付活することで、青と黄にさらに赤色を加えて色むらのない均質な白色得られることが記載されている。
しかしながら、この構造では3つの波長の光を最適に制御することが必要となり、材料設計が難しく、このため熱伝導率などの各種物性の制御も複雑になる。また、Crを含有するアルミナ相とYAG:Ceの複合体を蛍光体層に使用しているので、アルミナ中のCrがYAG:Ceの蛍光波長である500〜600nmに吸収を有するため、YAG:Ceの発光強度を低下させてしまうという懸念がある。
特許文献2には、CeがドープされたYAGの蛍光体を有する多結晶セラミックが非発光多結晶アルミナを有するセラミックマトリックスに埋め込まれていること、YAGとCeは、Y2.94Ce0.06Al5O12からY2.7Cee0.3Al5O12の組成範囲であること、セラミックマトリックスが、80vol%以上99.99vol%のアルミナと0.01vol%以上20vol%以下の蛍光体とを有すること、蛍光体の厚さが200μm以上1000μm以下であることが記載されている。
しかしながら、このような構成においては、マトリックス層が80vol%以上と多いため、蛍光体層を200μmから1000μmと厚くするか、あるいはCeの含有量を高くする必要がある。すると、蛍光体層が厚いことにより蛍光成分が発光素子の側方から漏れてしまい色ムラの原因になる、あるいはCe含有量が過度に多いことでYAGに固溶できないCeの偏析により蛍光特性が低下する、等の不具合が生ずるおそれがある。この他マトリックス層の割合が増加すると、マトリックスでの僅かな光吸収の影響によっても発光強度が低下することが懸念される。
本発明の一態様のセラミックス複合体は、Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、Al2O3とAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、蛍光体相とマトリックス相を構成する元素以外の1または複数の不純物を有するセラミックス複合体であって、蛍光体相は、セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めること、Ceの含有量が前記YAG中のYに対して原子比で0.005以上0.08以下であること、およびセラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることを特徴とする。このような構成をとることで、単純な構成でも安定した発光強度を得るセラミックス複合体を得ることが可能となる。
また、セラミックス複合体は、マトリックス相がAl2O3であり、不純物が単体で0.2ppm以上5ppm以下のCrを含むことを特徴とする。このような構成をとることで、セラミックス複合体の物性を、比較的容易に制御することが可能となる。
本発明によれば、簡単な構成でありながら、発光強度に優れ、かつ特定の物性の制御が比較的容易な発光体であるセラミックス複合体を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施の形態により、詳細に説明する。
本発明の実施の形態のセラミックス複合体は、Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、Al2O3とAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、蛍光体相とマトリックス相を構成する元素以外の1または複数の不純物を有するセラミックス複合体であって、蛍光体相は、セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めること、Ceの含有量が上記YAG中のYに対して原子比(Ce/Y)で0.005以上0.08以下であること、およびセラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることを特徴とする。なお、本実施の形態のセラミックス複合体において、上記マトリックス相、蛍光体相、不純物以外の物質や、気孔等が含有されていても構わない。
本実施の形態によれば、Al2O3相、AlN相の少なくとも何れか一方の複合体をマトリックス相に使用するので、有機バインダー等を用いる方法に比べて、耐熱性、耐候性、放熱性に優れた蛍光体層を容易に作製が可能である。
Al2O3相、AlN相の少なくとも何れか一方、もしくはその混合物をマトリックス相に使用する場合は、Al2O3相、AlN相単体の熱伝導率をそれぞれの混合比で調整して、所望の熱伝導率を得ることが可能となり、材料設計のうえで適時調節してもよい。
本実施の形態では、Ceを含有するYAGからなる蛍光体相の占める割合が、セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めることが好ましく、21vol%以上50vol%以下がさらに好ましい。
