JP2011007384A - アルミニウム合金製自動車用熱交換器およびその製造方法、ならびに該熱交換器の冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【構成】アルミニウム合金押出材からなる冷媒通路管の表面に、Si粉末とフッ化物系フラックス粉末からなる混合物にバインダを添加した塗装剤を塗布して、ろう付けして組み立てられる自動車用熱交換器であって、冷媒通路管が、Mn:0.5〜1.7%を含有し、Cu:0.10%未満、Si:0.20%未満、Fe:0.30%未満、Mg:0.10%未満に制限し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金押出材からなり、ろう付け加熱後の冷媒通路管の表層部にSi拡散層が形成されており、該Si拡散層にAl−Mn−Si系金属間化合物の析出帯が形成されていることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
Mn:
Mnの添加は、同じ量のSi、CuあるいはMgを添加した場合と比べて、押出性、特に限界押出速度の低下が著しく小さい。同じ強度になるようにSi、Cu、MgあるいはMnを添加した場合と比べても、Mn添加の場合が最も限界押出速度の低下が小さく、Mnは高強度と押出性すなわち生産性を両立できる添加成分である。
Cuは0.10%未満の範囲に制限する。自動車用熱交換器において、特にCO2冷媒サイクルなどでの使用においては、作動温度が150℃付近の高温になるため、冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の粒界へのCuの析出が顕著に生じ易くなり、粒界へのCuの析出により粒界腐食感受性が生じ易くなる。Cu量を0.10%未満とすることにより、粒界腐食を抑制することが可能になる。また、Cuの添加は、前記のようにMnと比べて著しく押出性を低下させるため、この点からも含有量は制限する必要がある。これらをより効果的に得るためのCuのさらに好ましい含有範囲は0.05%以下である。
Siは0.20%未満に制限する。冷媒通路管の表面に塗布されたSi粉末はろう付け加熱により冷媒通路管の表面部分を溶融させ、Al−Si共晶ろう材を生成するとともに、冷媒通路管にも固相拡散する。拡散したSiは、冷媒通路管用アルミニウム合金中の固溶MnとAl−Mn−Si系金属間化合物を形成し析出する。このため、冷媒通路管用アルミニウム合金押出材のSi拡散層はMnおよびSiの固溶度が低くなり、Si拡散層よりも深い部位、即ちSiが未拡散の部位と比べて電位が卑になる。これにより、冷媒通路管表層のSi拡散層は犠牲陽極層として作用し、深さ方向への腐食貫通寿命を向上させることができる。
Feは0.30%未満に制限する。Fe量が0.30%以上では、冷媒通路管用アルミニウム合金中でAl−Mn−Fe系金属間化合物、あるいはAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が形成して、Mnの固溶度が低下する。このため、ろう付け加熱時において、Si拡散による固溶Mnの析出が不十分になってしまう。さらにFe量が増加すると押出性を低下させ、かつ電位の貴なAl−Mn−Fe系金属間化合物が増加するため自己耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.20%以下である。
Mgは0.10%未満に制限する。Mg量が0.10%以上では、ろう付け加熱過程に、溶融したフッ化物系フラックスがMgと反応し、MgF2、KMgF3などの化合物を生成し、フラックスの活性度が低下してろう付け性が著しく低下する。また、Mgは押出性を著しく低下させる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.05%以下である。
Tiは、押出材中にTiの高濃度の領域と低濃度の領域を形成し、これらの領域が材料の肉厚方向に交互に層状に分布し、Tiが低濃度の領域は高濃度の領域に比べて優先的に腐食するために、腐食形態が層状になり肉厚方向への腐食の進行が抑制される。これにより耐孔食性および耐粒界腐食性が向上する。さらに、Ti添加により常温及び高温での強度が向上する。Tiの好ましい含有量は0.30%以下の範囲であり、0.30%を超えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、健全な押出材の製造が困難となる。
本発明の冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の製造方法について説明する。
上記の組成を有する冷媒通路管用アルミニウム合金を溶解、通常の半連続鋳造により造塊し、得られた鋳塊に対して、350℃〜580℃の温度で4時間以上保持する均質化処理を施した後、熱間押出加工する。この処理により、鋳造凝固時に形成される粗大な晶出物が分解あるいは粒状化して、鋳造時に生じた偏析層などの不均一な組織を均質化させ、押出性を向上させることができるとともに、微細なAl−Mn系金属間化合物を析出させることができる。押出材中のAl−Mn系金属間化合物が微細であるため、ろう付け加熱した際、押出材中にMnが再固溶し、冷媒通路管の電位を貴にすることができる。
本発明においては、押出材の表面にSi粉末とフッ化物系フラックス粉末からなる混合物にバインダを添加した塗装剤を塗布する。その目的は次のとおりである。Si粉末はろう付け時に押出材のAlと反応してAl−Si液相ろうを生じ、フィン材やヘッダ材と押出材との接合を行うことが可能となる。フッ化物系フラックス粉末は、ろう付け時に押出材表面に存在する酸化皮膜を破壊し、ろう付けを可能にする。Si粉末が溶融し、冷媒通路管の表層に拡散することにより形成されるSi拡散層により、Al−Mn−Si系金属間化合物の析出が生じ、Mn固溶量が低減する。Mn固溶量の低減による電位卑化効果により、押出材の表面から深部にかけて、表面が卑で深部が貴な電位勾配を形成することができ、表層部が犠牲陽極となって深部を防食することができる。
