JP2011009415A - 薄膜トランジスタ搭載基板、その製造方法及び画像表示装置 - Google Patents

薄膜トランジスタ搭載基板、その製造方法及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】活性層として用いた酸化物薄膜の安定化と高品質化を実現した薄膜トランジスタをプラスチック基板上に搭載した薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック基板10の上又はその上方に活性層となるアモルファス酸化物薄膜13を形成する工程と、少なくとも活性層となる部分のアモルファス酸化物薄膜13に向けてパルスレーザー20を照射する工程とを少なくとも有する。パルスレーザー20の照射工程は、プラスチック基板10に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えず、且つアモルファス酸化物薄膜13をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する工程である。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜トランジスタ搭載基板、その製造方法及び画像表示装置に関し、さらに詳しくは、活性層として用いたアモルファス酸化物薄膜の安定性と高品質化を実現した薄膜トランジスタ搭載基板及びその製造方法等に関する。
薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)搭載基板は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイなどの駆動素子基板として用いられている。薄膜トランジスタには、逆スタガ型(トップゲート)やスタガ型(ボトムゲート)等の構造形態があり、また、薄膜トランジスタを構成する半導体薄膜としては、アモルファスシリコン半導体薄膜やポリシリコン半導体薄膜が一般的に適用されている。しかし、アモルファスシリコン半導体薄膜は、特性が安定しているものの移動度が小さく、一方、ポリシリコン半導体薄膜は、移動度が高いものの高温(例えば600℃以上)の熱処理工程を必要とする。
こうした中、有機EL素子や電気泳動素子を利用したフレキシブルな表示装置(有機ELディスプレイ、電気泳動ディスプレイ)についての研究開発が活発に行われている。フレキシブルな表示装置に使用するTFT搭載基板の構成部材として、耐熱性に乏しいが柔軟性に優れたプラスチック基板や汎用ガラス基板等が検討されている。表示装置を構成する基板には、駆動素子である薄膜トランジスタを直接形成するため、そうしたプラスチック基板には、薄膜トランジスタを製造する際の工程温度が加わる。しかしながら、プラスチック基板は耐熱性が乏しく、薄膜トランジスタの製造工程中に、プラスチック基板にダメージを与える高温の熱処理工程を含ませることはできない。
一方で、近年、酸化物薄膜を半導体膜に用いた薄膜トランジスタの研究が活発に行われている。特許文献1では、In、Ga、Znからなる酸化物(「IGZO」と略す。)の多結晶薄膜をTFTの半導体膜に用いた例が提案され、非特許文献1と特許文献2では、IGZOのアモルファス薄膜をTFTの半導体膜に用いた例が提案されている。これらのIGZOを半導体膜に用いたTFTは、室温での成膜が可能であり、プラスチック基板にダメージを与えることなく形成が可能であるとされている。
しかしながら、上記IGZO薄膜を半導体膜として用いたTFTは、連続通電時の閾電圧の変化が非常に大きく、安定性に欠けるという問題があった。こうした安定性の問題に対し、特許文献3では、IGZO半導体薄膜を保護膜で覆って安定性を高めることを提案している。一方、特許文献4では、IGZO半導体薄膜に対し、酸化ガス雰囲気中において200℃以上600℃以下、通常400℃の熱処理を行うことにより、安定性に欠けるという問題を解決できることを提案している
K.Nomura et.al., Nature, vol.432, p.488-492(2004)
特開2004−103957号公報 特表2005−88726号公報 特開2007−73705号公報 特開2007−311404号公報
しかしながら、上記特許文献3に記載の保護膜を設けただけでは連続通電時の閾電圧の変化が依然として存在し、安定性を向上させることはできていない。また、上記特許文献4の実施例では基板としてシリコンウエハを用いているので、200℃以上600℃以下(通常400℃)の熱処理を適用できるが、耐熱性の乏しいプラスチック基板を用いる場合には、基板への熱ダメージが大きく、こうした手段は適用できないという問題がある。例えば、フレキシブル基板として好ましく用いるポリエチレンナフタレート基板は、ガラス転移温度が150℃以下である。
本発明は、上記の現況に鑑みてなされたものであって、その目的は、活性層として用いた酸化物薄膜の安定化と高品質化を実現した薄膜トランジスタをプラスチック基板上に搭載した薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そうした製造方法で得られる薄膜トランジスタ搭載基板を提供することにある。また、本発明のさらに他の目的は、そうした薄膜トランジスタ搭載基板を有する画像表示装置を提供することにある。
本発明者は、アモルファス酸化物薄膜の安定化と高品質化についての研究過程で、成膜したアモルファス酸化物薄膜にパルスレーザーを照射したところ、プラスチック基板にダメージを与えることなく、高い安定性と高い品質を示す薄膜トランジスタ搭載基板が得られることを発見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法(請求項1)は、プラスチック基板の上又はその上方に活性層となるアモルファス酸化物薄膜を形成する工程と、少なくとも活性層となる部分のアモルファス酸化物薄膜に向けてレーザーを照射する工程と、を少なくとも有し、前記レーザー照射工程は、前記プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えず、且つ前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する工程であることを特徴とする。
この発明によれば、アモルファス酸化物薄膜に対し、そのアモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御するレーザー照射を行う。こうした工程を経たアモルファス酸化物薄膜は、結晶化により生じる粒界やドメイン界面に起因したキャリア密度の増大が抑制されて所定の比抵抗に制御された活性層となり、所望の移動度を示したことから、得られた薄膜トランジスタ搭載基板は、安定で高品質な駆動素子基板として利用できる。
このレーザー照射工程では、レーザー照射部に局部的に高いエネルギーが与えられるが、照射態様をパルス状等にして照射することにより高温になり難く、プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えない。そのため、耐熱性に乏しいプラスチック基板等を問題なく用いることができる。その結果、フレキシブルな表示装置に好ましく用いることができる薄膜トランジスタ搭載基板とすることができる。特にアモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままとしたことは、結晶化した場合に生じる粒径やドメイン界面密度の素子間のバラツキを抑制できるので、プラスチック基板を用いた大面積の表示装置のTFT基板として好ましい。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法の好ましい態様(請求項2)は、前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程後で前記レーザー照射工程前に、前記アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に金属膜を形成する工程をさらに有し、前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御するように構成する。