Ceを含有するYAGからなる蛍光体相の占める割合が、セラミックス複合体の20vol%未満では、発光強度、色むらともによい特性が得られず好ましくない。また52vol%を超えると、同じく発光強度が低下するのでこれも好ましくない。
このように、蛍光体相の体積比率を最適化することで、青色透過/黄色蛍光のバランスおよび黄色蛍光波長の制御には有効だが温度特性の低下要因となるLu、Sc、La、Gd、Tb、Eu、Sm、等の元素を添加することなしに、簡易に所望の白色を得ることができる。
本実施の形態では、白色光を得るためには、Ceの含有量はYに対して原子比で、0.005以上0.08以下であることが好ましく、0.01以上0.05以下がさらに好ましい。
Ceの含有比が0.005よりも少ないと短波長寄りの蛍光を発する。このため、白色LEDとして実使用される7000K以下の白色光を得るためには、温度特性の低下要因となるGd等の蛍光波長を長波長シフトさせる元素の添加が必要となり、高出力での使用時発光強度が低下するため、好ましくない。しかし、Ceの含有比が0.08よりも多いとYAGからなる蛍光体相に固溶できないCeが形成する不純物相の割合が増加し、発光強度が低下するのでこちらも好ましくない。
また、本発明のもう一つの実施の形態において、セラミックス複合体は、マトリックス相がAl2O3であり、不純物が単体で0.2ppm以上5ppm以下のCrを含むことが好ましい。
蛍光体相のYAGや、マトリックス相のAl2O3やAlNにはもともと各種の不純物元素が含まれている。特に、CrやFeなどは、YAG、Al2O3、AlNに固溶し可視域に吸収を示して蛍光特性が低下する要因となるため、本来できるだけ少ないことが好ましい。
発光強度の向上のためには、これらの不純物はできるだけ少ないほうが望ましいが、原料そのものの含有量レベルと製造プロセスにおける純化レベルから、実用上は1ppm前後に抑えるのが、発光特性とコストとの兼ね合いで妥当とされる。
一方で、発光特性や発光強度の低下という点では、これらの不純物元素は5ppm以下に抑えることで、著しい特性劣化による悪影響はないと考えられる。そして、この影響の少ない5ppm以下の範囲において、Crの濃度と発光ピーク波長に相関があることから発光ピーク波長を制御する一手法として、適切な濃度範囲におけるCr濃度の調製が有効である。
マトリックス相が100%のAl2O3の場合においては、Crを0.2ppm以上5ppm以下の範囲で制御することで、発光ピーク波長を変化させることが可能である。0.2ppm未満は、濃度制御自体が困難であるため、発光ピーク波長の制御のうえでは好ましくない。また、5ppm以上では、発光強度を低下させてしまうばかりでなく、発光ピーク波長の制御も困難になり、こちらも好ましくない。
なお、添加するCr濃度の低濃度領域での制御性を考慮して下限は0.5ppm以上が、Crによる特性低下の影響をできるだけ少なくする観点から上限は1.2ppm以下がさらに好ましい。
本発明の実施の形態では、セラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下がさらに好ましい。なお、ここで主平面とは、セラミックス複合体の外形を規定する平面のうち、最も広い面積を有する面を意味する。
蛍光体層が30μmよりも薄いと、自立体形成が困難になり好ましくない。しかし200μmよりも厚いと、今度は作製した蛍光体層側面からの黄色蛍光の色もれが顕著になり色ムラの原因となるのでこれも好ましくない。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により制限されるものではない。
[実施例]
[実施例]
平均粒径0.3μm、純度99.9%の酸化セリウム、平均粒径0.9μm、純度99.9%の酸化イットリウム粉末、平均粒径0.3μm、純度99.9%の酸化アルミニウム粉末、平均1.2μm、純度99%の窒化アルミニウム粉末にエタノール、アクリル系バインダーを添加し酸化アルミニウムボールを用いたボールミルによって20時間の混合を行って、得られたスラリからスプレードライヤを用いて平均粒径50μmの造粒粉を作製した。
造粒粉は10MPaで一軸金型成形、100MPaで冷間静水圧成形(CIP)を行って成形体とした。得られた成形体を、大気中600℃で脱脂後、真空雰囲気下(YAG:Ce/Al2O3)あるいは窒素雰囲気下(YAG:Ce/AlN、YAG:Ce/(Al2O3+AlN))で焼結した。