冷媒通路管用として、発明材として表1に示す組成を有するアルミニウム合金A〜Kのビレット、および、比較材として表2に示す組成を有するアルミニウム合金L〜Vのビレットを鋳造した。なお、アルミニウム合金Vは従来合金として一般的に広く使用されているものである。これらのビレットを用いて、以下の試験1、2、3を実施した。
発明材および比較材について、ビレットを500℃で10hの均質化処理後、多穴管に熱間押出加工した。その際、押出時の限界押出速度比(アルミニウム合金Vの限界押出速度との比率)を調査した。その結果を表3および表4に示す。限界押出速度比が1.0を超えるものは押出性良好、1.0以下のものは押出性不良と評価する。
試験1で熱間押出加工した多穴管について、ろう付け加熱を実施した。加熱条件は窒素ガス雰囲気中で平均50℃/minの昇温速度にて600℃まで加熱し、3分保持後に室温まで降温した。その後、常温にて引張試験を実施した。その結果を表3および表4に示す。引張強さがアルミニウム合金Vを超えるものは良好とし、アルミニウム合金V以下のものは不良と評価する。
発明材CおよびDのビレットについて、表5および表6に示す条件で均質化処理を行い、同様にして多穴管に熱間押出加工し、押出時の限界押出速度比(アルミニウム合金Vの限界押出速度との比率)を調査した。昇温速度は50℃/h、降温速度は炉出放冷とした。結果を表5および表6に示す。限界押出速度比が1.0を超えるものは押出性良好、1.0以下のものは押出性不良と評価する。
発明材として表1に示す組成を有するアルミニウム合金A〜K、比較材として表2に示す組成を有するアルミニウム合金C、Vのスラブを用いて、表5および表6に示す均質化処理を施し多穴管に押出した。
ろう付け加熱後の押出多穴管について、高温使用を模擬して150℃で120時間熱処理を施した後、ISO11846 method Bに規定される方法で粒界腐食試験を実施した。粒界腐食が発生しなかったものは良好、粒界腐食が発生したものは不良と評価した。
ろう付け加熱後の押出多穴管表面と深部の電位およびそれらの電位差を測定した。電位は、表面はろう付けのままの表面を、深部は表面から150μmの深さまで面削し、Si及びZn拡散の及んでいない部位を測定した。測定は、酢酸でpH3に調製した5%NaCl水溶液中に24時間浸漬して行い、10時間以降の安定した測定値の平均を採用した。なお、参照電極は飽和カロメル電極を用いた。
ろう付け加熱後の押出多穴管について、ASTM−G85−Annex A3に規定されるSWAAT試験を1000h実施した。最大腐食深さ0.05mm以下を優良(◎)、0.05mmを超え0.10mm以下を○、0.10mmを超え0.20mm以下を△、0.20mmを超えるものを不良(×)と評価した。
Claims (6)
- アルミニウム合金押出材からなる冷媒通路管の表面に、Si粉末とフッ化物系フラックス粉末からなる混合物にバインダを添加した塗装剤を塗布して、ろう付けして組み立てられる自動車用熱交換器であって、冷媒通路管が、Mn:0.5〜1.7%を含有し、Cu:0.10%未満、Si:0.20%未満、Fe:0.30%未満、Mg:0.10%未満に制限し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金押出材からなり、ろう付け加熱後の冷媒通路管の表層部にSi拡散層が形成されており、該Si拡散層にAl−Mn−Si系金属間化合物の析出帯が形成されていることを特徴とするアルミニウム合金製自動車用熱交換器。
- 前記混合物中のSi粉末とフッ化物系フラックス粉末の混合比は10:90〜40:60の範囲であり、バインダは前記塗装剤全体の5〜40%となるように添加し、Si粉末とフッ化物系フラックス粉末の合計量が5〜30g/m2となるように前記冷媒通路管の外表面に塗装して、ろう付け加熱を施し、前記冷媒通路管の表層部にSi拡散層を形成するとともに、該Si拡散層にAl−Mn−Si系金属間化合物の析出帯を形成することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金製自動車用熱交換器の製造方法。
- 請求項1または2に記載のアルミニウム合金押出材からなる冷媒通路管を製造する方法であって、Mn:0.5〜1.7%を含有し、Cu:0.10%未満、Si:0.20%未満、Fe:0.30%未満、Mg:0.10%未満に制限し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金の鋳塊を、350℃〜580℃の温度で4時間以上保持する均質化熱処理した後、熱間押出加工することを特徴とする冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の製造方法。
- 前記アルミニウム合金押出材が、さらにTi:0.30%以下、Sr:0.10%以下、Zr:0.30%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金製自動車用熱交換器。
- 前記アルミニウム合金押出材が、さらにTi:0.30%以下、Sr:0.10%以下、Zr:0.30%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項2記載のアルミニウム合金製自動車用熱交換器の製造方法。
- 前記アルミニウム合金押出材が、さらにTi:0.30%以下、Sr:0.10%以下、Zr:0.30%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項3記載の冷媒通路管用アルミニウム合金押出材の製造方法。
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