この発明によれば、アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に設けた金属膜の上からレーザーを照射するので、照射時に生じた熱が金属膜内を伝導して局部的に高温になることを防ぐことができ、その熱でアモルファス酸化物薄膜を加熱処理する。したがって、加熱した金属膜がアモルファス酸化物薄膜の比抵抗を所定の値に安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜の高安定化と高品質化を実現できる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法の好ましい態様(請求項3)は、前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程後で前記レーザー照射工程前に、前記アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に保護膜と金属膜とをその順で形成する工程をさらに有し、前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御するように構成する。
この発明によれば、アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に保護膜を介して設けた金属膜の上からレーザーを照射するので、照射時に生じた熱が金属膜内を伝導して局部的に高温になることを防ぐことができ、その熱が保護膜を通ってアモルファス酸化物薄膜を加熱処理する。したがって、加熱した金属膜がアモルファス酸化物薄膜の比抵抗を所定の値に安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜の高安定化と高品質化を実現できる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法の好ましい態様(請求項4)は、前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程前に、前記プラスチック基板上又はその上方に金属膜を形成する工程をさらに有し、前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御するように構成する。
この発明によれば、アモルファス酸化物薄膜の下に金属膜を設け、アモルファス酸化物薄膜の上又は上方からレーザーを照射するので、例えばアモルファス酸化物薄膜を通過したレーザーによって生じた熱が金属膜内を伝導して局部的に高温になることを防ぐことができ、その熱でアモルファス酸化物薄膜を加熱処理する場合に好ましい。したがって、加熱した金属膜がアモルファス酸化物薄膜の比抵抗を所定の値に安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜の高安定化と高品質化を実現できる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法の好ましい態様(請求項6)は、前記アモルファス酸化物薄膜がInGaZnO系のアモルファス酸化物薄膜であり、前記レーザーがパルス幅が10〜50nsec(FWHM)でデューティー比が0.1〜0.5で照射密度が150〜400mJ/cmのパルスレーザーであるように構成する。
上記目的を達成する本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板(請求項8)は、プラスチック基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、活性層と、ソース電極と、ドレイン電極とを少なくとも有する薄膜トランジスタ搭載基板において、前記活性層が、前記プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間与えないレーザー照射処理によって処理されてなるアモルファス酸化物薄膜であることを特徴とする。
活性層であるアモルファス酸化物薄膜は、プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間与えないレーザー照射処理によって処理されてなるものであるが、そうしたアモルファス酸化物薄膜は比抵抗が安定化し且つ高い移動度を示すことから、安定で高品質な駆動素子基板として好ましく利用できる。しかも、レーザー照射処理は、プラスチック基板にそのプラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えないので、耐熱性に乏しいプラスチック基板等に熱ダメージが無く、その結果、フレキシブルな表示装置に好ましく用いることができる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の好ましい態様(請求項9)は、前記アモルファス酸化物薄膜が、InGaZnO系のアモルファス酸化物薄膜であるように構成する。
また、上記目的を達成する本発明に係る画像表示装置(請求項10)は、上記本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板をアクティブマトリックス型スイッチング素子基板として用いることを特徴とする。
この発明によれば、薄膜トランジスタ素子搭載基板には、比抵抗が安定化し且つ高い移動度のアモルファス酸化物薄膜が活性層として設けられ、且つプラスチック基板も熱ダメージがないので、安定で高品質なアクティブマトリックス型スイッチング素子基板を有する画像表示装置となる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法によれば、比抵抗が安定化し且つ高い移動度を示すアモルファス酸化物薄膜を有する薄膜トランジスタ搭載基板を得ることができるので、得られた薄膜トランジスタ素子搭載基板を安定で高品質な駆動素子基板として利用できる。しかも、耐熱性に乏しいプラスチック基板等を問題なく用いることができるので、フレキシブルな表示装置に好ましく用いることができる薄膜トランジスタ搭載基板とすることができる。なお、本発明において、「比抵抗を安定化させる」とは、薄膜トランジスタ搭載基板に多数形成される薄膜トランジスタの活性層であるアモルファス酸化物薄膜の比抵抗のバラツキを小さくする(例えば±5%以内)ことを意味し、その結果、連続通電時の閾電圧の変化を小さくし、安定化させることができる。
本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板は、比抵抗が安定化し且つ高い移動度を示すアモルファス酸化物薄膜を有することから、安定で高品質な駆動素子基板として好ましく利用できる。しかも、耐熱性に乏しいプラスチック基板等にダメージが無く、その結果、例えば有機EL素子を利用したフレキシブル有機ELディスプレイや、電気泳動素子を利用したフレキシブル電気泳動ディスプレイ(電子ペーパ)等の表示装置に好ましく用いることができる。
本発明に係る画像表示装置によれば、安定で高品質なアクティブマトリックス型スイッチング素子基板を有する画像表示装置となる。
本発明の第1形態に係る薄膜トランジスタ素子搭載基板とその製造方法の例を示す説明図である。 本発明の第2形態に係る薄膜トランジスタ素子搭載基板とその製造方法の例を示す説明図である。 本発明の第3形態に係る薄膜トランジスタ素子搭載基板とその製造方法の例を示す説明図である。
以下、本発明に係る薄膜トランジスタ素子搭載基板及びその製造方法、並びに画像表示装置について詳細に説明するが、本発明は図面の形態や以下の実施形態に限定されるものではない。
[薄膜トランジスタ素子搭載基板]
本発明に係る薄膜トランジスタ素子搭載基板1(1A〜1C)は、図1(B)、図2(B)及び図3(B)に示すように、プラスチック基板10と、ゲート電極15gと、ゲート絶縁膜14と、活性層13と、ソース電極15sと、ドレイン電極15dとを少なくとも有している。そして、本発明は、活性層13が、プラスチック基板10に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間与えないレーザー照射処理によって処理されてなるアモルファス酸化物薄膜であることに特徴がある。