得られた焼結体に対して、アルキメデス法により嵩密度(JIS C 2141)を測定後、その一部を粉砕し、乾式自動密度計(島津製作所製アキュピックII 1330)にて、真密度を測定した。また、一部を洗浄後、Y、Al、Ce、Cr、Fe濃度をICP発光分光分析法にて、O、N濃度を酸素窒素同時分析装置にて測定した。また、一部を粉末X線回析により、結晶相を調査した。焼結体の密度、酸素、窒素、Y濃度、Al濃度およびCe濃度、結晶相の測定結果をもとに複合体中のYAG:Ce含有量およびマトリックス相のAl2O3およびAlNの割合(vol%)を計算した。このときYAG:Ce、Al2O3、AlNの密度は、それぞれ4.55、3.99、3.24g/cm3として計算に使用した。
表1に作製したCe/Y原子比、セラミックス複合体中のYAG:Ce含有量、マトリックス相中のAl2O3、およびAlNの含有量、セラミックス複合体中のCr濃度、および参考としてセラミックス複合体中のFe濃度と、得られた焼結体の一部をφ10×2mmに加工後、レーザフラッシュ法により熱伝導率を測定した結果を示す。なお、熱伝導率は放熱効果の点から、18W/(m・K)以上を目標とし、60W/(m・K)より大きい場合を○(良)、18W/(m・K)以上60W/(m・K)以下を△(可)、18W/(m・K)未満を×(不可)とした。
図1は、セラミックス複合体の光特性の測定を説明する概略図である。得られた焼結体を所定形状(□7.5mm×0.1tmm)の試料に加工後、図1に示す光学系にて試料10発光強度の測定を実施した。なお、励起光には473nm青色LD12を使用し、発光を積分球14にて集光後、分光器(オーシャンオプティクス社製USB4000 ファイバマルチチャンネル分光器)16を用いてスペクトル測定した。得られたスペクトルから発光ピーク波長および吸収量で規格化した発光強度を算出した。
なお、発光強度は市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトロニクス製 P46−Y3)の測定結果を100とした。それぞれの発光ピーク波長および発光強度の測定値を表1に示す。発光ピーク波長に関しては、545nm以上565nm未満を○(良)、540nm以上545nm未満または565nm以上570nm未満を△(可)、540nm未満または570nm以上を×(不可)とした。また、発光強度に関しては、105より大きい場合を○(良)、95以上105以下を△(可)、95未満を×(不可)とした。
図2は、セラミックス複合体の構造と、光特性を測定する測定器との配置図である。得られた焼結体を□1mm×0.03〜3mmの試料20に加工後、青色LED素子(発光領域:□1mm、発光波長:@460nm)22上にシリコーン樹脂で固定し、図2に示す様に素子上方から色彩照度計(コニカミノルタ製CL−200)24にて色度を測定した。このとき、焼結体の厚みを0.01mm刻みに変化させ、色度が黒体放射軌跡に最も近づいたときの値を表1に示す。また、このときLED素子の側方より、色ムラを観察し、市販のYAG:Ce蛍光体(化成オプトロニクス製 P46−Y3)の測定結果を基準(可:△)とし、○(良)、△(可)、×(不可)の3段階に区別した。
発光ピーク波長、発光強度、色むら、熱伝導率の各項目について、○(良)が3個以上の場合は総合評価を○(良)、×(不可)が1個でもある場合は×(不可)、その他を△(可)と区別して表1に示す。表1の結果から、本発明における条件では、要求される発光ピーク波長を、高い発光強度で得ることが可能となり総合評価が良好であることがわかる。また、実施例12〜15の結果で示されるように、マトリックス相が100%のAl2O3においては、5ppm以下のCr濃度に応じて発光ピーク波長が変化することから、Cr濃度による蛍光体相の特性制御も可能としている。
10 試料
12 青色LD
14 積分球
16 分光器
20 試料
22 青色LED素子
24 色彩照度計
12 青色LD
14 積分球
16 分光器
20 試料
22 青色LED素子
24 色彩照度計
Claims (2)
- Ceを含有するYAGからなる蛍光体相と、Al2O3とAlNの少なくとも一方からなるマトリックス相と、前記蛍光体相と前記マトリックス相を構成する元素以外の1または複数の不純物を有するセラミックス複合体であって、前記蛍光体相は、前記セラミックス複合体の20vol%以上52vol%以下を占めること、前記Ceの含有量が前記YAG中のYに対して原子比で0.005以上0.08以下であること、および前記セラミックス複合体の主平面に対して垂直方向の厚みが30μm以上200μm以下であることを特徴とするセラミックス複合体。
- 前記マトリックス相がAl2O3であり、前記不純物は単体で0.2ppm以上5ppm以下のCrを含むことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス複合体。
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