こうした活性層13を有する薄膜トランジスタ素子搭載基板(以下、「TFT基板」と略す。)であれば、その形態は特に限定されず、図1(B)に示す形態(第1形態)のボトムゲートボトムコンタクト構造であってもよいし、図2(B)に示す形態(第2形態)のボトムゲートトップコンタクト構造であってもよいし、図3(B)に示す形態(第3形態)のトップゲートトップコンタクト構造であってもよいし、トップゲートボトムコンタクト構造(図示しない)であってもよい。
図1(B)に示す第1態様に係るボトムゲートボトムコンタクト構造のTFT基板1Aは、プラスチック基板10と、プラスチック基板10上に必要に応じて形成された第1下地膜11と、第1下地膜11上に必要に応じて形成された第2下地膜12と、第2下地膜12(又はプラスチック基板10若しくは第1下地膜11)上に形成されたゲート電極15gと、ゲート電極15gを覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上であってゲート電極15gの中央部直上以外に離間して形成されたソース電極15s及びドレイン電極15dと、ゲート絶縁膜14g上であってソース電極15s及びドレイン電極15dに両側で接触するとともに該ソース電極15s及びドレイン電極15dを跨ぐように形成されたアモルファス酸化物薄膜13と、それら全体を覆うように必要に応じて形成された保護膜18とを有している。本願において、「ゲート電極を覆うように」とは、図1に示す態様のことであり、ゲート電極上に形成されているとともに、ゲート電極の周りは第2下地膜12(又はプラスチック基板10若しくは第1下地膜11)上にも形成されていることを意味する。
なお、図1(A)は保護膜18を形成しないでレーザー照射を行う態様であり、図1(C)は保護膜18を形成した後に更に金属膜19を形成した上からレーザー照射を行う態様である。通常は、保護膜18が形成された図1(B)の形態のTFT基板1Aが用いられる。
図2(B)に示す第2態様に係るボトムゲートトップコンタクト構造のTFT基板1Bは、プラスチック基板10と、プラスチック基板10上に必要に応じて形成された第1下地膜11と、第1下地膜11上に必要に応じて形成された第2下地膜12と、第2下地膜12(又はプラスチック基板10若しくは第1下地膜11)上に形成されたゲート電極15gと、ゲート電極15gを覆うように形成されたゲート絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14上であってゲート電極15gの直上に形成されたアモルファス酸化物薄膜13と、アモルファス酸化物薄膜13上の中央部を開けて離間して形成されたソース電極15s及びドレイン電極15dと、それらを覆うようにして必要に応じて形成された保護膜18とを有している。
図3(B)に示す第3形態に係るトップゲートトップコンタクト構造のTFT基板1Cは、プラスチック基板10と、プラスチック基板10上に必要に応じて形成された第1下地膜11と、第1下地膜11上に必要に応じて形成された第2下地膜12と、第2下地膜12(又はプラスチック基板10若しくは第1下地膜11)上に形成されたアモルファス酸化物薄膜13(ソース側拡散領域13s、チャネル領域13c及びドレイン側拡散領域13d)と、アモルファス酸化物薄膜13の主にチャネル領域13cの上に形成されたゲート絶縁膜14gと、ゲート絶縁膜14gとの間にコンタクトホールを有するようにアモルファス酸化物薄膜13上に形成された絶縁膜14と、ゲート絶縁膜14g上に形成されたゲート電極15gと、コンタクトホールに形成されたソース電極15s及びドレイン電極15dと、さらに全体を覆うように必要に応じて形成された保護膜18とを有している。
なお、図示しないが、トップゲートボトムコンタクト構造のTFT基板は、プラスチック基板(10)と、プラスチック基板(10)上に必要に応じて形成された第1下地膜(11)と、第1下地膜(11)上に必要に応じて形成された第2下地膜(12)と、第2下地膜(12)(又はプラスチック基板若しくは第1下地膜)上の所定領域を開けて離間して形成されたソース電極(15s)及びドレイン電極(15d)と、ソース電極(15s)及びドレイン電極(15d)の間の前記所定領域を埋めるように形成された絶縁層と、それら(ソース電極−絶縁層−ドレイン電極)の上に形成されたアモルファス酸化物薄膜13と、アモルファス酸化物薄膜13上に形成されたゲート絶縁膜(14g)と、ゲート絶縁膜(14g)上に形成されたゲート電極(15g)と、それらを覆うようにして必要に応じて形成された保護膜(18)とを有している。
以下、TFT基板1の構成要素について詳しく説明する。
(プラスチック基板)
プラスチック基板10は、TFT基板1の支持基板をなす絶縁性のものであり、耐熱性に乏しい非耐熱性基板である。言い換えると、プラスチック基板10は、そのプラスチック基板10のガラス転移温度以上の温度が一定時間加わることを一般的に嫌う基板である。具体的には、例えば、ポリエチレンナフタレート(ガラス転移温度:120℃)、ポリブチレンテレフタレート(75℃)、ポリエチレンテレフタレート(75℃)、ポリフェニレンサルファイド(90℃)、ポリエーテルエーテルケトン(143℃)、ポリカーボネート(145℃)、ポリサルホン(190℃)、ポリアリレート(193℃)、ポリエーテルサルホン(225℃)、ポリアミド(200℃)、ポリエーテルイミド(215℃)、ポリアミドイミド(280℃)、熱可塑性ポリイミド(280℃)等からなるプラスチック基板、又はそれらの複合基板を挙げることができる。また、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリノルボルネン系樹脂も、基本的には高温が加わることを避けたいので、本願でいうプラスチック基板10に概念として含めることができる。
こうしたプラスチック基板は、剛性を有するものであってもよいし、厚さが5μm以上300μm以下程度の薄いフレキシブルなフィルム状のものであってもよい。フレキシブルなプラスチック基板の使用は、TFT基板1をフレキシブル基板とすることができるので、フレキシブルな表示装置等に適用できる。
また、無機基板としては、例えば耐熱性の点ではやや劣るが安価な無アルカリガラス基板等を挙げることができる。ガラス基板の厚さは特に限定されないが、通常、0.05mm以上3.0mm以下程度である。
本発明では、特にガラス転移温度が200℃未満のプラスチック基板を用いた場合に効果がある。ガラス転移温度が200℃未満のプラスチック基板に200℃以上の温度が一定時間加わると、そのプラスチック基板が撓んだり、変色したり、収縮したりし易く、したがって、ガラス転移温度が200℃未満のプラスチック基板は、200℃以上の温度が一定時間加わることを嫌う基板である。そうした基板としては、上述したプラスチック基板のほとんどが含まれるが、特に好ましく用いられるプラスチック基板としては、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。なお、一定時間とは、プラスチック基板のガラス転移温度によっても異なるので一概に言えないが、例えばPENの場合は、例えば200℃の雰囲気に例えば1分間程度連続して晒されると撓みが生じてくる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定したものである。
(第1下地膜と第2下地膜)
第1下地膜11と第2下地膜12は、プラスチック基板10上に必要に応じて形成される膜であり、その機能や目的に応じて必要な領域のみに形成されてもよいし全面に形成されてもよい。第1下地膜11と第2下地膜12は、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、酸化クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素の群から選択されるいずれかの材料で形成される。例えば密着膜として用いる場合には、クロム、チタン、アルミニウム、又はケイ素等からなる金属系の無機膜が好ましく用いられ、応力緩和膜やバッファ膜(熱緩衝膜)として用いる場合には、酸化クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素等からなる化合物膜が好ましく用いられ、バリア膜として用いる場合には、酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素等からなる化合物膜が好ましく用いられる。これらの膜は、その機能や目的に応じて、単層で設けてもよいし、2層以上を積層してもよい。
好ましい例としては、図1〜図3に示すように、第1下地膜11を密着膜として、クロム、チタン、アルミニウム、又はケイ素等からなる金属系の無機膜を形成し、第2下地膜12をバッファ膜として、酸化クロム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、又は酸窒化ケイ素等からなる化合物膜を積層することが好ましい。
第1下地膜11を密着膜として形成する場合の厚さは、膜を構成する材質によってその範囲は若干異なるが、通常1nm以上200nm以下程度の範囲内であることが好ましく、3nm以上50nm以下程度の範囲内であることがより好ましい。一方、第2下地膜12をバッファ膜として形成する場合の厚さも実際に形成する膜の材質によってその範囲は若干異なるが、その厚さとしては、通常、100nm以上1000nm以下程度の範囲内であることが好ましく、成膜時間の点からは100nm以上500nm以下程度の範囲内であることがより好ましい。
こうした第1下地膜11と第2下地膜12は、各種の蒸着法、DCスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD法等の各種の方法で形成することができるが、実際には、膜を構成する材質に応じた好ましい方法が採用される。通常は、DCスパッタリング法やRFマグネトロンスパッタリング法等が好ましく用いられる。
(アモルファス酸化物薄膜)
本発明で適用するアモルファス酸化物薄膜13は、TFT基板1を構成する活性層(チャネル膜)として使用できる程度の移動度を有するものであって、レーザーの照射前後でアモルファス状態(アモルファス相)を維持し、且つレーザーの照射前よりも照射後の方が比抵抗が安定化し且つ移動度が高くなるものである。こうした特徴を有するアモルファス酸化物薄膜13であればその種類は特に限定されず、現在知られているアモルファス酸化物薄膜であっても、今後発見される酸化物で成膜してなるアモルファス酸化物薄膜であってもよい。なお、「比抵抗の安定化」とは、TFT基板1に多数形成されるTFTの活性層であるアモルファス酸化物薄膜13の比抵抗のバラツキを小さくする(例えば±5%以内)ことを意味する。
アモルファス酸化物薄膜13を構成するアモルファス酸化物としては、例えば、InMZnO(MはGa,Al,Feのうち少なくとも1種)を主たる構成元素とするアモルファス酸化物を挙げることができる。特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましく、この場合、In:Ga:Znの比が1:1:m(m<6)であることが好ましい。また、Mgをさらに含む場合においては、In:Ga:Zn1-xMgxの比が1:1:m(m<6)で0<x≦1であることが好ましい。なお、組成割合は、蛍光X線(XRF)装置によって測定したものである。
なお、InGaZnO系のアモルファス酸化物については、InとGaとZnの広い組成範囲でアモルファス相を示す。この三元系でアモルファス相を安定して示す組成範囲としては、InGaZnO(3x/2+3y/2+z)で比率x/yが0.4〜1.4の範囲であり、比率z/yが0
.2〜12の範囲にあるように表すことができる。なお、ZnOに近い組成とInに近い組成で結晶質を示す。
また、アモルファス酸化物が、InxGa1-x酸化物(0≦x≦1)、InxZn1-x酸化物(0.2≦x≦1)、InxSn1-x酸化物(0.8≦x≦1)、Inx(Zn,Sn)1-x酸化物(0.15≦x≦1)から選ばれるいずれかのアモルファス酸化物であってもよい。
本発明では、後述の実施例で用いたInGaZnO系(以下「IGZO」と略す)酸化物薄膜を好ましく挙げることができる。また、このIGZO系酸化物薄膜には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。このIGZO系酸化物薄膜は、可視光を透過して透明膜又は半透明膜となるので、液晶や有機ELを駆動するTFTの半導体膜として用いれば、その半導体膜を開口部領域にも設けることができ、光開口部を拡大することができる。その結果、液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー等の駆動用TFT基板を構成する半導体膜に利用可能である。特に、このIGZO系酸化物薄膜は、室温から150℃程度の低温での成膜が可能であることから、ガラス転移温度が200℃未満の耐熱性に乏しいプラスチック基板に対して好ましく適用できる。
なお、酸化物薄膜13がアモルファスであるか否かは、測定対象となる酸化物薄膜に入射角度0.5°程度の低入射角によるX線回折を行った場合に、結晶質の存在を示す明瞭な回折ピークが検出されないこと、すなわち所謂ハローパターンが見られることで確認できる。そうしたハローパターンは、微結晶状態の酸化物薄膜でも見られるので、このアモルファス酸化物薄膜13には、そのような微結晶状態の酸化物薄膜も含まれるものとする。
こうしたアモルファス酸化物薄膜13は、プラスチック基板10上、又は、下地膜(第1下地膜11又は第2下地膜12)上に、DCスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD法等の各種の方法で形成することができる。スパッタリングターゲットしては、所定のスパッタリング条件下で目的の成膜組成が得られるように調整されたスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。通常、目的とする成膜組成と同じ組成のスパッタリングターゲットが好ましく用いられる。
アモルファス酸化物薄膜13の厚さは、成膜条件によって任意に設計されるために一概には言えないが、通常10nm以上150nm以下の範囲内であることが好ましく、30nm以上100nm以下の範囲内であることがより好ましい。
アモルファス酸化物薄膜13は、成膜後にレーザー照射が施されてなるものであり、そうしたレーザー照射によって半導体特性(移動度)が向上し且つ比抵抗が安定化したアモルファス薄膜である。なお、ここでいう「半導体特性(移動度)が向上し且つ比抵抗が安定化する」とは、TFT基板1上に多数形成したアモルファス酸化物薄膜13の電荷移動度が、その全てにおいてある一定以上の移動度を持ち、しかも「比抵抗のバラツキ」が小さい(例えば±5%以内)ことを意味する。このとき、一定以上の移動度とは、成膜したアモルファス酸化物の種類にもよるが、例えば、IGZO系のアモルファス酸化物半導体の場合には、10cm/(V・s)以上で、そのバラツキが±5%以内である場合を例示できる。
このように、TFT基板1、特に大面積の表示装置の駆動装置として機能するTFT基板においては、個々のTFTを構成する半導体膜の移動度の高低も確かに重要ではあるが、それよりも、個々の半導体膜の比抵抗のバラツキが大面積のTFT基板内である一定のバラツキの範囲内であることの方が、駆動素子として安定駆動を実現させるために重要である。本発明は、成膜後のアモルファス酸化物薄膜13にレーザー照射を施すことによって、半導体膜の移動度も向上させることができるが、特に有効なのは、半導体膜の比抵抗のバラツキを小さくすることができる点である。こうした比抵抗のバラツキの低減(所謂安定化)は、連続通電時の閾電圧の変化を抑制することができる。比抵抗のバラツキの範囲は、後述する実施例でも示すように、±10%以内、特に好ましくは±5%以内とすることができる。なお、レーザー照射を行わなかったアモルファス酸化物薄膜13では、比抵抗のバラツキは±20%程度であり、レーザー照射によってバラツキを小さくすることができる。こうした挙動を示す理由として、レーザー照射によってアモルファス構造に何らかの変化が生じているものと考えられ、一部でそれらしきデータはとれてはいるが現時点では明らかではない。しかし、少なくとも結果としては再現性のよい結果(移動度の向上と比抵抗の安定化)が得られている。なお、移動度はホール効果測定装置で測定し、比抵抗は4探針法で測定したものである。
レーザーとしては、各種のレーザーを用いることができるが、好ましくはXeClエキシマレーザー、XeFエキシマレーザー又はKrFレーザーを挙げることができる。本発明では、特に断らない限り、「レーザー」を、パルス状に発振させた「パルスレーザー」として照射している。そうしたパルスレーザーは、パルス幅、デューティー(Duty)比及び照射密度を調整してアモルファス酸化物薄膜13に照射する。このときに考慮すべきは、(i)耐熱性に乏しいプラスチック基板10に熱ダメージを与えないこと、(ii)アモルファス酸化物薄膜13を結晶化させないこと、(iii)TFT基板1上に形成された他の膜に影響を与えないこと、等を挙げることができ、少なくともこれらに悪影響を与えないように、前記パルス幅、デューティー比及び照射密度を設定する。なお、照射密度は、エネルギー密度と言い換えることもできる。
例えば、IGZO系のアモルファス酸化物薄膜13の場合において、XeClエキシマレーザーを用いた場合には、パルス幅を10〜50nsec(FWHM(半値幅):full width at half-maximum)、デューティー比を0.1〜0.5程度とし、エネルギー密度を150〜400mJ/cmの範囲とすることが好ましい。このとき、パルス幅、デューティー比及び照射密度の関係において、パルス幅とデューティー比を大きくする場合にはアモルファス酸化物薄膜13の抵抗が下がって導電体となり易いので照射密度を低くし、その逆にパルス幅及びデューティー比を小さくする場合にはアモルファス酸化物薄膜13の抵抗が上がって絶縁体となり易いので照射密度を高くすること好ましい。
レーザーの照射は、図1に示すボトムゲートボトムコンタクト構造のTFT基板においては、図1(A)に示すように、アモルファス酸化物薄膜13に対して直接照射してもよいし、図1(B)に示すように、アモルファス酸化物薄膜13上に保護膜18を形成した後にその保護膜18の上方から照射したものであっても良いし、図1(C)に示すように、アモルファス酸化物薄膜13上に保護膜18を形成し、さらその上に金属膜19を形成した後に、その金属膜19の上方から照射したものであってもよい。図1(A)の態様でのレーザー照射は、非常に簡易的な方法である点で好ましく、図1(B)の態様でのレーザー照射は、保護膜形成時にアモルファス酸化物薄膜13の特性が劣化した場合でも特性を良化させることができる点で好ましく、図1(C)の態様でのパルスレーザー照射は、低い照射エネルギーで済む点で好ましい。
なお、図1(C)に示す照射態様において、金属膜19は熱伝導性が高いので、照射されたレーザーの熱エネルギーは、照射部分のみではなく、金属膜19の熱伝導に基づく広がりを持って広く均一に分布させることができる。そのため、レーザーが照射されたアモルファス酸化物薄膜13の半導体特性をより安定化させ易いという利点がある。
また、図2に示すボトムゲートトップコンタクト構造においては、図2(A)に示すように、ゲート絶縁膜14上にアモルファス酸化物薄膜13を形成した後であって、そのアモルファス酸化物薄膜13をパターニングする前の段階で、アモルファス酸化物薄膜13の全面にレーザー照射を行う。パターニングする前にレーザー照射を行うのは、レーザー照射が容易だからであり、仮にアモルファス酸化物薄膜13をパターニングした後にレーザー照射を行おうとすると、照射位置精度を高めなければならず、高精度の位置決め精度が要求されるからである。なお、照射位置精度を確保できれば、アモルファス酸化物薄膜13をパターニングした後にレーザーを照射してもよい。
また、図3に示すトップゲートトップコンタクト構造においては、図3(A)に示すように、第2下地膜12上にアモルファス酸化物薄膜13を形成した後であって、そのアモルファス酸化物薄膜13をパターニングする前の段階で、アモルファス酸化物薄膜13の全面にレーザー照射を行う。パターニングする前にレーザー照射を行う理由は上記の図2(A)の場合と同じである。特に図3のトップゲートトップコンタクト構造では、アモルファス酸化物薄膜13はプラスチック基板10の近くに形成されるので、バッファ膜(熱緩衝膜)として機能する第2下地膜12は必須の構成として形成されていることが好ましく、その第2下地膜12によって、レーザー照射時の熱を緩衝させることができ、プラスチック基板10に熱ダメージを生じさせない。
(保護膜と金属膜)
保護膜18は、図1(B)(C)、図2(B)及び図3(B)に示すように、TFT基板1を構成するTFTを保護するように作用する膜である。保護膜18を設けることにより、TFTの動作が雰囲気(例えば、水分、真空、温度)による影響を受けず、雰囲気の変化による不安定動作が生じずに、安定に動作させることができるという効果が得られる。したがって、保護膜18は、TFTの基本構造が形成された後にその全体を覆うように設けられている。
保護膜18の形成材料としては、少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物等を挙げることができる。金属としては、ケイ素、アルミニウム等が好ましく、具体的には、金属酸化物としては、SiO、Al等を挙げることができ、金属窒化物としては、Si、AlN等を挙げることができ、金属炭化物としては、SiC、TiC等を挙げることができ、金属酸窒化物としては、SiON、SiAlON等を挙げることができる。
これらの保護膜18のうち、図1(B)に示すように保護膜18の上からレーザー照射を行う場合には、SiOからなる保護膜が好ましい。これらの保護膜は、スパッタ法により比較的容易に形成できるという特性を持つので、レーザー照射時にアモルファス酸化物薄膜13上に設ける保護膜として適している。一方、レーザー照射後に形成される保護膜については、上記のような特性は要求されないので、上述した各種の形成材料を任意に選択して設ければよい。
保護膜18の形成方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等を挙げることができる。これら保護膜18の成膜手段も、プラスチック基板10に熱ダメージを与えないガラス転移温度未満(望ましくは200℃未満)の温度で成膜されることが望ましい。保護膜18の厚さは、成膜条件によって任意に設計されるために一概には言えないが、通常10nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましく、50nm以上150nm以下の範囲内であることがより好ましい。
金属膜19は、図1(C)に示すように、ボトムゲートボトムコンタクト構造のTFT基板を製造する場合であって、保護膜18上からレーザー照射を行う際に、アモルファス酸化物薄膜13上に形成された保護膜18の上に好ましく設けられる。この金属膜19は、レーザー照射時に保護膜18上に好ましく設けられるものであるため、レーザー照射を行わない場合には設ける必要はない。そして、金属膜19上からレーザー照射を行った後には、エッチングによって金属膜19は除去される。
この金属膜19は熱伝導性が高いので、照射されたレーザーの熱エネルギーをレーザー照射部分のみではなく、金属膜19の熱伝導に基づく広がりを持って広く均一に分布させることができる。そのため、その金属膜19を伝わった熱により、レーザーが照射されたアモルファス酸化物薄膜13の比抵抗を安定化させ易いという利点がある。
なお、図3に示す態様で、第1下地膜11を金属膜として形成した場合に、アモルファス酸化物薄膜13の上又は上方からレーザーを照射した場合には、アモルファス酸化物薄膜13を通過したレーザーの照射時に生じた熱が金属膜内を伝導して均一に広がり、局部的に高温になることを防ぐことができる。その結果、その熱でアモルファス酸化物薄膜13を加熱処理できるので、その金属膜19をアモルファス酸化物薄膜13の下に設けるによってアモルファス酸化物薄膜の比抵抗を安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜13の高安定化と高品質化を実現できる。
金属膜19としては、Al,Cr,Mo,MoW,Ag,Si,Ti,Ni、Cu,W等の金属からなる膜を好ましく挙げることができ、特にMo,Ti,Siのいずれかの金属単体又は合金からなる膜が、熱伝導性と耐レーザーの観点から好ましい。
金属膜19の形成方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、レーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等を挙げることができる。これら金属膜19の成膜手段も、上記の保護膜18の場合と同様、プラスチック基板10に熱ダメージを与えないガラス転移温度未満(望ましくは200℃未満)の温度で成膜されることが望ましい。金属膜19の厚さは成膜条件によって任意に設計されるために一概には言えないが、通常20nm以上250nm以下の範囲内であることが好ましく、20nm以上200nm以下の範囲内であることがより好ましい。
(他のTFT基板の構成要素)
図1〜図3に示すゲート絶縁膜14gと図3に示す絶縁膜14の形成材料としては、絶縁性が高く、誘電率が比較的高く、ゲート絶縁膜として適しているものであれば各種の材料を用いることができる。例えば、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化スカンジウムのうち少なくとも1種又は2種以上を挙げることができる。また、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等のケイ素の酸化物、窒化物、酸窒化物等も好ましく挙げることができる。また、チタン酸バリウムストロンチウム等の複合酸化物であってもよい。
ゲート電極15gの形成材料としては、金、銀、銅、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、ITO等を挙げることができる。
ソース電極15sとドレイン電極15dの形成材料としては、アモルファス酸化物薄膜13とのエネルギー準位を合わせることができる材料であることが好ましく、チタン、金、クロム、鉄、モリブデン、タングステン、銅、ルテニウム、レニウム、ITO、IZO等を挙げることができる。特にIZO、ITO、Tiは、半導体薄膜13と良好なオーミックコンタクトを取ることができるため、好ましい。
なお、本発明のTFT基板1は、上記以外の構成要素であっても、本発明の趣旨の範囲内であれば、その他の膜を含んでいてもよい。
以上説明したように、活性層として形成したアモルファス酸化物薄膜13は、プラスチック基板10にそのプラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間与えないレーザー照射処理によって処理されてなるものであるが、そうしたアモルファス酸化物薄膜13は高い安定性を示し且つ高い移動度を示すことから、安定で高品質な駆動素子基板として好ましく利用できる。しかも、レーザー照射処理は、プラスチック基板10に該プラスチック基板のガラス転移温度以上(望ましくは200℃以上)の温度を一定時間加えないので、耐熱性に乏しいプラスチック基板10に熱ダメージが無く、その結果、フレキシブルな表示装置に好ましく用いることができる。
[TFT基板の製造方法]
本発明の薄膜トランジスタ素子搭載基板(TFT基板)の製造方法は、プラスチック基板10の上又はその上方に活性層となるアモルファス酸化物薄膜13を形成する工程と、少なくとも活性層となる部分のアモルファス酸化物薄膜13に向けてレーザーを照射する工程と、を少なくとも有する。以下に、各工程について説明する。
(レーザー照射工程)
レーザー照射工程は、プラスチック基板10に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えず、且つアモルファス酸化物薄膜13をアモルファス相のままでその比抵抗を所定の比抵抗に制御する工程である。こうした工程を経たアモルファス酸化物薄膜13は、比抵抗が安定化し且つ高い移動度を示したことから、得られたTFT基板1は、安定で高品質な駆動素子基板として利用できる。しかも、このレーザー照射工程は、レーザーの照射部に局部的に高いエネルギーが与えられるが、レーザーをパルス状に照射するため、高温になり難く、プラスチック基板10にガラス転移温度以上の温度を一定時間加えない工程である。そのため、耐熱性に乏しいプラスチック基板等を問題なく用いることができる。
レーザー照射は、図1に示すボトムゲートボトムコンタクト構造のTFTにおいては、(i)アモルファス酸化物薄膜13を形成した後でパターニングする前(図1(A)参照)、(ii)アモルファス酸化物薄膜13をパターニングした後、さらに保護膜18を形成した後(図1(B)参照)、(iii)アモルファス酸化物薄膜13を形成した後に保護膜18と金属膜19をその順で形成した後(図1(C)参照)、のいずれかのタイミングで行うことが望ましい。また、図2(B)に示すボトムゲートトップコンタクト構造のTFTにおいては、ゲート電極15gを覆うように形成したアモルファス酸化物薄膜13を形成した後、パターニングする前のタイミングでレーザー照射を行うことが望ましい。また、図3(B)に示すトップゲートトップコンタクト構造のTFTにおいては、第2下地膜12上にアモルファス酸化物薄膜13を形成した後、パターニングする前のタイミングでレーザー照射を行うことが望ましい。
本発明ではパルスレーザー照射が好ましく行われるが、そのパルスレーザー照射の照射条件は、形成するアモルファス酸化物薄膜13の種類によっても異なるが、例えばIGZO系のアモルファス酸化物薄膜13を形成し且つXeClエキシマレーザーを用いた場合には、既述したように、パルス幅を10〜50nsec、デューティー比を0.1〜0.5程度とし、エネルギー密度を150〜400mJ/cmの範囲とすることが好ましい。
(アモルファス酸化物薄膜の形成工程)
レーザー照射工程の前には、アモルファス酸化物薄膜13の形成工程を備える。このアモルファス酸化物薄膜13の形成工程は、プラスチック基板10の上又はその上方に活性層となるアモルファス酸化物薄膜13を形成する工程である。ここで、アモルファス酸化物薄膜13を、プラスチック基板10の上又はその上方としているのは、アモルファス酸化物薄膜13をプラスチック基板10上に直接成膜する場合があるためである。なお、通常は、図1〜図3に示すように、プラスチック基板10上に、第1下地膜11や第2下地膜12が形成され、その上にアモルファス酸化物薄膜13が形成されることが望ましい。
(金属膜の形成工程)
本発明では、レーザー照射時の熱を広く均一に分布させるための金属層19を設けることができる。例えば図1(C)に示すボトムゲートボトムコンタクト構造のTFTにおいては、アモルファス酸化物薄膜13の形成工程後で、レーザー照射工程の前に、金属膜19の形成工程を備える。この金属膜19の形成工程は、アモルファス酸化物薄膜13上又はその上方に金属膜19を形成する工程である。ここで、金属膜19を、アモルファス酸化物薄膜13の上又はその上方としているのは、金属膜19をアモルファス酸化物薄膜13上に直接成膜する可能性があるためであるが、通常は、金属膜19をアモルファス酸化物薄膜13上に直接形成するのではなく、図1(C)に示すように、アモルファス酸化物薄膜13上に保護膜18を形成し、その保護膜18の上に金属膜19を形成する。
このように、アモルファス酸化物薄膜13上又はその上方に保護膜18を介して設けた金属膜19の上からレーザーを照射するので、照射時に生じた熱が金属膜19内を伝導して局部的に高温になることを防ぐことができ、その熱が保護膜18を通ってアモルファス酸化物薄膜13を加熱処理する。したがって、加熱した金属膜19がアモルファス酸化物薄膜13の比抵抗を安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜13の高安定化と高品質化を実現できる。
なお、図3に示すように、アモルファス酸化物薄膜13の形成工程前に、プラスチック基板10上に第1下地膜11を金属膜(19)として形成してもよい。この場合において、アモルファス酸化物薄膜13の上又は上方からレーザーを照射した場合には、アモルファス酸化物薄膜13を通過したレーザーの照射時に生じた熱が金属膜内を伝導して均一に広がり、局部的に高温になることを防ぐことができる。その結果、その熱でアモルファス酸化物薄膜13を加熱処理できるので、その金属膜を例えば第1下地膜11としてアモルファス酸化物薄膜13の下に設けるによってアモルファス酸化物薄膜13の比抵抗を安定化させることになり、アモルファス酸化物薄膜13の高安定化と高品質化を実現できる。
(その他の工程)
本発明のTFT基板の製造方法は、上記の工程の他、図1〜図3に示す各膜の形成工程を含む。例えば、第1下地膜11の形成工程、第2下地膜12の形成工程、ゲート電極15gの形成工程、ゲート絶縁膜14gの形成工程、ソース電極15sとドレイン電極15dの形成工程、絶縁膜14の形成工程(図3参照)、及びそれらのパターニング工程、洗浄工程、イオン注入工程等を、製造するTFT基板の構造形態にしたがって任意に含む。これらの各工程は、上述の「TFT基板」の欄で説明した構成材料と成膜手段を用いて行う。
以上説明したように、本発明に係るTFT基板1の製造方法によれば、高い安定性と高い移動度を示す薄膜トランジスタ搭載基板を得ることができるので、得られた薄膜トランジスタ素子搭載基板を安定で高品質な駆動素子基板として利用できる。しかも、耐熱性に乏しいプラスチック基板等を問題なく用いることができるので、フレキシブルな表示装置に好ましく用いることができる薄膜トランジスタ搭載基板とすることができる。特にアモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままとしたことは、結晶化した場合に生じる粒径やドメイン界面密度の素子間のバラツキを抑制できるので、プラスチック基板を用いた大面積の表示装置のTFT基板として好ましい。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明に係る薄膜トランジスタ搭載基板を、液晶表示装置、有機EL発光表示装置、電子ぺーパー等のアクティブマトリックス型スイッチング素子基板として用いる。本発明の画像表示装置として有機EL発光表示装置で説明すれば、マトリクス状に配置された本発明に係る多数のTFT基板1を有し、例えば、ゲート電極15gのゲートバスラインとソース電極15sのソースバスラインが縦横に延び、各TFTのドレイン電極15dには出力素子が接続される。この出力素子は有機EL素子であり、抵抗とコンデンサからなる等価回路で構成される。出力素子毎の領域は、有機EL発光表示装置の画素を構成する。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
(TFT基板の作製)
一例として、図1に示すボトムゲートボトムコンタクト構造のTFTをプラスチック基板上に複数(72個)のTFTを形成したTFT基板を製造した。先ず、厚さ100μmでガラス転移温度が150℃のポリエチレンナフタレート(PEN)をプラスチック基板10として準備し、そのプラスチック基板10上の全面に厚さ5nmのクロム膜(密着膜)を第1下地膜11としてスパッタ法で形成し、さらにその第1下地膜11上の全面に厚さ300nmの酸化ケイ素膜(バッファ膜)を第2下地膜12としてスパッタ法で形成した。次に、その第2下地膜12上の全面に厚さ200nmのアルミニウム膜をゲート電極膜として蒸着した後、レジストパターンをフォトリソグラフィで形成した後に燐酸溶液でウェットエッチングし、アルミニウム膜を所定パターンにパターニングしてゲート電極15gを形成した。次に、そのゲート電極15gを覆うように厚さ100nmの酸化ケイ素をゲート絶縁膜14として全面に形成した。このゲート絶縁膜14は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、8インチのSiOターゲットに投入電力:1.0kW(=3W/cm)、圧力:1.0Pa、ガス:アルゴン+O(50%)の成膜条件で形成した。次に、ゲート絶縁膜14上の全面に厚さ200nmのアルミニウム膜をソース電極15s及びドレイン電極15dとするために蒸着した後、レジストパターンをフォトリソグラフィで形成した後に燐酸溶液でウェットエッチングし、アルミニウム膜を所定パターンにパターニングしてソース電極15s及びドレイン電極15dを形成した。このとき、ソース電極15s及びドレイン電極15dは、ゲート絶縁膜14上であってゲート電極15gの中央部直上以外に離間したパターンとなるように形成した(図1を参照)。
次に、ソース電極15s及びドレイン電極15dを覆うように、全面に、In:Ga:Znが1:1:1のInGaZnO系アモルファス酸化物薄膜13(InGaZnO)を厚さ100nmとなるように形成した。アモルファス酸化物薄膜13は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、室温(25℃)、Ar:Oを30:50とした条件下で、8インチのInGaZnO(In:Ga:Zn=1:1:1)ターゲットを用いて形成した。次に、このアモルファス酸化物薄膜13の上方からパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射は、波長308nmのXeClエキシマレーザーを用い、パルス幅:30nsec(FWHM)、デューティー比:0.1、非照射密度:200mJ/cm、室温の条件下で、アモルファス酸化物薄膜13の全面について行った。その後のアモルファス酸化物薄膜13上にレジストパターンをフォトリソグラフィで形成した後、シュウ酸溶液でウェットエッチングし、そのアモルファス酸化物薄膜13をパターニングし、所定パターンからなるアモルファス酸化物薄膜13を形成した。こうして得られたアモルファス酸化物薄膜13は、ゲート絶縁膜14g上であってソース電極15s及びドレイン電極15dに両側で接触するとともに該ソース電極15s及びドレイン電極15dを跨ぐように形成されている。最後に、全体を覆うように、厚さ20nmの酸化ケイ素を保護膜18としてRFマグネトロンスパッタリング法で形成した。こうして実施例1に係るTFT基板1を作製した。
[実施例2,3]
実施例1において、パルスレーザーの照射条件を変えた他は、実施例1と同様にして、実施例2,3のTFT基板を作製した。
[実施例4](実施例1〜3は請求項1、この実施例4も請求項1)
実施例1においては、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、パターニングするまでの間にパルスレーザー照射を行っているが、この実施例4では、保護膜18が全面に形成された後にパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例1と同様にして、実施例4に係るTFT基板1を作製した。
[実施例5](この実施例5は請求項3)
実施例1においては、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、パターニングするまでの間にパルスレーザー照射を行っているが、この実施例5では、保護膜18が全面に形成された後、さらにその保護膜18上の全面に厚さ20nmのSi膜をスパッタリング法で成膜した後にパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例1と同様にして、実施例5に係るTFT基板1を作製した。なお、パルスレーザー照射後においては、ドライエッチングによってSi膜をエッチングして除去した。
[実施例6〜10](金属膜の種類を代えてレーザー照射)
実施例5において、Si膜の代わりに、厚さ20nmのAl膜、Mo膜、MoW膜、Ti膜、Cr膜をそれぞれスパッタリング法で成膜した後にパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例5と同様にして、実施例6〜10に係るTFT基板1を作製した。なお、パルスレーザー照射後のエッチングは、Al膜、Mo膜、MoW膜は燐酸系の溶液を用いたウェットエッチングで行い、Ti膜は過酸化水素水と水酸化カリウムを混合した溶液を用いてウェットエッチングで行い、Cr膜は硝酸第二セリウムアンモニウムの溶液を用いたウェットエッチングで行い、それぞれ除去した。
[実施例11](この実施例11は請求項2)
実施例1においては、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、パターニングするまでの間にパルスレーザー照射を行っているが、この実施例11では、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、そのアモルファス酸化物薄膜13上の全面に厚さ20nmのSi膜をスパッタリング法で成膜した後にパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例1と同様にして、実施例11に係るTFT基板1を作製した。なお、パルスレーザー照射後においては、ドライエッチングによってSi膜をエッチングして除去し、その後に実施例1と同様にアモルファス酸化物薄膜13をパターニングし、保護膜18を形成した。
[実施例12](この実施例12は請求項4)
実施例1においては、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、パターニングするまでの間にパルスレーザー照射を行っているが、この実施例12では、プラスチック基板10上の全面に形成するクロム膜の厚さを20nmとし、パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例1と同様にして、実施例12に係るTFT基板1を作製した。
[実施例13](保護膜の種類を代え、金属膜を設けないでレーザー照射)
実施例1においては、アモルファス酸化物薄膜13を成膜した後、パターニングするまでの間にパルスレーザー照射を行っているが、この実施例13では、保護膜18を酸化ケイ素から、熱伝導性のよいSiNに代えて厚さ20nmで全面に形成した後にパルスレーザー照射を行った。パルスレーザー照射の条件を含め、それ以外は実施例1と同様にして、実施例13に係るTFT基板1を作製した。
[比較例1]
実施例1において、パルスレーザー照射を行う代わりに300℃のアニールを行った他は、実施例1と同様にして、比較例1のTFT基板を作製した。
[比較例2]
実施例1において、パルスレーザー照射を行う代わりに300℃のアニールを行った他は、実施例1と同様にして、比較例1のTFT基板を作製した。
[特性評価]
得られたTFT基板について、以下の各特性を評価した。その結果を表1に示した。
X線回折測定;パルスレーザー照射後のIGZO酸化物薄膜をX線回折装置(リガク社製、装置名:RINT−2500)で測定した。X線回折測定は、Cu−Kα特性X線、スキャン軸2θ、入射角0.5°の条件で行った。
比抵抗測定;パルスレーザー照射後のIGZO酸化物薄膜の比抵抗(Ω・m)を4探針法測定装置を用いて測定した。シート抵抗値(Ω/□)は三菱化学アナリテック社製抵抗率計ロレスタにより測定した。
Hall測定;TFT基板のHall測定を行った。測定には、東洋テクニカ社製比抵抗/ホール測定システム装置を用い、キャリア濃度、Hall移動度、ノイズ、方向依存性を測定した。
プラスチック基板の評価;得られたTFT基板を構成するプラスチック基板(PEN)の外観や撓み等を観察した。
Figure 2011009415
表1の実施例の結果からも分かるように、実施例1〜3では、ガラス転移温度が150℃のPENフィルムを用いた場合であっても、アモルファス酸化物薄膜13に所定の条件でパルスレーザー照射を行うことにより、所望の特性を実現することができることが分かった。こうしたレーザー照射は、アモルファス酸化物薄膜13をスパッタリング法で成膜した場合にそのアモルファス酸化物薄膜13内に生じた多数の欠陥を少なくし、欠陥に由来する高いキャリア濃度を低減して、「半導体」として好ましい範囲のキャリア濃度とすることができる。なお、レーザー照射を行わないキャリア濃度の高い状態では、「半導体」というよりも「導体」に近くなり、OFF電流が高くなってしまうという問題が生じてしまうので望ましくない。
実施例1,4〜13は、パルスレーザー照射時の態様について検討したものであり、いずれの場合もパルスレーザー照射後のアモルファス酸化物薄膜13はアモルファス相のまままであることをX線回折測定によって確認した。また、レーザー照射時の照射条件をパルス幅10〜50nsec、デューティー比0.1〜0.5、エネルギー密度150〜400mJ/cmの範囲で調整さえすれば、実施例1と同様の特性を得ることができることも確認した。特に、アモルファス酸化物薄膜13の直接レーザー照射する場合よりも保護膜や金属膜を介してレーザー照射した方(実施例4〜11,13)が、金属膜のエッチングを含め、雰囲気からの影響を受けないので、外部アモルファス酸化物薄膜13への影響(ダメージ等)をより少なくすることができることを確認した。また、熱伝導性のよい金属膜を設けた態様(実施例5〜12)又は熱伝導性のよい保護膜を設けた態様(実施例13)でレーザー照射した場合の方が好ましいことを確認した。
1,1A,1B,1C TFT基板
10 プラスチック基板
11 第1下地膜
12 第2下地膜
13 アモルファス酸化物薄膜
13s ソース側拡散領域
13c チャネル領域
13d ドレイン側拡散領域
14 絶縁膜
14g ゲート絶縁膜
15s ソース電極
15g ゲート電極
15d ドレイン電極
18 保護膜
19 金属膜
20 パルスレーザー

Claims (8)

  1. プラスチック基板の上又はその上方に活性層となるアモルファス酸化物薄膜を形成する工程と、
    少なくとも活性層となる部分のアモルファス酸化物薄膜に向けてレーザーを照射する工程と、を少なくとも有し、
    前記レーザー照射工程は、前記プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間加えず、且つ前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する工程であることを特徴とする薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法。
  2. 前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程後で前記レーザー照射工程前に、前記アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に金属膜を形成する工程をさらに有し、
    前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する、請求項1に記載の薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法。
  3. 前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程後で前記レーザー照射工程前に、前記アモルファス酸化物薄膜上又はその上方に保護膜と金属膜とをその順で形成する工程をさらに有し、
    前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する、請求項1に記載の薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法。
  4. 前記アモルファス酸化物薄膜の形成工程前に、前記プラスチック基板上又はその上方に金属膜を形成する工程をさらに有し、
    前記レーザーを照射した前記金属膜の熱伝導により、前記アモルファス酸化物薄膜をアモルファス相のままで所定の比抵抗に制御する、請求項1に記載の薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法。
  5. 前記アモルファス酸化物薄膜がInGaZnO系酸化物薄膜であり、前記レーザーがパルス幅が10〜50nsec(FWHM)でデューティー比が0.1〜0.5で照射密度が150〜400mJ/cmのパルスレーザーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ搭載基板の製造方法。
  6. プラスチック基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁膜と、活性層と、ソース電極と、ドレイン電極とを少なくとも有する薄膜トランジスタ搭載基板において、
    前記活性層が、前記プラスチック基板に該プラスチック基板のガラス転移温度以上の温度を一定時間与えないレーザー照射処理によって処理されてなるアモルファス酸化物薄膜であることを特徴とする薄膜トランジスタ搭載基板。
  7. 前記アモルファス酸化物薄膜が、InGaZnO系酸化物薄膜である、請求項6に記載の薄膜トランジスタ搭載基板。
  8. 請求項6又は7に記載の薄膜トランジスタ搭載基板をアクティブマトリックス型スイッチング素子基板として用いることを特徴とする画像表示装置。
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